説明

内壁面に銅めっきしたパイプ

【課題】本発明は、銅管と同様にヌルが発生せず、PVCパイプ2と同様に加工性のよく、安価な配水管を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、無電解銅めっきによって、PVCパイプ2の内壁面に銅の下地めっき層3cを成形し、続いて銅の下地めっき層3cを陰極として、冶具20、吊り下げ具21などで電気めっき液19aに吊り下げ、硫酸銅電気めっきによって、銅の下地めっき層3c上にさらに、銅めっき層3bを積層することによって実現した。これによって、水に接した内面3aの銅めっき層3bから、容易に銅イオンが溶出し、水中の病原菌及び藻などを死滅させる殺菌作用を呈するヌルの発生しない配水管を安価に提供することができることとなった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管、排水管などに使用される配水管であって、内壁面に銅めっきした塩化ビニルパイプ(以下、PVCパイプという。)、その他樹脂パイプ、金属パイプ等、及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から配水管としては、鉄などの金属配管が多く使用されている。しかし、コストが掛かること、加工性が悪いこと、錆による劣化があること、また赤錆などによる水質悪化があることなどの問題がある。
【0003】
そこで、現在は、住宅、工場などの給水管、排水管などの配水管には、PVCパイプが主に使用されている。PVCパイプは、安価であること、切断、接着などの加工性が良いこと、錆などの発生による水質の悪化が起こらないことから広く普及している。
【0004】
しかしながら、上記PVCパイプを給水管、排水管として使用した場合、使用とともに内面にヌルが発生することがある。ヌルとは、配水管内表面を覆うヌルヌルした膜状の物質であり、微生物、藻、カビなどが配水管内を流れる水の僅かなミネラル、不溶性固形成分などの不純物、浮遊物を養分として増殖し、配水管内表面に付着した菌叢、すなわち多種多様な微生物群の集まりのことである。
【0005】
特に、塩素殺菌されていない工場用の循環水、また24時間使用できる風呂の循環水用配水管には、垢、石けん成分を栄養に微生物が発生し、配水管内にヌルが発生することがよくがある。このヌルの中にはレジオネラなどの病原性微生物が増殖することもあり、このような水による健康被害も時折報告されている。
【0006】
一方、上記配水管が特に銅管である場合、ヌルの発生が抑えられことが知られている。これは、銅イオンの殺菌効果によるものである。ここで、銅イオンについて説明する。一般に、銅イオンには強い殺菌効果があることが知られており、レジオネラ菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌など、各種の病原菌に対する殺菌効果もある。また、特に銅イオンは殺藻効果が高いことが知られている。銅イオンは、藻類に吸着して藻類を死滅させ、藻類の発生、増殖を抑える働きをする。レジオネラ菌は、藻類やアメーバと共生することにより増殖するので、殺藻効果の高い銅イオンを用いて、水の殺菌処理を行えば、水中のレジオネラ菌の増殖を抑制することができる。さらに銅イオンは防カビ性に優れていることも知られている。
【0007】
また、銅イオン水には、塩素系薬剤による刺激臭、肌荒れ、異臭味が一切無く、人体に無害である。参考までに、上水道の水質基準では、銅イオン濃度は1.0ppm以下とされている。従って、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプを飲料水用配水管に使用したとしても、銅めっき層からの銅イオンの溶出量は、上記基準以下であるから、人体に対して無害であるといえる。そのため、銅イオンは、浴槽、プール、貯水タンクなどの殺菌処理に好適である。また、銅イオン水によっては、配水管、機器設備品、その他の建材、サッシなどの腐食も無い。
【0008】
上述のように、配水管が銅管であれば、ヌルの発生を抑制することができる。また銀、金などの金属も銅と同様に微生物の殺菌効果を有している。しかし、上述したように、金属配管は、種種の問題がある。また何より、ヌルが発生する全ての住宅、工場用の配水管を銅管のにすることは、費用が高く現実的ではない。
【0009】
そこで、銅などの殺菌効果を有する金属を利用して、各種の殺菌装置が開発されている。特許文献1に記載の殺菌装置は、銀よりも安価で殺菌能力を有する銅を利用して、湯水中へ銅イオンを溶出させることにより殺菌をする装置である。詳しくは、金、銀、銅などの貴金属の微量金属イオンが優れた殺菌殺藻効果を保持すること並びに安価な銅イオンにおいても、その実質銅イオン濃度が0.3ppm以上であれば微生物類や藻類を確実に殺菌殺藻しえること及び循環水中に長期に亘って安定して而も定量的に銅イオンを溶出し、水の殺菌殺藻処理を行うことができるというものである。
【特許文献1】特公平03−1077号公報
【0010】
さらに、特許文献2に記載の殺菌装置は、金属イオン溶出体として銅イオン溶出体を用いた水殺菌装置を、浴槽、プール、温泉施設、貯水タンクなど、水の殺菌処理を必要とする設備に取り付けることにより、銅イオンの殺菌効果を利用して効果的に水の殺菌処理を行うことができるというものである。
【特許文献2】特開2004−321878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
確かに、上記文献記載の殺菌装置、その他各種殺菌装置は、微生物を殺菌する作用があるが、新たに殺菌装置を購入しなければならい。また、消耗品の交換の手間、費用が掛かり経済的でない。更に、工場用水などの大量の水を処理するとなると、とても費用が掛かり現実的ではない。
【0012】
そこで、本発明は、銅管と同様にヌルが発生せず、PVCパイプと同様に加工性がよく、安価な配水管を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するために、配水管に使用されるPVCパイプ2であって、前記PVCパイプ2の内壁面に、通水と接触する面(内面3a)に銅めっき層3bを施したことを特徴とする内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプは、内壁面が銅めっきされていることから銅管と同様な殺菌効果、即ちヌル発生防止効果を有するとともに、PVCパイプの利点である加工性の良さ、低コストを維持したまま給水管、排水管などの配水管として使用することができるものである。即ち、PVCパイプを使用する住宅、ビル用配水管、工場用配水管等を、容易に本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプに代えて使用することができ配水管のヌルを防止することができるようになった。また、従来のように殺菌が困難、不十分な配水管内を銅めっきすることで、病原菌の温床となっていた配水管内面のヌルの発生を防止し、より安全な水を供給することができるようになった。さらに、農畜産用給水管等その他多くの配水管に応用することで、病原菌を含む水に暴露される危険を回避することもできるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、内壁面に化学銅めっきを行い、パイプ内壁面に薄い銅膜(下地めっき層3c)を形成し、続いて、電気銅めっきすることで所定の銅めっき層3bを形成させることで実現した。
【実施例1】
【0016】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である内壁面に銅めっきしたパイプ、及びそのめっき方法について、PVCパイプを例に詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの斜視図である。本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、PVCパイプ2の内壁面にめっき層3を有し、前記めっき層3の通水路4を流れる水と接する面、即ち内面3aが、銅によってめっきされていることを特徴とする。銅と同様に殺菌効果がある金、銀などの金属を内面3aにめっきしても構わないが、配水管のコスト上から内面3aのめっき金属は銅がよい。殺菌効果を重視するのであれば内面3aを銀めっきすることが望ましい。なお、破線矢印A、Bは各々図2、図3の断面位置を表している。
【0018】
図2は、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの図1の破線矢印A位置での断面図である。本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、PVCパイプ2の内壁面にめっき層3を有し、前記めっき層3の通水路4を流れる水と接する面、即ち内面3aが、銅によってめっきされていることを特徴とする。このため、銅めっき層3bの銅が、通水路4を流れる水と接触し、銅イオンとして水中に溶出する。溶出した銅イオンによって、通水の殺菌をおこない、また、PVCパイプ2内のヌルの発生が防止できる。
【0019】
図3は、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの図1の破線矢印B位置での断面図である。本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、PVCパイプ2の内壁面にめっき層3を有し、前記めっき層3の通水路4を流れる水と接する面、即ち内面3aが、銅によってめっきされていることを特徴とする。なお、PVCパイプ2の外側2aに銅などの金属めっき層を形成することは、特に必要ではない。しかし、内壁面に金属めっきを施すにあたり、PVCパイプ2の外側2aにも内壁面と同様なめっき層が形成されたとしても、本発明の効果、作用に影響するものではない。破線によって囲まれた円Cは、図4の拡大位置を表している。
【0020】
図4は、図3の破線Cで囲まれた部分のめっき層3の拡大断面図である。本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1にあって、めっき層3は、内面3aが銅めっき層3bであることが必要であり、PVCパイプ2と銅めっき層3bとの間に下地めっき層3cを積層しても構わない。
【0021】
下地めっき層3cとは、電気めっき法によって、内面3aに銅めっき層3bを積層する場合に、銅、スズなどを無電解めっき法、真空蒸着等の公知のめっき法によってPVCパイプ2の内壁面に積層し、通電層となるめっき層のことである。PVCパイプ2は、絶縁体であるから、何らの前処理を施すことなく電気めっきを施すことはできないから、PVCパイプ2の内壁面に銅を電気めっきする場合、下地めっき層3cを形成させることが必要である。
【0022】
また、下地めっき層3cは、本発明である配水管の用途により、公知の様々な金属めっき層を、その機能性によって選択することができる。具体的には、銅めっき層3bとPVCパイプ2と吸着性を増すために下地めっき層3cとして、バナジウム、スズなどのめっき層が考えられる。これら下地めっき層3cは、単層である必要はなく、様々な金属めっきを用途、機能により複数積層しても構わない。
【0023】
なお、当然、銅の無電解めっき法により銅めっき層3bを厚付けすることも可能であるから、本発明において、めっき層3に下地めっき層3cを形成することは、必ずしも必要ではない。
【0024】
しかし、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、通電層である下地めっき層3cをPVCパイプ2内壁面に積層した後に、前記無電解めっき法によって、銅めっき層3bを所定の厚さに積層することにより作られることが望ましい。一般に、銅の無電解めっき法による銅のめっき膜は、単位時間あたりの膜成形速度が遅く、所定の厚さの銅めっき層3bを形成するために多くの時間がかかる。その結果、本発明の内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1の生産性が悪いものとなり、好ましくない。
【0025】
さらに、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1の使用場所、用途により、また外観の調和を図るため、PVCパイプ2の外側2aに各種金属めっき層を形成することもできる。
【0026】
図5は、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1の製造工程の一例を表している。実施例1の本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1は、大きく化学銅めっき工程5と電気銅めっき工程6とからなる。PVCパイプ2は、絶縁体であるから、電気銅めっきを直接PVCパイプ2に施すことはできない。そこで、化学銅めっき工程5を採用して、下地めっき層3cとして銅めっき層3bを積層して、通電性をPVCパイプ2内壁面に付与した後、電気銅めっき工程6で、所定の銅めっき層3bをPVCパイプ2の内面3aに効率的に積層した。
【0027】
以下、化学銅めっき工程5の各工程について説明する。なお、各工程の終了時に必要に応じて、水洗、湯洗を行うことは、通常の化学銅めっき法によるところである。
【0028】
エッチング工程7は、PVCパイプ2の内壁面を粗化する工程である。これにより下地めっき層3cである銅のめっき層がPVCパイプ2に密着性よく積層させることができる。具体的には、ブラシなどで内壁面を物理的に研磨する方法が用いられる。また、クロム酸による化学エッチング法も採用することができ、無水クロム酸と硫酸の混合酸により、PVCパイプ2内壁面を酸化溶解させることによって粗化する。その他、酸、アルカリよりなる公知の化学薬品などによって、内壁面を粗化してもよい。
【0029】
脱脂工程8は、前記エッチング工程7によって、研磨されたPVCパイプ2屑や、油脂分などを除去する工程である。これにより、次工程の触媒の吸着効率を上げることができる。具体的には、温度50℃〜60℃に保持された、アルカリの溶液にPVCパイプ2を約5分間浸漬することによって行う。また、前記アルカリ溶液をポンプによってPVCパイプ2内部に送液することによって行うこともできる。次に、アルカリ溶液を中和するクリーニング工程とコンディショナー工程を行う。その後、湯、水によって、クリーナー・コンディショナーを洗い流す(洗浄)。
【0030】
触媒付与工程9は、化学銅めっきの触媒として必要なパラジウムをPVCパイプ2に吸着させる工程である。具体的には、パラジウムを含む塩化パラジウムと塩化スズのコロイド溶液に、PVCパイプ2を浸漬して、コロイドをPVCパイプ2の内壁面に吸着させる。このコロイドは、マイナスに帯電しているため、プラスに帯電しているPVCパイプ2の内壁面と結合する。また、前記コロイド溶液をポンプによってPVCパイプ2内部に送液することによって行うこともできる。その後、余分なコロイド溶液を水で洗い流す(洗浄)。
【0031】
触媒活性化工程10は、PVCパイプ2に吸着したパラジウム・スズコロイドからスズを除去して、金属パラジウムをPVCパイプ2内壁面に析出させる工程である。具体的には、希塩酸または希硫酸の溶液にPVCパイプ2を浸漬、またはポンプなどで前記酸溶液を送液循環させて、コロイドからスズを酸溶液中に溶出させることにより行う。その後、PVCパイプ2の内部を水洗する(洗浄)。
【0032】
無電解銅めっき工程11は、金属パラジウムを触媒として、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、グリオキシ酸など公知の還元剤で、めっき溶液中に融けている銅イオンを金属に還元して、PVCパイプ2の内壁面に析出させる。これによって、0.2マイクロメーター程度の非常に薄い銅のめっき層が下地めっき層3cとして形成される。
【0033】
具体的な無電解銅めっきのめっき液及び、反応条件は、以下の通りである。1)めっき液:CuSO4・5H2O(1.0%)、37%ホルマリン溶液(1.5%)、EDTA・4Na/4H2O(3.0%)、NaOH(1.0%)を含む溶液とした。2)反応条件:めっき液の温度を25℃として、15分間PVCパイプ2を浸漬した。その後、その後、PVCパイプ2を水洗する(洗浄)。また、後述する図6の無電解銅めっき工程11のようにめっき液を循環する方法で行ってもよい。
【0034】
以下、電気銅めっき工程6の各工程について説明する。化学銅めっき工程5と同様、各工程の終了時に必要に応じて、水洗、湯洗を行うことは、通常の電気銅めっき法によるところである。
【0035】
冶具装着工程12は、前述の化学銅めっき工程5を経て、内壁面に銅の下地めっき層3cが形成されたPVCパイプ2を、電気銅めっき液に冶具を用いて吊す(固定する)工程である。ここはで、下地めっき層3cに電気が流れるように、冶具は下地めっき層3cに接触させることが必要である。これによって、直流電流を通電することによって下地めっき層3cが陰極となり、めっき液中に溶解している銅イオンが下地めっき層3cの上に析出し、内面3aの銅めっき層3bが形成される。具体的に冶具は、通電性のある素材で、めっき液に溶出しない素材であればよい。
【0036】
活性化処理工程13は、PVCパイプ2の内壁面の汚れ(ゴミ、油脂)を除去すること、また、酸化銅被膜を除去するため、下地めっき層3cに酸処理を行う工程である。これによって、銅めっき層3bが、下地めっき層3cの上に効率的に析出することとなる。具体的には、PVCパイプ2の内分を5〜10重量%の硫酸液に浸漬、またはポンプなどで前記酸溶液を送液循環させることによって行う。その後、残りの酸を水で洗い流す(洗浄)。
【0037】
硫酸銅電気めっき工程14は、上述の無電解銅めっき工程11で、形成された銅の下地めっき層3cに、さらに銅めっき層3bを所定の厚さまで析出(積層)させる工程である。
【0038】
具体的な電気銅めっきのめっき液及び、反応条件は、以下の通りである。1)めっき液:H2SO4(10〜20%)、CuSO4・5H2O(5〜10%)を含む溶液とした。2)反応条件:めっき液の温度を23〜30℃として、約15分間PVCパイプ2を浸漬した状態で直流電流(2〜8A/dm2)を通電した。また、後述する図6の無電解銅めっき工程11のようにめっき液を循環する方法で行ってもよい。
【0039】
なお、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1では、内面3aが銅めっき層3bであればよいから、内面3aの銅めっき層3bと、PVCパイプ2との間に、他の金属めっき層を形成してもよい。特に、無電解銅めっき工程11による銅の下地めっき層3cは非常に薄いことから硫酸銅電気めっき工程14の前工程に、下地めっき層3cの補強としてニッケル、スズなどの金属めっき層を電気めっき法によって積層してもよい。ワット浴を使用するストライクニッケルめっき法などがある。このような多層めっきを配水管の用途などに応じ選択するとよい。
【0040】
上記硫酸銅電気めっき工程14によって、銅の下地めっき層3cの上に、更に銅めっき層3bが積層され、めっき層3の厚は、5〜10マイクロメーター程度になる。この程度のめっき厚であれば、通常の飲料水用配水管であれば、徐々に水中に銅イオンが溶出したとしても、長い間銅のめっき層3がなくなること、また剥離することもない。
【0041】
乾燥工程15は、上述の硫酸銅電気めっき工程14で、電気めっきが終了した後、水洗(洗浄)して、乾燥させる工程である。室内に放置、減圧乾燥などにより行う。これによって本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1が完成する。
【0042】
図6は、無電解銅めっき工程11の一例を表した模式図である。配水管に使用されるPVCパイプ2の長さは様々である。短いPVCパイプ2であれば、めっき液16aにPVCパイプ2を浸漬することで容易に無電解銅めっきを施すことができる。しかし、長いPVCパイプ2をめっき液16aに浸漬して、無電解銅めっきを施すために、とても大きなめっき槽16を必要としてしまう。そこで、長尺のPVCパイプ2に無電解銅めっきを施すときは、図6に示した循環式の無電解銅めっき方法を採用することが好ましい。
【0043】
特に、長尺のPVCパイプ2に無電解銅めっきを施す場合など、PVCパイプ2に往路管11b、復路管11cを連結し、めっき液16aをポンプ11dを使用して圧送することが望ましい。さらに、エルボー11aなどの連結管で複数のPVCパイプ2を連結することで、複数本のPVCパイプ2を同時に、無電解銅めっきを施すこともできる。
【0044】
このとき、めっき効率を維持するために、めっき槽16に入れられためっき液16aの温度を、ヒーター18で一定温度に保持すること、また、送気管17から空気17aを挿入し、溶存酸素量を確保することが望ましい。さらに、連続的に無電解銅めっきを施すとめっき液16aの組成が変化し、めっき効率が低下してしまう。そのため、めっき槽16と別のストックタンクで、めっき液16aを調整すること、或いは減少するめっき液16aの組成成分を適時補充などすることで、無電解銅めっきを効率的に行うことができる。
【0045】
図7は、硫酸銅電気めっき工程14の一例を表した断面図である。当然、電気めっきを施すにあたり、陽極と陰極が必要になる。めっき液19aを入れためっき槽19に、冶具20をPVCパイプ2の内壁面の銅の下地めっき層3cに接触させ、冶具20を吊り下げ具20a等に引っ掛け、直流電源23の陰極に配線22を介して接続する。これによって、PVCパイプ2の内壁面全体が陰極となる。一方、陽極は、カーボン、銅メタル、白金、酸化イリジウムなどの既知の電極素材をPVCパイプ2の内部を貫通させ、直流電源23の陽極に配線22を介して接続して陽極(アノード21)とする。アノード21はコスト面からカーボンが好ましい。
【0046】
長尺なPVCパイプ2は、冶具20、及び吊り下げ具20aで吊し上げると、PVCパイプ2の中心部分がたわみアノード21とPVCパイプ2の内壁面が接触し、ショートすることがある。それによって、PVCパイプ2の内壁面に電気めっき処理を上手く施すことができない問題が生じる。特にPVCパイプ2が小径であるときに問題となる。
【0047】
そこで、長尺なPVCパイプ2を台19bなどを用いて固定し、PVCパイプ2のたわみを解消する。また、アノード21も同様に水槽に固定された台などの固定具21aを用いて、動かないよう固定して、PVCパイプ2の内壁面への接触を防止する。或いは、ワイヤー状のアノード21を使用し、ワイヤー状のアノード21の両端を外側に引っ張りPVCパイプ2のセンターに固定することによって、ワイヤー状のアノード21とPVCパイプ2の内壁面との接触を防止することもできる。
【0048】
このように設置された電気めっき装置に、電源23から直流電流を通電することで、長尺なPVCパイプ2の下地めっき層3cの上にめっき液19aの中に溶解している銅イオンが析出して、銅めっき層3bが効率的に積層し、通水と接触する内面3aが銅によってめっきされることとなる。なお、図中の+はプラス極、−はマイナス極を意味する。
【0049】
一般に、硫酸銅電気めっきの反応が進行すると、めっき液19aの組成が変化しめっき効率が低下する。特に長尺パイプであれば、めっき槽19のめっき液19aを撹拌器などで撹拌したとしても、PVCパイプ2内部までは充分撹拌混合することはできない。したがって、めっき反応の進行にともなって、PVCパイプ2内部のめっき液19aは、めっき槽19のめっき液19aよりも大きく変化する。その結果、めっき反応速度が低下し、生産効率が悪くなってしまう。
【0050】
そこで、めっき液19aの組成変化による、めっき効率の低下を防止し、効率的なめっき反応を進行させるため、ポンプ11dによってめっき液19aをPVCパイプ2の内部に噴き込み、PVCパイプ2内部のめっき液19aをめっき槽19内のめっき液19aと均一にするようにすることが好ましい。めっき槽19に循環用の管24などを設置することで容易にポンプ11dによって噴流(矢印)を吹き込むことができる。
【0051】
また、図6に示した循環式の無電解銅めっき方法を用いることができるが、めっき液19aを硫酸銅電気用のめっき液19aとし、PVCパイプ2の内壁面を陰極とし、アノードをPVCパイプ2の内部に貫通させることが必要である。このとき、冶具20、配線22とPVCパイプとの連結部分からめっき液19aがもれないように注意する。
【0052】
ここで、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1の効果であるヌル防止効果の確認試験の結果について説明する。同一形状のPVCパイプ2の一方は本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1とし、他方は何ら処理を施さないPVCパイプ2を対象区として用いた。PVCパイプ2の一方の穴をふさぎ、水道水を溜め、室内に1月間放置した。その結果、何ら処理を施さない対象区のPVCパイプ2の内面3aには、ヌルが確認された。一方、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1の内面3aには、全くヌルは発生していなかった。このことから、本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ1を配水管として利用することで、配水管内のヌルの発生を防止することができるといえる。
【0053】
なお、本めっき方法は、PVCパイプ2の他にPPパイプ、ABSパイプ等の樹脂パイプに応用することができる。さらに、金属性のパイプについても勿論応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの斜視図である。
【図2】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ図1の破線矢印A位置での断面図である。
【図3】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプ図1の破線矢印B位置での断面図である。
【図4】めっき層の拡大断面図である。
【図5】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの製造工程図である。
【図6】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの無電解銅めっき工程の模式断面図である。
【図7】本発明である内壁面に銅めっきしたPVCパイプの硫酸銅電気めっき工程の模式断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内壁面に銅めっきしたPVCパイプ
2 PVCパイプ
2a 外側
3 めっき層
3a 内面
3b 銅めっき層
3c 下地めっき層
4 通水路
5 化学銅めっき工程
6 電気銅めっき工程
7 エッチング工程
8 脱脂工程
9 触媒付与工程
10 触媒活性化工程
11 無電解銅めっき工程
11a エルボー
11b 往路管
11c 復路管
11d ポンプ
12 冶具装着工程
13 活性化処理工程
14 硫酸銅電気めっき工程
15 乾燥工程
16 めっき槽
16a めっき液
17 送気管
17a 空気
18 ヒーター
19 めっき槽
19a めっき液
19b 台
20 冶具
20a 吊り下げ具
21 アノード
21a 固定具
22 配線
23 電源
24 管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの内壁面に銅めっき層を施したことを特徴とする内壁面に銅めっきしたパイプ。
【請求項2】
パイプがPVCパイプであることを特徴とする請求項1に記載の内壁面に銅めっきしたパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266446(P2006−266446A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88582(P2005−88582)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(597057944)株式会社 クロス (1)
【Fターム(参考)】