説明

内皮依存性血管作用を決定するための方法

被験者の内皮依存性血管作用を決定する方法であって、少なくとも一つの血管に隣接する複数の位置の圧力関連信号を記録すること;前記圧力関連信号から少なくとも一つのパラメータを抽出すること;および前記少なくとも一つのパラメータを使用して前記少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特性の変化を決定し、前記変化が内皮機能を表わすものであり、それによって被験者の内皮依存性血管作用を決定することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内皮依存性血管作用(endothelial dependent vasoactivity)の測定に関し、さらに詳しくは、内皮依存性血管作用を決定するための非侵襲的な方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血行力学は、血液を心血管系全体に循環させるために心臓がもたらさなければならない力を取り扱う、心血管生理学の中の一区分である。医師に対し、これらの力は、心血管系の異なるポイントで同時に測定された血圧および血流量の一対の値として明示される。
【0003】
脈管構造内の血液の流れは脈動性を有する。心臓が収縮すると、左心室内に含まれる血液の部分が大動脈内に押し出され、そこから血液は心血管系全体に流れる。血液は非圧縮性流体であるので、血流に対し抵抗を示す脈管構造にそれが押し出されるときに、血圧が発生する。心室の収縮中、動脈圧はその最高値、収縮期レベルまで増加する。心周期の弛緩期(拡張期)に肺からの酸素を含んだ血液が左心室に再び充填され、心室が大動脈弁によって脈管構造から切り離されているときに、脈管構造の血圧はその最下レベルまで低下する。
【0004】
体表面積によって正規化され、一回拍出量としても知られる、各心拍で送り出される血液の量は、一回拍出係数(SI)として知られている。血圧の平均値は平均動脈圧(MAP)と呼ばれる。SIおよびMAPの値は、幾つかの血行力学的モジュレータすなわち(i)血管内容量、(ii)変力性、(iii)スターリング効果、および(iv)血管作用による調節の結果である。
【0005】
血管内容量とは、脈管構造内を循環する流体の量である。このモジュレータは、例えば脱水症、利尿、脾臓の静脈収縮、心不全または腎不全による容量過負荷、および類似物によって影響されることがあり得る。
【0006】
変力性とは、心筋が収縮する能力である。ミオサイトは、収縮の強さを変動させることのことのできる唯一の筋細胞である。変力性は、心筋の収縮を増大する運動、ストレス、および医薬品によって、または収縮の強さの低下によって発現される心不全のような心臓病によって影響を受け得る。心筋の収縮性は、変力状態のレベルに瞬時に影響する陽性および陰性変力性によって制御される。変力性の変化は、心室による力および圧力の発生の速度を変化させる。
【0007】
心臓は、前負荷が増大したときに、収縮の力を増大させる本質的な能力を有する。前負荷は、周知のスターリングの法則を介して、筋節の長さに関連付けられる。
【0008】
血管作用とは、血管が拡張および収縮する能力を指す。血管作用を通して、身体は個々の器官を通過する血液の流れを制御し、血流の変動に適応し、動脈圧を調整する。
【0009】
血管の内皮依存性弛緩は、血管の周囲の内皮(血管の最内細胞層)による非プロスラノイド血管拡張物質の放出のせいである。内皮誘導弛緩因子は、血小板凝集中に生成される様々な刺激物質によって放出される、酸化窒素(NO)であると信じられる。トロンビンおよび血小板生成物の内皮作用は、正常な内皮によって果たされる望ましくない凝固を防止する役割にとって不可欠である。したがって、トロンビンの生成と共にセロトニンおよびADPの放出を伴う局所的血小板凝集は、NOの大規模の局所的放出を導く。NOは、下にある血管平滑筋に向かって拡散し、その緩和を誘発し、したがって動脈の拡張に寄与する。血管へのNOの放出はまた、内皮血管界面における血小板の接着を阻止し、血小板凝集に対する主要なフィードバックを発揮し、よって血管閉塞の差し迫った危険性を排除する。加えて、内皮障壁は血小板誘導血管収縮物質が平滑筋に到達するのを防止する。NOはまた、流動媒介血管作用および増大する交感神経作用(アルファ受容体刺激)のような他の刺激によっても放出し得る。
【0010】
内皮機能障害としても知られる、内皮依存性血管作用の機能不全は、心血管系疾患の発病の初期事象である。内皮機能障害および冠動脈疾患はまた、超過体重、肥満、高血圧、高コレステロール血症、高脂血症、真性糖尿病、喫煙、およびホモシステインにも関連付けられる。さらに血管内皮は、血栓症に関係する幾つかのプロセスに基本的な役割を果たす。内皮機能障害はまた、血管調節、血小板、および単球接着に対するその影響を通して、アテローム硬化症の発達を促進することもある。
【0011】
総コレステロールの濃度の上昇および低濃度リポタンパクコレステロールは、冠動脈性心疾患の有無に関係なく、内皮機能障害に関連付けられることを、幾つかの研究が実証している。[Robert A.Vogel、「Coronary risk factors,Endothelial function,and atherosclerosis:A review」、Clin.Cardiol 1997、20:426−432;Robert A.Vogelら、「Changes in flow−mediated brachial artery vasoactivity with lowering of desirable cholesterol levels in healthy middle aged men」、The American journal of cardiology 1996、77;Kensuke Egashiraら、「Reduction in serum cholesterol with pravastatin improves endothelim dependent coronary vasomotion in patients with hypercholesterolemia」、Circulation 1994、89 No 6]。さらに、高密度リポタンパクコレステロールの濃度低下、および総リポタンパクコレステロール対高密度リポタンパクコレステロールの比率の上昇も、内皮機能障害に関連付けられた。
【0012】
喫煙は内皮機能を大いに損傷する[Robert W.Stadlerら、「Measurment of the time course of peripheral vasoactivity:results in cigarette smokers」、Atherosclerosis 1998 138:197−205;David S.Celermajerら、「Cigarette smoking is associated with dose−related and potentially reversible impairment of endothelium−dependent dilation in healthy young adults」、Circulation 1993、88、No 5、part 1]。内皮機能は、能動および受動喫煙者の両方で、用量依存的に低下した。喫煙の停止は、内皮機能の改善に関連付けられた。
【0013】
内皮機能障害は、他の冠動脈危険因子が存在するか否かに関わらず、約40歳以上の男性および約55歳以降の女性で増加している。年齢による内皮機能疾患の特定の原因はまだ不明である。エストロゲンは、年齢に関係する内皮機能の性差に関連付けられる主要な因子であるように思われる。
【0014】
内皮機能に影響する他の因子として、高血圧[Perticone Fら、「Prognostic significance of endothelial dysfunction in hypertensive patients」、Circulation 2001、104:191−196]、糖尿病[Cosentino Fら、「Endothelial dysfunction in diabetes mellitus」、J Cardiovasc Pharmacol、1998、32:54−61;Cosentino Fら、「High glucose causes upregulation of Cyclooxygenase−2 and alters prostanoid profile in human endothelial cells.Role of protein kinase C and reactive oxygen species」、Circulation 2003、107:1017−1023]、ダイエットおよび身体運動[Brendle Dら、「Effects of exercise rehabilitation on endothelial reactivity in older patients with peripheral arterial disease」、Am J Cardiol 2001、87:324−329]が挙げられる。
【0015】
内皮機能障害に関連付けられるあらゆる種類の様々な疾患、内皮異常の性質、および血管作用に対する潜在的治療の効果はまだ確定されていない。それにも拘わらず、動脈内皮機能の測定は、内皮機能障害関連疾患を早期段階で診断するために、例えばアテローム硬化症を狭窄前の段階で診断評価するために、最も重要である[Vanhoutte.P.M.、「Endothelial dysfunction and atherosclerosis」、Eur Heart J、1997:18(sup E)E19−E29;Robert A.Vogel、1997、前出;Mary C.Correttiら、「Guidelines for the ultrasound assessment of endothelial−dependent flow−mediated vasodilatation of the brachial Artery」、JACC 2002、39:257−65;Widlansky ME、Gokee N、Keaney JF Jr、Vita JA、J、「The clinical implications of endothelial dysfunction」、J Am Coll Cardiol 2003、42:1149−60]。
【0016】
NOの正常な放出は、動脈硬化症のみならず、血栓症のような他の主要な因子をも防止および/または減弱する[Robinson Joannidesら、「Nitric oxide is responsible for flow−dependent dilatation of human peripheral conduit arteries in vivo」、Circ.1995、91:1311−12;Ian B.Wilksonら、「Nitric oxide regulates local arterial distensibility in−vivo」、Circ.2002、105:213−217]。
【0017】
冠動脈の内皮機能障害が内皮上腕、撓骨、および頸動脈機能障害を随伴することを、多くの研究は実証してきた[Correttiら、2002、前出;Tod J.Andersonら、「Close relation of endothelial function in the human coronary and peripheral circulations」、JACC 1995、26:1235−41;David S.Celermajerら、「Endothelium−dependent dilation in the systemic arteries of asymptomatic subjects relates to coronary risk factors and their interaction」、JACC 1994、24:1468−74;Sorensen KEら、「Atherosclerosis in the human brachial artery」、JACC 1997、29:318−22]。さらに、冠動脈疾患は大動脈および頸動脈のアテローム硬化症に関係することが明らかになった[Khoury Zら、「Relation of coronary artery disease to atherosclerothic disease in aorta,carotid,and femoral arteries evaluated by ultrasound」、Am J Cardiol 1997、80:1429−1433]。
【0018】
冠動脈における内皮依存性血管反応性(EDV)の評価は、薬理学的または機械的刺激による末梢血管の直径の変化の測定によって実行することができる。
【0019】
血管の内径を測定するための一つの方法は、血管内カテーテルおよびそれに装着された超音波トランスデューサアレイを有する、血管内超音波装置による。血管内カテーテルは、関心のある動脈内に直接挿入され、それによって内径が決定される。
【0020】
そのような装置は非常に侵襲性が高く、高価であり、かつ操作するのに費用の高い技術的専門知識を必要とする。
【0021】
血管の血管内直径を測定するための別の公知の装置は、長尺の可撓性シースとシースより長いカテーテルとを有する。シースは、血管内直径より小さい外径を有する。カテーテルの近端はシースの近端から外方に延び、カテーテルから延びるセンサの位置に正比例する測定目盛を含む。シースが血管内に挿入され、カテーテルがシースに対して内方に移動すると、血管内直径を測定目盛から直接読み取ることができる。
【0022】
しかし、この装置は、単純でありかつ高価ではないが、依然として非常に侵襲性が高く、かつ血管作用を決定する目的のために必要な精度を欠く。
【0023】
高分解能の非侵襲性超音波システムによる、動脈直径の測定用の非侵襲的方法も当業界で公知である。一つのそのような方法では、医師は超音波トランスデューサを操作して、上腕動脈の適切な超音波画像を、その動脈の直径を測定するために得る。しかしこの方法は時間がかかり、かつ測定中にトランスデューサを安定的に保持するために、高度に訓練された医師または技師を必要とする。
【0024】
別のそのような方法では、超音波撮像プローブを走査するロボットアームを有する自動測定システムが使用される。システムは超音波撮像プローブを適切な位置まで自動的にナビゲートし、手動測定に比較して改善された再現性で、上腕動脈の直径の変化を測定する。
【0025】
しかし、この手順は非常にコストがかかり、高度に熟練した人員および設備を必要とし、それによって大規模の高リスク集団での内皮機能障害の評価における標準的臨床手順となる能力を欠く。
【0026】
自律神経系(ANS)は、心血管機能の制御に主要な役割を果たす。心拍数、心臓の興奮性および収縮性は、絶えず副交感−交感神経バランスの影響下にある。副交感神経および交換神経線維は洞房結節を神経支配する。副交感神経の影響は抑制性である一方、交感神経の影響は興奮性である。洞房結節への副交感神経繊維は、末梢神経受容体(圧受容体、化学受容体、心臓、肺、および気道受容体)からの抑制性および興奮性の入力によって駆動される。洞結節における心拍数の行動適応的影響は、心臓迷走神経ニューロンへの上髄入力によって仲介される。心臓の交感神経性の神経支配の起点は、脊髄のT2−T5セグメントおよび頸神経節の節前繊維シナプスに位置する。
【0027】
正常な心機能は、心臓への交感神経系および副交感神経系の流出量の複合的バランスによって調整される。このバランスは不整脈への感受性にも関与する。迷走神経作用は保護的役割を持つ一方、交感神経作用は心室細動の閾値を低下させる。心拍数を含め、正常な心機能は、心臓への交感神経系および副交感神経系の流量の変動によって調整される。これらの変動は、心拍数および動脈圧の拍動毎の可変性を誘発する。したがって、心血管変量の瞬時変動の解析は、無傷生体における自律性調節に関する貴重な情報を供給する。
【0028】
過去20年にわたって、一般的に心電図(ECG)信号、および特に心拍数変動性(HRV)の解析を使用して、ANSの挙動が数量化されてきた[Malikら、「Guidelines.Heart rate Variability」、Eur Heart J 1996、17:354−381]。HRVの約5分の記録は、冠動脈疾患の存在の可能性を検知するのに十分であることが明らかになった[Paratiら、「Spectral analysis of blood pressure and heart rate variability in evaluating cardiovascular regulation.A critical appraisal」、Hypertension 1995、25(6):1276−86;Hayano Jら、「Decreased magnitude of heart rate spectral components in coronary artery disease and its relation to angiographic severity」、Circulation 1990、81(4):1217−24]。
【0029】
したがって、単純で、費用効率がよく、非侵襲的な、内皮の異常機能を決定するための方法およびシステムの必要性は幅広く認識されており、かつそれを持つことは非常に有利であろう。
【発明の開示】
【0030】
本発明の一態様では、被験者の内皮依存性血管作用を決定する方法であって、少なくとも一つの血管に隣接する複数の位置の圧力関連信号を記録すること、圧力関連信号から少なくとも一つのパラメータを抽出すること、および少なくとも一つのパラメータを使用して少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特性の変化を決定し、変化が内皮機能を表わすものであり、それによって被験者の内皮依存性血管作用を決定することを含む方法を提供する。
【0031】
下述する本発明の好適な実施形態におけるさらなる特徴によると、該方法は、被験者の自律神経系作用を決定することをさらに含む。
【0032】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、自律神経系作用の決定は、圧力関連信号の心拍数変動性解析による。
【0033】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、自律神経系作用の決定は、被験者の胸部の心電図信号を記録すること、および心電図信号の心拍数変動性解析を実行し、それによって自律神経系作用を決定することを含む。
【0034】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、前駆出期間および弁動脈期間を決定することをさらに含む。
【0035】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、弁動脈期間の弁は大動脈弁であり、弁動脈期間の動脈は頸動脈である。
【0036】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、前駆出期間および弁動脈期間の決定は、心電図信号のピークと圧力関連信号のピークとの間の経過時間を決定することを含む。
【0037】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、心電図信号のピークはQRSピークを含む。
【0038】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、少なくとも一つの血管を刺激することをさらに含む。
【0039】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管を刺激することは、機械的刺激、熱的刺激、化学的刺激、電気的刺激、精神的ストレス刺激、および身体運動刺激から成る群から選択された手順によって達成される。
【0040】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管を刺激することは、少なくとも一つの血管に外部圧力を加えることによる。
【0041】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管を刺激することは、少なくとも一つの血管の温度を低下することによる。
【0042】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、相関関数を得るために内皮機能および自律神経系作用を相関させること、および該相関関数を使用して被験者の内皮依存性血管作用を予備的に決定することをさらに含む。
【0043】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、圧力関連信号の記録は、圧電セラミック素子による。
【0044】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、圧力関連信号の記録は、膜に基づくセンサによる。
【0045】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、膜に基づくセンサはエレクトレットマイクロホン(electrate microphone)である。
【0046】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つのパラメータの抽出は、(a)第一位置の記録された圧力関連信号を走査して、第一ピークを検出すること、(b)第二位置の記録された圧力関連信号を走査して、第一ピークに対応する第二ピークを検出すること、(c)第一ピークと第二ピークとの間の経過時間を測定すること、および(d)ステップ(a)〜(c)を少なくとも一回繰り返すことを含む。
【0047】
本発明の別の態様では、被験者の内皮依存性血管作用を決定するためのシステムにおいて、該システムは、少なくとも一つの血管に隣接する複数の位置の圧力関連信号を記録するためのセンサの配列と、圧力関連信号を受け取り、記録し、かつ処理するように動作可能な処理ユニットとを備え、該処理ユニットは、圧力関連信号から少なくとも一つのパラメータを抽出し、かつ少なくとも一つのパラメータを使用して少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特徴の変化を決定するように設計およびプログラムされ、該変化は内皮機能を表わして成るシステムを提供する。
【0048】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、該システムは、被験者の自律神経系作用を決定するための電子計算機能性をさらに備える。
【0049】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、処理ユニットは、圧力関連信号から心拍数変動性を算出し、それによって自律神経系作用を決定するように動作可能である。
【0050】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムは、被験者の胸部に接続できるように設計された、少なくとも一つの心電図リードをさらに備える。
【0051】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、処理ユニットは、少なくとも一つの心電図リードによって感知された心電図信号から心拍数変動性を算出し、それによって自律神経系作用を決定するように動作可能である。
【0052】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムは、少なくとも一つのパラメータを解析し、少なくとも一つのパラメータの周波数分解を得るためのスペクトルアナライザをさらに備え、周波数分解は被験者の内皮依存性血管作用を表わす。
【0053】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムは、少なくとも一つの血管を刺激するためのメカニズムをさらに備える。
【0054】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管を刺激するためのメカニズムは、機械的メカニズム、熱的メカニズム、電気的メカニズム、および精神的ストレスを発生させるためのメカニズムから成る群から選択される。
【0055】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該メカニズムは、少なくとも一つの血管に外部圧力を加えるように動作可能である。
【0056】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該メカニズムはスフィンゴマノメータを含む。
【0057】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該メカニズムは、少なくとも一つの血管の温度を低下するように動作可能である。
【0058】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該メカニズムは、予め定められた温度の流体の浴またはカフである。
【0059】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、センサは圧電セラミック素子である。
【0060】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、センサは膜に基づくセンサである。
【0061】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、センサはエレクトレットマイクロホンである。
【0062】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、少なくとも一つのパラメータの周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために周波数分解を使用することをさらに含む。
【0063】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つのパラメータは、圧力関連信号の振幅、圧力関連信号の幅、および圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間から成る群から選択される。
【0064】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、振幅の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために周波数分解を使用することをさらに含む。
【0065】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、幅の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために周波数分解を使用することをさらに含む。
【0066】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、該方法は、経過時間の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために周波数分解を使用することをさらに含む。
【0067】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特徴は、少なくとも一つの血管の半径および少なくとも一つの血管の弾性率から成る群から選択される。
【0068】
本発明のさらに別の態様では、被験者の内皮依存性血管作用を決定するための方法であって、(a)少なくとも一つの血管に第一刺激を与えること、(b)少なくとも一つの血管の脈波速度を測定すること、(c)被験者の自律神経系作用を決定すること、(d)指数を有する相関関数を得るために脈波速度および自律神経系作用を相関させること、および(e)指数が予め定められた値を持つ場合、(i)少なくとも一つの血管に第二刺激を与え、かつ(ii)ステップ(b)〜(c)を繰り返し、それによって被験者の内皮依存性血管作用を決定すること、を含む方法を提供する。
【0069】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、ステップ(e)は、少なくとも一つの追加的血管に第二刺激を加えること、および少なくとも一つの追加的血管に対しステップ(b)〜(c)を繰り返すことをさらに含む。
【0070】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、第一および第二刺激は、機械的刺激、熱的刺激、化学的刺激、電気的刺激、精神的ストレス刺激、および身体運動刺激から成る群から各々独立して選択される。
【0071】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、刺激は外部圧力を含む。
【0072】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、刺激は温度低下を含む。
【0073】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、脈波速度の測定は、圧電セラミック素子を使用して圧力関連信号を記録することによる。
【0074】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、脈波速度の測定は、膜に基づくセンサを使用して圧力関連信号を記録することによる。
【0075】
記載した好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも一つの血管は、上腕動脈、撓骨動脈、および頸動脈から成る群から選択される。
【0076】
本発明は、先行技術の技法をはるかに超える特性を享受する、内皮依存性血管作用を評価するための方法およびシステムを提供することによって、現在公知の構成の欠点に対処することに成功している。
【0077】
特に別の定義がない限り、本書で使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の通常の熟練者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本書に記載するのと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を下述する。競合する場合、定義を含め本特許明細書が支配する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例証であって、限定を意図するものではない。
【0078】
本発明の方法およびシステムの実現は、選択されたタスクまたはステップを手動で、自動的に、またはそれらの組合わせにより、実行または完遂することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および設備では、幾つかの選択されたステップは、ハードウェアによって、または任意のオペレーティングシステムまたは任意のファームウェア上のソフトウェアによって、またはそれらの組合せによって実現することができる。例えば、ハードウェアとしては、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の選択されたステップは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用して実行される複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのような、データプロセッサによって実行されると記載することができる。
【0079】
図面の簡単な記述
本発明を本書では、単なる実施例として、添付の図面に関連して説明する。今、特に図面の詳細について関連して、図示する細部は例であって、本発明の好適な実施形態の例証説明を目的としているにすぎず、発明の原理および概念的側面の最も有用かつ分かり易い記述であると信じられるものを提供するために提示することを強調しておく。これに関し、発明の構造上の詳細を発明の基本的理解に必要である以上に詳しく示そうとはせず、図面に照らした記述は、本発明の幾つかの形態をいかに実際に具現することができるかを、当業者に明らかにする。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る、内皮依存性血管作用を決定する非侵襲的方法のフローチャート図である。
図2は、ほぼ一定のヤング率を想定して、動脈の半径の変化の関数としての圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間の相対的変化の理論的推定を示す。
図3は、本発明の好適な実施形態に係る、被験者の内皮依存性血管作用を決定する別の方法のフローチャート図である。
図4は、本発明の好適な実施形態に係る、被験者の内皮依存性血管作用を決定するためのシステムの略図である。
図5は、本発明の好適な実施形態に係る、圧力関連信号を感知し伝送するためのトランスデューサの略図である。
図6は、約1Hzの入力信号に対するトランスデューサの応答を示す。
図7は、本発明の好適な実施形態に係る、データ解析手順のフローチャート図である。
図8a〜cは、図7の手順の代表的グラフ出力である。
図9a〜eは、本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
図10a〜cは、本発明の好適な実施形態に係る、熱的刺激試験で検査した一被験者の経過時間、標準偏差、および心拍変動性の相対的変化を示す。
図11a〜bは、ニトログリセリンによる治療中の経過時間および内皮依存性血管反応性の測定に対する横臥姿勢の影響を示す。
図12a〜cは、US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の仰臥位中の経過時間(図12a)、標準偏差(図12b)、および振幅(図12c)を示す。
図13a〜cは、US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の座位中の経過時間(図13a)、標準偏差(図13b)、および振幅(図13c)を示す。
図14a〜cは、US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、別の被験者の座位中の経過時間(図14a)、標準偏差(図14b)、および振幅(図14c)を示す。
図15a〜cは、US測定によって異常な内皮機能を有すると診断された、被験者の座位中の経過時間(図15a)、標準偏差(図15b)、および振幅(図15c)を示す。
図16a〜cは、US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の仰臥位中の経過時間(図16a)、標準偏差(図16b)、および振幅(図16c)を示す。
図17a〜hは、正常な自律神経系作用および内皮機能障害を有する被験者(17a、17c、17e、および17g)、ならびに異常な自律神経系作用および正常な上腕内皮機能を有する被験者(17b、17d、17f、および17h)の心拍数変動性解析の結果を示す。
図18a〜cは、寒冷昇圧試験中の二つの経過時間パラメータ(図18a)、三つの振幅パラメータ(図18b)、および心拍数(図18c)の変化を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
本発明は、内皮機能障害関連疾患の早期段階の診断に使用することのできる、内皮依存性血管作用を決定するための非侵襲的方法およびシステムである。特に本発明は、大集団を集団検診して診断し、内皮および冠動脈機能障害の様々な段階および組合せの被験者を区別するために使用することができる。例えば、本発明は、心血管系疾患、アテローム硬化症および類似物の病因を診断するために使用することができる。
【0081】
本発明に従って被験者の内皮依存性血管作用を決定するための方法およびシステムの原理および操作は、図面および随伴する説明により、いっそう良く理解することができる。
【0082】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明に記載しあるいは図面に示す構成要素の構造および配列の詳細に限定されないことを理解されたい。発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは様々な方法で実施または実行することができる。また、本書で使用する言葉使いおよび用語は、説明を目的とするものであって、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0083】
弾性導管内の流体の脈動流は、導管と流体との間の摩擦力および垂直力の上昇を伴う。そのような流動は、支配的周辺エネルギ伝搬、つまり弾性導管の壁に沿ったエネルギ伝搬によって特徴付けられる。導管内を伝搬する脈圧の速度は、導管の壁の弾性および幾何学的特性によってだけでなく、流体の物理的特性によっても決定される。
【0084】
動脈において、心室駆出によって発生する脈圧の速度は、Moens−Kortewegモデルを使用して算出することができ、それによると、脈波速度cの二乗は、血液の密度および動脈の機械的コンプライアンスによって除算された動脈の面積に等しい。圧力に対する断面積の導関数と定義される機械的コンプライアンスは、優れた近似として2R/(Eh)である。ここでRは動脈の半径であり、hは動脈の壁の厚さであり、Eはヤング率である。したがって、脈波速度、一般的にMoens−Korteweg方程式として知られる次式によって与えられる。
【数1】

ここでρは血液の密度である。
【0085】
本発明は、血管作用を決定する目的のために、脈波速度と動脈壁の幾何学的特性および弾性特性との間の関係を利用する。
【0086】
今、図面を参照すると、図1は、本発明の一態様に係る、被験者の内皮依存性血管作用を決定するための非侵襲的方法10のフローチャート図である。
【0087】
ブロック12によって指定された、方法10の第一ステップで、一つまたはそれ以上の血管に隣接する幾つかの位置の圧力関連信号が記録される。圧力関連信号は一般的に電気信号であり、例えば圧電セラミック素子、またはエレクトレットマイクロホンのような、しかしそれに限らず、膜に基づくセンサを使用して記録される。以下で、および後に続く実施例の節で、さらに詳述しかつ例示するように、これらの圧力関連信号は血液の脈波速度に関連し、したがって、動脈壁の幾何学的特性および弾性特性を特徴付けるために使用することができる。
【0088】
ブロック14によって指定された、方法10の第二ステップで、少なくとも一つのパラメータが圧力関連信号から抽出される。抽出されるパラメータの代表的例として、信号の振幅、その幅、および/または二つの圧力関連信号のピーク間の経過時間が挙げられるが、それに限定されない。
【0089】
振幅パラメータは、予め定められた零レベルより上の信号の高さと定義することが好ましい。
【0090】
幅パラメータは、等しい高さの二点間または同一信号の二つの変曲点間の距離と定義することが好ましい。
【0091】
経過時間パラメータは、同一血管の二つの位置または異なる血管付近の二つの位置の記録された信号の二つのピーク間の経過時間と定義することが好ましい。経過時間パラメータは脈波速度に直接関連する。さらに詳しくは、二つの位置間の脈波の経過時間tおよびその移動距離Lが分かると、除算(L/t)または微分(dL/dt)によって、脈波速度を算出することができる。
【0092】
上記パラメータのいずれも、相関法、ピーク検出、数学的当てはめ(例えば多項式当てはめ)、周波数分解(例えばフーリエ変換)、データ折返し、および類似物のような、ただしそれらに限らず、当業界で周知の適切な方法によって、信号から抽出することができる。本発明の好適な実施形態では、抽出は、各タイプのパラメータに対し、複数の値を得るように複数回実行され、その後それら複数の値を平均することができる。
【0093】
ブロック16によって指定される、方法10の第三ステップでは、パラメータを使用して、一つまたはそれ以上の血管特性、例えばその幾何学的または弾性特性の変化が決定される。そのような変化は血管の内皮機能を特徴付ける。
【0094】
例えば、動脈の拡張段階中に増加する動脈壁におけるコラーゲン繊維の補充のため、経過時間パラメータは、動脈拡張の初期段階における動脈の半径の変化に対し感受性があり、振幅パラメータは比較的大きい動脈拡張における動脈の半径の変化に対し感受性がある。したがって、経過時間パラメータおよび振幅パラメータの賢明な使用は、広範囲の値の動脈の半径の変化の正確かつ信頼できる測定を可能にする。
【0095】
半径の変化は、発明の現在の好適な実施形態では好ましい血管特性であるが、他の血管特性、例えば弾性率は除外されない。
【0096】
小さい半径の場合、血管の弾性率は、優れた近似として、一定量である。他方、大きい半径の場合、弾性率は半径に依存するようになり[Armentano R.Lら、「Arterial wall mechanics in conscious dogs−assessment of viscous,internal,and elastic moduli to characterize aortic wall behavior」、Circulation Research 1995、76:468−78]、経過時間パラメータを使用して決定することができる。
【0097】
一般的に、血管の半径、厚さ、および弾性は、上記方程式1から直接導出される次式によって相互に関連付けられる。
【数2】

ここで下付き添え字「0」および「2」は、血管の異なる状態(例えば弛緩および収縮)における値を表わす。方程式2の結果、動脈の半径が増加すると、脈波速度は低下する。経過時間に関しては、脈波速度の低下は、信号の二つのピークの間の経過時間の増分として現われる。
【0098】
図2は、ほぼ一定のヤング率を想定して、動脈の半径の変化の関数としての圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間の相対的変化の理論的推定を示す。図2中の異なる線は、異なる実効血流距離Lに対応する。計算は、文献から取った典型的な初期の半径および弾性率を使用して実行した。
【0099】
したがって、上記パラメータの測定は血管の幾何学的特性および弾性特性に関係付けられ、したがって内皮依存性血管作用の決定を可能にすることは、理解されるであろう。
【0100】
NOは、動脈圧変動性に対し緩衝作用を有することが知られている。動脈圧の急変は剪断応力を変化させ、こうしてNOの発生および放出を変更する。変化するNOレベルに反応して、その後の血管拡張または血管収縮が発生し、それは次に血管抵抗を再調整して動脈圧変動性を低減する。NOは急速に作用する。つまり、それは内皮から下にある血管平滑筋細胞に拡散し、そこで数秒以内に血管弛緩を引き起こす。こうして、NOは動脈圧反射より急速に血圧の調節に作用することができる。[Persson PB.、「Spectral analysis of cardiovascular time series」、Am J Physiol、273:R1201−R1210、1997]。例えば、NO抑制後、0.2Hzを超える範囲の電力が著しく増加し、NOがこれらの周波数における血圧の変動性を干渉していることを示唆することがラットで明らかになった[Nafz Bら、「Endogenous nitric oxide buffers blood pressure variability between 0.2 and 0.6 Hz in the conscious rat」、Am J Physiol 272:H632−H637、1997]。
【0101】
加えて、マウスで、NO機能の回復後、血圧および心拍数変動性が改善した(Pelat M.ら、「Rosuvastatin decreases caveolin−1 and improves nitric oxide−dependent heart rate and blood pressure variability in apolipoprotein E−/−mice in vivo」、Circulation 107:2480−2486、2003)。
【0102】
したがって、上記パラメータは、上記生理学的メカニズムに感受性がある他の可観測を得る目的のために、さらに解析することができる。スペクトル解析、変調解析、および類似物をはじめ、それに限らず、多くの解析手順が本発明によって考慮される。
【0103】
再び図1を参照すると、本発明の好適な実施形態では、該方法は図1でブロック17によって指定される任意選択的ステップをさらに含み、そこで一つまたはそれ以上のパラメータから、例えばスペクトル解析を実行することによって、周波数分解が得られる。得られた周波数分解は、被験者の内皮依存性血管作用を決定するために使用することができる。例えば、周波数分解が例えば約0.15Hzを超える高い周波数範囲に高い電力を含む場合、内皮機能障害を決定することができる。代替的に、低い周波数範囲(例えば約0.12Hz未満、約0.08Hz未満、または0.06Hz未満)の電力低下時に、内皮機能障害を診断することができる。内皮機能障害を持つ被験者の場合、高い周波数範囲の電力のそのような増分の後に、経過時間および振幅パラメータの変動性の増加が続くことがあり得る。
【0104】
本発明を実践に移しているときに、被験者の自律神経系作用を特徴付ける、ブロック18で指定した追加ステップによって、上記手順を改善することができることが、明らかになった。一般的に心拍数変動性と呼ばれる心拍数の変化は、自律神経系の活動の変化の直接的な結果であることが知られている。したがって、本発明の好適な実施形態では、自律神経系の特徴付けは心拍数変動性の解析によって行われる。
【0105】
心拍数変動性は、二つ以上の方法で決定することができる。したがって、一実施形態では、心拍数変動性は圧力関連信号から決定される。例えば圧力関連信号は、好ましくは均等に分布するセグメントに分割することができ、各セグメントでは、平均心拍数がその後のピーク時間の減算によって計算される。次いで心拍数変動性は、各セグメントの心拍の標準偏差として定義される。本発明の好適な実施形態では、各セグメントの典型的な期間は5秒から15秒の間である。
【0106】
別の実施形態では、心拍数変動性は様々な測定によって得られ、それは例えば心電図測定、または被験者の胸部の電気信号を記録するためのいずれかの他の手順とすることができる。心拍数変動性を決定するための公知の装置は、連続して一般的に24時間心拍数の心電図記録を行なうための記録装置であるホルターモニタである。
【0107】
心電図信号から心拍数変動性を決定するための多くの方法が、当業者で周知である。例えば、心拍数変動性は、心電図信号から一連の心臓R−R区間を抽出することによって決定することができる。心電図信号はとりわけ、いわゆるP波、T波、およびQRS群を含み、QRS群はQ波、R波、およびS波を含む。R−R区間は心電図信号の二つの連続するR波間の経過時間である。Rピークについて二つの公知の定義が存在する。つまり(i)QRS群における最高(絶対値)ピーク、および(ii)QRS群における最初の正のピーク、である。本書で詳述する全ての実施形態において、心臓R−R区間を抽出するときに、上記定義のいずれかを使用することができることを理解されたい。心臓R−R区間を心電図信号から抽出する手順は当業者に周知であり、手動または自動どちらでも、例えば、一実施形態では信号を発生する医療装置に関連するデータプロセッサによって、実行することができる。
【0108】
ひとたび抽出されると、心臓R−R区間は、心拍数変動性を決定するために解析される。これは、例えば、心臓R−R区間の周波数分解を得ること(例えばフーリエ変換、ウェーブレット変換、自己回帰法、最大エントロピ、および類似物)によって、またはシーケンシャルデータベースを解析するためのいずれかの他のアルゴリズムによって、行なうことができる。
【0109】
一般的に、心拍数変動性解析は、正常拍動区間の標準偏差(SDNN)、低周波電力(LF)、高周波電力(HF)、超低周電力、およびこれらのパラメータの任意の組合せ(例えば比率)のような、ただしそれらに限らず、幾つかの特徴付けパラメータの計算を含む。
【0110】
SDNNはスペクトル解析の全電力の平方根に等しく、副交感神経作用を示す。例えば副交感神経作用が低減している冠動脈疾患患者では、SDNNは小さい。
【0111】
超低、低、および高周波数範囲の周波数分解は、異なる生理学的メカニズムに関連付けられる。一般的に約0.04Hzにピークがある超低周波数範囲は、主に体温調節に関連付けられ、約0.12Hzにピークがある低周波数範囲は、圧受容体の弛緩に関係し、約0.3Hzにピークがある高周波数範囲は、呼吸周期に関係する。
【0112】
したがって、LFパラメータは副交感神経および交感神経作用の両方を示し、HFパラメータは副交感神経作用を反映し、LF/HF比は一般的に交感神経−迷走神経バランスの指標として使用される。冠動脈閉塞のため心機能が低下する場合、低下する迷走神経作用が最初に減弱される。したがって迷走神経作用は、冠動脈の障害を特徴付けるための指標として役立てることができる。
【0113】
本発明の好適な実施形態では、心拍数変動性解析は、自律神経系の作用および血管機能の可能な障害の十分な指標を得るために、内皮機能のベースライン中に、短い期間に一般的に約3分から約5分間、実行される。
【0114】
本書で使用する用語「約」とは、±10%を指す。
【0115】
上述の通り、血管の内皮機能は、局所的血小板凝集、トロンビンの生成、ならびにセロトニンおよびADPの放出に起因する、NOの放出によって影響される。特定の条件および刺激にさらされたときの血管の反応は、NOの放出速度の指標として役立てることができる。この目的のために、Vita JAら、「Patients with evidence of coronary endothelial dysfunction as assessed by acetylcholine infusion demonstrate marked increase in sensitivity to constrictor effects of catecholamines」、Circulation 1992、85:1390−1397;Deanfield JEら、「Silent myocardial ischemia due to mental stress」、Lancet 1984、2:1001−1005;Gage JEら、「Vasoconstriction of stenotic coronary arteries during dynamic exercise in patients with classic angina pectoris:Reversibility by nitroglycerin」、Circulation 1986、73:865−876;Gordon JBら、「Atherosclerosis and endothelial function influence the coronary response to exercise」、J Clin Invest 1989、83:1946−1952;Nabel EGら、「Dilation of normal and constriction of atherosclerothic coronary arteries caused by cold pressor test」、Circulation 1988、77:43−52;Zeiher AMら、「Coronary vasomotion in response to sympathetic stimulation in humans:Importance of the functional integrity of the endothelium」、JACC 1989、14:1181−90;Anderson EAら、「Flow−mediated and reflex changes in large peripheral artery tone in humans」、Circulation 1989、79:93−100;およびCorretti MCら、「Correlation of cold pressure and flow−mediated brachial artery diameter responses with the presence of coronary artery disease」、Am J Cardiol 1995、75:783−787を参照されたい。
【0116】
したがって、一酸化窒素の正常な放出および内皮機能を間接的に示す流量(充血)および動脈の直径の増加は、動脈の短い閉塞(数分)および再開通の後に現れる。
【0117】
運動および冷気への暴露のような心筋虚血の刺激は、アドレナリン作用性刺激および循環するカテコールアミンの増加に関連付けられる。そのような刺激は初期冠動脈アテローム硬化症の患者における心筋灌流の絶対的低下および心外膜収縮に関連付けられてきた。
【0118】
交感神経系刺激(例えば寒冷昇圧試験)による正常および収縮硬化性冠動脈の拡張は、内皮依存性拡張剤アセチルコリンへの反応を反映する。そのような刺激は、末端循環停止によって生じる収縮を超えさえする、大きい末梢血管の収縮を引き起こし得る。したがって、内皮機能が低下した末端および冠動脈は、カテコールアミンの収縮剤効果に対する感受性の増加に関連付けられる。
【0119】
したがって、本発明の好適な実施形態では、方法10は、上記測定の前に血管を刺激する、任意選択的ステップをさらに含む。血管への適切な刺激は、測定の精度をかなり向上することができることは、理解されるであろう。例えば、正常な血管でNOの放出を増加する刺激後に血管特性を決定することによって、医師または看護師は、特定の刺激に対する血管の反応レベルに関する情報を得ることができる。
【0120】
血管作用に関して血管の反応を生成できる刺激であることを前提として、多くの型の刺激が考慮される。代表例として機械的刺激、熱的刺激、化学的刺激、電気的刺激、および類似物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0121】
機械的刺激は例えば、内部の血流を一時的に閉塞するように、例えばスフィンゴマノメータを使用して血管に加えられる外部圧力とすることができる。上述の通り、そのような閉塞に対する正常な血管の反応は、NOの放出および内皮機能の増加であり、それは、上で詳述した通り、血管特性および/または心拍数変動性の測定によって検出することができる。熱的刺激は例えば、血管収縮を誘発する、一般的に約5〜10℃までの劇的な温度低下とすることができる。化学的刺激は非侵襲性であることが好ましく、血管の生理学的状態を変化させることのできる血管作用剤とすることができる。化学的刺激の代表例はニトログリセリンである。
【0122】
使用する刺激の型は、(i)決定しようとする血管、(ii)被験者の総合的病状、および(iii)被験者が内皮機能障害を患っている確率、によって決めることが好ましい。刺激の型の他の選択ルールも考えられる。
【0123】
決定プロトコルの代表例を図3のフローチャート図に示す。したがって、決定プロトコルは二つの段階を含むことが好ましく、ブロック22〜23によって指定される第一段階では、血管特性および心拍数変動性が第一刺激の下で決定され、それによって予備診断が得られる。予備診断は、例えば異なる測定間の相関関数を使用して、特徴付けることができる。さらに詳しくは、決定プロトコルの第一段階は、内皮依存性血管作用のレベルおよび自律神経系作用のレベルの両方を予備決定することを可能にする。第一段階の結果に基づいて、二値指数(V、A)を使用して、被験者が内皮機能障害を患っている確率の予備特徴付けを得ることができる。ここで「V」は内皮依存性血管作用のレベルを表わし、「A」は自律神経系作用のレベルを表わす。被験者の二値指数に応じて、医師または看護師は、プロトコルを終了するか(ブロック24)、それとも他の型の刺激により、かつ/または被験者の身体の別の位置で、追加決定段階を実行するか(ブロック26)を決定することができる。次いで、最終診断を得るために、追加決定段階を使用することが好ましい(ブロック28)。
【0124】
代表例として、決定プロトコルの第一段階が、被験者の上腕および撓骨動脈における機械的刺激の下で実行され、かつ、第一段階の後で、(i)被験者の内皮依存性血管作用が正常か異常か、および(ii)被験者の自律神経系作用が正常か異常か、を区分することが可能であると仮定する。そうすると、それぞれの二値指数は四つの組合せ、すなわち(V=「正常」、A=「正常」)、(V=「異常」、A=「正常」)、(V=「正常」、A=「異常」)、および(V=「異常」、A=「異常」)のうちの一つを持つことができる。通常の当業熟練者は、第一組合せおよび第四組合せがそれぞれ、内皮機能障害を患っている最低および最高の確率をそれぞれ特徴付けることを理解されるであろう。
【0125】
(V=「正常」、A=「正常」)以外の組合せによって特徴付けられる被験者は、決定プロトコルの追加段階を受けることが好ましく、それは例えば、被験者の上腕、撓骨および/または頸動脈に熱的刺激が加えられる熱的段階(例えば寒冷昇圧試験)とすることができる。
【0126】
本発明の好適な実施形態では、決定プロトコルの熱的段階は、圧力関連信号の記録と同時に、心拍数変動性の連続的測定(例えば一つまたはそれ以上の心電図リードを使用する)を含むこともできる。一般的に、この段階は温度管理室内で実行され、そこで被験者は検査中に一連の様々な温度にさらされる。例えば、低温にさらされる期間の後に、被験者の体温が正常値まで増加する回復期間が続く、予め定められた期間の交互シーケンスに被験者をさらすことができる。典型的な温度範囲は、低温期間が0〜15℃であり、回復期間が22〜27℃である。様々な温度への暴露は、略一定温度を予め定められた期間維持することのできる、任意の熱的メカニズムによって行なうことができる。代表例として、所望の温度の液体の浴、および所望の温度状態であって、被験者の外部器官を取り囲むことのできる熱的装置が挙げられるが、それらに限らない。そのような熱的装置は、流体を含むカフの形をとることができる。
【0127】
通常の当業熟練者には理解される通り、上記パラメータの多くは、熱的段階中に抽出することができる。例えば、本書でTと呼ぶ経過時間パラメータは、上腕動脈と撓骨動脈との間のパルス経過時間から抽出することができる。本書でTと呼ぶ追加の経過時間パラメータは、心電図リードによって検出されたQRS群のピークと、頸動脈で記録された圧力関連信号のピークとの間の経過時間を測定することによって、抽出することが好ましい。
【0128】
は、二つの生理学的期間、すなわち(i)心臓の電気活動が大動脈弁の開放を導く等容性収縮を引き起こすのに必要な時間である前駆出期間と、(ii)脈波が大動脈弁から頸動脈の測定位置まで移動するのに必要な時間である弁−頸動脈期間との和である。これらの二つの生理学的期間は、低温にさらされている間、同時に短縮される。通常、温度が増加し始めるときに(例えば上記の交互シーケンスの回復期間中)、前駆出期間の短縮は続く[Mezzacappa ESら、「Vagal Rebound and recovery from psychological stress」、Psychosom Med 2002、63:650−657]が、大動脈弁−頸動脈期間は延長し始める。したがって、異なる時間におけるTの値の間の比較を使用して、内皮活動を特徴付けることができる。
【0129】
さらに詳しくは、回復期間中にTがその典型的ベースライン値を回復する場合、弁−頸動脈期間の増分は、前述の通り回復期中続く前駆出期間の短縮を補償するので、被験者は正常な内皮活動を有すると診断される。
【0130】
本発明の好適な実施形態では、脈波振幅は同じ三つの部位、つまり上腕、撓骨、および頸動脈から得られる。
【0131】
この決定プロトコルには多くの利点がある。第一に、熱的刺激は被験者にとってあまり快適ではないので、それは内皮機能障害を患っている可能性の高い被験者にのみ実行される。
【0132】
第二に、第二段階は頸動脈の測定をも含み、それによって結果の精度がかなり向上する。理解される通り、頸動脈はたとえ短時間であっても、被験者を危険にさらすことなく、機械的に閉塞することができない。したがって、第二段階は、頸動脈で測定を実行することができるように、熱的刺激を含むことが好ましい。
【0133】
第三に、上腕動脈で測定された冷間圧力血管作用は、流動媒介血管作用より密接に、冠動脈疾患の有無と相関することが認められる。したがって、上腕動脈における熱的刺激の使用は、予備結果のさらなる検証に役立つ。
【0134】
第四に、上腕動脈のアテローム硬化症は冠動脈疾患と有意に相関するが、頸動脈のアテローム硬化症に対するより強い相関が明らかになった。三つの動脈全てにおける自律神経系作用の決定は追加検証として役立ち、それによって全体的精度が向上する。二つの経路を組み合わせて、第一経路で圧力関連信号を解析して血管特性を決定し、第二経路で心電図信号を解析して心拍数変動性を決定することは、両方の経路から得られる異常結果の解釈精度の向上に貢献する。
【0135】
本発明の別の態様では、被験者の内皮依存性血管作用を決定するためのシステム30を提供する。該システムは、方法10の選択されたステップを実行するために使用することができる。
【0136】
今、再び図面を参照すると、図4はシステム30の略図であり、この基本的構成では、それは、圧力関連信号を記録するためのセンサ32の配列を備えている。本発明の好適な実施形態では、センサ32は圧電セラミック素子、またはエレクトレットマイクロホンのような、ただしそれに限らず、膜に基づくセンサとすることができる。使用中に、センサ32は、一つまたはそれ以上の血管に隣接する幾つかの位置に配置することが好ましい。
【0137】
システム30は、センサ32によって感知された圧力関連信号を受け取り、記録し、かつ処理する処理ユニット34をさらに備える。さらにユニット34は、上で詳述したように、圧力関連信号からパラメータを抽出し、かつ、血管特性および/または自律神経系作用の変化を決定するためにパラメータを使用するようにプログラムされる。
【0138】
本発明の好適な実施形態では、システム30は、血管を刺激するためのメカニズム36をさらに備えることができる。メカニズム36は、上記の型の刺激のいずれかで血管を刺激することができることが好ましく、したがって機械的、熱的、電気的メカニズム、または化学的メカニズムとすることができる。さらに、メカニズム36は、精神的ストレスを発生させるためのメカニズム、または被験者に身体運動をさせるための装置とすることができる。例えば機械的刺激の場合、メカニズム36はスフィンゴマノメータを備えることができ、熱的刺激の場合、メカニズム36は低温室または低温流体の浴として実現することができ、電気的刺激の場合、メカニズム36は電極を備えることができ、化学的刺激の場合、メカニズム36は血管作用剤などとすることができる。
【0139】
上述の通り、本発明は例えば心拍数変動性解析による自律神経系作用の決定も考慮している。したがって本発明の好適な実施形態では、システム30は、被験者の胸部の電気信号を感知するために一つまたはそれ以上の心電図リードをさらに備える。この実施形態では、処理ユニット34(または追加処理ユニット)は、上でさらに詳述した通り、心電図信号感知リード28から心拍数変動性を計算する。
【0140】
後に続く実施例の節でさらに実証するように、本発明は費用効率の良いシステムおよび方法を提供する。個々の被験者のための典型的な検査期間は比較的短く(約5分ないし約30分)、専門医療スタッフの監督無しに、パラメディカルスタッフによって実行することができる。検査結果は自動的に解析されることが好ましく、したがって一般開業医、心臓専門医、または内科専門医に正確かつ信頼できる情報が迅速に提供される。本発明は、大集団の集団検診および診断に、かつ内皮および冠動脈機能障害の様々な段階および組合せの被験者を区別するために、日常的に使用することができる。
【0141】
本特許の存続期間中に、血管付近の信号を記録するための多くの関連技術が開発されることが予想され、圧力関連信号という用語の範囲は、先験的にそのような新しい技術を全て含むつもりである。
【0142】
本発明の追加の目的、利点、および新規の特徴は、限定とする意図はない以下の実施例の検討により、通常の当業熟練者には明らかになるであろう。さらに、本書で上述し、かつ請求の範囲に記載する、本発明の様々な実施形態および態様の各々は、以下の実施例で実験的に裏付けられる。
【実施例】
【0143】
今、以下の実施例を参照すると、それらは上記の説明と共に、本発明を非限定的に例証するものである。
【0144】
実施例1
第一プロトタイプシステム
第一プロトタイプシステムを設計し、作製した。該システムは、(i)研究用に設計され組み立てられたトランスデューサおよび増幅器、(ii)処理ユニット(デスクトップコンピュータ、ペンティアムIV)、(iii)National Instrumentsから購入したA/DサンプリングカードDAQ NI−488.2、(iv)National Instruments(商標)から購入したカスタム設計のデータ取得ソフトウェアLabview5.1.1(商標)、および(v)Matlab(商標)から購入したカスタム設計のデータ解析ソフトウェア、を含むものであった。
【0145】
図5は、トランスデューサ50の略図である。トランスデューサ50はエレクトレットマイクロホン56および聴診器51を含んでいた。トランスデューサ50は、皮膚の下を通過する血液の脈波によって生じる、被験者の皮膚の小さい動きを検出することができた。マイクロホン56は短い導管58によって聴診器51に接続され、聴診器51の膜52とマイクロホン56の膜54との間の通信が可能であった。使用中に、皮膚の下を通過する血液の脈波は膜52に振動を発生させ、それは導管58によって膜54に伝達され、こうしてマイクロホン56に電気信号が発生する。
【0146】
図6は、マイクロホンを物理的に振動させることによって得られる、約1Hzの入力信号に対するトランスデューサ50の応答を示す。典型的な聴診器は元々、20Hzを超える周波数を検出するように設計されているが、実際には、トランスデューサ50の感度範囲はより大きいことに注目されたい。詳しくは、トランスデューサ50は低周波発振運動を感知することができる。
【0147】
データ取得ソフトウェアのサンプリングレートは、1000Hzとなるように選択された。このサンプリングレートは、二つの連続パルス間の経過時間を算出するのに必要な精度をもたらした。他のサンプリング周波数を試験し、効果が劣ることが明らかになった(より高い周波数はより多くのメモリを必要とし、精度の向上はごくわずかであった)。
【0148】
図7は、データ解析手順の詳細なフローチャート図である。したがって、被験者の身体の二つの位置からトランスデューサを使用して記録された生データをデータ取得ソフトウェアからロードし、低域フィルタ(15Hz)によってフィルタリングした。データは複数の10秒セグメントの形であった。各セグメントを走査してそのピークを求めた。
【0149】
ピークは零導関数によって定められ、以下の条件が満たされた場合に、計算用に受け入れられた。(i)ピークの値が、平均最大値の70%と成るように選択された、予め定められた閾値を超えること、および(ii)ピークと(同じ位置の)その前のピークとの間の間隔が0.25秒を超えること。
【0150】
相関法を使用して、身体の二つの異なる位置からの二つの適切なピーク間の経過時間を測定した。不合理な結果(ノイズ、被験者の動き、計算ミス等に起因する)を排除するために、経過時間の平均値および標準偏差を算出した。標準偏差の受入れ範囲は約10%であった。全てのセグメントの全てのピークに対し、このプロセスを繰り返した。
【0151】
受け入れたピークを、心拍数、心拍数変動性、および標準偏差(図7でそれぞれHR、HRV、およびSDによって指定する)の算出のために使用した。心拍数は、同じ位置の連続するピーク間の時間と定義した。心拍数変動性は各セグメントの心拍数の標準偏差を算出することによって得た。受け入れた全てのセグメントに対し心拍数変動性を平均し、心拍数変動性の標準偏差を得た。最終ステップで結果のグラフ出力を生成した。
【0152】
図8a〜cは、手順の代表的グラフ出力である。図8aは、二つのトランスデューサ間の経過時間の相対変化を%指定PWT(脈波時間パラメータ)単位で、分単位の時間の関数として示す。各点は約10秒の平均を表わす。ベースラインの最初の3分間のPWTの平均値が数値で提示されている。鎖線はベースラインの相対平均を表わす。
【0153】
図8bは、図8aに表わされた点に対して計算されたPWTの標準偏差の百分率を示す。ベースライン中の高い標準偏差は、被験者の動きまたは雑音の多い記録を表わす。
【0154】
図8cは、心拍数を時間の関数として示す。各点は約10秒の平均を表わす。心拍数の数値が提示されている(図8cにHRとして示される)。
【0155】
実施例2
第一プロトタイプシステムを使用する生体内測定
実施例1の第一プロトタイプシステムを使用して、21人の志願者に生体内試験を実行した。二つのトランスデューサを検査対象の被験者に接続した。第一トランスデューサは手首の撓骨動脈に接続し、第二トランスデューサは腕の近位側の肘から約5〜10cm上の上腕動脈に接続した。トランスデューサは、信号対雑音比を改善し、かつ血管の部分閉塞を防止するように、20mmHgの圧力に膨らませたカフにより固定した。虚血(機械的刺激)を実現する目的のために、Hokanson,USから購入した追加カフを、第一カフの上に配置した。
【0156】
機械的刺激
被験者を、絶食することなく一日の様々な時間に試験した。各被験者は温度管理された室内(18℃〜24℃)で座位であった。各被験者の検査は、(i)3分間のベースライン記録(刺激無し)、(ii)3分間の誘発上腕動脈の虚血(追加カフを使用する)、および(iii)カフの解放後の回復中の5分間の記録、を含んだ。
【0157】
熱的刺激
血管収縮は、座位で左手を連続的に記録しながら、右手を冷水(8℃)に浸すことによって誘発した。被験者はまた、右手を室温(21℃)の水中に浸した弛緩期間も経験した。
【0158】
各被験者の検査は、(i)室温の水中での数分間、(ii)3分間のベースライン記録(室温)、(iii)1分間の血管収縮(冷水)、(iv)3分間の室温、(v)2分間の血管収縮、(vi)少なくとも3分間の室温での回復、を含んだ。
【0159】
複合刺激
温度、食事、薬剤、検査前の身体運動、および交感神経系の刺激のような幾つかの因子は、血管運動活性に影響を及ぼし得る。上記の試験において、場合によっては、正常な内皮依存性血管反応性を持つと思われる検査を受けた個人が、その後の検査で反応性充血に対し異なる反応をすることが観測された。また、これらの変化は、ベースラインで測定した経過時間パラメータと相関することも分かった。ベースライン中の経過時間パラメータが比較的高い(40〜42ms)とき、反応性充血に対する被験者の応答は弱いかまたは完全に存在しなかった。ベースライン中の経過時間パラメータが低い(20〜40ms)とき、反応性充血に対する被験者の応答は正常であった。これは、システムが最も信頼性の高い結果を生じる「生理学的ウィンドウ」があることを暗示した。
【0160】
したがって、検査が「生理学的ウィンドウ」内で実行される確率を高めるように、以下の標準的手順を作成した。(i)被験者は6〜8時間の絶食後に検査した。(ii)検査は静かな温度管理された室内(18℃〜20℃)で実行した。(ii)3分間の記録後に、交感神経作用を高め、経過時間パラメータを低下し、かつ弛緩を誘発するように、被験者をトランスデューサから切り離し、2分間適度に歩行させ、座位に戻らせた。(v)動脈の完全な回復ができるように、検査の間に10分の休憩をはさんで、上述したように機械的刺激の下での二回のその後の検査。
【0161】
このプロトコルの下で、両方の検査が異常な内皮依存性血管反応性を示した場合にのみ、内皮機能障害と診断した。
【0162】
比較研究
実施例1の第一プロトタイプシステムによって得られた結果を、高分解能超音波診断装置(HP sonos 5500)を使用して得た結果と比較した。各被験者は、試験の間に30分の休憩をはさんで、超音波診断装置を使用する第一検査およびプロトタイプシステムを使用する第二検査を受けた。全被験者は、喫煙やコーヒー無しで8時間の絶食後に検査した。
【0163】
各被験者の超音波診断検査は、(i)3分間のベースライン記録、(ii)3分間の上腕動脈閉塞、および(iii)10分間の回復と連続記録、を含んだ。
【0164】
各被験者に対し、D〜Dと指定した四つの動脈直径を超音波画像からオフラインで算出した。すなわち、Dはベースライン段階中に開始から1分後に算出し、Dはベースライン段階中に開始から2分後に算出し、Dはカフ段階中に収縮の1分後に算出し、Dはカフ段階中に収縮の1.5分後に算出した。
【0165】
ベースライン直径はDとDとの平均と定義され、絶対直径変化はベースライン直径からDを減算したものと定義される。詳しくは、
【数3】

【数4】

であり、ここでFMDは、流動媒介拡張(Flow Mediated Dilatation)の略語である。典型的なFMD測定値は、約−6.2%ないし約+31.8%である。FMD値が+6%未満であったときに、異常なFMDと規定された。
【0166】
各被験者のプロトタイプシステム検査は、上に詳述した複合刺激プロトコルを含んだ。検査の出力を図9a〜eに示す。図9a〜bは、異常内皮作用の個人に対して得られた出力の例を示し、図9c〜dは正常内皮作用の個人に対して得られた出力の例を示し、図9eは、仰臥位でニトログリセリン摂取の結果、動脈直径が増大する間、経過時間が減少する出力の例である。各図は、上に詳述したように、PWT、PWTの標準偏差の百分率、および心拍数を時間の関数として示す(図8a〜cの記述を参照されたい)。
【0167】
図9a〜eに提示された出力の更なる詳細を、下の表1にまとめる。
【表1】

【0168】
結果
下の表2〜3は機械的刺激検査で得られた結果を示す。表2は低リスクの被験者に対して得られた結果を示し、表3は高リスクの被験者に対して得られた結果を示す。
【表2】

【表3】

【0169】
表2〜3の結果を下の表4にまとめる。
【表4】

【0170】
正常な内皮依存性血管反応性の群の平均年齢は36.7±12.5歳であり、異常な内皮依存性血管反応性の群は54.5±11.5歳(p<0.01)であった。ベースラインの平均経過時間は、正常群では37.2±12.7msであり、異常群(p=0.1)では44.8±13.3msであった。
【0171】
図10a〜cは、熱刺激試験で検査した一被験者の経過時間、標準偏差、および心拍数変動性の相対変化を示す。
【0172】
最初の3分間に、経過時間を測定し、平均を算出した(図10aの点線)。右手を冷水に1分間浸けたときに、経過時間(左手で測定した)は、その最下値(〜70%)に達するまで、ほぼ直線的に低下した。右手を冷水に浸けたときに、心拍数はかなり増加した(図10c)。右手を冷水から取り出し、室温水に浸けたとき、経過時間は、初期経過時間に達するまで、ほぼ直線的に増加する(回復)。右手を再び冷水に2分間浸けたとき、経過時間は所期ベースラインから最低で〜60%まで低下し、心拍数は増加した。再び、右手を冷水から取り出し、室温水に入れると、経過時間は再び上昇したが、検査が終了するまで初期ベースラインレベルには達しなかった。
【0173】
下の表5は、冷水にさらされた六人の被験者の経過時間の相対変化を示す。
【表5】

【0174】
表5から分かるように、被験者の手を冷水に浸けたときに、経過時間の低下が見られた。1分間の浸漬に対して2分間の浸漬おける変化は大きくなり、かつ回復時間は長くなることが分かる。
【0175】
図11a〜bは、経過時間および内皮依存性血管反応性の測定値に対する姿勢の影響を示す。超音波診断検査による比較のために、二名の個人を仰臥位の姿勢で、ニトログリセリンを使用して検査した。これらの二つの検査で、プロトタイプシステムは異常の反応を示したが、超音波診断検査は、ニトログリセリンの摂取に対する充血増加の正常な反応を示した。
【0176】
超音波診断検査とプロトタイプシステムとの間の異なる反応に対する考えられる説明を探すために、他の三名の個人を、同一環境で、座位および仰臥位の二つの異なる姿勢で検査した。その結果を下の表6にまとめる。
【表6】

【0177】
表6から分かるように、これらの場合、仰臥位では反応は陰性であり、座位では正常であった。三名の個人を両方の姿勢で検査した場合、ベースライン中の平均経過時間は、座位より仰臥位で実行した検査の方が高かった。得られた結果は、ベースライン中の経過時間の特定の閾値を越えると、プロトタイプシステムが信頼できる測定を実行する能力が低下することを暗示しているかもしれない。可能性を複合刺激検査でさらに検査した。
【0178】
下の表7は、標準プロトコルの作成中に得られた結果をまとめたものである。
【表7】

【0179】
9件のうちの1件だけが、結果が異なることが分かる。加えて、ベースライン中の経過時間が比較的長かった(>40ms)4件では(検査aまたはb)、結果は異常であったが、経過時間が短い場合(<40ms)、それは2/14の事例にしか現れないことも分かった。
【0180】
下の表8は、PWTに対する適度の歩行の影響を示す。得られた結果は、短く適度な歩行の努力は、経過時間を短縮することを示す(p<0.05)。
【表8】

(1)歩行の前後に得られた値の間のp<0.05

【0181】
超音波診断検査とプロトタイプシステム検査との間の比較を、下の表9に示す。
【表9】

【0182】
示すように、11名の被験者のうちの10名において超音波診断検査およびプロトタイプシステム検査は同様の結果であった(p<0.02)。結果が正反対になった被験者4の場合、超音波診断検査は、境界線の6%より1.8%高い、7.8%のFMDを示した。
【0183】
考察
機械的刺激検査では、二つの群を検査した。一つの群(n=10)では、被験者は、内皮機能障害の危険因子をせいぜい一つ持ち、第二群(n=11)では、被験者は内皮機能障害の危険因子を少なくとも二つ持っていた。得られた結果は、せいぜい一つの危険因子を持つ群では、10名の被験者のうち8名が正常な内皮機能を持ち、被験者が少なくとも二つの危険因子を持つ群では、11名の被験者のうちわずか2名だけが正常に機能する内皮を有していた(p<0.002)。異常な内皮依存性の血管反応性を有する群の平均年齢は、正常な内皮依存性の血管反応性を有することが分かった群よりかなり高いことが明らかになった(p<0.01)。
【0184】
熱的刺激検査では、検査した全ての個人で、経過時間パラメータPWTを左手から連続的に記録した(n=6)。右手を冷水に1分間浸けたときに、PWT値はベースラインにに対しかなり低下し(p<0.001)、心拍数は増加した(PWTの30%〜40%の低下)。右手を2分間浸けたときに、100%のベースラインに対するPWTの低下はかなり大きくなった(p<2.5E−6)(PWTの60%〜80%の低下)。手を冷水から引き出した後の回復時間にもかなりの差があった(p<0.05)。
【0185】
対照と冷水への暴露との間の高い有意差(規模の小さい群であるにも拘らず)は、血管収縮の方向の測定が感受性の高い測定であるという予測に合致しており、Moens−Korteweg方程式に一致する。
【0186】
予想外に、仰臥位でプロトタイプシステムおよび超音波診断装置によって得られた結果は、合致しなかった。内皮依存性血管反応機能を二通りの姿勢(座位および仰臥位)で検査した。結果は、座標で得たデータと仰臥位で得たデータとの間の矛盾を示す。これらの結果は、姿勢に対するPWTの依存性をもたらす追加的な物理的因子があることを示す。多くの場合、ベースライン中のPWTの高い値は、その後に反応性充血によるPWTの比較的低い変化が続く。この型の結果は、動脈壁の機械的特性に関連付けられる。
【0187】
この目的のために、システムが適切な動作モードを有する「生理学的ウィンドウ」が定義された。初期PWT値が比較的高い場合(>40ms)、弛緩前の初期半径も比較的幅広であると推測された。これは、比較的大きい初期半径で仰臥位で得られた結果が、「生理学的ウィンドウ」を超えて実行された測定に基づくことを説明することができる。これに比較して、座位で実行されるほとんどの検査の場合のように、初期PWT値が比較的低い場合、検査は「生理学的ウィンドウ」内で実行されたと想定される。データの統計分析は、被験者が異常内皮依存性血管反応性を持つことが分かった場合、被験者が正常内皮依存性血管反応性を持つことが分かった場合に比較して、ベースライン中の平均PWTが著しく高いことを示す。
【0188】
複合刺激検査は、適度な上昇およびアルファ交感神経作用をもたらす検査前の約2分間の適度な歩行が、血管収縮およびPWTの低下を導き、したがって検査を「生理学的ウィンドウ」内で実行することが可能になることを示した。検査前の身体的活動(ランニングまたはジャンプ)を激化すると、反対の効果をもたらし、おそらくβ受容体も活性化し、血管拡張を引きこす。そのような場合、検査が「生理学的ウィンドウ」内で行われる確率は低下する。
【0189】
11名の被験者の研究群に対し、プロトタイプシステムおよび超音波診断によって得られた結果間の比較を実行した。11名の被験者のうちの10名で、プロトタイプシステムおよび超音波診断の両方によって決定された診断は両立した(p<0.015)。一事例では、US検査は上腕直径の境界線増加よりわずかに高い値を示した(7.8%対6%)が、プロトタイプシステムは、第一検査では「無反応」を示し、第二検査では「弱い反応」を示した。事例のうちの5件で、両方の装置が異常な内皮依存性血管反応性を示し、他の5件で、両方の装置が正常な内皮依存性血管反応性を示した。
【0190】
実施例3
第二プロトタイプシステム
第二プロトタイプシステムを設計し、作製した。該システムは、(i)カスタム設計のデータロガー、(ii)全て低周波で動作し、圧電セラミック素子に基づく、上腕、撓骨、および頸動脈トランスデューサ、(iii)心電図胸部電極、(iv)標準パーソナルコンピュータ、および(v)データ解析ソフトウェア(実施例1参照)、を含むものであった。
【0191】
カスタム設計のデータロガーは、増幅器、USBケーブルによりコンピュータに接続された四チャネルA/Dカード、および小型LCDモニタを含んだ。
【0192】
上腕トランスデューサは、動脈閉塞(機械的刺激)および一致の制御された力によるトランスデューサの取付の両方が可能であるように、デュアルコンパートメント式スフィンゴマノメータカフに取り付けられた、直径約2cmのコイン型トランスデューサであった。デュアルコンパートメント式スフィンゴマノメータカフは、二つの別個のエアコンパートメント、つまり腕トランスデューサに力を加え、こうしてトランスデューサを制御された力で皮膚に結合するための低圧コンパートメント(〜20mmHg)、および動脈に機械的刺激を加えるための高圧コンパートメント(最高300mmHg)を含んだ。高圧コンパートメントは、圧力の迅速な解放を容易にする。
【0193】
撓骨および頸動脈トランスデューサは、安定化装置に取り付けられて、圧平圧力測定法用に一定の力を加えることを容易にする、ペンシル型トランスデューサであり、撓骨トランスデューサは手首安定化装置に取り付けられ、頸動脈トランスデューサは頚部安定化装置に取り付けられた。
【0194】
実施例4
第二プロトタイプシステムを使用する生体内測定
実施例2の第二プロトタイプシステムを使用して、22人の志願者に生体内試験を実行した。
【0195】
機械的刺激
上腕および撓骨トランスデューサを、実施例2で詳述したように、検査対象の被験者に接続した。各被験者について、経過時間パラメータPWTおよび振幅パラメータPWA(脈波振幅)の二つのパラメータを得た。各被験者の検査は、超音波診断装置を使用する検査をも含んだ(上記の実施例2の詳細を参照されたい)。
【0196】
図12a〜cは、US測定によって正常内皮機能を有すると診断された被験者の仰臥位中の経過時間(図12a)、標準偏差(図12b)および振幅(図12c)を示す。上腕動脈を3分間閉塞した。閉塞の再開通(6分)後、経過時間は微細な変化を示しただけであったが、振幅は劇的な変化を示した。PWTの値は比較的長く、約45msであった。
【0197】
図13a〜cは、US測定によって正常内皮機能を有すると診断された被験者の座位中の経過時間(図13a)、標準偏差(図13b)および振幅(図13c)を示す。上腕動脈を3分間閉塞した。図示する通り、この場合、経過時間は増加し、振幅はほとんど変化しなかった。PWTの値は比較的小さく、約15msであり、動脈の初期直径が比較的小さかったことを示唆した。
【0198】
図14a〜cは、US測定によって正常内皮機能を有すると診断された被験者の座位中の経過時間(図14a)、標準偏差(図14b)および振幅(図14c)を示す。PWTの値は小さく、約33msであり、測定が「生理学的ウィンドウ」内で開始されたことを示唆した。動脈の半径の増分と共に、非線形的な振幅の増分によって特徴付けられる非線形領域が観測された。
【0199】
図15a〜cは、US測定によって異常内皮機能を有すると診断された被験者の座位中の経過時間(図15a)、標準偏差(図15b)および振幅(図15c)を示す。図示する通り、この場合、経過時間または振幅に変化は観測されず、異常内皮機能を示唆した。PWTの値は短く、約24msであり、測定が上記の「生理学的ウィンドウ」内で実行されたことを示唆した。
【0200】
化学的刺激
ニトログリセリンによる前処置を受けた三名の被験者に対し、化学的刺激の影響を試験した。
【0201】
図16a〜cは、US測定によって正常内皮機能を有すると診断された被験者のニトログリセリン処置後の仰臥位中の経過時間(図16a)、標準偏差(図16b)および振幅(図16c)を示す。図示する通り、この場合、経過時間は低下し、振幅は増加した。PWTの値は比較的大きく、約45msであり、動脈の初期直径が比較的幅広であったことを示唆した。
【0202】
下の表10は、検査対象の全ての被験者の結果をまとめたものである。
【表10】

(*)PWTおよびPWAパラメータの両方
スピアマン相関、r=0.93、p<0.001
【0203】
考察
この実施例では、経過時間パラメータに加えて、振幅パラメータを解析手順に含めた。実施例2の考察で述べたように、内皮機能の測定は経過時間パラメータの変化に基づいており、それによって動脈直径の初期半径が十分に小さい「生理学的ウィンドウ」内で測定を実行する必要がある。そのような条件下で、動脈の壁の弾性率は優れた近似として一定であり、脈波速度は半径の逆数に線形依存する(動脈の半径が増加すると、脈波速度が低下する)。
【0204】
脈波振幅を解析に加えることにより、「生理学的ウィンドウ」を超えても動脈直径の変化に対する感受性が見られた。振幅パラメータは比較的大きい半径に対して増加し、変化におけるコラーゲンの関与を示唆した。同時に、経過時間パラメータの変化は観測されなかった。他方、初期変形サイズが「生理学的ウィンドウ」内であると考えられたときに、振幅パラメータの変化は観測されなかった。
【0205】
実施例5
心電図リードを使用する心拍数変動性の測定
実施例4の内皮機能障害測定の検査を受けた被験者のうちの12名に、心拍数変動性解析を実行した。10名の被験者で、心拍数変動性解析は、正常な自律神経系作用およびしたがっておそらく正常冠動脈機能を示した。解析は、被験者の胸部の心電図リードIIを使用するベースライン中(機械的刺激を加える前)の3分間の記録に基づく。
【0206】
結果を図17a〜hに提示する。
【0207】
図17a、17c、17e、および17gは、正常な心拍数変動性作用および内皮機能障害を持つ被験者の心拍数変動性解析を示す。図17b、17d、17f、および17hは、異常な作用を持つが上腕内皮機能は正常な被験者の心拍数変動性解析を示す。内皮機能または機能障害は、図17a〜hには示さない。
【0208】
図17a〜bは、以下でB2B解析と呼ぶ拍動毎の解析を示す。心拍数変動性作用が正常な被験者と異常な被験者との間の差は、SDNNの値によって示され、それは図17aでは正常範囲内であり、図17bではかなり低い。上述したように、SDNNの値の低下は、副交感神経作用の低下を反映している。加えて、図17aでは、図17bに比べて、拍動間の高い変動が示されている。
【0209】
図17c〜dは、パワースペクトル密度を示す。正常な被験者(図17c)に示される0.3Hz付近の正常なHFピークは、図17dには欠如しており、したがって異常な心拍数変動性が示唆される。加えて、図17cでは、図17dに比較してHFの値が比較的高く、図17cでは、図17dに比較してLF/HFが低く、したがって図17dの被験者の異常心拍数変動性診断も裏付けられる。
【0210】
図17e〜fは、RRIシリーズの高速フーリエ変換解析を示す。再び、図17eに0.3Hz付近に示される明瞭なピークは、図17fではほとんど完全に欠如している。
【0211】
図17g〜hは、B2Bの関数としての相対発病率(ms単位で測定)を示す。図17hに示す狭幅のヒストグラムに比較して、図17gには拍動間の区間の比較的広幅のヒストグラムが提示され、図17gの被験者の正常な心拍数変動性および図17hの被験者の異常な心拍数変動性が示唆される。
【0212】
実施例6
寒冷昇圧試験
この研究では、冠動脈心疾患の既知の危険因子を持たず、したがって正常な内皮機能を持つと推測される、24〜35歳(30.8±3.8歳)の九名の若い被験者に、寒冷昇圧試験を実行した。
【0213】
四つのチャネルが接続された。すなわち、心電図リードIIが胸部に接続され、かつ三つのトランスデューサが上腕、撓骨、および頸動脈に接続された。全てのチャネルのサンプルレートは1000Hzであった。検査は温度管理室(22℃)で実行された。記録前に、自動スフィンゴマノメータで、血圧を測定した。
【0214】
記録プロトコルは、次の熱刺激の期間、すなわち室温で3分、25℃で4分、5℃で2分、および25℃で10分を含んだ。各刺激は、それぞれの温度の水を含む浴に、被験者が右手首を浸けることよって、加えられた。
【0215】
各被験者について、次のパラメータ、すなわちT(上腕−撓骨経過時間)、T(QRS−頸動脈経過時間)、三つの振幅パラメータ(各動脈および心拍数に一つずつ)を抽出した。
【0216】
図18a〜cは検査結果を示し、ここでプロトコルのステップ間の移行はプロトコルt=3、7、および9分における垂直破線によって示される。
【0217】
図18aは、ms単位で測定した二つの経過時間パラメータT(青線)およびT(赤線)の変化を示す。図示するように、回復中にTおよびTは両方とも回復し、それらの当初の(ベースライン)値を超えて増加し続け、上で詳述したように、正常な内皮機能を示唆する。
【0218】
図18bは、ベースライン値の百分率として測定された、三つの振幅全ての変化を示す。全ての振幅の減分は低温期間中(7<t<9分)に観測される。図示するように、頸動脈で測定されたパルスの振幅の減分は、上腕および撓骨動脈で測定された振幅の減分より目立たない。回復中に、全ての振幅は増分を示し、頸動脈で測定されたパルスの振幅の増分はより顕著であり、ベースラインより約50%高い値に達する。振幅上腕および撓骨動脈で測定されたパルスの振幅の増分はそれほど目立たず、ベースラインより約10〜20%下に達する。
【0219】
図18cは、ビット/分単位で測定された心拍数を示す。低温期間中(7<t<9分)に明らかなピークが観察され、交感神経作用の増加を示唆する。室温から25℃への)第一移行中に、微小の心拍数の増分も観測された。図18cに示すように、心拍数は、第二回復期間中(9<t<19分)にそのベースライン値を回復した。
【0220】
わかりやすいように個別の態様として説明した本発明のいくつかの特徴を1つの態様に組み合わせて提供できることは理解されるだろう。逆に、簡潔に説明するために1つの態様として説明した本発明の様々な特徴を個別に提供するか、一部を適当に組み合わせて提供することもできる。
【0221】
本発明をその特定態様に関して説明したが、多くの代替、変更および変形態様が当業者にとって明白であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲の精神およびその広い範囲に包含されるそれらの代替、変更および変形態様は、全て本発明に包含されるものとする。本明細書で言及した刊行物、特許および特許出願は全て、具体的かつ個別的な表示の有無にかかわらず、参照により完全な形で本明細書に組み込まれるものとする。また、本願で行う参考文献の引用および記載は、当該参考文献を本発明に対する先行技術として利用できるとの自認ではないと解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る、内皮依存性血管作用を決定する非侵襲的方法のフローチャート図である。
【図2】ほぼ一定のヤング率を想定して、動脈の半径の変化の関数としての圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間の相対的変化の理論的推定を示す。
【図3】本発明の好適な実施形態に係る、被験者の内皮依存性血管作用を決定する別の方法のフローチャート図である。
【図4】本発明の好適な実施形態に係る、被験者の内皮依存性血管作用を決定するためのシステムの略図である。
【図5】本発明の好適な実施形態に係る、圧力関連信号を感知し伝送するためのトランスデューサの略図である。
【図6】約1Hzの入力信号に対するトランスデューサの応答を示す。
【図7】本発明の好適な実施形態に係る、データ解析手順のフローチャート図である。
【図8】図7の手順の代表的グラフ出力である。
【図9a】本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
【図9b】本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
【図9c】本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
【図9d】本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
【図9e】本発明の好適な実施形態に係る、複合刺激を含む比較検査の出力を示す。
【図10】本発明の好適な実施形態に係る、熱的刺激試験で検査した一被験者の経過時間、標準偏差、および心拍変動性の相対的変化を示す。
【図11a】ニトログリセリンによる治療中の経過時間および内皮依存性血管反応性の測定に対する横臥姿勢の影響を示す。
【図11b】ニトログリセリンによる治療中の経過時間および内皮依存性血管反応性の測定に対する横臥姿勢の影響を示す。
【図12】US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の仰臥位中の経過時間(図12a)、標準偏差(図12b)、および振幅(図12c)を示す。
【図13】US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の座位中の経過時間(図13a)、標準偏差(図13b)、および振幅(図13c)を示す。
【図14】US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、別の被験者の座位中の経過時間(図14a)、標準偏差(図14b)、および振幅(図14c)を示す。
【図15】図15a〜cは、US測定によって異常な内皮機能を有すると診断された、被験者の座位中の経過時間(図15a)、標準偏差(図15b)、および振幅(図15c)を示す。
【図16】US測定によって正常な内皮機能を有すると診断された、被験者の仰臥位中の経過時間(図16a)、標準偏差(図16b)、および振幅(図16c)を示す。
【図17a−b】正常な自律神経系作用および内皮機能障害を有する被験者(17a)、ならびに異常な自律神経系作用および正常な上腕内皮機能を有する被験者(17b)の心拍数変動性解析の結果を示す。
【図17c−d】正常な自律神経系作用および内皮機能障害を有する被験者(17c)、ならびに異常な自律神経系作用および正常な上腕内皮機能を有する被験者(17d)の心拍数変動性解析の結果を示す。
【図17e−f】正常な自律神経系作用および内皮機能障害を有する被験者(17e)、ならびに異常な自律神経系作用および正常な上腕内皮機能を有する被験者(17f)の心拍数変動性解析の結果を示す。
【図17g−h】正常な自律神経系作用および内皮機能障害を有する被験者(17g)、ならびに異常な自律神経系作用および正常な上腕内皮機能を有する被験者(17h)の心拍数変動性解析の結果を示す。
【図18】寒冷昇圧試験中の二つの経過時間パラメータ(図18a)、三つの振幅パラメータ(図18b)、および心拍数(図18c)の変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の内皮依存性血管作用を決定する方法であって、
少なくとも一つの血管に隣接する複数の位置の圧力関連信号を記録すること;
前記圧力関連信号から少なくとも一つのパラメータを抽出すること;および
前記少なくとも一つのパラメータを使用して前記少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特性の変化を決定し、前記変化が内皮機能を表わすものであり、それによって被験者の内皮依存性血管作用を決定すること
を含む方法。
【請求項2】
被験者の自律神経系作用を決定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの血管を刺激することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの血管を刺激することは、機械的刺激、熱的刺激、化学的刺激、電気的刺激、精神的ストレス刺激、および身体運動刺激から成る群から選択された手順によって達成される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの血管を刺激することは、前記少なくとも一つの血管に外部圧力を加えることによる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの血管を刺激することは、前記少なくとも一つの血管の温度を低下することによる請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの血管は、上腕動脈、撓骨動脈、および頸動脈からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
相関関数を得るために前記内皮機能および前記自律神経系作用を相関させること、および前記相関関数を使用して被験者の内皮依存性血管作用を少なくとも予備的に決定することをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記自律神経系作用の決定は、前記圧力関連信号の心拍数変動性解析による請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記自律神経系作用の決定は、被験者の胸部の心電図信号を記録すること、および前記心電図信号の心拍数変動性解析を実行し、それによって前記自律神経系作用を決定することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前駆出期間および弁動脈期間を決定することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記弁動脈期間の前記弁は大動脈弁であり、前記弁動脈期間の前記動脈は頸動脈である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆出期間および前記弁動脈期間の前記決定は、前記心電図信号のピークと前記圧力関連信号のピークとの間の経過時間を決定することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記心電図信号の前記ピークはQRSピークを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記圧力関連信号の前記記録は、圧電セラミック素子による請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記圧力関連信号の前記記録は、膜に基づくセンサによる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記膜に基づくセンサはエレクトレットマイクロホンである請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つのパラメータの周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために前記周波数分解を使用することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つのパラメータは、前記圧力関連信号の振幅、前記圧力関連信号の幅、および前記圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記振幅の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために前記周波数分解を使用することをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記幅の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために前記周波数分解を使用することをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記経過時間の周波数分解を得ること、および被験者の内皮依存性血管作用を決定するために前記周波数分解を使用することをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも一つのパラメータは、前記圧力関連信号の振幅、前記圧力関連信号の幅、前記圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間、および前記心電図信号のピークと前記圧力関連信号のピークの間の経過時間から成る群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの血管の前記少なくとも一つの特徴は、前記少なくとも一つの血管の半径および前記少なくとも一つの血管の弾性率から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つのパラメータの前記抽出は、
(a)第一位置の記録された圧力関連信号を走査して、第一ピークを検出すること、
(b)第二位置の記録された圧力関連信号を走査して、前記第一ピークに対応する第二ピークを検出すること、
(c)前記第一ピークと前記第二ピークとの間の経過時間を測定すること、および
(d)前記ステップ(a)〜(c)を少なくとも一回繰り返すこと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
被験者の内皮依存性血管作用を決定するためのシステムであって、該システムは、
少なくとも一つの血管に隣接する複数の位置の圧力関連信号を記録するためのセンサの配列と;
前記圧力関連信号を受け取り、記録し、かつ処理するように動作可能な処理ユニットと
を備え、
前記処理ユニットは、前記圧力関連信号から少なくとも一つのパラメータを抽出し、かつ前記少なくとも一つのパラメータを使用して前記少なくとも一つの血管の少なくとも一つの特徴の変化を決定するように設計およびプログラムされ、前記変化は内皮機能を表わして成るシステム。
【請求項27】
被験者の自律神経系作用を決定するための電子計算機能性をさらに備える請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記少なくとも一つの血管を刺激するためのメカニズムをさらに備える請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記少なくとも一つの血管を刺激するための前記メカニズムは、機械的メカニズム、熱的メカニズム、化学的メカニズム、電気的メカニズム、精神的ストレスを発生させるためのメカニズムおよび被験者が身体運動を行うための装置から成る群から選択される請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記メカニズムは、前記少なくとも一つの血管に外部圧力を加えるように動作可能である請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記メカニズムはスフィンゴマノメータを含む請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記メカニズムは、前記少なくとも一つの血管の温度を低下するように動作可能である請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記メカニズムは、予め定められた温度の流体の浴および流体のカフからなる群から選択される請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記少なくとも一つの血管は、上腕動脈、撓骨動脈、および頸動脈からなる群から選択される請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記処理ユニットは、前記圧力関連信号から心拍数変動性を算出し、それによって前記自律神経系作用を決定するように動作可能である請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
被験者の胸部に接続できるように設計された、少なくとも一つの心電図リードをさらに備える請求項27に記載のシステム。
【請求項37】
前記処理ユニットは、前記少なくとも一つの心電図リードによって感知された心電図信号から心拍数変動性を算出し、それによって前記自律神経系作用を決定するように動作可能である請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記センサは圧電セラミック素子である請求項26に記載のシステム。
【請求項39】
前記センサは膜に基づくセンサである請求項26に記載のシステム。
【請求項40】
前記センサはエレクトレットマイクロホンである請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記少なくとも一つのパラメータを解析し、前記少なくとも一つのパラメータの周波数分解を得るためのスペクトルアナライザをさらに含み、前記周波数分解は被験者の内皮依存性血管作用を表わす請求項26に記載のシステム。
【請求項42】
前記少なくとも一つのパラメータは、前記圧力関連信号の振幅、前記圧力関連信号の幅、および前記圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間から成る群から選択される請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記少なくとも一つのパラメータは、前記圧力関連信号の振幅、前記圧力関連信号の幅、前記圧力関連信号の二つのピーク間の経過時間、および前記心電図信号のピークと前記圧力関連信号のピークの間の経過時間から成る群から選択される請求項36に記載のシステム。
【請求項44】
前記少なくとも一つの血管の前記少なくとも一つの特徴は、前記少なくとも一つの血管の半径および前記少なくとも一つの血管の弾性率から成る群から選択される請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
被験者の内皮依存性血管作用を決定するための方法であって、
(a)少なくとも一つの血管に第一刺激を与えること;
(b)前記少なくとも一つの血管中に流れる血液の脈波速度を測定すること;
(c)被験者の自律神経系作用を決定すること;
(d)指数を有する相関関数を得るために前記脈波速度および前記自律神経系作用を相関させること;および
(e)前記指数が予め定められた値を持つ場合、
(i)前記少なくとも一つの血管に第二刺激を与え、かつ
(ii)前記ステップ(b)〜(c)を繰り返し、それによって被験者の内皮依存性血管作用を決定すること、
を含む方法。
【請求項46】
前記ステップ(e)は、少なくとも一つの追加的血管に前記第二刺激を加えること、および前記少なくとも一つの追加的血管に対し前記ステップ(b)〜(c)を繰り返すことをさらに含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第一および前記第二刺激は、機械的刺激、熱的刺激、化学的刺激、電気的刺激、精神的ストレス刺激、および身体運動刺激から成る群から各々独立して選択される請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記刺激は外部圧力を含む請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記刺激は温度低下を含む請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも一つの血管は、上腕動脈、撓骨動脈、および頸動脈からなる群から選択される請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも一つの追加的血管は、上腕動脈、撓骨動脈、および頸動脈からなる群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記自律神経系作用の決定は、前記圧力関連信号の心拍数変動性解析による請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記自律神経系作用の決定は、被験者の胸部の心電図信号を記録すること、および前記心電図信号の心拍数変動性解析を実行し、それによって前記自律神経系作用を決定することを含む請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記脈波速度の測定は、圧電セラミック素子を使用して圧力関連信号を記録することによる請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記脈波速度の測定は、膜に基づくセンサを使用して圧力関連信号を記録することによる請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a−b】
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【図17c−d】
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【図17e−f】
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【図17g−h】
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【図18】
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【公表番号】特表2006−516000(P2006−516000A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558325(P2004−558325)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/IL2003/001025
【国際公開番号】WO2004/052196
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
ペンティアム
【出願人】(503255958)ラモト アット テル アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】