内燃機関の制御装置
【課題】 休筒運転を行うことによる休止気筒の点火プラグのカーボン付着を比較的簡便な手法で防止し、安定した燃焼を維持することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 休筒運転を行うときに、気筒休止カウンタCCSPLUGにより、気筒の作動休止時間の積算値に相当するカウント値が算出され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるときに2気筒休止運転が禁止され、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるときに2気筒休止運転及び3気筒休止運転が禁止される(S51〜S54)。さらに気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、エンジン1が停止された後も保持され、次の運転開始時には保持したカウント値を初期値として気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算が行われる。
【解決手段】 休筒運転を行うときに、気筒休止カウンタCCSPLUGにより、気筒の作動休止時間の積算値に相当するカウント値が算出され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるときに2気筒休止運転が禁止され、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるときに2気筒休止運転及び3気筒休止運転が禁止される(S51〜S54)。さらに気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、エンジン1が停止された後も保持され、次の運転開始時には保持したカウント値を初期値として気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気筒休止機構を備える内燃機関の一部気筒を休止させる休筒運転を行うと休止気筒の点火プラグが汚損し(主にカーボンの付着による汚損が発生する)、失火が発生し易くなるという課題がある。特許文献1には、この課題を解決するために点火プラグ汚損検出装置を設け、検出される点火プラグの汚損状態を示すパラメータが点火可能許容限界値に達したときに、休筒運転を禁止するようにした制御装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−19056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される制御装置では、点火プラグ汚損検出装置が必要となるため、構成の複雑化やコスト上昇を招く。そのため、例えば休筒運転の継続時間が判定時間を超えたときに休筒運転を禁止する手法が考えられるが、そのような手法では、継続時間が短い休筒運転が頻繁に実行されるような場合に十分な汚損防止効果が得られない。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、休筒運転を行うことによる休止気筒の点火プラグのカーボン付着を比較的簡便な手法で防止し、安定した燃焼を維持することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構(20)を備える内燃機関の制御装置において、前記機関の運転状態に応じて前記複数気筒の全部を作動させる全筒運転と、前記一部の気筒の作動を休止させる休筒運転との切換制御を行う作動気筒数制御手段と、前記一部の気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータ(CCSPLUGUPX)を積算することにより積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を算出する休止時間パラメータ積算手段と、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が所定判定値(CCSPLUGH,CCS2PLUGH)以上であるときに、前記休筒運転を禁止する禁止手段とを備え、前記休止時間パラメータ積算手段は、前記機関の運転が停止された後も前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を保持し、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として前記積算を開始することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記機関の点火プラグの温度の推定値である推定点火プラグ温度(TCSPLUG)を算出する点火プラグ温度推定手段と、前記推定点火プラグ温度(TCSPLUG)が所定温度(TCSPG0)より高いときに前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を減算する休止時間パラメータ減算手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、前記全筒運転から前記休筒運転への切換時に前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)に所定値(DCSPLUGCH)を加算する加算手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記気筒休止機構(20)は、休止させる気筒の数を第1所定数と該第1所定数より大きい第2所定数とに変更可能に構成され、前記作動気筒数制御手段は、前記第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転(2気筒休止運転)と、前記第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転(3気筒休止運転)と、前記全筒運転との切換制御を行い、前記所定判定値は、第1所定判定値(CCS2PLUGH)と、該第1所定判定値より大きい第2所定判定値(CCSPLUGH)とからなり、前記禁止手段は、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が前記第1所定判定値(CCS2PLUGH)以上であるときに前記第1休筒運転を禁止し、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が前記第2所定判定値(CCSPLUGH)以上であるときに前記第1及び第2休筒運転をともに禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、一部気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータを積算することにより積算休止時間パラメータが算出され、積算休止時間パラメータが所定判定値以上であるときに、休筒運転が禁止される。さらに積算休止時間パラメータは、機関の運転が停止された後も保持され、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として積算が開始される。点火プラグのカーボン付着状態は、休筒運転実行時間の積算値に依存することが確認されているので、機関の運転停止期間においても積算休止時間パラメータを保持しつつ、休止時間パラメータを積算することにより、簡便な構成でカーボン付着を確実に防止し、すべての気筒において安定した燃焼を維持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、推定点火プラグ温度が算出され、推定点火プラグ温度が所定温度より高いときに積算休止時間パラメータが減算される。点火プラグの温度が所定温度より高いときに付着したカーボンが燃焼により除去されるので、積算休止時間パラメータを減算することにより、積算休止時間パラメータによってカーボン付着状態をより正確に推定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、全筒運転から休筒運転への切換時に積算休止時間パラメータに所定値が加算される。全筒運転から休筒運転への切換回数が多くなるほどカーボンの付着量が増加する傾向があることが確認されているので、切換時に所定値を積算休止時間パラメータに加算することにより、積算休止時間パラメータに切換回数の影響を反映させ、より正確なカーボン付着状態の推定が可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転と、第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転と、全筒運転との切換制御が行われ、積算休止時間が第1所定判定値以上であるときに第1休筒運転が禁止され、積算休止時間パラメータが第2所定判定値以上であるときに第1及び第2休筒運転をともに禁止される。積算休止時間パラメータが増加し、第1所定判定値を越えたときは、まず休止気筒数の少ない第1休筒運転のみを禁止することにより、比較的高負荷運転におけるカーボンの燃焼効果を得るとともに、低負荷運転時における第2休筒運転による燃費向上効果を得ることができる。さらに積算休止時間パラメータが増加し、第2所定判定値を超えたときは第1及び第2休筒運転をともに禁止することにより、付着したカーボンを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】3気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図3】2気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図4】気筒休止運転を禁止する条件を判定処理のフローチャートである。
【図5】気筒休止運転を禁止する条件を判定処理のフローチャートである。
【図6】図4または図5の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図7】点火プラグの温度を推定する処理のフローチャートである。
【図8】点火プラグの温度を推定する処理のフローチャートである。
【図9】図7または図8の処理で参照されるマップを示す図である。
【図10】図8の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図11】図4及び図5の処理を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。6気筒の内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、吸気管2を有し、吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3には、スロットル弁3の開度THを検出するスロットル弁開度センサ4が設けられており、その検出信号が電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給される。スロットル弁3には、スロットル弁3を駆動するアクチュエータ11が接続されており、アクチュエータ11は、ECU5によりその作動が制御される。
【0016】
燃料噴射弁6は図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁はECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間及び開弁時期が制御される。エンジン1の各気筒には点火プラグ12が設けられており、点火プラグ12にはECU5から点火信号が供給される。
【0017】
スロットル弁3の直ぐ下流には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ7が設けられており、吸気圧センサ7の下流には吸気温TAを検出する吸気温センサ8が取付けられている。またエンジン1の本体には、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ9が取り付けられている。これらのセンサ7〜9の検出信号は、ECU5に供給される。
【0018】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ10が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ10は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(6気筒エンジンではクランク角120度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)でCRKパルスを発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらの信号パルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0019】
ECU5には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ17、及び当該車両の車速VPを検出する車速センサ18が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0020】
エンジン1は、複数気筒の一部の気筒の吸気弁及び排気弁の作動を停止することにより当該気筒の作動を休止させる気筒休止機構20を備えている。本実施形態では、気筒休止機構20は、6気筒のうちの3気筒の作動を休止させる3気筒休止運転と、2気筒の作動を休止させる2気筒休止運転とを実行できるように構成されている。気筒休止機構20は、ECU5に接続されている。ECU5は、気筒休止機構20に切換制御信号を供給し、車速VP及びエンジン1の運転状態に応じて全気筒を作動させる全筒運転、2気筒休止運転、及び3気筒休止運転の切換制御(作動気筒数切換制御)を行う。
【0021】
なお、図示は省略しているが、エンジン1は、排気の一部を吸気管2に還流する排気還流機構を備えており、ECU5は、排気還流制御弁を駆動し、排気還流量の制御を行う。
【0022】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理回路(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。ECU5は、上述したセンサの検出信号に基づいて、燃料噴射弁6の開弁時間の制御、点火プラグ12の点火時期制御、作動気筒数の切換制御を行うとともに、アクセルペダル操作量APに応じてスロットル弁3の目標開度THCMDを算出し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THCMDに一致するようにアクチュエータ11の駆動制御を行う。
【0023】
本実施形態では、3気筒休止運転においては#1〜#3気筒の作動を休止させ、2気筒休止運転においては#3及び#4気筒の作動を休止させる制御が行われる。したがって、#3気筒はいずれの気筒休止運転においても作動が休止されるため、気筒休止に起因する点火プラグのカーボン付着が最も発生し易い。そこで、本実施形態では、#3気筒においてカーボン付着を確実に防止できるように、以下に説明するような作動気筒切換制御を行うようにしている。なお、本実施形態は、休止気筒においても常に点火プラグ12への通電が行われる。
【0024】
図2は、3気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。この処理はECU5にCPUで所定時間(例えば10msec)毎に実行される。後述する図3〜図5,図7,及び図8の処理も同様である。
【0025】
ステップS11では、気筒休止前提条件フラグFCSCNDが「1」であるか否かを判別する。気筒休止前提条件フラグFCSCNDは、気筒休止運転(2気筒休止運転または3気筒休止運転)を許可するための前提条件である所定気筒休止前提条件が成立するとき「1」に設定される。所定気筒休止前提条件は、以下の条件が満たされるとき成立する:1)冷却水温TWが所定水温以上であること、2)フェールセーフ動作中でないこと、3)空燃比フィードバック制御が正常に実行されていること、4)エンジン回転数NEが所定回転数以下であること、5)燃料タンクにおける蒸発燃料の発生量が少ないこと、6)スロットル弁がほぼ全開となる所定高負荷運転状態でないこと、7)潤滑油上がりによる気筒休止禁止要求がないこと、8)急ブレーキ判定がなされていないこと、9)所定の故障診断処理による気筒休止禁止要求がないこと、及び10)自動変速機制御用の制御ユニットからの気筒休止禁止要求がないこと。
【0026】
ステップS11の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND3が「1」であるか否かを判別する(ステップS12)。3気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND3は、3気筒休止運転を許可するための所定油圧条件(気筒休止機構20の作動油圧についての条件)が成立するとき「1」に設定される。所定油圧条件は、気筒休止運転を行うために使用されるスプール弁の作動に必要な油圧が確保されているとき成立する。
【0027】
ステップS12の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX3が「1」であるか否かを判別する(ステップS13)。3気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX3は、エンジン1の要求トルクTRQが3気筒休止運転におけるエンジン1の最大出力トルクTRQMAX3を超えたとき「1」に設定される。要求トルクTRQは、アクセルペダル操作量APにほぼ比例するように設定される。
【0028】
ステップS13の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND3が「1」であるか否かを判別する(ステップS14)。3気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND3は、排気系に設けられる排気浄化触媒の温度が3気筒休止運転を許可するための所定温度条件を満たすとき「1」に設定される。所定温度条件は、排気浄化触媒の温度が活性温度以上であり、かつ触媒保護上限温度以下であるとき成立する。
【0029】
ステップS14の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV3が「1」であるか否かを判別する(ステップS15)。3気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV3は、3気筒休止運転を許可するための所定3気筒休止NV条件が成立するとき「1」に設定される。所定3気筒休止NV条件は、3気筒休止運転の実行中に発生する音及び振動が、許容できるレベルであるとき成立する。ステップS15の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS16)。3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDは、図4及び図5の処理において点火プラグの汚損防止のために3気筒休止運転を禁止するとき「1」に設定される。
【0030】
ステップS16の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止CC禁止フラグFCCK3が「1」であるか否かを判別する(ステップS17)。3気筒休止CC禁止フラグFCCK3は、クルーズコントロール中に3気筒休止運転を禁止する必要があるとき「1」に設定される。
【0031】
ステップS17の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止運転の実行条件が成立していると判定し、3気筒休止運転許可フラグFCSCND3を「1」に設定する(ステップS18)。一方、ステップS11,S12,S14,またはS15の答が否定(NO)、あるいはステップS13,S16,またはS17の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止運転の実行条件が不成立と判定し、3気筒休止運転許可フラグFCSCND3を「0」に設定する(ステップS19)。
【0032】
図3は、2気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
ステップS21では、気筒休止前提条件フラグFCSCNDが「1」であるか否かを判別する。ステップS21の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND2が「1」であるか否かを判別する(ステップS22)。2気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND2は、2気筒休止運転を許可するための所定油圧条件が成立するとき「1」に設定される。
【0033】
ステップS22の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX2が「1」であるか否かを判別する(ステップS23)。2気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX2は、エンジン1の要求トルクTRQが2気筒休止運転におけるエンジン1の最大出力トルクTRQMAX2を超えたとき「1」に設定される。ステップS23の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND2が「1」であるか否かを判別する(ステップS24)。2気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND2は、排気浄化触媒の温度が2気筒休止運転を許可するための所定温度条件を満たすとき「1」に設定される。
【0034】
ステップS24の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV2が「1」であるか否かを判別する(ステップS25)。2気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV2は、2気筒休止運転を許可するための所定2気筒休止NV条件が成立するとき「1」に設定される。所定2気筒休止NV条件は、2気筒休止運転の実行中に発生する音及び振動が、許容できるレベルであるとき成立する。ステップS25の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS26)。この答が否定(NO)であるときは、さらに2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS27)。2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDは、図4及び図5の処理において点火プラグの汚損防止のために2気筒休止運転を禁止するとき「1」に設定される。
【0035】
ステップS27の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止CC禁止フラグFCCK2が「1」であるか否かを判別する(ステップS28)。2気筒休止CC禁止フラグFCCK2は、クルーズコントロール中に2気筒休止運転を禁止する必要があるとき「1」に設定される。
【0036】
ステップS28の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止運転の実行条件が成立していると判定し、2気筒休止運転許可フラグFCSCND2を「1」に設定する(ステップS29)。一方、ステップS21,S22,S24,またはS25の答が否定(NO)、あるいはステップS23,S26,S27,またはS28の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止運転の実行条件が不成立と判定し、2気筒休止運転許可フラグFCSCND2を「0」に設定する(ステップS30)。
【0037】
図4及び図5は、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMD及び2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDの設定を行う処理のフローチャートである。
【0038】
ステップS41では、気筒休止運転インデクスの前回値CSTPPLG10MZを、今回値CSTPPLG10Mに設定し、ステップS42では、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10M(今回値)を気筒作動状態変数CSTPに設定する。気筒作動状態変数CSTPは、全筒運転中は「0」に設定され、2気筒休止運転中は「2」に設定され、3気筒休止運転中は「3」に設定されるパラメータである。
【0039】
ステップS43では、図7及び図8に示すプラグ温度推定処理を実行し、点火プラグ12(本実施形態では#3気筒の点火プラグ)の推定温度である推定プラグ温度TCSPLUGを算出する。
【0040】
ステップS44では、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10Mが「0」であるか否かを判別し、その答が否定(NO)、すなわち気筒休止運転中(3気筒休止運転または2気筒休止運転の実行中)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図6(a)に示すCCSPLUGUPXテーブルを検索し、カウントアップ基本値CCSPLUGUPXを算出する(ステップS45)。CCSPLUGUPXテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE1に達するまでは、エンジン回転数NEが増加するほどカウントアップ基本値CCSPLUGUPXが増加するように設定されている。
【0041】
ステップS46では、気筒休止運転インデクスの前回値CSTPPLG10MZが「0」であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)、すなわち全筒運転から気筒休止運転に移行した直後であるときは、カウントアップ補正項CCSPLUGCHを気筒休止開始補正値DCSPLUGCH(例えば5秒の相当する値)に設定し(ステップS47)、ステップS49に進む。ステップS46の答が否定(NO)であって、前回から気筒休止運転を実行しているときは、カウントアップ補正項CCSPLUGCHを「0」に設定し(ステップS48)、ステップS49に進む。
【0042】
ステップS49では、カウントアップ基本値CCSPLUGUPX及びカウントアップ補正項CCSPLUGCHを下記式(1)に適用し、カウントアップ数CCSPLUGUPを算出する。
CCSPLUGUP=CCPLUGUPX+CCSPLUGCH (1)
【0043】
ステップS50では、下記式(2)により、気筒休止カウンタCCSPLUGをカウントアップ数CCSPLUGUPだけインクリメントする。式(2)の右辺のCCSPLUGは前回値である。気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、不揮発メモリに格納され、エンジン1の停止中において保持される。したがって、エンジン1の作動開始直後においてはエンジン1の前回運転時の最終値が、式(2)の右辺に適用される。
CCSPLUG=CCSPLUG+CCSPLUGUP (2)
【0044】
ステップS51では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDを「1」に設定する(ステップS52)。ステップS51の答が否定(NO)であるときは、直ちにステップS53に進む。
【0045】
ステップS53では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるか否かを判別する。2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHは、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHより小さい値に設定される。ステップS53の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDを「1」に設定する(ステップS54)。ステップS53の答が否定(NO)であるときは、直ちに処理を終了する。
【0046】
ステップS44の答が肯定(YES)、すなわち全筒運転中であるときは、ステップS61(図5)に進み、燃料カットフラグFFCが「1」であるか否かを判別する。その答が肯定(YES)であって燃料カット運転中であるときは直ちに処理を終了する。燃料カットフラグFFCが「0」であって、燃料供給が行われる通常運転中であるときは、エンジン回転数NEに応じて図6(b)に示すCCSPLUGDWXテーブルを検索し、カウントダウン基本値CCSPLUGDWXを算出する(ステップS62)。CCSPLUGDWXテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE1に達するまでは、エンジン回転数NEが増加するほどカウントダウン基本値CCSPLUGDWXが増加するように設定されている。
【0047】
ステップS63では、ステップS43で算出される推定プラグ温度TCSPLUGに応じて図6(c)に示すKDCCSPLUGTXテーブルを検索し、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXを算出する。KDCCSPLUGTXテーブルは、推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0(例えば400℃)以下の範囲では、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが「0」に設定され、第1所定温度TCSPG0から第2所定温度TCSPG1(例えば600℃)の範囲では、推定プラグ温度TCSPLUGが高くなるほど、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが増加するように設定されている。
【0048】
ステップS64では、カウントダウン基本値CCSPLUGDWX及びプラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXを下記式(3)に適用し、カウントダウン数CCSPLUGDWを算出する。
CCSPLUGDW=CCPLUGDWX×KDCCSPLUGTX (3)
【0049】
ステップS65では、下記式(4)により、気筒休止カウンタCCSPLUGをカウントダウン数CCSPLUGDWだけデクリメントする。
CCSPLUG=CCSPLUG−CCSPLUGDW (4)
【0050】
ステップS66では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止許可閾値CCSPLUGLより大きいか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDを「0」に設定する(ステップS67)。ステップS66の答が肯定(YES)であるときは、直ちにステップS68に進む。3気筒休止許可閾値CCSPLUGLは、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHより小さな値に設定される。
【0051】
ステップS68では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLより大きいか否かを判別する。ステップS68の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDを「0」に設定する(ステップS69)。ステップS68の答が肯定(YES)であるときは、直ちに処理を終了する。2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLは、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHより小さな値に設定され、3気筒休止許可閾値CCSPLUGL以下の値に設定される。
【0052】
図7及び図8は、図4のステップS43で実行されるプラグ温度推定処理のフローチャートである。
ステップS71では、初期化フラグFTCSPLGINIが「1」であるか否かを判別する。エンジン始動直後はこの答は否定(NO)であるので、初期化フラグFTCSPLGINIを「1」に設定する(ステップS73)とともに、推定プラグ温度TCSPLUGをエンジン冷却水温TWに設定する(ステップS74)。ステップS73を実行することにより、ステップS71の答は肯定(YES)となり、ステップS72に進んで、始動モードフラグFSTMODが「1」であるか否かを判別する。始動モードフラグFSTMODが「1」であってエンジン1のクランキング中であるときは、前記ステップS74に進む。
【0053】
ステップS72の答が否定(NO)であるときは、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10Mが「0」であるか否かを判別する(ステップS75)。この答が否定(NO)であって気筒休止運転中であるときは、後述するステップS97で使用されるなまし係数CTCSPLUGを所定の休筒運転係数値CTCSPLUGWCS(例えば0.0001)に設定する(ステップS77)。次いで、基本推定温度TCSPLGMをエンジン冷却水温TWに設定し(ステップS79)、ステップS97に進む。基本推定温度TCSPLGMは、後述するステップS91で算出される推定プラグ温度の基本値である。
【0054】
ステップS75の答が肯定(YES)、すなわち全筒運転中であるときは、燃料カットフラグFFCが「1」であるか否かを判別する(ステップS76)。この答が肯定(YES)であるときは、なまし係数CTCSPLUGを所定の燃料カット運転係数値CTCSPLUGWFC(例えば0.0005)に設定し(ステップS78)、前記ステップS79に進む。
【0055】
ステップS76の答が否定(NO)であって通常運転中であるときは、エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて図9(a)に示すTCSPLGMXマップを検索し、基本プラグ温度TCSPLGMXを算出する(ステップS80)。
【0056】
図9(a)に示す3つの曲線L1〜L3は、それぞれ所定吸気圧PBA1,PBA2,及びPBA3に対応し、所定吸気圧PBA1,PBA2,及びPBA3は、PBA1<PBA2<PBA3なる関係を満たす。すなわち、TCSPLGMXマップは、エンジン回転数NEが増加するほど基本プラグ温度TCSPLGMXが高くなり、かつ吸気圧PBAが増加するほど基本プラグ温度TCSPLGMXが高くなるように設定されている。
【0057】
ステップS81では、下記式(5)により、点火時期のノック補正項DIGCRKPLGを算出する。式(5)のDIGRSVは、基本点火時期IGBASE(エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて設定され、出力トルクが最大となる最適点火時期)のノック余裕度、DIGKRはノッキングを防止するための基本リタード量であり、KIGKNTPLGは基本プラグ温度TCSPLGMXにおける基準リタード係数である。式(5)に適用されるパラメータは、点火時期制御処理(図示せず)で算出される。
DIGCRKPLG=DIGRSV−DIGKR×KIGKNTPLG (5)
【0058】
ステップS82では、ノック補正項DIGCRKPLGが「0」を越えないようにするリミット処理を行う。
【0059】
ステップS83では、基本点火時期IGBASE及びノック補正項DIGCRKPLGを下記式(6)に適用し、ノック補正点火時期IGCRKPLGを算出する。
IGCRKPLG=IGBASE+DIGCRKPLG (6)
【0060】
ステップS84では、ノック補正点火時期IGCRKPLGが点火時期IGLOG(点火プラグの実点火時期)より大きい(進角側)か否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、リタード量DIGTPLGを「0」に設定する(ステップS85)。ノック補正点火時期IGCRKPLGが点火時期IGLOGより大きいときは、下記式(7)により、リタード量DIGTPLGを算出する(ステップS86)。
DIGTPLG=IGCRKPLG−IGLOG (7)
【0061】
ステップS87では、エンジン回転数NE及びリタード量DIGTPLGに応じて図9(b)に示すDTCSIGPLGHマップを検索し、高負荷補正量DTCSIGPLGHを算出する。高負荷補正量DTCSIGPLGHは、スロットル弁がほぼ全開となる高負荷運転状態(吸気圧PBAが所定高吸気圧PBDPLGIGHと等しい状態,図10(a)参照)に対応する補正量である。図9(b)に示す4つのラインL11〜L14は、それぞれ所定回転数NE11,NE12,NE13,及びNE14に対応し、所定回転数NE11,NE12,NE13,及びNE14は、NE11<NE12<NE13<NE14なる関係を満たす。すなわち、DTCSIGPLGHマップは、リタード量DIGTPLGが増加するほど高負荷補正量DTCSIGPLGHが増加し、かつエンジン回転数NEが増加するほど、リタード量DIGTPLGの増加に対する変化率(傾き)が増加するように設定されている。なお、リタード量DIGTPLGが「0」であるときは、エンジン回転数NEに関わらず高負荷補正量DTCSIGPLGHは「0」に設定される。
【0062】
ステップS88では、エンジン回転数NE及びリタード量DIGTPLGに応じてDTCSIGPLGLマップ(図示せず)を検索し、低負荷補正量DTCSIGPLGLを算出する。低負荷補正量DTCSIGPLGLは、所定負荷運転状態(吸気圧PBAが所定低吸気圧PBDPLGIGLと等しい状態,図10(a)参照)に対応する補正量である。DTCSIGPLGLマップも、DTCSIGPLGHマップと同様に、リタード量DIGTPLGが増加するほど低負荷補正量DTCSIGPLGLが増加し、かつエンジン回転数NEが増加するほどリタード量DIGTPLGの増加に対する変化率(傾き)が増加するように設定されている。
【0063】
ステップS89では、図10(a)に示すように高負荷補正量DTCSIGPLGH及び低負荷補正量DTCSIGPLGLを用いて、吸気圧PBAに応じた補間演算を行うことにより、点火時期補正量DTCSIGPLGXを算出する。
ステップS90では、燃料噴射時間の補正係数である高負荷燃料増量係数KWOTに応じて図10(b)に示すDTCSPLGWOTXテーブルを検索し、高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXを算出する。DTCSPLGWOTXテーブルは、高負荷燃料増量係数KWOTが増加するほど高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXが増加するように設定されている。
【0064】
ステップS91では、基本プラグ温度TCSPLGMX、点火時期補正量DTCSIGPLGX、及び高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXを、下記式(8)に適用し、基本推定温度TCSPLGMを算出する。式(8)のDTCSPLGEGRは、排気還流を行うことによる影響を補正するための所定EGR補正量であり、(1−KEGRB1)は、排気還流率(気筒吸入ガス中の還流排気の比率)に相当するパラメータであり、燃料噴射制御処理(図示せず)で算出される。
TCSPLGM=TCSPLGMX−DTCSIGPLGX
−DTCSPLGEGR×(1−KEGRB1)−DTCSPLGWOTX (8)
【0065】
ステップS92では、基本推定温度TCSPLGMが推定プラグ温度TCSPLUG(前回値)以上であるか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図10(c)に示すCTCSPLUGWLテーブルを検索して、プラグ温度低下時の(なまし)係数値CTCSPLUGWLを算出し(ステップS93)、なまし係数値CTCSPLUGを係数値CTCSPLUGWLに設定する(ステップS94)。CTCSPLUGWLテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE21より低い範囲で、エンジン回転数NEが増加するほど係数値CTCSPLUGWLが増加するように設定されている。
【0066】
ステップS92の答が肯定(YES)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図10(c)に示すCTCSPLUGWHテーブルを検索して、プラグ温度上昇時の(なまし)係数値CTCSPLUGWHを算出し(ステップS95)、なまし係数値CTCSPLUGを係数値CTCSPLUGWHに設定する(ステップS96)。CTCSPLUGWHテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE21より低い範囲で、エンジン回転数NEが増加するほど係数値CTCSPLUGWHが増加するように設定されている。
【0067】
ステップS97では、基本推定温度TCSPLGM及びなまし係数CTCSPLUGを下記式(9)に適用し、なまし演算を行って推定プラグ温度TCSPLUGを算出する。式(9)の右辺のTCSPLUGは前回算出値である。なお、ステップS79を経由してステップS97に至る場合には、基本推定温度TCSPLGMが算出(更新)されないので、最新の算出値が式(9)に適用される。
TCSPLUG=CTCSPLUG×TCSPLGM
+(1−CTCSPLUG)×TCSPLUG (9)
【0068】
図7及び図8の処理によれば、エンジン回転数NE、吸気圧PBA、冷却水温TW、点火時期IGLOG、排気還流率(1−KEGRB1)、及び高負荷燃料増量係数KWOTに応じて推定プラグ温度TCSPLUGが算出されるので、比較的簡単な演算によって正確な推定プラグ温度を得ることができる。
【0069】
図11は、図4及び図5の処理を説明するためのタイムチャートであり、車速VP、休止気筒数、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値、推定プラグ温度TCSPLUG、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMD、及び3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDの推移を示す。図11(a)に示す領域R2及びR3は、それぞれ3気筒休止運転の実行条件が成立する車速領域、及び2気筒休止運転の実行条件が成立する車速領域を示す。図11(b)において「3」及び「2」が記載されて期間がそれぞれ3気筒休止運転の実行期間、及び2気筒休止運転の実行期間に相当し、数字が記載されていない期間が全筒運転の実行期間に相当する。また同図に破線で示す期間は、図4及び図5の処理による気筒休止禁止を行わない場合には、気筒休止運転が行われた期間を示す。
【0070】
図11(c)に示すようにこの動作例では、3気筒休止許可閾値CCSPLUGLは、2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLと同一値に設定されている。
時刻t1〜t2の期間において、3気筒休止運転が実行され、時刻t3〜t4の期間において2気筒休止運転が実行される。したがって、気筒休止カウンタCCSPLUGがカウントアップされる。時刻t5において推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0を超えるので、気筒休止カウンタCCSPLUGがカウントダウンが開始される。時刻t6から3気筒休止運転が開始され、時刻t7において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHに達するので、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」に設定される。3気筒休止運転は、禁止されないので時刻t8まで継続される。時刻t9において2気筒休止運転が実行可能となるが、2気筒休止運転は禁止されているため、実行されない。
【0071】
時刻t10からt12の期間では、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが行われ、時刻t11において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLに達するため、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「0」に戻される。
【0072】
時刻t13から3気筒休止運転が開始され、時刻t14において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えるので、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」に設定される。時刻t15において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHに達し、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」に設定される。そのため、3気筒休止運転は時刻t15に終了する。
【0073】
時刻t16から気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが開始され、時刻t17にカウント値が3気筒休止許可閾値CCSPLUGL(=2気筒休止許可閾値CCS2PLUGL)に達するため、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMD及び3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDがともに「0」に戻され、同時に3気筒休止運転が開始される。
【0074】
以上詳述したように本実施形態によれば、気筒休止カウンタCCSPLUGにより、気筒の作動休止時間の積算値に相当するカウント値が算出され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるときに2気筒休止運転が禁止され、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるときに2気筒休止運転及び3気筒休止運転が禁止される。さらに気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、エンジン1が停止された後も保持され、次の運転開始時には保持したカウント値を初期値として気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算が行われる。点火プラグのカーボン付着は、休筒運転実行時間の積算値に依存することが確認されているので、エンジン運転停止期間においても積算休止時間に相当するカウント値を保持しつつ、気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算を行うことにより、簡便な構成でカーボン付着を確実に防止し、すべての気筒において安定した燃焼を維持することができる。
【0075】
またエンジン運転状態に応じて推定プラグ温度TCSPLUGが算出され、推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0より高いときにプラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが「0」より大きい値に設定され(図6(c))、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが行われる。点火プラグの温度が第1所定温度TCSPG0より高いときに付着したカーボンが燃焼により除去されるので、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンを行うことにより、気筒休止カウンタCCSPLUGの値によってカーボン付着状態をより正確に推定することができる。さらにカウントダウン数CCSPLUGDWは、推定プラグ温度TCSPLUGが高くなるほど増加するように設定されるので(図6(c))、推定プラグ温度TCSPLUGの影響をより適切に反映させることができる。
【0076】
また全筒運転から休筒運転への切換時に、気筒休止開始補正値DCSPLUGCHが気筒休止カウンタCCSPLUGの値に加算される。全筒運転から休筒運転への切換回数が多くなるほどカーボンの付着量が増加する傾向があることが確認されているので、切換時に気筒休止開始補正値DCSPLUGCHを気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値に加算することにより、気筒休止カウンタCCSPLUGの値に切換回数の影響を反映させ、より正確なカーボン付着状態の推定が可能となる。
【0077】
また2気筒休止運転、3気筒休止運転、及び全筒運転の切換制御が行われ、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えたときに2気筒休止運転が禁止され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHを超えたときに3気筒休止運転が禁止される。気筒休止カウンタCCSPLUGの値が増加し、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えたときは、まず休止気筒数の2気筒休止運転のみを禁止することにより、比較的高負荷運転におけるカーボンの燃焼効果を得るとともに、低負荷運転時における3気筒休止運転による燃費向上効果を得ることができる。さらに2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHの値が増加し、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHを超えたときは2気筒休止運連及び3気筒休止運転をともに禁止することにより、付着したカーボンを確実に除去することができる。
【0078】
本実施形態では、ECU5が作動気筒数制御手段、休止時間パラメータ積算手段、休止時間パラメータ減算手段、禁止手段、点火プラグ温度推定手段、及び加算手段を構成する。具体的には、図2及び図3の処理が作動気筒数制御手段に相当し、図4のステップS44,45,及びS50が休止時間パラメータ積算手段に相当し、図5のステップS61〜S65が休止時間パラメータ減算手段に相当し、図4のステップS51〜S54が禁止手段に相当し、図7及び図8の処理が点火プラグ温度推定手段に相当し、図4のステップS46〜S49が加算手段に相当する。
【0079】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態では、休止気筒数の異なる2つの休筒運転を行う例を示したが、例えば休筒運転としては3気筒休止運転のみを行う内燃機関の制御装置にも本発明は適用可能である。また、本発明は、6気筒内燃機関の制御装置に限るものでなく、複数気筒の一部の気筒の作動を停止させることが可能な内燃機関の制御装置に適用可能である。
【0080】
また上述した気筒休止機構は、吸気弁及び排気弁の作動を停止させるものであるが、気筒休止機構は、吸気弁の作動のみ停止させるものであってもよい。
【0081】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンであって、作動気筒数が切換可能なもの制御装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 内燃機関
5 電子制御ユニット(作動気筒数制御手段、休止時間パラメータ積算手段、休止時間パラメータ減算手段、禁止手段、点火プラグ温度推定手段、加算手段)
7 吸気圧センサ
9 冷却水温センサ
10 クランク角度位置センサ
12 点火プラグ
17 アクセルセンサ
18 車速センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気筒休止機構を備える内燃機関の一部気筒を休止させる休筒運転を行うと休止気筒の点火プラグが汚損し(主にカーボンの付着による汚損が発生する)、失火が発生し易くなるという課題がある。特許文献1には、この課題を解決するために点火プラグ汚損検出装置を設け、検出される点火プラグの汚損状態を示すパラメータが点火可能許容限界値に達したときに、休筒運転を禁止するようにした制御装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−19056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される制御装置では、点火プラグ汚損検出装置が必要となるため、構成の複雑化やコスト上昇を招く。そのため、例えば休筒運転の継続時間が判定時間を超えたときに休筒運転を禁止する手法が考えられるが、そのような手法では、継続時間が短い休筒運転が頻繁に実行されるような場合に十分な汚損防止効果が得られない。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、休筒運転を行うことによる休止気筒の点火プラグのカーボン付着を比較的簡便な手法で防止し、安定した燃焼を維持することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構(20)を備える内燃機関の制御装置において、前記機関の運転状態に応じて前記複数気筒の全部を作動させる全筒運転と、前記一部の気筒の作動を休止させる休筒運転との切換制御を行う作動気筒数制御手段と、前記一部の気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータ(CCSPLUGUPX)を積算することにより積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を算出する休止時間パラメータ積算手段と、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が所定判定値(CCSPLUGH,CCS2PLUGH)以上であるときに、前記休筒運転を禁止する禁止手段とを備え、前記休止時間パラメータ積算手段は、前記機関の運転が停止された後も前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を保持し、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として前記積算を開始することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記機関の点火プラグの温度の推定値である推定点火プラグ温度(TCSPLUG)を算出する点火プラグ温度推定手段と、前記推定点火プラグ温度(TCSPLUG)が所定温度(TCSPG0)より高いときに前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)を減算する休止時間パラメータ減算手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、前記全筒運転から前記休筒運転への切換時に前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)に所定値(DCSPLUGCH)を加算する加算手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記気筒休止機構(20)は、休止させる気筒の数を第1所定数と該第1所定数より大きい第2所定数とに変更可能に構成され、前記作動気筒数制御手段は、前記第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転(2気筒休止運転)と、前記第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転(3気筒休止運転)と、前記全筒運転との切換制御を行い、前記所定判定値は、第1所定判定値(CCS2PLUGH)と、該第1所定判定値より大きい第2所定判定値(CCSPLUGH)とからなり、前記禁止手段は、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が前記第1所定判定値(CCS2PLUGH)以上であるときに前記第1休筒運転を禁止し、前記積算休止時間パラメータ(CCSPLUG)が前記第2所定判定値(CCSPLUGH)以上であるときに前記第1及び第2休筒運転をともに禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、一部気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータを積算することにより積算休止時間パラメータが算出され、積算休止時間パラメータが所定判定値以上であるときに、休筒運転が禁止される。さらに積算休止時間パラメータは、機関の運転が停止された後も保持され、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として積算が開始される。点火プラグのカーボン付着状態は、休筒運転実行時間の積算値に依存することが確認されているので、機関の運転停止期間においても積算休止時間パラメータを保持しつつ、休止時間パラメータを積算することにより、簡便な構成でカーボン付着を確実に防止し、すべての気筒において安定した燃焼を維持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、推定点火プラグ温度が算出され、推定点火プラグ温度が所定温度より高いときに積算休止時間パラメータが減算される。点火プラグの温度が所定温度より高いときに付着したカーボンが燃焼により除去されるので、積算休止時間パラメータを減算することにより、積算休止時間パラメータによってカーボン付着状態をより正確に推定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、全筒運転から休筒運転への切換時に積算休止時間パラメータに所定値が加算される。全筒運転から休筒運転への切換回数が多くなるほどカーボンの付着量が増加する傾向があることが確認されているので、切換時に所定値を積算休止時間パラメータに加算することにより、積算休止時間パラメータに切換回数の影響を反映させ、より正確なカーボン付着状態の推定が可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転と、第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転と、全筒運転との切換制御が行われ、積算休止時間が第1所定判定値以上であるときに第1休筒運転が禁止され、積算休止時間パラメータが第2所定判定値以上であるときに第1及び第2休筒運転をともに禁止される。積算休止時間パラメータが増加し、第1所定判定値を越えたときは、まず休止気筒数の少ない第1休筒運転のみを禁止することにより、比較的高負荷運転におけるカーボンの燃焼効果を得るとともに、低負荷運転時における第2休筒運転による燃費向上効果を得ることができる。さらに積算休止時間パラメータが増加し、第2所定判定値を超えたときは第1及び第2休筒運転をともに禁止することにより、付着したカーボンを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】3気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図3】2気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図4】気筒休止運転を禁止する条件を判定処理のフローチャートである。
【図5】気筒休止運転を禁止する条件を判定処理のフローチャートである。
【図6】図4または図5の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図7】点火プラグの温度を推定する処理のフローチャートである。
【図8】点火プラグの温度を推定する処理のフローチャートである。
【図9】図7または図8の処理で参照されるマップを示す図である。
【図10】図8の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図11】図4及び図5の処理を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。6気筒の内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、吸気管2を有し、吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3には、スロットル弁3の開度THを検出するスロットル弁開度センサ4が設けられており、その検出信号が電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給される。スロットル弁3には、スロットル弁3を駆動するアクチュエータ11が接続されており、アクチュエータ11は、ECU5によりその作動が制御される。
【0016】
燃料噴射弁6は図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁はECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間及び開弁時期が制御される。エンジン1の各気筒には点火プラグ12が設けられており、点火プラグ12にはECU5から点火信号が供給される。
【0017】
スロットル弁3の直ぐ下流には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ7が設けられており、吸気圧センサ7の下流には吸気温TAを検出する吸気温センサ8が取付けられている。またエンジン1の本体には、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ9が取り付けられている。これらのセンサ7〜9の検出信号は、ECU5に供給される。
【0018】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ10が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ10は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(6気筒エンジンではクランク角120度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)でCRKパルスを発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらの信号パルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0019】
ECU5には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ17、及び当該車両の車速VPを検出する車速センサ18が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0020】
エンジン1は、複数気筒の一部の気筒の吸気弁及び排気弁の作動を停止することにより当該気筒の作動を休止させる気筒休止機構20を備えている。本実施形態では、気筒休止機構20は、6気筒のうちの3気筒の作動を休止させる3気筒休止運転と、2気筒の作動を休止させる2気筒休止運転とを実行できるように構成されている。気筒休止機構20は、ECU5に接続されている。ECU5は、気筒休止機構20に切換制御信号を供給し、車速VP及びエンジン1の運転状態に応じて全気筒を作動させる全筒運転、2気筒休止運転、及び3気筒休止運転の切換制御(作動気筒数切換制御)を行う。
【0021】
なお、図示は省略しているが、エンジン1は、排気の一部を吸気管2に還流する排気還流機構を備えており、ECU5は、排気還流制御弁を駆動し、排気還流量の制御を行う。
【0022】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理回路(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。ECU5は、上述したセンサの検出信号に基づいて、燃料噴射弁6の開弁時間の制御、点火プラグ12の点火時期制御、作動気筒数の切換制御を行うとともに、アクセルペダル操作量APに応じてスロットル弁3の目標開度THCMDを算出し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THCMDに一致するようにアクチュエータ11の駆動制御を行う。
【0023】
本実施形態では、3気筒休止運転においては#1〜#3気筒の作動を休止させ、2気筒休止運転においては#3及び#4気筒の作動を休止させる制御が行われる。したがって、#3気筒はいずれの気筒休止運転においても作動が休止されるため、気筒休止に起因する点火プラグのカーボン付着が最も発生し易い。そこで、本実施形態では、#3気筒においてカーボン付着を確実に防止できるように、以下に説明するような作動気筒切換制御を行うようにしている。なお、本実施形態は、休止気筒においても常に点火プラグ12への通電が行われる。
【0024】
図2は、3気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。この処理はECU5にCPUで所定時間(例えば10msec)毎に実行される。後述する図3〜図5,図7,及び図8の処理も同様である。
【0025】
ステップS11では、気筒休止前提条件フラグFCSCNDが「1」であるか否かを判別する。気筒休止前提条件フラグFCSCNDは、気筒休止運転(2気筒休止運転または3気筒休止運転)を許可するための前提条件である所定気筒休止前提条件が成立するとき「1」に設定される。所定気筒休止前提条件は、以下の条件が満たされるとき成立する:1)冷却水温TWが所定水温以上であること、2)フェールセーフ動作中でないこと、3)空燃比フィードバック制御が正常に実行されていること、4)エンジン回転数NEが所定回転数以下であること、5)燃料タンクにおける蒸発燃料の発生量が少ないこと、6)スロットル弁がほぼ全開となる所定高負荷運転状態でないこと、7)潤滑油上がりによる気筒休止禁止要求がないこと、8)急ブレーキ判定がなされていないこと、9)所定の故障診断処理による気筒休止禁止要求がないこと、及び10)自動変速機制御用の制御ユニットからの気筒休止禁止要求がないこと。
【0026】
ステップS11の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND3が「1」であるか否かを判別する(ステップS12)。3気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND3は、3気筒休止運転を許可するための所定油圧条件(気筒休止機構20の作動油圧についての条件)が成立するとき「1」に設定される。所定油圧条件は、気筒休止運転を行うために使用されるスプール弁の作動に必要な油圧が確保されているとき成立する。
【0027】
ステップS12の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX3が「1」であるか否かを判別する(ステップS13)。3気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX3は、エンジン1の要求トルクTRQが3気筒休止運転におけるエンジン1の最大出力トルクTRQMAX3を超えたとき「1」に設定される。要求トルクTRQは、アクセルペダル操作量APにほぼ比例するように設定される。
【0028】
ステップS13の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND3が「1」であるか否かを判別する(ステップS14)。3気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND3は、排気系に設けられる排気浄化触媒の温度が3気筒休止運転を許可するための所定温度条件を満たすとき「1」に設定される。所定温度条件は、排気浄化触媒の温度が活性温度以上であり、かつ触媒保護上限温度以下であるとき成立する。
【0029】
ステップS14の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV3が「1」であるか否かを判別する(ステップS15)。3気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV3は、3気筒休止運転を許可するための所定3気筒休止NV条件が成立するとき「1」に設定される。所定3気筒休止NV条件は、3気筒休止運転の実行中に発生する音及び振動が、許容できるレベルであるとき成立する。ステップS15の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS16)。3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDは、図4及び図5の処理において点火プラグの汚損防止のために3気筒休止運転を禁止するとき「1」に設定される。
【0030】
ステップS16の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止CC禁止フラグFCCK3が「1」であるか否かを判別する(ステップS17)。3気筒休止CC禁止フラグFCCK3は、クルーズコントロール中に3気筒休止運転を禁止する必要があるとき「1」に設定される。
【0031】
ステップS17の答が否定(NO)であるときは、3気筒休止運転の実行条件が成立していると判定し、3気筒休止運転許可フラグFCSCND3を「1」に設定する(ステップS18)。一方、ステップS11,S12,S14,またはS15の答が否定(NO)、あるいはステップS13,S16,またはS17の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止運転の実行条件が不成立と判定し、3気筒休止運転許可フラグFCSCND3を「0」に設定する(ステップS19)。
【0032】
図3は、2気筒休止運転の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
ステップS21では、気筒休止前提条件フラグFCSCNDが「1」であるか否かを判別する。ステップS21の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND2が「1」であるか否かを判別する(ステップS22)。2気筒休止油圧条件フラグFCSPOILCND2は、2気筒休止運転を許可するための所定油圧条件が成立するとき「1」に設定される。
【0033】
ステップS22の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX2が「1」であるか否かを判別する(ステップS23)。2気筒休止要求トルクフラグFCSTRQMAX2は、エンジン1の要求トルクTRQが2気筒休止運転におけるエンジン1の最大出力トルクTRQMAX2を超えたとき「1」に設定される。ステップS23の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND2が「1」であるか否かを判別する(ステップS24)。2気筒休止触媒温度条件フラグFCSCATCND2は、排気浄化触媒の温度が2気筒休止運転を許可するための所定温度条件を満たすとき「1」に設定される。
【0034】
ステップS24の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV2が「1」であるか否かを判別する(ステップS25)。2気筒休止NV条件フラグFCSCNDNV2は、2気筒休止運転を許可するための所定2気筒休止NV条件が成立するとき「1」に設定される。所定2気筒休止NV条件は、2気筒休止運転の実行中に発生する音及び振動が、許容できるレベルであるとき成立する。ステップS25の答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS26)。この答が否定(NO)であるときは、さらに2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」であるか否かを判別する(ステップS27)。2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDは、図4及び図5の処理において点火プラグの汚損防止のために2気筒休止運転を禁止するとき「1」に設定される。
【0035】
ステップS27の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止CC禁止フラグFCCK2が「1」であるか否かを判別する(ステップS28)。2気筒休止CC禁止フラグFCCK2は、クルーズコントロール中に2気筒休止運転を禁止する必要があるとき「1」に設定される。
【0036】
ステップS28の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止運転の実行条件が成立していると判定し、2気筒休止運転許可フラグFCSCND2を「1」に設定する(ステップS29)。一方、ステップS21,S22,S24,またはS25の答が否定(NO)、あるいはステップS23,S26,S27,またはS28の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止運転の実行条件が不成立と判定し、2気筒休止運転許可フラグFCSCND2を「0」に設定する(ステップS30)。
【0037】
図4及び図5は、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMD及び2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDの設定を行う処理のフローチャートである。
【0038】
ステップS41では、気筒休止運転インデクスの前回値CSTPPLG10MZを、今回値CSTPPLG10Mに設定し、ステップS42では、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10M(今回値)を気筒作動状態変数CSTPに設定する。気筒作動状態変数CSTPは、全筒運転中は「0」に設定され、2気筒休止運転中は「2」に設定され、3気筒休止運転中は「3」に設定されるパラメータである。
【0039】
ステップS43では、図7及び図8に示すプラグ温度推定処理を実行し、点火プラグ12(本実施形態では#3気筒の点火プラグ)の推定温度である推定プラグ温度TCSPLUGを算出する。
【0040】
ステップS44では、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10Mが「0」であるか否かを判別し、その答が否定(NO)、すなわち気筒休止運転中(3気筒休止運転または2気筒休止運転の実行中)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図6(a)に示すCCSPLUGUPXテーブルを検索し、カウントアップ基本値CCSPLUGUPXを算出する(ステップS45)。CCSPLUGUPXテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE1に達するまでは、エンジン回転数NEが増加するほどカウントアップ基本値CCSPLUGUPXが増加するように設定されている。
【0041】
ステップS46では、気筒休止運転インデクスの前回値CSTPPLG10MZが「0」であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)、すなわち全筒運転から気筒休止運転に移行した直後であるときは、カウントアップ補正項CCSPLUGCHを気筒休止開始補正値DCSPLUGCH(例えば5秒の相当する値)に設定し(ステップS47)、ステップS49に進む。ステップS46の答が否定(NO)であって、前回から気筒休止運転を実行しているときは、カウントアップ補正項CCSPLUGCHを「0」に設定し(ステップS48)、ステップS49に進む。
【0042】
ステップS49では、カウントアップ基本値CCSPLUGUPX及びカウントアップ補正項CCSPLUGCHを下記式(1)に適用し、カウントアップ数CCSPLUGUPを算出する。
CCSPLUGUP=CCPLUGUPX+CCSPLUGCH (1)
【0043】
ステップS50では、下記式(2)により、気筒休止カウンタCCSPLUGをカウントアップ数CCSPLUGUPだけインクリメントする。式(2)の右辺のCCSPLUGは前回値である。気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、不揮発メモリに格納され、エンジン1の停止中において保持される。したがって、エンジン1の作動開始直後においてはエンジン1の前回運転時の最終値が、式(2)の右辺に適用される。
CCSPLUG=CCSPLUG+CCSPLUGUP (2)
【0044】
ステップS51では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDを「1」に設定する(ステップS52)。ステップS51の答が否定(NO)であるときは、直ちにステップS53に進む。
【0045】
ステップS53では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるか否かを判別する。2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHは、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHより小さい値に設定される。ステップS53の答が肯定(YES)であるときは、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDを「1」に設定する(ステップS54)。ステップS53の答が否定(NO)であるときは、直ちに処理を終了する。
【0046】
ステップS44の答が肯定(YES)、すなわち全筒運転中であるときは、ステップS61(図5)に進み、燃料カットフラグFFCが「1」であるか否かを判別する。その答が肯定(YES)であって燃料カット運転中であるときは直ちに処理を終了する。燃料カットフラグFFCが「0」であって、燃料供給が行われる通常運転中であるときは、エンジン回転数NEに応じて図6(b)に示すCCSPLUGDWXテーブルを検索し、カウントダウン基本値CCSPLUGDWXを算出する(ステップS62)。CCSPLUGDWXテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE1に達するまでは、エンジン回転数NEが増加するほどカウントダウン基本値CCSPLUGDWXが増加するように設定されている。
【0047】
ステップS63では、ステップS43で算出される推定プラグ温度TCSPLUGに応じて図6(c)に示すKDCCSPLUGTXテーブルを検索し、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXを算出する。KDCCSPLUGTXテーブルは、推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0(例えば400℃)以下の範囲では、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが「0」に設定され、第1所定温度TCSPG0から第2所定温度TCSPG1(例えば600℃)の範囲では、推定プラグ温度TCSPLUGが高くなるほど、プラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが増加するように設定されている。
【0048】
ステップS64では、カウントダウン基本値CCSPLUGDWX及びプラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXを下記式(3)に適用し、カウントダウン数CCSPLUGDWを算出する。
CCSPLUGDW=CCPLUGDWX×KDCCSPLUGTX (3)
【0049】
ステップS65では、下記式(4)により、気筒休止カウンタCCSPLUGをカウントダウン数CCSPLUGDWだけデクリメントする。
CCSPLUG=CCSPLUG−CCSPLUGDW (4)
【0050】
ステップS66では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止許可閾値CCSPLUGLより大きいか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときは、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDを「0」に設定する(ステップS67)。ステップS66の答が肯定(YES)であるときは、直ちにステップS68に進む。3気筒休止許可閾値CCSPLUGLは、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHより小さな値に設定される。
【0051】
ステップS68では、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLより大きいか否かを判別する。ステップS68の答が否定(NO)であるときは、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDを「0」に設定する(ステップS69)。ステップS68の答が肯定(YES)であるときは、直ちに処理を終了する。2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLは、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHより小さな値に設定され、3気筒休止許可閾値CCSPLUGL以下の値に設定される。
【0052】
図7及び図8は、図4のステップS43で実行されるプラグ温度推定処理のフローチャートである。
ステップS71では、初期化フラグFTCSPLGINIが「1」であるか否かを判別する。エンジン始動直後はこの答は否定(NO)であるので、初期化フラグFTCSPLGINIを「1」に設定する(ステップS73)とともに、推定プラグ温度TCSPLUGをエンジン冷却水温TWに設定する(ステップS74)。ステップS73を実行することにより、ステップS71の答は肯定(YES)となり、ステップS72に進んで、始動モードフラグFSTMODが「1」であるか否かを判別する。始動モードフラグFSTMODが「1」であってエンジン1のクランキング中であるときは、前記ステップS74に進む。
【0053】
ステップS72の答が否定(NO)であるときは、気筒休止運転インデクスCSTPPLG10Mが「0」であるか否かを判別する(ステップS75)。この答が否定(NO)であって気筒休止運転中であるときは、後述するステップS97で使用されるなまし係数CTCSPLUGを所定の休筒運転係数値CTCSPLUGWCS(例えば0.0001)に設定する(ステップS77)。次いで、基本推定温度TCSPLGMをエンジン冷却水温TWに設定し(ステップS79)、ステップS97に進む。基本推定温度TCSPLGMは、後述するステップS91で算出される推定プラグ温度の基本値である。
【0054】
ステップS75の答が肯定(YES)、すなわち全筒運転中であるときは、燃料カットフラグFFCが「1」であるか否かを判別する(ステップS76)。この答が肯定(YES)であるときは、なまし係数CTCSPLUGを所定の燃料カット運転係数値CTCSPLUGWFC(例えば0.0005)に設定し(ステップS78)、前記ステップS79に進む。
【0055】
ステップS76の答が否定(NO)であって通常運転中であるときは、エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて図9(a)に示すTCSPLGMXマップを検索し、基本プラグ温度TCSPLGMXを算出する(ステップS80)。
【0056】
図9(a)に示す3つの曲線L1〜L3は、それぞれ所定吸気圧PBA1,PBA2,及びPBA3に対応し、所定吸気圧PBA1,PBA2,及びPBA3は、PBA1<PBA2<PBA3なる関係を満たす。すなわち、TCSPLGMXマップは、エンジン回転数NEが増加するほど基本プラグ温度TCSPLGMXが高くなり、かつ吸気圧PBAが増加するほど基本プラグ温度TCSPLGMXが高くなるように設定されている。
【0057】
ステップS81では、下記式(5)により、点火時期のノック補正項DIGCRKPLGを算出する。式(5)のDIGRSVは、基本点火時期IGBASE(エンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて設定され、出力トルクが最大となる最適点火時期)のノック余裕度、DIGKRはノッキングを防止するための基本リタード量であり、KIGKNTPLGは基本プラグ温度TCSPLGMXにおける基準リタード係数である。式(5)に適用されるパラメータは、点火時期制御処理(図示せず)で算出される。
DIGCRKPLG=DIGRSV−DIGKR×KIGKNTPLG (5)
【0058】
ステップS82では、ノック補正項DIGCRKPLGが「0」を越えないようにするリミット処理を行う。
【0059】
ステップS83では、基本点火時期IGBASE及びノック補正項DIGCRKPLGを下記式(6)に適用し、ノック補正点火時期IGCRKPLGを算出する。
IGCRKPLG=IGBASE+DIGCRKPLG (6)
【0060】
ステップS84では、ノック補正点火時期IGCRKPLGが点火時期IGLOG(点火プラグの実点火時期)より大きい(進角側)か否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、リタード量DIGTPLGを「0」に設定する(ステップS85)。ノック補正点火時期IGCRKPLGが点火時期IGLOGより大きいときは、下記式(7)により、リタード量DIGTPLGを算出する(ステップS86)。
DIGTPLG=IGCRKPLG−IGLOG (7)
【0061】
ステップS87では、エンジン回転数NE及びリタード量DIGTPLGに応じて図9(b)に示すDTCSIGPLGHマップを検索し、高負荷補正量DTCSIGPLGHを算出する。高負荷補正量DTCSIGPLGHは、スロットル弁がほぼ全開となる高負荷運転状態(吸気圧PBAが所定高吸気圧PBDPLGIGHと等しい状態,図10(a)参照)に対応する補正量である。図9(b)に示す4つのラインL11〜L14は、それぞれ所定回転数NE11,NE12,NE13,及びNE14に対応し、所定回転数NE11,NE12,NE13,及びNE14は、NE11<NE12<NE13<NE14なる関係を満たす。すなわち、DTCSIGPLGHマップは、リタード量DIGTPLGが増加するほど高負荷補正量DTCSIGPLGHが増加し、かつエンジン回転数NEが増加するほど、リタード量DIGTPLGの増加に対する変化率(傾き)が増加するように設定されている。なお、リタード量DIGTPLGが「0」であるときは、エンジン回転数NEに関わらず高負荷補正量DTCSIGPLGHは「0」に設定される。
【0062】
ステップS88では、エンジン回転数NE及びリタード量DIGTPLGに応じてDTCSIGPLGLマップ(図示せず)を検索し、低負荷補正量DTCSIGPLGLを算出する。低負荷補正量DTCSIGPLGLは、所定負荷運転状態(吸気圧PBAが所定低吸気圧PBDPLGIGLと等しい状態,図10(a)参照)に対応する補正量である。DTCSIGPLGLマップも、DTCSIGPLGHマップと同様に、リタード量DIGTPLGが増加するほど低負荷補正量DTCSIGPLGLが増加し、かつエンジン回転数NEが増加するほどリタード量DIGTPLGの増加に対する変化率(傾き)が増加するように設定されている。
【0063】
ステップS89では、図10(a)に示すように高負荷補正量DTCSIGPLGH及び低負荷補正量DTCSIGPLGLを用いて、吸気圧PBAに応じた補間演算を行うことにより、点火時期補正量DTCSIGPLGXを算出する。
ステップS90では、燃料噴射時間の補正係数である高負荷燃料増量係数KWOTに応じて図10(b)に示すDTCSPLGWOTXテーブルを検索し、高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXを算出する。DTCSPLGWOTXテーブルは、高負荷燃料増量係数KWOTが増加するほど高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXが増加するように設定されている。
【0064】
ステップS91では、基本プラグ温度TCSPLGMX、点火時期補正量DTCSIGPLGX、及び高負荷運転補正量DTCSPLGWOTXを、下記式(8)に適用し、基本推定温度TCSPLGMを算出する。式(8)のDTCSPLGEGRは、排気還流を行うことによる影響を補正するための所定EGR補正量であり、(1−KEGRB1)は、排気還流率(気筒吸入ガス中の還流排気の比率)に相当するパラメータであり、燃料噴射制御処理(図示せず)で算出される。
TCSPLGM=TCSPLGMX−DTCSIGPLGX
−DTCSPLGEGR×(1−KEGRB1)−DTCSPLGWOTX (8)
【0065】
ステップS92では、基本推定温度TCSPLGMが推定プラグ温度TCSPLUG(前回値)以上であるか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図10(c)に示すCTCSPLUGWLテーブルを検索して、プラグ温度低下時の(なまし)係数値CTCSPLUGWLを算出し(ステップS93)、なまし係数値CTCSPLUGを係数値CTCSPLUGWLに設定する(ステップS94)。CTCSPLUGWLテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE21より低い範囲で、エンジン回転数NEが増加するほど係数値CTCSPLUGWLが増加するように設定されている。
【0066】
ステップS92の答が肯定(YES)であるときは、エンジン回転数NEに応じて図10(c)に示すCTCSPLUGWHテーブルを検索して、プラグ温度上昇時の(なまし)係数値CTCSPLUGWHを算出し(ステップS95)、なまし係数値CTCSPLUGを係数値CTCSPLUGWHに設定する(ステップS96)。CTCSPLUGWHテーブルは、エンジン回転数NEが所定回転数NE21より低い範囲で、エンジン回転数NEが増加するほど係数値CTCSPLUGWHが増加するように設定されている。
【0067】
ステップS97では、基本推定温度TCSPLGM及びなまし係数CTCSPLUGを下記式(9)に適用し、なまし演算を行って推定プラグ温度TCSPLUGを算出する。式(9)の右辺のTCSPLUGは前回算出値である。なお、ステップS79を経由してステップS97に至る場合には、基本推定温度TCSPLGMが算出(更新)されないので、最新の算出値が式(9)に適用される。
TCSPLUG=CTCSPLUG×TCSPLGM
+(1−CTCSPLUG)×TCSPLUG (9)
【0068】
図7及び図8の処理によれば、エンジン回転数NE、吸気圧PBA、冷却水温TW、点火時期IGLOG、排気還流率(1−KEGRB1)、及び高負荷燃料増量係数KWOTに応じて推定プラグ温度TCSPLUGが算出されるので、比較的簡単な演算によって正確な推定プラグ温度を得ることができる。
【0069】
図11は、図4及び図5の処理を説明するためのタイムチャートであり、車速VP、休止気筒数、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値、推定プラグ温度TCSPLUG、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMD、及び3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDの推移を示す。図11(a)に示す領域R2及びR3は、それぞれ3気筒休止運転の実行条件が成立する車速領域、及び2気筒休止運転の実行条件が成立する車速領域を示す。図11(b)において「3」及び「2」が記載されて期間がそれぞれ3気筒休止運転の実行期間、及び2気筒休止運転の実行期間に相当し、数字が記載されていない期間が全筒運転の実行期間に相当する。また同図に破線で示す期間は、図4及び図5の処理による気筒休止禁止を行わない場合には、気筒休止運転が行われた期間を示す。
【0070】
図11(c)に示すようにこの動作例では、3気筒休止許可閾値CCSPLUGLは、2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLと同一値に設定されている。
時刻t1〜t2の期間において、3気筒休止運転が実行され、時刻t3〜t4の期間において2気筒休止運転が実行される。したがって、気筒休止カウンタCCSPLUGがカウントアップされる。時刻t5において推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0を超えるので、気筒休止カウンタCCSPLUGがカウントダウンが開始される。時刻t6から3気筒休止運転が開始され、時刻t7において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHに達するので、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」に設定される。3気筒休止運転は、禁止されないので時刻t8まで継続される。時刻t9において2気筒休止運転が実行可能となるが、2気筒休止運転は禁止されているため、実行されない。
【0071】
時刻t10からt12の期間では、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが行われ、時刻t11において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止許可閾値CCS2PLUGLに達するため、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「0」に戻される。
【0072】
時刻t13から3気筒休止運転が開始され、時刻t14において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えるので、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMDが「1」に設定される。時刻t15において気筒休止カウンタCCSPLUGの値が3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHに達し、3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDが「1」に設定される。そのため、3気筒休止運転は時刻t15に終了する。
【0073】
時刻t16から気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが開始され、時刻t17にカウント値が3気筒休止許可閾値CCSPLUGL(=2気筒休止許可閾値CCS2PLUGL)に達するため、2気筒休止禁止フラグFCS2PLUGCMD及び3気筒休止禁止フラグFCSPLUGCMDがともに「0」に戻され、同時に3気筒休止運転が開始される。
【0074】
以上詳述したように本実施形態によれば、気筒休止カウンタCCSPLUGにより、気筒の作動休止時間の積算値に相当するカウント値が算出され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGH以上であるときに2気筒休止運転が禁止され、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGH以上であるときに2気筒休止運転及び3気筒休止運転が禁止される。さらに気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値は、エンジン1が停止された後も保持され、次の運転開始時には保持したカウント値を初期値として気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算が行われる。点火プラグのカーボン付着は、休筒運転実行時間の積算値に依存することが確認されているので、エンジン運転停止期間においても積算休止時間に相当するカウント値を保持しつつ、気筒休止カウンタCCSPLUGによる積算を行うことにより、簡便な構成でカーボン付着を確実に防止し、すべての気筒において安定した燃焼を維持することができる。
【0075】
またエンジン運転状態に応じて推定プラグ温度TCSPLUGが算出され、推定プラグ温度TCSPLUGが第1所定温度TCSPG0より高いときにプラグ温度補正係数KDCCSPLUGTXが「0」より大きい値に設定され(図6(c))、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンが行われる。点火プラグの温度が第1所定温度TCSPG0より高いときに付着したカーボンが燃焼により除去されるので、気筒休止カウンタCCSPLUGのカウントダウンを行うことにより、気筒休止カウンタCCSPLUGの値によってカーボン付着状態をより正確に推定することができる。さらにカウントダウン数CCSPLUGDWは、推定プラグ温度TCSPLUGが高くなるほど増加するように設定されるので(図6(c))、推定プラグ温度TCSPLUGの影響をより適切に反映させることができる。
【0076】
また全筒運転から休筒運転への切換時に、気筒休止開始補正値DCSPLUGCHが気筒休止カウンタCCSPLUGの値に加算される。全筒運転から休筒運転への切換回数が多くなるほどカーボンの付着量が増加する傾向があることが確認されているので、切換時に気筒休止開始補正値DCSPLUGCHを気筒休止カウンタCCSPLUGのカウント値に加算することにより、気筒休止カウンタCCSPLUGの値に切換回数の影響を反映させ、より正確なカーボン付着状態の推定が可能となる。
【0077】
また2気筒休止運転、3気筒休止運転、及び全筒運転の切換制御が行われ、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えたときに2気筒休止運転が禁止され、気筒休止カウンタCCSPLUGの値が、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHを超えたときに3気筒休止運転が禁止される。気筒休止カウンタCCSPLUGの値が増加し、2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHを超えたときは、まず休止気筒数の2気筒休止運転のみを禁止することにより、比較的高負荷運転におけるカーボンの燃焼効果を得るとともに、低負荷運転時における3気筒休止運転による燃費向上効果を得ることができる。さらに2気筒休止禁止閾値CCS2PLUGHの値が増加し、3気筒休止禁止閾値CCSPLUGHを超えたときは2気筒休止運連及び3気筒休止運転をともに禁止することにより、付着したカーボンを確実に除去することができる。
【0078】
本実施形態では、ECU5が作動気筒数制御手段、休止時間パラメータ積算手段、休止時間パラメータ減算手段、禁止手段、点火プラグ温度推定手段、及び加算手段を構成する。具体的には、図2及び図3の処理が作動気筒数制御手段に相当し、図4のステップS44,45,及びS50が休止時間パラメータ積算手段に相当し、図5のステップS61〜S65が休止時間パラメータ減算手段に相当し、図4のステップS51〜S54が禁止手段に相当し、図7及び図8の処理が点火プラグ温度推定手段に相当し、図4のステップS46〜S49が加算手段に相当する。
【0079】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態では、休止気筒数の異なる2つの休筒運転を行う例を示したが、例えば休筒運転としては3気筒休止運転のみを行う内燃機関の制御装置にも本発明は適用可能である。また、本発明は、6気筒内燃機関の制御装置に限るものでなく、複数気筒の一部の気筒の作動を停止させることが可能な内燃機関の制御装置に適用可能である。
【0080】
また上述した気筒休止機構は、吸気弁及び排気弁の作動を停止させるものであるが、気筒休止機構は、吸気弁の作動のみ停止させるものであってもよい。
【0081】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンであって、作動気筒数が切換可能なもの制御装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 内燃機関
5 電子制御ユニット(作動気筒数制御手段、休止時間パラメータ積算手段、休止時間パラメータ減算手段、禁止手段、点火プラグ温度推定手段、加算手段)
7 吸気圧センサ
9 冷却水温センサ
10 クランク角度位置センサ
12 点火プラグ
17 アクセルセンサ
18 車速センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構を備える内燃機関の制御装置において、
前記機関の運転状態に応じて前記複数気筒の全部を作動させる全筒運転と、前記一部の気筒の作動を休止させる休筒運転との切換制御を行う作動気筒数制御手段と、
前記一部の気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータを積算することにより積算休止時間パラメータを算出する休止時間パラメータ積算手段と、
前記積算休止時間パラメータが所定判定値以上であるときに、前記休筒運転を禁止する禁止手段とを備え、
前記休止時間パラメータ積算手段は、前記機関の運転が停止された後も前記積算休止時間パラメータを保持し、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として前記積算を開始することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記機関の点火プラグの温度の推定値である推定点火プラグ温度を算出する点火プラグ温度推定手段と、
前記推定点火プラグ温度が所定温度より高いときに前記積算休止時間パラメータを減算する休止時間パラメータ減算手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記全筒運転から前記休筒運転への切換時に前記積算休止時間パラメータに所定値を加算する加算手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記気筒休止機構は、休止させる気筒の数を第1所定数と該第1所定数より大きい第2所定数とに変更可能に構成され、前記作動気筒数制御手段は、前記第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転と、前記第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転と、前記全筒運転との切換制御を行い、
前記所定判定値は、第1所定判定値と、該第1所定判定値より大きい第2所定判定値とからなり、
前記禁止手段は、前記積算休止時間パラメータが前記第1所定判定値以上であるときに前記第1休筒運転を禁止し、前記積算休止時間パラメータが前記第2所定判定値以上であるときに前記第1及び第2休筒運転をともに禁止することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
複数気筒の一部の気筒の作動を休止させる気筒休止機構を備える内燃機関の制御装置において、
前記機関の運転状態に応じて前記複数気筒の全部を作動させる全筒運転と、前記一部の気筒の作動を休止させる休筒運転との切換制御を行う作動気筒数制御手段と、
前記一部の気筒の作動休止時間を示す休止時間パラメータを積算することにより積算休止時間パラメータを算出する休止時間パラメータ積算手段と、
前記積算休止時間パラメータが所定判定値以上であるときに、前記休筒運転を禁止する禁止手段とを備え、
前記休止時間パラメータ積算手段は、前記機関の運転が停止された後も前記積算休止時間パラメータを保持し、次に機関の運転が開始されたときは、保持した積算休止時間パラメータを初期値として前記積算を開始することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記機関の点火プラグの温度の推定値である推定点火プラグ温度を算出する点火プラグ温度推定手段と、
前記推定点火プラグ温度が所定温度より高いときに前記積算休止時間パラメータを減算する休止時間パラメータ減算手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記全筒運転から前記休筒運転への切換時に前記積算休止時間パラメータに所定値を加算する加算手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記気筒休止機構は、休止させる気筒の数を第1所定数と該第1所定数より大きい第2所定数とに変更可能に構成され、前記作動気筒数制御手段は、前記第1所定数の気筒を休止させる第1休筒運転と、前記第2所定数の気筒を休止させる第2休筒運転と、前記全筒運転との切換制御を行い、
前記所定判定値は、第1所定判定値と、該第1所定判定値より大きい第2所定判定値とからなり、
前記禁止手段は、前記積算休止時間パラメータが前記第1所定判定値以上であるときに前記第1休筒運転を禁止し、前記積算休止時間パラメータが前記第2所定判定値以上であるときに前記第1及び第2休筒運転をともに禁止することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−256774(P2011−256774A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131589(P2010−131589)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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