説明

共振型コンバータにおけるコンデンサの容量低下を検出する装置

【課題】共振型コンバータにおいて共振電流を吸収するコンデンサの容量低下を検出可能とする。
【解決手段】直流電源11とコンデンサC1との間を流れる電流量を検出する電流検出部121と、電流検出部121で検出された電流量が所定の閾値を下回ると、コンデンサC1の容量が低下したと判定する判定制御部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振型コンバータにおけるコンデンサの容量低下を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧変換器として、直流(DC)電圧を昇圧及び/又は降圧するDC−DCコンバータが知られている。DC−DCコンバータは、パーソナルコンピュータや、AV機器、携帯電話機、電源システム等の、電気回路を含む電気機器に幅広く用いられている。近年では、燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両の電源システムにDC−DCコンバータが用いられる例もある。
【0003】
DC−DCコンバータは、例えば、トランジスタ等のスイッチング素子、コイル(リアクトル)、コンデンサ、及びダイオード等を組み合わせて構成することができる。DC−DCコンバータには、いわゆるソフトスイッチングを実現する共振型コンバータと呼ばれるタイプのものが知られている。ソフトスイッチングは、電流共振現象を利用して電圧及び/又は電流をゼロとした状態でのスイッチング動作を可能にすることで、スイッチング時の電力損失の低減を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/098376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
共振型コンバータにおいては、ソフトスイッチングの実現に利用される共振電流が入力側へ回生(逆流)する場合がある。そのような要因の一例として、共振電流を吸収(バッファ)するコンデンサの容量が低下することが挙げられる。すなわち、コンデンサの容量が低下してコンデンサで吸収し切れない共振電流が生じると、当該電流が入力側へ回生し得る。共振電流の回生先が燃料電池等の直流電源である場合、当該共振電流によって直流電源が逆充電されて性能劣化が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、共振型コンバータ共振電流を吸収するコンデンサの容量低下を検出できるようにすることにある。また、コンデンサの容量低下に起因してコンデンサで吸収し切れない共振電流によって直流電源が逆充電されることを防止できるようにすることも本発明の目的の一つである。
【0007】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の共振型コンバータのコンデンサ容量低下を検出する装置の一態様は、直流電源に対して並列に接続されて電流共振現象に基づくソフトスイッチングの過程で生じる共振電流を吸収するコンデンサを有する共振型コンバータに用いられる装置であって、前記直流電源と前記コンデンサとの間を流れる電流量を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された電流量が所定の閾値を下回ると、前記コンデンサの容量が低下したと判定する判定制御部と、を備える。
【0009】
また、本発明の共振型コンバータのコンデンサ容量低下を検出する装置の別の態様は、直流電源に対して並列に接続されて電流共振現象に基づくソフトスイッチングの過程で生じる共振電流を吸収するコンデンサを有する共振型コンバータに用いられる装置であって、前記コンデンサの接続点と前記コンデンサとの間を流れる電流量を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された電流量が所定の閾値を下回ると、前記コンデンサの容量が低下したと判定する判定制御部と、を備える。
【0010】
ここで、前記判定制御部は、前記コンデンサの容量が低下したと判定すると、ON状態で前記共振電流を前記コンデンサに流通させるスイッチング素子をOFF制御してもよい。
【0011】
また、前記直流電源と前記コンデンサの接続点との間に、前記直流電源に向かう前記共振電流を阻止する電流阻止回路と、前記電流阻止回路をバイパスする電気経路上に設けられたバイパススイッチとをさらに備え、前記判定制御部は、前記コンデンサの容量が低下したと判定しない間は、前記バイパススイッチをON制御し、前記コンデンサの容量が低下したと判定すると、前記バイパススイッチをOFF制御する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共振型コンバータにおいて共振電流を吸収するコンデンサの容量低下を検出できる。ひいては、当該容量低下に起因してコンデンサで吸収し切れない共振電流によって直流電源が逆充電されることを防止し、直流電源の性能劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る電源システム及び当該電源システムを搭載した車両1の構成例を模式的に示す図である。
【図2】図1に例示するFC昇圧コンバータの一例を示す回路図である。
【図3】図2に例示するFC昇圧コンバータの動作(モード1)を説明する図である。
【図4】モード1のFC昇圧コンバータにおける素子の電流又は電圧の時間変化例を示すグラフである。
【図5】図2に例示するFC昇圧コンバータの動作(モード2)を説明する図である。
【図6】モード2のFC昇圧コンバータにおける素子の電流又は電圧の時間変化例を示すグラフである。
【図7】図2に例示するFC昇圧コンバータの部分的な等価回路図である。
【図8】図7におけるA点に流れる電流の時間変化の一例を示す図である。
【図9】図2に例示するFC昇圧コンバータにおいて共振電流が電源側に回生する様子を例示する図である。
【図10】図2及び図9に例示するECUの変形例を示す機能ブロック図である。
【図11】図2及び図9に例例示する電源システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0015】
〔1〕一実施形態の説明
図1は、一実施形態に係る電源システム10及び当該電源システム10を搭載した車両1の構成例を模式的に示す図である。
【0016】
電源システム10は、例示的に、燃料電池(FC)11を有する燃料電池システムであり、車両1は、燃料電池システム10を駆動電力の供給源とする電気機器の一例としての燃料電池自動車である。ただし、車両1は、電気自動車やハイブリッド自動車であってもよい。
【0017】
車両1は、駆動輪2を駆動するモータ16や、電子制御ユニット(ECU)20、アクセルペダルの開度を検出するアクセルペダルセンサ21等を備える。アクセルペダルセンサ21は、電子制御ユニット20に電気的に接続されており、例えば、検出したアクセスペダルの開度に応じてモータ16(駆動輪2)の回転速度がECU20によって制御される。
【0018】
燃料電池システム10は、前記燃料電池(FC)11のほか、非限定的な一例として、FC昇圧コンバータ12、バッテリ13、バッテリ昇圧コンバータ14、インバータ15等を備える。
【0019】
FC11は、電気化学反応を利用して発電する装置である。FC11には、固体高分子型、燐酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、アルカリ電解質型等の種々のタイプの燃料電池が適用可能である。FC11が発電した電力は、車両1の駆動輪2を駆動するモータ16の駆動電力や、バッテリ13の充電に用いられる。
【0020】
バッテリ13は、充放電可能な二次電池であり、リチウムイオン、ニッケル水素、ニッケルカドミウム等の種々のタイプの二次電池を適用可能である。バッテリ13は、車両1やFC11の運転時に使用される種々の電気機器に電力を供給することができる。ここでいう電気機器には、例えば、車両1の照明機器、空調機器、油圧ポンプ、FC11の燃料ガスや改質原料を供給するポンプ、改質器の温度を調整するヒータ等が含まれる。
【0021】
これらのFC11及びバッテリ13は、図1に例示するように、インバータ15に対して電気的に並列に接続されている。FC11からインバータ15に至る電気経路には、FC昇圧コンバータ12が設けられている。FC昇圧コンバータ12は、入力DC電圧を昇圧するDC−DCコンバータであり、FC11で発生したDC電圧を変換可能な範囲で所定のDC電圧に変換(例えば昇圧)して、インバータ15に印加することができる。このような昇圧動作により、FC11の出力電力が低くても、モータ16の駆動に要する駆動電力を確保することが可能となる。
【0022】
一方、バッテリ13からインバータ15に至る電気経路には、バッテリ昇圧コンバータ14が、FC昇圧コンバータ12とインバータ15との間の電気経路に対して並列に接続されている。当該コンバータ14も、DC−DCコンバータであり、バッテリ13又はインバータ15から印加されたDC電圧を変換可能な範囲で所定のDC電圧に変換することができる。
【0023】
コンバータ14には、昇圧及び降圧の双方が可能な昇降圧型のコンバータを適用でき、例えば、バッテリ13からの入力DC電圧を制御(昇圧)してインバータ15側に出力する一方、FC11又はモータ16からの入力DC電圧を制御(降圧)してバッテリ13に出力することが可能である。これにより、バッテリ13の充放電が可能となる。
【0024】
また、コンバータ14は、出力電圧が制御されることで、インバータ15の端子電圧を制御することが可能である。当該制御は、インバータ15に対して並列に接続された各電源(FC11及びバッテリ13)の相対的な出力電圧差を制御して、両者の電力を適切に使い分けることを可能にする。
【0025】
インバータ15は、FC11からコンバータ12を介して、また、バッテリ13からコンバータ14を介して、DC電圧の入力を受け、当該入力DC電圧を交流(AC)電圧に変換し、これをモータ16の駆動電圧として供給する。その際、ECU20は、要求動力に応じたAC電圧がモータ16に供給されるよう、インバータ15の動作(スイッチング)を制御する。
【0026】
ECU20は、既述の制御のほか、車両1及び燃料電池システム10の動作(運転)を統括的に制御する。ECU20は、例示的に、演算処理装置の一例としてのCPU、記憶装置の一例としてのRAM、ROM等を備えたマイクロコンピュータとして実現できる。ECU20は、モータ16や燃料電池システム10の各要素、種々のセンサ群と電気的に接続され、各種センサ値の受信、演算処理、指令(制御信号)の送信等を適宜に実施する。センサ群には、アクセルペダルセンサ21のほか、例示的に、バッテリ13の充電状態(SOC:State Of Charge)を検出するSOCセンサ、車速(モータ16の回転数)を検出する車速センサ等が含まれ得る。
【0027】
〔2〕昇圧コンバータ12
次に、昇圧コンバータ12の電気回路図の一例を図2に示す。図2に示す昇圧コンバータ12は、例示的に、主回路12aと補助回路(スナバ回路)12bとを備える。
【0028】
主回路12aは、例えば、スイッチング素子(メインスイッチ)S1及び逆並列ダイオードD4を含むスイッチ回路と、リアクトル(コイル)L1と、(出力)ダイオードD5と、(入力)コンデンサC1と、(出力)コンデンサC3とを備える。
【0029】
主回路12aは、メインスイッチS1のスイッチング(ON/OFF)が周期的に制御されることにより、リアクトルL1に流れる電流(主電流)量に応じたリアクトルL1の電気エネルギーの蓄積及び蓄積エネルギーの解放を周期的に繰り返す。解放された電気エネルギーは、FC11の出力電圧に重畳されて、負荷の一例であるモータ16側(インバータ15側)にダイオードD5経由で出力される。これにより、入力電圧(FC11の出力電圧)VLが所定の出力電圧VHに昇圧される。
【0030】
入力コンデンサC1は、両端がFC11の高電位側とFC11の低電位側〔例えばグランド(GND)〕とに接続されている。入力コンデンサC1は、その両端の電圧(昇圧前電圧)を平滑化してリプルを低減する。昇圧前電圧VLであるコンデンサC1の両端電圧は、FC11の出力電圧と等価である。
【0031】
リアクトルL1の一端は、FC11の正極に電気的に接続され、リアクトルL1の他端は、ダイオードD5のアノードに直列接続されている。ダイオードD5のカソードには、出力コンデンサC3の一端が並列に接続されている。出力ダイオードD5のカソード電圧が、負荷の一例であるモータ16側(インバータ15側)へ供給される昇圧後電圧VHである。出力コンデンサC3は、当該昇圧後電圧VHを平滑化して変動を低減する。
【0032】
メインスイッチS1には、非限定的な一例として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を適用可能であり、一方の極(例えばコレクタ)がリアクトルL1と出力ダイオードD5との間の電気経路に並列接続されるとともに、他方の極(例えばエミッタ)が、FC11の負極側(GND)に接続されている。
【0033】
メインスイッチS1の例えばゲートにパルス幅変調(PWM)信号等のスイッチ制御信号が与えられることで、メインスイッチS1のON/OFFが制御される。また、スイッチ制御信号のデューティ比を制御することで、出力ダイオードD5へ向かう方向にリアクトルL1に流れる平均的な電流量を制御して、昇圧コンバータ12の昇圧度を制御することができる。スイッチ制御信号は、例えばECU20において生成される。
【0034】
メインスイッチS1の両極間には、逆並列ダイオードD4が接続されている。逆並列ダイオードD4は、メインスイッチS1がON時の電流通流方向とは逆方向の通流を許容する。
【0035】
補助回路12bは、例示的に、(回生)ダイオードD3と、リアクトル(コイル)L2と、(スナバ逆流防止)ダイオードD2と、スイッチング素子(補助スイッチ)S2及び逆並列ダイオードD1を含むスイッチ回路と、(共振)コンデンサC2とを備える。補助スイッチS2をONにすることで、リアクトルL2及びコンデンサC2によるLC共振現象が発生し、当該LC共振現象を利用して、メインスイッチS1及び補助スイッチS2のソフトスイッチングを実現することができる。
【0036】
例示的に、ダイオードD3は、そのアノードがリアクトルL1と出力ダイオードD5との間の電気経路に接続されることにより、メインスイッチS1に対して並列に接続されている。ダイオードD3のカソードは、コンデンサC2の一端に接続され、コンデンサC2の他端は、FC11の負極側(GND)に接続されている。また、ダイオードD3のカソードとコンデンサC2との接続点には、リアクトルL2の一端が並列に接続され、リアクトルL2の他端にはダイオードD2のアノードが接続されている。
【0037】
さらに、ダイオードD2のカソードは補助スイッチS2の両極の一方(例えばコレクタ)に接続され、補助スイッチS2の両極の他方(例えばエミッタ)はリアクトルL1のFC11側の一端に接続されている。補助スイッチS2の両極間には、ダイオードD1が並列接続されている。なお、リアクトルL2、及び、補助スイッチS2とダイオードD1とを含むスイッチ回路の接続位置は、互いに入れ替えてもよい。
【0038】
〔3〕ソフトスイッチング動作(モード1〜6)
上述のごとく構成された昇圧コンバータ12において、ソフトスイッチング動作に基づく昇圧動作の1サイクルは、例示的に、以下のような状態遷移(モード1〜6)で表わすことができる。
【0039】
メインスイッチS1及び補助スイッチS2がともにOFFの初期状態では、例えば図3中に点線で示す経路で電流が通流し、インバータ15(モータ16)側に電力が供給される。
【0040】
(モード1)
初期状態から、メインスイッチS1はOFFのままで補助スイッチS2がONされると、出力ダイオードD5に蓄積していた電荷がダイオードD3、リアクトルL2及び補助スイッチS2を経由して入力コンデンサC1へ流れて消滅させられる(ソフトターンオフ)。一方、FC11側からリアクトルL1及び出力ダイオードD5を経由して流れていた電流が、補助回路12b側(ダイオードD3)に徐々に移行してゆく。図3中の矢印100は、その様子を表現している。したがって、補助回路12bには、図2中に実線で200示すように、リアクトルL1、ダイオードD3、リアクトルL2、ダイオードD2及び補助スイッチS2の経路で電流が還流する。したがって、図4に例示するように、モード1の期間(時刻T0〜T1の期間)において、リアクトルL2及び補助スイッチS2に流れる電流(L2電流)は、リアクトルL2の両端電圧(VH−VL)とリアクトルLのインダクタンス値とに応じて増加する。
【0041】
(モード2)
その後、例えば図5中に実線300で示すように、コンデンサC2に蓄積されていた電荷がリアクトルL2側へ徐々に放電され、電流がリアクトルL2、ダイオードD2、補助スイッチS2及び入力コンデンサC1で形成される電気経路で通流する。これにより、リアクトルL2コンデンサC2によるLC共振現象が発生し、コンデンサC2の両端電圧が正弦波状に正から零へ徐々に減少する(図6の時刻T1〜T2参照)。補助スイッチS2がONとなる瞬間(図6の時刻T1)では、補助スイッチS2は零電流なのでソフトスイッチングでターンオンすることになる。
【0042】
(モード3)
コンデンサC2の電荷がすべて放電されてコンデンサC2の電圧が零となり(図6の時刻T2参照)、リアクトルL1及びリアクトルL2に流れる電流(L1電流及びL2電流)が互いに同じになったタイミング(図6の時刻T3参照)でメインスイッチS1をONする。すると、補助回路12bを還流していた電流がメインスイッチS1を通流し始め、メインスイッチS1に流れる電流(S1電流:図6参照)が徐々に増加してゆく。
【0043】
(モード4)
この時、メインスイッチS1は、零電流及び零電圧からのターンオンとなる。メインスイッチS1がONであることにより、メインスイッチS1、FC11及びリアクトルL1の経路で電流が通流し、リアクトルL1に電気エネルギーが徐々に蓄積されてゆく。このとき、補助回路12bには電流は流れないので、コンデンサC2に対する充電は行なわれず、コンデンサC2の電圧は零電圧のままである(図6参照)。
【0044】
(モード5)
その後、メインスイッチS1及び補助スイッチS2をともにOFFにする。両スイッチS1及びS2は、同時にOFFにしてもよいし、補助スイッチS2を先にOFFにしてもよい。この時、コンデンサC2の電圧が零であるから、補助スイッチS2は、零電流及び零電圧からのターンオフ、メインスイッチS1は、零電圧からのターンオフとなる。メインスイッチS1のOFFにより、リアクトルL1に流れていた電流は、ダイオードD3、コンデンサC2、FC11及びリアクトルL1の経路で流れ始め、コンデンサC2への充電が始まる。コンデンサC2への充電により、メインスイッチS1がOFFされる時の電圧上昇速度が抑制され、テール電流が存在する領域での損失を低減することが可能となる。
【0045】
(モード6)
コンデンサC2が出力電圧VHと同電圧になるまで充電されると、出力ダイオードD5がONし、リアクトルL1にそれまでに蓄積された電気エネルギーがインバータ15(モータ16)側へ供給される。その後、補助スイッチS2が再度とONとなり、モード1から次のサイクルがスタートする。
【0046】
〔4〕コンデンサC1の容量低下判定
以上のようなソフトスイッチング動作において、モード2では、コンデンサC2から放電された電荷が、リアクトルL2、ダイオードD2、補助スイッチS2及びコンデンサC1の経路300(図5参照)でL2C2共振電流として流れる。このとき、L2C2共振電流は、主回路12aのリアクトルL1と補助回路12bの補助スイッチS2との接続点120において、主回路12aを流れるFC11からの主電流(L1電流)と合流し、L1電流とは逆方向に流れる。
【0047】
図8に、FC11からリアクトルL1に向かう方向の電流を正、その逆方向の電流を負とした場合の、図7中に示すA点に流れる電流量の時間変化の一例を示す。図8において、負の領域にある電流がL2C2共振電流Iに相当する。L2C2共振電流Iは、コンデンサC2の電荷放電により発生する電流量と等価と考えてよい。
【0048】
コンデンサC2の容量をC2、リアクトルL2のインダクタンス値をL2、コンデンサC2に印加される電圧をV、リアクトルL2を流れる電流(L2電流)をIとそれぞれ表わすと、エネルギー保存の法則より、次式(1)が成立する。
【数1】

【0049】
したがって、電流Iは、次式(2)により求めることができる。
【数2】

【0050】
コンデンサC2の電圧V=VH−VLとすると、式(2)は、次式(3)となる。
【数3】

【0051】
ここで、例えば図7に示すように、FC11及びコンデンサC1の高電位側からみた経路のインピーダンス値をそれぞれZA及びZBとすると、FC11側へ逆流するL2C2共振電流Iは、それぞれのインピーダンス値ZA及びZBの比に応じて分流される。分流された電流IA及びIBは、それぞれ以下の式(4)及び式(5)で表わすことができる。
【数4】

ただし、例示的に、インピーダンスZAは、FC11の内部インピーダンスと配線インピーダンスとを含み、インピーダンスZBは、コンデンサC1の内部インピーダンスと配線インピーダンスとを含む。
【0052】
FC11のインピーダンス値ZAがコンデンサC1のインピーダンス値ZBよりも相対的に大きい場合、L2C2共振電流Iの大部分はコンデンサC1で吸収(バッファ)することができる。コンデンサC1の容量を、L2C2共振電流Iのすべてを吸収可能な値に設計しておけば、FC11が逆充電されることを回避できる。
【0053】
しかし、経年変化等に起因してコンデンサC1の容量が所期の容量よりも低下することがある。コンデンサC1の容量をC1、コンデンサC1の両端電圧をVcでそれぞれ表わすと、コンデンサC1に流れる電流ICは下記の式(6)で表わすことができる。
【数5】

【0054】
したがって、Vcが一定でコンデンサC1の容量が低下すると、コンデンサC1へ流れる電流(IB)が低下し、低下分の電流は、FC11側へ逆流(回生)することになる(図7の矢印400参照)。この場合、FC11からリアクトルL1に向かう電流量は、相対的に減少する。回生電流によってFC11が逆充電されると、FC11の性能劣化につながるおそれがある。
【0055】
そこで、本実施形態においては、例えば図2及び図9中に示すように、FC11の高電位側と入力コンデンサC1との間(代替的に、コンデンサC1の接続点とコンデンサC1との間でもよい)の電流量を検出(モニタ)する。当該電流検出(モニタ)には、電流検出部の一例としての電流センサ121を用いることができる。
【0056】
電流センサ121には、例示的に、磁気比例式のセンサを適用可能である。磁気比例式の電流センサは、測定すべき電流が導体を流れた時の磁界を測定することにより、電流の大きさを間接的に測定する。例えば、電流に応じた磁界をホール素子により電圧信号に変換し、その出力電圧を増幅回路にて増幅し、電流に応じた出力電圧をセンサ値として出力する。
【0057】
当該電流センサ121で得られた電流値(電流センサ値)は、例えばECU20に与えることができる。ECU20は、判定制御部の一例であり、一定以上の回生電流が生じて、当該電流センサ値が所定の閾値を下回った場合、コンデンサC1の容量が低下したと判定(検出)することができる。コンデンサC1の容量が低下したと判定した場合、ECU20は、例えば補助スイッチS2をOFF制御する。
【0058】
そのため、ECU20は、図2及び図7に示すように、例示的に、サンプリング処理部211及び比較・判定部212としての機能を具備する。当該ECU20と電流センサ121とは、コンデンサC1の容量低下を検出する回路(装置)の一例として機能する。
【0059】
サンプリング処理部211は、電流センサ121によって得られるセンサ値を、周期的にサンプリングする。サンプリングタイミングは、ECU20の処理能力との関係で許容される範囲で短くすることができる。サンプリング周期を短く設定するほど、比較・判定部212での判定精度を向上できる。
【0060】
比較・判定部212は、サンプリング処理部211でサンプリングされたセンサ値(以下、「サンプリング値」ともいう。)と、前記式(4)又は式(5)に基づいて得られる所定の閾値とを比較して、サンプリング値が当該閾値を下回っている否かを判定する。判定の結果、サンプリング値が閾値を下回っている場合、比較・判定部212は、コンデンサC1の容量が低下したと判定(異常判定)し、そうでなければ正常と判定する。
【0061】
コンデンサC1の容量が低下した判定した場合、比較・判定部212は、例えば補助スイッチS2をOFF制御する。これにより、補助回路12bを流れるL2C2共振電流がFC11に向かって逆流することを回避することができる。したがって、L2C2共振電流によりFC11が逆充電されることを防止でき、FC11の性能劣化が生じることを防止できる。
【0062】
なお、比較・判定部212での異常判定は、前記閾値を下回った状態が所定時間継続した場合に行なうようにしてもよい。また、比較・判定部212による判定結果は、例えばECU20から車両1の運転者や保守者に提示することができる。提示態様の一例としては、車両1に設けられた所定の警報ランプの点灯や、車両1に設けられたスピーカからの音声出力等が挙げられる。
【0063】
前記閾値は、ECU20内のRAM等のメモリに記憶しておくことができる。また、比較・判定部212での異常判定は、誤差範囲内の閾値からのずれを許容するように設定してもよい。当該許容範囲は、システム設計要件に応じて決定することができる。
【0064】
(変形例1)
ECU20は、例えば図10に示すような機能を具備することとしてもよい。すなわち、当該ECU20は、例示的に、既述のサンプリング処理部211のほか、ピークホールド処理部222及び比較・判定部223としての機能を具備していてもよい。
【0065】
ここで、ピークホールド処理部222は、サンプリング処理部211でサンプリングされた電流センサ値のピーク値を保持する。なお、当該ピークホールド処理部222の機能は、ハードウェアのピークホールド回路として設けることもできる。
【0066】
そして、比較・判定部223は、ピークホールド処理部222で保持されたセンサ値と所定の閾値とを比較して、センサ値が閾値を下回っている場合に、コンデンサC1の容量低下と判定(異常判定)し、そうでなければ正常と判定する。異常判定時のECU20の動作、制御は上述した実施形態と同様である。
【0067】
本変形例1によれば、ECU20は、上述した実施形態に比して、閾値とピークホールド処理部222における電流センサ値のピーク値との比較でよいから、比較・判定処理を簡易化することができ、ECU20(CPU)の処理負荷を軽減できる。
【0068】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る昇圧コンバータ12に着目した回路図である。図11に示すFC11と昇圧コンバータ12との間には、回生電流阻止回路12c及びバイパス回路12dが設けられている。
【0069】
回生電流阻止回路12cは、一端がFC11の高電位側に接続されるとともに、他端が主回路12aの要素であるリアクトルL1に直列接続されており、FC11の高電位側に向かって逆流(回生)する回生電流を阻止する回路である。回生電流阻止回路12cには、例示的に、ダイオードD6又はリアクトルL3を用いることができる。ダイオードD6を用いる場合には、アノードをFC11の高電位側の電気経路に接続するとともに、カソードをリアクトルL1側の電気経路に接続する。
【0070】
バイパス回路12dは、例示的に、一端がFC11の高電位側に接続されるとともに、他端が回生電流阻止回路12cとリアクトルL1との間の電気経路に接続された入力コンデンサC1の接続点に接続されている。当該バイパス回路12dは、例えばECU20によってON/OFF制御が可能であり、ON制御されることにより回生電流阻止回路12cを経由する電気経路をバイパスすることができる。バイパス回路12dには、例示的に、リレースイッチを用いることができる。
【0071】
バイパス回路12dは、例示的に、ECU20にてコンデンサC1の容量が低下したと判定されない間、ON制御される(バイパス状態)。一方、コンデンサC1の容量が低下したと判定された場合、バイパス回路12dは、OFF制御される(非バイパス状態)。
【0072】
これにより、コンデンサC1の容量が低下してコンデンサC2で吸収し切れないL2C2共振電流が存在したとしても、回生電流阻止回路12cにて当該共振電流がFC11へ回生することを阻止することができる。したがって、L2C2共振電流によりFC11が逆充電されることを防止して、FC11の性能劣化を防止することができる。
【0073】
なお、バイパス回路12dをOFF制御する場合、ECU20は、補助スイッチS2をOFF制御してもよいし、ON状態に維持してもよい。ON状態に維持した場合には、コンデンサC1の容量が低下していても、補助回路12bによるソフトスイッチングを継続できる。
【0074】
〔6〕その他
上述した実施形態は、電源側からの主電流とは逆方向に共振電流が流れる電気経路を有しするDC−DCコンバータ(例えば、降圧コンバータ等の他の種類のコンバータ)に適用してもよい。また、上述した実施形態は、車載のDC−DCコンバータに限らず、パーソナルコンピュータや、オーディオビジュアル(AV)機器、携帯端末等の電気機器に搭載されているDC−DCコンバータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
2 駆動輪
10 電源システム(燃料電池システム)
11 燃料電池(FC)(直流電源)
12 FC昇圧コンバータ
12a 主回路
12b 補助回路(スナバ回路)
12c 回生電流阻止回路
12d バイパス回路
13 バッテリ
14 バッテリ昇圧コンバータ
15 インバータ
16 モータ
20 電子制御ユニット(ECU)(判定制御部)
21 アクセルペダルセンサ
120 接続点
121 電流センサ(電流検出部)
211 サンプリング処理部
222 ピークホールド処理部
212,223 比較・判定部
C1 入力コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 出力コンデンサ
D1〜D6
L1,L2,L3 リアクトル(コイル)
S1 スイッチング素子(メインスイッチ)
S2 スイッチング素子(補助スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に対して並列に接続されて電流共振現象に基づくソフトスイッチングの過程で生じる共振電流を吸収するコンデンサを有する共振型コンバータに用いられる装置であって、
前記直流電源と前記コンデンサとの間を流れる電流量を検出する電流検出部と、
前記電流検出部で検出された電流量が所定の閾値を下回ると、前記コンデンサの容量が低下したと判定する判定制御部と、
を備えた、共振型コンバータのコンデンサ容量低下を検出する装置。
【請求項2】
直流電源に対して並列に接続されて電流共振現象に基づくソフトスイッチングの過程で生じる共振電流を吸収するコンデンサを有する共振型コンバータに用いられる装置であって、
前記コンデンサの接続点と前記コンデンサとの間を流れる電流量を検出する電流検出部と、
前記電流検出部で検出された電流量が所定の閾値を下回ると、前記コンデンサの容量が低下したと判定する判定制御部と、
を備えた、コンデンサの容量低下を検出する装置。
【請求項3】
前記判定制御部は、
前記コンデンサの容量が低下したと判定すると、ON状態で前記共振電流を前記コンデンサに流通させるスイッチング素子をOFF制御する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記直流電源と前記コンデンサの接続点との間に、前記直流電源に向かう前記共振電流を阻止する電流阻止回路と、前記電流阻止回路をバイパスする電気経路上に設けられたバイパススイッチとをさらに備え、
前記判定制御部は、
前記コンデンサの容量が低下したと判定しない間は、前記バイパススイッチをON制御し、前記コンデンサの容量が低下したと判定すると、前記バイパススイッチをOFF制御する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−4466(P2011−4466A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143483(P2009−143483)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】