説明

内燃機関の自動停止始動制御装置

【課題】アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止中に窓ガラス56の曇りが生じる場合、エンジン10が再始動されるまではエアコンシステムによる防曇制御を行うことができず、運転手の視界を確保することができなくなること。
【解決手段】エンジン10の自動停止中において、湿度センサ66の出力値に基づき窓ガラス56の内面付近の相対湿度を算出する。そして、この相対湿度が所定の閾値以上であると判断された場合、窓ガラス56の曇りが生じると判断する。そして、エンジン10を再始動させるとともに、電磁クラッチ34への通電を開始して防曇制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の出力軸の回転力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、同圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて空気を除湿する蒸発器とを有して構成される空気調節システムを備える車両に適用され、前記内燃機関の自動停止処理及び再始動処理を行う内燃機関の自動停止始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調節システム(エアコンシステム)が備えられる車両においては、車室内を冷暖房する温度制御や車両の窓の曇り(窓の車室内側表面の結露)を除去する制御(防曇制御)等の空調制御が行われるものが知られている。詳しくは、エアコンシステムは、機関駆動式の圧縮機と、この圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて空気を冷却・除湿する蒸発器と、空気を加熱するヒータとを有して構成されている。そして、蒸発器によって冷却・除湿された空気やヒータによって加熱された空気を車室内に供給することで、車室内の空調制御を行うことが可能となる。
【0003】
また、上記車両の中には、アイドルストップ制御が行われるものもある。アイドルストップ制御は、内燃機関のアイドル運転中に所定の停止条件が成立すると内燃機関を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立すると内燃機関を再始動させるものである。この制御によれば、内燃機関の燃費低減効果を得ることが可能となる。
【0004】
ここで、アイドルストップ制御により内燃機関が自動停止されると、上記エアコンシステムを構成する圧縮機が駆動されなくなる。このため、上記車両の中には、内燃機関の自動停止中は車室内の空調制御が停止されるものもある。ただし、この車両においては、乗員が空調制御を行うように指示しているにもかかわらず、内燃機関の自動停止によって空調制御が停止されるため、乗員の要求に応じた空調制御を行うことができなくなるおそれがある。
【0005】
そこで従来は、下記特許文献1に見られるように、車室内の空調制御が行われていると判断される場合には、内燃機関の自動停止を禁止して上記空調制御を継続させる技術も提案されている。これにより、乗員の要求に応じた車室内の空調制御を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−027139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車室内の湿度が高くなる状況下にあっては、窓の曇りが生じることがある。この曇りは、上記防曇制御によって除去することができる。しかしながら、内燃機関の自動停止中に窓の曇りが生じる場合、空調制御が停止されているため窓の曇りを除去することができず、運転手の視界を確保することができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関の自動停止中に窓の曇りが生じる場合、速やかに空気調節システムに防曇制御を行わせることのできる内燃機関の自動停止始動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明は、内燃機関の出力軸の回転力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、同圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて空気を除湿する蒸発器とを有して構成される空気調節システムを備える車両に適用され、前記内燃機関の自動停止処理及び再始動処理を行う内燃機関の自動停止始動制御装置において、ユーザが前記車両の窓の曇り除去を指示する指示手段と、同指示手段を介してユーザから前記曇り除去が指示される場合、前記空気調節システムにより温度調節された空気を車室内に供給することで前記窓の曇りを除去する制御を行う曇り除去手段と、前記窓の車室内側湿度についての情報を取得する湿度情報取得手段と、前記湿度情報取得手段の出力値から算出される前記車室内側湿度が所定以上となることに基づき、前記窓の曇りが生じたか否かを判断する曇り判断手段と、前記内燃機関の自動停止中に前記窓の曇りが生じると判断された場合、前記指示手段を介した前記指示の有無にかかわらず、前記内燃機関を再始動させて且つ前記曇り除去手段に曇り除去制御を行わせる強制実行手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
窓の曇り(窓の車室内側表面の結露)が生じる場合、指示手段を介したユーザからの指示を入力として、空気調節システムにより温度調節された空気を車室内に供給する防曇制御によって窓の曇りを除去することが可能である。ここで、内燃機関の自動停止中に空気調節システムによる車室内の空調制御が停止されると、内燃機関の自動停止中に窓の曇りが生じることがある。この場合、内燃機関が再始動されるまでは、防曇制御を行うことができず、運転手の視界を確保することができなくなるおそれがある。この点、上記発明では、曇り判断手段を備えることで、窓の車室内側湿度が所定以上となることに基づき、内燃機関の自動停止中に窓の曇りが生じるか否かを判断することができる。そして、窓の曇りが生じると判断された場合、上記指示手段を介したユーザの防曇制御指示の有無にかかわらず、内燃機関を速やかに再始動させ、防曇制御を行わせる。これにより、内燃機関の自動停止中に窓の曇りが生じる場合、この曇りを速やかに除去することができ、ひいては運転手の視界を確保することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記強制実行手段は、前記内燃機関の再始動処理期間において同内燃機関の出力軸の回転力を前記圧縮機に伝達可能とするものであり、前記曇り除去手段は、前記蒸発器により除湿された空気を車室内に供給することで前記除去する制御を行うことを特徴とする。
【0013】
上記発明では、内燃機関の再始動処理期間において圧縮機を駆動させることで冷凍サイクル内の冷媒を循環させるため、内燃機関の再始動が開始される時点から速やかに蒸発器によって空気を除湿することができる。これにより、防曇制御に除湿された空気を用いることができ、ひいては窓の曇りが生じると判断された時点から迅速に窓の曇りを除去することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記車両は、蓄電池から給電されて前記内燃機関の出力軸に初期回転を付与する電動機を備えるものであり、前記強制実行手段は、前記蓄電池の給電電圧が所定以下であると判断された場合、前記圧縮機による前記内燃機関の出力軸の回転力の消費を前記内燃機関の始動完了まで制限することを特徴とする。
【0015】
蓄電池の給電電圧が低いと、電動機の回転力が低下するおそれがある。この場合、内燃機関の再始動中に圧縮機が駆動されると、電動機の回転力が圧縮機の駆動に用いられることに起因して、内燃機関の出力軸に初期回転を付与する(クランキングを行う)ために要する上記回転力が不足し、内燃機関の始動性が低下するおそれがある。この点、上記発明では、蓄電池の給電電圧が低いと判断された場合、内燃機関の再始動が完了するまで、圧縮機による内燃機関の出力軸の回転力の消費を制限する。これにより、クランキングを行うために要する電動機の回転力を確保することができ、ひいては内燃機関の始動性の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態にかかるエンジンシステム及びエアコンシステムの全体構成を示す図。
【図2】一実施形態にかかるアイドルストップ制御処理の手順を示すフローチャート。
【図3】一実施形態にかかるアイドルストップ制御処理を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる内燃機関の自動停止始動制御装置を内燃機関(エンジン)を搭載した車両(自動車)に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に本実施形態にかかるエンジンシステム及び空気調節システム(エアコンシステム)の全体構成を示す。
【0019】
図示されるエンジン10は、火花点火式内燃機関である。エンジン10の各気筒には、エンジン10の燃焼室に燃料を噴射供給するための燃料噴射弁12と、噴射供給された燃料と吸気との混合気を燃焼させるための放電火花を発生させる点火プラグ14とが備えられている。燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸16)の回転力として取り出される。
【0020】
クランク軸16には、スタータ18が接続されている。スタータ18は、図示しないイグニッションスイッチのオンによりバッテリ20から給電されることで始動し、エンジン10を始動させるべくクランク軸16に初期回転を付与する(クランキングを行う)。
【0021】
一方、エアコンシステムは、車室内に温風又は冷風を供給する空気通路を形成する空調ケース22と、この空気通路を流れる空気を冷却・除湿するための冷凍装置24とを備えて構成されている。
【0022】
冷凍装置24は、冷凍サイクルに冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出するコンプレッサ26や、このコンプレッサ26から吐出供給される冷媒が凝縮されるコンデンサ28、凝縮された冷媒が流入するレシーバ30、更にはエバポレータ32(蒸発器)等を備えて構成されている。
【0023】
上記コンプレッサ26は、駆動中は吐出容量が一定の固定容量型圧縮機であり、電磁クラッチ34、ベルト36及びクランクプーリ38を介してクランク軸16と機械的に連結されている。これにより、電磁クラッチ34を接続状態とすることで、クランク軸16の回転力がコンプレッサ26に伝達されてコンプレッサ26が駆動される一方、電磁クラッチ34を遮断状態とすることで、クランク軸16の回転力がコンプレッサ26に伝達されないため、コンプレッサ26が駆動されない。コンデンサ28は、DCモータ等によって回転駆動されるコンデンサファン40から送風される空気と、コンプレッサ26から吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。レシーバ30は、コンデンサ28より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。
【0024】
レシーバ30に貯蔵された液冷媒は、温度式膨張弁42によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、エバポレータ32に供給される。エバポレータ32は、上記空調ケース22内に設けられており、エバポレータ32において、空調ケース22の空気通路を流れる空気と上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで冷媒が気化する。これにより、空気通路を流れる空気を冷却・除湿することが可能となる。なお、エバポレータ32で気化した冷媒は、コンプレッサ26の吸入口に吸入される。
【0025】
一方、上記空調ケース22は、車両の車室内の前方側(例えばインストルメントパネルの内側)に配置されており、空調ケース22内には、このケース内の空気通路に空気流を生じさせるブロワ44や、上記エバポレータ32、更には空気通路を流れる空気を加熱するヒータコア46等が設けられている。
【0026】
ここで、ブロワ44は、DCモータ等によりファンが回転駆動されることで空気流を生じさせる送風機(遠心式送風機)である。ブロワ44により空気流を生じさせることで、空調ケース22に形成された内気吸込口48から車室内の空気(内気)を導入したり、同ケースに形成された外気吸込口50から車室外の空気(外気)を導入したりする。なお、これら吸込口の内側には、サーボモータ等により駆動されるインテークドアが52設けられている。インテークドア52が駆動されることで、これら吸込口のうちいずれかが開状態とされ、外気及び内気のうちいずれかが空調ケース22内に導入される。
【0027】
ブロワ44により送風された空気は、上記エバポレータ32、ヒータコア46を通過して所望の温度となるよう熱交換される。詳しくは、エバポレータ32は、ブロワ44下流側の空気通路を全面塞ぐように設けられ、ヒータコア46は、エバポレータ32下流側の空気通路を部分的に塞ぐように設けられている。ヒータコア46の内部には、図示しない冷却水配管から供給されるエンジン10の冷却水が流れている。ヒータコア46では、空気通路を流れる空気と上記冷却水とが熱交換することで、空気通路を流れる空気を加熱することが可能となる。なお、エバポレータ32とヒータコア46との間には、サーボモータ等により駆動されるエアミックスドア54が設けられている。エアミックスドア54は、その停止位置によって、ヒータコア46を通過する空気量とヒータコア46を迂回する空気量との割合を調節する。これにより、空気通路を流れる空気の温度を調節することが可能となる。
【0028】
エバポレータ32やヒータコア46を通過した空気は、空調ケース22に形成された複数の吹出口から車室内へと供給される。詳しくは、空調ケース22には、フロント窓ガラス(窓ガラス56)の内面に向かって空気を吹き出すデフロスタ吹出口58や、乗員の頭胸部に向かって空気を吹き出すフェイス吹出口60、更には乗員の足元部に向かって空気を吹き出すフット吹出口62が形成されている。なお、これら吹出口の内側には、サーボモータ等により駆動される2個の吹出口切替ドア64a、64bが設けられている。これら吹出口切替ドア64a、64bが駆動されることで、吹出口モードがフェイスモード(FACEモード)や、デフロスタモード(DEFモード)、フットモード(FOOTモード)等のいずれかに切り替えられる。詳しくは、FACEモードは、空気通路に導入された空気の全量をフェイス吹出口60から吹き出すモードである。また、DEFモードは、上記導入された空気の全量をデフロスタ吹出口58から吹き出すモードである。更に、FOOTモードは、上記導入された空気の大部分(約80%)をフット吹出口62から吹き出すとともに、残りの空気をデフロスタ吹出口58から吹き出すモードである。
【0029】
窓ガラス56の車室内側表面(内面)付近(例えばダッシュボードの窓ガラス付近)には、湿度センサ66が設けられている。湿度センサ66は、相対湿度に比例した電圧信号を出力するものである。
【0030】
エアコンシステムを操作対象とする電子制御装置(以下、エアコンECU68)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。エアコンECU68には、車室内を冷房・除湿すべくコンプレッサ26の駆動指令(電磁クラッチ34への通電指令)となるA/Cスイッチ70や、乗員が吹出口モードを切り替えるべく操作対象とされるスイッチ(吹出口切替スイッチ71)、湿度センサ66等の出力信号が入力される。エアコンECU68は、これら入力に応じてROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、コンデンサファン40や、ブロワ44、電磁クラッチ34、吹出口切替ドア64a、64b等の各種機器を操作する。そして、これら各種機器を操作することで、コンプレッサ26の駆動制御や、車室内の温度制御等、車室内の空調制御を行う。特にエアコンECU68は、車室内の空調制御として、デフロスタ吹出口58から温風を吹き出すことで窓ガラス56の曇り(窓ガラス56の車室内側表面の結露)を除去する制御(防曇制御)を行う。防曇制御は、吹出口切替スイッチ71を介して乗員からこの制御指示がなされた場合に行われるものである。具体的には、例えば、吹出口切替スイッチ71が操作されることで、吹出口モードがDEFモードに切り替えられる場合に行われる。
【0031】
一方、エンジンシステムを操作対象とする電子制御装置(以下、エンジンECU72)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。エンジンECU72には、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ74や、車両の走行速度を検出する車速センサ76、変速装置(自動変速装置)のシフト位置(P、N及びDレンジ等)を検出するシフト位置センサ78、更にはバッテリ20の電圧を検出するバッテリ電圧センサ80等の出力信号が入力される。また、エンジンECU72とエアコンECU68とは、双方向の通信を行うことで情報のやりとりを行う。詳しくは、エンジンECU72には、エアコンECU68から出力されるA/Cスイッチ70や湿度センサ66等の信号が入力される。一方、エアコンECU68には、エンジンECU72から出力される電磁クラッチ34への通電を許可する信号等が入力される。
【0032】
エンジンECU72は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁12による燃料噴射制御や、点火プラグ14による点火制御、更にはスタータ18によるエンジン10の始動制御等を行う。特にエンジンECU72は、エンジン10のアイドルストップ制御を行う。アイドルストップ制御は、エンジン10の運転中に所定の停止条件が成立することでエンジン10を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立することでエンジン10を再始動させるものである。これにより、エンジン10の燃費低減効果を得ることが可能となる。ここで、上記停止条件や再始動条件は、運転手の停車意思や車両を発進させる意思を把握可能なように設定される。
【0033】
ところで、エンジン10の自動停止中は、エアコンECU68による空調制御が停止される。これは、コンプレッサ26が駆動されないことや、エアコンシステムを構成する各種機器の駆動のための電力消費によるバッテリ20の電圧低下を回避すること等に基づくものである。ただし、エンジン10の自動停止中に窓ガラス56の内面付近の湿度が上昇し、窓ガラス56の曇りが生じる場合、エンジン10の再始動後、空調制御を開始するまでは、防曇制御を行うことができず、運転手の視界を確保することができなくなるおそれがある。特に、エンジン10の自動停止中に窓の曇りが生じた場合、乗員がA/Cスイッチ70や吹出口切替スイッチ71によって防曇制御を指示したとしても、実際に防曇制御が開始されるまでのタイムラグが大きくなる。このため、車両の発進に際し、未だ運転手の視界の確保が困難な状況が解消されていない事態が生じる懸念がある。
【0034】
そこで本実施形態では、エンジン10の自動停止中において、湿度センサ66の出力値に基づき窓ガラス56の曇りが生じるか否かを判断する。そして、窓ガラス56の曇りが生じると判断された場合、上記車両発進の意思の把握に基づく再始動条件が成立していない場合であってもエンジン10を再始動させるとともに防曇制御により窓ガラス56の曇りを除去する。
【0035】
図2に、本実施形態にかかるアイドルストップ制御処理の手順を示す。この処理は、エンジンECU72によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0036】
この一連の処理では、まずステップS10において、自動停止フラグFが「1」に設定されているか否かを判断する。この処理は、エンジン10が自動停止中であるか否かを判断するためのものである。ここで、自動停止フラグFは、「0」によってエンジン10が自動停止していないことを示し、「1」によって自動停止していることを示す。
【0037】
ステップS10において自動停止フラグFが「1」に設定されていないと判断された場合には、ステップS12に進み、エンジン10の停止条件が成立しているか否かを判断する。ここで、停止条件は、ブレーキ操作がなされているとの条件及び車両の走行速度が0(又は略0)になるとの条件の論理積条件とする。なお、ブレーキ操作がなされているか否かは、ブレーキセンサ74の出力値に基づき判断すればよい。また、車両の走行速度が0(又は略0)になるか否かは、車速センサ76の出力値に基づき判断すればよい。
【0038】
ステップS12においてエンジン10の停止条件が成立していると判断された場合には、ステップS14に進み、エンジン10の自動停止処理を行う。ここで、自動停止処理は、燃料噴射弁12からの燃料噴射を停止することで、エンジン10を停止させる処理である。そして、エンジン10が停止したことを確認の後、自動停止フラグFを「1」に設定する。
【0039】
一方、上記ステップS10において自動停止フラグFが「1」に設定されていると判断された場合には、ステップS16に進み、上記車両の発進の意思ありとの判断に対応するエンジン10の再始動条件が成立しているか否かを判断する。ここで、再始動条件は、ブレーキ操作がなされていないとの条件及びシフト位置が駆動状態であるとの条件の論理積条件とする。なお、シフト位置が駆動状態であるか否かは、シフト位置センサ78の出力値に基づき判断すればよい。
【0040】
ステップS16においてエンジン10の再始動条件が成立していると判断された場合には、ステップS18に進み、エンジン10の自動始動処理を行う。ここで、自動始動処理は、スタータ18を始動させることでクランキングを行うとともに、燃料噴射弁12及び点火プラグ14を操作することで、自動停止しているエンジン10を再始動させる処理である。そして、エンジン10が始動したことを確認の後、自動停止フラグFを「0」に設定する。
【0041】
一方、上記ステップS16においてエンジン10の再始動条件が成立していないと判断された場合には、ステップS20に進み、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinが所定の閾値TMP(例えば80%RH)以上であるか否かを判断する。この処理は、窓ガラス56の内面付近の相対湿度の上昇が窓ガラス56の曇りを生じさせることに鑑み、窓ガラス56の曇りが生じるか否かを判断するためのものである。なお、上記所定の閾値TMPは、窓ガラス56の曇りの発生の抑制度合いや、アイドルストップ制御によるエンジン10の燃費低減効果の要求に応じて設定されるのが望ましい。つまり、窓ガラス56の曇りの発生を抑制することを優先させたい場合には、上記閾値TMPを低い値に設定すればよい。また例えば、アイドルストップ制御によるエンジン10の燃費低減効果を優先させたい場合には、上記閾値TMPを高い値に設定すればよい。また、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinは、エアコンECU68から取得した湿度センサ66の出力値に基づき算出すればよい。
【0042】
ステップS20において窓ガラス56の曇りが生じていると判断された場合には、ステップS22に進み、バッテリ20の電圧Vbが所定の閾値BATT以上であるか否かを判断する。この処理は、スタータ18の回転力によってコンプレッサ26及びクランキングの双方に要求される駆動力を確保できるか否かを把握するためのものである。なお、バッテリ20の電圧Vbは、バッテリ電圧センサ80の出力値に基づき算出すればよい。
【0043】
ステップS22においてバッテリ20の電圧Vbが所定の閾値BATT以上であると判断された場合には、上記双方に要求される駆動力を確保できると判断し、ステップS24に進む。ステップS24では、エンジン10の自動始動処理を行うとともに、エアコンECU68に対して防曇制御を指令する。これにより、エアコンECU68は、防曇制御指令をトリガとして電磁クラッチ34への通電を開始し、上記吹出口切替ドア64a、64bを操作して吹出口モードを切り替えることでDEFモードにて防曇制御を行う。これにより、エンジン10の再始動が開始される時点から速やかにエバポレータ32によって空気を除湿することができる。そして、除湿された空気をデフロスタ吹出口58から吹き出すことで、窓ガラス56の曇りが生じると判断された時点から迅速に窓ガラス56の曇りを除去することが可能となる。
【0044】
一方、上記ステップS22においてバッテリ20の電圧Vbが所定の閾値BATTよりも小さいと判断された場合には、ステップS26に進み、電磁クラッチ34への通電指令がなされている(A/Cスイッチ70がON状態とされている)か否かを判断する。この処理は、コンプレッサ26への駆動指令があるか否かを判断するためのものである。なお、電磁クラッチ34への通電指令がなされているか否かは、エアコンECU68から取得したA/Cスイッチ70の出力値に基づき判断すればよい。
【0045】
ステップS26において電磁クラッチ34への通電指令がなされていると判断された場合には、ステップS28に進み、電磁クラッチ34への通電指令の出力を停止する。この処理は、エンジン10の始動性の低下を回避するためのものである。つまり、バッテリ20の電圧Vbが低いと、スタータ18の回転力が低下するおそれがある。この場合、エンジン10の再始動中にコンプレッサ26が駆動されると、スタータ18の回転力がコンプレッサ26の駆動にも使用され、クランキングを行うために要するスタータ18の回転力が不足し、エンジン10の始動性が低下するおそれがある。このため、エンジン10の再始動が完了するまでは、コンプレッサ26の駆動指令がある場合であっても、コンプレッサ26を駆動させず、コンプレッサ26によるクランク軸16の回転力の消費を制限する。これにより、クランキングを行うために要するスタータ18の回転力を確保することで、エンジン10の始動性の低下を回避することが可能となる。
【0046】
上記ステップS26において電磁クラッチ34への通電指令がなされていない(A/Cスイッチ70がOFF状態とされている)と判断された場合や、ステップS28の処理が完了する場合には、上記ステップS24に進み、エンジン10の自動始動処理を行うとともに、エアコンECU68に対して防曇制御を指令する。ここで、エアコンECU68は、エンジンECU72から出力されるエンジン10の再始動完了を確認した旨の信号をトリガとして電磁クラッチ34への通電を開始し、DEFモードにて防曇制御を行う。これにより、エンジン10の始動性の低下を回避しつつも、窓ガラス56の曇りが生じると判断された時点から極力速やかに窓ガラス56の曇りを除去することが可能となる。
【0047】
なお、上記ステップS12、S20で否定判断された場合や、ステップS14、S18、S24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0048】
図3に、本実施形態におけるアイドルストップ制御処理の一例を示す。詳しくは、図3(a)に、エンジン10の駆動状態の推移を示し、図3(b)に、エンジン自動停止要求フラグの推移を示し、図3(c)に、窓ガラス曇り判定フラグの推移を示し、図3(d)に、バッテリ電圧判定フラグの推移を示し、図3(e)に、電磁クラッチ34への通電指令の推移を示す。なお、バッテリ電圧判定フラグは、「ON」によってバッテリ20の電圧Vbが上記所定の閾値BATT以上であることを示し、「OFF」によって上記所定の閾値BATTよりも小さいことを示す。
【0049】
図示されるように、時刻t1において、エンジン10の停止条件が成立することでエンジン自動停止要求フラグがON状態とされる。これにより、エンジン10が自動停止されるとともに空調制御が停止される。その後、エンジン10の自動停止中である時刻t2において、窓ガラス56の曇りが生じると判断(先の図3のステップS20で肯定判断)されることで、窓ガラス曇り判定フラグがON状態とされる。これにより、エンジン自動停止要求フラグがOFF状態とされることで、エンジン10が再始動されるとともに電磁クラッチ34への通電が開始されて防曇制御が行われる。
【0050】
なお、図3(f)及び図3(g)に、従来技術にかかるアイドルストップ制御処理を示した。図示されるように、時刻t1において、エンジン10が自動停止されるとともに空調制御が停止される。その後、時刻t2において、窓ガラス56の曇りが生じるが、時刻t3まではエンジン10が再始動されないため、迅速に防曇制御を行うことができない。
【0051】
このように、本実施形態では、エンジン10の自動停止中に窓ガラス56の曇りが生じる場合、乗員により吹出口切替スイッチ71を介した防曇制御指示がなされていなくても、エンジン10を再始動させるとともに防曇制御を行うことで、窓ガラス56の曇りを迅速に除去することができる。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0053】
(1)エンジン10の自動停止中において、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinが所定の閾値TMP以上であると判断された場合、エンジン10を再始動させるとともに電磁クラッチ34への通電を開始して防曇制御を行った。これにより、乗員により吹出口切替スイッチ71を介した防曇制御指示がなされていなくても、エンジン10の自動停止中に生じる窓ガラス56の曇りを迅速に除去することができ、ひいては運転手の視界を確保することができる。更に、湿度センサ66を窓ガラス56の内面付近に設置したため、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinを高精度に検出することができ、ひいては窓ガラス56の曇りが生じるか否かを高精度に把握することもできる。
【0054】
(2)バッテリ20の電圧Vbが所定の閾値BATTよりも小さいと判断されて且つ電磁クラッチ34への通電指令がなされていると判断された場合、エンジン10の再始動が完了するまでは、電磁クラッチ34への通電を停止した。これにより、クランキングを行うために要するスタータ18の回転力を確保することができ、ひいてはエンジン10の始動性の低下を回避することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、エンジン10を再始動させるとともに電磁クラッチ34への通電を開始して防曇制御を行ったがこれに限らない。例えば、電磁クラッチ34へ通電せずに防曇制御を行ってもよい。この場合であっても、ヒータコア46によって加熱された温風を吹き出すことで窓ガラス56の内面温度を上昇させ、窓ガラス56の内面付近の相対湿度を低下させることができるため、窓ガラス56の曇りを除去することはできる。また、ブロワ44等によるバッテリ20の電力消費をエンジン10の駆動によって補償することができる。これは、エンジン10が駆動している間に、バッテリ20の充電量(SOC)に応じて図示しないオルタネータによる発電制御が可能なためである。これに対し、エンジン10を停止したままブロワ44等を駆動する場合には、バッテリ20の充電量(SOC)が減少し、エンジン10の再始動性を低下させる懸念が生じ得る。
【0057】
・上記実施形態では、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinが所定の閾値TMP以上であると判断された場合、窓ガラス56の曇りが生じると判断したがこれに限らない。例えば、窓ガラス56の内面付近の絶対湿度を検出する絶対湿度検出手段及び窓ガラス56の内面温度を検出する温度検出手段を有し、これら手段の出力値に基づき、絶対湿度が内面温度と関連付けられた所定の閾値以上であると判断された場合、窓ガラス56の曇りが生じると判断してもよい。ここで、上記所定の閾値は、窓ガラス56の内面温度が高くなるほど高く設定すればよい。これは、窓ガラス56の内面温度が高くなると、窓ガラス56の曇りが生じ始める絶対湿度が高くなることに基づくものである。
【0058】
・上記実施形態では、コンプレッサ26を固定容量型圧縮機としたがこれに限らない。例えば、冷媒の吐出容量を通電操作により可変設定可能な可変容量型圧縮機としてもよい。この場合、電磁クラッチ34を備えない構成(クラッチレス)としてもよい。この場合、コンプレッサ26が消費する回転力は、吐出容量に応じたものとなる。このため、例えば、先の図2のステップS26において、A/Cスイッチ70がON状態にされていると判断された場合、ステップS28において、エンジン10の再始動完了まで吐出容量を制限すればよい。
【0059】
・乗員が防曇制御を行うように指示する指示手段としては、吹出口切替スイッチ71に限らない。例えば、このスイッチに代えて、吹出口モードを切り替えるべくダイヤルが備えられるものにあっては、このダイヤルを上記指示手段として用いてもよい。
【0060】
・空気調節システムにより温度調節された空気を車室内に供給することで窓ガラス56の曇りを除去する制御(防曇制御)としては、DEFモードにて行うものに限らない。例えば、DEFモード以外のモードにて防曇制御を行うことで、窓ガラス56の内面付近の湿度を低下させ、窓ガラス56の曇りを除去してもよい。
【0061】
・車両の窓の車室内側の相対湿度についての情報を取得する手段としては、窓ガラス56の内面付近の相対湿度Hwinを検出する湿度センサ66に限らない。例えば、上記相対湿度Hwinを推定する手段であってもよい。具体的には、例えば、窓ガラス56の内面付近の乾球温度及び湿球温度を検出する手段を有し、これら手段の出力値に基づき上記相対湿度Hwinを推定することが考えられる。
【0062】
・内燃機関としては、ガソリンエンジンのような火花点火式内燃機関に限らない。例えばディーゼルエンジン等の圧縮着火式内燃機関であってもよい。
【0063】
・車両としては、内燃機関のみを走行動力供給源とするものに限らない。例えば、走行動力供給源として回転機を更に備える車両(ハイブリッド車両)であっても、内燃機関の自動停止中に車室内の空調制御が停止されるなら、本発明の適用が有効である。なお、この場合、上記回転機を内燃機関の出力軸に初期回転を付与するスタータ(電動機)として用いる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…エンジン、16…クランク軸、18…スタータ、20…バッテリ、22…空調ケース、24…冷凍装置、26…コンプレッサ、32…エバポレータ、34…電磁クラッチ、56…窓ガラス、66…湿度センサ、68…エアコンECU、70…A/Cスイッチ、71…吹出口切替スイッチ、72…エンジンECU(内燃機関の自動停止始動制御装置の一実施形態)、80…バッテリ電圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力軸の回転力により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機と、同圧縮機から吐出供給される冷媒を蒸発させて空気を除湿する蒸発器とを有して構成される空気調節システムを備える車両に適用され、前記内燃機関の自動停止処理及び再始動処理を行う内燃機関の自動停止始動制御装置において、
ユーザが前記車両の窓の曇り除去を指示する指示手段と、
同指示手段を介してユーザから前記曇り除去が指示される場合、前記空気調節システムにより温度調節された空気を車室内に供給することで前記窓の曇りを除去する制御を行う曇り除去手段と、
前記窓の車室内側湿度についての情報を取得する湿度情報取得手段と、
前記湿度情報取得手段の出力値から算出される前記車室内側湿度が所定以上となることに基づき、前記窓の曇りが生じたか否かを判断する曇り判断手段と、
前記内燃機関の自動停止中に前記窓の曇りが生じると判断された場合、前記指示手段を介した前記指示の有無にかかわらず、前記内燃機関を再始動させて且つ前記曇り除去手段に曇り除去制御を行わせる強制実行手段とを備えることを特徴とする内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項2】
前記強制実行手段は、前記内燃機関の再始動処理期間において同内燃機関の出力軸の回転力を前記圧縮機に伝達可能とするものであり、
前記曇り除去手段は、前記蒸発器により除湿された空気を車室内に供給することで前記除去する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項3】
前記車両は、蓄電池から給電されて前記内燃機関の出力軸に初期回転を付与する電動機を備えるものであり、
前記強制実行手段は、前記蓄電池の給電電圧が所定以下であると判断された場合、前記圧縮機による前記内燃機関の出力軸の回転力の消費を前記内燃機関の始動完了まで制限することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−281229(P2010−281229A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133649(P2009−133649)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】