説明

共振型コンバータ装置

【課題】共振回路の損失とコストとを低減し且つ小型化できる共振型コンバータ装置。
【解決手段】直流リンクの正極側と負極側とに接続され、コンデンサC5とコンデンサC6との第1直列回路と、第1直列回路の両端に接続されスイッチQ1とスイッチQ2との直列回路と、Q1に並列に接続されたコンデンサC1と、Q2に並列に接続されたコンデンサC2と、第1直列回路の両端に接続されスイッチQ3とスイッチQ4との直列回路と、商用電力系統と、Q1とQ2との接続点及びQ3とQ4との接続点とに接続されたLC回路15と、C5とC6との接続点とQ1とQ2との接続点との間に接続されスイッチQ5,Q6と共振用リアクトルL3との直列回路と、Q1とQ2とをPWM制御すると共にQ3とQ4とを交互に180度期間オンさせ、Q1及びQ2がオフ期間にQ5,Q6をオンさせC1とC2とL3との共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行う制御回路13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率な電力変換器が求められている力率改善機能を有する共振型コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングロスを低減させる共振型電力変換装置の代表的な回路としては直流リンク電圧を切り離して共振を行う方式と直流リンク電圧を切り離さないで共振を行う方式とがある。
【0003】
図11は従来の直流リンク電圧を切り離す方式の共振型コンバータ装置の一例を示す図である。この共振型コンバータ装置は、フルブリッジを構成するMOSFETからなるスイッチQ1〜Q4とコンデンサC1〜C4とリアクトルL1,L2とコンデンサC5,C7と直流リンク電圧切り離し用スイッチQ6と共振用スイッチQ5と共振用リアクトルL3と共振用電圧を維持するためのコンデンサC6とを有して構成されている。
【0004】
なお、従来の関連技術として、例えば、特許文献1に記載された交流−直流変換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−84674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11に示す従来の共振型コンバータ装置は、リアクトルL3とスイッチQ1〜Q4に並列に接続されているコンデンサC1〜C4との共振動作によって、スイッチQ1〜Q4のソフトスイッチングを行い、スイッチングロスを低減することができる。しかし、共振回路において損失が発生してしまう。
【0007】
図11に示す回路構成では、共振動作を行うために直流リンク電圧を切り離す動作が必要となり、直流ラインに切り離し用スイッチQ6を接続しなければならない。このため、電流が常にスイッチQ6に流れてしまうため、大きな導通損失が発生してしまう。
【0008】
また、共振電流の周期が正弦波1周期となるため、実効電流が大きくなり、さらに共振動作において一定期間電圧を上昇させられないため、電圧利用率が低下する。
【0009】
本発明は、高効率な共振型コンバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、直流リンクの正極側と負極側とに接続され、第1コンデンサと第2コンデンサとからなる第1直列回路と、前記第1直列回路の両端に接続され、第1スイッチと第2スイッチとからなる第2直列回路と、前記第1スイッチに並列に接続された第3コンデンサと、前記第2スイッチに並列に接続された第4コンデンサと、前記第1直列回路の両端に接続され、第3スイッチと第4スイッチとからなる第3直列回路と、商用電力系統と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点及び前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続点とに接続され、リアクトルとコンデンサとからなるLC回路と、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの接続点と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点との間に接続され、双方向スイッチと共振用リアクトルとからなる第4直列回路と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとをPWM制御すると共に前記第3スイッチと前記第4スイッチとを交互に180度期間オンさせ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオフしている期間に前記双方向スイッチをオンさせ前記第3コンデンサと前記第4コンデンサと前記共振用リアクトルとの共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行う制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御回路は、第3スイッチと第4スイッチとを交互に180度期間オンさせるので、高周波スイッチングによる損失が発生しない。また、第3スイッチと第4スイッチはダイオードに電流が流れる時にオンするため、FETを使用すると同期整流効果により損失を低減することができる。また、制御回路は、第1スイッチ及び第2スイッチがオフしている期間に双方向スイッチをオンさせ、第3コンデンサと第4コンデンサと共振用リアクトルとの共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行うので、ターンオン損失が発生しない。これらにより、高効率な共振型コンバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の共振型コンバータ装置を示す回路図である。
【図2】実施例1の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の詳細を示す図である。
【図3】実施例1の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の指令値を変換する概念図である。
【図4】実施例1の共振型コンバータ装置の共振動作の概略図である。
【図5】実施例1の共振型コンバータ装置の共振電流の経路図である。
【図6】実施例1の共振型コンバータ装置の商用1周期の系統電流波形と共振リアクトル電流波形を示す図である。
【図7】実施例2の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の詳細を示す図である。
【図8】実施例2の制御回路において立ち下がり搬送波と正弦波電圧のゼロクロス時とに基づいてゲート信号を生成する様子を示す図である。
【図9】実施例3の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の詳細を示す図である。
【図10】実施例3の制御回路において立ち上がり搬送波と正弦波電圧のゼロクロス時とに基づいてゲート信号を生成する様子を示す図である。
【図11】従来の直流リンク電圧を切り離す方式の共振型コンバータ装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の共振型コンバータ装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1の共振型コンバータ装置を示す回路図である。図1に示す共振型コンバータ装置において、直流リンクの正極側と負極側とには、コンデンサC5(第1コンデンサ)とコンデンサC5と同容量のコンデンサC6(第2コンデンサ)との直列回路(第1直列回路)が接続され、コンデンサC5とコンデンサC6との接続点Bには、直流電圧VDC(直流リンク電圧VDC)の電圧の1/2の電圧が生成される。
【0015】
スイッチQ1〜Q6は、還流ダイオードを備えたMOSFET等の半導体スイッチング素子からなる。スイッチQ1(第1スイッチ)とスイッチQ2(第2スイッチ)とは直列に接続されてフルブリッジ構成のUアームを構成し、この直列回路(第2直列回路)の両端は第1直列回路の両端に接続されている。スイッチQ3(第3スイッチ)とスイッチQ4(第4スイッチ)とは直列に接続されてフルブリッジ構成のVアームを構成し、この直列回路(第3直列回路)の両端は第1直列回路の両端に接続されている。
【0016】
スイッチQ1のドレイン−ソース間には、コンデンサC1(第3コンデンサ)が接続され、スイッチQ2のドレイン−ソース間には、コンデンサC2(第4コンデンサ)が接続されている。スイッチQ1〜Q4及びコンデンサC1,C2で単相コンバータ回路を構成している。
【0017】
スイッチQ1とスイッチQ2との接続点AにはリアクトルL1の一端が接続され、スイッチQ3とスイッチQ4との接続点CにはリアクトルL2の一端が接続され、リアクトルL1,L2の他端にはコンデンサC7が接続されている。コンデンサC7と並列に系統(商用電力系統)Vacが接続され、系統Vacから共振型コンバータ装置へ力率1の電流を流す。
【0018】
リアクトルL1,L2及びコンデンサC7でLC回路15を構成している。スイッチQ5とスイッチQ6とで双方向スイッチ(交流スイッチともいう)を構成している。スイッチQ5のドレインとスイッチQ6のドレインとを接続するか、又はスイッチQ5のソースとスイッチQ6のソースとを接続して双方向スイッチを構成する。リアクトルL3(共振用リアクトル)はスイッチQ5,Q6に直列に接続されている。
【0019】
スイッチQ5,Q6とリアクトルL3との直列回路(第4直列回路)は、コンデンサC5とコンデンサC6との接続点Bと、スイッチQ1とスイッチQ2との接続点Aに接続されている。制御回路13は、ゲート信号によりスイッチQ1〜Q4をスイッチングさせて、コンデンサC7に接続された系統Vacから流れる電流を力率1の正弦波電流に制御する。
【0020】
次に実施例1の共振型コンバータ装置に適用される力率1の正弦波電流のゲート信号生成パターン(スイッチングパターン)について説明する。始めに、一般的に用いられる正弦波変調による生成方法について説明する。
【0021】
図3(b)の電圧Vun、電圧Vvnは、コンデンサC7の仮想中点n(図示せず)から見た電位である。電圧Vの添字uはスイッチQ1とスイッチQ2とで構成されるUアームを示し、電圧Vの添字vはスイッチQ3とスイッチQ4とで構成されるVアームを示している。電圧VuvはVuv=Vun−Vvnで表わすことができる。
【0022】
また、電圧Vvnは電圧Vunと180°位相が異なる操作量となり、結果的に電圧Vunとキャリア(搬送波信号)とを比較して生成されたゲート信号波形はスイッチQ1及びスイッチQ4、スイッチQ2及びスイッチQ3とが同等となる。キャリアを鋸波波形として考えると、Uアームの操作量VrとVアームの操作量Vsとキャリアとの関係は図3(a)のようになる。この時、コンデンサC7の両端電圧、即ち、線間電圧Vuvは、電圧Vunの2倍の振幅を持つ。
【0023】
次に図1に示す共振型コンバータ装置に適用しているゲート信号生成方法について述べる。系統電圧が正の電圧の時、VアームのスイッチQ4は、系統電圧が正の電圧の期間オンを継続させる。その時の操作量をSv*とした時、Sv*=−1として表すことができる。また、Uアームの操作量をSu*とした時、線間電圧に必要な正弦波指令Vrに−1を加えるとSu*=Vr−1と表すことができる。UアームとVアームの操作量の差が線間電圧に反映されるため、Su*−Sv*=Vrとなり、Vrが正弦波ならば、出力も正弦波となる。同様に系統電圧が負の電圧の時、VアームのスイッチQ3は系統電圧が負の電圧の期間オンを継続させる。その時の操作量をSv*とした時、Sv*=1として表すことができる。この時、線間電圧を生成するために必要な正弦波指令Vrに1を加えると、Su*=Vr+1となる。
【0024】
以上のような基準を生成すると、図3(c)のようなPWM比較となる。その結果、一般的に用いられる正弦波変調による生成方法と変わらない線間電圧を生成することができる。制御回路13は、系統電圧が正の電圧の期間、VアームのスイッチQ4のオンを継続させ、系統電圧が負の電圧の期間、スイッチQ3のオンを継続させる。また、スイッチQ3,Q4のゲート信号の切り替えは、系統電圧又は電流のゼロクロスで行うため、スイッチングする時はほぼゼロ電流スイッチング(ソフトスイッチング)となり、損失が発生しない。
【0025】
また、スイッチQ3,Q4は、系統周波数でのスイッチングとなり、高周波スイッチングを全く行わないため、スイッチングに関する損失は、スイッチQ3,Q4に何らかの外付けの部品を取り付けなくても共振型コンバータ装置と同等以上低減される効果がある。
【0026】
次に、UアームのスイッチQ1とスイッチQ2との損失低減について図4を参照しながら説明する。制御回路13は、スイッチQ1とスイッチQ2とのデットタイム期間中(スイッチQ1,Q2が共にオフである期間)に、双方向スイッチを構成するスイッチQ5,Q6を同時にオンさせる。
【0027】
系統電圧が正の電圧の時、スイッチQ1,Q2がオフしている時の電流の経路は、系統Vac→L1→Q1→C5、C6→Q4→L2→系統Vacとなる。スイッチQ1の還流ダイオードに電流が流れるため、スイッチQ1のドレイン−ソース間電圧はゼロとなる。このため、スイッチQ2をオンさせる時には、スイッチQ2のドレイン−ソース間に直流電圧VDCが印加され、スイッチングロスが発生する。
【0028】
そこで、スイッチQ2にスイッチングロスを発生させないために、スイッチQ2のスイッチングを行う直前のデットタイム期間中に、スイッチQ2のドレイン−ソース間電圧をゼロにする。
【0029】
スイッチQ1とスイッチQ2とのデットタイム期間中にスイッチQ5,Q6を同時にオンさせる(時刻t1)。この時、リアクトルL3には電流が流れていないため、スイッチQ5,Q6はゼロ電流スイッチングとなる。
【0030】
図1の直流電圧VDCの負極側の電位を基準にすると、B点電位はVDC/2、A点電位はVDCであるため、リアクトルL3にかかる電圧VABはVDC/2となる。リアクトルL3に流れる電流は、(VDC/2)/L3の傾きで上昇していく。
【0031】
そして、リアクトルL3の電流がリアクトルL1の電流の大きさに達した時、リアクトルL3とコンデンサC1,C2とで共振が起こる(時刻t2)。この時、スイッチQ2に並列に接続されているコンデンサC2の電荷が放出し、スイッチQ1に並列に接続されているコンデンサC1に電荷が流入する。
【0032】
この時の共振周期は、π√(L3×2×C1)となる。共振が完了した時(時刻t3)、A点電位はゼロとなっているため、その時にスイッチQ2をターンオンすることによってスイッチQ2のゼロ電圧スイッチング(ソフトスイッチング)を実現することができる。
【0033】
スイッチQ2をターンオンした後には、A点電位がゼロとなっているため、共振電流は(VDC/2)/L3の傾きで下降していく。リアクトルL3の電流がゼロに達した時(時刻t4)にスイッチQ5,Q6をターンオフすることによって、スイッチQ5,Q6の損失も低減できる。
【0034】
スイッチQ2がオンしている時の電流の経路は、系統Vac→L1→Q2→Q4→L2→系統Vacとなる。
【0035】
この状態において、スイッチQ2がオフした時には、コンデンサC1の電荷が放電して、コンデンサC2の電荷が上昇していく。このとき、スイッチQ2には、コンデンサC2のみが並列に接続されているため、スイッチングロスが発生しない。よって、スイッチQ2のターンオン,ターンオフの両方において、ソフトスイッチングを実現でき、スイッチング損失がなくなり、高効率が実現できる。
【0036】
次に、コンデンサC5とコンデンサC6との中間電位(B点電位)について説明する。理想の共振動作を行うためには、この中間電位は、直流電圧VDCの電圧の1/2の電圧で、バランスしなければならない。
【0037】
図5(a)、図5(b)は共振動作が行われている時の共振電流の流れを示した図である。例えば、図5(a)においてコンデンサC5の電圧が高く、コンデンサC6の電圧が低い時には、コンデンサC5の充電電流は小さく、コンデンサC6の放電電流も小さくなる。
【0038】
これに対して、コンデンサC5の電圧が低く、コンデンサC6の電圧が高い時には、コンデンサC6の放電電流は大きく、コンデンサC5の充電電流も大きくなる。
【0039】
また、図5(b)において、コンデンサC5の電位が高く、コンデンサC6の電位が低い時には、コンデンサC5の放電電流は大きく、コンデンサC6の充電電流も大きくなる。
【0040】
これに対して、コンデンサC5の電圧が低く、コンデンサC6の電圧が高い時には、コンデンサC5の放電電流は小さく、コンデンサC6の充電電流も小さくなる。
【0041】
即ち、コンデンサ電圧が小さい方のコンデンサは放電電流が小さく、充電電流が大きくなり、コンデンサ電圧が高い方のコンデンサは放電電流が大きく、充電電流が小さくなる特徴がある。このため、時間の経過とともにコンデンサC1の電圧とコンデンサC2の電圧とが互いに近づいていき、両者がバランスした後には、図6に示すように、リアクトルL3の共振電流(図6の共振電流波形)が、商用電力系統の半周期の放電電流と充電電流が同量となり、バランスし続ける。
【0042】
このように、直流電圧VDCの電圧の1/2の電圧を作るために構成されたコンデンサC5とコンデンサC6とのB点には商用電力系統の半周期毎に流出、流入が切り替わる制御となるため、商用電力系統の1周期では電圧がバランスする。このため、中間電位をバランスさせるための付属の回路等を必要としない。
【0043】
(制御回路の詳細)
次に、図2に示す制御回路13の詳細について説明する。制御回路13は、端子T1〜T12を有し、端子T1は直流リンクの正極側に接続され、端子T2はコンデンサC5とコンデンサC6との接続点Bに接続され、端子T3は直流リンクの負極側に接続されている。端子T4はスイッチQ1のゲートに接続され、端子T5はスイッチQ2のゲートに接続され、端子T6はスイッチQ3のゲートに接続され、端子T7はスイッチQ4のゲートに接続されている。端子T8はリアクトルL1に流れる電流(単相コンバータ回路の入力電流)を検出する電流センサ16に接続されている。端子T9はリアクトルL1とコンデンサC7との接続点に接続され、端子T10はリアクトルL2とコンデンサC7との接続点に接続されている。端子T11はスイッチQ5のゲートに接続され、端子T12はスイッチQ6のゲートに接続されている。
【0044】
まず、共振周期の演算について説明する。電流センサ16は、リアクトルL1に流れる電流を検出して端子T8に出力する。演算部24は、端子T8を介して入力される電流検出値IとリアクトルL3のインダクタンス値(L3で表すことにする)とを乗算して、乗算出力L3×Iを除算器25に出力する。
【0045】
電圧検出器21は、端子T2と端子T3との電圧、即ち直流電圧VDCの電圧の1/2の電圧V=VDC/2を検出し、除算器25に出力する。除算器25は、演算部24からの乗算出力L3×Iを電圧検出器21からの電圧Vで除算して、除算出力T=L3×I/V、即ち時間Tを求め、加算器26に出力する。
【0046】
加算器26は除算器25からの時間(第1周期)Tと時間(第2周期)T=π√(L3×2C1)とを加算し、加算器26aは、搬送波信号の振幅を2とすると、2[1−{(T+T)/T}]の演算を行い、その演算結果を図4に示すような共振スイッチ指令イとしてコンパレータ27aに出力する。また、除算器25からの時間Tは、2/T倍されて、図4に示すような共振スイッチ指令ロとしてコンパレータ27bに出力される。
【0047】
位相シフト部29は、立ち上がり搬送波部30aからの立ち上がり搬送波信号(周期T)を例えば数μ秒だけ位相シフトしてコンパレータ27a,27bに出力する。搬送波信号の周波数は、系統周波数より非常に高く例えば、20kHzである。なお、位相シフト部29は省略しても良い。
【0048】
ここで、図4に示す時刻t1において、位相シフト部29で位相シフトされた立ち上がり搬送波部30aからの立ち上がり搬送波信号の値が共振スイッチ指令イの値に達する。このため、コンパレータ27aがHレベルをオア回路28に出力するので、スイッチQ5とスイッチQ6とがオンする。なお、このとき、スイッチQ1とスイッチQ2とはオフ状態である。
【0049】
すると、リアクトルL3に流れる電流は、リアクトルL1,L2に流れる電流と同量になるまで(VDC/2)/L3の傾きで上昇する。このときの時間Tは(時刻t1〜時刻t2までの時間)、L3×I/(VDC/2)=L3×I/Vとなる。リアクトルL3の電流が、リアクトルL1,L2に流れる電流に達した後には共振動作となり、コンデンサC1,C2の容量をC1で表すと、その周期はT=π√(L3×2C1)、即ち、時刻t2〜時刻t3までの時間となる。
【0050】
ここで、2C1としたのは、コンデンサC1とコンデンサC2とが同一容量で、コンデンサC1とコンデンサC2とが交流的には、並列に接続されているからである。またπとしたのは、半周期分を表す。
【0051】
リアクトルL3とコンデンサC1,C2との共振動作によって、スイッチQ2のドレイン−ソース間電圧がゼロになるため、スイッチQ2をターンオンする。その後、リアクトルL3の電流は、(VDC/2)/L3の傾きで減少してゆき、時刻t4においてゼロとなる。このとき、立ち上がり搬送波信号の値が共振スイッチ指令ロの値に達する。このため、コンパレータ27a,27bが共にLレベルをオア回路28に出力すので、スイッチQ5とスイッチQ6とがオフする。
【0052】
次に正弦波電流制御に関する正弦波指令生成回路は、電圧検出器31、直流リンク電圧基準値、加算器51、PI部52、乗算器33、加算器34及びPI部35からなる。PWM生成回路(第1PWM生成回路)は、変換器37、コンパレータ38a、インバータ40a及びデットタイム部41aからなる。オン信号生成回路(第1オン信号生成回路)は、変換器37、コンパレータ38b、インバータ40b及びデットタイム部41bからなる。
【0053】
加算器51は、電圧検出器21で検出された端子T1と端子T3との間の直流リンク電圧VDCと直流リンク電圧基準値との偏差を求め、この偏差出力をPI部52で比例積分して乗算器33に出力する。
【0054】
電圧検出器31は、端子T9と端子T10とを介してコンデンサC7の両端電圧から系統Vacの正弦波電圧(系統電圧)を検出する。乗算器33は、電圧検出器31からの正弦波電圧とPI部52からのPI出力とを乗算する。加算器34は、乗算器33からの乗算出力(正弦波電流指令値)と電流センサ16で検出された正弦波電流との偏差を求め、PI部35に出力する。PI部35は、加算器34からの偏差出力を比例積分してその出力を正弦波指令Vrとして変換部37に出力する。
【0055】
ゼロクロス切替判別部32は、電圧検出器31からの正弦波電圧と電流センサ16で検出された正弦波電流とのゼロクロスを判別して、正弦波電圧及び正弦波電流がゼロクロスに対して正か負かを示す切替信号を切替器23,36,39に出力する。
【0056】
切替器36は、電圧検出器31からの正弦波電圧又は電流センサ16で検出された正弦波電流が正のとき、接片36aを選択して、変換部37は、PI部35からの正弦波指令Vrを操作量(第1操作量)Suж=Vr−1、操作量(第3操作量)Svж=−1に変換する。切替器36は、電圧検出器31からの正弦波電圧又は電流センサ16で検出された正弦波電流が負のとき、接片36bを選択して、変換部37は、PI部35からの正弦波指令Vrを操作量(第2操作量)Suж=Vr+1、操作量(第4操作量)Svж=1に変換する。
【0057】
切替器39は、電圧検出器31からの正弦波電圧又は電流センサ16で検出された正弦波電流が正のとき、接片SW2を選択して、立ち下がり搬送波部30bからの立ち下がり搬送波信号を出力し、電圧検出器31からの正弦波電圧又は電流センサ16で検出された正弦波電流が負のとき、接片SW1を選択して、立ち上がり搬送波部30aからの立ち上がり搬送波信号(周期T)を出力する。
【0058】
立ち上がり搬送波部30aは、図3(c)の後半の半周期に示すような鋸波からなる立ち上がり搬送波信号を切替器39の接片SW1を介してコンパレータ38a,38bの反転入力端子に出力する。立ち下がり搬送波部30bは、図3(c)の前半の半周期に示すような鋸波からなる立ち下がり搬送波信号を切替器39の接片SW2を介してコンパレータ38a,38bの反転入力端子に出力する。
【0059】
コンパレータ38aは、系統Vacの正弦波電圧又は正弦波電流が正であるとき、即ち、接片36aが選択され且つ接片SW2が選択されたときには、図3(c)の前半の半周期に示すように、第1操作量(Vr−1)が立ち下がり搬送波信号の値以上であるとき、Hレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ1のゲートに出力してオンさせ、Hレベルをインバータ40aで反転してLレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ2のゲートに出力してオフさせる。また、コンパレータ38aは、第1操作量(Vr−1)が立ち下がり搬送波信号の値未満であるとき、Lレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ1のゲートに出力してオフさせ、Lレベルをインバータ40aで反転してHレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ2のゲートに出力してオンさせる。
【0060】
また、コンパレータ38bは、系統Vacの正弦波電圧又は正弦波電流が正であるとき、即ち、接片36aが選択され且つ接片SW2が選択されたときには、図3(c)の前半の半周期に示すように、第3操作量(−1)が立ち上がり搬送波信号の値以下であるので、Hレベルをデットタイム部41bを介してスイッチQ4のゲートに出力してオンさせ、Hレベルをインバータ40bで反転してLレベルをデットタイム部41bを介してスイッチQ3のゲートに出力してオフさせる。
【0061】
コンパレータ38aは、系統Vacの正弦波電圧又は正弦波電流が負であるとき、即ち、接片36bが選択され且つ接片SW1が選択されたときには、図3(c)の後半の半周期に示すように、第2操作量(Vr+1)が立ち上がり搬送波信号の値以上であるとき、Hレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ1のゲートに出力してオンさせ、Hレベルをインバータ40aで反転してLレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ2のゲートに出力してオンさせる。コンパレータ38aは、第2操作量(Vr+1)が立ち上がり搬送波信号の値未満であるとき、Lレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ1のゲートに出力してオフさせ、Lレベルをインバータ40aで反転してHレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ2のゲートに出力してオンさせる。
【0062】
コンパレータ38bは、系統Vacの正弦波電圧又は正弦波電流が負であるとき、即ち、接片36bが選択され且つ接片SW1が選択されたときには、図3(c)の後半の半周期に示すように、第4操作量(+1)が立ち下がり搬送波信号の値以上であるとき、Hレベルをデットタイム部41aを介してスイッチQ3のゲートに出力してオンさせ、Hレベルをインバータ40bで反転してLレベルをデットタイム部41bを介してスイッチQ4のゲートに出力してオフさせる。
【0063】
このため、スイッチQ1とスイッチQ2とはPWM信号により交互にオン/オフされる。スイッチQ3とスイッチQ4とはオン信号により系統周期で180度交互にオン/オフされる。
【0064】
指令値変換及び搬送波信号はゼロクロスによって切り替えることによって、ソフトスイッチングを行いながら、正弦波出力を実現することができる。
【0065】
このように実施例1の共振型コンバータ装置によれば、制御回路13は、スイッチQ3とスイッチQ4とを交互に180度期間オンさせるので、高周波スイッチングによる損失が発生しない。また、制御回路13は、スイッチQ1及びスイッチQ2がオフしている期間に双方向スイッチを構成するスイッチQ5,Q6をオンさせ、コンデンサC1とコンデンサC2とリアクトルL3との共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行うので、ターンオン損失が発生しない。これらにより、高効率を実現できる。
【0066】
また、制御回路13は、系統電圧が正の電圧の期間にスイッチQ4のオンを継続させ、系統電圧が負の電圧の期間にスイッチQ3のオンを継続させ、スイッチQ3及びスイッチQ4のスイッチングパターンに基づき、系統Vacに正弦波電流を流すように、スイッチQ1及びスイッチQ2のスイッチングパターンを生成するので、力率1の正弦波電流を系統Vacに流すことができる。
【0067】
また、コンパレータ27a,27bは、リアクトルL1に流れる電流と、リアクトルL3のインダクタンス値と、コンデンサC5とコンデンサC6との接続点Bと第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点Aとの間の電圧とに基づく第1周期T1と、リアクトルL3のインダクタンス値とコンデンサC1及びコンデンサC2の容量値とに基づく第2周期T2と、立ち上がり搬送波信号(周期T)とに基づきスイッチQ5,Q6のオン/オフを制御するので、スイッチQ1及びスイッチQ2がオフしている期間にスイッチQ5,Q6をオンさせ、コンデンサC1とコンデンサC2とリアクトルL3との共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行うことができる。
【0068】
また、直流ラインにスイッチを設けることがないため、装置の損失が低減される。直流ラインやフルブリッジを構成するスイッチよりも低耐圧のスイッチを共振回路に使用できるため、スイッチQ5とスイッチQ6にMOSFETを使用した時、スイッチQ5とスイッチQ6のオン抵抗の総和は高耐圧のスイッチのオン抵抗よりも小さくでき、導通損失を低減できる。
【0069】
また、単相フルブリッジ構成のVアームは制御によって損失を低減し、残りのUアームはゼロ電流スイッチング、ゼロ電圧スイッチング等の損失低減手段を用いた回路を最小の部品点数で実現することができる。
【実施例2】
【0070】
図7は実施例2の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の詳細を示す図である。実施例1の制御回路13によるスイッチQ1〜Q4へのゲート信号の生成においては、図2及び図8(a)に示すように、立ち上がり及び立ち下がり搬送波信号と正弦波指令Vrとを系統電圧のゼロクロスで切り替える必要があった。即ち、系統電圧が正の電圧の期間では、立ち上がり搬送波信号と第1操作量(Vr−1)と第3操作量(−1)とを用い、系統電圧が負の電圧の期間では、立ち下がり搬送波信号と第2操作量(Vr+1)と第4操作量(+1)とを用いた。
【0071】
これにより、図8(a)に示すスイッチQ1へのゲート信号Q1gが生成される。また、ゲート信号Q1gを反転した信号がスイッチQ2へのゲート信号Q2gである(図示せず)。また、系統電圧が正の電圧の期間では、スイッチQ4へのゲート信号Q4gがオン(レベルが1)であり、系統電圧が負の電圧の期間では、スイッチQ3へのゲート信号Q3gがオン(レベルが1)である。
【0072】
これに対して、実施例2では、図8(b)に示すように、系統電圧が正負の電圧に関係なく、立ち下がり搬送波信号と系統電圧である正弦波電圧及びリアクトルL1に流れる正弦波電流を正極性の絶対値電圧に変換してPI部35で生成された正極性絶対値指令(正極性の全波整流電圧)|Vr|と|Vr|に基づく第5操作量(|Vr|−1)、即ちSu*と第3操作量(−1)、即ち、Sv*とを用いた。
【0073】
また、系統電圧のゼロクロス時に、Uアーム及びVアームの各アームの上側スイッチQ1,Q3に対応した切替スイッチ45a,45cの端子aと端子bとを切り替え、下側スイッチに対応した切替スイッチ45b,45dの端子aと端子bとを切り替えることにより、図8(a)に示すゲート信号Q1g〜Q4gと同じゲート信号を生成することを特徴とする。切替スイッチ45a〜45dについては、後述する。
【0074】
以下、図8(b)に示す正極性絶対値指令|Vr|に基づく第5操作量(|Vr|−1)と第3操作量(−1)とに基づきゲート信号Q1g〜Q4gを生成する構成及び動作を説明する。
【0075】
図7に示す実施例2の制御回路13aは、図2に示す実施例1の制御回路13の構成に対して、正極性絶対値変換部(ABS部)42,43、ゼロクロス切替判別部32a、立ち下り搬送波部30b、切替器45が異なる。
【0076】
ABS部42は、電圧検出器31で検出された正弦波電圧を正極性の絶対値電圧に変換する。ABS部43は、電流センサ16で検出された正弦波電流を正極性の絶対値電流に変換する。乗算器33は、ABS部42からの正極性の絶対値電圧とPI部52からの出力とを乗算する。加算器34は、乗算器33からの乗算出力(正極性絶対値電流指令)とABS部43からの正極性の絶対値電流との偏差を求め、PI部35に出力する。PI部35は、加算器34からの偏差出力を比例積分してその出力を正極性絶対値指令|Vr|として出力する。
【0077】
ゼロクロス切替判別部32aは、電圧検出器31からの正弦波電圧と電流センサ16で検出された正弦波電流とのゼロクロスを判別して、正弦波電圧及び正弦波電流がゼロクロスに対して正か負かを示す切替信号を切替器45に出力する。立ち下がり搬送波部30bは、図8(b)に示すような鋸波からなる立ち下がり搬送波信号をコンパレータ38a,38bの反転入力端子に出力する。
【0078】
コンパレータ38aは、PI部35からの正極性絶対値指令|Vr|に基づく第5操作量(|Vr|−1)が立ち下がり搬送波信号の値以上であるとき、Hレベルをデットタイム部41aを介して出力Dに出力し、Lレベルをインバータ40a及びデットタイム部41aを介して出力Eに出力する。コンパレータ38aは、PI部35からの正極性絶対値指令|Vr|に基づく第5操作量(|Vr|−1)が立ち下がり搬送波信号の値未満であるとき、Lレベルをデットタイム部41aを介して出力Dに出力し、Hレベルをインバータ40a及びデットタイム部41aを介して出力Eに出力する。即ち、図8(b)からもわかるように、出力D,EからPWM信号が出力される。
【0079】
コンパレータ38bは、立ち下がり搬送波信号が第3操作量(−1)の値以上であるので、Lレベルをデットタイム部41bを介して出力Fに出力し、Hレベルをインバータ40b及びデットタイム部41bを介して出力Gに出力する。
【0080】
切替器45は、切替スイッチ45a〜45dを有している。切替スイッチ45a〜45dの各端子cは、各スイッチQ1〜Q4のゲートに接続され、端子a,bはゼロクロス切替判別部32aからの切替信号により選択される。
【0081】
切替スイッチ45aは、ゼロクロス切替判別部32aからの切替信号に基づき正弦波電圧が正の期間(時刻t0〜t1)では、端子aを選択して、デットタイム部41aの出力DからPWM信号をゲート信号Q1gとしてスイッチQ1に出力し、切替信号に基づき正弦波電圧が負の期間(時刻t1〜t2)では、端子bを選択して、デットタイム部41aの出力EからPWM信号を反転した信号をゲート信号Q1gとしてスイッチQ1に出力する。このときのゲート信号波形を、図8(b)のQ1gで示している。
【0082】
切替スイッチ45bは、正弦波電圧が正の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41aの出力EからPWM信号を反転した信号をスイッチQ2に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41aの出力DからPWM信号をスイッチQ2に出力する。
【0083】
切替スイッチ45cは、正弦波電圧が正の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41bの出力FからLレベル(オフ信号)をゲート信号Q3gとしてスイッチQ3に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41bの出力GからHレベル(オン信号)をゲート信号Q3gとしてスイッチQ3に出力する。
【0084】
切替スイッチ45dは、正弦波電圧が正の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41bの出力GからHレベルをゲート信号Q4gとしてスイッチQ4に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41bの出力FからLレベルをゲート信号Q4gとしてスイッチQ4に出力する。
【0085】
このように、実施例2の制御回路13aによれば、立ち下がり搬送波信号と正極性絶対値指令|Vr|と第5操作量(|Vr|−1)と第3操作量(−1)とを用い、系統電圧のゼロクロス時に、Uアーム及びVアームの各アームの上側スイッチQ1,Q3に対応した切替スイッチ45a,45cの端子aと端子bとを切り替え、下側スイッチQ2,Q4に対応した切替スイッチ45b,45dの端子aと端子bとを切り替えるので、図8(a)に示すゲート信号Q1g〜Q4gと同じゲート信号を生成できる。また、立ち下がり搬送波部30bのみで済む。
【0086】
また、実施例1では、正弦波電圧のゼロクロスによって、第1操作量(Vr−1),第3操作量(−1)と第2操作量(Vr+1),第4操作量(+1)とを、切り替えていたが、実施例2では、第5操作量(|Vr|−1),第3操作量(−1)のみを用いるので、操作量の切り替えが不要であるとともに、構成が簡単になる。従って、共振型コンバータ装置を小型化できる。
【実施例3】
【0087】
図9は実施例3の共振型コンバータ装置に設けられた制御回路の詳細を示す図である。実施例3では、図10に示すように、系統電圧が正負の電圧に関係なく、立ち上がり搬送波信号と系統電圧である正弦波電圧及びリアクトルL1に流れる正弦波電流を負極性の絶対値電圧に変換してPI部35で生成された負極性絶対値指令(負極性の全波整流電圧)|Vr|と第6操作量(|Vr|+1)と第4操作量(+1)とを用いた。また、系統電圧のゼロクロス時に、Uアーム及びVアームの各アームの上側スイッチQ1,Q3に対応した切替スイッチ45a,45cの端子aと端子bとを切り替え、下側スイッチQ2,Q4に対応した切替スイッチ45b,45dの端子aと端子bとを切り替えることにより、図8(a)に示すゲート信号Q1g〜Q4gと同じゲート信号を生成することを特徴とする。
【0088】
以下、図10に示す負極性絶対値指令|Vr|に基づく第6操作量(|Vr|+1)と第4操作量(+1)とに基づきゲート信号Q1g〜Q4gを生成する構成及び動作を説明する。
【0089】
図9に示す実施例3の制御回路13bは、図7に示す実施例2の制御回路の構成に対して、立ち上がり搬送波部30aと第6操作量(|Vr|+1)と第4操作量(+1)と除算器25〜コンパレータ27a,27b間接続とが異なる。
【0090】
立ち上がり搬送波部30aは、図10に示すような鋸波からなる立ち上がり搬送波信号をコンパレータ38a,38bの反転入力端子に出力する。
【0091】
コンパレータ38aは、PI部35からの負極性絶対値指令|Vr|に基づく第6操作量(|Vr|+1)が立ち上がり搬送波信号の値以上であるとき、Hレベルをデットタイム部41aを介して出力Dに出力し、Lレベルをインバータ40a及びデットタイム部41aを介して出力Eに出力する。コンパレータ38aは、PI部35からの負極性絶対値指令|Vr|に基づく第6操作量(|Vr|+1)が立ち上がり搬送波信号の値未満であるとき、Lレベルをデットタイム部41aを介して出力Dに出力し、Hレベルをインバータ40a及びデットタイム部41aを介して出力Eに出力する。即ち、図10からもわかるように、出力D,EからPWM信号が出力される。
【0092】
コンパレータ38bは、立ち上がり搬送波信号が第4操作量(+1)の値以下であるので、Hレベルをデットタイム部41bを介して出力Fに出力し、Lレベルをインバータ40b及びデットタイム部41bを介して出力Gに出力する。
【0093】
切替スイッチ45aは、ゼロクロス切替判別部32aからの切替信号に基づき正弦波電圧が正の期間(時刻t0〜t1)では、端子bを選択して、デットタイム部41aの出力EからPWM信号をゲート信号Q1gとしてスイッチQ1に出力し、切替信号に基づき正弦波電圧が負の期間(時刻t1〜t2)では、端子aを選択して、デットタイム部41aの出力DからPWM信号を反転した信号をゲート信号Q1gとしてスイッチQ1に出力する。このときのゲート信号波形を、図10のQ1gで示している。
【0094】
切替スイッチ45bは、正弦波電圧が正の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41aの出力DからPWM信号を反転した信号をスイッチQ2に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41aの出力EからPWM信号をスイッチQ2に出力する。
【0095】
切替スイッチ45cは、正弦波電圧が正の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41bの出力GからLレベルをゲート信号Q3gとしてスイッチQ3に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41bの出力FからHレベルをゲート信号Q3gとしてスイッチQ3に出力する。
【0096】
切替スイッチ45dは、正弦波電圧が正の期間では、端子aを選択して、デットタイム部41bの出力FからHレベルをゲート信号Q4gとしてスイッチQ4に出力し、正弦波電圧が負の期間では、端子bを選択して、デットタイム部41bの出力GからLレベルをゲート信号Q4gとしてスイッチQ4に出力する。
【0097】
立ち上がり搬送波信号の場合には、除算器25の出力とコンパレータ27a,27bの入力との間の接続が立ち下がり搬送波信号(実施例2)の場合と異なる。即ち、立ち上がり搬送波信号の場合には、図9に示すように、除算器25の出力とコンパレータ27bの入力側の2/Tとの間に、加算器26が設けられ、この加算器26が第1周期Tと第2周期T=π√(L3×2C1)とを加算して出力する。
【0098】
このように、実施例3の制御回路13bによれば、立ち上がり搬送波信号と負極性絶対値指令|Vr|と第6操作量(|Vr|+1)と第4操作量(+1)とを用い、系統電圧のゼロクロス時に、Uアーム及びVアームの各アームの上側スイッチQ1,Q3に対応した切替スイッチ45a,45cの端子aと端子bとを切り替え、下側スイッチQ2,Q4に対応した切替スイッチ45b,45dの端子aと端子bとを切り替えるので、図10に示すゲート信号Q1g〜Q4gと同じゲート信号を生成できる。また、立ち上がり搬送波部30aのみで済む。
【0099】
また、実施例3では、第6操作量(|Vr|+1),第4操作量(+1)のみを用いるので、操作量の切り替えが不要であるとともに、構成が簡単になる。従って、共振型コンバータ装置を小型化できる。
【0100】
なお、実施例1〜3では、スイッチQ1〜Q6としてMOSFETを用いたが、これに代えて、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やトランジスタ及びこれに並列に接続されたダイオードを用いても良い。
【0101】
また、実施例2,3では、ABS部42,42aを乗算器33の入力側に設け、ABS部43,43aを加算器34の入力側に設けたが、これらの代わりに、ABS部をPI部35の出力側に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、交流を直流に変換するコンバータに適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
C1〜C7 コンデンサ
L1〜L3 リアクトル
Q1〜Q6 スイッチ
13 制御回路
15 LC回路
16 電流センサ
21,31 電圧検出器
23,36,39 切替器
25 除算器
26,34,51 加算器
27a,27b,38a,38b コンパレータ
28 オア回路
29 位相シフト部
30a 立ち上がり搬送波部
30b 立ち下がり搬送波部
32 ゼロクロス切替判別部
33 乗算器
35,52 PI部
37 変換部
40a,40b インバータ
41a,41b デットタイム部
50 直流電圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流リンクの正極側と負極側とに接続され、第1コンデンサと第2コンデンサとからなる第1直列回路と、
前記第1直列回路の両端に接続され、第1スイッチと第2スイッチとからなる第2直列回路と、
前記第1スイッチに並列に接続された第3コンデンサと、
前記第2スイッチに並列に接続された第4コンデンサと、
前記第1直列回路の両端に接続され、第3スイッチと第4スイッチとからなる第3直列回路と、
商用電力系統と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点及び前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続点とに接続され、リアクトルとコンデンサとからなるLC回路と、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの接続点と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点との間に接続され、双方向スイッチと共振用リアクトルとからなる第4直列回路と、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとをPWM制御すると共に前記第3スイッチと前記第4スイッチとを交互に180度期間オンさせ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオフしている期間に前記双方向スイッチをオンさせ前記第3コンデンサと前記第4コンデンサと前記共振用リアクトルとの共振動作によりゼロ電圧スイッチングを行う制御回路と、
を備えることを特徴とする共振型コンバータ装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記商用電力系統の正弦波電圧が正の期間に前記第4スイッチのオンを継続させ、前記商用電力系統の正弦波電圧が負の期間に前記第3スイッチのオンを継続させ、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチのスイッチングパターンに基づき、前記商用電力系統の正弦波電圧の位相と同位相の正弦波電流を入力するように、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのスイッチングパターンを生成することを特徴とする請求項1記載の共振型コンバータ装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記商用電力系統の正弦波電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された正弦波電圧のゼロクロスを判別し、正弦波電圧がゼロクロスに対して正か負かを示す切替信号を出力するゼロクロス切替判別部と、
前記商用電力系統の正弦波電圧の位相と同位相の正弦波電流を生成するための正弦波指令Vrを出力する正弦波指令生成回路と、
鋸波からなる立ち上がり搬送波信号及び立ち下り搬送波信号を生成する搬送波部と、
前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、前記正弦波指令Vrに基づく第1操作量(Vr−1)と前記立ち下がり搬送波信号とを比較することで第1PWM信号を生成して前記第1スイッチに出力し且つ前記第1PWM信号を反転した信号を前記第2スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、前記正弦波指令Vrに基づく第2操作量(Vr+1)と前記立ち上がり搬送波信号とを比較することで第2PWM信号を生成して前記第1スイッチに出力し且つ前記第2PWM信号を反転した信号を前記第2スイッチに出力する第1PWM生成回路と、
を有することを特徴とする請求項2記載の共振型コンバータ装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、第3操作量(−1)と前記立ち下がり搬送波信号とを比較することで第1オン信号を生成して前記第4スイッチに出力し且つ前記第1オン信号を反転した信号を前記第3スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、第4操作量(+1)と前記立ち上がり搬送波信号とを比較することで第2オン信号を生成して前記第3スイッチに出力し且つ前記第2オン信号を反転した信号を前記第4スイッチに出力する第1オン信号生成回路と、
を有することを特徴とする請求項3記載の共振型コンバータ装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記商用電力系統の正弦波電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された正弦波電圧を正極性の絶対値電圧に変換する正極性絶対値変換部と、
前記電圧検出器で検出された正弦波電圧のゼロクロスを判別し、正弦波電圧がゼロクロスに対して正か負かを示す切替信号を出力するゼロクロス切替判別部と、
前記正極性絶対値変換部からの正極性の絶対値電圧の位相と同位相の絶対値電流を生成するための正極性絶対値指令|Vr|を出力する正極性絶対値指令生成回路と、
鋸波からなる立ち下がり搬送波信号を生成する立ち下がり搬送波部と、
前記正極性絶対値指令|Vr|に基づく第5操作量(|Vr|−1)と前記立ち下がり搬送波信号とを比較することで第3PWM信号を生成し且つ前記第3PWM信号を反転した信号を生成する第2PWM生成回路と、
前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、前記第3PWM信号を前記第1スイッチに出力し前記第3PWM信号を反転した信号を前記第2スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、前記第3PWM信号を前記第2スイッチに出力し前記第3PWM信号を反転した信号を前記第1スイッチに出力する切替器と、
を有することを特徴とする請求項2記載の共振型コンバータ装置。
【請求項6】
前記制御回路は、第3操作量(−1)と前記立ち下がり搬送波信号とを比較することで第3オン信号を生成し且つ前記第3オン信号を反転した信号を生成する第2オン信号生成回路を有し、
前記切替器は、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、前記第3オン信号を反転した信号を前記第3スイッチに出力し前記第3オン信号を前記第4スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、前記第3オン信号を前記第3スイッチに出力し前記第3オン信号を反転した信号を前記第4スイッチに出力することを特徴とする請求項5記載の共振型コンバータ装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記商用電力系統の正弦波電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された正弦波電圧を負極性の絶対値電圧に変換する負極性絶対値変換部と、
前記電圧検出器で検出された正弦波電圧のゼロクロスを判別し、正弦波電圧がゼロクロスに対して正か負かを示す切替信号を出力するゼロクロス切替判別部と、
前記負極性絶対値変換部からの負極性の絶対値電圧の位相と同位相の絶対値電流を生成するための負極性絶対値指令|Vr|を出力する負極性絶対値指令生成回路と、
鋸波からなる立ち上がり搬送波信号を生成する立ち上がり搬送波部と、
前記負極性絶対値指令|Vr|に基づく第6操作量(|Vr|+1)と前記立ち上がり搬送波信号とを比較することで第4PWM信号を生成し且つ前記第4PWM信号を反転したPWM反転信号を生成する第3PWM生成回路と、
前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、前記第4PWM信号を前記第2スイッチに出力し前記第4PWM信号を反転した信号を前記第1スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、前記第4PWM信号を前記第1スイッチに出力し前記第4PWM信号を反転した信号を前記第2スイッチに出力する切替器と、
を有することを特徴とする請求項2記載の共振型コンバータ装置。
【請求項8】
前記制御回路は、第4操作量(+1)と前記立ち上がり搬送波信号とを比較することで第4オン信号を生成し且つ前記第4オン信号を反転した信号を生成する第3オン信号生成回路を有し、
前記切替器は、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が正の期間では、前記第4オン信号を反転した信号を前記第3スイッチに出力し前記第4オン信号を前記第4スイッチに出力し、前記切替信号に基づき前記正弦波電圧が負の期間では、前記第4オン信号を前記第3スイッチに出力し前記第4オン信号を反転した信号を前記第4スイッチに出力することを特徴とする請求項7記載の共振型コンバータ装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記LC回路のリアクトルに流れる電流と、前記共振用リアクトルのインダクタンス値と、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの接続点と前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点との間の電圧とに基づく第1周期と、前記共振用リアクトルのインダクタンス値と前記第3コンデンサ及び第4コンデンサの容量値とに基づく第2周期と、前記立ち上がり搬送波信号若しくは前記立ち下り搬送波信号とに基づき前記双方向スイッチのオン/オフを制御する双方向スイッチ制御回路を有することを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれか1項記載の共振型コンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−78179(P2011−78179A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225274(P2009−225274)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】