説明

内燃機関の排気システム

【課題】本発明は、内燃機関の排気システムに関し、排気枝管内に配置した熱音響スタックによる熱音響効果を、広い機関回転速度範囲で、十分に発揮させることを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の排気システムは、一端が内燃機関の排気通路に連通し、他端が閉塞した状態となることのできる排気枝管と、排気枝管の管路長を可変とする管路長可変手段と、排気枝管内に配置され、排気枝管内の気柱振動のエネルギーを熱エネルギーに変換可能な熱音響スタックと、管路長が、排気枝管内の気柱が共鳴する長さとなるように、内燃機関の回転速度に基づいて管路長可変手段により管路長を変化させる共鳴制御を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−154792号公報には、一端が内燃機関の排気通路に連通し、他端が閉塞した排気枝管の内部に熱音響スタックを配置し、内燃機関の排気脈動を受けて生ずる気柱振動のエネルギーを熱音響スタックによって熱エネルギーに変換して回収するようにしたエネルギー回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−154792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱音響スタックによって気柱振動エネルギーを熱エネルギーに効率良く変換するためには、管路内の気柱を共鳴させる必要がある。気柱が共鳴する周波数は、管路長などによって決まった所定の値となる。一方、排気脈動の周波数は、機関回転速度に応じて変化する。このため、上記従来の装置では、排気脈動の周波数と、排気枝管の所定の共鳴周波数とが近くなるような、狭い機関回転速度範囲でしか、十分な効果が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、排気枝管内に配置した熱音響スタックによる熱音響効果を、広い機関回転速度範囲で、十分に発揮させることのできる内燃機関の排気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気システムであって、
一端が内燃機関の排気通路に連通し、他端が閉塞した状態となることのできる排気枝管と、
前記排気枝管の管路長を可変とする管路長可変手段と、
前記排気枝管内に配置され、前記排気枝管内の気柱振動のエネルギーを熱エネルギーに変換可能な熱音響スタックと、
前記管路長が、前記排気枝管内の気柱が共鳴する長さとなるように、前記内燃機関の回転速度に基づいて前記管路長可変手段により前記管路長を変化させる共鳴制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記排気枝管の少なくとも一部は、前記内燃機関の排気ガスを吸気系に還流させるEGRを行うためのEGR通路として機能することが可能であり、
前記排気枝管の途中には、前記還流する排気ガスを浄化するEGR触媒が設置されており、
前記EGRが実行されていない場合に前記共鳴制御を実行することにより、前記EGR触媒の床温の上昇を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、熱音響スタックを配置した排気枝管の管路長を、内燃機関の回転速度に基づいて変化させることができる。このため、熱音響スタックによる熱音響効果を、広い機関回転速度範囲で、十分に発揮させることができる。
【0009】
第2の発明によれば、EGRが実行されていない場合に、熱音響スタックによる熱音響効果により、EGR触媒の床温の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の排気システムを説明するための図である。
【図2】管路切替弁、EGR通路およびバイパス通路の構成を示す図である。
【図3】EGRが停止中であって機関回転速度が高い場合の状態を示す図である。
【図4】EGRが停止中であって機関回転速度が中程度である場合の状態を示す図である。
【図5】EGRが停止中であって機関回転速度が低い場合の状態を示す図である。
【図6】EGRが停止中であって管路内の気柱を共鳴させない場合の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2の排気システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の排気システムを説明するための図である。図1に示す内燃機関10は、車両等に搭載される直列4気筒型内燃機関である。ただし、本発明における内燃機関の気筒数および気筒配置はこれに限定されるものではない。図示を省略するが、内燃機関10の各気筒には、ピストン、吸気弁、排気弁等が設置されている。
【0013】
内燃機関10の吸気側には、吸気マニホールド12を介して、吸気通路14が接続されている。吸気通路14の途中には、吸入空気量を調節するためのスロットル弁16と、燃料を噴射する燃料インジェクタ18とが設置されている。なお、図示の構成に限らず、気筒毎に個別に燃料インジェクタを設け、各気筒の吸気ポート内または筒内に燃料を噴射するように構成されていてもよい。
【0014】
内燃機関10の排気側には、排気マニホールド20を介して、排気通路22が接続されている。排気通路22の途中には、排気ガスを浄化するための排気浄化触媒24が設置されている。排気マニホールド20と排気浄化触媒24との間の排気通路22からは、排気ガスの一部を吸気側に還流させる、EGR(Exhaust Gas Recirculation)を行うためのEGR通路26が分岐している。EGR通路26の途中には、還流する排気ガス(以下、「EGRガス」と称する)を浄化するためのEGR触媒28が設置されている。
【0015】
EGR通路26の他端は、管路切替弁30に接続されている。管路切替弁30には、EGR通路32の一端と、EGR通路32より長いバイパス通路34の一端とが更に接続されている。EGR通路32の他端およびバイパス通路34の他端は、管路切替弁36に接続されている。管路切替弁36には、EGR通路38の一端が更に接続されている。EGR通路38の他端は、吸気通路14に接続されている。EGR通路38の途中には、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ40と、排気還流量を調節するためのEGR弁42とが設置されている。
【0016】
本実施形態のシステムは、更に、上述したスロットル弁16、燃料インジェクタ18、管路切替弁30,36、EGR弁42を含む各種のアクチュエータの作動を制御するECU(Electronic Control Unit)50と、内燃機関10のクランク軸の回転に同期した信号を出力するクランク角センサ48とを備えている。ECU50は、クランク角センサ48の出力に基いてクランク角および機関回転速度を検出することができる。
【0017】
また、図示を省略するが、本実施形態のシステムは、吸入空気量を検出するエアフローメータ、車両の速度を検出する車速センサ、車両の運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ等の各種のセンサを備えている。ECU50は、上述した各センサによりエンジン運転情報を検出し、その検出結果に基いて各アクチュエータを駆動することにより、内燃機関10の運転制御を行う。特に、本実施形態において、ECU50は、所定の運転領域においては、EGR弁42を開くことにより、EGRを実行する。EGRの実行中は、EGR弁42の開度を制御することにより、EGR率を制御する。一方、EGRを実行しない運転領域においては、EGR弁42が閉じられる。
【0018】
図2は、管路切替弁30,36、EGR通路32およびバイパス通路34の構成を示す図である。図2に示すように、EGR通路32の内部には、熱音響スタック44が設置されている。また、管路切替弁36側のバイパス通路34の端部の内部には、熱音響スタック46が設置されている。熱音響スタック44,46は、多数の細孔(小径通路)を有する部材であり、例えばステンレス鋼等からなる金属メッシュなどを好ましく用いることができる。熱音響スタック44,46は、気柱振動のエネルギー(音波エネルギー)を熱音響効果によって熱エネルギーに変換する機能を有している。すなわち、管路内の気柱の振動によって熱音響スタック44,46の細孔内を流動する気体と細孔壁面との間で熱が授受されることにより、管路の軸線方向に沿って熱音響スタック44,46に温度勾配が生成される。
【0019】
図2は、EGRが実行中のときの状態を示している。EGRが実行中の場合には、ECU50は、管路切替弁30,36を図2に示す状態に制御する。すなわち、管路切替弁30は、EGR通路26、EGR通路32およびバイパス通路34を連通させる状態とされ、管路切替弁36は、EGR通路32、バイパス通路34およびEGR通路38を連通させる状態とされる。EGRの実行中は、図2中の矢印で示すように、EGR通路26からのEGRガスは、EGR通路32を通ってEGR通路38へ抜けることが可能である。更に、一部のEGRガスは、バイパス通路34を経由してEGR通路38へ流れる。
【0020】
EGRが停止中のときは、EGR弁42が閉じられているので、EGRガスがEGR触媒28を流れることはない。しかしながら、本発明者らが行った実験によれば、EGRの停止中においても、EGR触媒28の床温が過上昇し、触媒劣化等を防止するための基準温度を超える場合があることが判明している(特に、吸入空気量が大きい高負荷時)。EGRの停止中にEGR触媒28の床温が過上昇する原因は、必ずしも明らかではないが、一因としては、EGRの停止中であっても、排気通路22内の排気脈動などによって排気ガスがEGR触媒28内へ入ったり出たりすることを繰り返す結果、触媒反応が生じて床温が上昇するものと考えられる。
【0021】
本発明者らは、EGRの停止中におけるEGR触媒28の床温の過上昇を防止するべく鋭意研究を重ねた結果、EGR通路内に熱音響スタックを配置する方法が有効であることを見出した。EGRの停止中、EGR通路内の気柱は、排気通路22内の排気脈動を受けて振動する。このため、EGR通路内に配置された熱音響スタックでは、気柱振動のエネルギーが熱音響効果によって熱エネルギーに変換され、温度勾配が生成される。このようにして、EGR通路内の気柱振動のエネルギーを熱音響スタックで吸収することにより、EGR触媒28が受け取るエネルギーが減少するため、EGR触媒28の床温の上昇を抑制することができる。
【0022】
熱音響スタックによる熱音響効果を十分に発揮させるためには、気柱を共鳴させること(定在波を発生させること)が必要である。管路内の気柱が共鳴する周波数は、管路の長さや分岐の有無などによって決まる。このため、通常、EGR通路内の気柱の共鳴周波数は、EGR通路の長さなどによって決まった所定の値となっている。EGR通路内の気柱が共鳴するためには、その共鳴周波数と、排気脈動の周波数とが近くなることが必要である。排気脈動の周波数は、機関回転速度によって決まる。したがって、EGR通路内に熱音響スタックを単に配置しただけの構成の場合には、EGR通路内の気柱の共鳴周波数と排気脈動周波数とが近くなるような、所定の機関回転速度範囲でないと、熱音響スタックによる熱音響効果が十分に発揮されない。このため、それ以外の機関回転速度範囲では、EGR触媒28の床温の上昇を十分に抑制できないという問題がある。
【0023】
これに対し、本実施形態の排気システムは、熱音響スタックが位置する管路の長さを可変とすることにより、管路内の気柱の共鳴周波数を変化させることができるように構成されている。そして、共鳴周波数と排気脈動周波数とが近くなるように、機関回転速度に応じて管路長を変化させることにより、広い機関回転速度範囲において、熱音響効果を十分に発揮させることができる。以下、この点について、図3乃至図5を参照して説明する。
【0024】
図3は、EGRが停止中であって機関回転速度が高い場合の状態を示す図である。ECU50は、EGRが停止中であって、機関回転速度が比較的高い範囲(以下、「高回転域」と称する)にある場合には、管路切替弁30,36を図3に示す状態に制御する。すなわち、この場合には、管路切替弁30は、EGR通路26とEGR通路32とを連通させてバイパス通路34を閉塞させる状態とされる。また、管路切替弁36は、EGR通路32を閉塞させる状態とされる(図示の構成では、同時にバイパス通路34およびEGR通路38も閉塞される)。この状態では、EGR通路26およびEGR通路32が管路切替弁30を介して管路としてつながる。この管路長は、共鳴周波数が高回転域での排気脈動周波数に近くなるような長さに設定されている。よって、EGR通路26およびEGR通路32が管路切替弁30を介してつながって形成される管路内の気柱が排気脈動によって共鳴し、定在波が発生する。そして、上記管路の閉塞端付近には、熱音響スタック44が位置する。一般に、熱音響スタックを閉塞端付近に配置することにより、熱音響効果を十分に発揮させることができる。このため、図3に示す状態では、気柱振動のエネルギーが熱音響スタック44によって効率良く吸収されて熱エネルギーに変換され、熱音響スタック44に温度勾配が生成される。その結果、EGR触媒28が受け取るエネルギーが減少するので、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0025】
図4は、EGRが停止中であって機関回転速度が中程度である場合の状態を示す図である。ECU50は、EGRが停止中であって、機関回転速度が中程度の範囲(以下、「中回転域」と称する)にある場合には、管路切替弁30,36を図4に示す状態に制御する。すなわち、この場合には、管路切替弁30は、EGR通路26とバイパス通路34とを連通させてEGR通路32を閉塞させる状態とされる。また、管路切替弁36は、バイパス通路34を閉塞させる状態とされる(図示の構成では、同時にEGR通路32およびEGR通路38も閉塞される)。この状態では、EGR通路26およびバイパス通路34が管路切替弁30を介して管路としてつながる。このため、この状態では、図3に示す状態よりも管路長が長くなる。この管路長は、共鳴周波数が中回転域での排気脈動周波数に近くなるような長さに設定されている。よって、EGR通路26およびバイパス通路34が管路切替弁30を介してつながって形成される管路内の気柱が排気脈動によって共鳴し、定在波が発生する。そして、上記管路の閉塞端付近には、熱音響スタック46が位置する。このため、図4に示す状態では、気柱振動のエネルギーが熱音響スタック46によって効率良く吸収されて熱エネルギーに変換され、熱音響スタック46に温度勾配が生成される。その結果、EGR触媒28が受け取るエネルギーが十分に減少し、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0026】
図5は、EGRが停止中であって機関回転速度が低い場合の状態を示す図である。ECU50は、EGRが停止中であって、機関回転速度が比較的低い範囲(以下、「低回転域」と称する)にある場合には、管路切替弁30,36を図5に示す状態に制御する。すなわち、この場合には、管路切替弁30は、EGR通路26とバイパス通路34とを連通させてEGR通路32を閉塞させる状態とされる。また、管路切替弁36は、バイパス通路34とEGR通路32とを連通させてEGR通路38を閉塞させる状態とされる。この状態では、EGR通路26、バイパス通路34およびEGR通路32が管路切替弁30および管路切替弁36を介して管路としてつながる。このため、この状態では、図4に示す状態よりも管路長が更に長くなる。この管路長は、共鳴周波数が低回転域での排気脈動周波数に近くなるような長さに設定されている。よって、EGR通路26、バイパス通路34およびEGR通路32が管路切替弁30および管路切替弁36を介してつながって形成される管路内の気柱が排気脈動によって共鳴し、定在波が発生する。そして、上記管路の閉塞端付近には、熱音響スタック44が位置する。このため、図5に示す状態では、気柱振動のエネルギーが熱音響スタック44によって効率良く吸収されて熱エネルギーに変換され、熱音響スタック44に温度勾配が生成される。その結果、EGR触媒28が受け取るエネルギーが十分に減少し、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0027】
本実施形態によれば、以上のようにして、EGRが停止されている場合、高回転域、中回転域、低回転域の何れにおいても、熱音響スタック44または46による熱音響効果を十分に発揮させることができるので、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0028】
図6は、EGRが停止中であって管路内の気柱を共鳴させない場合の状態を示す図である。この場合には、管路切替弁30は、EGR通路26、EGR通路32およびバイパス通路34とを連通させる状態とされる。また、管路切替弁36は、バイパス通路34とEGR通路32とを連通させてEGR通路38を閉塞させる状態とされる。この状態では、EGR通路32およびバイパス通路34が管路切替弁30および管路切替弁36を介してループを形成するので、閉塞端が形成されない。このため、管路内の気柱は共鳴しない。EGR触媒28の床温が低く、EGR触媒28の床温を上昇させる必要がある場合には、ECU50は、管路切替弁30,36を図6に示す状態に制御するようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態において、EGRの実行中には、次のような利点がある。EGRの実行中は、図2に示すように、EGRガスが熱音響スタック44,46を通って流れる。このため、放熱性が向上し、EGRガスの温度をより低下させることができる。
【0030】
図7は、上述した機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンによれば、まず、EGR弁42が閉じられているかどうか、すなわちEGRが停止されているかどうかが判断される(ステップ100)。EGR弁42が閉じられている(EGRが停止されている)と判定された場合には、次に、機関回転数が高回転域にあるか中回転域にあるか低回転域にあるかが判断される(ステップ102)。
【0031】
上記ステップ102で、機関回転数が高回転域にあると判定された場合には、管路切替弁30,36が図3に示す状態に制御される。これにより、管路長が短くなって共鳴周波数が高くなるので、共鳴周波数が高回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて熱音響スタック44による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0032】
一方、上記ステップ102で、機関回転数が中回転域にあると判定された場合には、管路切替弁30,36が図4に示す状態に制御される。これにより、管路長が中程度になって共鳴周波数が中程度になるので、共鳴周波数が中回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて熱音響スタック46による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0033】
また、上記ステップ102で、機関回転数が低回転域にあると判定された場合には、管路切替弁30,36が図5に示す状態に制御される。これにより、管路長が長くなって共鳴周波数が低くなるので、共鳴周波数が低回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて熱音響スタック44による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0034】
なお、本実施形態では省略しているが、熱音響スタック44,46の一端または両端に熱交換器を設けて熱媒体を循環させ、熱音響スタック44,46に発生した温度勾配によってその熱媒体を加熱または冷却するように構成してもよい。更に、その加熱または冷却された熱媒体を、対象物と熱交換するための熱交換器に循環させ、当該対象物を加熱または冷却するように構成してもよい。
【0035】
上述した実施の形態1においては、EGR通路26、管路切替弁30、EGR通路32、バイパス通路34および管路切替弁36が前記第1の発明における「排気枝管」および「管路長可変手段」に相当している。また、ECU50が、上記ステップ102,104,106および108の処理を実行することにより前記第1の発明における「制御手段」が実現されている。
【0036】
実施の形態2.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。図8は、本発明の実施の形態2の排気システムを説明するための図である。
【0037】
図8に示すように、本実施形態の排気システムでは、排気通路22から分岐したEGR通路26が吸気通路14に接続されている。EGR通路26の途中であって、EGR触媒28より下流側には、第1EGR弁52、第2EGR弁54、第3EGR弁56がこの順に配置されている。第1EGR弁52の上流側に隣接して、熱音響スタック58が配置されている。また、第2EGR弁54の上流側に隣接して、熱音響スタック60が配置されている。更に、第3EGR弁56の上流側に隣接して、熱音響スタック62が配置されている。
【0038】
EGRを実行する場合には、第1EGR弁52、第2EGR弁54、第3EGR弁56がすべて開かれる。そのうちの一つ(通常は、第3EGR弁56)の開度を調節することにより、EGR量が制御される。
【0039】
EGRの停止中は、次のように制御される。高回転域では、第1EGR弁52が閉じられる。第2EGR弁54および第3EGR弁56は、開いていても閉じていてもよい。第1EGR弁52を閉じた状態では、EGR触媒28を含む管路の長さが短くなって共鳴周波数が高くなるので、共鳴周波数が高回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて、管路の閉塞端付近に位置する熱音響スタック58による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0040】
中回転域では、第1EGR弁52が開かれ、第2EGR弁54が閉じられる。第3EGR弁56は、開いていても閉じていてもよい。第1EGR弁52を開いて第2EGR弁54を閉じた状態では、EGR触媒28を含む管路の長さが中程度になって共鳴周波数が中程度になるので、共鳴周波数が中回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて、管路の閉塞端付近に位置する熱音響スタック60による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0041】
低回転域では、第1EGR弁52および第2EGR弁54が開かれ、第3EGR弁56が閉じられる。第1EGR弁52および第2EGR弁54を開いて第3EGR弁56を閉じた状態では、EGR触媒28を含む管路の長さが長くなって共鳴周波数が低くなるので、共鳴周波数が低回転域での排気脈動周波数と近くなる。このため、管路内の気柱を共鳴させて、管路の閉塞端付近に位置する熱音響スタック62による熱音響効果を十分に発揮させることができ、EGR触媒28の床温の上昇を確実に抑制することができる。
【0042】
実施の形態2は、上述した点以外は実施の形態1と同様であるので、これ以上の説明は省略する。実施の形態2においては、EGR通路26、第1EGR弁52、第2EGR弁54および第3EGR弁56が前記第1の発明における「排気枝管」および「管路長可変手段」に相当している。
【0043】
以上説明した実施の形態1および2では、EGR通路内に熱音響スタックを配置する構成を例に説明したが、本発明は、EGR通路以外の排気枝管に熱音響スタックを配置する構成の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 内燃機関
12 吸気マニホールド
14 吸気通路
16 スロットル弁
20 排気マニホールド
22 排気通路
24 排気浄化触媒
26,32,38 EGR通路
28 EGR触媒
30 管路切替弁
34 バイパス通路
36 管路切替弁
42 EGR弁
44,46 熱音響スタック
52 第1EGR弁
54 第2EGR弁
56 第3EGR弁
58,60,62 熱音響スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が内燃機関の排気通路に連通し、他端が閉塞した状態となることのできる排気枝管と、
前記排気枝管の管路長を可変とする管路長可変手段と、
前記排気枝管内に配置され、前記排気枝管内の気柱振動のエネルギーを熱エネルギーに変換可能な熱音響スタックと、
前記管路長が、前記排気枝管内の気柱が共鳴する長さとなるように、前記内燃機関の回転速度に基づいて前記管路長可変手段により前記管路長を変化させる共鳴制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気システム。
【請求項2】
前記排気枝管の少なくとも一部は、前記内燃機関の排気ガスを吸気系に還流させるEGRを行うためのEGR通路として機能することが可能であり、
前記排気枝管の途中には、前記還流する排気ガスを浄化するEGR触媒が設置されており、
前記EGRが実行されていない場合に前記共鳴制御を実行することにより、前記EGR触媒の床温の上昇を抑制することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231681(P2011−231681A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102379(P2010−102379)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】