説明

内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法

【課題】特殊光観察下での撮影で得られた少ない信号電荷量の転送効率を高める。
【解決手段】半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子と、前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケット91を前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には信号パケット91の転送方向後段に該信号パケット91の転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケット90を形成して転送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡装置に係り、特に、CCD型固体撮像素子を搭載した内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体内等に挿入される内視鏡の先端部には固体撮像素子が搭載され、固体撮像素子で撮影された観察部位の画像が、外部モニタ装置に表示される。固体撮像素子としては、CMOS型に比べて高SN比の画像が撮影できるCCD型が良く使われる。
【0003】
人体内は暗所であるため、被写体照明光は、外部発光源の光を光ファイバ等を通して内視鏡内に導入し、内視鏡先端部から観察部位に対して照射する構成になっている。この被写体照明光として、キセノンランプの発光光やR(赤),G(緑),B(青)の各色レーザ光を混合して生成した光が用いられる。
【0004】
しかし、近年の内視鏡は、上記の被写体照明光の他に、例えば下記の特許文献1,2に記載されている様に、患部等の観察部位に励起光を照射し自家発光した蛍光等の特殊光環境下で観察できる様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007―50106号公報
【特許文献2】特開2006―296635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特殊光を用いて観察部位を撮像する場合、キセノンランプ等の白色光に比べて3桁程度少ない光量になってしまう。このため、特殊光による観察を行う場合、固体撮像素子の1画素1画素が被写体からの入射光量に応じて検出する信号電荷量(電子数)は、極めて小さな値となる。
【0007】
CCD型の固体撮像素子では、各画素が検出した信号電荷を垂直電荷転送路(VCCD)を用いて転送し出力するのであるが、各転送段での転送効率を100%にすることは物理的に不可能なため、信号電荷の転送残り(転送洩れ)が発生してしまう。
【0008】
この信号電荷の転送洩れは、照明光として白色光を用いたときの様に、元々の信号電荷量が大きければあまり問題とはならない。しかし、蛍光観察の様に、元々の信号電荷量が極めて小さい場合、少しの信号電荷の転送洩れでも、観察部位の画質を大きく劣化させてしまう。
【0009】
本発明の目的は、光量が少ない特殊光環境下でCCD型固体撮像素子を用いて撮像するときに転送洩れを少なくする駆動方法を採用する内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内視鏡装置は、半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子と、前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケットを前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には前記信号パケットの転送方向後段に該信号パケットの転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケットを形成して転送させる内視鏡制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法は、半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子の駆動方法であって、前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケットを前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には前記信号パケットの転送方向後段に該信号パケットの転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケットを形成して転送させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空パケットを転送することで、先行する信号パケットから転送洩れ電荷が発生しても空パケットで拾うことができ、転送効率の向上を図ることができ、画質の高い観察部位の画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の概略的な機能ブロック図である。
【図3】図1に示す内視鏡装置のスコープ部先端部の要部破断図である。
【図4】図1に示す内視鏡装置の詳細な機能ブロック図である。
【図5】図1に示す固体撮像素子の表面模式図である。
【図6】図5に示す固体撮像素子のフォトダイオードと転送電極との関係を示す図である。
【図7】図5,図6に示す固体撮像素子の転送駆動の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す通常転送モードの説明図である。
【図9】図7に示す空パケット転送モードの説明図である。
【図10】空パケット転送モードの種々の実施形態の説明図である。
【図11】空パケットの容量決定(a)と数決定(b)の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図1に示す固体撮像素子の別実施形態の表面模式図である。
【図13】図12の固体撮像素子の空パケット転送の様子を示す図である。
【図14】図12の固体撮像素子の別実施形態の空パケット転送の様子を示す図である。
【図15】図12の固体撮像素子の更に別実施形態の空パケット転送の様子を示す図である。
【図16】図1に示す固体撮像素子の別実施形態(FT―CCD)の表面模式図である。
【図17】図16に示す固体撮像素子の垂直方向の断面模式図(a)及び電位井戸の状態図(b)である。
【図18】図16に示す固体撮像素子の通常転送モードを示す図である。
【図19】図16に示す固体撮像素子の空パケット形成の様子を示す図である。
【図20】図16に示す固体撮像素子の空パケット転送モードを示す図である。
【図21】本発明の図4に代わる別実施形態の内視鏡装置の機能ブロック図である。
【図22】本発明の別実施形態に係る固体撮像素子の表面模式図である。
【図23】本発明の別実施形態に係る固体撮像素子のカラーフィルタ配列の一例を示す図である。
【図24】本発明の更に別実施形態に係る固体撮像素子の表面模式図である。
【図25】本発明の更に別実施形態に係る固体撮像素子の表面模式図である。
【図26】本発明の図4に代わる更に別実施形態の内視鏡装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、内視鏡装置の全体外観図である。内視鏡装置10は、内視鏡20と、周辺装置50とを備える。内視鏡10は、手元操作部21と、この手元操作部21の先端側に連設され患者の体腔内に挿入される可撓性のスコープ部22と、手元操作部21に連設され周辺装置50に接続される装着部23a,23bとを備える。
【0016】
周辺装置50は、プロセッサ51と、光源装置52と、モニタ装置53と、入力装置54とを備え、装着部23aがプロセッサ51に着脱自在に装着され、装着部24bが光源装置52に着脱自在に装着される。
【0017】
図2は、図1に示す内視鏡装置10の機能ブロック図である。内視鏡20の装着部23bが光源装置52に装着され、光源装置52で発光された照明光は、内視鏡20内に挿通された2系統の光ファイバ束(ライトガイド)24を通って内視鏡先端部25から観察部位に対して照射される。図2では、照明光が2系統の光ファイバ束(ライトガイド)を通って照射される例が記載されているが、以下の説明及び他の図においても、2系統の照射に限らず、1系統あるいは3系統以上であってもよい。
【0018】
観察部位で反射した被写体光あるいは自家発光した被写体光の光像は、内視鏡先端部25に内蔵されたCCD型の撮像素子26によって電気信号(撮像画像信号)に変換され、内視鏡20内に挿通された信号配線27によってプロセッサ51に取り込まれる。
【0019】
プロセッサ51は、信号配線27を介して観察部位の撮像画像信号を取り込み、オフセット処理,γ変換処理,RGB/YC変換処理,同時化処理等の周知の画像処理を施し、得られた被写体画像をモニタ装置53に表示する。
【0020】
図3は、内視鏡先端部25の要部破断図である。内視鏡先端部25の先端面30には、鉗子孔31が開口されると共に、図2の光ファイバ束24を通して導かれた照明光を観察部位に対して拡散して照射する2個の凹レンズ32,33が設けられている。また、2個の凹レンズ32,33の中間部分には集光レンズ34が設けられ、観察部位で反射した光や自家発光の被写体光が集光レンズ34で集光される。先端面30にはノズル35も設けられ、撮影レンズ34を洗浄する洗浄液がノズル35から噴射可能となっている。
【0021】
内視鏡先端部25に内蔵される固体撮像素子26は、その受光面が先端面30に対して垂直に配置されるため、円筒形状の先端部25の集光レンズ34背部には被写体光の光路を直角に曲げて固体撮像素子26に受光させるプリズム36が設けられている。
【0022】
固体撮像素子26は、配線基板29に固定設置されており、配線基板29から信号配線27が引き出され、プロセッサ51に接続される。
【0023】
図4は、図2の更に詳細な機能ブロック図である。光源装置52内には、白色光源55と、励起光光源56と、各光源55,56の出力に設けられた合波器57及び合波器57の出力を2系統に分けて2系統のライトガイド24に装着部23bを介して出力する分波器58とを備える。
【0024】
合波器57は、2つの光源55,56からの出射光を合波するのではなく、いずれか一方の光源からの出射光を分波器58に出力して2系統に分波するために設けている。このため、光源装置52内には光源制御部59が設けられ、プロセッサ51の制御部61からの指示によっていずれか一方の光源が選択され照明光を出射する様になっている。
【0025】
プロセッサ51は、制御部61と、各種データやプログラムを格納したメモリ(記憶部)62と、画像処理部63とを備える。内視鏡20内の撮像素子26の出力にはA/D変換器38が設けられ、撮像画像信号は内視鏡20内でデジタルデータに変換される。このデジタルの撮像画像信号は、装着部23aを介して画像処理部63に取り込まれ、上記の画像処理が施される。このとき、画像処理部63は、光源制御部59からの情報(どちらの光源が照明光源となっているかという情報)に基づいて画像処理を施し、処理結果を制御部61を介して、表示部53に表示させると共に外部の記録装置70に記録させる。
【0026】
制御部61は、CCD駆動部61aを内蔵し、光源制御部59に白色光光源55を動作させたときと、励起光光源56を動作させたときとで、撮像素子26の駆動モードを切り換える機能を持っている。
【0027】
図1に示す手元操作部21には切替ボタン37が設けられており、内視鏡操作者が切替ボタン37を用いて光源切替指示を制御部61に伝達したとき、制御部61は、光源制御部59に発光させる光源を切り替えさせ、撮像素子26の駆動モードを切り換える。
【0028】
図5は、インターライン型CCDである固体撮像素子26の表面模式図である。図示する例の固体撮像素子26は、半導体基板表面部に複数の画素(フォトダイオード:PD)80が正方格子状に配列形成されており、各画素列に沿って垂直電荷転送路(VCCD)81が形成され、各垂直電荷転送路81の転送方向端部に沿って水平電荷転送路(HCCD)82が形成され、水平電荷転送路82の転送方向端部に、転送されてきた信号電荷の電荷量に応じた電圧値信号を撮像画像信号として出力するアンプ83が設けられている。
【0029】
図示する例の固体撮像素子26では、1画素当たり2枚の垂直転送電極が設けられており、この2枚のうちの1枚が読出電極(84)兼用の電極となっている。図6は、固体撮像素子26の画素と垂直転送電極V1〜V6との関係を示す図であり、垂直転送電極V1,V3,V5が読出電極兼用となっている。
【0030】
本実施形態の固体撮像素子26は、3フィールド読み出しで駆動される。つまり、1画面分の信号電荷(撮像画像信号)は、3回に分けて出力される。先ず図5に「PD1」と記載した画素から信号電荷を垂直電荷転送路81に読み出し、これを水平電荷転送路82まで転送し、次に水平電荷転送路82でアンプ83まで転送して撮像画像信号を出力する。そして次に、「PD2」の画素の信号電荷を同様にして出力し、最後に「PD3」の画素の信号電荷を出力する。
【0031】
図7は、図4の制御部61が行う撮像素子駆動モードの切替処理手順を示すフローチャートである。先ず、観察部位を特殊光で観察するか否かを判定する(ステップS1)。特殊光観察で無い場合には、図4の白色光光源55の発光光を照明光とし明るい画像が撮像できるため、ステップS2に進み、後述の通常転送モードで撮像素子26を駆動し、この処理を終了する。
【0032】
特殊光観察の場合には、即ち、図4の励起光光源56の発光光(励起光)を観察部位に照射し、観察部位で自家発光した蛍光を観察するため、微弱な信号電荷しか得られない。そこで、特殊光観察の場合にはステップS3に進み、詳細は後述する空パケット転送モードで撮像素子26を駆動し、この処理を終了する。
【0033】
図8は、図7のステップS2で行う通常転送モードを説明する垂直電荷転送路のポテンシャル遷移図である。図8(a)は、垂直転送電極V1〜V6を示しており、図8(b)〜(n)は、垂直転送電極V1〜V6に印加される転送パルスによって変化する電位井戸(ポテンシャル井戸)とその遷移状態を示している。
【0034】
図8(b)に示す状態は、読出電極兼用転送電極V1下に形成された電位井戸内に、図5の画素PD1の蓄積電荷を読み出し、水平電荷転送路82方向に転送を開始する状態を示している。この通常転送モードは、照明光として特殊光でなく照度の高い白色光を用いているため、転送対象とする信号電荷量は大きい(電子数は多い)。
【0035】
以下、図8(c)→(d)→(e)→(f)→(g)→(h)→(i)→(j)→(k)→(l)→(m)と、信号電荷を入れた電位井戸(信号パケット)を、垂直転送電極膜の2電極分→1電極分→2電極分→1電極分→……と、伸縮を繰り返して水平電荷転送路82方向に転送する。
【0036】
そして、図8(n)に示す様に、次の垂直電極V1下に信号パケットが来たとき、垂直方向への転送を中止して待機状態とし、この待機状態中に、水平電荷転送路上の信号電荷を転送してアンプ83から出力する。このアンプ83からの出力が終了した後、また、図8(b)〜(n)の転送を繰り返すことで、1行分の信号電荷が水平電荷転送路82に転送され、この水平電荷転送路82上の信号電荷が、垂直電荷転送路の待機中に、転送され出力される。
【0037】
なお、この通常転送モードは、信号電荷量が多いときの転送であるため、上記の様に、2電極分→1電極分→2電極分→…とするのではなく、信号パケットの容量を大きくして、3電極分→2電極分→3電極分→2電極分→…等として行っても良い。
【0038】
図9は、図7のステップS3で行う空パケット転送モードを説明する垂直電荷転送路のポテンシャル遷移図である。図9(a)は図8(a)と同じである。
【0039】
図9(b)に示す状態は、読出電極兼用転送電極V1下に形成された電位井戸内に、図5の画素PD1の蓄積電荷を読み出し、水平電荷転送路82方向に転送を開始する状態を示している。
【0040】
この空パケット転送モードは、照明光として特殊光、この例では励起光を照射し、観察部位で自家発光させた蛍光を撮像素子が受光して得られる信号電荷を転送するときの転送モードである。自家発光の蛍光は微弱な光であるため、得られる信号電荷量は極めて小さく、このため転送対象とする信号電荷量は小さい(電子数は少ない)。
【0041】
以下、図8で説明したときと同様に、信号電荷を入れた電位井戸(信号パケット)を垂直転送電極膜の2電極分→1電極分→2電極分→1電極分→……と、伸縮を繰り返して水平電荷転送路82方向に転送するのであるが、その前に、図9(b)の次のタイミングの図9(c)で、垂直転送電極V4に電圧を印加して1電極分の空パケット90を形成する。即ち、信号電荷を入れた信号パケット91と空パケット90とが交互に垂直電荷転送路81上に並ぶことになる。
【0042】
以後、図9(d)→(e)→(f)→(g)→(h)→(i)→(j)→(k)→(l)→(m)→(o)と、信号パケット91が電極V1下の位置に来るまで、信号パケット91と空パケット90とを共に、2電極分→1電極分→2電極分→…と伸縮を繰り返し、転送を行う。
【0043】
信号パケット91が電極V1下に来たとき(図9(o))から、上述した信号電荷は待機状態となり、水平電荷転送路による信号電荷の転送及び出力が行われるが、この待機状態中でも、空パケット90の転送動作は継続する(図9(p)〜図9(t))。この空パケット90の転送動作は、転送方向前段の信号パケット91に空パケット90が合流したとき、終了する。
【0044】
その後、水平電荷転送路における転送,出力動作が終了した後、再び、垂直電荷転送路81の信号パケットの転送(図9(b)〜(t))が開始される。
【0045】
空パケット転送モード時は、信号電荷量が極めて小さく、少しの転送洩れが生じても観察部位の撮像画質を劣化させてしまう。しかし、本実施形態の様に、垂直電荷転送路上の転送時に、空パケット90を形成し転送させることで、そして、信号パケット91を待機状態とするときこの空パケット90を前段で転送される信号パケット91に合流させることで、転送洩れを少なくすることが可能となる。
【0046】
例えば、或る信号パケットで信号電荷の転送洩れが発生したとする。この転送洩れ電荷は、図9(k)に示す様に、後段で転送される空パケット92に拾われ、転送されることになる。この空パケット92は、転送洩れを起こした前段の信号パケット93と合流されるため、転送洩れが回避される。
【0047】
図10は、本発明の別実施形態に係る空パケット転送モードの説明図である。図9で説明した空パケット転送モードは、図10(a)に示す様に、信号パケット91の間に、信号パケット91と同容量の空パケット90を形成して転送した。しかし、空パケット90の容量を、図10(b)に示す様に、信号パケット91より大容量とすることでも良い。図10(a)の小容量の空パケットとするか、図10(b)の大容量の空パケットとするかを、観察部位の撮影照度によって切り換える構成としても良い。
【0048】
図11(a)は、撮影照度によって空パケットの容量を切り換える処理手順を示すフローチャートである。先ず、観察部位の撮影照度を測定し、測定照度が閾値照度より低いか否かを判定する(ステップS10)。測定照度が閾値照度より高い場合には、ステップS11に進み、小容量の空パケットを形成する空パケット転送モードを選択する。
【0049】
ステップS10の判定の結果、測定照度が閾値照度より低い場合には、それだけ信号電荷量が少なく、少しの転送洩れでも画質劣化が酷くなるため、転送洩れ電荷を拾う可能性を高めるために、大容量の空パケットを形成する空パケット転送モードを選択する(ステップS12)。
【0050】
照度は、照度検出センサを内視鏡先端部25に搭載して測定しても良いが、低照度の場合には信号電荷量(出力される信号量)が少なくなるため、信号電荷量が閾値以下になるか否かで間接的に判断しても良い。この判断は、動画状態で撮像素子から出力される撮像画像信号の信号量を計測し、前フレーム或いは前々フレームの信号量で判断することができる。
【0051】
上記の実施形態は、信号パケット91間に、1つの空パケットを形成して転送する実施形態であったが、信号パケット91間に、図10(c)に示す様に、複数(図示の例では2つ)の空パケット90を形成して転送し、待機状態となったとき複数の空パケット90を共に先行する信号パケット91に合流させる構成としても良い。又、図11(a)では、撮影照度によって空パケットの容量の切り換えを行っているが、代わりに、図11(b)に示す様に、空パケットの数を撮影照度によって切り換えることも可能である。測定照度が閾値照度より低い場合には、空パケット数を増加するモードで転送する。
【0052】
空パケットを信号パケット待機時に合流させる理由は、暗電流対策である。空パケットを信号パケットに合流させずに空パケットとして垂直電荷転送路上で待機させると、暗電流が空パケット内に入り込む虞が高くなるためである。
【0053】
この暗電流を、転送洩れ電荷収集用の空パケットとは別個に用意した空パケットで収集することも可能である。図10(d)の実施形態では、信号パケット91間に複数(図示の例では2つ)の空パケット95,96を形成し、後段の信号パケット91の直前に先行する空パケット96を暗電流収集用空パケットとし、この暗電流収集用空パケット96より先行し前段の信号パケット91に対して後行する空パケットを転送洩れ電荷収集用の空パケットとする。
【0054】
転送洩れ電荷収集用の空パケット95は、信号パケット91の待機中に先行する信号パケットに合流させるが、暗電流収集用の空パケット96は、合流させずに、常に独立した空パケット96として、信号パケット91の待機中でも垂直電荷転送路81上で待機させる。
【0055】
この構成により、暗電流収集用の空パケット96は、後段の信号パケット91に先行して垂直電荷転送路81上の暗電流やスミア電荷を収集するため、信号パケット91内に暗電流やスミア電荷が混入する可能性が低くなる。この暗電流収集用の空パケット96で集めた電荷(暗電流,スミア)は、信号電荷とは別に水平電荷転送路で転送し廃棄してしまう。あるいは、水平電荷転送路に併設したドレイン機構を通して半導体基板側に廃棄してしまう。
【0056】
図12は、図5とは異なる画素配列の固体撮像素子100の表面模式図である。固体撮像素子100の半導体基板表面部には、二次元アレイ状に複数のフォトダイオード(画素)101が配列形成され、各画素列に沿って垂直電荷転送路(VCCD)102が形成され、各垂直電荷転送路102の転送方向端部に沿って水平電荷転送路(HCCD)104が形成され、水平電荷転送路104の出力端部に、転送されてきた信号電荷量に応じた電圧値信号を撮像画像信号として出力するアンプ105が設けられている。
【0057】
本実施形態の固体撮像素子100では、各画素101が、奇数行の画素行に対して偶数行の画素行が1/2画素ピッチずつずらして形成され、所謂ハニカム画素配列となっている。
【0058】
図中の各画素101上に記載したR,G,Bは、カラーフィルタ(赤,緑,青)を示しており、各画素101から左斜め下方向に図示した矢印は、その画素101から隣接の垂直電荷転送路102に信号電荷を読み出す方向を示している。
【0059】
垂直電荷転送路102は、半導体基板表面部に形成された図示しない埋め込みチャネルと、その上にゲート絶縁膜を介して形成したポリシリコン膜でなる転送電極とで構成され、図12には、転送電極が垂直方向に多段に形成されている状態を示している。
【0060】
夫々の垂直転送電極は、横一行に連続して設けられており、左右端(図示する例では左端)から転送パルスが印加される様になっている。図示する例の固体撮像素子100は、16相駆動される配線接続構成となっており、各垂直転送電極V1〜V16に、夫々φV1〜φV16の転送パルスが印加される。即ち、転送電極Viに、転送パルスφViが印加される。転送パルスφV1〜φV16は、図4の制御部61の指示によりCCD駆動部61a4が生成し、固体撮像素子100の対応する転送電極に供給される。
【0061】
なお、「垂直」「水平」という用語を用いて説明しているが、これは、固体撮像素子を形成した半導体基板の表面に沿う「一方向」「この一方向に対して略直角の方向」という意味に過ぎない。図5の説明でも同様である。
【0062】
図13は、固体撮像素子の駆動方法説明図であり、垂直転送パルスφV1〜φV16によって駆動される垂直電荷転送路の状態変化を示す図である。上段は、信号パケット及び空パケットの形成及び転送の様子を示し、下段は、上段の状態を実現する各転送電極への転送パルスの波形(印加電圧)を示している。
【0063】
図中の低電圧L(例えば−8V)が印加されている電極をVL電極とし、中電圧M(例えば±0V)が印加されている電極をVM電極としており、中電圧が印加されている電極下に電位パケットが形成される。
【0064】
図に示す時刻t1では、電極V5〜V9がVM電極となっており、この下に電位パケット(黒塗り部分)が形成される。この電位パケット内に信号電荷が入れられ、信号パケット121となる。これと同時に、電極V1,V2もVM電極となっており、この下に電位パケット(斜線部分)が形成される。この電位パケットは、画素101の検出電荷を入れない空パケット122である。
【0065】
次の時刻t2では、信号パケット21の形成電極(VM電極)はV5〜V10と1電極分だけ水平電荷転送路側に伸び、次の時刻t3では、信号パケット21の形成電極はV6〜V10と反水平電荷転送路側が1電極分だけ縮まる。これにより、信号パケット121は、1電極分、水平電荷転送路側に転送されたことになる。
【0066】
これと同時に、時刻t2では、空パケット122の形成電極はV1〜V3と1電極分だけ水平電荷転送路側に伸び、次の時刻t3では、空パケット122の形成電極はV2,V3と反水平電荷転送路側が1電極分だけ縮まる。これにより、信号パケット121の伸縮と同時に、空パケット122も1電極分だけ伸縮し、水平電荷転送路側に転送されることになる。
【0067】
この様にして信号パケット121が水平電荷転送路の方向に転送され、その後段に2電極分の間隔を開けて空パケット122が転送されることにより、信号パケット121の転送に伴って発生する転送残り(転送洩れ)電荷は空パケット122に拾われて水平電荷転送路の方向に転送されることになる。
【0068】
そして、時刻t11になると、信号パケット121の形成電極はV10〜V14の5電極分となる。この状態になると、水平電荷転送路直前まで転送されてきた部分の信号パケット(図13には図示せず)の信号電荷は水平電荷転送路に転送されることになる。水平電荷転送路は、受け取った信号電荷を、水平転送パルスφH1,φH2に基づいて出力アンプ側に転送することになる。
【0069】
水平電荷転送路に水平転送パルスφH1,φH2が印加され、水平電荷転送路が転送駆動されている最中は、垂直電荷転送路は停止状態に維持され、信号パケット121の電極V10〜V14の形成状態が維持される。
【0070】
この状態に入るとき、即ち、時刻t11で信号パケット121は停止状態に入るが、時刻t12,t13,t14,t15,t16と、空パケット122の転送は続行され、空パケット122が信号パケット121に合流されてから、空パケット122の転送も停止される。つまり、空パケット122の転送で拾われた転送残り電荷は、信号パケット121内の元の信号電荷と混合され、実効的に転送効率が高くなる。
【0071】
水平電荷転送路が転送駆動されている最中は、空パケット122の存在は消失し、信号パケット121のみが垂直電荷転送路上で待機状態となる。水平電荷転送路の転送駆動が終了し、時刻ta(図3の左端側)で信号パケット121の転送が開始されるとき、その直前で電極V7,V8がVM電極とされて空パケット122が形成され、以後、上記と同様にして、信号パケット121の転送と並行して、直後の後段に空パケット122が同期して転送される。
【0072】
この様に、本実施形態では、水平ブランキング期間(=垂直転送期間)に、垂直電荷転送路に多数形成される信号パケット121の各々に対して、その直後に空パケット122を形成して垂直電荷転送路を駆動するため、実効的に転送効率の向上が図られ、撮像画像の画質改善を図ることが可能となる。
【0073】
しかも、水平電荷転送路の転送駆動開始の直前までに、空パケット122を、転送残りの発生元となる信号パケット121に合流させてしまい、水平電荷転送路の駆動中すなわち垂直電荷転送路の停止中は、空パケット122を消失させるため、更なる画質改善を図ることが可能となる。
【0074】
その理由は、前述した通りであり、垂直電荷転送路の停止中に空パケット122が存在すると、その空パケット122内に暗電流ノイズ電荷が蓄積されてしまい、この暗電流ノイズが信号電荷に混入すると、撮像画像のS/Nを劣化させてしまうためである。
【0075】
図14は、本発明の別実施形態の駆動方法説明図であり、図の見方は図13と同じである。図13で説明した実施形態では、信号パケット121に対して1つの空パケット22を直後の後段に転送させ、1つの空パケット122で転送残り電荷を拾い集め、これを信号パケット121に合流させた。
【0076】
これに対し、本実施形態では、図10(c)と同様に、空パケット122の後に別の空パケット123を形成して転送する構成している。即ち、信号パケット121の転送残りを空パケット122で拾い、空パケットで拾い集めた電荷の転送残りを2つ目の空パケット123で拾い集める構成としている。これにより、実効的な転送効率の更なる向上を図ることが可能となる。
【0077】
勿論、この場合にも、水平電荷転送路の駆動直前(=垂直電荷転送路の停止直前)に、図示する様に2つの空パケット122,123を共に信号パケット121に合流させてしまい、垂直電荷転送路の停止中に空パケットが無い状態にする。即ち、信号パケット121だけとする。
【0078】
図15は、本発明の更に別の実施形態の駆動方法説明図である。図の見方は図13と同じである。図15(a)に示す様に、信号パケット121を形成する電極数を多くして容量「大」とし多量の信号電荷を転送できる構成とした場合、空パケット122の電極数が多くとれない場合が生じる。しかし、信号電荷量が多い場合(飽和量が多い駆動時)には、転送効率が少し程度低くてもあまり問題はない。
【0079】
しかし、信号電荷量が少ない場合(飽和量が少ない駆動時)、例えば、特殊光環境下のため高ISO感度で撮影する時には、信号電荷量自体が少ない。この場合に、図15(a)に示すような広い信号パケット(転送容量が大)121を形成して転送し、その後段の空パケットの電極数を少ないまま(転送容量が小)にしておくと、転送効率の若干の低下が大きな画質低下につながってしまう。
【0080】
そこで、本実施形態では、図15(b)に示す様に、高ISO感度による撮影時つまり低感度,高ゲイン時の様に信号電荷量自体が少なくなる場合には、信号パケット121の電極数を少なくし(転送容量を小)、代わりに空パケット122の形成電極数を多くする(転送容量を大)。これにより、転送残りを多く拾い集めることができ、少量の信号電荷の転送時でも転送効率の向上を図ることが可能となり、高ISO感度時の画質向上を図ることが可能となる。
【0081】
なお、図15(b)では、1つの空パケットの転送容量を大きくした例を説明したが、図14と同様に、2つの空パケットを1つの信号パケットの後段に形成し、実効的に空パケットの転送容量を大きくしても良い。
【0082】
図16は、更に別実施形態に係るCCD型固体撮像素子の表面模式図である。前述したCCD型固体撮像素子は、インターライン型であるが、本実施形態のCCD型固体撮像素子200は、フレームトランスファ(FT)型であり、半導体基板の受光部201には、垂直方向に連続して複数の画素202が形成され、連続する複数の画素列がそのまま画素列に沿う垂直電荷転送路を構成する。
【0083】
受光部201の垂直方向下部には蓄積部205が設けられている。この蓄積部205の構成は受光部201と略同じであるが、遮光膜206で覆われている点が異なる。
【0084】
蓄積部205の垂直方向下部には、複数の垂直電荷転送路の転送方向端部に沿って水平電荷転送路207が設けられ、水平電荷転送路207の転送方向端部には出力アンプ208が設けられている。
【0085】
図17(a)は、図16に示す画素列に沿った断面模式図である。半導体基板210には各画素対応のn領域が少し離間して設けられている。この半導体基板210の表面にはゲート絶縁膜211を介して転送電極212,214が積層される。
【0086】
第1層の転送電極212は、画素対応のn領域上方位置に設けられ、第1層の転送電極212と絶縁膜213を介して隣接する第2層の転送電極214が、画素間(n領域間)の上方位置に積層される。第1層の転送電極212と第2層の転送電極214とは、境界部分で若干重複し重なり部分が生じる様になっている。転送電極212,214を単層膜構成としても良いが、転送電極212と転送電極214との間の狭い絶縁部分に転送洩れ電荷が残る可能性があるため、転送電極212と転送電極214との間に前記の重なり部分を設けた方が良い。
【0087】
各転送電極212,214が半導体基板210の上記ゲート絶縁膜211に接する各々の箇所において、垂直電荷転送路の転送方向後段位置に高濃度p領域215を設けている。この結果、各転送電極212,214に電位井戸形成用の電圧を印加したとき、転送方向に階段状に電位井戸を深く形成することが可能となる。
【0088】
図17(b)は、第1層の転送電極212に第1電圧を印加し第2層の転送電極214に第2電圧を印加したときの各電極下に形成される電位井戸の状態を示す図である。第1層転送電極212の下に深い電位井戸が形成され、ここに、受光量に応じた信号電荷220が蓄積される。
【0089】
図18は、図17(b)の様にして蓄積された信号電荷を蓄積部205まで転送する通常転送モード(図7のステップS2)を示す図である。図18(a)=図17(a)であり、図18(c)=図17(b)である。図18(c)の状態(転送電極212に第1電圧印加、転送電極214に第2電圧印加)と、図18(b)の状態(転送電極212の第2電圧印加、転送電極214に第1電圧印加)とを交互に繰り返すことで、垂直方向への信号電荷220の転送が行われる。
【0090】
図19,図20は、特殊光環境下で得られた信号電荷の転送の様子(図7の空パケット転送モードS3)を示す図である。図19(b)に示す様に、特殊光環境下で得られる信号電荷230の量は極めて少ないため、例えば奇数番目の電位井戸を一段分だけ垂直方向に転送して偶数番目の電位井戸と合流させ、信号電荷の2画素加算を行う。
【0091】
これにより、奇数番目の電位井戸の箇所に空パケット231を形成するスペースが形成され、垂直電荷転送路上には、信号パケット,空パケット,信号パケット,空パケット,…と交互に並ぶことになる。この状態で、2画素加算した信号電荷230を入れた信号パケットと、空パケット231とを図20(b)(c)に示す様に垂直方向に転送することで、先行する信号パケット230で発生した転送洩れ電荷が、直後に転送される空パケット231で拾われることになる。
【0092】
蓄積部205まで転送された信号パケット230は一旦待機状態となるが、空パケット231は1段分だけ転送を継続して先行する信号パケット230と合流させる。これにより、FT―CCDにおける転送効率を向上させることが可能となる。蓄積部205から水平電荷転送路207まで転送する場合にも、上記と同様に空パケットを転送して転送効率を向上させる。
【0093】
図19,図20で説明した空パケット転送モードは、図10(a)に対応する実施形態であり、信号パケットと空パケットとが交互に垂直電荷転送路上に配置される。図19で説明した2画素加算ではなく、3画素加算を行うと、信号パケット間に2つの空パケットを形成することが可能となる。この場合は、図10(c)に対応する実施形態となり、2つの空パケット231を転送し待機中の信号パケット230に合流することで、転送効率の向上を図ることが可能となる。
【0094】
あるいは、3画素加算して形成した2つの空パケットのうち、後の空パケットを後段の信号パケットに先行する暗電流収集用の空パケットとしてS/N向上を図ることでも良い。
【0095】
図21は、内視鏡装置の図4に代わる実施形態の機能ブロック図である。基本的には図4の構成と同じため、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。本実施形態の内視鏡装置は、白色光光源57は用いずに、赤色(R)光光源71,緑色(G)光光源72,青色光光源73を併設し、合波器57に接続している点が、図4と異なる。
【0096】
図22は、図21の内視鏡装置で用いる撮像素子26のフィルタ配列を示す図である。図22の撮像素子は、各画素301が正方格子配列されており、画素列に沿って垂直電荷転送路(VCCD)302が形成され、各垂直電荷転送路302の転送方向端部に沿って水平電荷転送路(HCCD)303が形成され、水平電荷転送路303の転送方向端部に、転送されてきた信号電荷量に応じた電圧値信号を撮像画像信号として出力するアンプ304とが設けられている。
【0097】
図12の撮像素子の各画素の上には、赤(R)緑(G)青(B)のカラーフィルタを積層したが、図22の撮像素子では、各画素の上に、透明層Wを積層している。透明層Wとは、赤色光光源71からの照明光、緑色光光源72からの照明光、青色光光源73からの照明光、観察部位で自家発光する蛍光の夫々に対して光学的に透明な層である。
【0098】
斯かる構成の内視鏡装置では、光源制御部59が、赤色光光源71,緑色光光源72,青色光光源73を巡回的に動作させ、観察部位を、赤色光→緑色光→青色光→赤色光→緑色光→……と、各色光で巡回的に照明する。撮像素子26は、各色光毎の撮像画像を取り込んで撮像画像信号を各色光毎に画像処理部63に出力する、という面順次撮像方式が採用される。
【0099】
図21に示す内視鏡装置では、撮像素子26として、カラーフィルタRGBを搭載したものでも使用可能である。この場合、カラーフィルタ配列としては、3原色系カラーフィルタRGBを、図23(a)に示す様にベイヤ配列したものでも良い。内視鏡装置の光源制御部59は、R光光源71とG光光源72とB光光源73とを同時に発光させ合波器57で合波させることで、白色光を生成し、白色光を照明光とする。
【0100】
しかし、原色系カラーフィルタは、各画素の光利用効率が1/3となるため(例えば、RフィルタはG光とB光を通さないため)、図23(b)に示す様に、補色系カラーフィルタを用いるのが好ましい。
【0101】
内視鏡装置による観察部位の撮影は、上述したように、明るい照明光の下で撮影する場合と、暗い特殊光環境下で撮影する場合とがある。明るい照明光の下での撮影だけ考えれば、図23(a)(b)の様なカラーフィルタを搭載しカラー画像を撮影できる撮像素子が好ましい。しかし、この撮像素子で特殊光による撮影を行うと、微弱な特殊光のうちカラーフィルタを透過した光しか撮像素子は検出できないため、特殊光環境下での撮影に不利となる。
【0102】
そこで、図24に示す撮像素子を使用するのが好ましい。この撮像素子350は、各画素301が正方格子配列されており、各画素列のうち奇数列の画素列の各画素にカラーフィルタを搭載し、偶数列の画素列に透明層Wを積層している。カラーフィルタ配列は、図23(a)のベイヤ配列でも、図23(b)の補色系カラーフィルタ配列でも良い。
【0103】
そして、明るい照明光の元で撮影を行った場合には、カラーフィルタを搭載した各画素の検出信号で観察部位のカラー画像を生成し、特殊光環境下で撮影を行った場合には、透明層Wを積層した各画素の検出信号で観察部位の輝度画像を生成する。これにより、微弱な特殊光でも品質の高い画像を得ることが可能となる。
【0104】
透明層Wを積層する画素配列,カラーフィルタを積層する画素配列は、図24の実施形態に限るものではない。例えば図25の撮像素子360に示す様に、市松位置の各画素に透明層Wを積層し、残りの市松位置の各画素にカラーフィルタを積層する構成でも良い。また、図24,図25では、各画素が正方格子配列された例を示したが、各画素が図12に示す様な所謂ハニカム画素配列であっても、透明層Wをモザイク的に配置することで、同様の効果を得ることができる。
【0105】
図26は、内視鏡装置の図4に代わる更に別実施形態の機能ブロック図である。基本的には図4の構成と同じため、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。本実施形態の内視鏡装置は、励起光光源56の代わりに、蛍光光源75を設けている点が異なる。蛍光光源は、例えば蛍光体を内蔵し、この蛍光体にレーザ光などを照射して発光した蛍光を合波器57に出力する構成とすれば良い。
【0106】
なお、上述した各種実施形態を別々の実施形態として説明したが、これら複数の実施形態を組み合わせた実施形態とすることでも良い。例えば、図16に示すFT―CCDのカラーフィルタ配列を、図24や図25とすることでも良い。
【0107】
以上述べた様に、実施形態による内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子を駆動するに当たり、前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケットを前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には前記信号パケットの転送方向後段に該信号パケットの転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケットを形成して転送させることを特徴とする。
【0108】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記特殊光環境下でない撮影時には前記空パケットの形成及び転送を行わないことを特徴とする。
【0109】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記複数の垂直電荷転送路の転送方向端部に沿って形成された水平電荷転送路を転送駆動させるとき前記垂直電荷転送路の前記信号パケットの転送を停止させかつ前記水平電荷転送路の転送開始前に前記空パケットを前記転送残りの発生元となる前記信号パケットに合流させることを特徴とする。
【0110】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記空パケットは、転送残りの発生元となる信号パケットと次の信号パケットとの間に複数設けられることを特徴とする。
【0111】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記特殊光環境下でかつ前記信号電荷量が所定閾値より多くなる撮影条件下では前記空パケットの容量を小さくし前記信号電荷量が少なくなる撮影条件下では前記空パケットの容量を大きくすることを特徴とする。
【0112】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記信号電荷量が前記所定閾値より多いか少ないかは、前フレーム又は前々フレームで得られた前記固体撮像素子の出力信号で判断することを特徴とする。
【0113】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記固体撮像素子の各画素はカラーフィルタ非搭載であり、該固体撮像素子は、前記内視鏡制御部内で発光され前記内視鏡先端部に導入される複数色の撮影光の各色毎に面順次に駆動されることを特徴とする。
【0114】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記固体撮像素子にはカラーフィルタ搭載画素とカラーフィルタ非搭載画素とが設けられており、前記特殊光環境下での撮影では前記カラーフィルタ非搭載画素の検出信号から観察部位の画像が生成されることを特徴とする。
【0115】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記固体撮像素子はインターライン型CCDであることを特徴とする。
【0116】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記固体撮像素子はフレームトランスファ型CCDであり、前記画素と兼用する垂直電荷転送路の転送方向に複数画素の信号電荷を加算して前記空パケットを形成するスペースを確保することを特徴とする。
【0117】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した蛍光による撮影であることを特徴とする。
【0118】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法の前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した励起光により該観察部位で自家発光した蛍光による撮影であることを特徴とする。
【0119】
また、実施形態の内視鏡装置及びその固体撮像素子駆動方法は、前記信号パケットの転送方向直前に前記空パケットとは別に暗電流収集用パケットを形成し該暗電流収集用パケットで収集した電荷を廃棄することを特徴とする。
【0120】
以上述べた実施形態によれば、特殊光環境下の撮影で得られる信号電荷量は非常に少ないが、信号パケットの後に空パケットを送り、信号パケットで発生した転送残り電荷を空パケットで収集するため、転送効率を高めることができ、画質の高い観察部位の画像を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係る撮像装置は、特殊光環境下での撮影に適した固体撮像素子駆動手段を搭載するため、自家発光した蛍光による患部観察などを高品質に行うことが可能となり、内視鏡に適用すると有用である。
【符号の説明】
【0122】
10 内視鏡装置
20 内視鏡
25 内視鏡先端部
26,100,200,350,360 CCD型固体撮像素子
34 撮影レンズ
50 周辺装置
51 プロセッサ(内視鏡制御部)
52 光源装置
53 モニタ装置
55 白色光光源
56 励起光光源
59 光源制御部
61 制御部
61a CCD駆動部
80,101,202,301 画素(フォトダイオード)
81,102,302 垂直電荷転送路(VCCD)
90,122,123 空パケット
91,121 信号パケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子と、
前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケットを前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には前記信号パケットの転送方向後段に該信号パケットの転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケットを形成して転送させる内視鏡制御部と
を備える内視鏡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡装置であって、前記内視鏡制御部は、前記特殊光環境下でない撮影時には前記空パケットの形成及び転送を行わない内視鏡装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡装置であって、前記固体撮像素子は、前記複数の垂直電荷転送路の転送方向端部に沿って形成された水平電荷転送路を備え、前記内視鏡制御部は、前記水平電荷転送路を転送駆動させるとき前記垂直電荷転送路の前記信号パケットの転送を停止させかつ前記水平電荷転送路の転送開始前に前記空パケットを前記転送残りの発生元となる前記信号パケットに合流させる内視鏡装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記空パケットは、転送残りの発生元となる信号パケットと次の信号パケットとの間に複数設けられる内視鏡装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記特殊光環境下でかつ前記信号電荷量が所定閾値より多くなる撮影条件下では前記空パケットの容量を小さくし前記信号電荷量が少なくなる撮影条件下では前記空パケットの容量を大きくする内視鏡装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内視鏡装置であって、前記信号電荷量が前記所定閾値より多いか少ないかは、前フレーム又は前々フレームで得られた前記固体撮像素子の出力信号で判断する内視鏡装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記固体撮像素子の各画素はカラーフィルタ非搭載であり、該固体撮像素子は、前記内視鏡制御部内で発光され前記内視鏡先端部に導入される複数色の撮影光の各色毎に面順次に駆動される内視鏡装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記固体撮像素子にはカラーフィルタ搭載画素とカラーフィルタ非搭載画素とが設けられ、前記特殊光環境下での撮影では前記カラーフィルタ非搭載画素の検出信号から観察部位の画像が生成される内視鏡装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記固体撮像素子はインターライン型CCDである内視鏡装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記固体撮像素子はフレームトランスファ型CCDであり、前記画素と兼用する垂直電荷転送路の転送方向に複数画素の信号電荷を加算して前記空パケットを形成するスペースを確保する内視鏡装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した蛍光による撮影である内視鏡装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した励起光により該観察部位で自家発光した蛍光による撮影である内視鏡装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の内視鏡装置であって、前記信号パケットの転送方向直前に前記空パケットとは別に暗電流収集用パケットを形成し該暗電流収集用パケットで収集した電荷を廃棄する内視鏡装置。
【請求項14】
半導体基板に二次元アレイ状に配列形成された複数の画素及び該画素で構成される複数の画素列に沿って夫々形成された複数の垂直電荷転送路を有し内視鏡先端部に内蔵される固体撮像素子の駆動方法であって、
前記画素が検出した信号電荷を収納する信号パケットを前記垂直電荷転送路に形成し転送すると共に、特殊光環境下の撮影時には前記信号パケットの転送方向後段に該信号パケットの転送で発生する転送残り電荷を拾う空パケットを形成して転送させる内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項15】
請求項14に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記特殊光環境下でない撮影時には前記空パケットの形成及び転送を行わない内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記複数の垂直電荷転送路の転送方向端部に沿って形成された水平電荷転送路を転送駆動させるとき前記垂直電荷転送路の前記信号パケットの転送を停止させかつ前記水平電荷転送路の転送開始前に前記空パケットを前記転送残りの発生元となる前記信号パケットに合流させる内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項17】
請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記空パケットは、転送残りの発生元となる信号パケットと次の信号パケットとの間に複数設けられる内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項18】
請求項14乃至請求項17のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記特殊光環境下でかつ前記信号電荷量が所定閾値より多くなる撮影条件下では前記空パケットの容量を小さくし前記信号電荷量が少なくなる撮影条件下では前記空パケットの容量を大きくする内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項19】
請求項18に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記信号電荷量が前記所定閾値より多いか少ないかは、前フレーム又は前々フレームで得られた前記固体撮像素子の出力信号で判断する内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項20】
請求項14乃至請求項19のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記固体撮像素子の各画素はカラーフイルタ非搭載であり、該固体撮像素子は、前記内視鏡制御部内で発光され前記内視鏡先端部に導入される複数色の撮影光の各色毎に面順次に駆動される内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項21】
請求項14乃至請求項19のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記固体撮像素子にはカラーフィルタ搭載画素とカラーフィルタ非搭載画素とが設けられており、前記特殊光環境下での撮影では前記カラーフィルタ非搭載画素の検出信号から観察部位の画像が生成される内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項22】
請求項14乃至請求項21のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記固体撮像素子はインターライン型CCDである内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項23】
請求項14乃至請求項21のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記固体撮像素子はフレームトランスファ型CCDであり、前記画素と兼用する垂直電荷転送路の転送方向に複数画素の信号電荷を加算して前記空パケットを形成するスペースを確保する内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項24】
請求項14乃至請求項23のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した蛍光による撮影である内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項25】
請求項14乃至請求項23のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記特殊光環境下の撮影は、前記内視鏡制御部で発光され観察部位に照射した励起光により該観察部位で自家発光した蛍光による撮影である内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。
【請求項26】
請求項14乃至請求項25のいずれか1項に記載の内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法であって、前記信号パケットの転送方向直前に前記空パケットとは別に暗電流収集用パケットを形成し該暗電流収集用パケットで収集した電荷を廃棄する内視鏡装置の固体撮像素子駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−20080(P2012−20080A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162341(P2010−162341)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】