説明

内方突条を有する包装用容器、及びその製造型

【課題】型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることのできる包装用容器を提供すること
【解決手段】蓋体20の天板21であってその周縁23より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シートを二重折りすることにより形成した内方突条24を形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートから成形される包装用容器、特に、底面または天板に、内側に向けて突出する内方突条を有した包装用容器、及びその製造型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂シートから成形される包装用容器としては、種々なものが提案されてきており、現在も種々な改良がなされてきていて、容器としての機能上の問題はほぼ解決されつつあるが、近年では、「見た目の美しさ」を追求する要望も非常に多くなってきている。
【0003】
一般に、合成樹脂シートから包装用容器を成形する方法としては、例えば特許文献1にて提案されているような「真空または圧空成形」があり、柔らかくした合成樹脂シートを型内に入れて成形するものである。
【特許文献1】特公平7−33058号公報、第1図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に示された「合成樹脂材容器の成形方法」は、「従来の成形方法に用いられていた雄型の底部成形型内に上下摺動自在に設けられた加圧型を不要とし、成形用の雄型及び雌型のみによって容器の底部に糸尻りを形成できる」ようにすることを目的としてなされたもので、図6に示すように、「容器部、縁面部および脚片部をそれぞれ有して成る容器の成型用雄型及び成型用雌型で構成し、該両型を用いて合成樹脂材を加熱して圧着成型する合成樹脂材容器の成型方法において、前記成型用雄型の脚片部を凸状に形成すると共に前記成型用雌型の脚片部を凹状に形成して成り、前記成型用雌型内に加熱軟化されている前記合成樹脂材を前記成型用雄型にて押圧し、かつ前記成型用雌型から前記成型用雄型を急速に離脱して前記合成樹脂材を冷却硬化させることを特徴とする合成樹脂材容器の成型方法」である。
【0005】
この特許文献1の製造方法によれば、「発泡性又は非発泡性合成樹脂材の熱成型において、容器等の成型と同時にその底部の任意の位置にエンドレスの糸尻り又は脚片を成型することができ、また脚片部による容器の底部の成型と共にその凹凸状部分によって、これら糸尻り又は脚片の外側面を形成し、その内部に一旦内空部を形成して、次に減圧することにより合成樹脂材を成型用雄型と共に雌型側に押圧して合成樹脂材を内空部内に圧入させるため、肉厚および充填密度を容器の本体部分よりも大になし得るから、きわめて安定性に富み完全に閉塞された容器を成型加工することができる」と考えられる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の製造方法は、表面光沢があまり要求されない「発泡性合成樹脂材」からなる容器を製造する場合にはそれ程問題はないが、「非発泡性合成樹脂材」を使用する場合には、上述した「見た目の美しさ」を確保するという要望を満たそうとするには適していないと考えられる。
【0007】
すなわち、一般に、「減圧することにより合成樹脂材を成型用雄型と共に雌型側に押圧して合成樹脂材を内空部内に圧入させる」場合に、「非発泡性合成樹脂材(シート)」を加熱して軟化させておき、この軟化した「非発泡性合成樹脂材」が型表面の形状に合うようにするのであるが、それでも「非発泡性合成樹脂材」が型表面の形状に完全に合わないことがあって、製品表面に十分な光沢がなく「見た目の美しさ」が確保されていないことがあったのである。
【0008】
この特許文献1のような成形を行うに当たっては、型表面に合成樹脂シートを接触させる「接触法」と、これとは反対に、型表面に合成樹脂シートを接触させない「非接触法」とがある。「接触法」では、合成樹脂シートが型に直接接触しているから、成形後の冷却を確実にできるが、型表面への合成樹脂シートの接触を完全に行うことは困難で、製品の平面となる部分、例えば底面や天板に「波打ち」部分が僅かに発生して、十分な光沢のあるものとすることが困難である。
【0009】
これに対して、「非接触法」では、合成樹脂シートと型表面との間に「空気溜まり」ができるようにして成形する方法であり、合成樹脂シートの「初期表面」形状をそのまま残すことができて、「接触法」におけるような「波打ち」を発生させることが少ない。しかしながら、この「非接触法」では、上述した「空気溜まり」が合成樹脂シートと型表面との間にできているから、この「空気溜まり」が断熱効果を発揮して、型を通した冷却が十分行えず、この冷却不足によって成形後の製品に変形を来すだけでなく、成形に時間が掛かる(7秒以上)ことになる。
【0010】
そこで、本発明者等は、合成樹脂シートを真空または圧空成形するに当たって、成形時間の短縮を図ることができて、しかも製品表面を美しく仕上げることができるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、「接触法」を基本とすることによって冷却効率を高めながら、この「接触法」の弱点である「波打ち」を製品構造の上で解消すればよい結果が得られることに思い至り、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明の目的とするところは、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることのできる包装用容器、及びその製造型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「合成樹脂シート40によって形成される容器本体10と、これに嵌合されるべく合成樹脂シート40によって成形される蓋体20とからなる包装用容器100であって、
蓋体20の天板21であってその周縁23より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条24を形成したことを特徴とする包装用容器100」
である。
【0013】
すなわち、この請求項1に係る包装用容器100は、合成樹脂シート40によって形成される容器本体10と、これに嵌合されるべく合成樹脂シート40によって成形される蓋体20とからなるものであるが、特に、図1〜図5に示すように、この蓋体20について、その天板21の周縁23より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りした内方突条24を形成したものである。
【0014】
この内方突条24は、図4及び図5に示すようにして、後述する製造型30を採用して、合成樹脂シート40の真空成形により形成されるものであるが、図3の(c)にも示すように、天板21と一体的であり、かつ、図1に示すように、この天板21の周縁に沿って閉曲線状に形成されるものである。また、この内方突条24は、図3〜図5にも示すように、合成樹脂シート40の一部を二つ折りして形成したものであり、この二つ折りされた両部分は互いに密着し合った状態にある。
【0015】
換言すれば、この内方突条24は、合成樹脂シート40が二つ折りされた厚さを有して、天板21の周縁23近傍にて閉曲線状に連続しているものであるから、少なくとも、当該蓋体20の他の部分に比較すれば、約2倍の剛性を有しているものである。この閉曲線状の内方突条24が剛性を有しているということであれば、これに囲まれた天板21は、内方突条24によって成形直後の冷却時においても十分な剛性が確保されているから、冷却時において「波打ち」現象は発生しないことになる。
【0016】
つまり、この請求項1の蓋体20は、その天板21の周縁23に形成してある内方突条24によって、成形時は勿論のこと、製品となった後においても十分な剛性を有したものとなるのであり、天板21が殆ど「鏡面状態」になっているのである。しかも、この内方突条24を形成するにあたっては、後述するように、合成樹脂シート40を製造型30に直接接触させた状態で成形がなされるのであるから、その冷却を短時間内で行えるものとなっているのである。
【0017】
勿論、この内方突条24は天板21から垂下するものであるから、収容物の上を押圧するものとなるため、収容物の安定化を図るものともなるのである。そして、この内方突条24は、これを所謂「リブ」としても利用することができるのであり、当該蓋体20の剛性を高めることができることは言うまでもない。
【0018】
従って、この請求項1に係る蓋体20は、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることができるのであり、結果としてこの蓋体20が嵌合される容器本体10を有した包装用容器100も、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることができるのである。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、
「合成樹脂シート40によって形成されて、底面11及びその周縁13から立ち上がる側壁12とによって収容空間を形成する包装用容器100であって、
底面11であって、当該底面11の周縁13より僅かに内方に位置する部分、または糸尻部15の側壁12より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条14を形成したことを特徴とする包装用容器100」
である。
【0020】
すなわち、この請求項2の包装用容器100は、上記請求項1の蓋体20が嵌合されるべき容器本体10そのもの、または蓋体20を必要としない「トレー状のもの」を想定したものであり、その製造方法は上記請求項1の蓋体20の場合と略同じである。
【0021】
つまり、この請求項2の包装用容器100は、図2に示すように、底面11、この底面11の周縁13、この周縁13の外側に形成してある糸尻部15、そしてこの糸尻部15の外側に立ち上がる側壁12とによって収容空間を形成するものである。そして、この請求項2の包装用容器100では、図2の右側半分に示すように、底面11であって、この底面11の周縁13より僅かに内方に位置する部分に、あるいは、図2の左側半分に示すように、糸尻部15の側壁12より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条14を形成したものなのである。
【0022】
この請求項2の包装用容器100における内方突条14は、上記請求項1の蓋体20における内方突条24と全く同様なものであり、その作用や機能は、請求項1における内方突条24と同様である。
【0023】
勿論、この内方突条14は、図2に示すように、底面11や糸尻部15の下面に突出するものではないから、例えばこの容器本体10が他の包装用容器100の蓋体20上に載置される場合の邪魔物になることがないだけでなく、この内方突条14は、底面11や糸尻部15から立設されるものであるから、収容物を下から支持するものとなるため、収容物の安定化を図るものともなるのである。そして、この内方突条14は、これを所謂「リブ」としても利用することができるのであり、当該容器本体10の剛性を高めることができることは言うまでもない。
【0024】
また、この包装用容器100では、その内方突条14または24を、各周縁13または23の直ぐ内側に形成して侍史してもよりものであり、この場合には、側壁12または22との協働によって、包装用容器100(容器本体10)の底面11または蓋体20の天板21の剛性を高めることができるのである。本発明者等の検討によると、従来品に比して約10%の強度アップに繋がっている。
【0025】
このように、容器本体10の底面11または蓋体20の天板21の剛性が高くなった結果、これらを使用して図2に示すような包装用容器100を構成したとき、当該包装用容器100全体の剛性も非常に高いものとなる。このため、当該包装用容器100内にお弁当や惣菜を入れて手に持ったときの安定性が非常によく、また、この包装用容器100の複数を積み上げたときにも底面11や天板21が変形しないのであるから、中身を潰すことなく、多数の包装用容器100の積み上げを安定した状態で行えるのである。
【0026】
しかも、内方突条14または24を、各周縁13または23の直ぐ内側に形成したということは、底面11や天板21を構成している平面部の面積を大きくすることができることを意味するから、これらの底面11や天板21を通して包装用容器100の内部を視認する場合の視野を大きくすることができるのである。
【0027】
さらに、以上のようにした包装用容器100または容器本体10では、その周縁13または23の直近に内方突条14または24を形成するのであるから、この周縁13または23の角部における断面形状を、円弧ではなく鋭角なものとすることができる。その結果、当該包装用容器100や容器本体10の周縁13または23における形状をメリハリの付いたものとすることができるのであり、「角部がスッキリしたもの」というデザイン性の向上が確保できるのである。
【0028】
従って、この請求項2に係る包装用容器100は、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることができるのである。また、この包装用容器100は、包装用容器100としたときの剛性を高めて運搬や積み上げを安定した状態で行えるだけでなく、包装用容器100内の視認を確実に行え、しかもデザイン性に優れたものとなっているのである。
【0029】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の包装用容器100について、
「各内方突条14または24の高さを、0.3〜3mmとしたこと」
である。
【0030】
すなわち、この請求項3の包装用容器100または蓋体20では、上述した各内方突条14または24の高さを、0.3〜3mmとしたものであり、これにより、底面11や天板21の平滑性を確保しながら包装用容器100である容器本体10または蓋体20全体の剛性を高めたものである。
【0031】
以上のように、内方突条14または24の高さは0.3mm〜3mmの範囲内のものにしなければならないが、その理由は、この内方突条14または24は合成樹脂シート40の物性を阻害しないで二重折りするものであるから、この合成樹脂シート40を引き延ばさないないことで最小高さ0.3mm(合成樹脂シート40の厚さの2倍)にしたいからである。一方、内方突条14または24の高さを3mm以上にしても、高くした程その効果が高くならないからである。
【0032】
以上の結果、この請求項3の包装用容器100では、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、当該内方突条14または24によって全体の剛性が高くなっているから、逆に材料である合成樹脂シート40として、従来品と比較すれば、約10〜15%減厚したものを採用しても、十分製品化が可能となったのである。
【0033】
従って、この請求項3に係る包装用容器100では、上記請求項1または請求項2のいずれかに係るそれと同様な機能を発揮する他、使用する合成樹脂シート40の厚さを薄くすることができて、全体のコスト低減を図ることができるものとなったのである。
【0034】
そして、請求項4に係る発明の採った手段は、
「合成樹脂シート40によって成形される包装用容器100または蓋体20に対して、その底面11または天板21に、合成樹脂シート40を二つ折りした内方突条14・24を形成するようにした包装用容器100の製造型30であって、
側壁12・22を形成する第1型面31aと、側壁12・22と底面11または天板21との間の周縁13・23を形成する環状突起31bと、この環状突起31bの内側に形成されて、合成樹脂シート40二つ折りして入れることのできる折り込み空間31cと、この折り込み空間31cの内側に形成した型移動空間31dとを少なくとも備えた第1型31と、
この第1型31の型移動空間31d内に収納されて、環状突起31bの高さの範囲内で進退するとともに、第1型面31aと同じ側に形成した第2型面32aを少なくとも備えた第2型32とを少なくとも備え、
この第2型32の第2型面32aにて、軟化された合成樹脂シート40を吸引しながら、この第2型面32aが第1型31側の環状突起31bの先端に移動するとき、合成樹脂シート40を、第1型31側の折り込み空間31c内にて二つ折りすることにより、内方突条14・24を形成できるようにしたことを特徴とする包装用容器100の製造型30」
である。
【0035】
すなわち、この請求項4に係る製造型30は、上述してきた請求項1〜請求項3に係る包装用容器100または蓋体20を確実に製造することのできるものである。
【0036】
この製造型30は、上述してきた内方突条14または24を積極的に形成しなければならないものであるから、そのための折り込み空間31cを第1型31に形成したものである。また、この製造型30は、その第1型31及び第2型32について、図4及び図5の図示下方から空気を吸引できるようにしてあり、第1型31の第1型面31aは勿論、環状突起31bの先端部、そして第2型32の図示上面である第2型面32aから、合成樹脂シート40の図示下面を吸引するものである。なお、この製造型30上に搬送されてきた合成樹脂シート40は、図示しない加熱装置によって加熱されて軟化しており、空気の吸引によって第1型31や第2型32の型面に沿うものとなっている。
【0037】
以上の製造型30によって合成樹脂シート40の吸引を行うときは、第2型32は第1型31の型移動空間31d内の下側に配置してあり、第1型31側の環状突起31bは第2型32側の第2型面32aより、2〜3mm下方に配置されている。ここで、軟化された合成樹脂シート40の吸引を第1型31及び第2型32によって行えば、図4の(a)に示すように、合成樹脂シート40は、第1型31及び第2型32の型面に完全に沿うことになる。なお、このとき、蓋体20の側壁22に該当する部分が、第1型31の第1型面31a上に密着することは言うまでもない。
【0038】
合成樹脂シート40が図4の(a)に示した状態になった時点で、第2型32を図5の(a)に示した位置まで上昇させると、合成樹脂シート40の一部が二つ折りされた内方突条14または24が形成されるのである。何故なら、この内方突条14または24の、図5の(a)に示した左側部分は、第1型31の環状突起31b上部内側に密着した状態で環状突起31b側に吸引されているから動かない。これに対して、この内方突条14または24の、図5の(a)に示した右側部分は、第2型32の上昇に伴って、図5の(a)に示した左側部分に重なりながら上昇する。つまり、第2型32の第2型面32a上に存在している軟化した合成樹脂シート40が引き延しされながら、図5の(a)に示した左側部分に重なっていくのである。
【0039】
従って、この請求項4に係る製造型30が前述したような構成を有して、上記のような作動を行う結果、この製造型30は、請求項1〜請求項3のいずれかに係る包装用容器100、容器本体10または蓋体20を確実に成形できるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0040】
以上説明した通り、本発明は、
「合成樹脂シート40によって形成される容器本体10と、これに嵌合されるべく合成樹脂シート40によって成形される蓋体20とからなる包装用容器100であって、
蓋体20の天板21であってその周縁23より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条24を形成したこと」
または、
「合成樹脂シート40によって形成されて、底面11及びその周縁13から立ち上がる側壁12とによって収容空間を形成する包装用容器100であって、
底面11であって、当該底面11の周縁13より僅かに内方に位置する部分、または糸尻部15の側壁12より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条14を形成したこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることのできる包装用容器100を提供することができるのである。
【0041】
また、請求項4に係る発明においては、
「合成樹脂シート40によって成形される包装用容器100または蓋体20に対して、その底面11または天板21に、合成樹脂シート40を二つ折りした内方突条14・24を形成するようにした包装用容器100の製造型30であって、
側壁12・22を形成する第1型面31aと、側壁12・22と底面11または天板21との間の周縁13・23を形成する環状突起31bと、この環状突起31bの内側に形成されて、合成樹脂シート40二つ折りして入れることのできる折り込み空間31cと、この折り込み空間31cの内側に形成した型移動空間31dとを少なくとも備えた第1型31と、
この第1型31の型移動空間31d内に収納されて、環状突起31bの高さの範囲内で進退するとともに、第1型面31aと同じ側に形成した第2型面32aを少なくとも備えた第2型32とを少なくとも備え、
この第2型32の第2型面32aにて、軟化された合成樹脂シート40を吸引しながら、この第2型面32aが第1型31側の環状突起31bの先端に移動するとき、合成樹脂シート40を、第1型31側の折り込み空間31c内にて二つ折りすることにより、内方突条14・24を形成できるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、型成形時間が短縮できて非常に美しく仕上げることのできる包装用容器100のための製造型30を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である容器本体10あるいはこれに嵌合される蓋体20、及びこれらを成形するための製造型30について説明する。勿論、最良形態であるこれらの容器本体10、蓋体20、及び製造型30は、上記各請求項に係る発明の全てを含むものである。
【0043】
図1には、本発明に係る蓋体20が示してある。この蓋体20は、図2にも示すように、蓋体20と同様な構成を有する容器本体10の上面に嵌合されるものであり、この容器本体10とともに、内部に収容空間を有する包装用容器100を構成するものである。
【0044】
容器本体10は、合成樹脂シート40を所謂「シート成形」して形成されるものであり、図2に示したように、底面11と、この底面11の周縁13から立ち上がる側壁12とによって収容空間を形成するものである。そして、この容器本体10は、その底面11の、周縁13より僅かに内方に位置する部分に、合成樹脂シート40を二重折りすることにより形成した内方突条14を形成したものである。
【0045】
以上のような容器本体10に対して嵌合されることになる蓋体20も、図1及び図2に示したように、天板21と、この天板21に連続する側壁22と、これらの側壁22と天板21との間に位置する周縁23と、このより僅かに内方に位置する部分に形成されて、合成樹脂シート40を二重折して形成した内方突条24を有しているものである。
【0046】
この最良形態における各内方突条14及び24は、例えば図3に示したように、各周縁13または23の直ぐ内側に形成したものであって、かつその各高さは、0.3〜3mmとしたものであり、平面形状全体は、図1の(a)にも示したように、各周縁13または23の内側に沿う閉曲線状にしたものである。
【0047】
また、この最良形態における各内方突条14及び24は、図4及び図5に示した製造型30によってシート成形されるものである。この製造型30は、図4の(c)に示したように、支持台33上に固定される第1型31と、この第1型31に形成した型移動空間31d内に収容される第2型32とからなるものである。
【0048】
第1型31は、図4の(b)等に示したように、側壁12・22を形成する第1型面31aと、側壁12・22と底面11または天板21との間の周縁13・23を形成する環状突起31bと、この環状突起31bの内側に形成されて、合成樹脂シート40二つ折りして入れることのできる折り込み空間31cと、この折り込み空間31cの内側に形成した型移動空間31dとを少なくとも備えたものである。
【0049】
一方、第2型32は、第1型31の第1型31の型移動空間31d内に収納されて、環状突起31bの高さの範囲内で進退するとともに、第1型面31aと同じ側に形成した第2型面32aを少なくとも備えたものである。
【0050】
換言すれば、この製造型30は、上述してきた内方突条14または24を積極的に形成するための折り込み空間31cを第1型31に形成したものである。また、この製造型30は、その第1型31及び第2型32について、図4及び図5の図示下方から空気を吸引するものであり、第1型31の第1型面31aは勿論、環状突起31bの先端部、そして第2型32の図示上面である第2型面32aからも、図4及び図5に示した合成樹脂シート40の図示下面を吸引するものである。
【0051】
以上の製造型30によって合成樹脂シート40の吸引を行うときは、図4に示したように、第2型32は第1型31の型移動空間31d内の下側に配置してあり、第1型31側の環状突起31bは第2型32側の第2型面32aより、2〜3mm下方に配置されている。ここで、軟化された合成樹脂シート40の吸引を第1型31及び第2型32によって行えば、図4の(a)に示したように、合成樹脂シート40は、第1型31及び第2型32の型面に完全に沿うことになる。なお、このとき、蓋体20の側壁22に該当する部分が、第1型31の第1型面31a上に密着することは言うまでもない。
【0052】
そして、この製造型30は、その第2型32の第2型面32aにて、軟化された合成樹脂シート40を吸引しながら、この第2型面32aが第1型31側の環状突起31bの先端に移動するとき、合成樹脂シート40を、第1型31側の折り込み空間31c内にて二つ折りすることになるものである。
【0053】
すなわち、合成樹脂シート40が図4の(a)に示した状態になった時点で、第2型32が図5の(a)に示した位置まで上昇されると、環状突起31bの上部内側に形成してある折り込み空間31c内にて、合成樹脂シート40の一部が二つ折りされて内方突条14または24が形成されるのである。何故なら、この内方突条14または24の、図5の(a)に示した左側部分は、第1型31の環状突起31b上部内側に密着した状態で環状突起31b側に吸引されているから動かない。これに対して、この内方突条14または24の、図5の(a)に示した右側部分は、第2型32の上昇に伴って、図5の(a)に示した左側部分に重なりながら上昇する。つまり、第2型32の第2型面32a上に存在している軟化した合成樹脂シート40が引き延しされながら、図5の(a)に示した左側部分に重なっていくのである。
【0054】
以上の結果、この製造型30によって内方突条14または24を有する包装用容器100、容器本体10、あるいは蓋体20が確実に形成されるのである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように構成した内方突条14または24は、これを「リブ」としても利用することができる。その場合には、これらの内方突条14または24を形成すべき位置の変更、そして製造型30の形状を変更しなければならないが、それは、「リブ」が必要とされる部分に合わせて改良すれば済むことである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る蓋体を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1に示した蓋体と、この蓋体を嵌合した容器本体とからなる包装用容器の拡大縦断面図である。
【図3】蓋体の縦断面を示すもので、(a)は(b)中の1−1線部の拡大縦断面図、(b)は蓋体の左半部の概略断面図、(c)は蓋体の全体の概略断面図である。
【図4】内方突条を形成する前段階の製造型を示すもので、(a)は(b)中の2−2線部の拡大縦断面図、(b)は製造型の左半部の概略断面図、(c)は製造型の全体の概略断面図である。
【図5】内方突条を形成した後の製造型を示すもので、(a)は(b)中の3−3線部の拡大縦断面図、(b)は製造型の左半部の概略断面図、(c)は製造型の全体の概略断面図である。
【図6】従来の技術を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100 包装用容器
10 容器本体
11 底面
12 側壁
13 周縁
14 内方突条
15 糸尻部
20 蓋体
21 天板
22 側壁
23 周縁
24 内方突条
30 製造型
31 第1型
31a 第1型面
31b 環状突起
31c 折り込み空間
31d 型移動空間
32 第2型
32a 第2型面
33 支持台
40 合成樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートによって形成される容器本体と、これに嵌合されるべく合成樹脂シートによって成形される蓋体とからなる包装用容器であって、
前記蓋体の天板であって、この天板の周縁より僅かに内方に位置する部分に、前記合成樹脂シートを二重折りすることにより形成した内方突条を形成したことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
合成樹脂シートによって形成されて、底面及びその周縁から立ち上がる側壁とによって収容空間を形成する包装用容器であって、
前記底面であって、当該底面の前記周縁より僅かに内方に位置する部分、または糸尻部の側壁より僅かに内方に位置する部分に、前記合成樹脂シートを二重折りすることにより形成した内方突条を形成したことを特徴とする包装用容器。
【請求項3】
前記各内方突条の高さを、0.3〜3mmとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
合成樹脂シートによって成形される包装用容器または蓋体に対して、その底面または天板に、前記合成樹脂シートを二つ折りした内方突条を形成するようにした包装用容器の製造型であって、
側壁を形成する第1型面と、前記側壁と前記底面または天板との間の周縁を形成する環状突起と、この環状突起の内側に形成されて、前記合成樹脂シート二つ折りして入れることのできる折り込み空間と、この折り込み空間の内側に形成した型移動空間とを少なくとも備えた第1型と、
この第1型の前記型移動空間内に収納されて、前記環状突起の高さの範囲内で進退するとともに、前記第1型面と同じ側に形成した第2型面を少なくとも備えた第2型とを少なくとも備え、
この第2型の第2型面にて、軟化された前記合成樹脂シートを吸引しながら、この第2型面が前記第1型側の環状突起の先端に移動するとき、前記合成樹脂シートを、前記第1型側の折り込み空間内にて二つ折りすることにより、前記内方突条を形成できるようにしたことを特徴とする包装用容器の製造型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−30857(P2008−30857A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169921(P2007−169921)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(396000422)リスパック株式会社 (53)
【Fターム(参考)】