説明

共重合ポリ乳酸およびその製造方法

【課題】 ポリ乳酸単独のガラス転位温度よりも高く耐熱性に優れ、成形サイクルの短縮が可能な成形材料を提供する。
【解決手段】 乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)、芳香族アルコール成分(b2)、および芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)の少なくとも一つの成分からなる芳香族ポリエステル構成単位(B)が、(A)/(B)=20/80〜95/5(モル比)の割合で共重合されてなる共重合ポリ乳酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス転位温度(Tg)が65℃以上の耐熱性に優れた共重合ポリ乳酸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、生分解性樹脂、特に、ポリ乳酸を利用した商品の開発が行われている。しかしながら、L−ポリ乳酸のTgは58℃と通常の樹脂に比べて低く、成形サイクルが長くなるなど成形材料として取り扱うには問題があった。(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2003−238788号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、Tgがポリ乳酸よりも高く、成形サイクルの短縮が可能な成形材料として優れた特性を有する共重合ポリ乳酸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリ乳酸に、芳香族ポリエステル構成単位を導入することにより、共重合ポリ乳酸のTgが、ポリ乳酸単独のTgよりも格段に上がることを見出し、さらには、その重合方法として、ポリ乳酸をアシドリシス後、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)、芳香族アルコール成分(b2)、および芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)の少なくとも一つの成分からなる芳香族ポリエステル構成単位(B)が、(A)/(B)=20/80〜95/5(モル比)の割合で共重合されてなることを特徴とする共重合ポリ乳酸。
(2)ポリ乳酸を芳香族カルボン酸でアシドリシス後、芳香族アルコールと共に、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。
(3)ポリ乳酸を芳香族ヒドロキシカルボン酸でアシドリシス後、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。
(4)ポリ乳酸を芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸でアシドリシス後、芳香族アルコールと共に、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の共重合ポリ乳酸は、Tgがポリ乳酸よりも高く、成形サイクルの短縮が可能な成形材料として優れた特性を有する共重合ポリ乳酸が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の共重合ポリ乳酸は、乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)、芳香族アルコール成分(b2)、および芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)の少なくとも一つの成分からなる芳香族ポリエステル構成単位(B)が、(A)/(B)=20/80〜95/5(モル比)の割合で共重合されてなるものである。
【0009】
本発明の共重合ポリ乳酸において、乳酸からなる構成単位(A)の割合は、共重合ポリ乳酸全体に対して、20〜95モル%であることが必要であり、30〜85モル%がより好ましく、40〜75モル%がさらに好ましい。
乳酸からなる構成単位(A)の割合が20モル%よりも少ない場合には、芳香族ポリエステル構成成分の適切な重合温度においてポリ乳酸が分解しやすくなり好ましくない。
【0010】
本発明の共重合ポリ乳酸において、乳酸からなる構成単位(A)の共重合成分が、芳香族カルボン酸成分(b1)と芳香族アルコール成分(b2)の2成分からなる場合には、共重合ポリ乳酸全体に占める(b1)と(b2)のモル比の割合は、40:60〜60:40にすることが好ましく、45:55〜55:45にすることがより好ましく、50:50にすることが最も好ましい。各成分の割合が上記の範囲をはずれると、得られる共重合ポリ乳酸の重合度が上がらないので好ましくない。
【0011】
本発明の共重合ポリ乳酸において、乳酸からなる構成単位(A)の共重合成分が、芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)を含む場合には、共重合ポリ乳酸全体に占める(b3)の割合は90モル%以下が好ましく、より好ましくは55モル%以下、35モル%以下とすることが最適である。
【0012】
本発明の共重合ポリ乳酸を構成する、乳酸からなる構成単位(A)としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を出発物質として用いることができる。
【0013】
ポリ乳酸の重合方法としては、縮重合法、開環重合法などの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合することができる。また、開環重合法では乳酸の環状2量体であるラクチドを、オクチル酸錫等の触媒を使用して重合することができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することができる。
【0014】
また、ポリ乳酸の分子量を増大させるために少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを使用することもできる。
【0015】
ポリ乳酸の重量平均分子量は通常5万〜100万の範囲にあるものを用いることができ、このような分子量を有するポリ乳酸は、たとえば、カーギルダウ社、三井化学等から販売されている。
【0016】
また、本発明において、乳酸からなる構成単位(A)を導入する方法として、出発物質にラクチドを用いる場合には、触媒添加し減圧にするなど、重合段階でラクチドが一部重合系外に放出されることが多いので、ラクチドを重合反応釜に投入する際は、目標組成よりも若干過剰に投入する必要がある。
【0017】
本発明において用いられる、芳香族カルボン酸成分(b1)としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸等が例示できる。これらは無水物であってもよい。上記した芳香族カルボン酸の中でも、テレフタル酸とイソフタル酸が特に好ましい。
【0018】
本発明において用いられる、芳香族アルコール成分(b2)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノール等を用いることができる。上記した芳香族アルコールの中でも、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0019】
本発明において用いられる、芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸等を例示することができる。上記した芳香族ヒドロキシカルボン酸の中でも、p−ヒドロキシ安息香酸が特に好ましい。
【0020】
本発明の共重合ポリ乳酸の数平均分子量は4,000以上とすることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満では、成形材料として用いることが困難である。
【0021】
また、共重合ポリ乳酸の分子量分布の分散度は、特に限定されないが、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、分子量分布の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。
【0022】
また、共重合ポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)は、少なくともポリ乳酸のTgである58℃よりも高くなければならない。
【0023】
本発明の共重合ポリ乳酸を得るための製造方法としては、アシドリシス工程、アセチル化工程、続いて、脱酢酸による縮重合工程を経る溶融重合法によって製造することができる。
【0024】
アシドリシス工程は、カルボン酸末端基をもつモノマーでポリ乳酸をアシドリシス化する工程である。本発明の共重合ポリ乳酸が、乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)および芳香族アルコール成分(b2)からなる場合(以下、構成(1)という)には芳香族カルボン酸によってアシドリシス化し、乳酸からなる構成単位(A)と芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)からなる場合(以下、構成(2)という)には芳香族ヒドロシシカルボン酸によってアシドリシス化し、乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)および芳香族アルコール成分(b2)および芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)からなる場合(以下、構成(3)という)には芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸両方で、ポリ乳酸をアシドリシス化する。
アシドリシス工程では、ポリ乳酸とアシドリシスするモノマーを反応容器に仕込み、攪拌しながら、200〜240℃で2〜8時間、解重合を行なう。アシドリシスするモノマーは一括で投入しても、また分割して投入してもいずれでもかまわない。
【0025】
アセチル化工程は、ヒドロキシ末端を無水酢酸によって、アセチル化する工程である。構成(1)の場合には芳香族アルコールと無水酢酸を、構成(2)の場合は無水酢酸を、構成(3)の場合は芳香族アルコールと無水酢酸を反応容器に仕込み、攪拌しながら、100〜150℃で1〜8時間アセチル化を行なう。この工程において、アシドリシスされたポリ乳酸のヒドロキシ末端および芳香族アルコール、芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ末端がアセチル化される。ヒドロキシ末端をもつモノマーは、あらかじめアシドリシス工程で反応容器に投入しておいても、また、アセチル化工程前に投入してもいずれでもかまわない。
【0026】
縮重合工程は、アセチル化されたポリ乳酸およびアセチル化した芳香族アルコールを脱酢酸して縮重合する工程である。例えば、200〜250℃まで重合温度を昇温し、さらに系内を130Pa以下の減圧にし、高真空下で3〜10時間縮重合反応を行なう。
【0027】
本発明の共重合ポリ乳酸の分子量を制御する方法としては、重合時の共重合ポリ乳酸溶融物を所定の粘度で重合を終了する方法などが挙げられる。
【0028】
本発明の共重合ポリ乳酸を製造する際には、触媒を用いなくても重合は可能ではあるが、テトラブチルチタネ−トなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物をアシドリシス工程などで用いてもかまわない。
その際の触媒使用量は、生成するポリマーの質量に対し、1.0質量%以下を用いるのが好ましい。1.0質量%を超える場合には、内容物への触媒の溶出が懸念される等の問題があるので好ましくない。
【0029】
また、本発明の共重合ポリ乳酸には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、セルロース誘導体等を配合することができる。
【0030】
また、本発明の共重合ポリ乳酸には、必要に応じて、顔料分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、顔料分散剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)共重合ポリ乳酸の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)共重合ポリ乳酸の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)により求めた。
(3)共重合ポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)
共重合ポリ乳酸10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行ない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをTgとした。
実施例1
カーギルダウ社製ポリ乳酸6250D(L−ポリ乳酸)1184g(144モル%)とテレフタル酸266g(14モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、ビスフェノールA 365g(14モル%)と、無水酢酸408gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/テレフタル酸/ビスフェノールA=72モル%/14モル%/14モル%であった。
実施例2
カーギルダウ社製ポリ乳酸6250D(L−ポリ乳酸)1840g(160モル%)とイソフタル酸266g(10モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、ビスフェノールA 365g(10モル%)と、無水酢酸408gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/イソフタル酸/ビスフェノールA=80モル%/10モル%/10モル%であった。
実施例3
カーギルダウ社製ポリ乳酸4031D(L−ポリ乳酸)1184g(144モル%)とテレフタル酸133g(7モル%)とイソフタル酸133g(7モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、ビスフェノールA 365g(14モル%)と、無水酢酸408gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールA=72モル%/7モル%/7モル%/14モル%であった。
実施例4
カーギルダウ社製ポリ乳酸6250D(L−ポリ乳酸)136g(46モル%)とテレフタル酸186g(27モル%)とイソフタル酸80g(12モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、ビスフェノールA 365g(39モル%)と、無水酢酸408gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールA=22モル%/27モル%/12モル%/39モル%であった。
実施例5
カーギルダウ社製ポリ乳酸4031D(L−ポリ乳酸)7045g(188モル%)とテレフタル酸186g(2モル%)とイソフタル酸80g(1モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、ビスフェノールA 365g(3モル%)と、無水酢酸408gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を240℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールA=94モル%/2モル%/1モル%/3モル%であった。
実施例6
カーギルダウ社製ポリ乳酸6250D(L−ポリ乳酸)167g(84モル%)とp−ヒドロキシ安息香酸194g(29モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で1.5時間加熱したあと、さらにp−ヒドロキシ安息香酸194g(29モル%)を投入し、オートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃でさらに2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、無水酢酸204gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/p−ヒドロキシ安息香酸=42モル%/58モル%であった。
実施例7
カーギルダウ社製ポリ乳酸4031D(L−ポリ乳酸)537g(140モル%)とp−ヒドロキシ安息香酸388g(30モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、無水酢酸204gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/p−ヒドロキシ安息香酸=70モル%/30モル%であった。
実施例8
カーギルダウ社製ポリ乳酸6250D(L−ポリ乳酸)119g(68モル%)とテレフタル酸16g(4モル%)、イソフタル酸16g(4モル%)、ビスフェノールA 44g(8モル%)、p−ヒドロキシ安息香酸295g(50モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、240℃で2時間加熱してアシドリシス反応を行った。次いで、系の温度を140℃に降温し、無水酢酸196gを投入して、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリ乳酸を得た。
得られた共重合ポリ乳酸の樹脂組成を調べたところ、乳酸/テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールA/p−ヒドロキシ安息香酸=34モル%/4モル%/4モル%/8モル%/50モル%であった。
比較例1
オートクレーブ中で、イソフタル酸266g(50モル%)、ビスフェノールA 365g(50モル%)と無水酢酸408gからなる混合物をオートクレーブ中で、攪拌しながら、系の温度を140℃で、攪拌しながら、4時間加熱してアセチル化反応を行なった。続いて、系の温度を320℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、攪拌しながら、重縮合反応を行なった。8時間後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、ペレタイザーでカッティングを行ない、ペレット状の共重合ポリエステルを得た。
得られた共重合ポリエステルの樹脂組成を調べたところ、イソフタル酸/ビスフェノールA=50モル%/50モル%であった。
比較例2
カーギルダウ製ポリ乳酸4031Dの性能を評価した。
【0032】
実施例1〜8で得られた共重合ポリ乳酸と、比較例1〜2の樹脂の各組成およびその特性値を表1に示した。
【0033】
【表1】

実施例および比較例から、本発明の共重合ポリ乳酸は、ポリ乳酸に比べて、ガラス転位温度が高く、耐熱性に優れた樹脂であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸からなる構成単位(A)と、芳香族カルボン酸成分(b1)、芳香族アルコール成分(b2)、および芳香族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)の少なくとも一つの成分からなる芳香族ポリエステル構成単位(B)が、(A)/(B)=20/80〜95/5(モル比)の割合で共重合されてなることを特徴とする共重合ポリ乳酸。
【請求項2】
ポリ乳酸を芳香族カルボン酸でアシドリシス後、芳香族アルコールと共に、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。
【請求項3】
ポリ乳酸を芳香族ヒドロキシカルボン酸でアシドリシス後、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸を芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸でアシドリシス後、芳香族アルコールと共に、アセチル化し、脱酢酸により縮重合することを特徴とする共重合ポリ乳酸の製造方法。


【公開番号】特開2006−143810(P2006−143810A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333260(P2004−333260)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】