説明

内部Sn法Nb3Sn超電導線材およびそのための前駆体

【課題】内部Sn法Nb3Sn超電導線材における機械的強度の強化を図ると共に、縮径加工の際の均一加工を可能とすることによって良好な超電導特性を発揮することのできる内部Sn法Nb3Sn超電導線材、およびそのための前駆体(超電導線材前駆体)を提供する。
【解決手段】内部拡散法によってNb3Sn超電導線材を製造する際に用いる超電導線材前駆体において、中央にSnまたはSn基合金芯が配置されると共に、その周囲にCuまたはCu基合金マトリクスと、複数本のNbまたはNb基合金フィラメントが配置されたシングルエレメント線を複数本束ねて配置して構成されるマルチエレメント線であって、前記シングルエレメント相互間および/またはシングルエレメントの外周には、棒状の補強部材を配設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nb3Sn超電導線材を内部Sn法によって製造するための前駆体(超電導線材製造用前駆体:以下「超電導線材前駆体」と呼ぶことがある)およびこうした前駆体によって製造されるNb3Sn超電導線材に関するものであり、殊に超電導マグネットの素材として有用なNb3Sn超電導線材およびその前駆体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導線材が実用化されている分野のうち、高分解能核磁気共鳴(NMR)分析装置や核融合装置、加速器等に用いられる超電導マグネットがある。これらの超電導マグネットでは、NMR信号の分解性能向上やデータ習得の短時間化の要求から高磁場化が求められている。超電導マグネットの高磁場化・コンパクト化に対しては、超電導マグネットに使用する超電導線材の高性能化が必須となっており、特に超電導マグネットの最内層部に使用される超電導コイルの高性能化が求められている。
【0003】
超電導マグネットに使用される超電導線材としては、Nb3Sn線材が実用化されており、このNb3Sn超電導線材の製造には主にブロンズ法が採用されている。このブロンズ法では、Cu−Sn基合金(ブロンズ)マトリクス中に、複数のNbまたはNb基合金からなる芯材を埋設して複合線材が構成される。この複合線材を、押出し若しくは伸線加工等の縮径加工を施すことによって、上記芯材を細径化してフィラメント(以下、「Nbフィラメント」と呼ぶ)とし、このNbフィラメントとブロンズからなる複合線材を複数束ねて線材群となし、その外周に安定化の為の銅(安定化銅)を配置した後、更に減面加工する。引き続き、縮径加工後の上記線材群を600℃以上、800℃以下程度で熱処理(拡散熱処理)することにより、Nb基フィラメントとブロンズマトリクスの界面にNb3Sn化合物層を生成する方法である。
【0004】
しかしながら、この方法ではブロンズ中に固溶できるSn濃度には限界があり(15.8質量%以下)、生成されるNb3Sn化合物層の厚さが薄く、また結晶性が劣化してしまい、高い臨界電流密度Jcが得られないという欠点がある。超電導マグネット(以下、「NMRマグネット」で代表することがある)は、線材の臨界電流密度Jcが高いほど、NMRマグネットをコンパクトにすることができ、マグネットのコストダウンが可能である。また、導体中の超電導部分の面積を小さくできることから、線材自体のコストダウンも可能となる。
【0005】
Nb3Sn超電導線材を製造する方法としては、上記ブロンズ法の他に、内部Sn法も知られている。この内部Sn法(「内部拡散法」とも呼ばれている)では、ブロンズ法のような固溶限によるSn濃度に限界がないのでSn濃度をできるだけ高く設定でき、良質なNb3Sn相が生成可能であるため、高い臨界電流密度Jcが得られるといわれている。こうしたことから、内部Sn法によって製造される超電導線材(以下、「内部Sn法Nb3Sn超電導線材」と呼ぶことがある)のNMRマグネット用途への適用が望まれている。
【0006】
内部Sn法では、図1(Nb3Sn超電導線材前駆体の模式図)に示すように、CuまたはCu基合金マトリクス(以下、「Cuマトリクス」と呼ぶことがある)4aの中央部に、SnまたはSn基合金からなる芯材(以下、「Sn基金属芯」と呼ぶことがある)3を埋設すると共に、Sn基金属芯3の周囲のCuマトリクス4a中に、複数のNbまたはNb基合金からなる芯材(以下、「Nbフィラメント」と呼ぶことがある)2を相互に接触しないように配置して前駆体(超電導線材前駆体)1とし、これを伸線加工した後、熱処理(拡散熱処理)によってSn基金属芯3中のSnを拡散させ、Nbフィラメント2と反応させることによって線材中にNb3Sn相を生成させる方法である(例えば、特許文献1)。
【0007】
また上記のような前駆体においては、図2に示すように、前記Nbフィラメント2とSn基金属芯3が配置されたCuマトリクス4aと、その外部の安定化銅層4bの間に拡散バリア層6aを配置した構成(超電導線材前駆体5)を採用することもある。この拡散バリア層6aは、例えばNb層またはTa層、或いはNb層とTa層の2層からなり、拡散熱処理の際にSn基金属芯3中のSnが外部に拡散してしまうことを防止し、超電導線材内でのSnの純度を高める作用を発揮するものである。
【0008】
上記のような、超電導線材前駆体の製造は、下記の手順で行われる。まず、NbフィラメントをCuマトリクス管に挿入し、押出し加工や伸線加工等の縮径加工を施して複合体とし(通常、断面形状が六角形に形成される)、これを適当な長さに裁断する。そして、Cu製外筒を有し、拡散バリア層6aを設け或いは設けないビレット内に前記複合体を充填し、その中央部にCuマトリクス(Cu製中実ビレット)を配置して押出し加工した後、中央部のCuマトリクスを機械的に穿孔してパイプ状複合体を構成する。或いは、他の方法として、Cu外筒とCu内筒で構成され、拡散バリア層6aを有しまたは有さない中空ビレット内(外筒と内筒の間)に前記複合体を複数本充填してパイプ押出ししてパイプ状複合体を構成する。
【0009】
そして、これらの方法で作製されたパイプ状複合体の中央空隙部内に、Sn基金属芯3を挿入して縮径加工して、前記図1、2に示したような、Nbフィラメント2とSn基金属芯3を含む前駆体エレメントが製造される。以下では、これらのものを、「シングルエレメント線」と呼ぶことがある。
【0010】
上記のようにして構成された各超電導線材前駆体(シングルエレメント線1、5)は、図1のシングルエレメント線の場合は拡散バリア層6b(後記図3参照)を有するCuマトリクス管内に、図2のシングルエレメント線の場合は拡散バリア層を含まないCuマトリクス管内に、複数本束ねた集合体として充填され、更に縮径加工されて多芯型の超電導線材前駆体(以下、「マルチエレメント線」と呼ぶことがある)とされる。
【0011】
図3、4は、マルチエレメント線の加工前の組立断面の構成例を示したものである。このうち図3は、前記図1に示した超電導線材前駆体1(シングルエレメント線)を、拡散バリア層6bおよび安定化銅層4c内に複数本束ねた集合体として配置して構成されるマルチエレメント線7aとしたものである(例えば、非特許文献1)。図4は、前記図2に示した前駆体5(シングルエレメント線)を、拡散バリア層を有さない安定化銅層4c内に複数本束ねた集合体として配置して構成されるマルチエレメント線8aとしたものである。
【0012】
超電導電流は、超電導線材前駆体を作製した後に拡散熱処理(通常600〜700℃で100〜300時間程度)を施すことによって生成させたNb3Sn相を流れることになる。そしてこのNb3Sn相は、機械的な歪に対して非常に敏感であり、僅か1%程度の歪量であっても、急激に超電導特性(特に、臨界電流密度Jc)が低下することになる。
【0013】
Nb3Sn超電導線材が使用される場合、その殆ど全てが超電導マグネットの状態となるが、超電導マグネットではマグネットの磁界と通電電流によって、線材に対して常時電磁力が作用することになる。またNb3Sn超電導線材では、Nb3Sn生成熱処理が700℃に近い高温で行われ、4.2K以下の極低温で通電されるため、Nb3Sn相には周囲に配置されるCuの熱収縮による力も作用することになって、歪を受けて特性が劣化することになる。
【0014】
また、従来の内部Sn法超電導線材では、マルチエレメント線材の横断面で、中心部付近のシングルエレメント線と外周付近のシングルエレメント線では、変形状態が異なるということがある。即ち、前記図3、4のいずれの構成を採用しても、前駆体の伸線加工時において、中央部付近では、配置された各シングルエレメント線内のNbフィラメントは均一に加工できるのであるが、外周付近では、前駆体組み立て時のCu管、拡散バリア層との間に形成される空隙を埋めるようにしてシングルエレメント線が変形するので、その内部に存在するNbフィラメント変形は不均一となってしまい、特に線材の外側になるほど、Nbフィラメントの直径が大きくなる傾向がある。
【0015】
こうした状況が発生すると、Nb3Sn生成のために必要なSnの距離が外周付近で大きくなってしまい、超電導特性(特に、臨界電流密度Jc)が劣化するという問題が生じる。また、NMR用途で必要なn値の低下を招いたり、加工中の断線につながる可能性がある。尚、前記「n値」とは、超電導線材における線材方向に流れる電流の均一性、即ち線材長手方向での超電導フィラメントの均一性を示す指標となるものであり、このn値が大きいほど超電導特性(即ち、電流の均一性)が優れているといわれているものである。
【0016】
更に、上記したようなNb3Sn超電導線材の臨界電流密度Jcの劣化を防止するために、線材断面に適切な補強部材を配置して線材の強度を向上させることも必要である。線材の強度を向上させるという観点から、安定化銅中にAl23を分散させたものを用いて前駆体を構成する技術も提案されているが(例えば、非特許文献2)、Al23分散銅は非常に高価なため、使用できない。
【特許文献1】特開昭49−114389号公報
【非特許文献1】「IEEE Transaction on Magnetics」,Vol,MAG−19,No.3,MAY 1983 p1131−1134
【非特許文献2】「IEEE Transaction on Applied Superconductivity」,Vol.15,No.2,June 2005 p1200−1204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、内部Sn法Nb3Sn超電導線材における機械的強度の強化を図ると共に、縮径加工の際の均一加工を可能とすることによって良好な超電導特性を発揮することのできる内部Sn法Nb3Sn超電導線材、およびそのための前駆体(超電導線材前駆体)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成することのできた本発明のNb3Sn超電導線材前駆体とは、内部Sn法によってNb3Sn超電導線材を製造する際に用いる超電導線材前駆体において、中央にSnまたはSn基合金芯が配置されると共に、その周囲にCuまたはCu基合金マトリクスと、複数本のNbまたはNb基合金フィラメントが配置されたシングルエレメント線を複数本束ねて配置して構成されるマルチエレメント線であって、前記シングルエレメント線相互間および/またはシングルエレメント線の外周には、棒状の補強部材が配設されたものである点に要旨を有するものである。
【0019】
本発明の上記Nb3Sn超電導線材前駆体においては、その構成例として、(a)前記補強部材の直径は前記シングルエレメント線の直径よりも小さく構成されるもの、(b)前記棒状の補強部材は、Nbおよび/またはTaを含む金属または合金からなる芯材の外周を、CuまたはCu基合金によって被覆したもの、(c)前記棒状の補強部材は、Nbおよび/またはTiを含む金属または合金からなる芯材の外周に、Nbからなる拡散バリアを配置し、その外周をCuまたはCu基合金によって被覆したもの、(d)前記補強部材中の心材の断面積割合は、前駆体の全断面積に対して2〜25%であるもの、(e)前記補強部材の表面に被覆されるCuまたはCu基合金層は、補強部材中における伸線加工前の段階の銅比で0.1〜1.0であるもの、等の構成を採用することが好ましい。
【0020】
本発明のNb3Sn超電導線材前駆体においては、前記シングルエレメント線の外周付近および/またはマルチエレメント線の外周付近には、拡散バリア層が配置する構成を採用することもできる。
【0021】
上記のような各種超電導線材製造用前駆体を用いて、拡散熱処理することによって希望する超電導特性(臨界電流密度Jcおよび強度)を発揮する内部Sn法Nb3Sn超電導線材を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、内部Sn法によってNb3Sn超電導線材を製造する際に構成される超電導線材前駆体(マルチエレメント線)において、シングルエレメント線相互間および/またはシングルエレメント線の外周に、棒状の補強部材を配設する構成を採用することによって、良好な超電導特性を維持しつつ強度的にも十分な超電導線材を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
前駆体を伸線加工したときに、内部の変形状況が半径方向で異なる状況について、図面を用いて説明する。図5は、前記図3に示した超電導線材前駆体7aを伸線加工したときの内部の状況を示す断面図(超電導線材前駆体7b)であり、図6は、前記図4に示した超電導線材前駆体8aを伸線加工したときの内部の状況を示す断面図(超電導線材前駆体8b)である。これらの図に示すように、伸線加工によって、各超電導線材前駆体7b,8b(マルチエレメント線)は、中心付近では配置された各シングルエレメント線内のNbフィラメント(NbまたはNb基合金からなる芯材2)は均一に加工できるのであるが、外周付近では、前駆体組み立て時に形成される空隙の存在によって、その空隙を埋めるようにシングルエレメント線が変形することになるので、特に外周付近に存在するシングルエレメント線は歪(いびつ)になり、その内部のNbフィラメントは断面が不均一な状態となる。
【0024】
図5、6に示したような状況が発生すると、マルチエレメント線7b、8bの外周付近に存在するNbフィラメントは相対的に大きい状態となり、拡散熱処理時にNb3Sn生成のために必要となるSnの拡散距離が長くなって、Nb3Snに十分に反応しきれず、臨界電流密度Jcやn値の低下を招くことになる。また、こうした状態では、加工歪みが部分的に集中することになって、押出しや伸線等の縮径加工中に断線が発生する危険性も高くなる。更に、こうした状態の内部Sn法超電導線材前駆体を熱処理して得られた超電導線材では、臨界電流密度Jcとn値の低下が見られ、特にn値についてはブロンズ法によって得られる超電導線材よりも極端に低いものとなることがある。
【0025】
本発明の超電導線材前駆体の構成を、図面を用いて説明する。本発明の超電導線材前駆体では、前記図3、4に示したようなマルチエレメント線(図3の7a、図4の8a)を構成する際に、線材内部に形成される空隙に補強部材を配置することによって、超電導線材の強度向上と共に、Nbフィラメントの均一加工を可能にするものである。
【0026】
図7は、本発明で用いる補強部材の構成を示す概略説明図であり、この補強部材9aは、外観が棒状に形成されるが、その中心にNbまたはNb−Ta合金或いはTaからなる芯材10と、その外周に配置されるCuまたはCu基合金層4dとから構成される。
【0027】
図8は、本発明で用いる補強部材の他の構成例を示す概略説明図である。図8に示した補強部材9bでは、外観が棒状に形成されるが、その中心にTiまたはNb−Ti合金が芯材11として配置されると共に、最外層にCuまたはCu基合金層4dが配置されるのは、基本的に図7に示した構成を同様であるが、芯材11としてTiを含む金属若しくは合金を用いた場合には、縮小加工途中や焼鈍の際に、TiとCuとが反応して脆いCu−Ti系化合物が生成し、断線が発生しやすい状態になる。こうした不都合を回避するために、Tiを含む金属または合金を芯材として使用する場合には、CuまたはCu基合金層4dと芯材11との間に、Nbからなる拡散バリア層6cを介在させたものである。こうした構成の補強部材9bを採用することによって、CuとTiとの直接接触を避け、上記のような脆いCu−Ti系化合物の生成を抑制し、断線等の不都合を回避することができる。
【0028】
但し、こうした拡散バリア層6cを形成するときには、短時間の熱(押し出し加工時の熱や加工発熱)での化合物生成を抑制すれば良く、超電導線材の強度を確保するという観点からして、その後の拡散熱処理でのCuのTiへの拡散を大きく阻害しないようにすることが有効である。こうした観点から、Nb拡散バリア層6cの厚みは芯材11の直径の0.2〜2%程度とすることが好ましい。また、補強部材におけるCu被覆層(CuまたはCu基合金層4d)の割合は、加工性と強度(芯材による補強効果)を考慮すれば、補強部材中における伸線加工前の銅比(銅の非銅部に対する面積割合)で0.1〜1.0程度が適切である。この銅比は、好ましくは0.3〜0.6程度である。
【0029】
本発明の前駆体は、前記図3、4に示した前駆体(マルチエレメント線7a,8a)を構成する際に、上記図7、8に示したような棒状の補強部材9aまたは9b(以下、「9a,9b」と記す)をシングルエレメント線相互間や、シングルエレメント線の外周に配置することによって構成されるものである。ここで、棒状(棒状の補強部材)とは、円柱状、角柱状や、多少変形した状態の柱状態を指す。また、マルチエレメント線中には、複数本の補強部材が配置されることになるが、マルチエレメント線中における複数本の補強部材の材質は、異ならせても良いが、加工バランスの観点から同一材質とする方が好ましい。
【0030】
図9は、本発明の超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の構成例を示す概略説明図であり、基本的な構成は、前記図3に示したマルチエレメント線に類似するものであり、対応する部分には同一の参照符号を付してある。この構成では、前記図1に示したシングルエレメント線1(拡散バリア層を形成していないもの)と、前記図7、8に示したような補強部材9a,9bを組み合わせてマルチエレメント線12とするものである。
【0031】
即ち、図9に示した超電導線材前駆体では、図1に示したシングルエレメント線1を複数束ねて図3に示したようなマルチエレメント線を構成するに際して、シングルエレメント線1の相互間や、シングルエレメント線1の外周(即ち、拡散バリア層6bとシングルエレメント線1の間)に補強部材9a,9bを配置するようにしたものである。こうした構成を採用することによって、伸線加工等の際に、補強部材9a,9bは、空隙に合わせて変形しようとするので、外周付近に存在するシングルエレメント線1の歪(いびつ)な変形を軽減でき、且つ最終的に超電導線材の強度も高くなって歪みに対する耐性も向上することになる。図9に示した超電導線材前駆体を伸線加工した後の、内部の形状の概略を図10に示す。
【0032】
前記図9に示した前駆体の構成では、補強部材9a,9bは、シングルエレメント線1の相互間と、シングルエレメント線1の外周(即ち、拡散バリア層6bとシングルエレメント線1群の間)の両方に配置する構成を示したけれども、そのどちらか一方だけに補強部材を配置する構成も採用できる。
【0033】
また、図9に示した構成は、シングルエレメント線1の外周部付近に配置される補強部材9a,9bの大きさ(断面形状)が、シングルエレメント線相互間に配置される補強部材9a,9bよりも大きくなるものを配置した構成を示したけれども、その逆になっても良いことは勿論である。但し、補強部材9a,9bとシングルエレメント線1の大きさの関係は、本発明の前駆体が、前駆体を構成するときの空隙を有効利用して補強部材9a,9bを配置する趣旨からして、シングルエレメント線1よりも補強部材9a,9bの方が小さいものであることが好ましい(例えば、補強部材9a,9bの直径がシングルエレメント線1の直径に対して0.1以上、1.0未満)。
【0034】
図11は、本発明の前駆体の他の構成例を示す概略説明図である。この構成では、前記図1に示したシングルエレメント線1を束ねてマルチエレメント線を構成する際に、シングルエレメント線1群の外周付近(即ち、拡散バリア層6bとシングルエレメント線1の間)にだけ補強部材9a,9bを配置したものである。即ち、図11に示した構成では、シングルエレメント線1を束ねてマルチエレメント線13を構成するに際して、シングルエレメント線1の組立ての容易性から、シングルエレメント線1は横断面(軸直角断面)が六角形に形成されるものであるが、こうしたシングルエレメント線1を束ねた場合には、シングルエレメント線1の相互間には、空隙が形成されにくいことから、シングルエレメント線1の外周付近にだけ補強部材を配置したものである。この構成では、隣り合う2本のシングルエレメント線と、拡散バリア層との間に1本の補強部材が配置されており、全体として、複数の補強部材が概略円周状に均等に点在配置されている。
【0035】
こうした構成を採用することによっても、外周付近に存在するシングルエレメント線1の歪(いびつ)な変形を軽減でき、且つ最終的に超電導線材の強度も高くなって歪みに対する耐性も向上することになる。図11に示した超電導線材前駆体を伸線加工したときの、内部の形状の概略を図12に示す。
【0036】
図13は、本発明の超電導線材前駆体の更に他の構成例を示す概略説明図である。この構成では、図1に示したシングルエレメント線1を複数束ねて図3に示したようなマルチエレメント線14を構成するに際して、シングルエレメント線1の外周に補強部材9a,9bを配置せずに、内側のシングルエレメント線1の相互間の空隙にだけ補強部材9a,9bを配置するようにしたものである。こうした構成を採用することによっても、本発明の目的が達成される。図13に示した超電導線材前駆体を伸線加工した後の、内部の形状の概略を図14に示す。この構成では、隣り合う2本のシングルエレメント線と、その中心側に配置された11本のシングルエレメント線との間に、1本の補強部材が配置されており、全体として、複数の補強部材が概略円周状に点在配置されている。
【0037】
前記図3、4に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)を構成するに際して、必要とされる臨界電流密度Jcに対応して、マルチエレメント線の中央部にCuまたはCu基合金芯を配置することがある。図15は、こうした構成を基本的に採用するときの本発明の超電導線材前駆体の構成例を示す概略説明図である。即ち、図15に示した超電導線材前駆体15では、図2に示したシングルエレメント線5を複数束ねて図4に示したようなマルチエレメント線8aを構成するに際して、前駆体中央部にCuまたはCu基合金芯16を配置すると共に、その周囲に複数のシングルエレメント線5を配置し、且つこのシングルエレメント線5の相互間(シングルエレメント線とCuまたはCu基合金芯との間)や、シングルエレメント線5の外周(即ち、安定化銅層4cとシングルエレメント線5の間)に補強部材9a,9bを配置するようにしたものである。こうした構成を採用することによっても、本発明の目的を達成することができる。図15に示した超電導線材前駆体15を伸線加工したときの、内部の形状の概略を図16に示す。
【0038】
本発明では、図1、2に示したシングルエレメント線1,5と、前記図7、8に示したような補強部材9a,9bを用いてマルチエレメント線12,13,14,15を構成することによって、シングルエレメント線1の不均一変形を防止しつつ、内部のNbフィラメントもより均一な大きさとし、高い臨界電流密度Jcとn値が達成できるものとなるものであるが、本発明で用いる補強部材9a、9bは、超電導線材前駆体に組み込む際に予め焼鈍したものであることが好ましい。即ち、500〜900℃程度で予め焼鈍した補強部材9a,9bをマルチエレメント線の構成要素として組み込むことによって、縮径加工を行ときに補強部材9a,9bがシングルエレメント線1,5相互間、或いはシングルエレメント線1,5と拡散バリア層6bまたは安定化銅層4cとの間の空隙に追随して変形しやすい状態となる。その結果、シングルエレメント線1,5の変形が均一となり、内部のNbフィラメントもより均一に変形されるので、高い臨界電流密度Jcとn値を確保でき、縮径加工の際の断線も現象することになる。
【0039】
ところで補強部材をマルチエレメント線に配置すると、超電導部(Nb3Sn相)の面積が減少してしまい、臨界電流密度Jcを低下することにもなる。こうしたことから、補強部材9a,9bの配置割合を大きくして高強度化を指向することにも限界がある。また、補強部材9、9bの配置割合が小さ過ぎると上記の効果が達成されにくくなる。こうした観点から、補強部材の断面積割合は、前駆体の全断面積に対して2〜25%程度であることが好ましい。
【0040】
本発明の超電導線材前駆体を構成するに際して、シングルエレメント線を作製する際に用いるCu基合金や、補強部材の表面に被覆されるCu基合金としては、Sn,Ni等の合金元素を2〜5質量%程度含有したものを用いることができる。またシングルエレメント線の中央に配置されるSn基合金芯においても、Ti等の合金元素を2質量%程度含有したものを用いることができる。
【0041】
本発明においては、上記のような前駆体を用い、ブロンズ化熱処理を含めた拡散熱処理(通常600℃以上、700℃以下程度)することによって、良好な超電導特性(臨界電流密度Jc)を発揮するNb3Sn超電導線材を得ることができる。具体的には、180〜600℃の温度範囲でブロンズ化熱処理(SnをCuに拡散させる)を行なった後に、600〜700℃の温度範囲で100〜300時間程度のNb3Snを生成させる熱処理を行なう。尚、ブロンズ化熱処理としては、180〜200℃で50時間程度、340℃前後で50時間程度、550℃前後で50〜100時間等の多段階の熱処理の組合せにすることもできる。
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
Cu製パイプ(外径:21mm、内径:18mm)内に、Nb金属芯(直径:17mm)を挿入後、縮径加工して六角断面形状(六角対辺:4.3mm)と丸断面形状(直径:3.2mmおよび1.4mm)のCu/Nb複合線を作製した。丸断面形状のCu/Nb複合線については、真空中で600℃×1時間の焼鈍を施した。
【0044】
Cu製中空ビレットのCu内筒(外径:70mm、内径:61mm)の外周に前記六角断面形状のCu/Nb複合線511本を束ねて配置し、これをCu製中空ビレットのCu外筒(外径:143mm、内径:131mm)に挿入した後、蓋をして真空引きし溶接を行って両端を封止し、ビレットを作製した。このビレットをパイプ押出し加工し、更に前記Cu内筒内にSn−2質量%Ti合金を挿入して伸線加工し、シングルエレメント線(外径:8.8mm)を作製した。
【0045】
Cu製パイプ(外径:33mm、内径:29mm)内にNbシート(厚み:0.1mm)を重ね巻きして全体としての厚みを0.7mmとしたものを挿入して内面に貼り付かせ、その内部に前記シングルエレメント線を裁断したものと7本束ねて挿入し、更に前記丸断面のCu/Nb複合線(直径:3.2mmと1.4mmのもの)を夫々6本ずつ裁断して、外径:1.4mm材をシングルエレメント線間の空隙に、外径:3.2mm材をシングルエレメントとNb間の空隙に挿入した後、縮径加工を行い、外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した(前記図10参照)。このときの補強部材の銅比は、0.35、断面積割合(前駆体の全断面積に対する補強部材の面積割合:以下同じ)は9%であった。
【0046】
こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、下記の方法によって臨界電流密度Jcおよびn値を測定した。同サンプルについて、液体ヘリウム(4.2K)中に浸漬した状態で、引張試験を実施して0.2%耐力(σ0.2)を測定した。また、伸線加工中の断線回数についても計測した。尚、臨界電流密度Jcは外部磁場14Tで1000A/mm2以上であることが必要であり、0.2%耐力(σ0.2)は150MPa以上であることが必要である。
【0047】
[臨界電流密度Jcの測定]
液体ヘリウム中(温度4.2K)で、14Tの外部磁場の下、試料(超電導線材)に通電し、4端子法によって発生電圧を測定し、この値が0.1μV/cmの電界が発生した電流値(臨界電流Ic)を測定し、この電流値を、線材断面中の非銅部断面で除し、非銅部の臨界電流密度Jcを求めた。
【0048】
[n値の測定]
臨界電流Icを求めたのと同じ計測によって得られた(Ic−Vc)曲線において、0.1μVと1.0μVの間のデータを両対数表示し、その傾きとして求めた。尚、上記電流Icと電圧Vcの関係は、経験的に下記(1)式のような近似式で表されるが、この(1)式に基づいてnの値(即ち、「n値」)を求めたものである。
V=Vc(I/Ic)n …(1)
但し、VおよびIは、夫々Vc,Icよりも低い任意の電圧と電流である。
【0049】
(実施例2)
Cu製パイプ(外径:21mm、内径:18mm)内に、Nb金属芯(直径:17mm)を挿入後、縮径加工して六角断面形状(六角対辺:4.3mm)のCu/Nb複合線を作製した。
【0050】
一方、Cuビレット(外径:143mm、内径:120mm)内にNbシート(厚み:0.2mm)を重巻きして貼り付かせた後、Nb−47質量%Ti合金芯(外径:119mm)を挿入後、押出し・伸線して丸断面(外径:2.7mmまたは1.1mm)のCu/Nb/Nb−Ti複合線を作製した。この丸断面線については、真空中で600℃×1時間の焼鈍を行った。
【0051】
Cu製中空ビレットのCu外筒(外径:143mm、内径:131mm)に、Nbシートを重ね巻きしたものを内面に貼り付かせ、拡散バリア層を形成した中に、Cu内筒(外径:70mm、内径:61mm)の周りに前記六角断面のCu/Nb複合線を456本束ねて挿入した後、蓋をして真空引きし溶接を行って両端を封止し、ビレットを作製した。このビレットをパイプ押出し加工し、更に前記Cu内筒内にSn−2質量%Ti合金を挿入して伸線加工し、シングルエレメント線(外径:7.4mm)を作製した。
【0052】
Cu製パイプ(外径:33mm、内径:29mm)内に、Cu芯(直径:11.5mm)の周囲に、前記シングルエレメント線を裁断したものを8本束ねて挿入し、更に前記丸断面のCu/Nb/Nb−Ti複合線(直径:2.7mmと1.1mmのもの)を夫々8本ずつ裁断して、外径:1.1mm材をシングルエレメント線をCu芯間の空隙に、外径:2.7mm材をシングルエレメントとCuパイプ間の空隙に挿入した後、縮径加工を行い、外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した(前記図15参照)。このときの補強部材の銅比は、0.55、断面積割合は8%であった。
【0053】
こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、実施例と同様にして、臨界電流密度Jc、n値および0.2%耐力(σ0.2)を測定した。
【0054】
(実施例3)
実施例1と同様にして、シングルエレメント線(外径:7.5mm)と丸断面形状のCu/Nb複合線(外径:3.2mm)を作製した。Cu/Nb複合線は、真空中で600℃×1時間の焼鈍を行った。
【0055】
Cu製パイプ(外径:33mm、内径:29mm)内に、Nbシート(厚み:0.2mm)を重巻きしたものを挿入して内面に貼付かせ、その内部に前記シングルエレメント線を裁断したものを中心部に1本配置し、その周囲に8本束ねて挿入し、更に前記丸断面形状のCu/Nb複合線を8本裁断して、シングルエレメント線間の空隙に挿入した後、縮径加工を行い、外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した(前記図13参照)。このときの補強部材の銅比は0.35、断面積割合は10%であった。
【0056】
こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、実施例と同様にして、臨界電流密度Jc、n値および0.2%耐力(σ0.2)を測定した。
【0057】
(実施例4)
実施例1と同様にして、六角断面形状のシングルエレメント線(六角対辺:3.2mm)と丸断面のCu/Nb複合線(外径:4mm)を作製した。Cu/Nb複合線は、真空中で600℃×1時間の焼鈍を行った。
【0058】
Cu製パイプ(外径:33mm、内径:29mm)内に、Nbシート(厚み:0.2mm)を重巻きしたものを挿入して内面に貼付かせ、その内部に前記シングルエレメント線を裁断したものを7本束ねて挿入し、更に前記丸断面形状のCu/Nb複合線を6本裁断して、シングルエレメントとNbシート間の空隙に挿入した後、縮径加工を行い、外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した。このときの補強部材の銅比は0.34、断面積割合は9.5%であった。
【0059】
こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、実施例と同様にして、臨界電流密度Jc、n値および0.2%耐力(σ0.2)を測定した。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様にして、シングルエレメント線を作製し、Cu/Nb複合線をスペーサ(補強材)として挿入しない点を除いて、実施例1と同様にして外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した(前記図3、5参照)。こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、実施例1と同様にして、臨界電流密度Jc、n値および0.2%耐力(σ0.2)を測定した。
【0061】
(比較例2)
実施例2と同様にして、外径:8.8mmのシングルエレメント線を作製して裁断し、Cu製パイプ(外径:33mm、内径:29mm)内に7本束ねて挿入して縮径加工を行い、外径:1.0mmのマルチエレメント線を作製した(前記図4、6参照)。こうして得られたマルチエレメント線(直径:1.0mmのもの)を、Nb3Sn生成熱処理(550℃×100時間+700℃×100時間)を施した後、実施例1と同様にして、臨界電流密度Jc、n値および0.2%耐力(σ0.2)を測定した。
【0062】
実施例1〜4、比較例1,2で得られた超電導線材の超電導特性(臨界電流密度Jc、n値)および機械的特性[0.2%耐力(σ0.2)]を伸線加工中の断線回数と共に、下記表1に示す。尚、下記表1には、ブロンズ法で得られた超電導線材(製造条件は、Cu−14質量%Sn−0.3質量%Tiを使用した場合のもの)の標準的な超電導特性および機械的特性についても参考のために同時に示した。
【表1】

【0063】
この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足する実施例1〜4のものでは、良好な超電導特性(n値および臨界電流密度Jc)が得られている共に、0.2%耐力(σ0.2)も150MPa以上を確保していることが分かる。
【0064】
これに対し、比較例1、2のものでは、補強部材を組込んでいないので、4.2Kにおける0.2%耐力(σ0.2)が低い値となっている。また、ブロンズ法で得られたものでは、n値や0.2%耐力(σ0.2)では良好な値を示しているが、臨界電流密度Jcが低い値にとどまっている。尚、上記実施例以外にも、Ta若しくはNb−Taを用いた補強部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】内部Sn法に適用される超電導線材前駆体(シングルエレメント線)の構成例を模式的に示した断面図である。
【図2】内部Sn法に適用される超電導線材前駆体(シングルエレメント線)の他の構成例を模式的に示した断面図である。
【図3】内部Sn法に適用される超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の加工前の組立断面の構成例を模式的に示した図である。
【図4】内部Sn法に適用される超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の加工前の組立断面の他の構成例を模式的に示した図である。
【図5】図3に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【図6】図4に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【図7】補強部材の断面構造例を示す概略説明図である。
【図8】補強部材の断面構造の他の例を示す概略説明図である。
【図9】本発明の超電導線材前駆体の構成例を模式的に示した断面図である。
【図10】図9に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【図11】本発明の前駆体の他の構成例を模式的に示した断面図である。
【図12】図11に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【図13】本発明の超電導線材前駆体の更に他の構成例を模式的に示した断面図である。
【図14】図13に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【図15】本発明の超電導線材前駆体の他の構成例を模式的に示した断面図である。
【図16】図15に示した超電導線材前駆体(マルチエレメント線)の伸線加工後の内部の状態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,5 超電導線材前駆体(シングルエレメント線)
2 NbまたはNb基合金芯(Nbフィラメント)
3 SnまたはSn基合金芯(Sn基金属芯)
4a CuまたはCu基合金マトリクス
4b,4c 安定化銅層
6a,6b,6c 拡散バリア層
7a,7b,8a,8b,12〜15 超電導線材前駆体(マルチエレメント線)
9a,9b 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部Sn法によってNb3Sn超電導線材を製造する際に用いる超電導線材前駆体において、中央にSnまたはSn基合金芯が配置されると共に、その周囲にCuまたはCu基合金マトリクスと、複数本のNbまたはNb基合金フィラメントが配置されたシングルエレメント線を複数本束ねて配置して構成されるマルチエレメント線であって、前記シングルエレメント線相互間および/またはシングルエレメント線の外周に、棒状の補強部材を配設したものであることを特徴とする内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項2】
前記補強部材の直径は前記シングルエレメント線の直径よりも小さく構成される請求項1に記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項3】
前記補強部材は、Nbおよび/またはTaを含む金属または合金からなる芯材の外周を、CuまたはCu基合金によって被覆したものである請求項1または2に記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項4】
前記補強部材は、Nbおよび/またはTiを含む金属または合金からなる芯材の外周に、Nbからなる拡散バリアを配置し、その外周をCuまたはCu基合金によって被覆したものである請求項1または2に記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項5】
前記補強部材の断面積割合は、前駆体の全断面積に対して2〜25%である請求項1〜4のいずれかに記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項6】
前記補強部材の表面に被覆されるCuまたはCu基合金層は、補強部材中における伸線加工前の段階の銅比で0.1〜1.0である請求項3〜5のいずれかに記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項7】
前記補強部材は、500〜900℃の温度範囲で予め焼鈍されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項8】
前記シングルエレメント線の外周付近および/またはマルチエレメント線の外周付近には、拡散バリア層が配置されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材前駆体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の超電導線材前駆体を、拡散熱処理することによってNb3Sn超電導相を形成したものである内部Sn法Nb3Sn超電導線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−211880(P2009−211880A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52183(P2008−52183)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】