説明

内燃機関

【課題】簡単な構成によりピストンを冷却すること。
【解決手段】この内燃機関10は、ピストン30の内部にリブ31を備える。リブ31は、コネクティングロッド17の小端部17stを囲むように配置される。そして、リブ31と、コネクティングロッド17の小端部17stと、コネクティングロッド17の小端部17stを貫通するピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分は、潤滑油Lが溜められる冷却媒体溜め30rとなる。この冷却媒体溜め30rに潤滑油Lが供給されて、ピストン30を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内をピストンが往復運動して動力を発生する内燃機関におけるピストンの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ内をピストンが往復運動して動力を発生する、いわゆるレシプロ式の内燃機関では、運転中に潤滑油等を用いて、ピストンを冷却する必要がある。例えば、特許文献1には、ピストン本体とピンボス部とを別体として形成することにより、ピンボス部の上縁外周部に周溝を設けて構成したリング状のオイルチャンネルにオイルを流通させるピストン冷却装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−196362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているピストン冷却装置では、ピストンをピストン本体とピンボス部とで構成するため構造が複雑になり、ピストンの質量増加、生産効率悪化、生産コストの増加を招く。そこで、この発明は上記に鑑みてなされたものであり、簡単な構成によりピストンを冷却できる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内燃機関は、燃焼室の反対側におけるピストンの頂部に設けられるとともに、ピストンの往復運動をクランク軸に伝えるコネクティングロッドの小端部を囲む仕切り部材と、前記仕切り部材と、前記コネクティングロッドの小端部と、前記コネクティングロッドの小端部を貫通するピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分に冷却媒体が溜められる冷却媒体溜めと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0006】
この内燃機関は、ピストン頂部のコネクティングロッド取付側に設けられる仕切り部材と、コネクティングロッドの小端部と、コネクティングロッドをピストンに組み付けるピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分に冷却媒体が溜められる冷却媒体溜めを備える。そして、この冷却媒体溜めに冷却媒体を導入して、ピストンを冷却する。冷却媒体溜めは、ピストン頂部のコネクティングロッド取付側に仕切り部材を設けるだけで構成することができるので、簡単な構成によりピストンを冷却できる。
【0007】
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記コネクティングロッドの小端部と前記ピストンとの間で、前記ピストンピンの貫通方向と平行な方向における前記ピストンと前記コネクティングロッドとの位置を規定することを特徴とする。
【0008】
この内燃機関は、前記内燃機関の構成を備えるので、前記内燃機関と同様の作用、効果を奏する。さらに、この内燃機関では、コネクティングロッドの小端部とピストンとの間で、ピストンとコネクティングロッドとの位置を規定する。これによって、コネクティングロッドの大端部とクランク軸18との間の摩擦を低減できるので、内燃機関全体の摩擦を低減できる。
【0009】
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記冷却媒体溜め内の冷却媒体を、前記ピストンの外周側へ導く冷却媒体通路を備えるとともに、前記ピストンの側周部の内面に、前記ピストンの中心側に湾曲した湾曲部を設けることを特徴とする。
【0010】
この内燃機関は、前記内燃機関の構成を備えるので、前記内燃機関と同様の作用、効果を奏する。さらに、この内燃機関では、ピストンの側周部の内面に、ピストンの中心側に湾曲した湾曲部を設ける。これによって、シリンダの内面に付着する冷却媒体(内燃機関の潤滑油)の消費を抑制することができる。
【0011】
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記冷却媒体溜めには、前記コネクティングロッドの小端部に開口する冷却媒体吐出口から冷却媒体が供給されることを特徴とする。
【0012】
この内燃機関は、前記内燃機関の構成を備えるので、前記内燃機関と同様の作用、効果を奏する。さらに、この内燃機関では、コネクティングロッドの小端部に開口する冷却媒体吐出口から冷却媒体溜めに冷却媒体が供給される。これによって、確実に冷却媒体溜めに冷却媒体を供給することができる。また、冷却媒体吐出口を複数設けることにより、冷却媒体溜め内の冷却媒体に流動を起こさせることができる。その結果、より効率的にピストンを冷却することができる。
【0013】
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記仕切り部材に、前記冷却媒体溜めに冷却媒体を導入する冷却媒体取り入れ口を設け、前記冷却媒体取り入れ口に冷却媒体を吐出することを特徴とする。
【0014】
この内燃機関は、前記内燃機関の構成を備えるので、前記内燃機関と同様の作用、効果を奏する。さらに、この内燃機関では、仕切り部材に設けた冷却媒体取り入れ口から冷却媒体溜めに冷却媒体を導入する。例えば、内燃機関に予め備えられている潤滑油噴射手段から噴射される潤滑油(冷却媒体)を、冷却媒体溜めに導入できる。これによって、既存の構造を有効に利用できる。また、冷却媒体溜めに潤滑油を溜めるので、コネクティングロッドやクランク軸等による潤滑油の攪拌を抑制して、内燃機関全体の摩擦を低減できる。
【0015】
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記冷却媒体取り入れ口には、前記ピストンの上死点近傍、又は下死点近傍の位置で、冷却媒体を吐出することを特徴とする。
【0016】
この内燃機関は、前記内燃機関の構成を備えるので、前記内燃機関と同様の作用、効果を奏する。さらに、この内燃機関では、ピストンの上死点近傍、又は下死点近傍の位置で、冷却媒体取り入れ口に冷却媒体を吐出する。これにより、ピストンの速度が小さい時期に冷却媒体を吐出することができるので、確実に冷却媒体溜めへ冷却媒体を供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る内燃機関は、簡単な構成によりピストンを冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本発明は、ピストンを備える内燃機関であれば適用できるが、特に乗用車やバス、あるいはトラック等の車両に搭載される内燃機関に対して好ましく適用できる。
【0019】
この実施形態は、次の点に特徴がある。すなわち、ピストン頂部のコネクティングロッド取付側に設けられる仕切り部材と、コネクティングロッドの小端部と、コネクティングロッドをピストンに組み付けるピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分に冷却媒体が溜められる冷却媒体溜めを備える。そして、この冷却媒体溜めに冷却媒体を導入して、ピストンを冷却する点に特徴がある。
【0020】
図1は、この実施形態に係る内燃機関が備える1の気筒を示す断面図である。この実施形態に係る内燃機関10は、シリンダ11s内でピストン30が往復運動する、いわゆるレシプロ式の火花点火式の内燃機関である。この実施形態に係る内燃機関10は、吸気通路を構成する吸気ポート13i内に燃料Fを噴射するポート噴射弁14を備える。なお、シリンダ11sの燃焼室11b内へ直接燃料Fを噴射する直噴噴射弁を備える、いわゆる直噴の内燃機関にも本発明は適用できる。また、吸気ポート13i内に燃料Fを噴射するポート噴射弁14と直噴噴射弁とにより燃料を噴射する、いわゆるデュアル噴射弁の内燃機関にも本発明は適用できる。
【0021】
この実施形態に係る内燃機関10は、吸気通路に設けられる電子スロットル弁70により吸入空気量が調整される。機関ECU3は、アクセル開度センサ41からの出力を取得して、電子スロットル弁70を適切な開度に制御する。なお、内燃機関10に使用するスロットル弁は、電子スロットル弁70に限られるものではない。
【0022】
この実施形態に係る内燃機関10は、シリンダヘッド11hに点火プラグ12を備えており、燃焼室11b内に形成される燃料と空気との混合気に点火する。機関ECU3は、アクセル開度センサ41、内燃機関10に取り付けられるクランク角度センサ42、エアフローセンサ43その他の各種センサ類から出力信号を取得し、内燃機関10の運転を制御する。アクセル開度センサ41は、アクセルペダル41pに取り付けられており、運転者の加減速や車両速度調整の意思を検出して、内燃機関10の運転制御に反映させる。
【0023】
内燃機関10に供給される空気Aは、エアフローセンサ43で流量が測定された後、電子スロットル弁70を通過してから吸気通路の一部である吸気ポート13iへ流入する。そして、ポート噴射弁14から噴射される燃料Fと混合気を形成する。この混合気は、吸気ポート13iから吸気弁15iを通って燃焼室11b内に導入される。燃焼室11b内へ導入された混合気は、点火プラグ12で着火されて、火炎伝播により燃焼する。そして、混合気の燃焼圧力によりピストン30が往復運動し、この往復運動はコネクティングロッド17を介してクランク軸18へ伝達される。そして、ピストン30の往復運動はクランク軸18で回転運動に変換されて、内燃機関10の出力として取り出される。
【0024】
この実施形態に係る内燃機関10が備えるピストン30は、内部にリブ31を備えている。リブ31は、コネクティングロッド17の小端部を囲むように設けられており、リブ31とコネクティングロッド17の小端部とピストン30の頂部内側とピストンピン取付座とで囲まれる空間を有する。前記空間には、オイルポンプ2により送り出される潤滑油Lが、コネクティングロッド17の内部に設けられる潤滑油通路17cから供給されて、ピストン30を冷却する。なお、オイルポンプ2はクランク軸18によって駆動され、内燃機関10のクランクケース16の下部に設けられるオイルパン16Pに集められた潤滑油を吸引し、吐出する。次に、ピストン30の構造について、より詳細に説明する。
【0025】
図2は、この実施形態に係る内燃機関が備えるピストンの構造を示す平面図である。図3は、図2に示すピストンを、図2の矢印A側から見た底面図である。図2、図3に示すように、燃焼室11bの反対側におけるピストン頂部30t、すなわちピストン頂部30tのコネクティングロッド取付側(ピストン頂部30tの内側ともいう)には、仕切り部材である板状のリブ31が設けられている。リブ31は、ピストンピン32とリブ面が平行に配置されるとともに、ピストンピン取付座33の両脇に配置される。そして、ピストンピン取付座33とリブ31とで、コネクティングロッド17の小端部17stを囲むように配置される。なお、ピストンピン32が小端部17stを貫通する方向におけるリブ31の長さは、前記方向における小端部17stの長さよりも大きければよい。
【0026】
これによって、このピストン30は、ピストン頂部30tの内側に、リブ31とコネクティングロッド17の小端部17stとピストン頂部30tとピストンピン取付座33とで囲まれる冷却媒体溜め30rを有する。コネクティングロッド17の小端部17stには、冷却媒体である潤滑油Lをピストン30の内部に向かって吐出する冷却媒体吐出口17coが設けられる。潤滑油Lは、コネクティングロッド17の内部に設けられる潤滑油通路17cを通り、コネクティングロッド17の小端部17stの内面であってピストンピン32の周囲に形成される溝17csを通って、冷却媒体吐出口17coから吐出される。
【0027】
冷却媒体吐出口17coは、前記冷却媒体溜め30rに開口しているので、潤滑油Lは前記冷却媒体溜め30r内に吐出される。これにより、前記冷却媒体溜め30rは擬似的なクーリングチャンネルとして機能するので、ピストン30を効率的に冷却することができる。なお、冷却媒体溜め30r内に吐出された潤滑油Lは、リブ31とコネクティングロッド17の小端部17stとの隙間から排出される。
【0028】
冷却媒体溜め30r内は、冷却媒体吐出口17coから吐出される潤滑油Lで満たしてもよいし、図2に示すように、冷却媒体溜め30rを潤滑油Lで満たさず、潤滑油Lが存在しない空間を設けるようにしてもよい。後者のようにすると、ピストン30の往復運動によって冷却媒体溜め30r内で潤滑油Lがはね上げられ、ピストン頂部30tに衝突するので、効率的にピストン30を冷却することができる。また、冷却媒体溜め30rに潤滑油Lを吐出することで、コネクティングロッド17の小端部17stとピストンピン取付座33との潤滑性能や、ピストンピン32とコネクティングロッド17の小端部17stとの潤滑性能が向上する。
【0029】
また、ピストン頂部30tの熱Hは、リブ31を通って放熱されるので、ピストン30の放熱面積が大きくなる。これによって、すなわち、リブ31がヒートシンクとして機能するため、ピストン30の冷却効率が向上する。なお、リブ31に向かって潤滑油吐出ノズル4から潤滑油Lを噴き付けて、リブ31を冷却してもよい。この場合、コネクティングロッド17の小端部17stに設けられる冷却媒体吐出口17coから潤滑油Lを吐出しなくてもよい。しかし、前記冷却媒体吐出口17coから潤滑油Lを吐出すれば、ピストン30をより効率よく冷却することができる。なお、リブ31の放熱性能を向上させるため、リブ31の表面にフィンを形成してもよい。
【0030】
さらに、リブ31を設けることによって、ピストン30を補強し、その剛性を向上させることができる。すなわち、ピストン30は燃焼ガスの圧力を受けて、ピストン頂部30tがたわむが、このたわみを抑制することができる。このように、リブ31によってピストン30全体の剛性を向上させることができるので、ピストン頂部30tの肉厚等を薄くして軽量化を図ることもできる。ここで、この実施形態に係るピストン30は、前記冷却媒体溜め30rを形成するため、リブをピストン30のボア側ではなく、中心側に配置するが、これによって、前記たわみをより効果的に抑制できる。
【0031】
図4は、この実施形態に係るピストンとコネクティングロッドとクランク軸との取り付け構造を示す説明図である。この実施形態に係る内燃機関10は、コネクティングロッド17の小端部17stとピストン30との間でクランク軸18の方向に対する位置決めをする。より具体的には、コネクティングロッド17の小端部17stに形成される小端部摺動面17spと、ピストンピン取付座33の取付座摺動面33ipとで、内燃機関10内におけるピストン30とクランク軸18との位置関係を規定する。このために、小端部摺動面17spと取付座摺動面33ipとの間隔は、前記位置決めに適した間隔に厳密に規定されるとともに、小端部摺動面17spと取付座摺動面33ipとは、ピストンピン32の軸方向に対して直交する。
【0032】
コネクティングロッド17の小端部17stとピストン30との間で位置決めするため、コネクティングロッド17の大端部17ltとクランク軸18との間で位置決めする必要はない。このため、コネクティングロッド17の大端部17ltの大端部摺動面17lpとクランク軸摺動面18ipとの間隔は程度の大きさを確保できるので、コネクティングロッド17の大端部17ltとクランク軸18との間の摩擦を低減できる。
【0033】
一方、コネクティングロッド17は、ピストンピン32を中心とした揺動運動をするため、コネクティングロッド17の小端部17stとピストンピン取付座33との間の摩擦は、コネクティングロッド17の大端部17ltとクランク軸18との間の摩擦に比較して小さい。このため、コネクティングロッド17の小端部17stとピストン30との間でクランク軸18の方向に対する位置決めをすれば、コネクティングロッド17の大端部17ltとクランク軸18との間で前記位置決めする場合と比較して、内燃機関10全体の摩擦を小さくすることができる。
【0034】
この実施形態に係る内燃機関10は、コネクティングロッド17の小端部17stとピストン30との間でクランク軸18の方向に対する位置決めをするため、小端部摺動面17spと取付座摺動面33ipとの間隔は、前記位置決めに適した間隔に厳密に規定される。このため、小端部摺動面17spと取付座摺動面33ipとの潤滑が不十分になるおそれがある。しかし、この実施形態に係る内燃機関10が備えるピストン30は、ピストン頂部30tの内側に、リブ31とコネクティングロッド17の小端部17stとピストン頂部30tの内側とピストンピン取付座33とで囲まれる冷却媒体溜め30rを有する。そして、この冷却媒体溜め30rに、コネクティングロッド17の小端部17stから潤滑油Lを吐出する。これによって、小端部摺動面17spと取付座摺動面33ipとが十分に潤滑される。
【0035】
図5は、この実施形態の他の例に係るピストンの構成を示す断面図である。このピストン30aは、コネクティングロッド17aの小端部17astに、複数の冷却媒体吐出口17coが設けられる。これによって、冷却媒体溜め30ar内へ冷却媒体溜め30ar内へ潤滑油Lの流動を起こさせることができるので、ピストン30をより効率的に冷却することができる。また、冷却媒体吐出口17coを追加するだけなので、簡単に構成することができる。
【0036】
図6は、この実施形態の他の例に係るピストンの構成を示す断面図である。図7は、図6に示すピストンを、図6の矢印A側から見た底面図である。このピストン30bは、リブ31bにリブ側潤滑油吐出通路31boを設けるとともに、ピストンピン取付座33bには、取付座側冷却媒体吐出通路33boを設ける。そして、冷却媒体溜め30brの潤滑油Lを、リブ側冷却媒体通路31bo及び取付座側冷却媒体吐出通路33boからピストン30bの内部に向かって吐出させる。これによって、ピストン30bをより効率的に冷却することができる。
【0037】
(変形例1)
図8は、この実施形態の第1変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。このピストン30cは、ピストンピン取付座33cに設けた冷却媒体通路33ccから、ピストン30cの側周部内面に向かって潤滑油Lを吐出させる。ピストン30cの側周部内面にはピストン30cの中心側に湾曲した湾曲部30cirが形成されているので、ピストン30cの側周部内面に向かって吐出された潤滑油Lは、湾曲部30cirでピストン30cの中心側に向かって流れる。これによって、シリンダ11sの内壁に付着する潤滑油Lを低減できるので、潤滑油の消費を抑制することができる。
【0038】
また、第1変形例に係るピストン30cは、側周部内面の一部の裾部がシリンダ11sの内面に向かって広がって傾斜部30cisを形成する。これによって、ピストン30cの側周部内面に向かって吐出された潤滑油Lの一部は、潤滑油Lはシリンダ11sの内面に付着する。これによって、始動の初期から確実にシリンダ11sとピストン30cとの潤滑をして、摩擦の低減を図ることができる。このように、このピストン30cでは、潤滑油の消費を抑制しつつ、始動初期から潤滑を確保することができる。
【0039】
(変形例2)
図9は、この実施形態の第2変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。このピストン30dは、リブ31dに設けた冷却媒体取り入れ口である潤滑油取り入れ口31dwを設ける。そして、潤滑油吐出ノズル4から潤滑油取り入れ口31dwに向かって潤滑油Lを吐出し、リブ31d内の冷却媒体溜め30drへ潤滑油を導入する。これによって、リブ31dの冷却とともに、冷却媒体溜め30dr内の冷却をすることができる。
【0040】
また、このピストン30dでは、潤滑油吐出ノズル4に、機関ECU3で制御される制御弁5を設ける。そして、ピストン30dの速度が遅くなる位置、例えば、上死点近傍や下死点近傍で制御弁5を開き、潤滑油吐出ノズル4からリブ31dに設けられた潤滑油取り入れ口31dwに向かって潤滑油Lを吐出する。これによって、余分に潤滑油を噴射せずに冷却媒体溜め30dr内へ確実に潤滑油を供給することができる。
【0041】
(変形例3)
図10は、この実施形態の第3変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。このピストン30eは、ピストン頂部30etのコネクティングロッド17側に、潤滑油導入溝30esが形成される。この潤滑油導入溝30esは、リブ31eで仕切られる冷却媒体溜め30erの内部と外部とを連通させるように形成される。そして、潤滑油吐出ノズル4から潤滑油導入溝30esに向かって潤滑油Lを吐出し、リブ31e内の冷却媒体溜め30erへ潤滑油Lを導入する。これによって、前記冷却媒体溜め30er内へ潤滑油Lを導入しやすくなる。
【0042】
以上、この実施形態及びその変形例では、ピストン頂部のコネクティングロッド取付側に設けられる仕切り部材と、コネクティングロッドの小端部と、コネクティングロッドをピストンに組み付けるピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分に冷却媒体が溜められる冷却媒体溜めを備える。そして、この冷却媒体溜めに冷却媒体を導入して、ピストンを冷却する。冷却媒体溜めは、ピストン頂部のコネクティングロッド取付側に仕切り部材を設けるだけで構成することができるので、簡単な構成によりピストンを冷却できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明に係る内燃機関は、シリンダ内をピストンが往復する、いわゆるレシプロ式の内燃機関に有用であり、特に、ピストンを冷却することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この実施形態に係る内燃機関が備える1の気筒を示す断面図である。
【図2】この実施形態に係る内燃機関が備えるピストンの構造を示す平面図である。
【図3】図2に示すピストンを、図2の矢印A側から見た底面図である。
【図4】この実施形態に係るピストンとコネクティングロッドとクランク軸との取り付け構造を示す説明図である。
【図5】この実施形態の他の例に係るピストンの構成を示す断面図である。
【図6】この実施形態の他の例に係るピストンの構成を示す断面図である。
【図7】図6に示すピストンを、図6の矢印A側から見た底面図である。
【図8】この実施形態の第1変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。
【図9】この実施形態の第2変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。
【図10】この実施形態の第3変形例に係るピストンの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 オイルポンプ
10 内燃機関
11s シリンダ
11h シリンダヘッド
11b 燃焼室
16 クランクケース
17、17a コネクティングロッド
17c 潤滑油通路
17st、17ast 小端部
17lt 大端部
17co 冷却媒体吐出口
18 クランク軸
30、30a、30b、30c、30d、30e ピストン
30t、30et ピストン頂部
30cir 湾曲部
31、31b、31d、31e リブ
31dw 潤滑油取り入れ口
33、33b、33c ピストンピン取付座
33cc 冷却媒体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室の反対側におけるピストンの頂部に設けられるとともに、ピストンの往復運動をクランク軸に伝えるコネクティングロッドの小端部を囲む仕切り部材と、
前記仕切り部材と、前記コネクティングロッドの小端部と、前記コネクティングロッドの小端部を貫通するピストンピンを支持するピストンピン取付座とで囲まれた部分に冷却媒体が溜められる冷却媒体溜めと、
を含んで構成されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記コネクティングロッドの小端部と前記ピストンとの間で、前記ピストンピンの貫通方向と平行な方向における前記ピストンと前記コネクティングロッドとの位置を規定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記冷却媒体溜め内の冷却媒体を、前記ピストンの外周側へ導く冷却媒体通路を備えるとともに、前記ピストンの側周部の内面に、前記ピストンの中心側に湾曲した湾曲部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記冷却媒体溜めには、前記コネクティングロッドの小端部に開口する冷却媒体吐出口から冷却媒体が供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記仕切り部材に、前記冷却媒体溜めに冷却媒体を導入する冷却媒体取り入れ口を設け、前記冷却媒体取り入れ口に冷却媒体を吐出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記冷却媒体取り入れ口には、前記ピストンの上死点近傍、又は下死点近傍の位置で、冷却媒体を吐出することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−120364(P2007−120364A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311783(P2005−311783)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】