説明

内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース及び内型枠の回転ずれ修正方法

【課題】内型枠の回転ずれを修正可能とした内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース及びこの回転ずれ修正用型枠ピースを用いた内型枠の回転ずれ修正方法を提供する。
【解決手段】地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部21の内周面33に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠30の型枠ピース40において、掘削進行方向に沿って隣り合う型枠ピース同士を結合する継手板に、正規の位置に形成されたボルト孔43bと、正規の位置に形成されたボルト孔43bより掘削孔の内周面33に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネルの覆工部を形成するための内型枠の回転ずれの修正に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘削機で地山を掘削して掘進するとともに、シールド掘削機の後部(坑口側)において掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面とトンネル空洞部の内周面に沿って設置される内型枠との間に生コンクリートと呼ばれる流動状のコンクリートを流し込んで覆工部としての覆工コンクリートを構築するECL工法と呼ばれるトンネル施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
内型枠は複数個の型枠ピースにより形成される。図5に示すように、内型枠の型枠ピース40は、トンネル空洞部21の内周面33(図6参照)の周方向において隣接するように設置される型枠ピース40;40同士を繋ぐためのピース継手面47aが形成されたピース継手板45を備えるとともに、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において隣接するように設置される型枠ピース40;40同士を繋ぐためのリング継手面47bが形成されたリング継手板46を備える。
ピース継手板45には、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において互いに隣接するピース継手面47a同士が図外のボルト及びナットによる締結によって密接状態に結合されるように、ピース継手板45を貫通してボルトを通すためのボルト孔43aが形成される。同様に、リング継手板46には、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において隣接するリング継手面47b同士がボルト及びナットによる締結によって密接状態に結合されるように、リング継手板46を貫通してボルトを通すためのボルト孔43bが形成される。
従って、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のピース継手面47a同士を接触させた状態でボルト孔43aに図外のボルトを挿入し、ボルトの先端からナットを締結していくことで、ピース継手面47a同士が密接状態に結合される。また、トンネル空洞部21の内周面33のトンネル掘削進行方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のリング継手面47b同士を接触させた状態でボルト孔43bに図外のボルトを挿入し、ボルトの先端からナットを締結していくことで、リング継手面47b同士が密接状態に結合される。
図6に示すように、複数個の型枠ピース40がトンネル空洞部21の内周面33に沿って1周するように設置されて形成される内型枠30を1リングと呼ぶ。つまり、1リングを形成するには、複数個の型枠ピース40を、トンネル空洞部21の内周面33との間に覆工部の厚さ分の間隔dを隔ててトンネル空洞部21の内周面33に沿って内周面33を1周するように設置していく。この場合、ピース継手面47a同士が密接状態に結合されるように、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てていく。そして、掘削が進んだ後、掘削進行方向に向けてさらに1リング分の内型枠30を組み立てていく。この場合、型枠ピース40が、トンネル空洞部21の内周面33の周方向においてピース継手面47a同士が密接状態に結合されるように、かつ、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において1つ前に組み立てた1リングのリング継手面47bと今回組み立てる1リングを形成する型枠ピース40のリング継手面47bとが密接状態に結合されるように、内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てていく。
型枠ピース40は、所定数のリング分の内型枠30を形成できる数分だけ用いられ、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、坑口22側に組み立てられた内型枠30の掘削進行方向後部に位置する1リング分の型枠ピース40を図外の内型枠脱型装置を用いて解体して取り外した後に、シールド掘削機を進行させ、取り外した1リング分の型枠ピース40を内型枠30の掘削進行方向先頭位置に盛り替えて使う。即ち、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘削が進む毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用して内型枠30の掘削進行方向先頭位置に1リングを組み立てていく。つまり、掘削進行方向に向けて次々と1リングづつ組み立てていって内型枠30を形成する。
尚、図6に示すように、1リング分の内型枠30を形成する複数個の型枠ピース40のうちの少なくとも1つの型枠ピースは、脱型用の型枠ピース39に形成される。K型枠ピースと呼ばれる脱型用の型枠ピース39は、トンネル空洞部21の内周面33に近い方に位置して型枠面39aとなる当該型枠面39a側のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法bが、型枠面39aの反対側の面39b(トンネル空洞部21の中心2Cに近い方に位置した面)のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法aよりも小さい。また、脱型用の型枠ピース39の周方向の両隣に設置される型枠ピースも専用の型枠ピース38が用いられる。1リング分の内型枠30を形成する脱型用の型枠ピース39及び型枠ピース38以外のA型枠ピースと呼ばれる型枠ピース40は、トンネル空洞部21の内周面33に近い方に位置して型枠面40sとなる当該型枠面40s側のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法bが、型枠面40sの反対側の面40zのトンネル空洞部21の周方向の幅寸法aよりも大きい。そして、1リングを組み立てるときは、脱型用の型枠ピース39を最後に取り付け、1リングを解体する場合は、脱型用の型枠ピース39から取り外す。つまり、A型枠ピースと呼ばれる型枠ピース40だけを用いて1リングを組み立てようとしても、最後の型枠ピース40をトンネル空洞部21の中心2C側からトンネル空洞部21の内周面33の方向に向けて(つまり、トンネル空洞部21の断面円の径方向に向けて)組み付けることは不可能であるので、最後に組み付けて最初に取り外す型枠ピースとしてK型枠ピースと呼ばれる脱型用の型枠ピース39を用いる。
1リング分の内型枠30を形成する型枠ピース40のうち、図6に示すように、トンネル空洞部21の内周面33の下側周面に沿うように設置される型枠ピース40の内面44aには、搬送台車65を掘削進行方向に移動させるためのレール66が取付けられている。搬送台車65には、図外のレミキサーとコンクリートポンプとで構成されるコンクリート供給装置が搭載される。
【特許文献1】特開2005−188099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、掘削進行方向に向けて次々とリングを組み立てて内型枠30を形成していくと、内型枠30がシールド掘削機の回転切削部の回転などの影響を受けてトンネル空洞部21の内周面33の周方向の一定の方向に回転ずれ(ローリング)を起こす場合がある。この回転ずれ量は、リングが増えるに従って蓄積していく。内型枠30の回転ずれ量が大きくなると、内型枠30の下側の内面44aに位置するレール66の傾きも大きくなる。レール66の傾きが大きくなると、搬送台車65が傾いてレミキサーやコンクリートポンプのホッパーが傾くのでコンクリート容量が減少したり、内型枠30の組立作業や脱型作業に支障が出たり、搬送台車65に続く後続台車が脱輪するなどの可能性があり、トンネル施工を円滑に進めることができなくなるといった問題があった。
そこで、本発明は、内型枠の回転ずれを修正可能とした内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース及びこの回転ずれ修正用型枠ピースを用いた内型枠の回転ずれ修正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る内型枠の回転ずれ修正用型枠ピースは、地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、掘削進行方向に沿って隣り合う型枠ピース同士を結合する継手板に、正規の位置に形成されたボルト孔と、正規の位置に形成されたボルト孔より掘削孔の内周面に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔とを備えたことを特徴とする。
本発明に係る内型枠の回転ずれ修正用型枠ピースは、地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、掘削進行方向に沿って隣り合う型枠ピース同士を結合するボルトを通すためのボルト孔が、正規の位置ではなく正規の位置よりも掘削孔の内周面に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔により形成されたことを特徴とする。
調整用ボルト孔は、掘削孔の内周面に沿った方向において正規の位置の両側に設けられたことも特徴とする。
本発明に係る内型枠の回転ずれ修正方法は、複数の型枠ピースが掘削孔の内周面に沿って内周面の内側を1周するように設置されて形成される1リング分の内型枠が掘削進行方向に向けて複数個形成される毎に、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回転ずれ修正用型枠ピースを用いて、1つ前に形成されたリングの型枠ピースの正規のボルト孔と新たなリングを形成する回転ずれ修正用型枠ピースの調整用ボルト孔とにボルトを通してナットで締結することによって、1つ前のリングの掘削進行方向前方に1つ前のリングよりも掘削孔の内周面に沿った方向の回転ずれの少ない新たなリングを組み立てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース及び内型枠の回転ずれ修正方法によれば、内型枠の回転ずれを修正できるので、トンネル施工を円滑に進めることができるようになる。
正規の位置に形成されたボルト孔と調整用ボルト孔とを備えた回転ずれ修正用型枠ピースによれば、正規の位置に形成されたボルト孔の隣に調整用ボルト孔を形成するだけで回転ずれ修正用型枠ピースを製造できるので、製造容易で、かつ、調整用ボルト孔の形成位置精度の高い調整用ボルト孔を備えた修正用型枠ピースを得ることができる。
ボルト孔が、正規の位置ではなく正規の位置よりも掘削孔の内周面に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔のみにより形成された修正用型枠ピースの場合、ボルト孔の数を少なくでき、修正用型枠ピースの強度低下を少なくできる。
調整用ボルト孔が、掘削孔の内周面に沿った方向において正規の位置の両側に設けられた修正用型枠ピースの場合、正規の位置に形成されたボルト孔の隣に調整用ボルト孔を形成するだけで回転ずれ修正用型枠ピースを製造でき、また、内型枠がトンネル空洞部の内周面の周方向のいずれの方向に回転ずれを起こしたとしても、正規の位置に形成されたボルト孔を基準としてどの調整用ボルト孔を使用すれば良いかを判断しやすく、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1乃至図4は最良の形態1を示し、図1はトンネル施工における内型枠の回転ずれ修正方法の概略を示し、図2は型枠ピースと回転ずれ修正用型枠ピースとの結合方法を示し、図3は型枠ピースと回転ずれ修正用型枠ピースとを用いた密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法を示し、図4はコンクリート供給管と妻型枠に形成されたコンクリート打設口との関係を示す。
【0007】
トンネル施工における内型枠の回転ずれ修正方法は、例えば、図1;2に複数リング分の内型枠を形成できる数分の型枠ピース40;38;39(以下、型枠ピース40と略す)と、1リング分又は複数リング分の内型枠30を形成できる数分の回転ずれ修正用型枠ピース40A;38A;39A(以下、修正用型枠ピース40Aと略す)とを用いる。
【0008】
型枠ピース40及び修正用型枠ピース40Aは、型枠面板41、継手板42、ボルトを通すためのボルト孔43を備える。
型枠面板41は、トンネル空洞部21の内周面33と対向する型枠面44を備える。継手板42は、ピース継手板45とリング継手板46とを備える。ピース継手板45は、トンネル空洞部21の内周面33の周方向で互いに隣接するように設置される型枠ピース40を繋ぐためのピース継手面47aを備える。リング継手板46は、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向Aで互いに隣接するように設置される型枠ピース40同士を繋ぐためのリング継手面47bを備える。
【0009】
型枠ピース40は、ボルト孔43として、ピース継手板45を貫通する貫通孔により正規の位置に形成された正規のボルト孔43aと、リング継手板46を貫通する貫通孔により正規の位置に形成された正規のボルト孔43bとを備える。正規の位置とは、通常の型枠ピース40を製造する場合に、ボルト孔が形成される位置のことをいう。
【0010】
修正用型枠ピース40Aは、ボルト孔43として、ピース継手板45を貫通する貫通孔により正規の位置に形成された正規のボルト孔43aと、リング継手板46を貫通する貫通孔により正規の位置に形成された正規のボルト孔43bの他に、予め調整用ボルト孔50とを備える。調整用ボルト孔50は、修正用型枠ピース40Aがトンネル空洞部21の内周面33に沿って設置された場合に、正規のボルト孔43bより内周面33に沿った方向にずれた位置、例えば、内周面33に沿った方向における正規のボルト孔43bの両隣に正規のボルト孔43bの中心から数cmずれた位置に設けられる。
【0011】
1リング分の内型枠30を形成する型枠ピース40及び修正用型枠ピース40Aのうち、図1に示すように、トンネル空洞部21の内周面33の下側周面に沿うように設置される型枠ピース40及び修正用型枠ピース40Aの内面44aには、搬送台車65を掘削進行方向Aに移動させるためのレール66が取付けられている。
【0012】
次に、図3;図4を参照し、型枠ピース40及び修正用型枠ピース40Aを用いた密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法、及び、シールド掘削機の構造を説明する。
まず、シールド掘削機1の構造を説明する。シールド掘削機1は、前端に回転切削部2を有し、回転切削部2の後部には後方に延長する円筒状のテールプレート3を備える。テールプレート3の内側には複数の推進ジャッキ4とプレスジャッキ5と妻型枠7とが設けられる。妻型枠7は、プレスジャッキ5の後端5aに取付けられてテールプレート3の内周面3aに沿って前後に移動可能なようにリング筒状に形成されたプレス型枠である。つまり、妻型枠7は、テールプレート3の内周面3aと内型枠30の外周面34との間を塞いだ状態でプレスジャッキ5の伸縮で前後に移動可能な型枠であり、後述するコンクリート充填空間100を形成するとともにコンクリート充填空間100に流入した高流動性生コンクリート80を加圧するものである。8はシールド掘削機1の推進に伴って図外の牽引手段で牽引されるコンクリート供給装置である。コンクリート供給装置8は搬送台車65に搭載される。搬送台車65は、シールド掘削機1により牽引され、搬送台車65の下部に設けられた車輪67が、内型枠30を形成するようにトンネル空洞部21の内周面33の下側に設置される型枠ピース40や修正用型枠ピース40Aの内面44aに設けられたレール66上を滑走することによって、掘削進行方向Aに移動する。このコンクリート供給装置8は例えば高流動性生コンクリート80を生成する1台のレミキサー81とこのレミキサー81に接続管82で繋がれた6台のコンクリートポンプ83とで構成される。
【0013】
妻型枠7には、前後面に貫通するコンクリート打設口9が周方向に等間隔で例えば12個形成される。各コンクリートポンプ83のコンクリート排出口10には第1コンクリート供給ホース11が接続され、このホース11の終端には二方切替弁12が接続され、この二方切替弁12の2つの排出口13;13とそれぞれ1つのコンクリート打設口9とが第2コンクリート供給ホース14;14で接続される。第2コンクリート供給ホース14における終端側には油圧シリンダピストン等による塞止弁装置15が設けられる。塞止弁装置15の塞止弁15aが第2コンクリート供給ホース14と打設口9とを繋ぐ接続配管14a内に進退移動して接続配管14aを開閉する。接続配管14aに近い第2コンクリート供給ホース14の終端側にはこの第2コンクリート供給ホース14内の管内圧力を計測する管内圧力計16が設けられる。また、妻型枠7の後面7aにおける12箇所のそれぞれ打設口9の近傍、あるいは12箇所のうちの少なくとも1つの打設口9の近傍には、コンクリート充填空間100に充填された生コンクリートの圧力を計測するためのコンクリート圧力計17が設けられる。
【0014】
次に、型枠ピース40を用いたトンネル施工方法を説明する。まず、図外の反力受けで推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストンを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させて地山(地盤/岩盤)20にトンネル空洞部21を掘る。一定距離は例えば内型枠30の1リング分の筒長31(例えば1m〜2m程度)の長さ+シールド掘削機1の前後長さ32である。シールド掘削機1を一定距離だけ掘進させた後にシールド掘削機1の推進ジャッキ4のピストンを縮めて、推進ジャッキ4の後端4aに、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てる。1リング分の内型枠30は、1リング分の内型枠30の円筒の円弧の一部分を形成する複数個の型枠ピース40を用いて円筒形状に組み立てられる。型枠ピース40の型枠面44がトンネル空洞部21の円形の内周面33との間に空間を隔てて内周面33に沿うように図外の内型枠組立装置により保持されて、トンネル空洞部21の内側にトンネル空洞部21の中心軸と同軸の円筒形状の内型枠30が形成されるように、円筒形の円周上で互いに隣り合う型枠ピース40同士がボルト63及びナット72により締結される。この隣り合う型枠ピース40同士を連結するボルト63をピース間継手ボルトと呼ぶ。具体的には、型枠ピース40のピース継手面47a同士が接触するように、型枠ピース40同士を互いに隣接させて設置し、互いに隣接する型枠ピース40のピース継手面47aの貫通孔43aにボルト63が通されてボルト63の先端部にナット72が締結されることによって、ピース継手面47a同士が密接状態となるように型枠ピース40同士が繋がれる。以上により、トンネル空洞部21の内側に円筒形状の1リング分の内型枠30が形成されるととともに、トンネル空洞部21の円形の内周面33と1リング分の内型枠30の円形の外周面34との間の円筒形状のコンクリート充填空間100が形成される。このコンクリート充填空間100の坑口22側を図外の塞板などで閉塞して、妻型枠7の後面7aをコンクリート充填空間100の先端側に移動させ、妻型枠7の後面7aの周囲の例えば12箇所の打設口9を介してコンクリートポンプ83で加圧された高流動性生コンクリート80を流し込みながらプレスジャッキ5で妻型枠7を押圧して高流動性生コンクリート80を加圧する。そして、人がコンクリート圧力計17から送信されてくる圧力値をモニタ等で監視しながらコンクリート充填空間100に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力が予め決められた所定値になったら人が塞止弁15aの操作部を操作して塞止弁15aで接続通路14aを塞いで、コンクリート充填空間100内の高流動性生コンクリート80を固化させる。したがって、6個のコンクリートポンプ83を用い、妻型枠7の後面7aの周囲の12箇所の打設口9からコンクリート充填空間100に高流動性生コンクリート80を充填するので、複数のコンクリートポンプ83での圧力付加と複数の打設口9からの高流動性生コンクリート80の流し込みと高流動性生コンクリート80の高流動性とにより、コンクリート充填空間100内に短時間で均等に高密度に高流動性生コンクリート80を充填でき、トンネル空洞部21の内周面33(地山20)と密接して一体化した高密度構造の覆工部としての覆工コンクリート90を構築できる。また、打設口9の数と同数のコンクリートポンプ83を設け、1つのコンクリートポンプ83で1つの打設口9から高流動性生コンクリート80を打設してもよいが、実施形態のように打設口9の数の1/2の数のコンクリートポンプ83を用いて1つのコンクリートポンプ83に2つの打設口9を繋ぐことにより、コンクリートポンプ83の数を減らして多くの打設口9から打設できるので経済的である。また、コンクリート圧力計17を備えたので、コンクリート充填空間100内に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力監視制御を容易に行える。また、コンクリート圧力計17からの信号を判読して塞止弁15aを開閉する図外の制御装置を設ければ、塞止弁15aの開閉を自動化できる。
【0015】
次に、覆工コンクリート90の内側に残された内型枠30を反力受けとして利用して推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストンを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させる。そして、坑口22側に形成された内型枠30に連続するよう掘削進行方向A側に次の1リング分の内型枠30を形成し、掘削進行進方向Aに沿って前後に隣り合う内型枠30同士がボルト63及びナット72により締結される。掘削進行方向Aに沿って前後に隣り合う内型枠30同士を連結するボルト63をリング間継手ボルトと呼ぶ。具体的には、型枠ピース40のリング継手面47b同士が接触するように、型枠ピース40同士を互いに隣接させて設置し、互いに隣接する型枠ピース40のリング継手面47bのボルト孔43bにボルト63が通されてボルト63の先端部63bにナット72が締結されることによって、リング継手面47b同士が密接状態となるように型枠ピース40同士が繋がれる。尚、92は座金である(図2参照)。そして、新しく形成した内型枠30の外周面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成する。
【0016】
以後、上記と同様にしてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させて、1リング分の内型枠30を形成し、形成した内型枠30の1つ前に形成した内型枠30とを連結し、新しく形成した内型枠30の外周面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成していく。
【0017】
一般に、トンネル長さは長距離であるため、型枠ピース40は、所定数のリング分の内型枠30を形成できる数分だけ用いられ、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、坑口22側に組み立てられた内型枠30の掘削進行方向A後部に位置する1リング分の型枠ピース40を図外の内型枠脱型装置を用いて解体して取り外した後に、シールド掘削機を進行させ、取り外した1リング分の型枠ピース40を内型枠30の掘削進行方向A先頭位置に盛り替えて使う。即ち、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘削が進む毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用する。
【0018】
図1(a);(b)に示すように、掘削進行方向Aに向けて次々とリングを組み立てていく毎に内型枠30が回転切削部2の回転方向などの影響を受けてトンネル空洞部21の内周面33の周方向の一定の方向に回転ずれ(ローリング)を起こす場合がある。そこで、内型枠30の回転ずれ量が所定量以上となった場合に、この内型枠30の切羽側に位置するリング継手面47bに修正用型枠ピース40Aを用いて回転ずれ修正リング70を組み立てることで、内型枠30の回転ずれを修正する。具体的には、図1(c)に黒丸点で示したように、型枠ピース40のリング継手面47bの正規のボルト孔43bと修正用型枠ピース40Aの調整用ボルト孔50とを一致させてこれらボルト孔43b;50にボルト63が通されてボルト63の先端部にナット72が締結されることによって、リング継手面47b同士が密接状態となるように型枠ピース40と修正用型枠ピース40A型枠とが繋がれる。以上により、内型枠30の回転ずれ及びレール66の傾きが修正される。その後、次のリングを型枠ピース40を用いて組み立てていく。
【0019】
つまり、型枠ピース40を用いて組み立てた内型枠30が正規の位置から一定の方向に所定量以上回転ずれする毎に、修正用型枠ピース40Aを用いて回転ずれ修正リング70を組み立てることで、内型枠30の回転ずれ及びレール66の傾きを修正しながら、内型枠30の組立作業を行う。即ち、型枠ピース40を用いていくつかのリングを組み立てるという作業と、型枠ピース40を用いてリングをいくつか組み立てる毎に修正用型枠ピース40Aを用いて回転ずれ修正リング70を組み立てるという作業を繰り返す。
【0020】
尚、正規のボルト孔43bの両隣に調整用ボルト孔50が複数個づつ設けられた修正用型枠ピース40Aや、調整用ボルト孔50が正規のボルト孔43bの両隣に1つづつ設けられた修正用型枠ピース40Aを用いる場合において、正規のボルト孔43bと調整用ボルト孔50との間の距離が大きい場合には、型枠ピース40を用いて形成された内型枠30の回転ずれ量が大きくなった場合でも修正用型枠ピース40Aを用いて回転ずれ修正リング70を組み立てることが可能であるが、回転ずれ修正リング70のレール66と回転ずれ修正リング70の一つ前の周方向にずれたリングのレール66とのレール66間のずれ、即ち、一つ前の周方向にずれたリングのレール66の終端と回転ずれ修正リング70のレール66の始端との高低差が大きくなる可能性がある。この場合は、この高低差を吸収してレール66;66間を繋ぐような連結レールを用いればよい。
【0021】
孔にボルト63を通して締結しても孔として機能が維持できる程度(孔の周辺の剛性に影響しない程度)の距離をあけることを前提に調整用ボルト孔50は、正規のボルト孔43bの両隣に少なくとも1つづつ設ければよい。正規のボルト孔43bと調整用ボルト孔50との間の距離は小さいほど、回転ずれ修正リング70のレール66と回転ずれ修正リング70の一つ前の周方向にずれたリングのレール66とのレール66;66間のずれを小さくできるので好ましい。
【0022】
最良の形態1によれば、内型枠の回転ずれを修正できるので、トンネル施工を円滑に進めることができるようになる。
【0023】
最良の形態1のように、正規のボルト孔43bとこの正規のボルト孔43bの両隣に設けられた調整用ボルト孔50とを備えた修正用型枠ピース40Aの場合、型枠ピース40の正規のボルト孔43bの両隣に調整用ボルト孔50を形成するだけで製造できるので、製造容易で、かつ、調整用ボルト孔50の形成位置精度の高い調整用ボルト孔50を備えた修正用型枠ピース40Aを得ることができる。また、内型枠30がトンネル空洞部21の内周面33の周方向のいずれの方向に回転ずれを起こしたとしても、正規の位置に形成されたボルト孔43bを基準としてどの調整用ボルト孔50を使用すれば回転ずれを修正できるかを判断しやすくなり、作業性が向上する。
【0024】
最良の形態2
正規のボルト孔43bと調整用ボルト孔50とを備えた修正用型枠ピースにおいて、調整用ボルト孔50が調整用ボルト孔50の両隣でなく一方の隣に設けられているだけでもよい。この場合でも、正規の位置に形成されたボルト孔の隣に調整用ボルト孔を形成するだけで回転ずれ修正用型枠ピースを製造できるので、製造容易で、かつ、調整用ボルト孔の形成位置精度の高い調整用ボルト孔を備えた修正用型枠ピースを得ることができる。
【0025】
最良の形態3
リング継手板46に正規のボルト孔43bを備えずに調整用ボルト孔50のみを備えた修正用型枠ピースを用いてもよい。この修正用型枠ピースの場合、ボルト孔の数を少なくでき、修正用型枠ピースの強度低下を少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
少なくとも1つの正規のボルト孔43bと1つの調整用ボルト孔50とが一対となった修正用型枠ピースを用いてもよい。この場合、一対の1つの正規のボルト孔43bと1つの調整用ボルト孔50のすべてを調整用ボルト孔として利用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】トンネル施工における内型枠の回転ずれ修正方法を示す概略図(最良の形態1)。
【図2】型枠ピースと修正用型枠ピースとの結合方法を示す斜視図(最良の形態1)。
【図3】型枠ピースと修正用型枠ピースとを用いた密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法を示す断面図(最良の形態1)。
【図4】コンクリート供給管と妻型枠に形成されたコンクリート打設口との関係を示す図(最良の形態1)。
【図5】型枠ピースを示す斜視図(従来)。
【図6】トンネル空洞部と内型枠との関係を示す図(従来)。
【符号の説明】
【0028】
21 トンネル空洞部、30 内型枠、33 内周面、40 型枠ピース、
43b ボルト孔、46 継手板、50 調整用ボルト孔、63 ボルト、
72 ナット、40A 回転ずれ修正用型枠ピース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、掘削進行方向に沿って隣り合う型枠ピース同士を結合する継手板に、正規の位置に形成されたボルト孔と、正規の位置に形成されたボルト孔より掘削孔の内周面に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔とを備えたことを特徴とする内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース。
【請求項2】
地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースにおいて、掘削進行方向に沿って隣り合う型枠ピース同士を結合するボルトを通すためのボルト孔が、正規の位置ではなく正規の位置よりも掘削孔の内周面に沿った方向にずれた位置に設けられた調整用ボルト孔により形成されたことを特徴とする内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース。
【請求項3】
調整用ボルト孔は、掘削孔の内周面に沿った方向において正規の位置の両側に設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内型枠の回転ずれ修正用型枠ピース。
【請求項4】
複数の型枠ピースが掘削孔の内周面に沿って内周面の内側を1周するように設置されて形成される1リング分の内型枠が掘削進行方向に向けて複数個形成される毎に、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回転ずれ修正用型枠ピースを用いて、1つ前に形成されたリングの型枠ピースの正規のボルト孔と新たなリングを形成する回転ずれ修正用型枠ピースの調整用ボルト孔とにボルトを通してナットで締結することによって、1つ前のリングの掘削進行方向前方に1つ前のリングよりも掘削孔の内周面に沿った方向の回転ずれの少ない新たなリングを組み立てることを特徴とする内型枠の回転ずれ修正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate