説明

内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、内歯ヘリカルギア製造装置、及び、内歯ヘリカルギアの製造方法

【課題】内歯が形成されたギア部に隣接してストレート部が設けられた内歯ヘリカルギアを高精度、高歩留まりで製造できる内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、並びに、これを用いた内歯ヘリカルギア製造装置及び内歯ヘリカルギア製造方法を提供する。
【解決手段】歯型が外周面に設けられた円板状のマンドレル部と、その上面側又は下面側に設けられスペーサ部14とを備えた内歯ヘリカルギア製造用マンドレル10aを円筒形の素材60aに挿入し、ダイス30及びパンチ40により素材60aを径方向に圧縮する。プレス後、マンドレル10aを抱き込んだ素材60aをダイス30内に残したまま、パンチ40のみを後退させる。次に、内歯ヘリカルギア製造用マンドレル10bを円筒形の素材60bに挿入した状態で、ダイス30及びパンチ40により素材60bを径方向に圧縮すると同時に、マンドレル10aを抱き込んだ素材60aをダイス30から押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、内歯ヘリカルギア製造装置、及び、内歯ヘリカルギアの製造方法に関し、さらに詳しくは、内周面に螺旋状の内歯が形成されたギア部と、内周面に内歯が形成されていないストレート部とを備えた内歯ヘリカルギアをプレス加工により製造するための内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、並びに、これを用いた内歯ヘリカルギア製造装置及び内歯ヘリカルギアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ヘリカルギア(はすば歯車)」とは、回転軸に対して歯が螺旋状に傾斜している歯車をいう。「ねじれ角」とは、ヘリカルギアの回転軸と歯すじの接線とのなす角をいう。ヘリカルギアの内、円筒の内周面に歯が形成されているものを「内歯ヘリカルギア」という。
内歯ヘリカルギアは、切削加工により製造することもできるが、材料歩留まりを向上させるためには、前方押出法や肉寄せ製法などの鍛造法により製造するのが好ましい。そのため、鍛造法を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
(1)外周面にヘリカル成形歯が形成された回転可能なマンドレルにリング状の素材を挿入し、
(2)パンチを用いて素材をマンドレルに沿って下方に押圧移動させる
内歯ヘリカルギアの製造方法(前方押出法)が開示されている。
同文献には、
(イ)素材をマンドレルに沿って下方に押圧移動させると、マンドレル表面の成形歯によって素材の内周面にヘリカル歯が形成される点、及び、
(ロ)押出加工時に金型及び/又は素材を加温すると、歯車の寸法が安定する点、
が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、上部の歯形マンドレル部と下部の歯形サイジングマンドレル部とを一体的に有するマンドレル、及び、ダイスの内周面によって形成される円筒状成形空間に3個のリング状素材を重ね合わせ、パンチによって上方から下方に押圧するヘリカル内歯ギアの加工方法(前方押出法)が開示されている。
同文献には、サイジングマンドレル部におけるサイジング圧力が上方に位置する素材に作用するので、素材下面に生ずるダレ(未充填部)が少なくなり、機械加工による取り代が減少する点が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、
(1)ダイスの内周面にストレートギア成形歯を設け、マンドレルの外周面にヘリカルギア成形歯を設け、
(2)ダイスとマンドレルを同軸上に配置し、両者の間にリング状の素材を挿入し、
(3)パンチによって素材とマンドレルを軸方向に沿って押圧し、ダイスの内周面に設けられた縮径部により素材を中心寄りに塑性移動させることにより、素材の内周面にヘリカルギアを成形し、これと独立又は平行して素材の外周面にストレートギアを成形する、
内外ギア同時成形法(肉寄せ製法)が開示されている。
同文献には、このような方法を用いると、素材の内外両周面における相対的なねじれ変形量を低減できる点が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、
(1)内径の大きい円筒形部、内径の小さい円筒形部、及び両者を繋ぐ縮径部を備えたダイスと、ヘリカルギア成形歯を備えたマンドレルとの間に環状の歯車素材を挿入し、
(2)上方から下方に向かってマンドレル及び歯車素材を押圧し、ダイスの縮径部により歯車素材を径方向に圧縮すると同時に、下方から歯車素材を押圧する
歯車の製造方法(肉寄せ製法)が開示されている。
同文献には、歯車素材の両端面を加圧しながら、歯車素材を径方向に塑性移動させると、歯車素材の先端に生ずる「だれ」を防止できる点が記載されている。
【0007】
前方押出法を用いて内歯ヘリカルギアを製造する場合、ヘリカル歯型が形成されたマンドレルは、円筒形の素材に対して相対的に回転しながら、円筒形の素材の内部を通過する。そのため、成形時に素材に強いねじりが生じ、製品のギア歯精度が悪化する。ねじれ角が20°以下の内歯ヘリカルギアの場合、押し出し初期の歯型の形状(特許文献3にいう「歯形マンドレル部」)を工夫することで、素材のねじれを抑え、成形精度を保つことはできる。しかしながら、高ねじれ角の内歯ヘリカルギアに対しては、前方押出法では精度が保てず、鍛造による成形は不可能とされてきた。
【0008】
これに対し、肉寄せ製法は、ヘリカル歯型が形成されたマンドレルに向かって円筒形の素材を圧縮することにより、円筒形の素材の内面にヘリカル歯型を転写する方法である。そのため、成形時に素材に強いねじりは発生しない。また、特許文献4に記載されているように、肉寄せ時に素材の両端を拘束すると、素材先端部のだれに起因するギア歯精度の悪化を抑制することができる。
しかしながら、肉寄せ製法により内歯ヘリカルギアを製造する場合、ダイスには、円筒形の素材を挿入可能な大径部と成形終了後の内歯ヘリカルギアの外径を決める小径部との間に、大径部から小径部に向かって素材を円滑に塑性流動させるための縮径部が必要となる。素材を押圧するためのパンチの外径は、ダイスの大径部の内径とほぼ同等であるため、プレス時にパンチを挿入できるのは、縮径部の手前までである。そのため、成形終了後のギアの上端には、縮径部の形状に倣ったテーパ状の押し残し部が残存する。
【0009】
さらに、内歯ヘリカルギアは、内周面全面に内歯が形成される場合もあるが、内歯が形成された部分(ギア部)に隣接して、内歯が形成されていない部分(ストレート部)が設けられる場合もある。しかしながら、従来の前方押し出し法や肉寄せ製法を用いて内歯ヘリカルギアを製造する場合、円筒形素材の内面のほぼ全面に内歯が形成される。そのため、従来の方法では、ストレート部は切削加工により形成する必要があり、材料歩留まりが悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−342779号公報
【特許文献3】特開2010−201442号公報
【特許文献2】特開平11−147158号公報
【特許文献4】特開2010−064100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、内歯が形成されたギア部に隣接してストレート部が設けられた内歯ヘリカルギアを高精度、かつ、高歩留まりで製造することが可能な内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、並びに、これを用いた内歯ヘリカルギア製造装置及び内歯ヘリカルギアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る内歯ヘリカルギア製造用マンドレルは、
円筒形の素材の内部にマンドレルが挿入された状態で、前記素材の外径より小さい内径を有する小径部を備えたダイスと、前記素材を押圧するためのパンチとを用いて前記素材をプレスし、前記素材を前記小径部から押し出すと同時に前記素材を前記マンドレルの径方向に圧縮する肉寄せにより、前記素材の内周面に螺旋状の内歯を形成するための内歯ヘリカルギア製造用マンドレルであって、
前記内歯を形成するための歯型が外周面に設けられた円板状のマンドレル部と、
前記マンドレル部の軸方向上面側又は軸方向下面側に設けられ、かつ、前記素材が前記ダイスから押し出される時に前記素材の一部を軸方向に塑性変形させることによって前記内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成するためのスペーサ部と、
前記パンチを前記ダイス内に挿入する時は、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチに一時的に保持させ、前記パンチを前記ダイスから後退させる時は、前記素材及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチから脱離させる保持手段と
を備えていることを要旨とする。
【0013】
本発明に係る内歯ヘリカルギア製造装置は、
円筒形の素材の内部に挿入するための、本発明に係る内歯ヘリカルギア製造用マンドレルと、
前記素材を挿入可能な大径部と、前記素材の外径より小さい内径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部を繋ぐ縮径部とを備えたダイスと、
前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルが挿入された状態で前記素材を押圧し、前記素材を前記小径部から押し出すと同時に前記素材を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルの径方向に圧縮するためのパンチと、
前記パンチを前記ダイス内に挿入する時は、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチに一時的に保持させ、前記パンチを前記ダイスから後退させる時は、前記素材及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチから脱離させる保持手段と
を備えていることを要旨とする。
【0014】
さらに、本発明に係る内歯ヘリカルギアの製造方法は、以下の工程を備えていることを要旨とする。
(イ)本発明に係る内歯ヘリカルギア製造装置を用いて、前記パンチの先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を一時的に保持させ、前記ダイス内に円筒形の素材(A)を挿入する第1セット工程。
(ロ)前記パンチを前記ダイス内に挿入し、前記素材(A)の内部に前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)が挿入された状態で前記パンチの先端の外周部により前記素材(A)を押圧し、前記素材(A)を前記小径部から押し出すと同時に前記素材(A)を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)の径方向に圧縮し、
次いで、前記パンチを後退させ、前記素材(A)及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を前記パンチから脱離させる第1プレス工程。
(ハ)前記パンチの先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を一時的に保持させ、前記ダイス内に円筒形の素材(B)を挿入する第2セット工程。
(ニ)前記パンチを前記ダイス内に挿入し、前記素材(B)の内部に前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)が挿入された状態で前記パンチの先端の外周部により前記素材(B)を押圧し、前記素材(B)を前記小径部から押し出すと同時に前記素材(B)を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)の径方向に圧縮し、
前記素材(B)の肉寄せと同時に、前記パンチの押圧力によって前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を抱き込んだ前記素材(A)を前記ダイスから完全に押し出し、前記素材(A)の一部を塑性変形させることによって前記スペーサ部に沿って前記内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成し、
次いで、前記パンチを後退させ、前記素材(B)及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を前記パンチから脱離させる第2プレス工程。
【発明の効果】
【0015】
円板状のマンドレル部の上面又は下面にスペーサ部が設けられた内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)をパンチに一時的に保持させ、素材(A)の内部にマンドレル(A)が挿入された状態で素材(A)のプレスを行うと、素材(A)が径方向に圧縮され、マンドレル(A)表面の歯型が素材(A)の内周面に転写される。プレス終了後、パンチを後退させると、マンドレル(A)がパンチから離脱し、マンドレル(A)を抱き込んだ素材(A)がダイス内に残される。
次に、マンドレル(B)をパンチに一時的に保持させ、素材(B)の内部にマンドレル(B)が挿入された状態で素材(B)のプレスを行うと、素材(B)の内周面にマンドレル(B)の歯型が転写される。これと同時に、マンドレル(A)を抱き込んだ素材(A)がダイスから完全に押し出され、スペーサ部に沿ってストレート部が形成される。
【0016】
円板状のマンドレルを抱き込んだ素材を逐次、ダイスから押し出すと、肉寄せによってギア部が形成されると同時に、ダイスの縮径部に残った素材の押し残し部が塑性変形し、ギア部に隣接してストレート部が形成される。そのため、押し残し部を除去したり、あるいはストレート部を形成するための切削加工が不要となり、材料歩留まりが向上する。
また、プレス成形が行われた直後の素材(A)及びマンドレル(A)は、ダイスに嵌り込んだ状態になっているので、次のプレス成形時においては、素材(B)の下端が素材(A)の上端で拘束された状態(すなわち、素材(B)に背圧がかかった状態)で、素材(B)のプレスが行われる。そのため、素材(B)の下端のだれに起因するギア歯精度の低下を抑制することができる。
さらに、マンドレル部とスペーサ部を分離可能とすると、マンドレルの製造が容易となるだけでなく、スペーサ部の厚さを調節することができる。また、これによってギアのストレート部の長さや、成形時に素材にかかる背圧を調節することができる。そのため、ストレート部の形状が異なる内歯ヘリカルギアであっても、低コストかつ高い材料歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】内歯ヘリカルギア製造用マンドレルの平面図(図1(a))、正面図(図1(b))、及び、C−C'線断面図(図1(c))である。
【図2】第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置の概略図である。
【図3】図2に示す装置を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法の工程図である。
【図4】図3に示す工程図の続きである。
【図5】第2の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置の概略図である。
【図6】図5に示す装置を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法の工程図である。
【図7】図6に示す工程図の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 内歯ヘリカルギア製造用マンドレル]
図1に、本発明の一実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造用マンドレルの平面図、正面図、及び、C−C’線断面図を示す。
内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(以下、単に「マンドレル」ともいう)10は、肉寄せにより、円筒形の素材の内周面に螺旋状の内歯を形成するためのものである。
「肉寄せ」とは、鍛造加工の一種であって、円筒形の素材の内部にマンドレルが挿入された状態で、素材の外径より小さい内径を有する小径部を備えたダイスと、素材を押圧するためのパンチとを用いて素材をプレスし、素材を小径部から押し出すと同時に素材をマンドレルの径方向に圧縮する加工方法をいう。マンドレルの表面に内歯を形成するための歯型を形成すると、素材を径方向に圧縮することにより、素材の内周面に歯型を転写することができる。
【0019】
マンドレル10は、マンドレル部12と、スペーサ部14とを備えている。マンドレル部12は、内歯ヘリカルギアの内歯が形成された部分(ギア部)を形成するためのものである。スペーサ部14は、ギア部の軸方向に隣接し、かつ内歯が形成されていない部分(ストレート部)を形成するためのものである。マンドレル部12及びスペーサ部14には、いずれも硬質金属が用いられる。
【0020】
マンドレル部12は円板状を呈しており、その外周面には内歯を形成するための歯型12a、12a…が形成されている。歯型12a、12a…の断面形状、ねじれ角等は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
マンドレル部12の上面及び下面には、それぞれ、突起12b及び突起12cが設けられている。突起12b、12cは、複数個のマンドレル10を同軸上に重ねる際の位置決めに用いられる。また、突起12b又は突起12cは、パンチに一時的に保持させるための保持手段としても用いられる。この点については、後述する。
【0021】
スペーサ部14は、素材がダイスから押し出される時に素材の一部を軸方向に塑性変形させることによって、内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成するためのものである。スペーサ部14は、マンドレル部12の軸方向上面側又は軸方向下面側のいずれに設けられていても良い。図1に示す例において、スペーサ部14は、マンドレル部12の下面側に設けられている。スペーサ部14の厚さ(軸方向の長さ)は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。スペーサ部14の直径は、必ずしもマンドレル部12の直径と同一である必要はなく、ストレート部の形成が可能である限りにおいて、任意に選択することができる。
【0022】
スペーサ部14の中央には貫通孔14aが設けられ、貫通孔14a内にはマンドレル部12の突起12cが挿入されている。スペーサ部14は、複数個のボルト16、16によりマンドレル部12に固定されている。すなわち、本実施の形態において、マンドレル部12とスペーサ部14は、分離可能になっている。
貫通孔14aの内径は、マンドレル部12の上部の突起12bより僅かに大きくなっており、複数個のマンドレル10を同軸上に重ねることができるようになっている。
【0023】
マンドレル部12とスペーサ部14は、一体的に形成されていても良い。しかしながら、歯型12a…が形成されたマンドレル部12と、歯型が形成されていないスペーサ部14とを一体的に加工するのは、加工コストの増大を招く。一方、マンドレル部12とスペーサ部14とを分離可能にすると、加工が容易化するだけでなく、スペーサ部14の厚さを調節することにより、ストレート部の長さや、成形時に素材にかかる背圧を調節することができる。そのため、ストレート部14の形状が異なる内歯ヘリカルギアであっても、低コストかつ高い材料歩留まりで製造することができる。
【0024】
さらに、マンドレル10は、保持手段を備えている。「保持手段」とは、パンチをダイス内に挿入する時は、マンドレル10をパンチに一時的に保持させ、パンチをダイスから後退させる時は、素材及びマンドレル10をダイス内に残した状態で、マンドレル10をパンチから脱離させる手段をいう。保持手段は、プレス前後においてマンドレル10を着脱自在に保持できるものであれば良い。
【0025】
保持手段としては、例えば、
(1)磁石の磁力によってマンドレル10をパンチに着脱自在に保持する磁力保持手段、
(2)マンドレル10を真空吸着する真空吸着手段、
(3)機械的なチャッキング機構によりマンドレル10を着脱する機械チャック手段、
などがある。
本実施の形態において、保持手段には、磁力保持手段が用いられる。すなわち、後述するようにパンチの先端面には、マンドレル部12の突起12bに対向するように磁石が設けられる。また、少なくともマンドレル部12の突起12bは、磁性材料からなる。マンドレル部10は、全体がこのような磁性材料からなるものでも良い。一方、スペーサ部14は、必ずしも磁性材料からなる必要はない。
【0026】
[2. 内歯ヘリカルギア製造装置(1)]
図2に、本発明の第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置の概略構成図を示す。図2において、内歯ヘリカルギア製造装置20aは、内歯ヘリカルギア製造用マンドレル10と、ダイス30と、パンチ40と、保持手段50とを備えている。
これらの内、内歯ヘリカルギア製造用マンドレル10については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0027】
ダイス30は、ベースプレート32によってプレス装置のボルスター34に固定されている。ダイス30の中央には、貫通状の円筒形空孔36が形成されている。円筒形空孔36は、円筒形の素材60を挿入可能な大径部36aと、素材60の外径より小さい内径を有する小径部36bと、大径部36aと小径部36bとを繋ぐ縮径部36cとを備えている。縮径部36cは、テーパ状になっており、素材60を大径部36aから小径部36bに向かって円滑に押し出せるようになっている。
ダイス30の小径部36bの下方には、下部空間38aが設けられている。また、下部空間38aの側方には、取り出し口38bが設けられている。取り出し口38bは、小径部36bから完全に押し出され、ボルスター34上に落下した素材60及びこれに抱き込まれたマンドレル10を取り出すために用いられる。
【0028】
パンチ40は、マンドレル10が挿入された状態で素材60を押圧し、素材60を小径部36bから押し出すと同時に素材60をマンドレル10の径方向に圧縮するためのものである。パンチ40の先端中央には、後述する保持手段により、マンドレル10が一時的に保持されている。パンチ40は、ダイス30の円筒形空孔36に挿入できるように、ベースプレート42によってプレス装置のスライド44に固定されている。
【0029】
パンチ40の先端外周には、環状突起40aが設けられている。環状突起40aは、ダイス30の大径部36aとマンドレル10の外周面との間に挿入される素材60を下方に押圧するためのものである。環状突起40aの高さHは、マンドレル10のスペーサ部14の厚さ、及び、素材60の重量(又は体積)に応じて、最適な値を選択する。具体的には、スペーサ部14に沿って必要な長さのストレート部を形成することができ、かつ、次のプレスで成形される素材60に適切な背圧が加わるように、環状突起40aの高さHを選択するのが好ましい。
【0030】
さらに、内歯ヘリカルギア製造装置10は、保持手段50を備えている。「保持手段」とは、上述したように、パンチ40をダイス30内に挿入する時は、マンドレル10をパンチ40に一時的に保持させ、パンチ40をダイス30から後退させる時は、素材60及びマンドレル10をダイス30内に残した状態で、マンドレル10をパンチ40から脱離させる手段をいう。
【0031】
本実施の形態において、保持手段50には、磁石52の磁力によってマンドレル10をパンチ40に着脱自在に保持する磁力保持手段が用いられる。
すなわち、パンチ40の先端面の中央には、凹部40bが設けられ、凹部40b内には、マンドレル部12の突起12bに対向するように磁石52が固定されている。また、マンドレル10の内、少なくとも突起12bは、磁性材料からなる。さらに、凹部40bの内径は、突起12bの外径より僅かに大きくなっており、マンドレル10を保持する際には、突起12bが凹部40b内に挿入されるようになっている。
そのため、プレス前においては、磁石52と突起12b間に生ずる磁力によって、パンチ40の先端に一時的にマンドレル10を保持させることができる。一方、プレス終了後は、マンドレル10を抱き込んだ素材60がダイス30の小径部36bに嵌り込んだ状態になっているので、パンチ40を上方に後退させると、磁石52の磁力に抗して、マンドレル10をパンチ40から脱離させることができる。
【0032】
[3. 内歯ヘリカルギアの製造方法(1)]
図3及び図4に、本発明の第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギアの製造方法の工程図を示す。図3及び図4において、本実施の形態に係る方法は、第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置20aを用いた方法であって、第1セット工程と、第1プレス工程と、第2セット工程と、第2プレス工程とを備えている。
【0033】
[3.1. 第1セット工程]
第1セット工程は、図3(a)に示すように、第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置20aを用いて、パンチ40の先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)10aを一時的に保持させ、ダイス30内に円筒形の素材(A)60aを挿入する工程である。
素材(A)60aは、外径がダイス30の大径部36aより僅かに小さく(直径差で0.1mm程度)、内径がマンドレル(A)10aの外径よりも僅かに大きく(直径差で0.1mm程度)なるように、円筒状に成形されたものである。素材(A)60aの厚さは、マンドレル10のスペーサ部14の厚さに応じて、最適な値を選択する。
このような素材(A)60aをダイス30の大径部36aに挿入すると、素材(A)60aは、縮径部36c上で止まる。
【0034】
[3.2. 第1プレス工程]
第1プレス工程は、
パンチ40をダイス30内に挿入し、素材(A)60aの内部にマンドレル(A)10aが挿入された状態でパンチ40の先端の外周部により素材(A)60aを押圧し、素材(A)60aを小径部36bから押し出すと同時に素材(A)60aをマンドレル10aの径方向に圧縮し、
次いで、パンチ40を後退させ、素材(A)60a及びマンドレル(A)10aをダイス30内に残した状態で、マンドレル(A)10aをパンチ40から脱離させる工程である。
【0035】
図3(b)に示すように、パンチ40をダイス30内に挿入すると、パンチ40の先端の外周部に形成された環状突起40aによって、素材(A)60aが小径部36bから押し出される。これと同時に、素材(A)60aがマンドレル10aの径方向に圧縮され、素材(A)60aの一部がマンドレル10aの歯型12a間に侵入する。また、パンチ40は、縮径部36cの手前までしか押し込めないので、素材(A)60aの上端には、テーパ状の押し残し部fが残る。さらに、塑性変形よって素材(A)60aの軸方向の長さが伸びるために、磁石52と突起12bとの間隔が広がり、磁石52−突起12b間の引力が弱まる。
プレス終了後、パンチ40を後退(上昇)させると、マンドレル(A)10aがパンチ40から脱離し、ダイス30内には、塑性加工が加えられた素材(A)60a及びこれに抱き込まれたマンドレル(A)10aが残る。
【0036】
[3.3. 第2セット工程]
第2セット工程は、図4(a)に示すように、パンチ40の先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)10bを一時的に保持させ、ダイス30内に円筒形の素材(B)60bを挿入する工程である。
素材(B)60b及びマンドレル10bの詳細は、素材(A)60a及びマンドレル10aと同一であるので説明を省略する。
素材(B)60aをダイス30の大径部36aに挿入すると、素材(B)60bは、小径部36bに嵌り込んでいる素材(A)60aの上に載る。
【0037】
[3.4. 第2プレス工程]
第2プレス工程は、図4(b)に示すように、
パンチ40をダイス30内に挿入し、素材(B)60bの内部にマンドレル(B)10bが挿入された状態でパンチ40の先端の外周部により素材(B)60bを押圧し、素材(B)60bを小径部36bから押し出すと同時に素材(B)60bをマンドレル(B)10bの径方向に圧縮し、
素材(B)60bの肉寄せと同時に、パンチ40の押圧力によってマンドレル(A)10aを抱き込んだ素材(A)10aをダイス30から完全に押し出し、素材(A)60aの一部を塑性変形させることによってスペーサ部14に沿って内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成し、
次いで、パンチ40を後退させ、素材(B)60b及びマンドレル(B)10bをダイス30内に残した状態で、マンドレル(B)10bをパンチ40から脱離させる工程である。
【0038】
素材(A)60aがダイス30に嵌り込んだ状態(図4(a)の状態)で、素材(A)60a及び素材(B)60bのプレスを行うと、まず、マンドレル(B)10bがマンドレル(A)10aを下方に押圧する。そのため、素材(A)60a上端の押し残し部fが小径部36bにより圧縮され、マンドレル(B)10bのスペーサ部14の外周面に沿って軸方向に伸びる。その結果、ギア部に隣接してストレート部が形成される。
さらにパンチ40を下方に押圧すると、やがて素材(A)60aが小径部36bから下部空間38aに押し出され、自重によってボルスター34上に落下する。これと同時に、素材(B)60bの肉寄せが行われる(図4(b))。ボルスター34上に落下した素材(A)60aは、取り出し口38bから側方に取り出される。
プレス終了後、パンチ40を後退(上昇)させると、マンドレル(B)10bがパンチ40から脱離し、ダイス30内には、塑性加工が加えられた素材(B)60b及びこれに抱き込まれたマンドレル(B)10bが残る。
【0039】
以下同様にして、新たなマンドレル10及び素材60を用いて、逐次、素材のプレスを行う。マンドレル10を抱き込んだ塑性加工後の素材60は、必要に応じて切削加工が加えられた後、マンドレル10が取り外される。取り外されたマンドレル10は、次の素材60のプレス加工に再利用される。
【0040】
[4. 内歯ヘリカルギア製造装置(2)]
図5に、本発明の第2の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置の概略構成図を示す。図5において、内歯ヘリカルギア製造装置20bは、内歯ヘリカルギア製造用マンドレル10と、ダイス30と、パンチ40と、保持手段50とを備えている。なお、図5中、図2に対応する部分には、図2と同一の符号を用いた。
【0041】
本実施の形態において、マンドレル10は、スペーサ部14が上方に来るように、パンチ40により保持されている。そのため、保持手段50は、パンチ40の先端面中央の凹部40b内に固定された磁石52と、マンドレル10の突起12cにより構成される。
また、パンチ40の先端の外周部には、素材60を押圧するための、環状突起40cが設けられている。環状突起40cの高さHは、マンドレル10のスペーサ部14の厚さ、及び、素材60の重量(又は体積)に応じて、最適な値を選択する。具体的には、スペーサ部14に沿って必要な長さのストレート部を形成することができ、かつ、次のプレスで成形される素材60に適切な背圧が加わるように、環状突起40cの高さHを選択するのが好ましい。
その他の点については、第1の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置20aと同様であるので、説明を省略する。
【0042】
[5. 内歯ヘリカルギアの製造方法(3)]
図6及び図7に、本発明の第2の実施の形態に係る内歯ヘリカルギアの製造方法の工程図を示す。図6及び図7において、本実施の形態に係る方法は、第2の実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造装置20bを用いた方法であって、第1セット工程と、第1プレス工程と、第2セット工程と、第2プレス工程とを備えている。
【0043】
スペーサ部14がマンドレル10の上面側にある場合であっても、第1の実施の形態と同様に素材60の加工を行うことができる。
すなわち、まず、図6(a)に示すように、パンチ40の先端面にマンドレル(A)10aを一時的に保持させ、ダイス30内に円筒形の素材(A)60aを挿入する(第1セット工程)。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、パンチ40をダイス30内に挿入し、素材(A)60aの内部にマンドレル(A)10aが挿入された状態でパンチ40の先端の外周部により素材(A)60aを押圧し、素材(A)60aを小径部36bから押し出すと同時に素材(A)60aをマンドレル(A)10aの径方向に圧縮する。この時、塑性変形よって素材(A)60aの軸方向の長さが伸びるために、磁石52と突起12cとの間隔が広がり、磁石52−突起12c間の引力が弱まる。
次いで、パンチ40を後退させ、素材(A)60a及びマンドレル(A)10aをダイス30内に残した状態で、マンドレル(A)10aをパンチ40から脱離させる(第1プレス工程)。
【0045】
次に、図7(a)に示すように、パンチ40の先端面にマンドレル(B)10bを一時的に保持させ、ダイス30内に円筒形の素材(B)60bを挿入する(第2セット工程)。
素材(B)60bをダイス30の大径部36aに挿入すると、素材(B)60bは、小径部36bに嵌り込んでいる素材(A)60aの上に載る。
【0046】
次に、図7(b)に示すように、パンチ40をダイス30内に挿入し、素材(B)60bの内部にマンドレル(B)10bが挿入された状態でパンチ40の先端の外周部により素材(B)60bを押圧し、素材(B)60bを小径部36bから押し出すと同時に素材(B)60bをマンドレル(B)10bの径方向に圧縮する。
また、素材(B)60bの肉寄せと同時に、パンチ40の押圧力によってマンドレル(A)10aを抱き込んだ素材(A)60aをダイス30から完全に押し出し、素材(A)60aの一部を塑性変形させることによって、マンドレル(A)10aのスペーサ部14に沿って内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成する。
さらに、パンチ40を後退させ、素材(B)60b及びマンドレル(B)10bをダイス30内に残した状態で、マンドレル(B)10bをパンチ40から脱離させる(第2プレス工程)。
【0047】
以下同様にして、新たなマンドレル10及び素材60を用いて、逐次、素材のプレスを行う。マンドレル10を抱き込んだ塑性加工後の素材60は、必要に応じて切削加工が加えられた後、マンドレル10が取り外される。取り外されたマンドレル10は、次の素材60のプレス加工に再利用される。
【0048】
[6. 内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、内歯ヘリカルギア製造装置、及び内歯ヘリカルギアの製造方法の作用]
円板状のマンドレルを抱き込んだ素材を逐次、ダイスから押し出すと、肉寄せによってギア部が形成されると同時に、ダイスの縮径部に残った素材の押し残し部が塑性変形し、ギア部に隣接してストレート部が形成される。そのため、押し残し部を除去したり、あるいはストレート部を形成するための切削加工が不要となり、材料歩留まりが向上する。
また、プレス成形が行われた直後の素材(A)及びマンドレル(A)は、ダイスにはまり込んだ状態になっているので、次のプレス成形時においては、素材(B)の下端が素材(A)の上端で拘束された状態(すなわち、素材(B)に背圧がかかった状態)で、素材(B)のプレスが行われる。そのため、素材(B)の下端のだれに起因するギア歯精度の低下を抑制することができる。
さらに、マンドレル部とスペーサ部を分離可能とすると、マンドレルの製造が容易となるだけでなく、スペーサ部の厚さを調節することができる。また、これによってストレート部の長さや、成形時に素材にかかる背圧を調節することができる。そのため、ストレート部の形状が異なる内歯ヘリカルギアであっても、低コストかつ高い材料歩留まりで製造することができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1、比較例1)
[1. 試料の作製]
図2に示す装置を用いて、ギア部とストレート部とを備えた内歯ヘリカルギアを作製した(実施例1)。また、ブローチ加工を用いて同様の形状を有する内歯ヘリカルギアを作製した(比較例1)。
作製した内歯ヘリカルギアは、外径:135mm、内径:110mm、高さ:30mm、モジュール:1.3M、製品重量:570gである。
[2. 結果]
比較例1の場合、上述した形状の内歯ヘリカルギアを作製するのに必要な素材重量は、1330gであった(歩留まり:42.3%)。これに対し、実施例1の場合、必要な素材重量は、1010gであった(歩留まり:56.4%)。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る内歯ヘリカルギア製造用マンドレル、内歯ヘリカルギア製造装置、及び、内歯ヘリカルギアの製造方法は、各種機械に用いられる内歯ヘリカルギアの製造に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の素材の内部にマンドレルが挿入された状態で、前記素材の外径より小さい内径を有する小径部を備えたダイスと、前記素材を押圧するためのパンチとを用いて前記素材をプレスし、前記素材を前記小径部から押し出すと同時に前記素材を前記マンドレルの径方向に圧縮する肉寄せにより、前記素材の内周面に螺旋状の内歯を形成するための内歯ヘリカルギア製造用マンドレルであって、
前記内歯を形成するための歯型が外周面に設けられた円板状のマンドレル部と、
前記マンドレル部の軸方向上面側又は軸方向下面側に設けられ、かつ、前記素材が前記ダイスから押し出される時に前記素材の一部を軸方向に塑性変形させることによって前記内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成するためのスペーサ部と、
前記パンチを前記ダイス内に挿入する時は、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチに一時的に保持させ、前記パンチを前記ダイスから後退させる時は、前記素材及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチから脱離させる保持手段と
を備えた内歯ヘリカルギア製造用マンドレル。
【請求項2】
前記マンドレル部と前記スペーサ部は、分離可能になっている請求項1に記載の内歯ヘリカルギア製造用マンドレル。
【請求項3】
前記保持手段は、磁石の磁力によって前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチに着脱自在に保持する磁力保持手段である請求項1又は2に記載の内歯ヘリカルギア製造用マンドレル。
【請求項4】
円筒形の素材の内部に挿入するための、請求項1から3までのいずれかに記載の内歯ヘリカルギア製造用マンドレルと、
前記素材を挿入可能な大径部と、前記素材の外径より小さい内径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ縮径部とを備えたダイスと、
前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルが挿入された状態で前記素材を押圧し、前記素材を前記小径部から押し出すと同時に前記素材を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルの径方向に圧縮するためのパンチと、
前記パンチを前記ダイス内に挿入する時は、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチに一時的に保持させ、前記パンチを前記ダイスから後退させる時は、前記素材及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレルを前記パンチから脱離させる保持手段と
を備えた内歯ヘリカルギア製造装置。
【請求項5】
以下の工程を備えた内歯ヘリカルギアの製造方法。
(イ)請求項4に記載の内歯ヘリカルギア製造装置を用いて、前記パンチの先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を一時的に保持させ、前記ダイス内に円筒形の素材(A)を挿入する第1セット工程。
(ロ)前記パンチを前記ダイス内に挿入し、前記素材(A)の内部に前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)が挿入された状態で前記パンチの先端の外周部により前記素材(A)を押圧し、前記素材(A)を前記小径部から押し出すと同時に前記素材(A)を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)の径方向に圧縮し、
次いで、前記パンチを後退させ、前記素材(A)及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を前記パンチから脱離させる第1プレス工程。
(ハ)前記パンチの先端面に内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を一時的に保持させ、前記ダイス内に円筒形の素材(B)を挿入する第2セット工程。
(ニ)前記パンチを前記ダイス内に挿入し、前記素材(B)の内部に前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)が挿入された状態で前記パンチの先端の外周部により前記素材(B)を押圧し、前記素材(B)を前記小径部から押し出すと同時に前記素材(B)を前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)の径方向に圧縮し、
前記素材(B)の肉寄せと同時に、前記パンチの押圧力によって前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(A)を抱き込んだ前記素材(A)を前記ダイスから完全に押し出し、前記素材(A)の一部を塑性変形させることによって前記スペーサ部に沿って前記内歯ヘリカルギアの軸方向に伸びるストレート部を形成し、
次いで、前記パンチを後退させ、前記素材(B)及び前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を前記ダイス内に残した状態で、前記内歯ヘリカルギア製造用マンドレル(B)を前記パンチから脱離させる第2プレス工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18042(P2013−18042A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155055(P2011−155055)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】