説明

内視鏡用冷却装置及び内視鏡装置

【課題】温度環境の変化に対応して内視鏡装置の挿入部を効果的に冷却して、高温環境下において安全かつ安定的に被検体を観察することが可能な内視鏡用冷却装置及び内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡用冷却装置20は、挿入部6の外周面との間に冷却用流体Aが流れる冷却用流路21を形成して挿入部6の先端側に装着されるシース22と、シース22に接続されて、冷却用流路21と連通して冷却用流体Aを供給する流体供給部28と、シース22に接続されて、冷却用流路21と連通して冷却用流体Aを排出させる流体排出部29と、シース22の内部、または、外面近傍の温度状態を検出する少なくとも一つの温度センサ26と、温度センサ26による検出温度が予め設定された閾値を超えたか否かを判断する制御部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を観察するための内視鏡装置の挿入部に装着される内視鏡用冷却装置、及び、これを備える内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、操作者(観察者)が直接目視できない管路などの狭窄部を観察可能とすべく、被検体に挿入可能な挿入部を有する内視鏡装置が利用されている。このような内視鏡装置の挿入部先端には、固定撮像素子(CCD)等の観察部材が配設されていて、挿入部先端付近の被検体を観察することが可能である。また、挿入部先端に照明手段が設けられていて挿入部先端付近を照明することができ、被検体を好適に観察することが可能である。
【0003】
ここで、内視鏡装置の挿入部は、先端側に上記のように固体撮像素子(CCD)等の観察部材や照明手段が配設されているため、これらの耐熱温度の関係から最大使用許容温度が80℃程度に制限されている。そのため、工業用内視鏡として複雑な構造のエンジン等の内部を観察しようとしても、運転終了時の温度が200℃以上の高温状態となっているので、このままでは挿入部を内部に挿入して観察することができず、使用範囲が狭くなってしまう。そこで、このような高温環境下でも観察を行うことができるような内視鏡用冷却装置及び内視鏡装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
すなわち、上記特許文献1に記載の内視鏡装置は、内側軟性体、及び、内側軟性体との間に流体の流通する空間を形成して設けられた外側軟性体を有する挿入部と、外側軟性体の基端に固定され、内部が流体の流通する空間と連通している外筒と、外筒に固定されて、外筒の内部に流体を流入させることが可能なバルブとを備えている。そして、バルブと冷却用流体を供給する供給装置とを供給管路で接続して冷却用流体を流入させることで、冷却用流体は、外筒の内部から内側軟性体と外側軟性体との間を通って先端から放出される。このため、冷却用流体による冷却によって高温下でも使用可能になるとされている。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の内視鏡装置は、挿入部の外周面を覆う本体チューブと、本体チューブの外周面を覆う外チューブと、外チューブの先端部を気密封止するカバー部材とを備えている。そして、基端側の流体供給口から冷却用流体を供給することで、冷却用流体は、挿入部と本体チューブとのクリアランスを通り先端側まで送られる。さらに、冷却用流体は、先端部で折り返されて、本体チューブと外チューブとのクリアランスを通り基端側に向けて送られ、基端側の流体排出口から排出されることとなる。このため、冷却用流体を挿入部の先端から外方へ排出させないようにして挿入部を冷却することができるものとされている。
【特許文献1】特開平2000−46482号公報
【特許文献2】特開平2007−93857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の内視鏡装置では、外部環境の温度が上昇した場合、あるいは、何らかの原因で冷却用流体が流通する経路に漏れが生じることで冷却用流体の流通する量が変化した場合などでは、外部から伝達する熱量に対して冷却用流体による冷却量が不十分となってしまう場合があった。このような場合、内視鏡装置の挿入部が温度上昇してしまい、観察部材や照明手段などの損傷の原因となってしまうおそれがあった。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、温度環境の変化に対応して内視鏡装置の挿入部を効果的に冷却して、高温環境下において安全かつ安定的に被検体を観察することが可能な内視鏡用冷却装置及び内視鏡装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、冷却用流体を流通させて、内視鏡装置の挿入部の内、被検体の観察を行うための観察部材を有する先端側を冷却する内視鏡用冷却装置であって、前記挿入部の外周面との間に前記冷却用流体が流れる冷却用流路を形成して前記挿入部の先端側に装着されるシースと、前記シースに接続されて、前記冷却用流路と連通して前記冷却用流体を供給する流体供給部と、前記シースに接続されて、前記冷却用流路と連通して前記冷却用流体を排出させる流体排出部と、前記シースの内部、または、外面近傍の温度状態を検出する少なくとも一つの温度センサと、該温度センサによる検出温度に応じて、前記冷却用流体の流量を制御する制御部とを備えることを特徴としている。
【0009】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、シースを内視鏡装置の挿入部の先端側に装着した状態では、流体供給部から供給される冷却用流体は、シースと挿入部との間の冷却用流路に供給され、挿入部を覆うように流通し、流体排出部から排出されることとなる。すなわち、挿入部の外周面は、冷却用流路に流通する冷却用流体によって冷却されることとなり、高温環境下での使用が可能となり、挿入部の観察部材によって被検体を観察することが可能となる。ここで、温度センサによってシースの内部または外面近傍の温度状態が検出されていて、制御部は、温度センサによる検出温度を監視している。これにより、制御部によってシースの内部または外面近傍の温度状態の変化を正確に把握することができる。そして、制御部によって、検出温度に応じて、冷却用流体の流量を制御することで、温度環境の変化に係らず内視鏡装置の挿入部の温度状態を常に安定した状態に保つことができる。
【0010】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、操作者に前記シースの内部または外面近傍の温度状態を報知する報知手段を備え、前記制御部は、前記温度センサによる検出温度に応じて、前記報知手段によって前記操作者に報知させることがより好ましいとされている。
【0011】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって、温度センサによる検出温度に応じて報知手段によって操作者に対して報知させることで、操作者はシースの内部または外面近傍の温度状態を把握することができる。
【0012】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記制御部は、前記温度センサの前記検出温度が予め設定された閾値を超えた場合に、前記冷却用流体の流量を制御することがより好ましいとされている。
【0013】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって、検出温度が閾値を超えた判断した場合に流体供給部からの冷却用流体の流量を変化させることで、内視鏡装置の挿入部の温度状態を自動的に安定した状態に保つことができる。
【0014】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記制御部は、前記閾値が予め複数設定されていて、前記温度センサの前記検出温度が、いずれの前記閾値間であるかに基づいて、前記冷却用流体の流量を制御ことがより好ましいとされている。
【0015】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって検出温度が複数の閾値のいずれの間であるか判断し、制御することで、より詳細にシースの内部または外面近傍の温度状態を把握し、冷却用流体の流量をより好適な状態にすることができる。
【0016】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記温度センサを複数備え、各前記温度センサそれぞれの検出温度に応じて、少なくとも前記冷却用流体の流量を制御することがより好ましいとされている。
【0017】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって、複数の温度センサによってシースの内部または外面近傍の温度状態を検出することで、より詳細にシースの内部または外面近傍の温度状態を把握し、冷却用流体の流量を制御することができる。また、いずれかの温度センサの検出温度に基づいて異常が認められる場合には、各温度センサの検出温度の相違によって、その原因を特定することができる。
【0018】
さらに、上記の内視鏡用冷却装置において、前記制御部は、各前記温度センサのそれぞれと対応して異なる閾値が予め設定されていて、各前記温度センサそれぞれについて、対応する前記閾値を超えているか否か判断し、各判断結果に応じて前記冷却用流体の流量を制御することがより好ましいとされている。
【0019】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって各温度センサの検出温度について、対応する閾値を超えているか否か判断し、冷却用流体の流量を制御することで、内視鏡装置の挿入部の温度状態を、自動的により安定した状態に保つことができる。
【0020】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記温度センサは、前記シースを装着する前記挿入部の外周面に設けられていることがより好ましいとされている。
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、温度センサが挿入部の外周面に設けられていることで、温度センサによって挿入部の温度状態を直接的に評価することができる。
【0021】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記温度センサは、前記冷却用流路を流通する前記冷却用流体の温度を検出可能に前記シースの内部に設けられているものとしても良い。
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、温度センサがシースの内部に設けられていて、流通する冷却用流体の温度を検出することで、シース内部の冷却用流体の温度状態を正確に評価することができる。
【0022】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記温度センサは、前記シースの外面近傍の温度を検出可能に前記シースの外面に設けられているものとしても良い。
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、温度センサがシースの外面に設けられていて、シースの外面近傍の温度を検出することで、シースの外面近傍の温度状態を正確に評価することができる。
【0023】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記温度センサは、前記流体排出部から排出された前記冷却用流体の温度を検出可能に設けられているものとしても良い。
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、温度センサによってシースの内部を冷却して流体排出部から排出された冷却用流体の温度を検出することで、シースの内部の温度状態を正確に評価することができる。
【0024】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記流体供給部は、前記冷却用流路に前記冷却用流体として気体を供給する第一の供給部と、前記冷却用流路に前記冷却用流体として液体を供給する第二の供給部と、前記第一の供給部の前記気体または前記第二の供給部の前記液体に、前記冷却用流路に供給する前記冷却用流体を切り替える切替部とを備えることがより好ましいとされている。
【0025】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、切替部によって、冷却用流路に供給する冷却用流体として、第一の供給部による気体または第二の供給部による液体のいずれかを状況に応じて選択することができ、内視鏡装置の挿入部をより好適に冷却することができる。
【0026】
さらに、上記の内視鏡用冷却装置において、前記制御部は、前記温度センサの検出温度に応じて、前記切替部を駆動して、前記冷却用流路に供給する前記冷却用流体を、前記第一の供給部の前記気体と前記第二の供給部の前記液体との一方から他方へ切り替えさせることがより好ましいとされている。
【0027】
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、制御部によって流体供給部の切替部を駆動することで、判断結果に基づいて自動的に冷却用流体として第一の供給部の気体または第二の供給部の液体をいずれか選択することができ、内視鏡装置の挿入部をより好適に冷却することができる。
【0028】
また、上記の内視鏡用冷却装置において、前記流体供給部から供給される前記冷却用流体を冷却する冷却手段を備えることがより好ましいとされている。
この発明に係る内視鏡用冷却装置によれば、冷却手段によって冷却用流体を冷却した状態で冷却用流路に供給することができ、内視鏡装置の挿入部をより好適に冷却することができる。
【0029】
また、本発明の内視鏡装置は、上記の内視鏡用冷却装置と、前記シースが装着される挿入部とを備えることを特徴としている。
この発明に係る内視鏡装置によれば、内視鏡用冷却装置を備えていることで、温度環境の変化に対応して挿入部を好適に冷却することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の内視鏡用冷却装置及び内視鏡装置によれば、温度センサと制御部とを備えることで、温度環境の変化に対応して内視鏡装置の挿入部を効果的に冷却して、高温環境下において安全かつ安定的に被検体を観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、所謂側視型のものであって、図1に示すように、照明部2及び観察部材3を有する内視鏡先端部5が先端に設けられて、細長で可撓性を有するとともに湾曲操作可能な挿入部6と、挿入部6を湾曲操作させるジョイスティック7が配された操作部8と、挿入部6と別体として内視鏡先端部5近傍から観察部材3によって観察する方向を照明する照明手段9と、空気や水等の冷却用流体を流通させて挿入部6の先端側を冷却する内視鏡用冷却装置20とを備えている。挿入部6において、観察部材3は、内視鏡先端部5から露出する観察レンズ3aと、内視鏡先端部5に内蔵され、観察レンズ3aによって拡大された像を撮像する図示しないCCUとを備える。また、照明部2は、LEDやライトガイドである。また、照明手段9は、挿入部6とともに後述する内視鏡用冷却装置20のシース22の内部に配設され、基端側で外部に延出されたライトガイド9aと、ライトガイド9aの基端に設けられたライトガイドコネクタ9bとを備える。なお、ライトガイド9aにおいて外部に延出された範囲には、カバー9cが外装されている。また、図1に示すように、内視鏡装置1は、上記のCCUにより撮像された被検体を画像表示させる表示部10が配設された本体部11を備えている。さらに本体部11には、光源11aが内蔵されていて、コネクタ11bに照明手段9のライトガイドコネクタ9bを接続することで、ライトガイド9aの先端9dから照明光を発光させることが可能である。
【0032】
図1に示すように、内視鏡用冷却装置20は、挿入部6の外周面との間に冷却用流体が流れる冷却用流路21を形成して挿入部6の先端側に装着されるシース22と、装置本体23とを備えている。装置本体23は、制御部24と、エアコンプレッサー25と、熱電対である温度センサ26と、制御部24と接続されていて報知手段としてモニタ27a及びブザー27bを有する端末27とを備える。エアコンプレッサー25とシース22の後述する供給口35gとの間にはエアホース25aが接続されている。また、エアコンプレッサー25の内部には、排出される圧縮空気の流量を調整する流量調整バルブ25bが内蔵されている。
【0033】
また、温度センサ26は、挿入部6の外周面に設けられ、より詳しくは観察部材3に近接して設けられている。そして、温度センサ26は、挿入部6の内部に配設される配線26aによって、本体部11を中継し、制御部24の端子24aと接続されている。また、 図3に示すように、制御部24は、温度センサ26から入力される電位差に基づいて検出温度をデータとして出力する温度検出部24bと、温度検出部24bから出力された検出温度Tを解析する温度制御部24cとを備える。温度制御部24cには、温度センサ26により検出される検出温度Tと対応して閾値が予め設定されていて、温度制御部24cは、検出温度Tが閾値を超えているか否かの判断を行っている。なお、本実施形態では、温度制御部24cには、観察部材3の耐熱性と対応させて、温度の高い方から順に第一の閾値S1、第二の閾値S2、及び、第三の閾値S3の三つの閾値が予め設定されている。ここで、温度センサ26による検出温度Tが最も小さい第三の閾値S3より小さい値である場合には、観察部材3の使用に対して最も安全な温度環境であることを表わしている。
【0034】
図1及び図3に示すように、エアコンプレッサー25は、エアホース25aを介してシース22の内部の冷却用流路21に冷却用流体として圧縮空気Aを送り出すことが可能であり、エアコンプレッサー25とエアホース25aと供給口35gとで流体供給部28を構成している。ここで、エアコンプレッサー25の流量調整バルブ25bは温度制御部24cと接続されていて、エアコンプレッサー25による圧縮空気Aの流量は、温度制御部24cによって予め設定された四段階に調整することが可能となっている。なお、温度制御部24cによる制御の詳細については、後述する。また、流体供給部28によって冷却用流路21に供給された圧縮空気Aは、流体排出部29としてシース22に設けられた後述する排出口34fから大気に排出されることとなる。
【0035】
図1及び図2に示すように、シース22は、本実施形態においては金属部材で形成された硬性タイプであり、先端が開口されて挿入部6の外周面との間に圧縮空気Aが流れる第一の冷却用流路21aを形成する略円形断面の内シース30と、先端が閉塞されて内シース30の外周面との間に圧縮空気Aが流れる第二の冷却用流路21bを形成する略円形断面の外シース31とを備える。なお、シース22は、軟性タイプとし、樹脂材などで形成されているものとしても良い。外シース31の外周面には、装着される挿入部6の観察部材3と対応する位置に形成された第一の開口部31aと、ライトガイド9aの先端9dと対応する位置に形成された第二の開口部31bとを有する。また、外シース31には、外径が外シース31の内径と略等しく設定されたガラス管32が嵌め込まれている。ガラス管32は、先端が外シース31の先端に当接するとともに、基端が外シース31の基端から突出している。
【0036】
ガラス管32の先端内周面には、略円板状のゴムキャップ33が接着嵌合されていて、これによりガラス管32の先端側を封止し圧縮空気Aが排出されてしまうのを規制している。また、外シース31の基端には、略管状の第一の口金34が嵌合されている。第一の口金34は、外シース31の基端から突出する本体部34aと、本体部34aから先端側へ延出され外シース31に外嵌された嵌合部34bとを有する。嵌合部34bの内周面には雌ネジ34cが形成されていて、外シース31の基端外周面に形成された雄ネジ31cに螺合されている。また、本体部34aの内径は、嵌合部34bから段部34dを有して段状に縮径していて、段部34dと外シース31との間には、略環状でゴムなどの弾性材で形成されたパッキン34eが介装されている。そして、外シース31に対して第一の口金34を締め込むことで、パッキン34eは、弾性的に変形して内周面側に膨出し、ガラス管32の基端外周面に外嵌されることとなり、これにより外シース31の基端と、第一の口金34及びガラス管32のそれぞれとの間を封止し、圧縮空気Aが排出されてしまうのを規制している。
【0037】
また、第一の口金34の本体部34aには、外周面側に突出し、内周面側の第二の冷却用流路21bと連通する排出口34fが設けられていて、第二の冷却用流路21bの基端から圧縮空気Aを排出可能としている。さらに、第一の口金34の本体部34aの外周面において、排出口34fの基端側には雄ネジ34gが形成されている。また、第一の口金34において、本体部34aの基端には、略管状の第二の口金35が嵌合されている。第二の口金35は、第一の口金34の本体部34aの基端から突出する本体部35aと、本体部35aの先端側へ延出されて第一の口金34に外嵌された嵌合部35bと、本体部35aの基端側へ延出されて固定部材36が接続された固定部35cとを有する。嵌合部35bの内周面には、雌ネジ35dが形成されて、第一の口金34の本体部34aの雄ネジ34gに螺合されている。また、本体部35aは、内径が嵌合部35bから段部35eを有して段状に縮径しているとともに、内シース30の外径よりも僅かに大きく設定されて内シース30の基端が挿入されている。また、第二の口金35の段部35eと第一の口金34の本体部34aとの間には、ゴムなどの弾性材で形成された略環状のパッキン35fが介装されている。そして、第一の口金34に対して第二の口金35を締め込むことで、パッキン35fが弾性的に変形して内周面側に膨出し、内シース30の外周面に外嵌されることとなる。このため、パッキン35fは、第一の口金34及び第二の口金35に対して内シース30の基端を固定するとともに、第一の冷却用流路21aの基端と第二の冷却用流路21bの基端との間を封止して圧縮空気Aが連絡してしまうのを規制している。さらに、パッキン35fは、第一の口金34と第二の口金35との間も封止して圧縮空気Aが排出されてしまうのを規制している。
【0038】
第二の口金35の本体部35aには、外周面側に突出し、内周面側の第一の冷却用流路21aと連通する供給口35g及び照明手段挿通口35hが形成されている。供給口35gには、接続継手25cを介してエアホース25aが接続されていて、これによりエアコンプレッサー25からの圧縮空気Aを第一の冷却用流路21aの基端に供給することが可能である。また、照明手段挿通口35hには、照明手段9のライトガイド9aが挿通されていて、ライトガイド9aと照明手段挿通口35hとの間には略管状のパッキン35iが介装され、圧縮空気Aが排出されてしまうのを規制している。第二の口金35の本体部35aと固定部35cとの間には、内径が挿入部6の外径よりも僅かに大きく設定されて内周面側に突出した環状凸部35jが形成されている。また、固定部35cの基端内周面には雌ネジ35kが形成されている。
【0039】
固定部材36は、挿入部6が挿通される貫通孔36aを有した略円柱状の部材で、外周面に第二の口金35の雌ネジ35kに螺合する雄ネジ36bが形成された接続部36cと、接続部36cの基端外周面側にフランジ状に突出した把持部36dとを有する。また、第二の口金35の固定部35cの内部において、環状凸部35jと固定部材36の接続部36cとの間には、ゴムなどの弾性材で形成されたパッキン37が介装されている。パッキン37は、略環状で、外径が第二の口金35の固定部35cの内径と略等しく、若しくは若干小さく設定されているとともに、内径が挿入部6の外径と略等しく、若しくは若干小さく設定されている。そして、固定部材36の把持部36dを把持して、第二の口金35の固定部35cに対して固定部材36を締め込むことで、パッキン37が弾性的に変形して内周面側に膨出し、挿入部6の外周面に外嵌することとなる。このため、パッキン37は、第二の口金35に対して挿入部6を固定するとともに、第一の冷却用流路21aの基端を封止し、圧縮空気Aが排出されてしまうのを規制している。
【0040】
ここで、内シース30の内部には、補助シース38が挿入されている。そして、挿入部6は、補助シース38の内部に配設される一方、照明手段9のライトガイド9aは、内シース30と補助シース38との間の隙間に挿入部6と隔離して配設される。また、内シース30には、外シース31の第一の開口部31a及び第二の開口部31bとそれぞれ対向する位置に、貫通孔30a、30bが形成されている。同様に補助シース38にも外シース31の第一の開口部31a及び第二の開口部31bとそれぞれ対向する位置に、貫通孔38a、38bが形成されている。さらに補助シース38には、先端側の貫通孔38bと対向する位置で外周面側から内周面側まで連通する案内孔38cが形成されている。そして、挿入部6は、内シース30の内部おいて補助シース38に挿入された状態で、補助シース38の貫通孔38a及び内シース30の貫通孔30aから、ガラス管32及び外シース31の第一の開口部31aを介して外部を観察可能であり、ガラス管32及び外シース31の第一の開口部31aによって観察用窓部40が構成されている。また、補助シース38と内シース30との間に配設されたライトガイド9aは、先端側において湾曲して案内孔38cから補助シース38の内部に配設され、先端9dが内シース30の貫通孔30b及び補助シース38の貫通孔38bに位置している。このため、照明手段9のライトガイド9aの先端9dから発する照明光をガラス管32及び第二の開口部31bを介して外部に照明可能であり、すなわちガラス管32と第二の開口部31bによって照明用窓部41を構成している。
【0041】
次に、本実施形態の内視鏡装置1及び内視鏡用冷却装置20の作用並びに制御部24による制御の詳細について説明する。
内視鏡装置1で被検体を観察する場合、図1に示すように、挿入部6の先端側に、内視鏡用冷却装置20のシース22を装着し、この状態で被検体の中に挿入していく。この際、エアコンプレッサー25を駆動させることで、エアホース25aから供給口35gを介して第一の冷却用流路21aに圧縮空気Aが供給されることとなる。なお、圧縮空気Aの流量は、初期状態において最も小さいレベル1に設定されている。ここで、図2に示すように、第一の冷却用流路21aの基端はパッキン37によって封止されているので、圧縮空気Aは、基端側に排出されてしまうこと無く、第一の冷却用流路21aの先端側まで流通することとなる。このため、挿入部6は、まず、第一の冷却用流路21aに流通する圧縮空気Aによって好適に冷却されることとなる。
【0042】
次に、図2に示すように、第一の冷却用流路21aの先端側に流入した圧縮空気Aは、外シース31の先端側が閉塞されていることから、内シース30の先端開口、または、内シース30の貫通孔30a、30b及び補助シース38の貫通孔38a、38bによって、内シース30の内周面側から外周面側へと流通して、第二の冷却用流路21bに流入することとなる。そして、圧縮空気Aは、第二の冷却用流路21bにおいて先端側から基端側へ流通することとなり、内側に位置する挿入部6は再度冷却されることとなる。そして、第二の冷却用流路21bの基端がパッキン34e、35fによって閉塞されていることから、圧縮空気Aは、第二の冷却用流路21bの基端側で排出口34fから外部へ排出されることとなる。すなわち、挿入部6に内視鏡用冷却装置20を装着した状態で被検体の内部に挿入すれば、挿入部6は、外周面及び先端面が第一の冷却用流路21a及び第二の冷却用流路21bを流通する圧縮空気Aによって覆われて冷却されることとなり、照明用窓部41を介して照明手段9のライトガイド9aで外部を照明するとともに、挿入部6の観察部材3によって観察用窓部40を介して外部の被検体を好適に観察することができる。この際、本実施形態では、上記のように挿入部6に搭載された照明部2を使用せず、観察手段からある程度離隔した位置に配設した照明手段9のライトガイド9aからの照明光によって照明している。このため、照明手段9及び観察部材3によって、ガラス越しに照明し、観察を行ったとしても、照明光によるハレーションを無くし、若しくは軽減させることができる。
【0043】
ここで、シース22の内部の温度環境、特に挿入部6の温度は、図3に示すように、温度センサ26によって検出され、制御部24の温度制御部24cによって常に監視されていて、必要に応じてモニタ27a、ブザー27bで警告するとともに、コンプレッサ25による圧縮空気の流量を制御する。図4は、温度制御部24cによる判断、制御手順を表すフロー図を示している。図4に示すように、温度制御部24cは、温度センサ26により検出された検出温度Tについて、予め設定されている第一の閾値S1、第二の閾値S2、及び、第三の閾値S3のそれぞれを超えているか否か判断する。そして、最も大きい第一の閾値S1以上である場合には、非常に危険な状態で観察部材3やその他挿入部6の各構成に損傷が発生するおそれがあるとして、流量を最大のレベル4に設定して挿入部6を冷却する。さらに、温度制御部24cは、モニタ27aにおけるランプ表示をレベル3として表示させ、また、ブザー27bからブザー音を発生させることで、挿入部6の温度状態が最も危険な状態であることを操作者に報知する。このため、操作者は、モニタ27aのランプ表示を確認することで、または、ブザー音を聞くことで、挿入部6の温度状態が危険な状態であることを認識することができ、挿入部6の損傷を回避するべく観察を中止することができる。
【0044】
また、検出温度Tが、第一の閾値S1よりも小さいものの、二番目に大きい第二の閾値S2以上である場合には、流量をレベル4よりも一段階小さいレベル3に設定するとともに、モニタ27aにランプ表示をレベル2として表示させる。このため、挿入部6を状況に応じて効果的に冷却して温度低下を促進しつつ、操作者への警告を行うことができる。さらに、検出温度Tが、第二の閾値S2よりも小さいものの、三番目に大きい第三の閾値S3以上である場合には、流量をレベル3よりも一段階小さいレベル2に設定するとともに、モニタ27aにランプ表示をレベル1として表示させる。このため、同様に挿入部6を効果的に冷却しつつ、操作者へ注意喚起することができる。一方、検出温度Tが第三の閾値S3よりも小さい場合には、流量を最も小さいレベル1に設定する。このため、挿入部6を効率良く冷却して、安全な温度状態を保ちつつ、被検体の観察を好適に行うことができる。
【0045】
図5は、上記制御フローに基づいて温度制御部24cによって圧縮空気Aの流量を制御した一例をタイムチャート図として示している。
図5に示すように、使用開始時には、温度センサ26による検出温度Tは、第三の閾値S3よりも小さい。しかしながら、外部環境温度が一定以上である場合、圧縮空気Aの流量が最も小さいレベル1であることから、外部から伝達される単位時間当たりの熱量に対して圧縮空気Aによる単位時間当たりの冷却量の方が小さくなり、時間経過とともに温度上昇していく。そして、検出温度Tが、第三の閾値S3以上となった場合、温度制御部24cは、温度センサ26による検出結果に基づいて、流量をレベル1からレベル2へ増大させるとともに、モニタ27aにレベル1でランプ表示させる。このため、圧縮空気Aによる単位時間当たりの冷却量が増大し、効果的に挿入部6を冷却することができ、また、操作者に注意換気することができる。ここでは、依然外部から伝達される熱量の方が大きいものとし、これにより単位時間当たりの温度上昇は小さくなるものの、時間経過とともに温度上昇していくこととなる。
【0046】
そして、検出温度Tが、第二の閾値S2を超えた場合、温度制御部24cは、温度センサ26による検出結果に基づいて、流量をレベル2からレベル3へ増大させるとともに、モニタ27aにレベル2でランプ表示させる。このため、挿入部6を効果的に冷却することができ、また、操作者に、これ以上温度上昇すると挿入部6が損傷してしまうおそれがある旨の警告を行うことができる。ここでは、圧縮空気Aの流量をレベル3とすることで、外部から伝達される熱量に対して圧縮空気Aによる冷却量が大きくなったものとし、これにより挿入部6の温度が低下し始める。そして、検出温度Tが、第二の閾値S2よりも小さくなると、温度制御部24cは、温度センサ26による検出結果に基づいて、流量をレベル3からレベル2に減少させる。そして、外部温度環境が一定である場合には、上記流量の設定変更を繰り返し、第二の閾値S2近傍で温度環境を安定させることができる。
【0047】
一方、外部環境温度が上昇し、圧縮空気Aの流量をレベル2としても、外部から伝達する熱量に対して圧縮空気Aの冷却量が小さくなると、挿入部6も温度上昇し、温度センサ26による検出温度Tは第一の閾値S1を超えることとなる。このため、温度制御部24cは、温度センサ26による検出結果に基づいて、流量をレベル3から最大のレベル4に増大させるとともに、モニタ27aにレベル3でランプ表示をさせ、また、ブザー27bからブザー音を発生させる。このため、挿入部6を効果的に冷却して挿入部6が損傷してしまうような状態を回避するとともに、操作者に危険な状態である旨を報知することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の内視鏡装置1では、内視鏡用冷却装置20を備え、制御部24の温度制御部24cによって、温度センサ26による検出結果に基づいて挿入部6の温度状態の変化を正確に把握することができる。そして、温度制御部24cによる判断結果に基づいて圧縮空気Aの流量を調整することで挿入部6の温度状態を安定した状態に保つことができるとともに、挿入部6の温度状態を操作者に報知することができる。また、本実施形態では、温度センサ26が挿入部6の外周面に設けられていることで、挿入部6の温度状態を正確に把握することができ、特に観察部材3の近傍に設けられていることで、観察部材3の温度状態を正確に把握することができ、これに基づいて圧縮空気Aの流量を変化させて効果的に冷却することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、温度センサ26は、挿入部6の外周面に設けられているものとしたが、これに限ることは無く、シース22内部で、内シース30や外シース31に設けられているものとしても良く、あるいは、外シース31の外面に設けられているものとしても良い。前者においては、冷却用流路21を流通する冷却用流体の温度状態を好適に検出することができる利点を有し、また、後者においては、挿入部6を温度上昇させる熱源となる外部環境の温度を好適に検出することができる利点を有する。また、本実施形態では、温度制御部24cには、温度センサ26による検出温度と対応した三つの閾値S1、S2、S3が予め設定されているものとしたが、これに限るものでは無く、少なくとも一つの閾値を超えるか否か判断することで、温度状態を把握することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6から図9は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図6から図8に示すように、この実施形態の内視鏡装置50において、内視鏡用冷却装置51は、第一の温度センサ52と、第二の温度センサ53と、第三の温度センサ54と、三つの温度センサを備える。また、内視鏡装置50は、挿入部6及び照明手段9が接続された内視鏡本体部55と、内視鏡用冷却装置51の冷却装置本体部56及びエアコンプレッサー25とが一体的に構成された本体部57を備える。内視鏡本体部55には、表示部10及びブザー55aが設けられており、これらによって内視鏡用冷却装置51の報知手段を構成している。また、内視鏡本体部55には、観察部材3の図示しないCCUを駆動するCCU駆動部55b及び本体制御部55cが内蔵されている。
【0052】
第一の温度センサ52は、第1の実施形態同様に、挿入部6の外周面において観察部材3に近接して設けられていて、挿入部6の内部に配設される配線52aと接続されている。配線52aは、操作部8から外部へ取り出されていて冷却装置本体部56に接続されている。また、第二の温度センサ53は、第二の冷却用流路21bに設けられていて、より詳しくは、中心軸方向に第一の開口部31aと排出口34fとの間において、第一の開口部31aに近接する位置でガラス管32の内周面に設けられている。そして、第二の温度センサ53は、第二の冷却用流路21bに配設されて、排出口34fから取り出されている配線53aと接続されている。また、第三の温度センサ54は、外シース31の外面において外部に露出して設けられていて、第二の冷却用流路21bに配設されて排出口34fから取り出されている配線54aと接続されている。第二の温度センサ53の配線53aと、第三の温度センサ54の配線54aとは、それぞれ冷却装置本体部56に接続されている。
【0053】
また、内視鏡用冷却装置51の冷却装置本体部56は、第一の温度センサ52の配線52a、第二の温度センサ53の配線53a、及び、第三の温度センサ54の配線54aとそれぞれ接続されて検出温度をデータとして出力する第一の温度検出部56a、第二の温度検出部56b、及び、第三の温度検出部56cと、温度制御部56dとを備える。本実施形態では、温度制御部56dには、第一の温度センサ52による検出温度T52と対応する第一の閾値S52と、第二の温度センサ53による検出温度T53と対応する第二の閾値S53と、第三の温度センサ54による検出温度T54と対応する第三の閾値S54と、三つの閾値が予め設定されている。そして、温度制御部24cは、第一の温度センサ52による検出温度T52が第一の閾値S11を超えているか否か、第二の温度センサ53による検出温度T53が第二の閾値S12を超えているか否か、第三の温度センサ54による検出温度T54が第三の閾値S13を超えているか否か判断している。
【0054】
そして、温度制御部56dによる判断結果は、本体制御部55cに出力されている。
本体制御部55cには検出温度T52、T53、T54に基づく三つの判断結果のパターン1〜8と、各パターン1〜8と対応する制御内容が記載された図9に示すテーブルMが予め設定されている。なお、図9において第一の温度センサ52、第二の温度センサ53または第三の温度センサ54による検出温度T52、T53、T54が、対応する第一の閾値S52、第二の閾値S53または第三の閾値S54よりも小さい場合には、○と記載されており、また、各閾値以上である場合に×と記載している。そして、本体制御部55cは、検出温度T52、T53、T54とテーブルMとを参照して、各構成を制御することが可能となっていて、すなわち本体制御部55cと温度制御部56dとによって制御部59が構成されている。
【0055】
次に、本実施形態の内視鏡装置50及び内視鏡用冷却装置51の作用並びに制御部59による制御の詳細について説明する。
第1の実施形態同様に、挿入部6を被検体の中に挿入するのに伴って、エアコンプレッサー25によって冷却用流路21に圧縮空気Aを供給するとともに、温度制御部56dによって第一の温度センサ52、第二の温度センサ53及び第三の温度センサ54による各検出温度T52、53、54が対応する第一の閾値S52、第二の閾値S53または第三の閾値S54を超えているか判断し、本体制御部55cに出力する。そして、本体制御部55cは、図9に示すテーブルMを参照して、判断結果がいずれのパターンであるかを判断し、当該パターンと対応する制御を行う。
【0056】
すなわち、図9に示すように、判断結果がパターン1で、全ての検出温度T52、T53、T54が対応する閾値よりも小さい時、すなわち、外部環境温度が使用可能な温度であり、シース22の内部の温度環境も適正である場合には、安全と判定し、圧縮空気Aの流量も一定のままである。一方、判断結果がパターン2で、第三の温度センサ54による検出温度T54のみが対応する第三の閾値S54以上であった場合、外部環境温度が使用に適していない温度であるものの、シース22の内部は冷却されていることで現段階で適正な温度であるとして、本体制御部55cは、表示部10に「注意」の表示を行わせ、操作者に注意喚起させる。
【0057】
また、判断結果がパターン3で、第一の温度センサ52による検出温度T53のみが対応する第一の閾値S11より小さかった場合、外部環境温度の変化に伴って冷却用流路21を流通する圧縮空気Aの温度も上昇しているものの、挿入部6は依然適正な温度であると判定する。そして、本体制御部55cは、表示部10に「危険」の表示を行わせるとともに、温度上昇の要因となりうる照明手段9による照明を強制的に停止させるために光源11aの駆動を停止させる。
【0058】
また、判断結果がパターン4で、検出温度T52、T53、T54のいずれも対応する閾値以上である場合、挿入部6が温度上昇に伴って損傷してしまうおそれがあると判定する。そして、本体制御部55cは、表示部10に「警告」の表示を行わせるとともに、背景色を変化させることで、操作者に対して危険な状態である旨の警告を行う。また、パターン3同様に光源11aの駆動を停止させるとともに、圧縮空気Aの流量を増大させて、挿入部6の冷却を促進させ、温度上昇によって挿入部6が損傷してしまうのを防止する。
【0059】
一方、判断結果がパターン5で、第一の温度センサ52による検出温度T52のみが対応する第一の閾値S52以上であった場合、挿入部6は、外部環境によらず、内部構造がショートしていることなどによって温度上昇しており、内視鏡異常であると判定する。こ場合、本体制御部55cは、暫定的に圧縮空気Aの流量を増大させて挿入部6の冷却を促進させ、温度上昇によって挿入部6の異常箇所がさらに損傷し、また、他の構成も損傷してしまうのを防止する。
【0060】
また、判断結果がパターン6で、第一の温度センサ52及び第二の温度センサ53による検出温度T52、T53がそれぞれ対応する閾値以上であった場合、外部環境が使用可能な温度状態であるにも係らず、何らかの原因によって圧縮空気Aが好適に流通していないことで挿入部6が温度上昇しており、流量異常であると判定する。このため、本体制御部55cは、圧縮空気Aの流量を増大させて、圧縮空気Aが強制的に流通するようにして、温度上昇によって挿入部6が損傷してしまうのを防止する。
【0061】
また、判断結果がパターン7で、第三の温度センサ53による検出温度T53のみが対応する第二の閾値S53以上となった場合、第一の温度センサ52、第二の温度センサ53または第三の温度センサ54のいずれかが異常であると判定する。このため、本体制御部55cは、表示部10に「センサ異常」の表示を行わせ、操作者にその旨を報知する。また、判断結果がパターン8で、第二の温度センサ53による検出温度T54のみが対応する第二の閾値S12より小さくなった場合も同様に、いずれかの温度センサが異常であると判定し、本体制御部55cは、表示部10に「センサ異常」の表示を行わせ操作者にその旨を報知する。
【0062】
以上のように、本実施形態の内視鏡装置50では、内視鏡用冷却装置51が第一の温度センサ52、第二の温度センサ53、及び、第三の温度センサ54と複数の温度センサを備えて異なる位置で温度を検出することで、より詳細にシース22の内部及び外面近傍の温度状態を把握することができる。そして、各検出温度T52、T53、T54に対する判断結果を組み合わせることで、判断結果の相違によって、温度上昇の度合い並びに異常の原因を特定することができる。なお、本実施形態では、各温度センサの検出温度に対して、それぞれ一つの閾値が設定されているものとしたが、これに限るものではなく、それぞれ複数の閾値を設定することでより詳細に温度状態を把握することができる。
【0063】
なお、上記のように、各温度センサによる検出温度それぞれに対して閾値を設定するものとしても良いが、各温度センサの検出温度の温度差に対して閾値を設定するものとしても良い。例えば、冷却用流路21内の圧縮空気など冷却用流体の流れに応じて一定間隔で温度センサを設け、冷却用流体の上流側と下流側との温度差を検知して、その上昇の程度から最大上昇部分を予測して危険性を判断して警告等を行うようにしても良い。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図10から図13は、本発明の第3の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
図10及び図11に示すように、この実施形態の内視鏡装置60において、内視鏡用冷却装置61は、冷却用流体として気体である圧縮空気Aまたは液体である冷却水Wのいずれかを選択して冷却用流路21と連通して供給する流体供給部62と、冷却用流路21と連通して上記いずれかの冷却用流体を排出させる流体排出部63とを備える。
【0066】
より詳しくは、流体供給部62は、圧縮空気Aを供給可能な第一の供給部64と、冷却水Wを供給可能な第二の供給部65と、冷却用流路21に供給する冷却用流体を圧縮空気Aまたは冷却水Wのいずれかに切り替える第一の切替部(切替部)である供給側切替バルブ66と、供給側切替バルブ66で選択された冷却用流体が流入する供給口35gとを備える。第一の供給部64は、流量調整バルブ64aが内蔵されたエアコンプレッサー64bと、エアコンプレッサー64bを制御するコンプレッサー制御部64cとで構成されていて、エアコンプレッサー64bは、配管64dによって供給側切替バルブ66と接続されている。また、第二の供給部65は、冷却水Wが貯留されるタンク65aと、タンク65a内の冷却水Wを供給するためのポンプ65bと、ポンプ65bを制御するポンプ制御部65cとで構成されていて、ポンプ65bは、配管65dによって供給側切替バルブ66と接続されている。また、供給側切替バルブ66は、配管66aによって供給口35gと接続されているともに、後述するバルブ制御部74と接続されていて、バルブ制御部74による制御のもと圧縮空気Aまたは冷却水Wのいずれかを選択することが可能であり、選択された冷却用流体を配管66a及び供給口35gを介して冷却用流路21に供給することが可能となっている。
【0067】
流体排出部63は、排出口34fと、配管67aによって排出口34fと接続された第二の切替部である排出側切替バルブ67と、排出側切替バルブ67とそれぞれ接続された第一の排出配管68及び第二の排出配管69とを備える。第一の排出配管68は、排出側切替バルブ67と接続された一端と反対側の他端が開放されていて、外部と連通している。また、第二の排出配管69は、排出側切替バルブ67と接続された一端と反対側の他端が、第二の供給部65のタンク65aの内部と連通している。また、排出側切替バルブ67は、後述するバルブ制御部74と接続されていて、バルブ制御部74による制御のもと冷却用流体が圧縮空気Aである場合には、第一の排出配管68を選択して、冷却用流路21から排出される圧縮空気Aを外部に排出することが可能である。また、冷却用流体が冷却水Wである場合には、第二の排出配管69を選択して、冷却用流路21から排出される冷却水Wを、冷却水Wが貯留されているタンク65aに再び回収することが可能である。
【0068】
また、内視鏡用冷却装置61は、各種制御を行う制御部70と、外シース31の内面に設けられ、冷却用流体の温度を検出する熱電対である温度センサ71とを備える。制御部70は、温度センサ71と接続された温度制御部72と、流体供給部62の第一の供給部64による圧縮空気A及び第二の供給部65による冷却水Wのそれぞれの状態を制御する流体制御部73と、供給側切替バルブ66及び排出側切替バルブ67と接続されたバルブ制御部74とを備える。温度センサ71は、第二の冷却用流路21bから第一の口金34に設けられた取出口34hを介して外部まで配設された配線71aに接続されている。配線71aは、温度検出部71bを介して温度制御部72に内蔵された温度検出部72aと接続されている。
【0069】
そして、温度制御部72は、大きい方から順に第一の閾値S71と、第二の閾値S72と二つの閾値が予め設定されていて、温度センサ71よる検出温度T71が第一の閾値S71または第二の閾値S72を超えているか否か判断する。そして、流体制御部73は、温度制御部72による判断結果に基づいて、第一の供給部64のエアコンプレッサー64b、または、第二の供給部65のポンプ65bのいずれかを選択して駆動する。また、バルブ制御部74は、温度制御部72による判断結果に基づいて、第一の供給部64からの圧縮空気Aまたは第二の供給部65からの冷却水Wのいずれかを供給口35gを介して冷却用流路21に供給可能に、また、排出口34fを介して第一の排出配管68または第二の排出配管69のいずれかから冷却用流体を排出可能に、供給側切替バルブ66及び排出側切替バルブ67を駆動させることが可能である。
【0070】
次に、この実施形態の内視鏡装置60及び内視鏡用冷却装置61の作用並びに制御部70による制御の詳細について説明する。
内視鏡装置60によって被検体を観察するに際して、まず、流体制御部73は、コンプレッサー制御部64cによってエアコンプレッサー64bを駆動させて、圧縮空気Aを送出させる。また、バルブ制御部74は、供給側切替バルブ66を駆動させて圧縮空気Aを供給可能な状態にさせるとともに、排出側切替バルブ66を駆動させて、冷却用流路21を流通した圧縮空気Aを第一の排出配管68から外部へ排出可能にさせる。これにより、圧縮空気Aが、流量調整バルブ64aで調整された流量で冷却用流路21を流通することとなり、挿入部6が冷却されることとなる。
【0071】
そして、シース22の内部の温度状態、特に流通する冷却用流体である圧縮空気Aの温度は、温度センサ71によって検出される。そして、図12に示すように、温度制御部72は、温度センサ71による検出温度T71について、予め設定されている第一の閾値S71、第二の閾値S72を超えているか否か判断する。そして、温度制御部72によって検出温度T71が小さい方の第二の閾値S72よりも小さいと判断した場合には、流体制御部73は、この判断結果に基づいて、圧縮空気Aによって効果的に冷却されていて挿入部6の温度は安全な状態にあると判断する。これにより流体制御部73は、流量を変化させずに圧縮空気Aによる冷却を継続させ、また、温度制御部72は、温度センサ71による検出温度の監視を継続する。
【0072】
一方、温度制御部72によって、検出温度T71が大きい方の第一の閾値S71よりも小さいものの、第二の閾値S72以上であると判断した場合には、流体制御部73は、この判断結果に基づいて圧縮空気Aによってさらに冷却する必要があるとして、流量調整バルブ64aを駆動して、圧縮空気Aの流量を増大させる。また、温度制御部72によって、検出温度T71が第一の閾値S72以上であると判断した場合には、温度制御部72は、この判断結果を流体制御部73とともにバルブ制御部74へも出力する。これにより、流体制御部73及びバルブ制御部74は、圧縮空気Aによっては流量を増大させても、外部環境の温度が高く冷却量が不足であるとして、冷却水Wによる冷却に切り替える。すなわち、まず流体制御部73がエアコンプレッサー64bの駆動を停止させる。次に、バルブ制御部74によって、供給側切替バルブ66について冷却水Wを供給可能な状態に切り替える。また、排出側切替バルブ67について第二の排出配管69へ排出可能な状態に切り替える。そして、流体制御部73がポンプ65bを駆動させることで、タンク65aに貯留されている冷却水Wがポンプ65bによって配管65d、供給側切替バルブ66、配管66a、及び、供給口35gを通って冷却用流路21に供給されることとなる。そして、冷却用流路21を流通した冷却水Wは、排出口34fから排出され、排出側切替バルブ67及び第二の排出配管69を経由して、タンク65aに回収されることとなり、ポンプ65bによって再び冷却用流路21に供給されることとなる。
【0073】
図13は、上記制御フローに基づいて冷却用流体の状態を制御した一例をタイムチャート図として示している。
図13に示すように、使用開始時には、温度センサ71による検出温度T71は、第二の閾値S72よりも小さい。このため、流体制御部73は、温度制御部72による判断結果に基づいて、レベル1で流量を一定としてエアコンプレッサー64bから圧縮空気Aを供給させて、常に冷却した状態を維持する。
【0074】
一方、外部環境温度が一定以上である場合、外部から伝達される単位時間当たりの熱量に対して圧縮空気Aによる単位時間当たりの冷却量の方が小さくなり、時間経過とともに温度上昇していく。そして、温度制御部72は、検出温度T71が第二の閾値S72を超えたと判断すると、その判断結果を流体制御部73へ出力し、流体制御部73は、圧縮空気Aの流量をレベル1からレベル2へ増大させる。このため、圧縮空気Aによる単位時間当たりの冷却量が増大し、効果的に挿入部6を冷却することができる。ここでは、依然外部から伝達される熱量の方が大きいものとし、これにより単位時間当たりの温度上昇は小さくなるものの、時間経過とともに温度上昇していくこととなる。そして、温度制御部72は、検出温度T71が第二の閾値S72を超えたと判断すると、その判断結果を流体制御部73及びバルブ制御部74へ出力し、これにより冷却用流路21に冷却水Wが供給されることとなる。このため、挿入部6は、冷却水Wによって効果的に冷却されることとなり、温度センサ71による検出温度T71を第一の閾値S71よりも小さくすることができるようになる。
【0075】
以上のように、本実施形態の内視鏡装置60では、内視鏡用冷却装置61が圧縮空気Aと冷却水Wとで冷却可能であり、両者を切り替えることが可能である。そして、通常時は、圧縮空気Aで冷却しつつ、検出温度Tが高くなった場合には冷却水Wによって効果的に冷却することができ、挿入部6を安全な状態としてさらに継続して観察することが可能となる。ここで、冷却用流体を冷却用流路21に流通させた状態で挿入部6の観察部材3によって被検体を観察する場合には、流通する冷却用流体を介して観察することとなる。本実施形態では、通常時には上記のように圧縮空気Aを使用していることで、冷却水Wを間に介して観察するときの画像の変化、例えば水の屈折率による変形、水の中に発生する気泡による見難さ等をなくしており、緊急時の対応として水冷式とすることで冷却効果を上げるものである。そして、本実施形態では、冷却水Wによって挿入部6を冷却する場合、冷却用流路21を流通して排出口34fから排出される冷却水Wは、タンク65aに回収され、ポンプ65bによって再び冷却用流路21へ供給することが可能となる。すなわち、冷却水Wを冷却用流路21とタンク65aとの間で循環させて挿入部6を冷却することができ、経済的かつ効果的に挿入部6を冷却することができる。
【0076】
なお、上記においては、第一の供給部64による圧縮空気Aの流量を変化させ、さらに第一の供給部64による圧縮空気Aから第二の供給部65による冷却水Wに切り替える場合について説明したが、これに限るものでは無い。すなわち、図13に示すように、冷却用流体を圧縮空気Aから冷却水Wに切り替えた後に、さらに検出温度T71に温度上昇が認められる場合には、冷却水Wの流量を変化させるものとしても良い。また、温度センサ71によって検出される温度状態に応じて、第二の供給部65による冷却水Wから第一の供給部64による圧縮空気Aの供給に切り替えるものとしても良い。
【0077】
さらに、本実施形態では、通常空冷として必要に応じて水冷に切換えたが、通常水冷として必要に応じて空冷としても良い。すなわち、水冷で長時間使用していて冷却水Wが蒸発して少なくなり、冷却能力を発揮できなくなった場合に、緊急的に空冷するものであっても良い。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図14から図18は、本発明の第4の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
図14に示すように、この実施形態の内視鏡装置80において、内視鏡用冷却装置81は、制御部である温度制御部82が内蔵された装置本体83と、冷却用流体として冷却用流路に冷却水Wを供給する流体供給部84と、冷却用流路から冷却水Wを排出させる流体排出部85と、冷却水Wを冷却する冷却手段86とを備える。流体供給部84は、タンク65aと、ポンプ65bと、装置本体83に内蔵されたポンプ制御部65cと、供給口35gと、供給口35gとポンプ65bを接続する配管84aとで構成されている。また、流体排出部85は、排出口34fと、排出口34fとタンク65aとを接続する配管85aによって構成されている。
【0080】
図14及び図15に示すように、冷却手段86は、タンク65aに貯留された冷却水Wと異なる他の冷却水Wが充填された略筒状のシリンジ87と、シリンジ87とタンク65aを接続する配管88と、シリンジ87の冷却水Wを配管88へ圧送する注水部89とを有する。配管88は、シリンジ87の先端に形成された注水口87aに接続されていて、内部の冷却水Wがシリンジ87内に逆流しないように逆止弁87bが設けられている。また、注水部89は、シリンジ87の内部に密着して進退可能なピストン90と、ピストン90の基端側に接続されたロッド91と、ロッド91に接続されてシリンジ87の内部に配設されたスライダ92と、シリンジ87の基端側に設けられシリンジ87内に配設されたスライダ92を介してピストン90を進退させることが可能な駆動部93とを有する。駆動部93は、シリンジ87の基端に固定されたフレーム93aと、フレーム93aに固定されたモータ93bと、シリンジ87と同軸に配設されてモータ93bによって軸回りに回転可能なボールネジ93cと、フレーム93aにボールネジ93cの軸方向に進退可能に固定されているとともに、ボールネジ93cに螺合され、またスライダ92の基端が接続されたギア93dとを備える。モータ93bは、温度制御部82と接続されている。そして、温度制御部82による制御のもとモータ93b駆動させることで、ボールネジ93cを回転させることができ、これによりギア93dを先端側へ進出させることが可能となっている。そして、ギア93dの進出によってスライダ92及びロッド91を介してピストン90を先端側へ進出させることが可能であり、これによりシリンジ87内の冷却水Wを配管88に押し込み、タンク65aへ新しい冷却水Wを供給することが可能となっている。
【0081】
また、図14及び図16に示すように、内視鏡用冷却装置81は、外シース31の内面に設けられて第二の冷却用流路21bを流通する冷却水Wの温度を検出可能な第一の温度センサ95と、タンク65aの内部に設けられて貯留された冷却水Wの温度を検出可能な第二の温度センサ96とを備える。第一の温度センサ95は、第二の冷却用流路21bから排出口34fを介して配管85aに配設された配線95aと接続されている。配線95aは、配管85aからタンク65a内へ引き込まれ、さらにタンク65a内から外部へ取り出されており、装置本体83に内蔵された第一の温度検出部82aに接続されている。また、第二の温度センサ96は、配線96aによって装置本体83に内蔵された第二の温度検出部82bに接続されている。第一の温度検出部82a及び第二の温度検出部82bでは、それぞれ、対応する第一の温度センサ95及び第二の温度センサ96での各検出温度T95、T96を温度制御部82に出力している。
【0082】
温度制御部82には、第一の温度センサ95による検出温度T95と対応する第一の閾値S95と、第一の温度センサ95による検出温度T95と第二の温度センサ96による検出温度T96との差分ΔTと対応する第二の閾値S96とが予め設定されている。そして、温度制御部82は、検出温度T95が第一の閾値S95を超えたか否か、また、差分ΔTが第二の閾値S96を超えたか否かに基づいて、冷却水Wの流量を調整し、また、冷却手段86による冷却を行うことが可能である。また、装置本体83には、電源のオン・オフを行う電源スイッチ83aと、各検出温度T95、T96を表示するモニタ83bと、手動によって冷却手段86による冷却を行わせる緊急スイッチ83cと、温度制御部82による判断結果に基づいて報知手段としてブザー音を出力可能なブザー83dとを有している。
【0083】
次に、この実施形態の内視鏡装置80及び内視鏡用冷却装置81の作用並びに温度制御部82による制御の詳細について説明する。
内視鏡装置80によって被検体を観察するに際して、まず、ポンプ制御部65cによってポンプ65bを駆動させて、タンク65aの冷却水Wを、配管84a及び供給口35gを介して冷却用流路21に供給する。これにより冷却水Wが冷却用流路21を流通することとなり、挿入部6が冷却されることとなる。なお、冷却用流路21を流通した冷却水Wは、排出口34fから配管85aを介してタンク65aに回収される。ここで、タンク65a内の冷却水Wを循環させて使用しているため、冷却水Wは循環する経過で徐々に温められて、温度上昇し、場合によっては蒸発等により少なくなり、冷却能力が低下する場合がある。しかしながら、内視鏡装置80においては、以下のようにして冷却水Wの温度上昇を抑え、冷却能力を維持させる。
【0084】
すなわち、第一の温度センサ95によって冷却用流路21を流通する冷却水Wの温度が検出され、また、第二の温度センサ96によって冷却用流路21から排出されてタンク65aに回収された冷却水Wの温度が検出される。温度制御部82では、第一の温度センサ95による検出温度T95及び第二の温度センサ96による検出温度T96から、差分ΔTを算出する。そして、図17に示すように、温度制御部82は、まず、第一の温度センサ95による検出温度T95が予め設定されている第一の閾値S95を超えているか否か判断する。そして、検出温度T95が第一の閾値S95よりも小さいと判断した場合には、冷却水Wによって効果的に冷却されていて、挿入部6の温度は安全な状態にあると判断し、次工程に移行する。一方、検出温度T95が第一の閾値S95以上であると判断した場合には、冷却水Wによってさらに冷却する必要があるとして、ポンプ制御部65cによってポンプ65bの出力を増大させて、冷却水Wの流量を増大させた後に次工程に移行する。
【0085】
次に、算出した差分ΔTが第二の閾値S96を超えているか否か判断する。そして、差分ΔTが第二の閾値S96よりも大きいと判断した場合には、タンク65aに回収され貯留されている冷却水Wの温度も安定しているとされ、第一の温度センサ95及び第二の温度センサ96による検出温度T95、T96の監視を繰り返し行う。また、差分ΔTが第二の閾値S96以下と判断した場合には、挿入部6の冷却に伴ってタンク65aに回収され貯留されている冷却水Wの温度が上昇してしまったものとして、タンク65a内の冷却水Wの冷却を行う。すなわち、冷却手段86の駆動部93を駆動して、シリンジ87内の冷却水Wを配管88を介してタンク65a内に注水する。これにより、タンク65a内の冷却水Wは、新たに注入された冷却水Wによって冷却されることとなる。また、温度制御部82は、タンク65a内の冷却水Wを冷却するとともに、ブザー83dからブザー音を発生させてタンク65a内の冷却水Wの温度が上昇していることを報知する。なお、本実施形態の場合は、装置本体83に緊急スイッチ83cが設けられている。このため、操作者がタンク65a内の目視確認等を行って冷却水Wの温度上昇が認められた場合にも、緊急スイッチ83cを入力することで冷却手段86から冷却水Wを注入して、タンク65a内の冷却水Wを冷却させることができる。
【0086】
図18は、上記制御フローに基づいて冷却水の状態を制御した一例をタイムチャート図として示している。
図18に示すように、使用開始時には、第一の温度センサ95による検出温度T95は、第一の閾値S95よりも小さい。このため、温度制御部82は、ポンプ制御部65cによってレベル1で流量を一定としてポンプ65bから冷却水Wを供給させて、常に冷却した状態を維持する。
【0087】
一方、外部環境温度が一定以上である場合、外部から伝達される単位時間当たりの熱量に対して冷却水Wによる単位時間当たりの冷却量の方が小さくなり、時間経過とともに温度上昇していく。この際、タンク65aに回収される冷却水Wの温度、すなわち第二の温度センサ96による検出温度T96も遅れて上昇していく。そして、温度制御部82は、第一の温度センサ95による検出温度T95が第一の閾値S95以上となったと判断すると、ポンプ制御部65cによって冷却水Wの流量をレベル1からレベル2へ増大させる。このため、冷却水Wによる単位時間当たりの冷却量が増大し、効果的に挿入部6を冷却することができる。ここでは、依然外部から伝達される熱量の方が大きいものとし、これにより単位時間当たりの温度上昇は小さくなるものの、時間経過とともに温度上昇していく。そして、時間経過とともに、冷却用流路を流通する冷却水Wとタンク65a内の冷却水Wとの温度差、すなわち差分ΔTも小さくなっていく。そして、温度制御部82は、差分ΔTが第二の閾値S96以下となったと判断すると、冷却手段86を駆動し、タンク65a内に新たな冷却水Wを注入させる。このため、タンク65a内の冷却水Wの温度が低下し、これにより冷却用流路に流通する冷却水Wの温度も低下することとなる。
【0088】
以上のように、本実施形態の内視鏡装置80では、第一の温度センサ95による検出温度T95に基づいて冷却水Wの流量を制御するとともに、第一の温度センサ95による検出温度T95と第二の温度センサ96による検出温度T96との差分ΔTに基づいてタンク65a内の冷却水Wの温度を制御することで、より好適に挿入部6を冷却することができる。なお、本実施形態では、差分ΔTに基づいて冷却手段86を駆動させるものとしたが、これに限るものでは無い。第一の温度センサ95または第二の温度センサ96のいずかの検出温度に基づいて冷却手段86を駆動させるものとしても良い。さらには、第二の温度センサ96の検出温度T96のみに基づいて冷却水Wの流量を制御するものとしても良い。図18に示すように、タンク65a内の冷却水Wの温度は、冷却用流路内の冷却水Wの温度に追従して温度変化するため、検出温度T96によってもシース22内の温度状態を正確に評価することができる。また、本実施形態では、冷却水Wの流量及び温度を制御するものとしたが、これに限るものでは無く、冷却水Wの温度のみを制御しても、挿入部6を安定して冷却することができる。また、本実施形態では、冷却手段として、新たな冷却水Wを注入する手段を挙げたが、これに限るものでは無く、冷媒を使用して冷却する手段を利用するものとしても良い。
【0089】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0090】
なお、上記の各実施形態において、冷却用流体の状態の調整は、制御部が各温度センサの検出結果に基づいて判断し、自動的に行うものとしたが、これに限るものでは無い。すなわち、制御部による判断結果を、報知手段によって操作者に報知させ、これにより操作者が手動で冷却用流体の状態を調整可能とする構成としても良い。また、報知手段としては、上記のように、ある一つの閾値に基づいて、表示部に危険表示などをし、あるいは、ブザーによってブザー音を発生するものなどに限るものでは無く、複数の閾値と対応して表示部に表示される温度表示の色が段階的若しくは連続的に変化していくようなものでも良い。
【0091】
また、各実施形態では、シース22は、内シース30と外シース31との二層構造としたが、これに限ることは無く、外シースのみの単層構造としても良い。さらに、挿入部6を覆う補助シース38を設けない構成としても良い。また、挿入部6は、外周面に観察部材3の観察レンズ3aが設けられた側視型としたが、これに限るものでは無く、先端面に観察レンズ3aが設けられた直視型としても良い。この場合、観察用窓部は、外シース31の先端面に設けるものとすれば良い。また、各実施形態では、外部被検体の照明は、挿入部6の照明部2とは異なる照明手段9によるものとしたが、これに限るものでは無く、自身の照明部2を使用しても良く、また、観察用窓部から照明を行うものとしても良い。しかしながら、照明手段9による別照明とし、観察用窓部と異なる照明用窓部からの照明とすることで、照明光が観察用窓部や照明用窓部で反射して直接観察部材に入光してしまうのをより確実に防ぐことができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置の外部構成を示す全体図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置のシースを側視した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御の一例を示すタイムチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の内視鏡装置の外部構成を示す全体図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置のシースの分解図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の内部構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部に記憶されているテーブルの一例を示す図表である。
【図10】本発明の第3の実施形態の内視鏡装置の外部構成を示す全体図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の内部構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御手順を示すフロー図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御の一例を示すタイムチャート図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の内視鏡装置の外部構成を示す全体図である。
【図15】本発明の第4の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の冷却手段を示す断面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の内部構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第4の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御手順を示すフロー図である。
【図18】本発明の第4の実施形態の内視鏡装置において、内視鏡用冷却装置の制御部による制御の一例を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0093】
1、50、60、80 内視鏡装置
3 観察部材
6 挿入部
10 表示部(報知手段)
20、51、61、81 内視鏡用冷却装置
21 冷却用流路
22 シース
24、59、70 制御部
26、71 温度センサ
27a、83b モニタ(報知手段)
27b、55b、83d ブザー(報知手段)
28、62 流体供給部
29、63 流体排出部
52、95 第一の温度センサ(温度センサ)
53、96 第二の温度センサ(温度センサ)
54 第三の温度センサ(温度センサ)
64 第一の供給部
65 第二の供給部
82 温度制御部(制御部)
86 冷却手段
A 圧縮空気(冷却用流体)
W 冷却水(冷却用流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用流体を流通させて、内視鏡装置の挿入部の内、被検体の観察を行うための観察部材を有する先端側を冷却する内視鏡用冷却装置であって、
前記挿入部の外周面との間に前記冷却用流体が流れる冷却用流路を形成して前記挿入部の先端側に装着されるシースと、
前記シースに接続されて、前記冷却用流路と連通して前記冷却用流体を供給する流体供給部と、
前記シースに接続されて、前記冷却用流路と連通して前記冷却用流体を排出させる流体排出部と、
前記シースの内部、または、外面近傍の温度状態を検出する少なくとも一つの温度センサと、
該温度センサによる検出温度に応じて、前記冷却用流体の流量を制御する制御部とを備えることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡用冷却装置において、
操作者に前記シースの内部または外面近傍の温度状態を報知する報知手段を備え、
前記制御部は、前記温度センサによる検出温度に応じて、前記報知手段によって前記操作者に報知させることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内視鏡用冷却装置において、
前記制御部は、前記温度センサの前記検出温度が予め設定された閾値を超えた場合に、前記冷却用流体の流量を制御することを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記制御部は、前記閾値が予め複数設定されていて、前記温度センサの前記検出温度が、いずれの前記閾値間であるかに基づいて、前記冷却用流体の流量を制御することを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項5】
請求項1に記載の内視鏡用冷却装置において、
前記温度センサを複数備え、
前記制御部は、各前記温度センサそれぞれの検出温度に応じて、少なくとも前記冷却用流体の流量を制御することを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内視鏡用冷却装置において、
前記制御部は、各前記温度センサのそれぞれと対応して異なる閾値が予め設定されていて、各前記温度センサそれぞれについて、対応する前記閾値を超えているか否か判断し、各判断結果に応じて前記冷却用流体の流量を制御することを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記温度センサは、前記シースを装着する前記挿入部の外周面に設けられていることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記温度センサは、前記冷却用流路を流通する前記冷却用流体の温度を検出可能に前記シースの内部に設けられていることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記温度センサは、前記シースの外面近傍の温度を検出可能に前記シースの外面に設けられていることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記温度センサは、前記流体排出部から排出された前記冷却用流体の温度を検出可能に設けられていることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記流体供給部は、前記冷却用流路に前記冷却用流体として気体を供給する第一の供給部と、
前記冷却用流路に前記冷却用流体として液体を供給する第二の供給部と、
前記第一の供給部の前記気体または前記第二の供給部の前記液体に、前記冷却用流路に供給する前記冷却用流体を切り替える切替部とを備えることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内視鏡用冷却装置において、
前記制御部は、前記温度センサの検出温度に応じて、前記切替部を駆動して、前記冷却用流路に供給する前記冷却用流体を、前記第一の供給部の前記気体と前記第二の供給部の前記液体との一方から他方へ切り替えさせることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置において、
前記流体供給部から供給される前記冷却用流体を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする内視鏡用冷却装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の内視鏡用冷却装置と、
前記シースが装着される挿入部とを備えることを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−66118(P2009−66118A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236592(P2007−236592)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】