説明

内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法

本発明は、内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法に関する。内燃機関(1)に関するストップモードの解放が、自動車の内室(9)の温度と、ドライバによって所望される目標温度との温度差に依存する期間に依存して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念によるスタート・ストップ装置を用いて自動車の内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法に関する。
【0002】
その種の方法はDE102 11 461 C1から公知である。この刊行物においては、ドライバによって内燃機関が始動された後に、複数のストップ条件に依存して内燃機関を自動的に停止させることが提案されている。これらのストップ条件のうちの1つは空調部のストップモードの解放であり、この解放も殊に自動車の内室において測定された温度に依存する。この測定された温度の値に関する条件はその温度が許容範囲内にあるということである。
【0003】
別の停止条件とのアンド結合として存在していなければならない別の停止条件は可変の遅延時間であり、この可変の遅延時間によってストップモードの解放、すなわち内燃機関の停止が遅延される。これによって、例えば接近する対向車両を回避する際の車両の操作時または短時間の停止時の不所望な自動的な停止が抑制されるべきである。
【0004】
基本的にスタート・ストップ自動装置を装備した自動車においては、内燃機関が停止すると補機内の空調コンプレッサも動作しないので空調装置を作動させることができないという問題が存在する。この問題の解決手段としては空調制御要求が存在する場合には基本的に内燃機関を停止できなくすることが考えられるが、このことは燃費の観点から不利である。同様に空調コンプレッサを通常の補機駆動装置から切り離して別個に電気的に駆動させることも考えられるが、これは費用がかかり、また電源搭載網を酷使するおそれがある。この場合電気的な駆動装置はベルトを介して補機を駆動させるスタータジェネレータでもよいが、クランク軸と補機駆動装置との間には切り換えクラッチが必要とされることになる。
【0005】
したがってこの背景における本発明の課題は、ドライバにとっての快適性が高い状態で内燃機関のスタート・ストップモードに関して燃費が好適である動作方式を保証する方法を提供することである。
【0006】
この課題の解決手段は請求項1の特徴部分より明らかになり、本発明の有利な構成および実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
したがって本発明は、ドライバによる内燃機関の始動後に複数のストップ条件に依存して内燃機関を自動的に停止させるスタート・ストップ装置を用いて自動車の内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法に関し、この方法においてストップ条件のうちの1つは殊に自動車の内室の温度に依存する空調装置の空調部のストップモードの解放であり、また別のストップ条件は所定の可変の期間の経過であり、この期間は内室の温度とドライバによって所望される目標温度との温度差に依存する。
【0008】
さらに本発明は、期間が空調装置の空調出力に依存する、すなわち空調コンプレッサの冷房出力に依存することを特徴とする。
【0009】
さらにはこの期間が相対的な空調出力に依存する場合は有利であり、この相対的な空調出力は空調部の空調出力と温度差の商である。
【0010】
本発明の別の実施形態においては前述の期間の終了が閾値の基本値に依存し、この基本値は相対的な空調出力に依存して特性マップから読み出される。この関係において特性マップとは必要に応じて、別の量に依存する量の経過を表すただ1つの曲線経過であってもよいと解される。
【0011】
さらに本発明は、閾値が基本値と学習係数との結合により計算されることを特徴とし、この学習係数はドライバ固有の走行様式を表す。
【0012】
さらに有利には、ドライバにより空調が要求されかつ内燃機関が停止している場合には、この空調要求によって期間の開始時点をセットするタイマがスタートされ、この期間の終了はタイマの目下の値と閾値とを比較することによって決定され、この閾値の値は温度差に依存する。タイマの開始によって論理的なマーカがセットされる。
【0013】
さらには、ドライバにより空調が要求されかつ内燃機関が運転している場合にはタイマの値が増分されて閾値と比較され、閾値を上回った場合にはタイマの目下の値によって空調部のストップモードの解放が行われることも本発明の構成要素である。
【0014】
有利には本発明による方法を用いることにより、前述の問題を解決するための付加的な機械的要素は完全に排除される。実施されるプロシージャはむしろ空調装置の動作特性のモデリングおよび車両の内室において測定および/または計算される温度のモデリングを行う。
【0015】
本発明による方法の経過においては、ドライバによって所望された時点において空調的な見地のもとで内燃機関のストップが可能であるか否かを確認する。過度に大きい温度差が存在する場合のみストップモードの解放は許可されずに、むしろドライバにとって内室は快適であることが保証される値にこの温度差が達するまで内燃機関は所定の期間さらに運転する。
【0016】
提案される方法は同様に、空調に関連させた内燃機関の再始動の制御を行う。
【0017】
本発明による方法は少なくとも1つの内室温度T_istを使用し、この内室温度は測定されるか、温度モデルにしたがい計算される。
【0018】
内室温度T_istを計算するために有利には車両内室の物理数学的な温度モデルが使用され、この温度モデルは車両の種々の動作条件下での車両内室における熱エネルギの流入ならびに流出を表す複数の量を考慮する。
【0019】
温度モデルによって考慮される量には例えば車両内室の幾何学および大きさ、車両内室の断熱特性、窓の面積の大きさ、車両内室に設けられておりスイッチオンされている電気負荷の数および電力、日光の照射による熱流入、ならびに内室暖房装置および換気装置による熱流入が属する。
【0020】
最後に、内室領域に関する複数の目標温度(T_soll)および複数の内室温度(T_ist)を本方法の実施時に求めることができる、ないし考慮することができる。
【0021】
本発明を説明するために明細書には図面が添付されている。以下ではこの図面に基づきさらなる特徴および利点を備えた実施例を詳細に説明する。図面において、
図1は本発明によるシステムの概略図であり、
図2は図1による概略的なシステムにおいて処理されるプログラムのフローチャートを示し、
図3は図2によるプログラムにおいて処理される値を決定する別のプログラムのフローチャートを示す。
【0022】
自動車のパワートレーンは内燃機関1を有し、この内燃機関1には電子的なモータ制御装置2が配属されている。内燃機関1のクランクシャフトはスタータジェネレータ3と直接的にもしくはベルトを介して結合されており、さらにはクラッチ4を介して伝動装置5と結合されており、この伝動装置5が自動車の車輪6に作用する。
【0023】
クラッチ4は摩擦クラッチまたはコンバータロックアップクラッチでよい。クラッチ4および伝動装置5には共通の制御装置7が配属されており、スタータジェネレータ3には制御装置8が配属されている。
【0024】
自動車の内室9には空調装置10が配属されており、この空調装置10は殊に空調部22およびブロワを包含する。内室9において温度センサ11が内室9を目下支配している温度T_istを検出する。
【0025】
システムを統括するパワートレーン管理部12は到来する多数の情報を処理し、同様に多数の信号および/または情報を種々のコンポーネントに転送する。つまり線路13,14および23を介して、アクセルペダル15、シフトセレクタ16ならびにブレーキペダル24の操作に関するドライバの要求を伝えるセンサ信号を受信する。
【0026】
シンボリックにブロック17に統合されているセンサまたは調整装置から別の信号がパワートレーン管理部12に供給される。ここでは例えば線路18を介してドライバによる空調装置10に関するスイッチオン要求またはスイッチオフ要求を伝える信号が伝送される。別の線路19は相応の操作フィールドを介してドライバが個別に入力する内室9に関する温度目標値T_sollを伝送する。
【0027】
制御装置2,7および8は相互に統合することができる、および/または、パワートレーン管理部12の統合された構成要素であってもよく、また同様にこのパワートレーン管理部12を制御装置2,7および8に分割することができる。
【0028】
パワートレーン管理部12の一部はスタート・ストップ装置20および評価回路21である。スタート・ストップ装置20においては殊に、図2と関連させて詳細に説明するプログラムが処理される。評価回路21は図3と関連させて詳細に説明するプログラムを有する。
【0029】
パワートレーン管理部12は、車両を運転する人間が個別に介入操作を行う必要はなく、所定の条件に依存して内燃機関1を自動的にストップまたはスタートさせる。遵守すべき条件、すなわちパワートレーン管理部12のスタート・ストップ装置20がストップを許可する条件の1つは、空調装置10によるこのスタート・ストップモードの解放である。
【0030】
この際に実行されるプログラムを図2のフローチャートに基づき説明する。
【0031】
ステップS1においては、空調装置10のスイッチオンに関するドライバ要求が読み込まれ、このドライバ要求が線路18を介して伝送される。ステップS2においては、空調の動作が要求されない場合に出力「ノー」を介して後にさらに説明するリセット可能な時間カウンタ(タイマT1)がステップS3においてリセットされる。さらにここでは詳細に説明しないこのリセットに関する他の条件も充足されている場合には、ステップS4において内燃機関1に関するスタート・ストップモードが即座に解放される。
【0032】
ステップS2において空調の動作が要求される場合(出力「イエス」)には、ステップS5においてスタート・ストップ装置20が目下のところ起動しているか、すなわち内燃機関1がスイッチオフされているか否かが確認される。肯定の場合(出力「イエス」)にはステップS6において、マーカM1が既にセットされているか否かの判定が行われる。否定の場合(出力「ノー」)の場合には、ステップS7においてタイマT1がスタートされ、ステップS8においてマーカM1がセットされる。
【0033】
タイマT1は最後の起動イベント以降の時間、すなわちドライバまたは内燃機関1のスタートによる空調装置10のスイッチオン以降の時間を表す。この際タイマT1のスタート時点は、タイマT1が停止されるまで開いている時間窓delta_tのスタート時点を規定する。
【0034】
マーカM1は、ドライバによる空調装置10のスイッチオフ時または内燃機関1のスタート時にリセットされる論理的な状態変数である。
【0035】
ステップS6においてマーカM1が既にセットされていた場合、すなわちステップS6からの出力が「イエス」である場合には、ステップS4において空調装置10によってスタート・ストップモードが解放される。
【0036】
ステップS8においてマーカM1がセットされた場合には、ステップS9においてタイマT1の目下の値が閾値SWと比較される。
【0037】
この閾値SWの算出を図2と関連させて以下詳細に説明する。
【0038】
ステップS9においてT1の値が閾値SWを上回る場合(出力「イエス」)には、ステップS3においてタイマT1が値0にリセットされ、ステップS4において解放が許可される。タイマT1の値が閾値SWを下回る場合、すなわちステップS9からの出力が「ノー」の場合には、スタート・ストップモードがステップS10において阻止される。
【0039】
スタート・ストップ装置20が目下のところアクティブではない場合、すなわち内燃機関1が動作している場合には、ステップS5からの出力「ノー」を介してステップS11においてタイマT1が既にスタートしているか否かが判定される。否定の場合(出力「ノー」)の場合には、前述のステップS6,S7,S8およびS9に基づきプログラムのさらなる処理が行われる。
【0040】
タイマT1が既にスタートしている場合、すなわちステップS11からの出力が「イエス」である場合には、タイマT1の値がステップS12において増分され、続いてこの増分が行われる度にその値が前述のステップS9において閾値SWと比較される。
【0041】
前述の方法は例えば10ミリ秒の周期で行われ、またこれによりステップS4またはS10を介して出力される論理的な解放変数はパワートレーン管理部12に伝送される。
【0042】
続いて閾値SWの算出方法を図3に基づき詳細に説明する。
【0043】
空調装置10はCANバスのインタフェース30を介して種々の情報を提供する。つまり矢印32,34,36,38および40を介して、図示していないセンサによって検出される目下の外部温度の値、内室9における操作フィールドを介してドライバにより入力される車両の内室の温度目標値T_soll、センサ11を介して求められる内室9の目下の温度実際値T_ist、前述の2つの温度値の差delta_T(T_soll−T_ist)ならびに空調装置10の調整された出力、すなわち冷房出力または暖房出力がステップS9.1に伝送される。
【0044】
このステップS9.1においては前述の情報に基づき、相対的な空調出力P_klima_relがワット単位の冷房出力と温度単位の温度差delta_Tの商として計算される。この相対的な冷房出力の値P_klima_relはステップS9.2において特性マップに供給される。特性マップはこの値に依存して秒単位の基本値GWを読み出す。例えば以下の表には、このいわゆるルックアップテーブルとして構成することができる特性マップからの幾つかの典型的な値の組が表されている:
P_klima_rel 基本値GW
(W/℃) (秒)
−500 120
−200 60
−100 30
0 0
100 30
200 60
500 120
【0045】
続いてこの基本値GWがステップS9.3において乗法的に学習係数L1と結合される。この学習係数L1は0から1と想定することができ、車両特性を個々のドライバの要求および走行方式に適合させることができる。
【0046】
最終的にステップS9.4においては閾値SWが基本値GWと学習係数L1との算術的な積として出力され、図2に基づき説明したステップS9に伝送される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるシステムの概略図。
【図2】図1による概略的なシステムにおいて処理されるプログラムのフローチャート。
【図3】図2によるプログラムにおいて処理される値を決定する別のプログラムのフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間による内燃機関(1)の始動後に複数のストップ条件に依存して前記内燃機関(1)を自動的に停止させるスタート・ストップ装置(20)を用いて自動車の前記内燃機関(1)を自動的にスタートおよびストップさせる方法であって、
前記ストップ条件のうちの1つは殊に前記自動車の内室(9)の温度(T_ist)に依存する空調装置(10)のストップモードの解放であり、別のストップ条件は所定の可変の期間の経過である、内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法において、
前記期間(delta_t)は前記内室(9)の温度(T_ist)とドライバによって所望される目標温度(T_soll)との温度差(delta_T)に依存することを特徴とする、内燃機関を自動的にスタートおよびストップさせる方法。
【請求項2】
前記期間(delta_t)は前記空調装置(10)の空調出力に依存する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記期間(delta_t)は相対的な空調出力(P_klima_rel)に依存し、該相対的な空調出力(P_klima_rel)は前記空調装置の前記空調出力と前記温度差(delta_T)の商である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記期間(delta_t)の終了は閾値(SW)の基本値(GW)に依存し、該基本値(GW)を前記相対的な空調出力(P_klima_rel)に依存して特性マップから読み出す、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記閾値(SW)は前記基本値(GW)と学習係数(L1)との結合から計算し、該学習係数(L1)はドライバ固有の走行様式を表す、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記ドライバにより空調が要求されかつ内燃機関(1)が停止している場合には、空調の要求によって前記期間(delta_t)の開始時点をセットするタイマ(T1)がスタートされ、該期間(delta_t)の終了は前記タイマ(T1)の目下の値と前記閾値(SW)とを比較することによって決定され、該閾値の値は前記温度差(delta_T)に依存する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記タイマ(T1)の開始によって論理的なマーカ(M1)をセットする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ドライバにより空調が要求されかつ内燃機関(1)が運転している場合には前記タイマ(T1)の値を増分して前記閾値(SW)と比較し、該閾値(SW)を上回った場合には前記タイマ(T1)の目下の値によって前記空調装置(10)のストップモードの解放を行う、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記内室温度(T_ist)を測定する、または温度モデルにしたがい計算する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記内室温度(T_ist)の計算に車両の内室の物理数学的な温度モデルを使用し、該温度モデルは前記車両の種々の動作条件下での熱エネルギの流入ならびに流出を表す複数の量を考慮する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記温度モデルの量には車両内室の幾何学および大きさ、断熱特性、窓の面積の大きさ、車両内室に設けられておりスイッチオンされている電気負荷の数および電力、日光の照射による熱流入、ならびに内室暖房装置および換気装置による熱流入が属する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
内室領域に関する複数の目標温度(T_soll)および複数の内室温度(T_ist)を求めて考慮する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
同様に空調に関連させた前記内燃機関の再始動を制御する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518914(P2007−518914A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544411(P2006−544411)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053184
【国際公開番号】WO2005/059354
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】