説明

共重合体安定化エマルション

【課題】
【解決手段】実質的に連続な液体媒体と実質的に連続な液体媒体内に分散する複数の液滴構造を含むエマルション。複数の液滴構造の各液滴構造は、外部表面を有する第1の液の外側液滴と、第1の液の外側液滴の外部表面に内包される内部表面を有する第2の液の内側液滴とを含み、第2の液は第1の液に非混和性であり、内側液滴と外側液滴は両者間に境界表面領域を有し、ブロック共重合体の外層が外側液滴の外部表面に配置され、ブロック共重合体の内層が内側液滴の内部表面に配置されている。ブロック共重合体は親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して液滴構造の安定化に作用し、第1の液は実質的に連続な液体媒体に非混和性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴構造、液滴構造のエマルション、ならびに液滴構造およびエマルションの製造方法に関し、より詳細には、ブロック共重合体で安定化された液滴構造、液滴構造のエマルション、ならびに液滴構造およびエマルションの製造方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は2007年8月21日仮出願の米国出願60/935,605号の優先権を主張し、その全体を参照により本願に援用する。
【0003】
本発明は米国国立科学財団(National Science Foundation)より授与された米国政府助成CHE-0415275号を使って得られたものであり、米国政府は本願の一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
単純エマルション(乳濁液)は、ある液体の液滴の別の非混和性の液体中における分散であり、その液滴は一般には剪断の適用と界面における反発力をもたらす界面活性剤による合体に対する安定化によって形成される(J. Bibette、F. Leal-Calderon、及びP. Poulin、Rep. Prog. Phys. 62、1999年、p.969)。(本明細書における参照文献のすべては、参照により本明細書に援用される。)最も一般的な2つのものに、「直接」の水中油滴型(油/水)エマルションとその「逆」の油中水滴型(水/油)エマルションとがある。界面活性剤はさまざまに異なる形態をとり得る両親媒性の分子であり、イオン(例、陰イオン、陽イオン、双性イオン)、非イオン(例、エトキシ化アルカン鎖)、重合体(例、単純重合体、ジブロック重合体、トリブロック重合体)の形態がある。これらは両親媒性であるので、界面活性剤は油−水界面に優先的に吸着する傾向がある。界面活性剤の油および水中での相対溶解度、界面活性剤の濃度、および界面活性剤が界面に吸着したときの界面活性剤がもたらす界面での反発力の度合いは、大きな液滴構造からより小さな液滴構造への破砕を引き起こす剪断流動または他の非熱的外部ストレス源の適用によって形成されたエマルションの安定化および寿命を決定する重要なファクタである。
【0005】
単純エマルションの他に、位相的な複雑性のレベルの高いものが存在する。例えば、水/油エマルションを水性連続液状に剪断し、それ自体がより小さな水滴を含んだ油滴の分散を作ることができる。界面活性剤の賢明な選択により、油滴内の「内側」の水滴とより大きな油滴自体の両者が長期間にわたり安定した状態とすることができる。このタイプのエマルションは、水中油中水滴型(水/油/水)エマルションと呼ばれる。このレベルの位相的な複雑性を有するエマルション系は、一般的に「ダブルエマルション」と呼ばれる。これは、連続液相から開始して最小の液滴構造の中心に到達するには2つの油−水界面層を貫通しなければならないためである。実際に、制御された乳化の工程の連続により、3重エマルションおよび位相的にさらに高次なエマルションを製作することが可能であり、それらはその系の最小の液滴構造の中心に到達するのに貫通しなければならない多数の界面層を含んでいる。水/油/水ダブルエマルションは、それぞれが内側水滴を1つのみ含む外側の油滴を有している。しかしながら、水/油/水ダブルエマルションの油滴は、多数の内側水滴を有することも可能である。ときとして、これが「多重エマルション」と間違って呼ばれることがある。むしろ、より的確には、それぞれが概して複数の内側水滴を含む外側油滴を有する水/油/水ダブルエマルションと呼ばれるべきである。ダブルエマルションを概略で特徴づけるのに、液滴の2つの平均体積分率を用いることができ、これには油滴内の水滴の「内側体積分率」の平均と、連続水溶液内に存在する水/油液滴の「外側体積分率」の平均とがある。一般に、内側水滴に対応する半径の全分布と外側水滴に対応する半径の異なる分布とがある。これらの分布は、液滴の粒度が高度に制御される、すなわち「均一」になるように、かなり鋭い単峰性のピークを示すことが望ましい。ダブルエマルションを特徴づける別の構造的な形態には、1個の外側液滴に対する内側液滴の数の確率分布がある。ここでは主に水/油/水ダブルエマルション(つまり、水性二重液滴)の製作に重点を置いているが、水性連続位相を持たない油中水中油滴型(油/水/油)ダブルエマルションを作ることも同様に可能である。水中油滴型シングルエマルションおよび油中水中油滴型ダブルエマルションには、油体積分率の指定に一般的にφが用いられ、φはエマルション系に含まれる油の体積をエマルション系の全体積で除したものである。
【0006】
近年、構造化マイクロ流体と逐次乳化という2つの主な経路により、高度に均一化された水/油/水ダブルエマルションが供されており、その外側液滴の平均直径は1マイクロメートルを超える程度である。第1の経路は、比較的低い処理能力のマイクロ流体法を介するものである。この経路の1つの実装法においては、第1の交差結合流体路(cross-channel flow junction)を使って油中に水滴を生成し、続いて第2の交差結合流体路を使って水/油液滴を連続水性相に破砕して、水/油/水エマルションを生成する(S. Okushima他、Langmuir 20、2004年、p.9905)。別法として、微細機械加工の流体路ではなく、多孔質ガラス乳化および膜乳化法を使って、高度に均一な水/油エマルションをより高い処理能力で作ることができる。この実装法は、ダブルエマルション内に多数の内側液滴を極めて堅牢に包含することを可能にする。マイクロ流体による破砕の第2の実装法は、最内部水噴流、中間部油噴流、および最外部水噴流の流れを、マイクロ流体路を使って内部および外部界面の毛細管の不安定性が同時に発生するように構成するものである(A. S. Utada他、Science 308、2005年、p.537)。この方法は、最内部の水溶性噴流内の物体を、1つの内側液滴を含んだ水/油/水ダブルエマルションにカプセル化するのに適している。しかしながら、この流れを調整して特定の複数の数の内側液滴を含んだダブルエマルションが所望の体積分率で形成されるようにすることは著しく困難である。この両者のマイクロ流体による方法においては、形成後のエマルションの安定性を維持するため、適切な界面活性剤が液相で存在していなければならない。
【0007】
第2の経路は、微小機械加工流路を使用せず、従来の形式である逐次乳化である。逐次乳化においては、まず水/油エマルションが生成され、続いて剪断を使ってこの単純な逆エマルションを界面活性剤の水溶液に順次乳化する(W. Yafei、Z. Tao、及びH. Gang、Langmuir 22、2006年、p.67)。所望であれば、この水/油/水ダブルエマルションの水滴、油滴の両者は、これらを単分散とするために、粒度で分別することができる。分別なしでは、従来の方法は非常に高処理能力であり、単位時間当たり数リットルを生産することができる。高レベルの単分散が所望される場合は、分別により処理が遅くなる。この方法の変形においては、予混合ダブルエマルションの狭い間隙での剪断による疑似単分散の油滴を生成する高処理能力の方法(C. Goubault他、Langmuir 17、2001年、p.5184)であり、以前から開発されている単分散の単純エマルションを生成する方法を使用する(T. G. Mason、及びJ. Bibette、Phys. Rev. Lett. 77、1996年、p.3481、T. G. Mason、及びJ. Bibette、Langmuir 13、1997年、p.4600)。マイクロ流体法を使って生産されたダブルエマルションの場合と同じように、所望の安定性と解放の特性を得るために、逐次乳化法における界面活性剤の選択もまた重要である。
【0008】
小分子の界面活性剤や脂質と同じように、合成ブロック共重合体は、高分子成分のミクロ相分離を介して、秩序配置されたナノ構造に自己組織化することが可能である(A. J. Link、M. L. Mock、及びD. A. Tirrell、Curr Opin Biotech 14、2003年、p.603)。しかしながら、生体系(例、タンパク質)で見られるような、階層的に構成された物質または明確な三次構造に組織化するブロック共重合体の能力は、最も一般的な重合体におけるランダムなコイル状の特質および高分子領域の限定された機能により制限されている。水素結合(G. A. Silva他、Science 3032004年、p.1352)、両親媒性(D. E. Discher、及びA. Eisenberg、Science 297、2002年、p.967)、結晶化(G. D. Fasman、Prediction of protein structure and the principles of protein conformation(Plenum Press、ニューヨーク)、1989年、pp.xiii)、および液晶形成(D. J. Pochan他、Macromolecules 35、2002年、p.5358)を促進する要素の取り込みは、すべて構造進化に影響する働きをする(J. Rodriguez-Hernandez、及びS. Lecommandoux、J Am Chem Soc 127、2005年、p.2026)。共重合体配列の複雑さの増加(二重から三重ブロック、三重から四重ブロックなど)も、階層的な組織化の潜在力を強化する(I. W. Hamley、Soft Matter 1、2005年、p.36)。これらの方策を利用する上での主な制限は、機能的で多成分なブロック共重合体の生成に必要な合成化学が、異なる単量体の重合方法との非互換性のため、大きな障害となることである(A. J. Link、M. L. Mock、及びD. A. Tirrell、Curr Opin Biotech 14、2003年、p.603)。さらに、最も一般的な合成重合体は生体高分子(例、二次構造、複合機能性、および立体化学)に見られるような入り組んだ複雑性に欠けるので、それらは自己組織化した生体高分子の行動を決して忠実に模倣することができない。これらの理由から、エマルション系の調査の前に、ベシクル(小胞)およびヒドロゲルを含む、具体的に特定された機能的ナノ構造に凝集する能力を有する合成物質としてのブロックコポリペプチドの自己組織化を研究した。これらの非エマルション物質は、一般的にコポリペプチド間の相互作用を介して形成し、ボトムアップ型の自己組織化をする。ただし、合成共重合体ブロックの形成における合成構成物質(例、非アミノ酸単量体)の使用、ならびに高次の3重ブロックおよび多重ブロックの重合体構造の使用は、本発明の一般的な概念から除外されるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書に記載の本発明の前調査として、小型の荷電ジブロックコポリペプチド両親媒性物質の組織化における鎖長とブロック構成の役割を研究し、それには疎水性領域における棒状のαへリックス断片の特性に導く化学構造を利用した。具体的には、一連のポリ(L−リシン)−b−ポリ(L−ロイシン)(poly(L-lysine)-b-poly(L-leucine))ブロックコポリペプチドK(xが20から80の範囲、yが10から30の範囲の残基)、およびポリ(L−グルタミン)−b−ポリ(L−ロイシン)(poly(L-glutamatic)-b-poly(L-leucine))ブロックコポリペプチドE6020の含水自己組織化(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、J Am Chem Soc 127、2005年、p.12423)を生成し研究した。ポリ(L−リシン・Hbr)(poly(L-lysine・Hbr))およびポリ(L−グルタミン−Na)(poly(L-glutamate-Na+))の断片は、中性pHにおいて高度に荷電された高分子電解質であり、水に容易に溶解する。初期調査において、K対Lのモル比が高いサンプル(例、K180L20)は、直接脱イオン水に溶解でき、ねじれた小繊維からなる透明なヒドロゲルをもたらすことを見出した(A. P. Nowak他、Nature 417、2002年、p.424)。これは、短くした荷電断片の使用が、高分子電解質の相互作用の反発を弱め、荷電ポリペプチド膜の形成を可能にすると理由づけた。最初の一連の共重合体においては、オリゴロイシン(oligoleucine)領域の大きさは20残基と一定であり、オリゴリシン(oligolysine)領域は20から80残基に変化させた。サンプルは、乾燥重合体をTHF/水(1:1)に浮遊させ、続いて透析の処理がなされた。これらの組織化の微分干渉コントラスト(DIC)光学顕微鏡法による分析で、K2020の大きなシート状の膜とK4020の薄い小繊維の存在が明らかになった。K6020のサンプルは、大きなベシクル状の組織化のみがDIC光学顕微鏡により観察され、最も有望視された(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、J Am Chem Soc 127、2005年、p.12423)。
【0010】
透析から直接得られたK6020のポリペプチドのベシクルは多分散系であり、その直径は、DICおよび動的光散乱法(DLS)を使用して約5μmから0.8μmの範囲であった(図1)。血液循環を介しての薬物送達などへの適用には、ベシクル径は約50nmから100nm、さらには200nmまでが望ましい。K6020のベシクルの懸濁水溶液は、核飛跡エッチングされたポリカーボネート(PC)膜を介して、ポリペプチド物質をほとんど損失することなく押し出すことができることを見出した。2回のフィルタ通過後、フィルタの孔径とほぼ一致する値までのベシクルの直径の減少が観察された。これらの結果は、荷電ポリペプチドベシクルが、容易に押し出され、10nm台から100nm台の範囲にわたるベシクル径の良好な制御が可能であることを示している(図1)。押し出されたベシクルは、押し出し前ほど多分散系ではなく、またミセルの不純物を含まないことがDLSによる粒径分析によって明らかにされた。ベシクルの形態も、K6020のサブミクロンの懸濁液の透過型電子顕微鏡法(TEM)の画像により確認された。押し出されたベシクルは、DLSを使って6週間監視され、ほとんどのサンプルにおいて径の平均が変化しなかったことから、安定していると認められた。また、ベシクルは高い熱安定性を有することも認められた。1μmのベシクルの懸濁水溶液を80℃で30分間保持した後も、ベシクルの分裂は検出されなかった(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、J Am Chem Soc 127、2005年、p.12423)。100℃で30分間熱した場合のみ、ベシクルが分裂し、大きな平坦な膜状シートとなった。
【0011】
これらの高度に荷電されたポリペプチドのベシクルのイオン媒体における安定性は、パーソナルケア製品から薬物送達におよぶ適用のほとんどでの使用において重要である。K6020のベシクルは、高塩濃度(>0.5M)では不安定であり凝集するが、100mMのPBS緩衝液中、および血清を含まないDMEM細胞培養基では安定している(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、J Am Chem Soc 127、2005年、p.12423)。アニオン性タンパク質を含む血清の追加はベシクルの分裂を招き、これは恐らく血清タンパク質と逆帯電されたポリリシン鎖とのポリイオン錯体生成によると考えられる。従って、E6020を使って作られた負に帯電したポリペプチドのベシクルは、ウシ胎仔血清10%のDMEM中で安定であることが認められた。これらの結果を基に、これらの荷電ポリペプチドのベシクルは、リポソームの代用となる水溶性溶質のカプセル材としての潜在力を示していると考えられる。これらの荷電ポリペプチドのベシクルの別の特徴は、アミンまたはカルボン酸残基との化学的結合、または荷電残基の慎重な選択を介したベシクル表面における親水性のポリペプチド鎖の簡易機能化の潜在力である。例えば、最近発表したアルギニン断片からなる多数のグアニジン群によって細胞内に容易に侵入することのできるアルギニン・ロイシン(即ち、R60L20)のベシクルの生成がある(E. P. Holowka他、Nat Mater 6、2007年、p.52)。この場合、アルギニン残基が、ベシクル形成における構造指向と、細胞結合と細胞への侵入機能という2つの役割を果たしている。多機能な特性を有する生体模倣膜の設計に有利なブロックコポリペプチドの主要な特性は、構造的機能的原子を重合鎖内の正確な位置に配置する能力である。本発明の実施の形態においては、液滴の界面に存在するコポリペプチドもこのような多機能な特性を活用することができ、それには液滴構造の形態やトポロジおよびその液滴構造が細胞や他のターゲット物質とどのように相互作用するかの制御が含まれる。
【0012】
これらのコンパートメント化された内部構造により、水/油/水ダブルエマルションはカプセル化において単純な水中油滴(油/水)エマルションより利点があり、それらは有極性荷(polar cargos)(内側液滴中の水溶性分子または水分散可能コロイドなど)および無極性荷(nonpolar cargos)(外側油滴中の油溶性分子または油分散可能コロイドなど)の両者を同時に運ぶ能力、油溶性および水溶性薬物分子の併用療法における非常に特定された局所領域に送達(例えば、液滴の内外表面を修飾する分子のターゲット部分を介して)する能力、ならびに治療用分子の一時的な開放の改善された制御である(K. Pays他、Double emulsions: how does release occur?。Journal of Controlled Release 79、2002年、p.193-205、S. S. Davis、及びI. M. Walker、Multiple Emulsions as Targetable Delivery Systems。Methods in Enzymology 149、1987年、p.51-64、H. Okochi、及びM. Nakano、Preparation and evaluation of W/O/W type emulsions containing vancomycin。Advanced Drug Delivery Reviews 45、2000年、p.5-26)。ダブルエマルションの生成には、一般的に界面活性剤の混合が安定化のために必要とされ、内側液滴と外側液滴の両者が100nm以下であるダブルナノエマルションの形成はこれまで達成することができなかった(N. Garti、Double emulsions - Scope, limitations and new achievements。Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects 123、1997年、p.233-246、I. G. Loscertales他、Micro/nano encapsulation via electrified coaxial liquid jets。Science 295、2002年、p.1695-1698、A. S. Utada他、Monodisperse double emulsions generated from a microcapillary device。Science 308、2005年、p.537-541)。
【0013】
通常の油/水エマルションに対する利点はあるものの、安定した水/油/水エマルションは、一般に、従来の方法による1つの界面活性剤と標準的な乳化方法を使用して自然発生的には形成されない(N. Garti、Double emulsions - Scope, limitations and new achievements。Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects 123、1997年、p.233-246、J. M. Morais、O. D. H. Santos、J. R. L. Nunes、C. F. Zanatta、及びP. A. Rocha-Filho、W/O/W Multiple emulsions obtained by one-step emulsification method and evaluation of the involved variables。Journal of Dispersion Science and Technology 29、2008年、p.63-69)。マイクロメートルサイズで高度に均一なダブルエマルションの生成にマイクロ流体を使用できるが(I. G. Loscertales他、Micro/nano encapsulation via electrified coaxial liquid jets。Science 295、2002年、p.1695-1698、A. S. Utada他、Monodisperse double emulsions generated from a microcapillary device。Science 308、2005年、p.537-541)、処理能力は多分散系シングルエマルション生産の業務用の方法と比較して低い(T. G. Mason、J. N. Wilking、K. Meleson、C. B. Chang、及びS. M. Graves、Nanoemulsions: formation, structure, and physical properties。Journal of Physics-Condensed Matter 18、2006年、p.R635-R666)。水/油/水エマルション生成の典型的な方法には、最初に「逆」油中水滴(水/油)エマルションを形成し、続いて界面活性剤の組み合わせを用いたこの混合物の水中での乳化の2工程処理が含まれる(M. F. Ficheux、L. Bonakdar、F. Leal-Calderon、及びJ. Bibette、Some stability criteria for double emulsions。Langmuir 14、1998年、p.2702-2706、Y. F. Wang、Z. Tao、及びH. Gang、Structural evolution of polymer-stabilized double emulsions。Langmuir 22、2006年、p.67-73、N. Garti、Double emulsions - Scope, limitations and new achievements。Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects 123、1997年、p.233-246、C. Goubault他、Shear rupturing of complex fluids: Application to the preparation of quasi-monodisperse water-in-oil-in-water double emulsions。Langmuir 17、2001年、p.5184-5188、S. Okushima、. Nisisako、T. Torii、及びT. Higuchi、Controlled production of monodisperse double emulsions by two-step droplet breakup in microfluidic devices。Langmuir 20、2004年、p.9905-9908)。この処理方法は、両工程でのエマルションが単分散であれば内側液滴と外側液滴両者の体積を制御することが可能であるが、この方法は安定したナノスケールの液滴(即ち、内側液滴、外側液滴の両者の直径がナノスケールである)の形成には使われてはいなかった。さらには、この方法では、内側液滴および外側液滴のいずれをも不安定化することなく共存可能な界面活性剤の組み合わせを探すのが困難であった(M. F. Ficheux、L. Bonakdar、F. Leal-Calderon、及びJ. Bibette、Some stability criteria for double emulsions。Langmuir 14、1998年、p.2702-2706)。従って、液滴粒度の進行(例えば、合体および/または粗大化を介して)に対する安定性の改善、および適用のためのダブルエマルションの生成における液滴粒度の減少の必要性がある(A. Benichou、A. Aserin、及びN. Garti、Double emulsions stabilized with hybrids of natural polymers for entrapment and slow release of active matters。Advances in Colloid and Interface Science 108-109、2004年、p.29-41)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施の形態におけるエマルションは、実質的に連続な液体媒体と、前記実質的に連続な液体媒体内に分散する複数の液滴構造とを含む。本発明の実施の形態における複数の液滴構造の各液滴構造は、外部表面を有する第1の液の外側液滴と、第1の液滴内に第2の液の内側液滴であって、第2の液は第1の液に非混和性であり、内側液滴および外側液滴は両者間に境界表面領域を有する内側液滴と、外側液滴の外部表面に配置されるブロック共重合体の外層と、外側液滴と内側液滴間の境界表面領域に配置されたブロック共重合体の内層とを含む。ブロック共重合体は親水性重合体ブロックと疎水性重合体ブロックとを含み、それらが共同して液滴構造の安定化に作用し、第1の液は実質的に連続な液体媒体に非混和性である。
【0015】
本発明の実施の形態におけるエマルションは、液体媒体と、液体媒体内に分散する複数のナノ液滴とを含む。複数のナノ液滴の液滴構造それぞれが第2の液で包囲された第1の液の内側液滴を含み、第1の液は第2の液に非混和性であり、第2の液は液体媒体に非混和性である。複数のナノ液滴のアンサンブル平均直径は、少なくとも約10nmで、かつ約200nm以下である。
【0016】
本発明の実施の形態におけるエマルションは、実質的に連続な液体媒体と、実質的に連続な液体媒体内に分散する複数の液滴構造とを含む。複数の液滴構造のそれぞれの液滴構造が、外部表面を有する液の液滴と、外部表面に配置されるブロック共重合体の層とを含む。ブロック共重合体が親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して液滴構造の安定化に作用し、複数の液滴構造の液は実質的に連続な液体媒体に非混和性である。
【0017】
本発明の実施の形態におけるエマルションの製造方法は、第1の液と第2の液を準備するステップであって、第1の液が第2の液に非混和性であるステップと、第1の液および第2の液の少なくとも1つに選択した量のブロック共重合体を追加するステップと、第2の液中に分散する第1の液の複数の液滴を生成するように第1の液を第2の液に乳化するステップとを含む。ブロック共重合体は、前記複数の液滴が合体しないよう安定化する。
【0018】
本発明の実施の形態におけるエマルションの製造方法は、第1の液および第2の液の少なくとも1つに界面活性剤を追加するステップ、または第1の液および第2の液の少なくとも1つに界面活性剤前駆体を追加するステップの少なくとも1つのステップと、第2の液に浸漬される第1の液の複数の液滴を形成して単純エマルションをもたらすように第1の液を第2の液に乳化するステップであって、第1の液が第2の液に非混和性であるステップと、第3の液に同一の界面活性剤および同一の界面活性剤前駆体の少なくとも1つを追加するステップと、単純エマルションの複数の液滴を形成してダブルエマルションをもたらすように単純エマルションを第3の液に乳化するステップであって、第2の液は第3の液に非混和性であるステップと、を含む。ダブルエマルションの複数の液滴のそれぞれは、内部に少なくとも1つの第1の液の液滴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下に本発明のさらなる特徴である種々の実施の形態を添付の図面を参照して詳述する。さらに、本発明の上述および他の利点が、以下の詳述と添付図面を併せて参照することでより良く理解される。
【0020】
【図1】図1Aおよび図1Bは、1.0μmのポリカーボネート(PC)膜を介して押し出されたポリペプチドベシクルの1%(w/v)懸濁液の微分干渉コントラスト法を用いた光学顕微鏡画像(横棒=5μm)である。図1AはK6020であり、図1BはE6020である。図1Cは、0.1μmのPC膜のフィルタを通した酢酸ウラニルで負染色された0.1%(w/v)K6020ベシクル懸濁液の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(横棒=350nm)である。図1Dは、PC膜の孔径を関数としたK6020(黒丸●)およびE6020(白矩形◇)ベシクルの1%(w/v)水溶懸濁液の平均直径を示す。ベシクルの大きさは動的光散乱法(DLS)を用いて測定した。
【0021】
【図2】図2Aおよび図2Bは、乳化に用いられるブロックコポリペプチドKrLおよびKそれぞれの等価図式である。図2Cは、本発明の一部の実施の形態におけるKrLブロックコポリペプチドを用いて水中油中水滴ダブルエマルションを生成する乳化処理の概略を示す。図2Dは、本発明の一部の実施の形態におけるKブロックコポリペプチドを用いて水中油滴シングルエマルションを生成する乳化処理の概略を示す。図2Cおよび図2Dにおいては、工程(i)がロータリミキサを使用してマイクロスケールの液滴が生成可能な通常の乳化を示し、工程(ii)がマイクロ流体ホモジナイザを使用してナノスケールの液滴が生成可能なより極度の乳化を示す。生成された液滴の界面の詳細な部分、即ち、ダブルおよび直接エマルションの液滴の界面におけるコポリペプチドの概要をそれぞれ図2Cおよび図2Dの右側に示す。
【0022】
【図3】図3Aから図3Dは、マイクロ流体ホモジナイザ(75μmチャンネル容量相互作用チャンバ装備のMicrofluidics Microfluidizer(r) 11OS)を使用して生成されたKrLブロックコポリペプチドダブルエマルションの極低温透過型電子顕微鏡(Cryo-TEM)画像および動的光散乱法(DLS)データである。すべてのエマルションは以下の条件で生成された(マイクロ流体ホモジナイザの通過回数N=6、マイクロ流体ホモジナイザへの入力空気圧p=130psi、コポリペプチドの水中濃度C=1mM、全油体積分率φ=0.20)。油は10cStの粘度を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)シリコーン油。液滴半径はDLSデータからキュムラント解析を用いて測定。KrLエマルションのCryo−TEM画像(横棒=100nm)で、図3A=K40rL、図3B=K40rL10、図3C=K40rL20、および図3D=K40rL30。図3Eは、DLS(nm)で測定されたダブルエマルションの有効液滴半径(外側液滴半径付近)をコポリペプチドのKおよびrLブロックの長さを関数として示す。図3Fは、Cryo−TEM画像から測定されたK40rL10の内側液滴の半径の外側液滴の半径に対する比のヒストグラム(即ち、確率分布)である。図3Gは、K40rL10の平均液滴半径<a>(nm)をブロック共重合体濃度C(mM)の関数として示す。図3Hは、DLSで測定された平均液滴半径<a>(nm)をK40のブロック長を固定してラセミ-ロイシン(rL)のブロック長の関数として示す。
【0023】
【図4】図4Aから図4Dは、水/油/水ダブルエマルション液滴の粒度を調整する方法の詳細を示す画像である。図4Aは、超音波ホモジナイザを使って生成した0.1mMのFITC標識化K40rL10エマルション(全油体積分率φ=0.20、10cStのPDMSシリコーン油)のレーザ共焦点走査顕微鏡(LCSM)画像(横棒=5μm)である。図4Bから図4Dは、マイクロ流体ホモジナイザ(75μm相互作用チャンバ)を使って生成したエマルションである。図4Bは、N=6、p=130psi、C=1mM、およびφ=0.20のK40rL10エマルションのCryo−TEM画像(横棒=100nm)。図4Cは、N=6、p=130psi、C=1.5mM、およびφ=0.20のK40rL20エマルションのCryo−TEM画像(横棒=100nm)。図4Dは、N=6、p=130psi、C=1.5mM、およびφ=0.20のK40rL20エマルションの超高速遠心分離により得られた残留懸濁液のより小さなダブルナノエマルションのCryo−TEM画像(横棒=100nm)。図4Eは、ブロック共重合体濃度の関数としてDLSで測定したK40rL20エマルション(N=6、p=130psi、C=0.1から1.5mM、およびφ=0.20)の平均液滴半径<a>を示す。図4Fは、DLSで測定されたK40rL(N=6、p=130psi、C=1mM、およびφ=0.20)の平均液滴半径<a>をラセミ-ロイシン(rL)のブロック長yの関数として示す。
【0024】
図5Aは、超音波ホモジナイザを使って生成した0.1mMのFITC標識化K40rL10ダブルエマルション(φ=0.20、10cStのPDMSシリコーン油)のLCSM画像(10秒、横棒=5μm)である。FITC標識化コポリペプチドは緑色の蛍光を発する。図5Bは、超音波ホモジナイザ(10秒)を使って生成したC=0.1mMのFITC標識化K40rL10ダブルエマルションの多色蛍光顕微鏡のオーバーレイ画像(横棒=5μm)を10cStシリコーン油(φ=0.20)の外側液滴内の0.01Mのピレン(青色に蛍光)と内側水性液滴内のナノスケールのInGaP/ZnS量子ドット(赤色に蛍光)で示す。
【0025】
図6Aから図6Bは、超音波ホモジナイザを使って(10秒)生成した0.1mMのFITC標識化コポリペプチドダブルエマルション(φ=0.20、10cStのPDMSシリコーン油)のLCSM画像である。図6Aは、K6020、図6Bは、K40rL10である。図6Cは、マイクロ流体ホモジナイザを使って生成した1.0mMのE40rL10エマルション(N=6、p=130psi、C=1mM、およびφ=0.20)のCryo−TEM画像(横棒=250nm)である。図6Dは、マイクロ流体ホモジナイザを使って生成した1.0mMのK40rL10エマルション(N=6、p=130psi、C=1mM、およびφ=0.20)のCryo−TEM画像(横棒=250nm)である。図6Eは、他の画像の場合と同様のポリペプチド濃度および全油体積分率で同様の外部励起を使ってエマルションおよび/またはダブルエマルションの生成を試みた後の油と水溶性K60ホモポリマポリペプチドの非乳化によるシリコーン油と水との相分離の写真である。
【0026】
図7Aから図7Cは、以下の条件でマイクロ流体ホモジナイザを使って生成したK(rac−L)安定化されたダブルエマルションのCryo−TEM画像(横棒=200nm)である(通過回数N=6、マイクロ流体ホモジナイザ入力空気圧p=130psi、ブロックコポリペプチドの濃度C=1.0mM、および全油体積分率φ=0.20(10cStのPDMSシリコーン油))。図7Aは、K40(rac−L)、図7Bは、K40(rac−L)10、図7Cは、K40(rac−L)30。図7Dは、観察された確率分布(%)をK40(rac−L)10エマルションのCryo−TEM画像で観察された少なくとも50個のダブルエマルション液滴の内側半径aと外側半径aを測定して決定されるaのaに対する比(I/O比)の関数として示すヒストグラムである。
【0027】
図8Aから図8Dは、ダブルエマルションの安定化に使われるさまざまなブロックコポリペプチドのCryo−TEM(CTEM)画像である。N=6、マイクロ流体ホモジナイザへの入力空気圧p=130psi、ブロックコポリペプチドの濃度C=1.0mM、および油体積分率φ=0.20(10cStのPDMSシリコーン油)の条件でマイクロ流体ホモジナイザを使って生成し、R40(rac−L)10(R=L−臭化水素酸アルギニンを重合に使用、図8A)とE40(rac−L)10(E=L−グルタミン酸ナトリウム塩を重合に使用、図8B)で安定化したダブルエマルションのCTEM画像。ブロックコポリペプチドの濃度C=1.0mM、および油体積分率φ=0.20(10cStのPDMSシリコーン油)の条件で超音波ホモジナイザを1分間使って生成し、K60(rac−V)20(V=バリン、図8C)とK60(rac−A)10(A=アラニン、図8D)で安定化したダブルエマルションのCTEM画像。すべての画像の尺度は横棒が200nm。
【0028】
図9Aおよび図9Bは、コポリペプチドの乳化特性の比較を示す。図9Aは、ブロックコポリペプチド濃度C=0.1mM、および油体積分率φ=0.20で、超音波ホモジナイザを1分間使って生成したK6020とK40(rac−L)20の界面活性剤を使ったトルエンを油相として含むエマルションの画像。画像は乳化後3時間が経過し、K6020のサンプルが明らかな相分離(上に油層)を示してから撮像された。図9Bは、ホモポリペプチドK60を界面活性剤として使ったPDMSシリコーン油と水との乳化の試みの画像。このサンプルでは、迅速かつ完全に相分離され、ホモポリペプチドK60が、油と水との界面の十分な安定化をもたらさないことと励起中に一時的に生成された液滴が励起停止後は急速に合体することを示している。
【0029】
図10Aから図10Cは、ダブルエマルション液滴の粒度が、異なる実験パラメータによってどのように影響されるかを示す動的光散乱法(DLS)データの描画である。すべてのサンプルは、以下の条件で、マイクロ流体ホモジナイザ(75μm相互作用チャンバ)を使って生成された。通過回数N=6、ホモジナイザ入力空気圧p=130psi。直径はDLS相関関数のキュムラント解析を用いて測定され、水/油/水ダブルエマルションの外側液滴の平均直径の推量である。図10Aは、測定したダブル液滴構造の平均直径対K40(rac−L)20ブロックコポリペプチド濃度Cのグラフ。図10Bは、測定した平均直径対油体積分率φのグラフ。図10Cは、測定したダブル液滴構造の平均直径対K40(rac−L)のxを変化させた異なるサンプルから得られる疎水性(rac−L)の長さのグラフ。
【0030】
図11Aから図11Dは、アセトアミド基(PBA)でキャップされたシリコーン油のエマルションの油相における水素結合への影響を示す蛍光顕微鏡およびCTEM画像である。図11Aは、多数の内側水滴を含む蛍光染色されたFITC−K60(rac−L)20(注:L−ブロックはラセミ体)で安定化された水/油/水ダブルエマルションの蛍光顕微鏡画像(C=0.1mM、PBA油体積分率φ=0.20、超音波ホモジナイザを10秒間使用)。図11Bは、FITC−K6020(注:L−ブロックはラセミ体ではない)で安定化された油/水シングルエマルションの蛍光顕微鏡画像(C=0.1mM、PBA油体積分率φ=0.20、超音波ホモジナイザを10秒間使用)。図11Cは、油相としてPBAを用いて生成された多数の内側水滴を有するナノスケール水/油/水ダブルエマルション液滴のCTEM画像である。図11Dは、コントロール油相として300cStのPDMS(PBAと同一粘度)を使った内側水滴が1つの液滴が主であるナノスケール水/油/水ダブルエマルション液滴のCTEM画像である。図11Cおよび図11Dのエマルションサンプルは、K60(rac−L)20を用い、以下の条件でマイクロ流体ホモジナイザ(75μm相互作用チャンバ)を使って生成された。通過回数N=6、ホモジナイザ入力空気圧p=130psi、ブロックコポリペプチド濃度C=1.0mM、および油体積分率φ=0.20。横棒の縮尺は、図11Aと図11Bは5μm、図11Cと図11Dは100nm。PBAは、ビス[3−(アセトアミド)−プロピル]終端ポリジメチルシロキサン(数平均分子量Mn=2500、粘度300cSt)。
【0031】
図12Aから図12Cは、マイクロ流体ホモジナイザを使って生成したコポリペプチドで安定化されたシングルおよびダブルエマルションの極低温透過型電子顕微鏡(CTEM)画像で、L−ブロックのラセミ体の特性が生成されるエマルションのタイプにどのように影響するかを示している。ガラス質の水分は薄い背景となり、原子番号の大きい原子を高い密度で有するシリコーン油は濃く現れコントラストをなしている。エマルションは、以下の条件で生成された。N=6、p=130psi、C=1.0mM、および油体積分率φ=0.20(10cStのPDMSシリコーン油)。図12Aは、K40(rac−L)20で安定化された水/油/水ダブルエマルションのCTEM画像。図12Bは、K6020で安定化された油/水シングルエマルションのCTEM画像。図12Cは、K40(rac−L)20で安定化されたダブルエマルションから低速遠心分離および超高速遠心分離(Beckmanの超高速遠心分離機をSW28スイング型ロータで約3,000から25,000回転/分の通常速度で使用)により単離され粒度分別された液滴のCTEM画像。すべての画像の尺度は横棒が200nm。
【0032】
図13Aおよび図13Bは、有極性および無極性荷(polar and nonpolar cargos)を含むダブルエマルションの蛍光顕微鏡画像である。サンプルは、φ=0.2、C=0.1mMで、超音波ホモジナイザを使って(35%出力で10秒間)生成された。油相は封入されたピレン(0.01M)のために青色に蛍光し、内側水性相はそれが存在するときはカプセル化されたInGaPの量子ドット(2μMの濃度)のために赤色に蛍光する。ポリペプチドは、フルオレセイン(FITC)で標識化されているので緑色に蛍光する。画像化の前に、液滴は透析され、続いて純水で希釈され、ほとんどの量子ドット、つまり赤色蛍光体が外側の連続水性相から除去される。図13Aは、外側油滴中にピレン(青色蛍光)と内側水滴中に量子ドット(赤色蛍光)の両者が盛り込まれたFITC標識化K40(rac−L)10で安定化された水中油中水滴ダブルエマルション。図13Bは、油滴中にピレン(青色蛍光)が盛り込まれたFITC標識化K6020で安定化された水中油滴エマルション。K6020は直接のエマルションを形成するので、液滴内に赤色蛍光は見られず、この特定の組成物には内側水滴が存在しないことが確認できる。両画像の尺度は横棒が5μm。
【0033】
図14は、超純水におけるブロックコポリペプチド溶液(1.0mg/mL)の円二色性スペクトルを示す。サンプル(rac−K)6020の208nmおよび222nmの最小値は、αヘリックス構造の特徴である。黒矩形(◆)は、(rac−K)6020、白角(□)は(rac−K)40(rac−L)20
【発明を実施するための形態】
【0034】
エマルションはある液相物質の液滴の別の非混和性の液相物質中における分散であり、一般的には大きな液滴からより小さな液滴への流動誘起破砕を介して形成することができる。界面活性剤は、表面活性な両親媒性分子から成っており、少なくとも1つの液相中で溶解性であって、2つの非混和性の液の間の界面に吸着しやすく、その後の液滴の合体(つまり、融合)を防止し、液滴の粒度分布を長期間にわたって維持するために通常加えられるものである。単純エマルションは、一般的に水中油滴(つまり、油/水、または「直接」)と油中水滴(つまり、水/油、または「逆」)に分類され、これらの異なる形態は、十分な安定性をもたらす適切な界面活性剤を使って得ることができ、また剪断における添加成分の順序に影響されることがある。
【0035】
本明細書における「racemic-」、「r」、「r-」、「rac-」の接頭文字、および同様の一般的な略語の接頭文字は、アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチドのラセミ体(ラセミ化)の意味で相互互換をもって使われる。同様に、「Cryo-CTM」および「CTEM」は、極低温透過型電子顕微鏡を意味する。変数「p」および「P」は、マイクロ流体ホモジナイザの入力ガス圧の意味で相互互換をもって使われ、また「φ」および「Φ」は、全油体積分率の意味に相互互換をもって使われる。
【0036】
マイクロスケールの液滴の水中油滴エマルションは一般的な製品であり、長期にわたって作られている。単純な例がマヨネーズで、一般的に安定化と両親媒性の脂質とタンパク質分子を含む卵黄に、泡立器またはスプーンで強くかき混ぜながら、オリーブ油を糸状に少しずつ加えて作られる。液滴が破砕されてさらに小さな液滴になる際に、追加的に生成される液滴の界面領域にある程度の機械的剪断エネルギが保存される。一般的な機械装置においては、液滴径が典型的に約300ナノメートルまでになる液滴の破砕を達成する剪断速度を作り出せるが、粒度分布におけるピークをこの限界以下への低減を達成することは困難である。歴史的に、サブミクロンのエマルションは「ミニエマルション」として知られており、過去20年ほどの間にマイクロ流体および超音波の手段を使って製造されている。本明細書においては、「乳化」とは、互いに近接および/または接触して配された2つの非混和性の液(それぞれが追加の成分の混合、融合、浮遊を含む)を励起し、1つの非混和性の液が別の非混和性の液に実質的に包囲された個別の液滴を形成するように2液間の境界面を励起し破砕する何らかの形態の非熱的エネルギを導入する処理を含み得る広義の意味で使われている。乳化の際、大きな液滴は通常より小さな液滴に破壊され(例、大きな液滴が極度に変形したときに発生する界面「毛細管」不安定性を介して)、これにより追加的に界面領域が形成される。さらに、乳化の際、シングルエマルション、ダブルエマルション、高次の多重エマルション、またはそれらの組み合わせを形成することができる。前述の乳化の方法は、非常に小さい液滴の伸長および破砕が可能な極度の剪断、または流動速度をもたらすことができる。確かに、平均液滴粒度が100nm未満であるナノスケール領域の液滴が得られたという超音波分散機およびマイクロ流体ホモジナイザ使用の報告文献がある。この「粒度」が半径を意味するか直径を意味するかの不明瞭さがあるが、ミセル体のスケールの2から3nmから巨視的次元の大きさにまで存在する広範囲の液滴の粒度を考慮すると、この2つのファクタは小さな問題である。
【0037】
本発明の実施の形態においては、1つの成分の合成両親媒性ジブロックコポリペプチド界面活性剤を使い、単純な処理で水/油/水ダブルエマルションが生成でき、長期にわたり安定化できることを示す。これらの界面活性剤は、液滴の極度の流動に対しても安定化させ、ナノスケールの内側液滴とナノスケールの外側液滴とを有する堅牢な水/油/水ダブルエマルションの直接生産、および大量生産をもたらし、従って、食品、化粧品、および薬物送達におけるナノ構造のカプセル化の適用に適している。
【0038】
本発明の実施の形態においては、両親媒性ジブロックコポリペプチドは、水−油界面での界面活性剤としても機能でき、ベシクル形成の傾向を反映する自己組織化の特性をも有するので、最小限の剪断と複雑な液滴のトポロジに偏らない1つの界面剤を使って安定したダブルエマルションの生成の可能性を調査した。
【0039】
本発明の実施の形態においては、両親媒性ジブロックコポリペプチドで安定化された直接エマルションおよびナノエマルションとともに、ダブルエマルションおよびダブルナノエマルションの生成が可能であることを見出した。本発明の実施の形態においては、剪断適用後の好適な形態は、親水性ブロックおよび疎水性ブロックの広範囲の分子量において、ダブルエマルションであるという結果を示している。ダブルエマルションは、例えば、水溶性薬物と油溶性薬物の両者をパッケージ可能であり、薬物の送達手段を提供することができる。さらに、ダブルエマルション液滴を安定化するコポリペプチドは、生物学的細胞標的、細胞膜および細胞内膜分裂、ならびに酵素機能などの所望の生化学的な相互作用をもたらすように設計、調整することができ、液滴構造に組み込まれ得る薬物分子の送達と性能を向上させることができる。
【0040】
本発明の実施の形態にかかるエマルションの生成方法、生成されたエマルション、およびエマルション内の液滴構造を、図2Cおよび図2Dに概略的に示す。本発明の実施の形態によれば、その方法は、第1の液と第2の液を用意するステップであって、第1の液は第2の液に非混和性であるステップと、選択した量のブロック共重合体を第1の液および第2の液の少なくとも1つに加えるステップと、第2の液に分散される第1の液の複数の液滴が作られるよう第1の液を第2の液に乳化するステップとを含む。ブロック共重合体は、複数の液滴が粗大化、あるいは合体または他の不安定化機構を介して起こり得る他の構造的な進化に対し安定化させる作用をする。ブロック共重合体は、限定はされないが、ブロックコポリペプチドであり得る。さらに、ブロックコポリペプチドは、自然発生および/または合成モノマから形成され得る。本実施の形態によれば、第1および第2の液は、例えば、油(例、無極性)および水(例、有極性)、またはその逆であり得る。しかしながら、本発明は、非混和性の液の対として、油と水のみに限定されるものではない。本実施の他の形態によれば、非混和性の他の有極性および無極性の液状物質(例えば、非混和性である同電位のフッ素化油と炭化水素油)を使用してもよい。従って、本明細書および請求項で使われる「疎水性」および「親水性」の用語は、異なる種類の非混和性の液間または非混和性の液状物質間の分子相互作用における相対的差異を広く意味する。
【0041】
本発明の実施の形態におけるエマルションは、実質的に連続な液体媒体と、前記実質的に連続な液体媒体に分散された複数の液滴構造とを含む。図2Cおよび図2Dはエマルションの2例を示し、図2Cはダブルエマルション、図2Dは直接エマルションを示す。しかし、本発明の他の実施の形態によれば、高次のエマルションも含まれ得る。本発明の実施の形態における液滴構造は、外部表面を有する第1の液の外側液滴と、第1の液滴内の第2の液の内側液滴であって、第2の液は第1の液に非混和性であり、内側液滴と外側液滴とはその間に境界面領域を有する内側液滴とを含む。また液滴構造は、外側液滴の外部表面に配置されたブロック共重合体の外層と、外側液滴と内側液滴間の境界表面領域に配置されたブロック共重合体の内層とをも含む。用語の「配置された」は一般的な用語を意味し、限定はされないが、表面への吸着の意味を含み得る。例えば、ブロック共重合体は、図2Cおよび図2Dの右側に概略的に示す液滴のように、液滴の部分内に延伸する部分、および表面領域において液滴の部分外に延伸する別の部分を有し得る。用語の「層」は広義の意味で、ブロック共重合体が液滴の表面領域に緩く配置された状態を含み、その状態には、層が透過性であるとともに、層が完全に包囲された表面を形成していない状態を含み得る。ブロック共重合体は、親水性の重合体ブロックおよび疎水性の重合体ブロックを含み得、それらは共同して液滴構造の安定化に作用する。ブロック共重合体層は、概略的に示しており、実際の尺度ではないことがある。本発明の実施の形態によれば、第1の液は、実質的に連続な液体媒体に非混和性である。
【0042】
本発明の実施の形態によれば、安定したダブルエマルションを形成するほとんどの組成物においては、界面上に配置されたブロック共重合体が、平衡熱ゆらぎkT(kはボルツマン定数、Tは温度)に対応する「熱エネルギ」よりも著しく強い内側液滴の界面とそれを包含する外側液滴の界面との間の相互作用の反発ポテンシャルエネルギをもたらす。さらに、安定したダブルエマルションを形成するほとんどの組成物においては、ブロック共重合体は、熱エネルギよりも著しく強い外側液滴とそれに接触する他の外側液滴の界面間の相互作用の反発ポテンシャルエネルギをももたらす。安定したダブルエマルションを形成する組成物の一部においては、ブロック共重合体は、熱エネルギよりも著しく強い外側液滴内の多数の内側液滴の界面間の相互作用の反発ポテンシャルエネルギをもたらすことができる。前述の相互作用の反発ポテンシャルエネルギにもかかわらず、液界面間の相互作用の引力ポテンシャルエネルギも存在することが可能である。この相互作用の引力ポテンシャルエネルギは、外側液滴、内側液滴、またはそれらの組み合わせの凝集を、シングル、ダブル、および多重エマルションにおいて、合体を起こさず、膜破砕を起こさず、また液滴構造の完全性を破壊することなく引き起こすことができる。このような引力ポテンシャルの相互作用は、液滴界面間の相互作用ポテンシャルにおいて二次極小の形成を起こすことがあるが、必ずしも液滴構造が不安定化されることを意味するものではない。このような相互作用の引力ポテンシャルエネルギの一例としては、連続液相に存在する共重合体の過剰な含有量の結果として外側液滴間に発生し得る枯渇引力がある。
【0043】
水/油/水ダブルエマルションにおいて、界面での両親媒性分子の吸着によりもたらされる内側の水−油界面の表面と外側の油−水界面の表面間での油膜の界面安定性は、内側および外側液滴の粒度の進化に対する液滴の長期間の安定性の確保に重要ではあり得るが、さらなる潜在因子が液滴の長期安定性に影響することがある。潜在因子の1つとして、ダブルエマルション液滴内の潜在的な浸透圧の存在または不在、および/または液相に取り込まれた物質の親水性含有物および/または疎水性含有物による浸透圧がある。例えば、ダブルエマルションの製造方法の一部においては、内側水滴が過剰なコポリペプチドを含有することが可能であり、その一部は、内側液滴の表面の水−油界面ばかりではなく、内側液滴の水性相にも存在する。この過剰な重合体は、浸透圧を作ることができる。ときとして、このような水溶性物質および/または水分散物質から作りだされた浸透圧を有することは、オストワルト熟成のような長期の合体処理に対する液滴の安定化に望ましい。別の潜在因子としては、すべてのダブル液滴の外側の連続水性相中における浸透圧を作り出す可能性のある溶解物質の潜在的な存在がある。さらに別の潜在因子としては、外側油滴における浸透圧を作り出す可能性のある油溶解物質および/または油分散物質の潜在的な存在がある。これらの潜在的浸透圧の相対差、ならびに他の物質のそれぞれにおける油、水および他の物質での相対溶解度は、内側および外側液滴の粒度を変える可能性のある物質の泳動に影響する可能性がある。いくつかのダブルエマルションの長期観察により、本発明の実施の形態においては、内側および外側液滴両者の粒度の顕著な安定性を達成できることが示されている。
【0044】
ダブルエマルション液滴の乳化と同時、または乳化後に、内側液滴の液状物質の変更が可能であり、内側液滴物質の固化、さもなければ弾性構造を引き起こすために使われ得る。ダブルエマルション液滴の乳化と同時、または乳化後に、外側液滴の液状物質の変更が可能であり、外側液滴物質の固化、さもなければ弾性構造を引き起こすために使われ得る。ダブルエマルション液滴の乳化と同時、または乳化後に、ダブル液滴の外側の連続液状物質の変更が可能であり、連続液状物質の固化、さもなければ弾性エマルション構造を引き起こすために使われ得る。ダブルエマルション液滴の乳化と同時、または乳化後に、内側液滴の液状物質、外側液滴の液状物質、連続相の液状物質、またはそれらの組み合わせの変更が可能であり、ダブル液滴構造の固化、構造変更、および/または弾性を引き起こすために使われ得る。これらの変更は、構造変更、および/または相変化(例、温度変化による誘発)、ゲル化、架橋結合、重合、光重合、化学反応、溶解および/または分散種の体積分率の増加(例、内側および/または外側液滴の低分子量物質の輸送)、分散種のジャミング(jamming)、分散種のガラス化(例、分散種間の誘発)、および自己組織化に誘発される固化から成り得る。同様に、ダブルエマルション液滴の乳化と同時、または乳化後に、内側および/または外側液滴の界面に吸着した両親媒性分子の層の弾性に影響する構造も変更し制御可能である。このような変更は、内側および/または外側液滴の界面での弾性層を作り出す架橋結合し得る両親媒性分子の選択により達成され得る。このような架橋結合は、電磁放射、熱、化学反応、またはそれらの組み合わせにより誘発され得る。
【0045】
薬物分子には多数の種類があり、異なる基準を重視することにより異なる方法で分類することができる。一部の薬物分子は疎水性であり、一部の薬物分子は親水性であり、また一部の薬物分子は極度の両親媒性をも有する。薬物分子を参照することにより、本発明には、生存能力および生物学的機能および生物学的存在に相互作用し影響するのに使えるすべての種類の分子が含まれ、それには、限定はされないが、生体分子、細胞下構造、生体膜、細胞質、核、細胞外基質、細胞小器官、細胞、シナプス、細胞組織、器官、および生命体が含まれる。
【0046】
薬物分子または複数の薬物分子の構成物のような薬物は、エマルション、ダブルエマルション、および多重エマルションの液相に取り込むことができ、その薬物には、限定はされないが、制汗剤、鎮痒剤、感染防止薬、抗炎症薬、抗関節炎薬、抗滑液包炎薬、ニキビ防止薬、止痛剤、頭痛薬、片頭痛薬、抗インフルエンザ薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)薬、抗生物質、抗菌(anti-bacterial)薬、抗微生物菌(anti-microbial)薬、抗食欲薬、抗栄養失調薬、抗エイズ(後天性免疫不全症候群)薬、抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬、抗ヘルペス薬、抗肝炎薬、抗スピロヘータ薬、抗ライム病薬、抗コレストロール薬、フケ防止薬、抜け毛防止薬、抗皮膚炎薬、抗腫脹薬、抗依存症薬、抗認知症薬、抗アルツハイマー病薬、抗パーキンソン病薬、抗プリオン薬、抗尿路感染症薬、抗総合失調症薬、抗痔疾薬、駆虫薬、抗癌剤、抗けいれん薬、抗てんかん薬、抗躁病薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、防腐剤、抗菌剤、抗結核薬、抗不眠症薬、抗線維筋痛症薬、抗失禁薬、抗皮膚炎剤、抗血管新生薬、抗アレルギー薬、抗花粉症薬、抗ぜんそく薬、抗高血圧剤、抗血液凝固剤、乗り物酔い止め薬、抗体重増加薬、抗体重減少薬、肥満防止薬、抗鼓腸薬、げっぷ抑制剤、便秘防止薬、抗マラリア薬、抗いぼ薬、皮膚火傷薬、皮膚日焼け薬、抗皮膚皺薬、抗じんましん薬、抗結膜炎薬、抗皮膚腫れ薬、抗単純ヘルペス薬、抗精神病薬、抗皮膚癌薬、抗湿疹薬、抗貧血薬、抗黄疸薬、抗脳炎薬、抗認知症剤、抗月経痛薬、抗クラミジア感染症薬、抗原生動物薬、抗血栓症薬、抗歯痛薬、抗耳痛薬、抗結核剤、抗気管支炎薬、抗肺炎薬、抗ポリオ薬、抗破傷風薬、抗性病薬、抗注意欠陥障害薬、抗唇荒れ薬、抗骨粗鬆症薬、抗心臓病薬、抗心臓発作薬、抗心不全薬、抗卒中薬、抗不整脈薬、抗末梢動脈障害薬、抗血小板剤、抗狭心症薬、若返り薬、抗記憶喪失薬、抗高血圧症薬、抗乾癬薬、抗拒食症薬、抗下痢薬、抗痛風薬、抗甲状腺機能低下薬、抗臓器移植拒否反応薬、抗寄生虫薬、抗勃起障害薬、抗膣炎薬、抗のぼせ薬、虫およびクモよけ剤、麻酔薬、ホルモン、酵素、触媒、抑制剤、促進剤、保湿剤、活力増進剤、皮膚再生剤、皮膚再成長剤、育毛剤、発毛剤、注意力増強剤、筋力増強剤、男性用精力増強剤、女性用妊娠促進剤、避妊薬、充血除去剤、麻酔剤、眼球治療薬、禁煙実行薬、ニコチン置換剤、ペニシリン関連薬、セファロスポリン関連薬、サルファ関連薬、マイシン関連薬、内分泌薬、心臓脈管薬、肺薬剤、中枢神経系薬剤、胃腸薬、筋弛緩薬、鎮静剤、精神安定剤、睡眠薬、鎮痛剤、全身麻酔薬、ワクチン、更年期関連薬剤、および利尿薬を含む。
【0047】
エマルション、ダブルエマルション、多重エマルションの液相に導入することができる造影剤には、限定はされないが、磁気共鳴映像(MRI)造影剤、エックス線コンピュータ断層撮影(CT)造影剤、ポジトロン放射断層撮影(PET)造影剤、超音波画像造影剤、および光学画像造影剤が含まれる。
【0048】
非熱エネルギとは、エマルション系がシングルエマルションかダブルエマルションかにかかわらず、エマルション系の構成要素の平衡ゆらぎに関連しないすべての形態のエネルギを意味する。例えば、エマルション系の構成要素物質の局所濃度での平衡外の不均衡は、外部粘性流の直接的な適用なしに1つの液相の液滴の別の非混和性の液状物質内での形成を引き起こすことに十分な強さのエントロピ駆動応力を導き得る。この種の「自発乳化」は、エマルション系内の構成要素の化学ポテンシャルにおける液滴の形成の駆動に十分な強さであり得る局所的な差異によって起こる。従って、従来の技術においてはこの分類に議論があるかも知れないが、非熱エネルギの形態の1つとして、「自発乳化」の再構築処理が起こると考える。さらに、「自発乳化」およびエマルション系内の種の化学ポテンシャルにおける他の非平衡による不均衡は、コポリペプチドで安定化されたダブルエマルションの形成の駆動にも使用でき得る。従って、自発乳化および他の非平衡輸送プロセス(発熱および対流発生の化学反応など)を引き起こすエントロピ駆動応力を非熱エネルギの形態として含むと考える。
【0049】
図2Cは、本発明の実施の形態におけるダブルエマルション製造の一例を示す。図2Dは、本発明の実施の形態におけるシングルエマルション製造の一例を示す。本発明は直接およびダブルエマルションのみに限られず、また1つの内側液滴のみを有するダブルエマルションに限られない。三次および高次のエマルションも本発明の範囲に含まれる。さらに、大きな液滴内に1つ、2つ、または2つ以上の液滴を有するダブルエマルションも本発明の範囲に含まれる。図2Cおよび図2Dにおいて、ステップi後のダブルおよび直接エマルションは、さらにマイクロ流体ホモジナイザ(75μmマイクロチャンネル相互作用チャンバ装備のMicrofluidizer(r) 110S)で液滴粒度の低減(例、図2Cおよび図2Dのステップii後を参照)の処理をされ得る。最初の乳化後のさまざまな追加の処理も、本発明の範囲において行い得る。
【0050】
両親媒性ブロックコポリペプチドKrL(rL(または等価的にrac−L)はラセミ体オリゴロイシン領域を表す)は、α−アミノ酸N−カルボン酸無水物の遷移金属仲介による重合を使って合成された(T. J. Deming、Macromolecules 32、1999年、p.4500)。ブロックコポリペプチドは、安定した二次構造の欠如したラセミ体オリゴロイシンのブロックに結合したランダムコイルの正電荷のポリL−リシンのブロックから成る(図2A)。本発明の実施の形態によれば、エマルションの形成には、ブロックコポリペプチドを所望の濃度(C)で水中に溶解することから始め、続いて特定の最終的な油体積分率φとするために油を加えた(図2C)。一般にラセミ体の疎水性ブロックを有するコポリペプチドについては、手持ロータリ剪断具(S8N-8G分散エレメント付きのIKA Ultra-Turrax T8)を使った剪断の適用により、1から20μmの粒度の範囲の多分散系の(水/油/水)ダブルエマルション液滴からなるマイクロスケールの予混合エマルションを形成した(例、図2Cのステップi後)。(本発明の実施の形態においては、従来技術の処理に記載されているような二段階乳化またはマイクロ流体乳化機なしに、この段階でのダブルエマルションが得られたことに留意されたい。)この予混合エマルションは、入力ガス圧p=130psi(入力ガス圧の概ね240倍である相互作用チャンバ内の液圧に対応)を通常有する高圧マイクロ流体ホモジナイザ(例、Microfluidizer(r) モデル110S)に送り込まれ、大きな液滴がサブミクロンおよびナノスケールの液滴に剪断された(例、図2Cのステップii後)。任意的に、単分散な液滴をより多く得るために、もたらされたサブミクロンおよびナノスケールのエマルションを、マイクロ流体ホモジナイザに複数回N(Nは整数の通過回数)再導入することができる。この方法は、大量のサブミクロンおよびナノスケールのダブルエマルション液滴を作り出す単純な方法である(図2C)。この乳化方法ではN回のマイクロ流体ホモジナイザの個別の通過での乳化を通常行うが、相互作用チャンバを介したエマルションの連続的な再循環の乳化(つまり、連続再循環乳化)を行うのに適した別の方法がある。複数回の通過および/または再循環の使用は、液体構造の全体的な直径の低減、および液滴粒度分布の多分散の減少という所望の結果を得ることができる。同様に、コポリペプチドの疎水性ブロックをポリマ合成の制御および調整により非ラセミ体に変更し、それに続いて同じ物理的な乳化処理を行うことにより、コポリペプチドで被覆された直接水中油滴エマルションを形成することができる(図2D)。
【0051】
極低温透過型電子顕微鏡(Cryo-TEMまたはCTEM)は、氷で急速にガラス質に変わるダブルおよびシングルエマルションの両者の液滴構造を、染色剤を使うことなく動かない状態で観察および撮像することに使用できる。画像は、さまざまなKrLの1.0mMのポリペプチド界面活性剤において、ダブルエマルションが確かに形成されたことを示している(図3AからD)。また、特にK40rL20およびK40rL30のCryo−TEM画像においては、100nmおよびそれ以下の直径を有する多数の液滴が存在する(それぞれ図3Cおよび図3D)。これは、溶液中のブロックコポリペプチドの濃度が比較的低いことからして驚くべきものである。さらに、本発明の実施の形態において作り出されたエマルションは、内側液滴に関する興味深い傾向を示している。マイクロ流体ホモジナイザを通過した液とコポリペプチドの組成物の多くは、1つの油滴に対して1つの水性液滴のみが形成されている。この処理の効率は非常に高い(>95%)。これらの画像(図3AからD)から、これらのサンプルにおいて、すべてのダブル液滴には内側と外側の液滴の半径の比較的一定した比率があることが分かる。図3Fに、内側液滴の半径aをそれが含まれる外側液滴の半径aで割って得られる無次元の比率(つまり、「I/O比」)の観察確率の詳細を表すヒストグラムを示す。ヒストグラムでは、K40rL10の単峰性のピークに対応する(a/a)≒0.5(即ち、50%)の一定の平均値を示している。確かに、液滴によってaおよびaに変動は見られるが、この(a/a)≒0.5の平均値は、撮像された他の組成物のダブルエマルションにおいても観察された。さらに、動的光散乱法(DLS)においては、さまざまなブロックコポリペプチドを使って作りだされたエマルションの流体力学的な半径の結果が、広範囲のコポリペプチド組成物においてサブミクロンの液滴が形成されていることを確認している(図3E、図3G、図3H)。
【0052】
液滴の粒度の制御は、薬物送達への適用では重要な問題である。本発明の実施の形態によれば、ダブルエマルションの粒度の制御に3つの主たる手段がある。1つ目の方法は、非熱的励起のエネルギ(例、剪断および伸長流動応力の適用)、液の流動特性(例、粘度または粘弾性)、および液間の界面張力を介する乳化条件の操作によるものである。2つ目の方法は、遠心分離、ろ過などの乳化後に行う粒度分離、およびあらかじめ生成されたエマルションにおける液滴の選別を伴う。3つ目の方法は、合成を介してブロックコポリペプチドの組成および濃度を変更するものである。この第3の方法は、間接的に、重要な物理特性を変更する手段をももたらし、それには、液中でのコポリペプチドの溶解性、吸着したコポリペプチドの存在下における液間の界面張力、コポリペプチドを含む溶解液の粘度、液滴の安定性を保って界面の合体を阻害する界面安定化をもたらすコポリペプチドの各ブロックの構造的形態などがある。コポリペプチドの合成には化学処理を用いるが、遺伝子組み換えされた生物有機体を含んだ生物反応器での遺伝的発現などの他の手段を介してコポリペプチドの生産の制御を達成することも可能である。小さなダブルエマルションの液滴(サブミクロンの外側液滴およびさらに小さな内側液滴)ばかりでなく、前述のように、大きなダブルエマルションの液滴(>1μm)をも作り出す能力がある。マイクロスケールのエマルションの液滴は、手持のホモジナイザから得られる低い流動速度、または超音波均一化(例、超音波ホモジナイザの使用)を介した幾分高い流動速度で作られ得る。超音波均一化を用いて0.1mMのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で識別されたK40rL10コポリペプチドのエマルションを乳化した場合、レーザ共焦点走査顕微鏡(LCSM)により、1μmから20μmの範囲の粒度のより大きなダブルエマルションの液滴を形成でき得ることが明らかになった。また、この大きなダブルエマルションン液滴の溶液は、マイクロ流体ホモジナイザを通過させることによってさらに乳化し、より小さなダブルエマルションの液滴にすることができ得る(図4B)。
【0053】
特定の適用においては、さらなる粒度分離が望まれ得る。これらへの適用には、遠心分離を使ってエマルションの分別および所望の粒度範囲のエマルションの単離をすることができ得る。このような分離を達成するために、マイクロ流体ホモジナイザを6回通過させた(N=6)1.5mMのK40rL20エマルション(φ=0.2)を、低速の3500回転/分(rpm)に設定された卓上遠心分離機に4時間置いた。連続液相に対する液滴構造の質量密度の差異により、より大きな液滴がより早く栓として頂部に上り、その下の極度に希釈な小さな液滴の懸濁液(即ち、残余物)から容易に分離され得る。300nmより大きな直径を有する液滴を分離することができた。残余懸濁液には300nm以下の直径の液滴を含むので、従って、さらなる液滴の分別にはより高速な遠心分離が必要となった。残余懸濁液を超高速遠心分離機に置き、毎分2万回転で24時間、遠心分離した。これらの層のCryo−TEM画像は、液滴粒度が非常に狭い粒度範囲に分離され得ることを示している(図4Cおよび図4D)。遠心分離されたサンプルの頂部に形成された栓では外側液滴の直径が約30nmから200nmの範囲にあり(図4C)、残余懸濁液では外側液滴の直径が約10nmから30nmの範囲にあることを示している(図4D)。この分別の手順は、10nmから10μmの所望の粒度のエマルション液滴の単離が完全に実行可能であることを明らかにしている。この遠心分離の手順を介して、水中油滴エマルションの油滴および水中油中水滴ダブルエマルションの内側水滴を含む油滴の体積分率を上げることが、内側または外側液滴のいずれの界面をも不安定化させることなく、可能であることを明らかにした。
【0054】
ダブルエマルションの液滴粒度の制御の別の手段は、ブロックコポリペプチドの変更を介するものである。これを行う単純な方法は、ポリペプチドの濃度の変更によるものである。動的散乱法(DLS)の結果では、K40rL20コポリペプチドの濃度を0.1mMから1.5mMに増やすと、平均液滴半径は、0.1mMのときの約400nmから1.5mMのときの約160nmに減少したことを示している。エマルション液滴の粒度を減少させる別の方法は、共重合体のオリゴロイシンの断片の長さを伸ばすものである。オリゴロイシンの長さを、リシンの長さを同じ(K40)に保ちながら、K40rLからK40rL30にすると、外側油滴の粒度が平均で、約470nmから約320nmに減少した。
【0055】
ベシクルは、外側の連続液から内側液が親水性荷の容器として機能することのできる内側の水性コンパートメントを分離するラメラ膜から成る。同様に、ダブルエマルションは、2つの個別の油/水界面にある両親媒性の分子層間に存在する比較的厚い油膜を使って内側水性液滴をカプセル化する。この系の利点の1つは、内側と外側液滴の界面間に位置する、より厚い油膜(ここでは「油層」と呼ぶ)が、疎水性荷の容器として作動することができることである。この考えを実証するために、水溶性および油溶性の蛍光マーカの両者をコポリペプチドで安定化させたエマルションに組み込んだ。水溶性蛍光マーカは、630nm(赤色)の発光波長のInGaP/ZnSの量子ドットで、疎水性蛍光マーカは、シリコーン油への高い溶解度と青色蛍光のため、ピレンとした。さらに、緑色蛍光標識でFITC機能化されたK40rL10の共重合体を使ってエマルションを安定化することにより、親水性および疎水性マーカの両者とともに、コポリペプチドの定位を同時に撮像することができ得る。ピレンおよび量子ドットを含まない0.1mMのFITC標識化K40rL10エマルションの蛍光LCSM画像は、約1μmから約5μmの直径の大きなダブルエマルション液滴を示している(図5A)。3種の標識化のエマルションは、0.1mMのFITCで標識化されたK40rL10を、InGaP/ZnSの量子ドットの存在下で10cStのシリコーン油(φ=0.2)中の0.01Mのピレンとともに乳化して作られた。3つの異なる蛍光染料は、蛍光オーバーレイ方式顕微鏡法を使って撮像した。オーバーレイ蛍光画像は、親水性の量子ドット(赤色)の内側水性液への隔離、疎水性ピレン(青色)の油液への隔離、および外側界面を安定化するFITC標識化されたコポリペプチド(緑色)の隔離を示している(図5B)。内側液滴の界面の標識は見えないが、内側液滴に含まれる量子ドットによるFITC標識化コポリペプチドの蛍光消失によるものと思われる。この仮説は、量子ドットを含まないFITC標識化K40rL10エマルションのLCSM画像(図5A)で、内側液滴の周囲のFITC蛍光が見られることにより裏付けられる。
【0056】
本発明の合成方法を使って、コポリペプチドの組成および配座を変更することができ、また、他のアミノ酸をポリペプチド鎖に組み込むこともできる。鎖配座の変更の効果を実証するため、K40rL10のようにランダムに共重合化されたラセミ体オリゴロイシン断片を、K6020のように安定したαへリックス構造を採用する鏡像異性的に純粋なオリゴロイシン断片に疎水性領域を変更した。これらのFITC標識化された0.1mMのポリペプチドの両者の超音波処理により作り出されたエマルションのLCSM画像は、両サンプルともに同様のダブルエマルションを形成したことを示している(図6Aおよび図6B)。ダブルエマルションの形成は、親水性ブロックとしてポリL−リシンを含むブロックコポリペプチドに限られるものではなく、例えば、負電荷のポリL−グルタミンの親水性ブロックでも形成できるということに留意することも重要である。1.0mMのE40rL10コポリペプチドのエマルションを、マイクロ流体ホモジナイザを使って生成した。このサンプルのCyro−CTEM画像は、ブロックコポリペプチドK40rL10によるものと同様にダブルエマルションが形成されたことを示している(図6Cおよび図6D)。さらに、疎水性領域を含まないホモポリマK60を使って乳化を試みたが、超音波処理後にエマルションは形成されなかった(図6E)。K60は良い水溶性を有するが、疎水性ブロックを欠いているので、強い両親媒性を有することを期待できない。また、KrLコポリペプチドの水溶液を油層と接触させ、剪断の適用なしに、ダブルエマルションの自発形成が起こるか否かを見たが、1週間の培養期間後においても自発形成は見られなかった。
【0057】
(付加的特徴および変更)
コポリペプチド安定化エマルション
マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノスケールの半径を有する液滴からなるシンプルおよびダブルエマルションを作る本発明の基本的な処理に使用可能な多数の組成的変更の可能性がある。本発明の実施の形態にかかる処理の基本要素は、第1の液(例、水)、異なる第2の非混和性の液(例、油)、および少なくとも2つの液のうちの1つ、または両者に顕著な溶解性(例、水溶性)を有する両親媒性のコポリペプチドである。コポリペプチドは少なくとも溶解性のある1つの液に付加され、2液間の界面を乱す非熱エネルギを液とコポリペプチドの系に供給し、液滴の形成と準安定性エマルションの生成を介して不可逆で最終的な界面表面領域を成長させる。適用される非熱エネルギは多数の異なる形態で供給でき、機械的剪断流動や、超音波、電磁界および電磁波、重力、ならびに濃度勾配を介して、または伸長流を引き起こす圧力低下を介しての供給が含まれる。液間の界面が乳化の起因となる非熱エネルギによって伸長されると、毛細管の不安定性による界面の不安定となり、より大きな液滴または膜のより小さな液滴への破壊をもたらす。液の種類、および界面を安定化するコポリペプチドの組成および構造により、これらの小液滴が他の液相の内側液滴を含んだり(例、水/油/水ダブルエマルションの形成)、含まなかったりする。
【0058】
水/油/水ダブルエマルションの内側液滴に所望の荷(cargo)を搭載するには、乳化の前に、連続液相に異なる種類の多数の溶解および分散した所望の荷要素を含むことができる。調査したものの最も一般的な場合、連続液相は水である。この場合、以下の種類の荷を水性の内側液滴内(および連続水性相に)に搭載できる。これには、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、tRNA、rRNA、miRNA、siRNA、piRNA、rasiRNA、tasiRNA、hcRNA、scnRNA、RNAポリメラーゼ、ヌクレチオド、オリゴヌクレオチド、トランスポゾン、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、微小管、アクチンフィラメント、中間径フィラメント、束化タンパク質、架橋結合タンパク質、トランスフェクション剤、塩、アニオン、カチオン、酸、基、緩衝剤、ウイルス、ビタミン、血清、溶解物、ATPおよびGTP(例、分子エネルギ源)、分子モータ、親水性薬物分子、細胞、ベシクル、ナノ液滴、ナノエマルション、フラーレン、一重および多重壁カーボンナノチューブ、細胞質、リボソーム、酵素、グルコース、ゴルジ、デンドリマ、界面活性剤、脂質、リポタンパク質、オリゴヌクレオチドペプチド共重合体、グロブリン、アルブミン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、糖類、エマルサン(emulsan)、サッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、生体適合性高分子、生分解性高分子、量子ドット、粘土ナノ粒子、金属ナノクラスタおよびナノ粒子、磁気感応酸化鉄ナノ粒子、有機および無機ナノスフィアおよびナノ粒子、同位体置換の親水性分子、造影剤、および蛍光染料がある。安定して分散されていることを条件に、これらの成分の連続相中の混合物も生成できる。両親媒性のコポリペプチドで安定化された水/油/水ダブルエマルションにおいては、最終的な液滴の粒度よりも小さく(または内側水滴容量よりも小さな容量に圧縮し得る)、水性相中の存在を好む広範囲の親水性物質と水分散された物質が、内側水滴内に取り込まれ得る。
【0059】
水/油/水ダブルエマルションの場合、内側水滴内の分散された物質の組成は、液間の界面を乱す非熱エネルギの適用(即ち、乳化)前の水性液の組成で決定される。乳化後、内側水滴は外側の連続水部分と同じ成分を含む。乳化が終わると、外側の水部分は、貴重な成分が含まれ得るので、液滴から分離され保持され得る。この分離に続いて、ダブルエマルションを、ブロックコポリペプチド、および恐らく所望の製品中で長期間にわたり液滴の安定性を維持するのに適した別の界面活性剤をも含んだ異なる連続水性液中に再分散することができる。この方法により、連続水性液の組成と内側水滴(つまり、油滴の内側)の組成とを異ならせて設定することができる。例えば、内側水滴に所望の薬物分子および粒子を所望の濃度で含ませることができ、連続水性相は必ずしもこれらを含まなくともよい。
【0060】
第2の非混和性液(例、油)も、広範囲の異なる分子、高分子、および粒子状物質を含むことができる。第2の液が疎水性とする(例、油)と、以下のものが分散された液滴の液中に取り込むことができる。これには、脂肪、脂質、ワックス、天然油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、疎水性高分子、疎水性ポリペプチド、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸)、生体適合性高分子、生分解性高分子、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、造影剤、蛍光染料、および液晶がある。水/油/水ダブルエマルションの場合、油は、内側水滴を包囲し、水滴中の含有物と共同して所望の機能を促進および/または改善する油溶性の薬物分子および指標を含むことができる。
【0061】
エマルションおよび/または液滴の液状部分は、乳化後、固化または液晶部分に変更でき得る。重合可能な油(例、紫外線で架橋結合可能なシリコーン油)を使用すると、エマルションまたはダブルエマルションに紫外線光を当てることにより、油を硬質な架橋結合高分子とすることができる。代替えとして、油がパラフィン系の場合、エマルションまたはダブルエマルションを形成後にパラフィンの固化温度以下に冷却することにより、液油を固化することができる。
【0062】
安定したエマルションまたはダブルエマルションを形成する能力は、10cStのPDMSシリコーン油に限定されない。約1cPから約1000cPの範囲の粘度に対応する、常温での範囲が約0.65cStから1000cStの動粘度を有する他のシリコーン油においても安定したエマルションおよび安定したダブルエマルションを形成することを見出した。本発明の別の実施の形態においては、この粘度の範囲を約0.1cPから10000cP以上に拡大することができ得る。一般に液の加熱は粘度を下げるので、高温での乳化が所望のエマルション組成(例、高粘度油)および構造(例、液滴粒度の低減)を得るために使えると考え得る。また、大豆油およびオレイン酸メチルを含む天然油は、本発明のコポリペプチドで乳化できる。トルエン、ジクロロベンゼン、およびドデカンなどの有機溶剤も、水の連続相中で、ブロックコポリペプチドを使って乳化された。
【0063】
極めて希薄極限(例、10−5)から0.9を超える濃厚領域の範囲での油体積分率φを使い、油/水エマルション中の安定した液滴、および水/油/水ダブルエマルションの安定したダブル液滴を作り出すことができた。通常、油/水エマルションの形成、または水/油/水ダブルエマルションの形成には、乳化はφ<0.5で行われ、より一般的には、油/水エマルションおよび水/油/水ダブルエマルションは、φ≒0.1からφ≒0.2で行われる。より高いφを使うと乳化処理における液滴生産の処理能力が増すので望ましいが、液滴構造の平均寸法もまたφに依存し得る。内側液滴の半径および体積分率も広範囲にわたって変更が可能であり、マイクロスケールからナノスケールの範囲の半径の通常の直接エマルションおよびダブルエマルションを作ることができた。
【0064】
エマルションまたはダブルエマルションを作るために界面を乱すエネルギを供給するのに、多数の異なるタイプの装置や機器を使うことができる。それには、コロイドミル、ミキサ、撹拌機、ホモジナイザ、超音波分散機、磁気分散機(magnetic disperser)、電磁誘電泳動励起(electromagnetic dielectrophoretic excitation)、マイクロ流動装置、および多孔質膜射出がある。調査では、コポリペプチドの安定化には、界面を乱す非熱エネルギ励起を供給するさまざまな異なる方法が使え、界面を顕著に乱す十分なエネルギが供給されるのであれば、同じエマルションの形態となることを示している。コポリペプチドを含む同じ組成の水/油/水ダブルエマルションを、撹拌機、超音波分散機、およびマイクロ流体ホモジナイザを使って作り出せることを示した。
【0065】
以下に、上述のサンプルを作り出すのに使用した実験の手順の詳細を説明する。
【0066】
方法と材料の概要
テトラヒドロフラン(THF)は、使用前に、窒素下でアルミナを装填したカラムを通過させて乾燥した(A. B. Pangborn他、Organometallics 15、1996年、p.1518)。分子量は、Wyatt DAWN EOS光散乱検出器とWyatt Optilab DSPを装備したSSI社のポンプにおいて、ゲル透過クロマトグラフィ/光散乱(GPC/LS)の2段階を60℃で行って得た。分離は、0.1MのLiBrのDMFを溶剤液として使用し、ポリペプチドの濃度を約5mg/mlとし、10、10および10オングストロームのPhenomenex社の5μmカラムで達成した。赤外線スペクトルは、ポリスチレン膜を使って校正されたPerkin Elmer社のRX1フーリエ変換赤外分光(FTIR)分光光度計で記録した。水素核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルは、Bruker社のAVANCE 400MHzの分光計で記録した。脱イオン(DI)水は、Purelab社のOption 560逆浸透浄水器を使って浄化した。ミリポア水は、Millipore社のMilli-Q Biocel A10浄化装置から得た。シリコーン油(ポリ−(ジメチルシロキサン)またはPDMS)は、粘度が1cStから1000cSt(PDMSの異なる平均分子量に対応)の範囲で、Gelest Inc.社から供給された。
【0067】
ブロックコポリペプチド合成の概要
αアミノ酸−N−カルボン酸無水物NCAモノマは、既刊の文献の方法で合成された(H. R. Kricheldorf、α-Aminoacid-N-Carboxyanhydrides and Related Materials (Springer-Verlag、NY)、1987年)。すべてのブロックコポリペプチドは、(PMeCoイニシエータを使って重合された(H. F. Klein、及びH. H. Karsch、Chem. Ber. 108、1975年、p.944)。得られたポリペプチドは、GPC、H−NMR、および赤外線スペクトルで特徴付けした(T. J. Deming、Macromolecules 32、1999年、p.4500)。共重合体の組成物は、重水(D2O)中で記録したH−NMRの積算値の分析により測定した。すべての組成物は、予測値の5%以内であった。測定された高分子鎖の長さ分布から、多分散性指数(Mw/Mn)は1.1から1.3の範囲であった。
【0068】
ポリ(NεCBZ−L−リシン)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20
ドライボックスにおいて、L−リシンNCA(10.00g、33mM)をTHF(200ml)に溶解し、プラスチックの栓で密封可能な500mlの平底フラスコに入れた。次に、一定量の(PMeCo(THF中48mg/ml溶液の16ml)を注射器でフラスコに加えた。撹拌棒を入れてフラスコを密封し、45分間攪拌した。重合物から一定量(50μl)をGPC分析用に取り出した(Mn=11000、Mw/Mn=1.24)。L−ロイシンNCA(1.3g、8.2mM)とD−ロイシンNCA(1.3g、8.2mM)とをTHF(52ml)に溶解し、続いて重合混合物に加えた。16時間撹拌後、溶液をドライボックスから取り出し、減圧下でTHFを除去した。FTIR分析は、モノマの完全消費を示し、既知の結果と同様であった(V. Breedveld他、Macromolecules 37、2004年、p.3943)。
【0069】
ポリ(L−リシン・HBr)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20、K40rL10
上記のポリ(NεCBZ−L−リシン)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20を、トリフルオロ酢酸(TFA)(350ml)に溶解し、1リットルの平底フラスコに移して氷浴中に置いた。次に、HBr(酢酸に33%)を加え(40ml、131mM)、2時間撹拌反応させた。反応混合物にジエチルエーテルを加えて遠心分離し、脱保護された高分子を単離した。続いて、単離した高分子をDI水に溶解し、四ナトリウムEDTA(3mM、4日)、0.1MのHCl(2日)、DI水(1日)、0.1MのLiBr(2日)、DI水(2日)で、それぞれの溶液を1日3回変えながら、透析(6000〜8000MWCOの膜)した。透析した高分子を、凍結乾燥によって単離し、製品として乾燥した白粉(4.8g、70.2%)とした。FTIRとH−NMRを行い、その結果は既知のものと同様であった(V. Breedveld他、Macromolecules 37、2004年、p.3943)。
【0070】
FITC機能化K40rL10
40rL10は、上述のように生成された。最初の断片(ポリCBZ−リシン)のGPC分析は、Mn=10500、Mw/Mn=1.20であった。脱保護された共重合体(150mg、1.3x10−2mM)を水に溶解し、125mlの平底フラスコに入れた。NaHCO(162mg、19mM)を溶液に加えた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(5mg、1.3x10−2mM)を乾燥DMSO溶液(1ml)に溶解し、高分子溶液に加えた。撹拌棒を入れ反応混合物を一晩攪拌した。高分子溶液を、DI水で3日間、水を1日3回変えながら、透析(6000〜8000MWCOの膜)した。透析した高分子を、凍結乾燥によって単離し、高分子鎖当たりおよそ1単位のフルオロセインを含んだ黄橙色の高分子(130mg、87%)とした。
【0071】
40rL10を使ったシリコーン油の乳化
凍結乾燥したK40rL10コポリペプチドを、まず、脱イオン水に所望の濃度で溶解した。ブロックコポリペプチドの濃度Cの範囲は、1.0x10−4mMから1.7mMであった。シリコーン油(10cSt、Gelest社PDMS)を、所望の連続相に対する油体積分率φ(0.01≦φ≦0.8)となるように加えた。シリコーン油と水の異なる濃度(10cStPDMSシリコーン油0.793g/ml対水1.0g/ml)により、管の頂部に栓が形成(Cyro−ETMで液滴粒度>300nm)された。手持ホモジナイザ(S8N-8G分散エレメント付きIKA Ultra-Turrax T8)または手持超音波ホモジナイザ(Cole-Palmer 4710シリーズモデルASIを35%から40%出力で)のいずれかを用いて剪断を適用し、予混合エマルションを生成した。この予混合エマルションを、75μmステンレススチール/セラミック相互反応チャンバを有し、入力空気圧p=130psiに設定したM-110S Microfluidizer(r) Processorを通過させた。エマルションをマイクロ流体ホモジナイザの出力部で集め、さらに5回マイクロ流体ホモジナイザを通過させ(合計N=6)、平均液滴半径<a>を低減しサンプルの単分散性を増した。コポリペプチド、水、ならびに大豆油およびオレイン酸メチルを含む10cStおよび100cStのシリコーン油以外の種々の油のダブルエマルションを形成した。Cyro−CTEMにより、次のコポリペプチド組成物でのダブルエマルションの形成を確認した。K20rL10、K40rL、K40rL10、K40rL20、K40rL30、K40rL20、およびE40rL10(E=グルタミン酸)。
【0072】
エマルションの分別
1.5mMのK40rL20エマルション(上述どおりに生成)を15mlのプラスチックの遠心分離チューブに入れ、IEC社HN-S卓上遠心分離機を使い、毎分3500回転で24時間、遠心分離した。0.5mmの栓が形成され、残余物と分離した。シリコーン油と水の異なる濃度(10cStPDMSシリコーン油0.973g/ml対水1.0g/ml)により、チューブの頂部に栓が形成(Cyro−ETMで液滴粒度>300nm)された。栓を他のサンプルから主要残余物として分離し、これらの一次残余物を、Beckman L8-55超高速遠心分離機を使い、毎分2万回転で4時間、さらに分別した。懸濁液の頂部に栓(Cyro−TEMで、液滴粒度範囲30nmから200nm)が、浮遊して残る二次残余物(Cyro−TEMで、液滴粒度範囲10nmから30nm)とともに形成された。
【0073】
動的光散乱法(DLS)
エマルション液滴の直径は、Photocor-FC基板とソフトウェアを使って動的光散乱法により測定した。サンプルを、強度の読みが1x10から6x10の範囲となるように、希釈した。それぞれの測定は、リニアなチャンネル間隔と調節可能なベースラインを用い、散乱角90°で500秒間行った。使用した適合方法は、データに適合して平均液滴半径を算出するよう調節可能なベースラインを用いたキュムラント分析である。
【0074】
40rL10エマルションの異なる組成物への3つの蛍光プローブの搭載
疎水性液をラベル付けするため、ピレンをシリコーン油成分に0.01Mの濃度で溶解し、量子ドット(Evident Technologies社、Type T2-MP 650nm Macoun Red InGaP/ZnS、アミン機能化)を水分に2μMの濃度で分散させた。エマルション生成のため、FITC−K40rL10(0.1mMの溶液150μl)をInGaP量子ドット(8μMの溶液50μl)と10cStのシリコーン油中のピレン(0.01Mのピレン溶液50μl)とともに混合した。混合物を、超音波ホモジナイザ(35%出力で)を10秒間使って乳化した。
【0075】
レーザ共焦点走査顕微鏡法(LSCM)
0.1mMのFITC−K40rL10エマルション(φ=0.2、10cStシリコーン油)を、0.1mMのFITC−K40rL10ポリペプチド溶液800μlと10cStPDMSシリコーン油200μlとを混合し、続いて手持超音波ホモジナイザ(35%出力で)を使って10秒間乳化した。撮像の前に、0.1mMのFITC−K40rL10エマルション懸濁液の一定量を脱イオン(DI)水で10倍に希釈した。ガラススライド上にエマルションを一滴載せ、続いてカバーガラスを置いた。サンプルを、488nm(青色)アルゴンレーザ(JDS Uniphase)、561nm(緑色)ダイオードレーザ(DPSS: Melles Griot)、およびSpectra-Physics Millenia X 532nm(緑色)ダイオードポンプレーザおよびTsunami Ti(紫外線励起用の768nmに同調したサファイアピコ秒パルス赤外線レーザ)からなる2フォトンレーザセットアップを装備したLeica-SP MP共焦点多光子倒立顕微鏡を使って撮像した。
【0076】
蛍光顕微鏡法
蛍光撮像の前に、エマルション懸濁液をDI水で10倍に希釈した。ガラススライド上にエマルションを1滴載せ、カバーガラスで覆った。サンプルを、Zeiss 200蛍光顕微鏡を使って撮像した。
【0077】
極低温透過型電子顕微鏡法(Cyro-TEM)撮像
それぞれのエマルションサンプルを、撮像の前に、DI水で10倍に希釈した。次に、各サンプルの一定量(5μl)をカーボングリッド上に置いた。カーボングリッドを、液体エサン中でのサンプルの自動ブロッティングとガラス化のため、Vitrobot (FEI)自動ガラス化装置に搭載した。グリッドを液体窒素下で保存し、次に、コールドステージを使って加速電圧120kVのPhillips Tecnai F20電子顕微鏡内に置いた。画像は、Leginonソフトウェアパーッケージと連動したTeitz SCX低速走査CCD検出器で得た。
【0078】
追加例
本発明のいくつかの実施の形態において設計したブロックコポリペプチド界面活性剤は、ポリ(L−リシン・HBr)−b−ポリ(rac−ロイシン)、KrLの一般構造を有する。ここで、xは20から100の範囲であり、yは5から30の範囲である(図1A)。親水性のポリ(L−リシン・HBr)断片は、中性pHにおいて高電荷で、良好な水溶性を有し(E. Katchalski、及びM. SeIa、Synthesis and chemical properties of poly-alpha-amino acids。Advances in Protein Chemistry 13、1958年、p.243-492)、化学機能化のためのアミン基を豊富に保有している(P. Niederhafner、J. Sebestik、及びJ. Jezek、Peptide dendrimers。Journal of Peptide Science 11、2005年、p.757-788)。他の重合体の両親媒性物質の疎水性の断片と違い、ポリ(L−ロイシン)断片は、棒状のαへリックス配座を採用し、それにより強力な鎖間会合と一般的な有機溶剤への溶解性の低さを引き起こす(A. P. Nowak他、Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles。Nature 417、2002年、p.424-428)。K(例、K6020)の構造のブロック共重合体は、水中において強く会合し、疎水性の断片のまとめを介して膜を形成することを示した(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、Charged polypeptide vesicles with controllable diameter。Journal of the American Chemical Society 127、2005年、p.12423-12428)。従って、そのペプチドの性質が油層における鎖間水素結合を介して液滴界面の追加的な機械的安定性を可能にしながら(C. Lapp、及びJ. Marchal、Preparation De La Poly-D,L-Phenylalanine En Helice Par Polymerisation De La D,L-Benzyl-4 Oxazolidine Dione-2-5。Journal De Chimie Physique Et De Physico-Chimie Biologique 60、1963年、p.756-766)、その無秩序な鎖配座が溶解性を改善し(表1)(H. R. Kricheldorf、及びT. Mang、C-13-NMR Sequence-Analysis, 20. Stereospecificity of the Polymerization of D,L-Leu-NCA and D,L-VaI-NCA。Makromolekulare Chemie-Macromolecular Chemistry and Physics 182、1981年、p.3077-3098、J. W. Breitenbach、K. Allinger、及びA. Koref、Viskositatsstudien an Losungen von DL-Phenylalanin-Polypeptiden。Monatsh. Chem. 86、1955年、p.269)、表面活動の促進を図る(表1)ことから、ポリ(rac−ロイシン)に重点的に取り組んだ。
【0079】
ジブロックコポリペプチドの乳化活動を、PDMSシリコーン油をK(rac−L)の水溶液に加えて観察した(表1、図2A、図2B、図11A)。その混合物を、手持ロータリホモジナイザを使って剪断し、次に、高圧マイクロ流体ホモジナイザを6回通過させた(図2C)。すべてのK(rac−L)サンプルにおいて、9か月にわたり成熟や相分離をせず、安定した水中油中水滴ナノエマルションとなった。疎水性成分の含有の低いコポリペプチド(例、K40(rac−L))のみにおいて、1年以降に徐々にエマルションが相分離した。超音波混合を含む他の混合方法においても、安定したエマルションをもたらしたが、その液滴の直径は数マイクロメートルまでもあった。30残基以上の疎水性断片の使用は、K40(rac−L)30では1mMまでのみの溶解と、水溶性を大幅に減少させた(表1)。対照として、K6020とK60の0.1mM懸濁液を界面活性剤としてそれぞれ使用したが、K6020では安定したエマルションを形成したが、K60では油と水との混合物の乳化はできなかった(図9A、図9B)。これらの結果は、K(rac−L)界面活性剤が、広範囲の組成と濃度において安定したエマルションをもたらすことを示している。
【0080】
液滴構造を探るため、ブロックコポリペプチドで安定化したエマルションを、光学顕微鏡および極低温透過型電子顕微鏡(CTEM)を使って撮像した。すべてのK(rac−L)サンプルは、油滴を含むことが見られ、それぞれが主に1つの内側水性液滴を内側体積と外側体積の一定の比で含んでいた(図7Aから図7D)。これらの結果を対照すると、K6020を使って形成したエマルションには単純な油滴しか含まれていなかったことから、本発明の実施の形態によるダブルエマルション構造の安定化に、レサミ−ロイシンが重要な役割を果たすということが明らかになった。疎水性のコポリペプチドの含有量の減少に従って液滴粒度が増加(表1、図10C)しており、共重合体の組成が界面平均曲率に影響することを示唆している。また、平均液滴直径が、K40(rac−L)20の濃度を減少させると増加することが見出された(図10A)。同様に、油体積分率の減少がより小さなエマルション液滴をもたらした(図10B)。エマルションは、水が連続液として保持され、50%に近接する油体積分率にまで、逆転することなく常に形成された。PDMSの他に、ドデカン、大豆油、およびオレイル酸メチルなどの他の非混和性の液でも、1mMのK40(rac−L)20水溶液を使ってエマルションをもたらした。本発明のさまざまな実施の形態における多様性が、L−アルギニン(R)およびL−グルタミン酸(E)それぞれの官能基のグアニジンまたはカルボン酸を含んだR40(rac−L)10またはE40(rac−L)10を使った安定したエマルションの形成により示された(図8A、図8B)。
【0081】
多くの適用にはナノスケールエマルション液滴の形成が必要であり、例えば、薬物送達においては、通常200nm以下の外側液滴直径が必要であり、好ましくは50nmから100nmである(K. Kataoka、G. S. Kwon、M. Yokoyama、T. Okano、及びY. Sakurai、Block-Copolymer Micelles as Vehicles for Drug Delivery。Journal of Controlled Release 24、1993年、p.119-132)。ダブルエマルションの生成には従来の方法が多くあるが、何れもこの粒度範囲の液滴の生成を可能にするものではない(N. Garti、Double emulsions - Scope, limitations and new achievements。Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects 123、1997年、p.233-246、I. G. Loscertales他、Micro/nano encapsulation via electrified coaxial liquid jets。Science 295、2002年、p.1695-1698、A. S. Utada他、Monodisperse double emulsions generated from a microcapillary device。Science 308、2005年、p.537-541、A. Benichou、A. Aserin、N. Garti、Double emulsions stabilized with hybrids of natural polymers for entrapment and slow release of active matters。Advances in Colloid and Interface Science 108-109、2004年、p.29-41)。超音波ホモジナイザを使い、最小ダブルエマルション液滴がCTEMで観察して約400nmの直径の多分散サンプルをもたらすK40(rac−L)20エマルションを作り出した。これらの液滴は、マイクロ流体ホモジナイザの6回の通過によりさらに粒度を減少され、約10から数100nmの範囲の液滴直径となった。これらのダブルエマルションの外部および内部合体の両者に対する安定性が、遠心分離による所望の粒度範囲の液滴の分別を可能にした。図12Aのサンプルの遠心分離は、直径が数100nmの液滴を含む浮力分別をもたらした。残りの懸濁液中のより小さな液滴は、超高速遠心分離によってさらに分離され(T. G. Mason、J. N. Wilking、K. Meleson、C. B. Chang、及びS. M. Graves、Nanoemulsions: formation, structure, and physical properties。Journal of Physics-Condensed Matter 18、2006年、p.R635-R666)、約10nmから100nmの直径の範囲の液滴の分別をもたらした(図12C)。この分別処理は、ナノスケール範囲の安定したダブルエマルション液滴の単離が極めて実現性があり、液滴が剪断応力、伸長応力、および浸透圧縮応力などの外部応力に対して驚くほど安定していることを示している。
【0082】
それらのカプセル化の能力の実証のため、水溶性および油溶性両者の蛍光マーカをコポリペプチドで安定化したダブルエマルションに搭載した。InGaP/ZnS量子ドットの分散を、ピレンを含んだPDMSシリコーン油との乳化に先立ち、フルオレセインでラベル付けされたFITC−K40(rac−L)10に混ぜ合わせた。蛍光顕微鏡を使って、ダブルエマルション液滴内の両マーカとラベル付けされたポリペプチドを撮像した(図5B)。画像は、親水性の量子ドット(赤色)が内側水性相に、疎水性のピレン(青色)が油相に、そしてラベル付けされたポリペプチド(緑色)が外側界面を安定化したコンパートメント化を示した。内側界面のポリペプチドは観察されなかったが、これは量子ドットによるフルオロセインラベルの消失によるものと思われる。K6020の界面活性剤で作られたサンプルでは、内側の水性コンパートメントのない、単純な油滴のみが観察された(図13B)。これらの荷が液滴内に少なくとも3ヶ月間カプセル化されていることが観察されており、ほとんどのダブルエマルション系と比べ、今までにないほどの内側水性コンパートメントの安定性の向上を示している(S. S. Davis、及びI. M. Walker、Multiple Emulsions as Targetable Delivery Systems。Methods in Enzymology 149、1987年、p.51-64、N. Garti、Double emulsions - Scope, limitations and new achievements。Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects 123、1997年、p.233-246、A. Benichou、A. Aserin、N. Garti、Double emulsions stabilized with hybrids of natural polymers for entrapment and slow release of active matters。Advances in Colloid and Interface Science 108-109、2004年、p.29-41)。
【0083】
これらの界面活性剤は、ナノスケール液滴の曲がった界面の凹面側に油がある油/水エマルションの安定性を良くする疎水性含有分(HC)、つまり親水性と疎水性残基の比、が高く設計されている。反対に、水/油/水ダブルエマルションの内側の水−油界面は、油が界面の凸面側にあるので、低いHCの界面活性剤によって最も安定化される。これらの異符号の平均界面曲率(R. Strey、Microemulsion microstructure and interfacial curvature。Colloid and Polymer Science 272、1994年、p.1005-1019)は、何故、1種の組成の界面活性剤が一般にダブルエマルション液滴を安定化させないか、従って界面活性剤の組み合わせが必要とされるかを説明している(M. F. Ficheux、L. Bonakdar、F. Leal-Calderon、及びJ. Bibette、Some stability criteria for double emulsions。Langmuir 14、1998年、p.2702-2706)。これはまた、棒状のオリゴロイシン断片が油で溶媒和されず油相に凝集し易く、K6020では油/水エマルションしか形成されないかをも説明している(A. P. Nowak他、Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles。Nature 417、2002年、p.424-428)。これらの観察を基に、水/油/水ダブルエマルションの内側水性液滴の安定化は、疎水性のポリペプチド断片が油中に容易に分散され、水性相における大きな親水性断片の立体的な込み合いが回避される場合に、顕著になると思われる。
【0084】
(rac−L)におけるラセミ−ロイシン断片は、ダブルエマルション液滴を安定化する特徴の組み合わせをもたらす。これらの断片の配座柔軟性は、油溶解性を改善する。これは、ポリ(rac−ロイシン)が、CHClおよび(CHSOなどの有機溶剤に溶解し、ポリ(L−ロイシン)がそうでないことにより示されている(H. R. Kricheldorf、及びT. Mang、C-13-NMR Sequence-Analysis, 20。Stereospecificity of the Polymerization of D,L-Leu-NCA and D,L-VaI- NCA。Makromolekulare Chemie-Macromolecular Chemistry and Physics 182、1981年、p.3077-3098、J. W. Breitenbach、K. Allinger、及びA. Koref、Viskositatsstudien an Losungen von DL-Phenylalanin-Polypeptiden。Monatsh. Chem. 86、1955年、p.269)。これにより、疎水性断片がより容易に油中に分散できるので、K(rac−L)鎖が内側液滴の油−水界面をより安定化することができる。改善された溶解性にもかかわらず、油溶剤中では、ほとんどすべてのポリ(rac−ロイシン)の残基が、分子内および分子間の水素結合に携わっている。ロイシンおよびフェニルアラニン両者のラセミ体高分子の研究では、両者とも水素結合を介して有機溶剤と会合していることを実証している(C. Lapp、及びJ. Marchal、Preparation De La PoIy-D,L-Phenylalanine En Helice Par Polymerisation De La D,L-Benzyl-4 Oxazolidine Dione-2-5。Journal De Chimie Physique Et De Physico-Chimie Biologique 60、1963年、p.756-766)。内側水性液滴の油との界面では、高いHCの本発明の高分子が油相中のrac−ロイシン断片の低いまとめ濃度をもたらし、これにより鎖間水素結合がほとんどされずに弱く安定した界面にする(図2C)。しかし、外側液滴の油−水界面の逆符号の曲率は、油相においてrac−ロイシン断片を濃くまとめることができ、鎖間水素結合を助長する。よって、内側水性液滴はより不安定ではあるが、外側界面が水素の架橋結合によって強化されると期待されるので、外側液滴との合併や、単純エマルションの形成が回避される。この概念を試験するため、rac−ロイシン断片に水素結合可能なアセトアミド基でキャップされたシリコーン油を含むエマルションを作った。K60(rac−L)20の乳化では、多数の内側液滴を含んだ水/油/水ナノエマルションが作られ(図11Aから図11D)、rac−ロイシン断片が油相中で水素結合の相互作用を介して液滴を安定化し、従って、内側液滴の合体を阻害することができるという仮説を支持している。
【0085】
水素結合を介して相互作用する本発明のラセミ体の無秩序な疎水性のポリペプチド断片の使用は、水/油/水ダブルエマルションの安定化の新規な手段である。この方法は、ダブルエマルションが追加の界面活性剤なしでは形成されず、秩序化された両親媒性のヘリックスが最も一般的な界面活性の源であるタンパク質またはペプチドで安定化したエマルションとは大きく異なる(M. M. Enser、G. B. Bloomberg、C Brock、及びD. C. Clark、De novo design and structure-activity relationships of peptide emulsifiers and foaming agents。International Journal of Biological Macromolecules 12、1990年、p.118-124、E. Dickinson、Structure and composition of adsorbed protein layers and the relationship to emulsion stability。Journal of the Chemical Society Faraday Transactions 88、1992年、p.2973-2983、M. Saito、M. Ogasawara、K. Chikuni、及びM. Shimizu、Synthesis of a peptide emulsifier with an amphiphilic structure。Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 59、1995年、p.388-392、D. G. Dalgleish、Conformations and structures of milk proteins adsorbed to oil-water interfaces。Food Research International 29、1996年、p.541-547、C. B. Chang、C. M. Knobler、W. M. Gelbart、及びT. G. Mason, Curvature Dependence of Viral Protein Structures on Encapsidated Nanoemulsion Droplets。ACS Nano 2、2008年、p.281-286)。本発明の戦略は、rac−バリンおよびrac−アラニンの疎水性断片を含むサンプルにおいても安定したダブルナノエマルションをもたらしたので、他のコポリペプチドにも適用できる(図8C、図8D)。ブロックコポリペプチド界面活性剤の使用は、今までになく容易にナノスケール液滴を生成できるようにすることによって、水/油/水ダブルエマルションの主要な制約を克服することができ、また、その液滴は高い安定性を示し、油溶性及び水溶性の両者の荷を同時にカプセル化することも可能である。(ここでの用語「荷」とは、その液滴がダブルエマルションの内側液滴であるか外側液滴であるか、または直接エマルションの単純液滴かにかかわらず、あらゆる液滴内に含まれる液に加えることができるいかなる物質をも意味する。)
【0086】
方法の要約
40(rac−L)20のコポリペプチドを、所望の濃度(例、0.01mM<C<1.5mM)で超純水に溶解する。PDMSシリコーン油(10cSt)を加えて、所望の油対連続相の体積分率φ(0.05<φ<0.50)とする。手持ホモジナイザ(S8N-8G分散エレメントを装備したIKA Ultra-Turrax T8)を1分間使って、または手持超音波ホモジナイザ(Cole-Palmer 4710シリーズモデルASIを出力35〜40%で)を10秒間使って混合し、マイクロスケールのエマルション(つまり、「予混合」エマルション)を作る。このエマルションを、75μmステンレススチール/セラミック相互反応チャンバを装備し、入力空気圧p=130psiに設定したMicrofluidizer(r) Processor M-110Sを通過させる。装置の出力部でエマルションを集め、次に、マイクロ流体ホモジナイザを合計6回繰り返し通過させる。これにより、平均液滴半径<a>(例、単純エマルションの一重液滴、ならびにダブルエマルションの内側および外側液滴の)が減少し、エマルション内の液滴の単分散が増加する。同様の手順が、他のブロックコポリペプチド界面活性剤を使ったエマルションの生成に用いられた(表1、図7A〜図7C)。内側液滴の半径を外側液滴の半径で割って得られる比(「I/O比」という)は、異なる疎水性鎖長において比較的均一で、約0.5であった(表1、図7D)。リシンまたはロイシン領域が異なる親水性または疎水性の残基でそれぞれ置き換えられた他の両親媒性ブロックコポリペプチドでも、ダブルエマルションを形成することが見出された(図8A〜図8D)。異なるコポリペプチド界面活性剤の乳化能力を、安定したエマルションまたは安定したダブルエマルションをもたらさないホモポリペプチドK60(図9A、図9B)との対照で、安定性の劣るエマルションを形成するトルエンを使って定性的にも評価した。
【0087】
方法の補足
物質
テトラヒドロフラン(THF)を、使用の前に、窒素下でアルミナを装填したカラムを通過させて乾燥した(A. P. Nowak他、Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles。Nature 417、2002年、p.424-428)。分子量は、Wyatt DAWN EOS光散乱検出器とWyatt Optilab DSPを装備したSSI社のポンプにおいて、ゲル透過クロマトグラフィ/光散乱(GPC/LS)の2段階を60℃で行って得た。分離は、0.1MのLiBrのDMFを溶剤液として使用し、ポリペプチドの濃度を約5mg/mlとし、10、10および10オングストロームのPhenomenex社の5μmカラムで達成した。赤外線スペクトルは、ポリスチレン膜を使って校正されたPerkin Elmer社のRX1フーリエ変換赤外分光(FTIR)分光光度計で記録した。水素核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルは、Bruker社のAVANCE 400MHzの分光計で記録した。脱イオン(DI)水は、Purelab社のOption 560逆浸透浄水器を使って浄化した。超純水(18MΩ)は、Millipore社のMilli-Q Biocel A10浄化装置から得た。シリコーン油(10cSt、ポリジメチルシロキサン、PDMS)は、Gelest Inc.から供給された。
【0088】
ブロックコポリペプチド合成
αアミノ酸−N−カルボン酸無水物NCAモノマを、既刊の文献の方法で合成した(同文献)。得られたポリペプチドは、GPC、H−NMR、および赤外線スペクトルを使って特徴付けした(同文献)。共重合体の組成物は、重水(D2O)中で記録したH−NMRの積算値の分析により測定した。すべての組成物は、予測値の5%以内であった。測定した高分子鎖の長さ分布から、多分散性指数(Mw/Mn)は1.1から1.3の範囲であった。K60L20を、既刊の文献の方法で合成した(E. P. Holowka、D. J. Pochan、及びT. J. Deming、Charged polypeptide vesicles with controllable diameter。Journal of the American Chemical Society 127、2005年、p.12423-12428)。疎水性のポリ(ロイシン)断片の鎖配座は、円偏光二色性分光法を使って確認した(図14)。ここでは、ポリ(リシン)断片からの影響は、既述(A. P. Nowak他、Rapidly recovering hydrogel scaffolds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles。Nature 417、2002年、p.424-428)のように、ポリ(ラセミ−リシン)断片を使って除去されている。
【0089】
ポリ(Nε−CBZ−L−リシン)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20
窒素で充満したグローブボックスにおいて、CBZ−L−リシンNCA(10g、33mM)をTHF(200ml)に溶解し、プラスチックの栓で密封可能な500mlの平底フラスコに入れた。次に、一定量の(PMeCo(THF中48mg/ml溶液の16ml)を注射器でフラスコに加えた。撹拌棒を入れてフラスコを密封し、45分間攪拌した。重合溶液から一定量(50μl)をGPC分析用に取り出した(Mn=11000、Mw/Mn=1.24)。L−ロイシンNCA(1.3g、8.2mM)とD−ロイシンNCA(1.3g、8.2mM)とをTHF(50ml)に溶解し、続いて重合混合物に加えた。16時間撹拌後、FTIR分析は、モノマの完全消費を示し、既知の結果と同様でとなった(同文献)。
【0090】
ポリ(L−リシン・HBr)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20、K40(rac−L)20
上記のポリ(Nε−CBZ−L−リシン)40−b−ポリ(rac−ロイシン)20溶液をドライボックスから取り出し、減圧下でTHFを除去した。次に、ブロックコポリペプチドをトリフルオロ酢酸(TFA)(350ml)に溶解し、1リットルの平底フラスコに移して氷浴中に置いた。次に、HBr(酢酸に33%)を加え(40ml、131mM)、2時間撹拌反応させた。反応混合物にジエチルエーテルを加えて(400ml)遠心分離し、脱保護された高分子を単離した。続いて、単離した高分子をDI水に溶解し、四ナトリウムEDTA水溶液(3mM、2日)、HCl水溶液(100mM、2日)、DI水(1日)、LiBr水溶液(100mM、2日)、最後にDI水(2日)で、それぞれの溶液を1日3回変えながら、4リットルの容器内で透析(6000〜8000MWCOの膜を使用)した。透析した高分子を、凍結乾燥によって単離し、製品として乾燥した白粉(4.8g、70%)とした。ブロックコポリペプチドにFTIRとH−NMRを行い、その結果は既知のものと同様となった(同文献)。
【0091】
FITC機能化K40(rac−L)10
40(rac−L)10共重合体は、K40(rac−L)20と同様の方法で生成した。最初の断片(ポリCBZ−L−リシン)のGPC分析では、Mn=10500、Mw/Mn=1.20であった。脱保護された共重合体(150mg、1.3x10−2mM)を水に溶解し、125mlの平底フラスコに入れた。NaHCO(160mg、19mM)を溶液に加えた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(5mg、1.3x10−2mM)を溶解した乾燥DMSO溶液(1ml)を、高分子溶液に加えた。撹拌棒を入れ反応混合物を一晩攪拌した。高分子溶液を、DI水で3日間、水を1日3回変えながら、透析(6000〜8000MWCOの膜を使用)した。透析した高分子を、凍結乾燥によって単離し、高分子鎖当たりおよそ1単位のフルオロセインを含んだ黄橙色の高分子(130mg、87%)とした。FITC機能化したK6020共重合体も同様の手順を使って作った。
【0092】
FITC−K40(rac−L)10安定化ダブルエマルションの異なる相への蛍光プローブの搭載
疎水性相をラベル付けするために、ピレンを0.01Mの濃度でシリコーン油に溶解した。水性相をラベル付けするために、水溶性量子ドット(Evident Technologies社、Type T2-MP 650nm Macoun Red InGaP/ZnS、アミン機能化)を水性相に2μMの濃度で分散させた。エマルションを作るために、FITCでラベル付けされたK40(rac−L)10(0.1mMの溶液150μl)とInGaP量子ドット(8μMの溶液50μl)とを10cStのシリコーン油中のピレン(0.01Mのピレン溶液50μl)と混合した。混合物を、超音波ホモジナイザ(35%出力で)を10秒間使って乳化した。FITC−K6020ブロックコポリペプチド界面活性剤についても同様の手順で行った。撮像の前に、カプセル化されなかった量子ドットを、脱イオン水で透析して除去した。
【0093】
本発明のさまざまな実施の形態について詳細に述べてきたが、上述の説明から、当業者においては、本発明の広い範囲から逸脱することなく変更および修正が可能であることは明らかであり、従って、本発明は、請求項に定義される本発明の精神の範囲に含まれるこのような変更および修正のすべてを含むものである。
【0094】
例えば、より高い油体積分率φの水/油/水ダブルエマルションを作りたい場合がある。ダブルエマルションは、外側液滴の一次分散相の希釈体積分率φが、φ<<1から0.4の範囲での乳化を介して、また、いくつかの実施の形態においては、単純で適切な手順の変更により約φ≒0.6にまで、ごく普通に形成することができる。この既知の形態を拡張する特定の実施の形態においては、φ>6、つまり約φ≒0.9にまで達成できると考えられる。ある特定のφでの乳化後、液滴構造(単純なシングル液滴およびダブル液滴も含む)を、その後の蒸発、透析、遠心分離、超高速遠心分離、ろ過、およびマイクロ流体濃縮を含む方法による浸透圧の適用により、より高いφに濃縮することができる。エマルションを濃縮し、かつ安定した状態にできる最大体積分率は、液滴粒度および共重合体がどのように弾性のある界面を安定化しているかを含む多くのファクタに依存する。特定の実施の形態においては、φ≒0.95までの濃縮が達成できる。ナノスケール液滴については、乳化処理後の濃縮処理を介して、約φ≒0.8までの体積分率に至るのが通常である。
【0095】
ダブルエマルションの生成後、本発明の実施の形態においては、より小さな液滴を大きな液滴から分離するのに、遠心分離、超高速遠心分離、外側液滴粒度別の枯渇相互作用などの粒度分別の方法を使うことができる。また、液滴の浮力が、内側および外側液滴の両者の体積で決まるその密度に依存するので、これを内側液滴体積の分別をすることにも使われる可能性がある。
【0096】
ここでの「境界表面領域」には、次のものが含まれる。当業者においては、二次分散相(即ち、水の内側液滴)と連続相(即ち、水溶液)との間に、一次分散相(即ち、油)の「膜」が存在するといわれる。安定したダブルエマルションにおいては、この膜の分離圧が存在し、それが熱駆動応力、化学駆動応力、および軽度の外部攪拌(例、物理的な剪断応力)に対抗することができ、従って膜が「安定」しているといわれる。膜の安定性は、逆符号の平均曲率を有する(一般に認められた観念による)2つの油−水界面の合体に対する抵抗と等価である。外側液滴の合体による粗大化からの安定性は、安定保存を維持する実用的な製品とするために、一般に必要とされる。この場合、近接し得る2つの外側液滴の油−水界面を分離する連続相の水膜の反発分離圧を作る、少なくとも短距離の反発力も存在する。
【0097】
また、本発明の追加的な実施の形態によれば、他のタイプの物質も安定剤または表面改質剤として使うことができ、それをダブルまたは多重エマルションの界面を安定化するブロック共重合体に取り込める可能性がある。この可能性のある共重合体には、リポ−ポリペプチド、グリコ−ポリペプチド、およびポリ核酸−ポリペプチド(即ち、ポリペプチド−ポリヌクレオチド共重合体)がある。例えば、帯電したオリゴヌクレオチドまたは短ポリヌクレオチド(例、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNAなど)が、親水性ブロックを置き換え、ラセミ体疎水性ブロック(例、rac−L)に付着して所望の溶解性と界面安定性の特性を与える。
【0098】
別の実施の形態においては、ポリエチレングリコール(PEG)で変性されたブロック共重合体を含むことができ、それには、ダブルエマルションの生成および安定したダブルエマルションの表面の修飾(PEG化した分子が追加的な界面安定性を多く作らなくとも)の使用に特定されたポリ−(エチレングリコール)−ポリ−(ペプチド)が含まれる。PEGおよびPEG誘導体は、薬物送達ビークルの良好な抵抗被膜をもたらすとして知られており、PEGで変性されたダブルエマルションが血流の循環内で長く存在することが期待される。
【0099】
ダブルエマルションおよびダブルナノエマルションに含まれる薬物分子などの荷の解放は、pH、イオン強度、温度、化学環境、またはそれらの組み合わせの変更により誘発され得ることが当然期待できる。このような変更は、配座、密度、および油−水界面に存在するコポリペプチド間の相互作用に影響し、安定性を変えて解放に適した条件を作り出し得る。同様に、その液の性質から、本発明の実施の形態においては、ダブルエマルションが、人間を含む生命体に導入されたときに、優れたクリアランス特性を示すことを期待できる。このクリアランス特性は、それにより生命体が液滴物質および結びついた安定化物質をクリア(即ち、消化、排出、または他の除去法)することのできる機構を意味する。
【0100】
以下の天然アミノ酸が、限定はされないが、シングル液滴、ダブル液滴、および多重液滴を含む液滴構造を安定化する高分子の分子組成の一部となるように、重合化されることが当然ながら期待できる。この安定化は、ナノスケールおよびより大きな液滴構造を包含する。これらのアミノ酸は、限定はされないが、対掌性、鏡像異性、およびH−、L−、Z−、D−、LD−、およびrac−などの他の分子特定化を含むさまざまな形態になっている。「天然」の分類はいささか曖昧ではあるが、「天然」アミノ酸の良好なガイドとしては、Sigma-Aldrich(r)のような大手の生化学および化学薬品会社のカタログの商品リストから推定され得る。例えば、そのカタログには、以下のアミノ酸用の広範囲な合成前駆体があり、それには、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン/シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンがある。
【0101】
上述の例の多くは、コポリペプチドの疎水性ブロックへの完全ラセミ体のアミノ酸の使用がダブルエマルションの形成および安定化を促進できることを実証しているが、本発明の概念はこれらの例に限定されない。例えば、本発明の実施の形態においては、非ラセミ体のアミノ酸(即ち、ラセミ性を含む疎水性ブロック内の連続するD−アミノ酸の小区分(subsection)および/または連続するL−アミノ酸の小区分)を一部含む疎水性ブロックを有し、ダブルエマルションの形成と安定化を促進する所望の特性をもたらし得るコポリペプチドを設計および合成することが可能である。同様に、コポリペプチドの疎水性ブロックへの非ラセミ体のアミノ酸の使用がシングルエマルションの形成と安定性を促進しがちである例を示したが、本発明の実施の形態においては、ラセミ体のアミノ酸を一部含む疎水性ブロックを有し、シングルエマルションの形成と安定化を促進する所望の特性をもたらし得るコポリペプチドを設計および合成することが可能である。
【0102】
他の天然アミノ酸関連構造は、ダブルエマルションおよびダブルナノエマルション構造を安定化する共重合体の分子組成の一部を形成するように重合することができる。それには、アミノアルコール、アミノアルデヒド、アミノラクトン、およびN−メチルアミノ酸が含まれる。
【0103】
シングル、ダブル、および多重エマルションを安定化する共重合体の一部となり得る非天然アミノ酸およびアミノ酸誘導体の例には、アラニン誘導体、脂環式アミノ酸、アルギニン誘導体、芳香族アミノ酸、アスパラギン誘導体、アスパラギン酸誘導体、β−アミノ酸、システイン誘導体、DAB(2,4−ジアミノブタン酸)、DAP(リン酸二アンモニウム)、グルタミン酸誘導体、グルタミン誘導体、グリシン誘導体、ヒスチジン誘導体、ホモアミノ酸、イソロイシン誘導体、ロイシン誘導体、線状コア(linear core)アミノ酸、リシン誘導体、n−メチルアミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、ペニシラミン、フェニルアラニン誘導体、フェニルグリシン誘導体、プロリン誘導体、ピログルタミン誘導体、セリン誘導体、トレオニン誘導体、トリプトファン誘導体、チロシン誘導体、バリン誘導体、および生化学および化学薬品会社の一般的なカタログにリストされている100種以上の「他」の誘導体型の分子組成および構造がある。例えば、2008年8月のSigma-Aldrich(r)の製品として、1000種以上の非天然アミノ酸誘導体がリストされている。この数は大きくなると見られ、これらはエマルション、ダブルエマルション、および多重エマルションの安定化に使われるコポリペプチドに取り込むことができる代替の他の分子構造を提供し得る。シングルエマルションまたはダブルエマルションの安定化に適した複雑な両親媒性の共重合体の製造に使用でき得る潜在的な分子構成要素の別の供給源は、BACHEM Americas Inc.社の2008年版の「Building Blocks」および「Peptides and Biochemicals」カタログ(www.bachem.com)で、多種のアミノ酸誘導体、特殊アミノ酸、樹脂結合アミノ酸、および他のリンカや試薬が記載されている。
【0104】
液滴を安定化する共重合体は、同一界面上の共重合体分子間、同一ダブルまたは多重エマルション構造内の隣接する内側および外側界面上の共重合体分子間、隣接する内側液滴の界面上の共重合体分子間、および隣接する外側液滴の界面上の共重合体分子間の機能性の結び付きおよび/または連結をもたらす化学的または物理的な変化を介して活性化することができる反応基(例、重合性基、pH感応基、光反応基、および光重合基)を含む分子組成および構造を有することができる。
【0105】
液滴構造を安定化する共重合体は、酵素および触媒機能を有することができる。これには、酵素、分析酵素、共同因子、コラゲナーゼ、酵素阻害剤、酵素媒介合成、安定剤、酵素基質、レクチン、分子生物学的酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、ならびにタンパク質分解酵素および基質が含まれる。共重合体の他の所望の機能的分子成分は、アミン保護剤、グアニジン保護剤、およびグアニジニル化などを選択し共重合体に取り込むことができる。
【0106】
重合して共重合体の分子組成の一部を形成するのに有用な合成構造は、限定はされないが、マイクロスケールまたはナノスケール液滴にかかわらず、シングル液滴、ダブル液滴および多重液滴構造の液滴構造を安定化する。これらの合成構造には、限定はされないが、ポリ−(エチレングリコール)(PEG)、官能化オリゴエチレングリコール、単官能性PEG、ホモ二官能性PEG、ヘテロ二官能性PEG、PEG化オリゴヌクレオチド、およびPEG化ペプチドがある。
【0107】
一般に、組成、構造、および機能の少なくともある面を模倣する合成誘導分子は、本明細書に記載したようなダブルエマルションの安定化をもたらすことを当然ながら期待でき得る。従って、将来開発される新規の非天然のアミノ酸のような分子も、ダブルおよび多重エマルション構造の安定化に使用可能であることが当然ながら期待でき得る。
【0108】
【表1】

*=GPC−LSで測定した数平均分子量。
**=このサンプルは大きな液滴を遠心分離で分別し、さらに超高速遠心分離で分別。
#=このサンプルは、単純な油中水滴エマルションを形成。
†=油/水界面張力データ、10cStのPDMSと10mMドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液との接触=12.4dyne/cm、10cStのPDMSと脱イオン水との接触=40.7dyne/cm。
N/A=実験せず。
ブロックコポリペプチド界面活性剤をエマルションの生成に使用した。すべてのエマルションは、マイクロ流体ホモジナイザを使用し、通過回数N=6、ホモジナイザ入力空気圧p=130psi、ブロックコポリペプチド濃度C=1.0mM、および油体積分率φ=0.20の条件で生成した。直径(外側液滴の)および内側/外側直径比は、CTEM画像の少なくとも50液滴の測定値を平均して得た。臨界凝集濃度(CAC)は、ピレン蛍光を20℃で使用して測定した。水溶解限度は、各ペプチドの15mM溶液を、光学的に透明な溶液になるまで希釈して測定した。ブロック共重合体の溶解性は、PDMS中では無視できる程度であった。油/水界面張力データは、デュヌュイ(Du Nuoy)リング法で、10cStのPDMSおよびブロックコポリペプチド溶液(0.1mM、引き上げ速度=0.01mm/s、25℃)を使って測定した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に連続な液体媒体と、
該実質的に連続な液体媒体内に分散する複数の液滴構造と、を含み、
該複数の液滴構造の各液滴構造が、
外部表面を有する第1の液の外側液滴と、
該第1の液滴内に内部表面を有する第2の液の内側液滴であって、該第2の液が該第1の液に非混和性であり、該内側液滴および該外側液滴が両者間の境界表面領域に該第1の液の膜を有する内側液滴と、
該外側液滴の該外部表面に配置されるブロック共重合体の外層と、
該内側液滴および該外側液滴間の該境界表面領域に近接して該内側液滴の該内部表面に配置されるブロック共重合体の内層と、を含み、
該ブロック共重合体が親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して該液滴構造の安定化に作用し、該第1の液が該実質的に連続な液体媒体に非混和性であるエマルション。
【請求項2】
前記液滴構造の非変形な液滴直径に対応する最大直径が約1000nm以下で、かつ約10nm以上である請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記液滴構造の非変形な液滴直径に対応する最大直径が約250nm以下で、かつ約50nm以上である請求項1に記載のエマルション。
【請求項4】
前記ブロック共重合体の内層のブロック共重合体が前記ブロック共重合体の外層のブロック共重合体と実質的に同じ分子形態である請求項1に記載のエマルション。
【請求項5】
前記親水性高分子ブロックが約200Daから約3,000,000Daの範囲の分子量を有し、前記疎水性高分子ブロックが約200Daから約3,000,000Daの範囲の分子量を有する請求項1に記載のエマルション。
【請求項6】
前記内側液滴の平均半径を前記外側液滴の平均半径で除して定義される無次元比が約0.9以下で、かつ約0.05以上である請求項1に記載のエマルション。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の内層が2つの区別可能に異なる型のモノマの重合から形成されるジブロック共重合体であり、前記ブロック共重合体の外層が該2つの区別可能に異なる型のモノマの重合から形成されるジブロック共重合体である請求項1に記載のエマルション。
【請求項8】
前記親水性高分子ブロックが主に親水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが主に疎水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックである請求項1に記載のエマルション。
【請求項9】
前記親水性高分子ブロックが複数の型の親水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが複数の型の疎水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックである請求項1に記載のエマルション。
【請求項10】
前記親水性アミノ酸が、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−リシン、L−セリン、L−トレオニン、L−チロシン、D−アルギニン、D−アスパラギン、D−アスパラギン酸、D−システイン、D−グルタミン酸、D−グルタミン、D−ヒスチジン、D−リシン、D−セリン、D−トレオニン、D−チロシン、DL−アルギニン、DL−アスパラギン、DL−アスパラギン酸、DL−システイン、DL−グルタミン酸、DL−グルタミン、DL−ヒスチジン、DL−リシン、DL−セリン、DL−トレオニン、DL−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる親水性アミノ酸の群から選択される請求項8に記載のエマルション。
【請求項11】
前記疎水性アミノ酸が、ラセミ−アラニン、ラセミ−グリシン、ラセミ−イソロイシン、ラセミ−ロイシン、ラセミ−メチオミン、ラセミ−フェニルアラニン、ラセミ−プロリン、ラセミ−トリプトファン、ラセミ−バリン、およびこれらの組み合わせからなる疎水性アミノ酸の群から選択される請求項8に記載のエマルション。
【請求項12】
前記疎水性アミノ酸が、ラセミ−アラニン、ラセミ−グリシン、ラセミ−イソロイシン、ラセミ−ロイシン、ラセミ−メチオミン、ラセミ−フェニルアラニン、ラセミ−プロリン、ラセミ−トリプトファン、ラセミ−バリン、およびこれらの組み合わせからなる疎水性アミノ酸の群から選択される請求項10に記載のエマルション。
【請求項13】
前記親水性アミノ酸および前記疎水性アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸の群から選択される請求項8に記載のエマルション。
【請求項14】
前記親水性アミノ酸がL−リシンであり、前記疎水性アミノ酸がラセミ−ロイシンである請求項8に記載のエマルション。
【請求項15】
KがL−リシン、rLがラセミ−ロイシンをそれぞれ表し、xが10から200の範囲の整数で、yが3から30の範囲の整数であるとき、前記ブロック共重合体がKrLの式を満足する構造を有するブロックコポリペプチドである請求項1に記載のエマルション。
【請求項16】
前記内側液滴の前記第2の液が親水性であり、さらにその中に、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、塩、ウイルス、ビタミン、血清、溶解物、ATP、GTP、分子モータ、親水性薬物分子、細胞、ベシクル、ナノ液滴、ナノ粒子、フラーレン、一重壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、細胞質、リボソーム、酵素、グルコース、ヘモグロビン、ゴルジ、デンドリマ、界面活性剤、脂質、アルブミン、アニオン、カチオン、緩衝剤、糖類、サッカリド、量子ドット、粘土ナノ粒子、金属ナノクラスタ、金属ナノ粒子、磁気感応酸化鉄ナノ粒子、有機ナノスフィア、有機ナノ粒子、無機ナノスフィア、無機ナノ粒子、蛍光染料、導入剤、防腐剤、抗菌剤、電磁放射吸収物質、同位体特定物質、放射性同位元素含有分子、コントラス強調造影剤、細胞機能阻害剤、細胞機能強化剤、細胞内下部構造阻害剤(agents that disrupt cellular substructures)、細胞内下部構造調整剤(agents that modify cellular substructures)、細胞代謝経路作用剤、細胞アポトーシス誘発剤、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項1に記載のエマルション。
【請求項17】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリ−酸、ポリ−塩基、ポリペプチド、ブロックコポリペプチド、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項1に記載のエマルション。
【請求項18】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリペプチド、ブロックコポリペプチド、ポリ−酸、ポリ−塩基、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項16に記載のエマルション。
【請求項19】
液滴構造であって、
外部表面を有する第1の液の外側液滴と、
該第1の液滴内に内部表面を有する第2の液の内側液滴であって、該第2の液が該第1の液に非混和性であり、該内側液滴および該外側液滴が両者間の境界表面領域に該第1の液の膜を有する内側液滴と、
該外側液滴の該外部表面に配置されるブロック共重合体の外層と、
該内側液滴の該内部表面に配置されるブロック共重合体の内層と、を含み、
該ブロック共重合体が親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して該外側液滴の該外部表面の該内側液滴の該内部表面との合体の安定化と該液滴構造の他の液滴構造との合体の安定化に作用する液滴構造。
【請求項20】
前記液滴構造の非変形な液滴直径で与えられる最大直径が約1000nm以下で、かつ約10nm以上である請求項19に記載の液滴構造。
【請求項21】
前記液滴構造の非変形な液滴直径で与えられる最大直径が約250nm以下で、かつ約50nm以上である請求項19に記載の液滴構造。
【請求項22】
前記ブロック共重合体の内層のブロック共重合体が前記ブロック共重合体の外層のブロック共重合体と実質的に同じ分子形態である請求項19に記載の液滴構造。
【請求項23】
前記親水性高分子ブロックが約200Daから約3,000,000Daの範囲の分子量を有し、前記疎水性高分子ブロックが約200Daから約3,000,000Daの範囲の分子量を有する請求項19に記載の液滴構造。
【請求項24】
前記内側液滴の半径を前記外側液滴の半径で除して与えられる比が約0.9以下で、かつ約0.05以上である請求項19に記載の液滴構造。
【請求項25】
前記ブロック共重合体の内層が2つの区別可能に異なる型のモノマの重合から形成されるジブロック共重合体であり、前記ブロック共重合体の外層が該2つの区別可能に異なる型のモノマの重合から形成されるジブロック共重合体である請求項19に記載の液滴構造。
【請求項26】
前記親水性高分子ブロックが主に親水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが主に疎水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックである請求項19に記載の液滴構造。
【請求項27】
前記ポリペプチドブロックの少なくとも1つが表面機能化をもたらす部分表面を含む請求項26に記載の液滴構造。
【請求項28】
前記親水性高分子ブロックが複数の型の親水性アミノ酸を主に含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが複数の型の疎水性アミノ酸を主に含むポリペプチドブロックである請求項19に記載の液滴構造。
【請求項29】
前記親水性アミノ酸が、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−リシン、L−セリン、L−トレオニン、L−チロシン、D−アルギニン、D−アスパラギン、D−アスパラギン酸、D−システイン、D−グルタミン酸、D−グルタミン、D−ヒスチジン、D−リシン、D−セリン、D−トレオニン、D−チロシン、DL−アルギニン、DL−アスパラギン、DL−アスパラギン酸、DL−システイン、DL−グルタミン酸、DL−グルタミン、DL−ヒスチジン、DL−リシン、DL−セリン、DL−トレオニン、DL−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる親水性アミノ酸の群から選択される請求項26に記載の液滴構造。
【請求項30】
前記疎水性アミノ酸が、ラセミ−アラニン、ラセミ−グリシン、ラセミ−イソロイシン、ラセミ−ロイシン、ラセミ−メチオミン、ラセミ−フェニルアラニン、ラセミ−プロリン、ラセミ−トリプトファン、ラセミ−バリン、およびこれらの組み合わせからなる疎水性アミノ酸の群から選択される請求項26に記載の液滴構造。
【請求項31】
前記疎水性アミノ酸が、ラセミ−アラニン、ラセミ−グリシン、ラセミ−イソロイシン、ラセミ−ロイシン、ラセミ−メチオミン、ラセミ−フェニルアラニン、ラセミ−プロリン、ラセミ−トリプトファン、ラセミ−バリン、およびこれらの組み合わせからなる疎水性アミノ酸の群から選択される請求項29に記載の液滴構造。
【請求項32】
前記親水性アミノ酸および前記疎水性アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸の群から選択される請求項26に記載の液滴構造。
【請求項33】
前記親水性アミノ酸がL−リシンであり、前記疎水性アミノ酸がラセミ−ロイシンである請求項26に記載の液滴構造。
【請求項34】
前記ブロック共重合体が、KがL−リシンを表し、rLがラセミ−ロイシンを表し、xが約10から約200の範囲の整数であり、yが約3から約30の範囲の整数であるとき、KrLの式を満足する構造を有するブロックコポリペプチドである請求項19に記載の液滴構造。
【請求項35】
前記内側液滴の前記第2の液が親水性であり、さらにその中に、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、塩、ウイルス、ビタミン、血清、溶解物、ATP、GTP、分子モータ、親水性薬物分子、細胞、ベシクル、ナノ液滴、ナノ粒子、フラーレン、一重壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、細胞質、リボソーム、酵素、グルコース、ヘモグロビン、ゴルジ、デンドリマ、界面活性剤、脂質、アルブミン、アニオン、カチオン、緩衝剤、糖類、サッカリド、量子ドット、粘土ナノ粒子、金属ナノクラスタ、金属ナノ粒子、磁気感応酸化鉄ナノ粒子、有機ナノスフィア、有機ナノ粒子、無機ナノスフィア、無機ナノ粒子、蛍光染料、導入剤、防腐剤、抗菌剤、電磁放射吸収物質、同位体特定物質、放射性同位元素含有分子、コントラスト強調造影剤、磁気共鳴映像造影剤、エックス線映像造影剤、中性子映像造影剤、ポジトロン放射断層撮影造影剤、光散乱強調剤、細胞機能阻害剤、細胞機能強化剤、細胞内下部構造阻害剤(agents that disrupt cellular substructures)、細胞内下部構造調整剤(agents that modify cellular substructures)、細胞代謝経路作用剤、細胞アポトーシス誘発剤、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項19に記載の液滴構造。
【請求項36】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリ−酸、ポリ−塩基、ポリペプチド、ブロックポリペプチド、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項19に記載の液滴構造。
【請求項37】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリ−酸、ポリ−塩基、ポリペプチド、ブロックポリペプチド、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項35に記載の液滴構造。
【請求項38】
ナノ液滴構造であって、
外部表面を有する第1の液の外側液滴と、
該第1の液滴内に配置されて内部表面を有する第2の液の内側液滴であって、該第2の液が該第1の液に非混和性であり、該内側液滴および該外側液滴が両者間の境界表面領域に該第1の液の膜を有する内側液滴と、
該外側液滴の該外部表面に配置されるブロックコポリペプチドの外層と、
該内側液滴および該外側液滴間の該境界表面領域に近接して該内部表面に配置されるブロックコポリペプチドの内層と、を含み、
KがL−リシン、rLがラセミ−ロイシンをそれぞれ表し、xが約10から約200の範囲の整数で、かつyが約3から約30の範囲の整数であるとき、該ブロックコポリペプチドがKrLの式を満足する構造を有し、前記ナノ液滴構造の非変形の液滴直径で与えられる最大直径が約300nm以下で、かつ約10nm以上であるナノ液滴構造。
【請求項39】
前記内側液滴の前記第2の液が親水性であり、さらにその中に、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、塩、ウイルス、ビタミン、血清、溶解物、ATP、GTP、分子モータ、親水性薬物分子、細胞、ベシクル、ナノ液滴、ナノ粒子、フラーレン、一重壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、細胞質、リボソーム、酵素、グルコース、ヘモグロビン、ゴルジ、デンドリマ、界面活性剤、脂質、アルブミン、アニオン、カチオン、緩衝剤、糖類、サッカリド、量子ドット、粘土ナノ粒子、金属ナノクラスタ、金属ナノ粒子、磁気感応酸化鉄ナノ粒子、有機ナノスフィア、有機ナノ粒子、無機ナノスフィア、無機ナノ粒子、蛍光染料、導入剤、防腐剤、抗菌剤、電磁放射吸収物質、同位体特定物質、放射性同位元素含有分子、コントラスト強調造影剤、磁気共鳴映像造影剤、エックス線映像造影剤、中性子映像造影剤、ポジトロン放射断層撮影造影剤、光散乱強調剤、細胞機能阻害剤、細胞機能強化剤、細胞内下部構造阻害剤(agents that disrupt cellular substructures)、細胞内下部構造調整剤(agents that modify cellular substructures)、細胞代謝経路作用剤、細胞アポトーシス誘発剤、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項38に記載のナノ液滴構造。
【請求項40】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリペプチド、ブロックポリペプチド、ポリ−酸、ポリ−塩基、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項38に記載のナノ液滴構造。
【請求項41】
前記外側液滴の前記第1の液が疎水性であり、さらにその中に、脂肪、脂質、ワックス、天然油、合成油、シリコーン油、揮発油、精油、香料、コレストロール、ステロイド、疎水性薬物分子、高分子、ブロック共重合体、ポリペプチド、ブロックポリペプチド、ポリ−酸、ポリ−塩基、ミセル、量子ドット、ナノ粒子、ナノクラスタ、カーボンナノチューブ、フラーレン、磁性流体、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、フッ素化液、臭素化液、植物由来物質、動物由来物質、バクテリア由来物質、およびその組み合わせ、の少なくとも1つを少なくとも混合または分散した請求項39に記載のナノ液滴構造。
【請求項42】
液体媒体と、
該液体媒体内に分散する複数のナノ液滴であって、該複数のナノ液滴のそれぞれが第2の液で包囲された第1の液の内側液滴を含み、該第1の液が該第2の液に非混和性であり、該第2の液が該液体媒体に非混和性であるナノ液滴と、を含み、
該複数のナノ液滴の外側液滴の非変形直径のアンサンブル平均が少なくとも約10nmで、かつ約300nm以下であるエマルション。
【請求項43】
前記液体媒体が前記第1の液と同じ物質である請求項42に記載のエマルション。
【請求項44】
前記複数のナノ液滴の表面および前記内側液滴の表面の少なくとも1つに吸着するブロック共重合体をさらに含む請求項42に記載のエマルション。
【請求項45】
前記ブロック共重合体のそれぞれが親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して前記複数のナノ液滴または前記内側液滴の少なくとも1つの安定化に作用する請求項44に記載のエマルション。
【請求項46】
前記複数のナノ液滴の表面に吸着する第1のブロック共重合体と前記内側液滴の表面に吸着する第2のブロック共重合体とをさらに含む請求項42に記載のエマルション。
【請求項47】
前記第1および第2のブロック共重合体のそれぞれが親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して前記複数のナノ液滴または前記内側液滴の少なくとも1つの安定化に作用する請求項46に記載のエマルション。
【請求項48】
前記第1および第2のブロック共重合体が実質的に同じ分子構造である請求項47に記載のエマルション。
【請求項49】
実質的に連続な液体媒体と、
該実質的に連続な液体媒体内に分散する複数の液滴構造と、を含み、
該複数の液滴構造の各液滴構造が、
外部表面を有する液の液滴と、
該液滴の該外部表面に配置されるブロック共重合体の層と、を含み、
該ブロック共重合体が親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して該液滴構造の安定化に作用し、該複数の液滴構造の液が該実質的に連続な液体媒体に非混和性であるエマルション。
【請求項50】
前記親水性高分子ブロックが主に親水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが主に疎水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックである請求項49に記載のエマルション。
【請求項51】
前記親水性高分子ブロックが主に親水性アミノ酸の複数の型を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが主に疎水性アミノ酸の複数の型を含むポリペプチドブロックである請求項49に記載のエマルション。
【請求項52】
前記親水性アミノ酸および前記疎水性アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸の群から選択される請求項50に記載のエマルション。
【請求項53】
前記各液滴構造の非変形な液滴直径に対応する最大直径が約300nm以下で、かつ約10nm以上である請求項52に記載のエマルション。
【請求項54】
液滴構造であって、
外部表面を有する液の液滴と、
該液滴の該外部表面に配置されるブロック共重合体の層と、を含み、
該ブロック共重合体が親水性高分子ブロックと疎水性高分子ブロックとを含み、それらが共同して該液滴構造の安定化に作用する液滴構造。
【請求項55】
前記親水性高分子ブロックが主に親水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが主に疎水性アミノ酸を含むポリペプチドブロックである請求項54に記載の液滴構造。
【請求項56】
前記親水性高分子ブロックが複数の型の親水性アミノ酸を主に含むポリペプチドブロックであり、前記疎水性高分子ブロックが複数の型の疎水性アミノ酸を主に含むポリペプチドブロックである請求項54に記載の液滴構造。
【請求項57】
前記親水性アミノ酸および前記疎水性アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびこれらの組み合わせからなるアミノ酸の群から選択される請求項55に記載の液滴構造。
【請求項58】
第1の液と第2の液を準備するステップであって、該第1の液が該第2の液に非混和性であるステップと、
該第1の液および該第2の液の少なくとも1つに選択した量のブロック共重合体を追加するステップと、
該第2の液に分散する該第1の液の複数の液滴を生成するように該第1の液を該第2の液に乳化するステップと、を含み、
該ブロック共重合体が該複数の液滴が合体しないよう安定化するエマルションの製造方法。
【請求項59】
前記第1の液の前記複数の液滴の各液滴が、前記乳化のステップにおいて前記複数の液滴の生成と実質的に同時に作られる前記第2の液の内側液滴をその中に含む請求項58に記載のエマルションの製造方法。
【請求項60】
前記第1の液の前記複数の液滴の各液滴が、前記乳化のステップにおいて前記複数の液滴の生成と実質的に同時に作られる前記第2の液の複数の内側液滴をその中に含む請求項58に記載のエマルションの製造方法。
【請求項61】
前記複数の液滴があらかじめ選択されたアンサンブル平均直径を有するように加える前記ブロック共重合体の量を選択するステップをさらに含む請求項58に記載のエマルションの製造方法。
【請求項62】
前記追加のステップにおいて前記複数の液滴があらかじめ選択されたアンサンブル平均直径を有するように前記ブロック共重合体の分子組成を選択するステップをさらに含む請求項58に記載のエマルションの製造方法。
【請求項63】
第1の液および第2の液の少なくとも1つに界面活性剤を追加する、または該第1の液および該第2の液の少なくとも1つに界面活性剤前駆体を追加する、の少なくとも1つのステップと、
該第2の液に浸漬される該第1の液の複数の液滴を形成して単純エマルションをもたらすように該第1の液を該第2の液に乳化するステップであって、該第1の液が該第2の液に非混和性であるステップと、
前記界面活性剤および前記界面活性剤前駆体の少なくとも1つを第3の液に追加するステップと、
該単純エマルションの複数の液滴を形成してダブルエマルションをもたらすように該単純エマルションを該第3の液に乳化するステップであって、該第2の液が該第3の液に非混和性であるステップと、を含み、
該ダブルエマルションの複数の液滴のそれぞれがその中に少なくとも1つの該第1の液の液滴を含むエマルションの製造方法。
【請求項64】
請求項58から63のいずれかの方法により製造されたエマルション。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−536554(P2010−536554A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521864(P2010−521864)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/009882
【国際公開番号】WO2009/025802
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】