内面研削装置
【課題】機械構造が複雑にならずに一定位置にクーラントを容易に供給し研削焼けを防止できる内面研削装置を提供する。
【解決手段】主軸1と、主軸1と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレート3と、該バッキングプレート3の支持部31に当接させた環状被加工物の内周面を研削する回転砥石5と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら環状被加工物を研削する内面研削装置10であって、クーラント供給路は、環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向している。
【解決手段】主軸1と、主軸1と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレート3と、該バッキングプレート3の支持部31に当接させた環状被加工物の内周面を研削する回転砥石5と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら環状被加工物を研削する内面研削装置10であって、クーラント供給路は、環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面研削装置、特に環状被加工物の内周面に研削加工を施すことができる内面研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状被加工物の内周面を研削する内面研削装置では、環状被加工物の横穴から被加工物の中心にクーラントを供給する方法(例えば、特許文献1及び2参照)や、環状被加工物の主軸側の横穴から環状被加工物の加工点のみに供給するか、若しくは、回転砥石軸から加工点にクーラントを供給するものが知られていた(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
図8に示すように、軸受外輪の内周面を研削する内面研削装置100は、主軸101と、ディスタンスピース102を挟んで主軸101と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレート103と、主軸101の周囲に設けられた電磁マグネット106と、バッキングプレート103の端面に当接させた外輪110の内周面111を研削する回転砥石104と、を備える。そして、電磁マグネット106を磁化して図示しないシュー等を介して磁気回路を構成することで外輪110をバッキングプレート103に吸着固定し、このバッキングプレート103を回転させることにより外輪110を回転させ、この外輪110の内周面111に回転砥石104を摺接させることにより、外輪110の内周面111に研削加工を施している。
【0004】
この内面研削装置100においては、不図示のポンプから主軸101、ディスタンスピース102、バッキングプレート103の軸心を通るクーラント供給路105を通って外輪110の中心にクーラントを供給するように構成されており、クーラントを供給することで回転砥石104の加工点における発熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2602513号公報
【特許文献2】実用新案登録第2602514号公報
【特許文献3】特開平4−343666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転砥石軸からクーラントを供給するものは、砥石径の変化によって環状被加工物へのクーラント供給位置が変化し、研削焼けが起こりやすいという問題があった。
一方、主軸から被加工物の中心へのクーラントの供給では、加工点に十分クーラントが供給されず研削焼けを引き起こし、また、砥石に当たることで砥石径や砥石の回転速度によってクーラントの供給状況が変化するといった問題があった。さらに、主軸から加工点のみにクーラントを供給するように固定すると機械構造が複雑になるという問題があった。また、被加工物が変わるごとにその位置を変えなければならず、時間を要するとともに、その位置の繰り返し性によって研削焼けのおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械構造が複雑にならずに一定位置にクーラントを容易に供給し研削焼けを防止できる内面研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1)主軸と、該主軸と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレートと、該バッキングプレートの支持部に当接させた環状被加工物の内周面を研削する研削手段と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら前記環状被加工物を研削する内面研削装置であって、
前記クーラント供給路は、前記環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向していることを特徴とする内面研削装置。
(2)前記主軸と前記バッキングプレートとの間には、ディスタンスピースが設けられていることを特徴とする(1)に記載の内面研削装置。
(3)前記クーラント供給路は前記バッキングプレートに形成された複数の分岐流路であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の内面研削装置。
(4)前記バッキングプレートは、前記主軸又は前記ディスタンスピースと軸心を通る締結部材で締結され、
前記クーラント供給路は、前記バッキングプレートの締結部材用貫通孔と前記締結部材のヘッドの隙間により形成されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の内面研削装置。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の内面研削装置によれば、クーラント供給口が環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向しているので、機械構造を複雑にせずに一定位置にクーラントを容易に供給することができ、これにより研削焼けを防止できる。
【0010】
また、上記(2)に記載の内面研削装置によれば、被加工物の大きさが変わった場合にもバッキングプレートのみを交換することで対応することができ、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、上記(3)及び(4)に記載の内面研削装置によれば、簡易な構成でクーラント供給路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内面研削装置の断面図である。
【図2】図1の内面研削装置のバッキングプレートの正面図である。
【図3】図1の内面研削装置の部分断面図である。
【図4】図1の内面研削装置の変形例の部分断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態に係る内面研削装置の部分断面図であり、(b)は(a)の変形例の部分断面図である。
【図7】(a)は本発明の第4実施形態に係る内面研削装置の部分断面図であり、(b)は(a)の変形例の部分断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図9】(a)は溝位置が被加工物支持部からL1である内面研削装置の部分断面図であり、(b)は溝位置が被加工物支持部からL2である内面研削装置の部分断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図11】従来の内面研削装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る内面研削装置の断面図である。
【0015】
内面研削装置10は、軸方向に分割された第1ハウジング6aと第2ハウジング6bからなるハウジング6の内周面に、主軸1を外周から覆うように電磁マグネット4が固定されるとともに主軸1が軸受7を介してハウジング6に回転自在に支持されている。主軸1の軸方向一方側には、同軸上にディスタンスピース2とバッキングプレート3がこの順に並んで配設され、バッキングプレート3に環状被加工物としての外輪40を当接させ、電磁マグネット4で主軸1を磁化することで、バッキングプレート3に外輪40を吸着固定している。そして、研削手段としての回転砥石5を外輪40の内周面45に摺動させることで、外輪40の内周面45の研削加工を可能としている。
【0016】
この主軸1は、不図示のモータで回転駆動されるようになっており、軸心には、不図示のポンプに連結されてクーラントを供給するクーラント供給路9aが形成されている。
【0017】
ディスタンスピース2は、バッキングプレート3より硬い材料で形成された円筒状部材であり、周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)されたボルト用座ぐり8からボルト14で主軸1に固定されている。また、ディスタンスピース2の先端部(図中右側)には軸方向に突出する突起部21が設けられており、突起部21の外周には雄ねじ部21aが形成されている。そして、このディスタンスピース2の軸心には、主軸1のクーラント供給路9aと連通するクーラント連通路9bが形成され、このクーラント供給路9aとクーラント連通路9bの接続部には絞り部15が設けられている。
【0018】
バッキングプレート3は、円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32からさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。また、軸方向後端側内周部には、ディスタンスピース2の突起部21の外周に形成された雄ねじ部21aと螺合する雌ねじ部3aが形成されており、該雄ねじ部21aと該雌ねじ部3aを螺合させることでバッキングプレート3はディスタンスピース2に取り付けられている。これにより、バッキングプレート3は主軸1の回転に伴って主軸1及びディスタンスピース2と一体に回転可能となっている。
【0019】
図2及び図3に示すように、バッキングプレート3の軸心には、ディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9cが形成されており、クーラント連通路9cは外輪40の加工点とその円周上に向かって放射状に分岐する複数の分岐流路9dを含んでいる。複数の分岐流路9dの出口であるクーラント供給口9eは、軸方向端面32に環状に並んで形成される。これにより、回転砥石5を外輪40の内周面45に摺接させたとき、分岐流路9dのうち少なくとも1つは外輪40の加工点に指向し、他は加工点の円周上に指向している。
【0020】
なお、主軸1、ディスタンスピース2、バッキングプレート3は、全て磁性材料から構成されており、電磁マグネット4で主軸1を磁化することで、図示しないシュー等とともに磁気回路を構成し、バッキングプレート3に外輪40を吸着固定する。
【0021】
回転砥石5は、不図示のモータに接続される砥石軸58の先端に取り付けられ、軸方向及び径方向に移動可能となっており、回転しながら外輪40の内周面45に摺動させることで外輪40の内周面45を研削することができる。なお、回転砥石5の回転方向は、主軸1の回転方向と同じ方向であっても異なる方向であってもよく、回転砥石5が外輪40の内周面45に摺動する限り任意に設定することができる。
【0022】
このように構成された内面研削装置10は、回転砥石5が外輪40の内周面45に摺動して研削しているとき、不図示のポンプからクーラントが、クーラント連通路9a、9b、9cと分岐流路9dを介してクーラント供給口9eから外輪40の加工点とその円周上に供給される。
【0023】
以上説明したように本実施形態の内面研削装置10によれば、バッキングプレート3に形成された複数の分岐流路9dが外輪40の加工点とその円周上に向けて指向しているので、機械構造を複雑にせずに一定位置にクーラントを容易に供給することができ、これにより研削焼けを防止できる。
なお、ディスタンスピース2は必ずしも設ける必要はなく、主軸1にバッキングプレート3を直接取り付けてもよい。ただし、ディスタンスピース2を設けることで、径方向寸法の異なる被加工物を研削する際に、バッキングプレート3のみを交換すればよく、製造コストを低減することができる。
また、ディスタンスピース2を設ける場合、必ずしもバッキングプレート3より硬い材料に限定されず、例えば、含有炭素量を抑えたものとし磁気吸引力を高めるようにしてもよい。
【0024】
図4は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。なお、図4〜図7において、主軸1周りの構成は第1実施形態の内面研削装置10と同じ構成のため、ディスタンスピース2とバッキングプレート3のみを示すものとする。
本変形例の内面研削装置10’は、小径の環状被加工物に用いられるものであり、上記実施形態とバッキングプレート3以外は共通の構成を有する。そして、上記実施形態の場合よりも小径の被加工物に対応できるようにバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。
ここでも、軸方向端面32に形成された複数の分岐流路9dは、外輪40の加工点とその円周上に指向している。
このように被加工物のサイズに応じたバッキングプレート3を用意しておくことにより、加工する被加工物のサイズ等が変更された場合でも、バッキングプレート3のみを対応するものに交換するだけで、被加工物の所望の位置にクーラントを容易に、且つ、確実に供給することが可能となる。
【0025】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Aでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。ここで、バッキングプレート3に形成された複数の分岐流路9dはボルト11と干渉しないようにボルト11の内周側に位置し、外輪40の加工点とその円周上に指向している。本実施形態の内面研削装置10Aによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側からのボルト11で固定することができる。
図示を省略するが、本実施形態の場合も、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3のみを適合するものに交換することにより、種々の被加工物に対応可能である。
【0026】
<第3実施形態>
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Bでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、ディスタンスピース2の軸心に形成された雌ねじ部2aにバッキングプレート3の軸方向端面32から挿入された一本のボルト12により互いに固定されている。ここで、ディスタンスピース2のクーラント連通路9bは、ボルト12との干渉を避けるように一本の流路9b1の外縁部から直線状に延びる複数の分岐流路9b2に分岐し、それぞれの分岐流路9b2がバッキングプレート3の分岐流路9dに連通している。なお、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の対向面には、分岐流路9b2と分岐流路9dの位相を合わせるためのキー33とキー溝26が設けられている。本実施形態の内面研削装置10Bによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側から一本のボルト12で固定することができる。
【0027】
図6(b)は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。
本変形例の内面研削装置10B’は、小径の環状被加工物に用いられるものであり、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。それ以外の構成については、図6(a)の内面研削装置10Bと同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0028】
<第4実施形態>
図7(a)は、本発明の第4実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Cでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、ディスタンスピース2の軸心に形成された雌ねじ部2aにバッキングプレート3の軸方向端面32から挿入された一本のボルト(締結部材)13により互いに固定されている。なお、本実施形態では、バッキングプレート3に分岐流路9dが設けられていない点で第3実施形態の内面研削装置10Bと相違している。
【0029】
ボルト13は、ヘッド13aと、雄ねじ部13bと、を備えて構成され、ヘッド13aは、先端面34が平坦で、先端面34から軸方向後端に向けて次第に縮径するテーパ面13cを有するヘッド上部13a1と、テーパ面13cの後端と等しい径寸法を有し軸方向に伸びるヘッド下部13a2から構成され、ヘッド下部13a2が後端で小径の雄ねじ部13bと接続する。雄ねじ部13bとヘッド下部13a2には軸心を通るクーラント供給路9fが形成され、ヘッド下部13a2にはさらにクーラント供給路9fから径方向に放射状に分岐する分岐流路9gが形成されている。
【0030】
ディスタンスピース2の軸心には、主軸1のクーラント供給路9aとボルト13のクーラント供給路9fと連通するクーラント連通路9bと、ボルト13の雄ねじ部13bと螺合する雌ねじ部2aが形成されている。
【0031】
また、バッキングプレート3には、ボルト13のテーパ面13cと所定の隙間を介して対向するロート状凹部35と、ヘッド下部a2と径方向で対向する円筒部36と、円筒部36から内径側に突出しヘッド下部13a2の後端面を支持するとともに雄ねじ部13bを挿通する突出部37とにより、ボルト貫通孔38が形成されている。
【0032】
そして、ボルト13に形成された各分岐流路9gが、バッキングプレート3のボルト貫通孔38とヘッド13aとの隙間に形成されるロート状流路9hに連通し、ロート状流路9hが外輪40の加工点とその円周上に向けて指向している。ここで、ロート状流路9hの出口であるクーラント供給口9eはバッキングプレート3とボルト13のヘッド13aとの間に1つの円環を形成している。本実施形態の内面研削装置10Cによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側から一本のボルト13で固定することができ、第3実施形態の内面研削装置10Bのように位相を合わせるためのキー33とキー溝26を省略することができる。
【0033】
図7(b)は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。
本変形例の内面研削装置10C’は、小径の外輪研削に用いられるものであり、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。それ以外の構成については、図7(a)の内面研削装置10Cと同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0034】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Dは、バッキングプレート3が本体3Aと蓋体3Bにより構成され、且つ、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の本体3Aと蓋体3Bが、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。
【0035】
バッキングプレート3の本体3Aは、軸心にディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9c1が形成された円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32aからさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。そして、被加工物支持部31の内径側に本体3Aの軸方向端面32aと密着するように円板状の蓋体3Bが装着されている。
【0036】
蓋体3Bには、本体3Aのクーラント連通路9c1と連通するクーラント連通路9c2が形成され、クーラント連通路9c2は外輪40の加工点とその円周上に向かって放射状に分岐する複数の分岐流路9dを含んでいる。複数の分岐流路9dの出口であるクーラント供給口9eは、軸方向端面32bに環状に並んで形成される。ここで、分岐流路9dはボルト11と干渉しないようにボルト11の内周側に位置し、外輪40の加工点とその円周上に指向している。
【0037】
このように構成された内面研削装置10Dは、図9(a)及び図9(b)に示すように、外径が同一で加工を施す溝径や溝位置(被加工物支持部31からの距離がL1、L2)が異なるとき、本体3Aを代えずに分岐流路9dが形成された蓋体3Bのみを変更するだけで対応することができる。
【0038】
また、本体3Aの被加工物支持部31は、被加工物と直接当接する部分であるため消耗しやすい。一方、分岐流路9dは比較的複雑な加工を要するため蓋体3Bの製造は本体3Aと比べて困難である。そこで本実施形態のバッキングプレート3によれば、本体3Aと蓋体3Bを分けることにより消耗しやすい本体3Aを加工しやすい形状とし、被加工物支持部31が消耗した場合には本体3Aのみを交換して対応することができる。
【0039】
<第6実施形態>
図10は、本発明の第6実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Eは、バッキングプレート3が本体3Aと蓋体3Cにより構成され、且つ、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の本体3Aと蓋体3Cが、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。
【0040】
バッキングプレート3の本体3Aは、軸心にディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9c1が形成された円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32aからさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。軸方向端面32aと被加工物支持部31の接続部は断面R形状を有している。そして、被加工物支持部31の内径側に本体3Aの軸方向端面32aと所定の空間を介して対向するように円板状の蓋体3Cが装着されている。
【0041】
蓋体3Cは、被加工物支持部31より小径の円板部3c1から内部にボルト貫通穴3c2を有するボルト支持部3c3が周方向に等配され、ボルト11で固定することでボルト支持部3c3のみが本体3Aの軸方向端面32aに当接し、本体3Aの軸方向端面32aと蓋体3Cの円板部3c1との間に所定の空間が形成されるとともに、円板部3c1と被加工物支持部31との間の隙間により環状のクーラント供給口9eが形成されている。
【0042】
そして、本体3Aのクーラント連通路9c1から本体3Aの軸方向端面32aと蓋体3Cの円板部3c1との空間に供給されたクーラントは、軸方向端面32aと被加工物支持部31の接続部の断面R形状により被加工物である外輪40側に案内され、蓋体3Cの円板部3c1と被加工物支持部31により形成された環状のクーラント供給口9eから外輪40の加工点とその円周上に供給される。
【0043】
このように構成された内面研削装置10Eは、第5実施形態の内面研削装置10Dの作用効果に加えて、蓋体3Cに分岐流路9dを形成する必要がなく容易に蓋体3Cを製造することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態では環状被加工物として軸受の外輪を例示したが、内周面を研削するものであれば特にこれ限定されるものではない。また、超仕上げ加工等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 主軸
2 ディスタンスピース
3 バッキングプレート
5 回転砥石(研削手段)
9d 分岐流路(クーラント供給路)
9h ロート状流路(クーラント供給路)
13 ボルト(締結部材)
10、10’、10A、10A’、10B、10B’、10C、10C’ 内面研削装置
31 支持部(被加工物支持部)
38 ボルト貫通孔(締結部材用貫通孔)
40 外輪(環状被加工物)
45 内周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面研削装置、特に環状被加工物の内周面に研削加工を施すことができる内面研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状被加工物の内周面を研削する内面研削装置では、環状被加工物の横穴から被加工物の中心にクーラントを供給する方法(例えば、特許文献1及び2参照)や、環状被加工物の主軸側の横穴から環状被加工物の加工点のみに供給するか、若しくは、回転砥石軸から加工点にクーラントを供給するものが知られていた(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
図8に示すように、軸受外輪の内周面を研削する内面研削装置100は、主軸101と、ディスタンスピース102を挟んで主軸101と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレート103と、主軸101の周囲に設けられた電磁マグネット106と、バッキングプレート103の端面に当接させた外輪110の内周面111を研削する回転砥石104と、を備える。そして、電磁マグネット106を磁化して図示しないシュー等を介して磁気回路を構成することで外輪110をバッキングプレート103に吸着固定し、このバッキングプレート103を回転させることにより外輪110を回転させ、この外輪110の内周面111に回転砥石104を摺接させることにより、外輪110の内周面111に研削加工を施している。
【0004】
この内面研削装置100においては、不図示のポンプから主軸101、ディスタンスピース102、バッキングプレート103の軸心を通るクーラント供給路105を通って外輪110の中心にクーラントを供給するように構成されており、クーラントを供給することで回転砥石104の加工点における発熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2602513号公報
【特許文献2】実用新案登録第2602514号公報
【特許文献3】特開平4−343666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転砥石軸からクーラントを供給するものは、砥石径の変化によって環状被加工物へのクーラント供給位置が変化し、研削焼けが起こりやすいという問題があった。
一方、主軸から被加工物の中心へのクーラントの供給では、加工点に十分クーラントが供給されず研削焼けを引き起こし、また、砥石に当たることで砥石径や砥石の回転速度によってクーラントの供給状況が変化するといった問題があった。さらに、主軸から加工点のみにクーラントを供給するように固定すると機械構造が複雑になるという問題があった。また、被加工物が変わるごとにその位置を変えなければならず、時間を要するとともに、その位置の繰り返し性によって研削焼けのおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械構造が複雑にならずに一定位置にクーラントを容易に供給し研削焼けを防止できる内面研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1)主軸と、該主軸と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレートと、該バッキングプレートの支持部に当接させた環状被加工物の内周面を研削する研削手段と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら前記環状被加工物を研削する内面研削装置であって、
前記クーラント供給路は、前記環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向していることを特徴とする内面研削装置。
(2)前記主軸と前記バッキングプレートとの間には、ディスタンスピースが設けられていることを特徴とする(1)に記載の内面研削装置。
(3)前記クーラント供給路は前記バッキングプレートに形成された複数の分岐流路であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の内面研削装置。
(4)前記バッキングプレートは、前記主軸又は前記ディスタンスピースと軸心を通る締結部材で締結され、
前記クーラント供給路は、前記バッキングプレートの締結部材用貫通孔と前記締結部材のヘッドの隙間により形成されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の内面研削装置。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の内面研削装置によれば、クーラント供給口が環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向しているので、機械構造を複雑にせずに一定位置にクーラントを容易に供給することができ、これにより研削焼けを防止できる。
【0010】
また、上記(2)に記載の内面研削装置によれば、被加工物の大きさが変わった場合にもバッキングプレートのみを交換することで対応することができ、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、上記(3)及び(4)に記載の内面研削装置によれば、簡易な構成でクーラント供給路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内面研削装置の断面図である。
【図2】図1の内面研削装置のバッキングプレートの正面図である。
【図3】図1の内面研削装置の部分断面図である。
【図4】図1の内面研削装置の変形例の部分断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態に係る内面研削装置の部分断面図であり、(b)は(a)の変形例の部分断面図である。
【図7】(a)は本発明の第4実施形態に係る内面研削装置の部分断面図であり、(b)は(a)の変形例の部分断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図9】(a)は溝位置が被加工物支持部からL1である内面研削装置の部分断面図であり、(b)は溝位置が被加工物支持部からL2である内面研削装置の部分断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
【図11】従来の内面研削装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る内面研削装置の断面図である。
【0015】
内面研削装置10は、軸方向に分割された第1ハウジング6aと第2ハウジング6bからなるハウジング6の内周面に、主軸1を外周から覆うように電磁マグネット4が固定されるとともに主軸1が軸受7を介してハウジング6に回転自在に支持されている。主軸1の軸方向一方側には、同軸上にディスタンスピース2とバッキングプレート3がこの順に並んで配設され、バッキングプレート3に環状被加工物としての外輪40を当接させ、電磁マグネット4で主軸1を磁化することで、バッキングプレート3に外輪40を吸着固定している。そして、研削手段としての回転砥石5を外輪40の内周面45に摺動させることで、外輪40の内周面45の研削加工を可能としている。
【0016】
この主軸1は、不図示のモータで回転駆動されるようになっており、軸心には、不図示のポンプに連結されてクーラントを供給するクーラント供給路9aが形成されている。
【0017】
ディスタンスピース2は、バッキングプレート3より硬い材料で形成された円筒状部材であり、周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)されたボルト用座ぐり8からボルト14で主軸1に固定されている。また、ディスタンスピース2の先端部(図中右側)には軸方向に突出する突起部21が設けられており、突起部21の外周には雄ねじ部21aが形成されている。そして、このディスタンスピース2の軸心には、主軸1のクーラント供給路9aと連通するクーラント連通路9bが形成され、このクーラント供給路9aとクーラント連通路9bの接続部には絞り部15が設けられている。
【0018】
バッキングプレート3は、円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32からさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。また、軸方向後端側内周部には、ディスタンスピース2の突起部21の外周に形成された雄ねじ部21aと螺合する雌ねじ部3aが形成されており、該雄ねじ部21aと該雌ねじ部3aを螺合させることでバッキングプレート3はディスタンスピース2に取り付けられている。これにより、バッキングプレート3は主軸1の回転に伴って主軸1及びディスタンスピース2と一体に回転可能となっている。
【0019】
図2及び図3に示すように、バッキングプレート3の軸心には、ディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9cが形成されており、クーラント連通路9cは外輪40の加工点とその円周上に向かって放射状に分岐する複数の分岐流路9dを含んでいる。複数の分岐流路9dの出口であるクーラント供給口9eは、軸方向端面32に環状に並んで形成される。これにより、回転砥石5を外輪40の内周面45に摺接させたとき、分岐流路9dのうち少なくとも1つは外輪40の加工点に指向し、他は加工点の円周上に指向している。
【0020】
なお、主軸1、ディスタンスピース2、バッキングプレート3は、全て磁性材料から構成されており、電磁マグネット4で主軸1を磁化することで、図示しないシュー等とともに磁気回路を構成し、バッキングプレート3に外輪40を吸着固定する。
【0021】
回転砥石5は、不図示のモータに接続される砥石軸58の先端に取り付けられ、軸方向及び径方向に移動可能となっており、回転しながら外輪40の内周面45に摺動させることで外輪40の内周面45を研削することができる。なお、回転砥石5の回転方向は、主軸1の回転方向と同じ方向であっても異なる方向であってもよく、回転砥石5が外輪40の内周面45に摺動する限り任意に設定することができる。
【0022】
このように構成された内面研削装置10は、回転砥石5が外輪40の内周面45に摺動して研削しているとき、不図示のポンプからクーラントが、クーラント連通路9a、9b、9cと分岐流路9dを介してクーラント供給口9eから外輪40の加工点とその円周上に供給される。
【0023】
以上説明したように本実施形態の内面研削装置10によれば、バッキングプレート3に形成された複数の分岐流路9dが外輪40の加工点とその円周上に向けて指向しているので、機械構造を複雑にせずに一定位置にクーラントを容易に供給することができ、これにより研削焼けを防止できる。
なお、ディスタンスピース2は必ずしも設ける必要はなく、主軸1にバッキングプレート3を直接取り付けてもよい。ただし、ディスタンスピース2を設けることで、径方向寸法の異なる被加工物を研削する際に、バッキングプレート3のみを交換すればよく、製造コストを低減することができる。
また、ディスタンスピース2を設ける場合、必ずしもバッキングプレート3より硬い材料に限定されず、例えば、含有炭素量を抑えたものとし磁気吸引力を高めるようにしてもよい。
【0024】
図4は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。なお、図4〜図7において、主軸1周りの構成は第1実施形態の内面研削装置10と同じ構成のため、ディスタンスピース2とバッキングプレート3のみを示すものとする。
本変形例の内面研削装置10’は、小径の環状被加工物に用いられるものであり、上記実施形態とバッキングプレート3以外は共通の構成を有する。そして、上記実施形態の場合よりも小径の被加工物に対応できるようにバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。
ここでも、軸方向端面32に形成された複数の分岐流路9dは、外輪40の加工点とその円周上に指向している。
このように被加工物のサイズに応じたバッキングプレート3を用意しておくことにより、加工する被加工物のサイズ等が変更された場合でも、バッキングプレート3のみを対応するものに交換するだけで、被加工物の所望の位置にクーラントを容易に、且つ、確実に供給することが可能となる。
【0025】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Aでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。ここで、バッキングプレート3に形成された複数の分岐流路9dはボルト11と干渉しないようにボルト11の内周側に位置し、外輪40の加工点とその円周上に指向している。本実施形態の内面研削装置10Aによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側からのボルト11で固定することができる。
図示を省略するが、本実施形態の場合も、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3のみを適合するものに交換することにより、種々の被加工物に対応可能である。
【0026】
<第3実施形態>
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Bでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、ディスタンスピース2の軸心に形成された雌ねじ部2aにバッキングプレート3の軸方向端面32から挿入された一本のボルト12により互いに固定されている。ここで、ディスタンスピース2のクーラント連通路9bは、ボルト12との干渉を避けるように一本の流路9b1の外縁部から直線状に延びる複数の分岐流路9b2に分岐し、それぞれの分岐流路9b2がバッキングプレート3の分岐流路9dに連通している。なお、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の対向面には、分岐流路9b2と分岐流路9dの位相を合わせるためのキー33とキー溝26が設けられている。本実施形態の内面研削装置10Bによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側から一本のボルト12で固定することができる。
【0027】
図6(b)は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。
本変形例の内面研削装置10B’は、小径の環状被加工物に用いられるものであり、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。それ以外の構成については、図6(a)の内面研削装置10Bと同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0028】
<第4実施形態>
図7(a)は、本発明の第4実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Cでは、ディスタンスピース2とバッキングプレート3が、ディスタンスピース2の軸心に形成された雌ねじ部2aにバッキングプレート3の軸方向端面32から挿入された一本のボルト(締結部材)13により互いに固定されている。なお、本実施形態では、バッキングプレート3に分岐流路9dが設けられていない点で第3実施形態の内面研削装置10Bと相違している。
【0029】
ボルト13は、ヘッド13aと、雄ねじ部13bと、を備えて構成され、ヘッド13aは、先端面34が平坦で、先端面34から軸方向後端に向けて次第に縮径するテーパ面13cを有するヘッド上部13a1と、テーパ面13cの後端と等しい径寸法を有し軸方向に伸びるヘッド下部13a2から構成され、ヘッド下部13a2が後端で小径の雄ねじ部13bと接続する。雄ねじ部13bとヘッド下部13a2には軸心を通るクーラント供給路9fが形成され、ヘッド下部13a2にはさらにクーラント供給路9fから径方向に放射状に分岐する分岐流路9gが形成されている。
【0030】
ディスタンスピース2の軸心には、主軸1のクーラント供給路9aとボルト13のクーラント供給路9fと連通するクーラント連通路9bと、ボルト13の雄ねじ部13bと螺合する雌ねじ部2aが形成されている。
【0031】
また、バッキングプレート3には、ボルト13のテーパ面13cと所定の隙間を介して対向するロート状凹部35と、ヘッド下部a2と径方向で対向する円筒部36と、円筒部36から内径側に突出しヘッド下部13a2の後端面を支持するとともに雄ねじ部13bを挿通する突出部37とにより、ボルト貫通孔38が形成されている。
【0032】
そして、ボルト13に形成された各分岐流路9gが、バッキングプレート3のボルト貫通孔38とヘッド13aとの隙間に形成されるロート状流路9hに連通し、ロート状流路9hが外輪40の加工点とその円周上に向けて指向している。ここで、ロート状流路9hの出口であるクーラント供給口9eはバッキングプレート3とボルト13のヘッド13aとの間に1つの円環を形成している。本実施形態の内面研削装置10Cによれば、第1実施形態の内面研削装置10の作用効果に加えて、ディスタンスピース2とバッキングプレート3を軸方向先端側から一本のボルト13で固定することができ、第3実施形態の内面研削装置10Bのように位相を合わせるためのキー33とキー溝26を省略することができる。
【0033】
図7(b)は、本実施形態の変形例に係る内面研削装置の断面図である。
本変形例の内面研削装置10C’は、小径の外輪研削に用いられるものであり、被加工物のサイズ等の変更に応じてバッキングプレート3の被加工物支持部31が小径に設定されている。それ以外の構成については、図7(a)の内面研削装置10Cと同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0034】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Dは、バッキングプレート3が本体3Aと蓋体3Bにより構成され、且つ、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の本体3Aと蓋体3Bが、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。
【0035】
バッキングプレート3の本体3Aは、軸心にディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9c1が形成された円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32aからさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。そして、被加工物支持部31の内径側に本体3Aの軸方向端面32aと密着するように円板状の蓋体3Bが装着されている。
【0036】
蓋体3Bには、本体3Aのクーラント連通路9c1と連通するクーラント連通路9c2が形成され、クーラント連通路9c2は外輪40の加工点とその円周上に向かって放射状に分岐する複数の分岐流路9dを含んでいる。複数の分岐流路9dの出口であるクーラント供給口9eは、軸方向端面32bに環状に並んで形成される。ここで、分岐流路9dはボルト11と干渉しないようにボルト11の内周側に位置し、外輪40の加工点とその円周上に指向している。
【0037】
このように構成された内面研削装置10Dは、図9(a)及び図9(b)に示すように、外径が同一で加工を施す溝径や溝位置(被加工物支持部31からの距離がL1、L2)が異なるとき、本体3Aを代えずに分岐流路9dが形成された蓋体3Bのみを変更するだけで対応することができる。
【0038】
また、本体3Aの被加工物支持部31は、被加工物と直接当接する部分であるため消耗しやすい。一方、分岐流路9dは比較的複雑な加工を要するため蓋体3Bの製造は本体3Aと比べて困難である。そこで本実施形態のバッキングプレート3によれば、本体3Aと蓋体3Bを分けることにより消耗しやすい本体3Aを加工しやすい形状とし、被加工物支持部31が消耗した場合には本体3Aのみを交換して対応することができる。
【0039】
<第6実施形態>
図10は、本発明の第6実施形態に係る内面研削装置の部分断面図である。
本実施形態の内面研削装置10Eは、バッキングプレート3が本体3Aと蓋体3Cにより構成され、且つ、ディスタンスピース2とバッキングプレート3の本体3Aと蓋体3Cが、バッキングプレート3の外周縁部近傍に周方向に等配(例えば、120°間隔で3箇所)された複数のボルト11により互いに固定されている。
【0040】
バッキングプレート3の本体3Aは、軸心にディスタンスピース2のクーラント連通路9bと連通するクーラント連通路9c1が形成された円筒形状を有し、軸方向先端側外縁には軸方向端面32aからさらに先端側に突出する環状の被加工物支持部31が形成されている。軸方向端面32aと被加工物支持部31の接続部は断面R形状を有している。そして、被加工物支持部31の内径側に本体3Aの軸方向端面32aと所定の空間を介して対向するように円板状の蓋体3Cが装着されている。
【0041】
蓋体3Cは、被加工物支持部31より小径の円板部3c1から内部にボルト貫通穴3c2を有するボルト支持部3c3が周方向に等配され、ボルト11で固定することでボルト支持部3c3のみが本体3Aの軸方向端面32aに当接し、本体3Aの軸方向端面32aと蓋体3Cの円板部3c1との間に所定の空間が形成されるとともに、円板部3c1と被加工物支持部31との間の隙間により環状のクーラント供給口9eが形成されている。
【0042】
そして、本体3Aのクーラント連通路9c1から本体3Aの軸方向端面32aと蓋体3Cの円板部3c1との空間に供給されたクーラントは、軸方向端面32aと被加工物支持部31の接続部の断面R形状により被加工物である外輪40側に案内され、蓋体3Cの円板部3c1と被加工物支持部31により形成された環状のクーラント供給口9eから外輪40の加工点とその円周上に供給される。
【0043】
このように構成された内面研削装置10Eは、第5実施形態の内面研削装置10Dの作用効果に加えて、蓋体3Cに分岐流路9dを形成する必要がなく容易に蓋体3Cを製造することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態では環状被加工物として軸受の外輪を例示したが、内周面を研削するものであれば特にこれ限定されるものではない。また、超仕上げ加工等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 主軸
2 ディスタンスピース
3 バッキングプレート
5 回転砥石(研削手段)
9d 分岐流路(クーラント供給路)
9h ロート状流路(クーラント供給路)
13 ボルト(締結部材)
10、10’、10A、10A’、10B、10B’、10C、10C’ 内面研削装置
31 支持部(被加工物支持部)
38 ボルト貫通孔(締結部材用貫通孔)
40 外輪(環状被加工物)
45 内周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、該主軸と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレートと、該バッキングプレートの支持部に当接された環状被加工物の内周面を研削する研削手段と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら前記環状被加工物を研削する内面研削装置であって、
前記クーラント供給路は、前記環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向していることを特徴とする内面研削用被加工物支持装置。
【請求項2】
前記主軸と前記バッキングプレートとの間には、ディスタンスピースが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内面研削装置。
【請求項3】
前記クーラント供給路は前記バッキングプレートに形成された複数の分岐流路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内面研削装置。
【請求項4】
前記バッキングプレートは、前記主軸又は前記ディスタンスピースと軸心を通る締結部材で締結され、
前記クーラント供給路は、前記バッキングプレートの締結部材用貫通孔と前記締結部材のヘッドの隙間により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内面研削装置。
【請求項1】
主軸と、該主軸と一体に回転可能に取り付けられたバッキングプレートと、該バッキングプレートの支持部に当接された環状被加工物の内周面を研削する研削手段と、を備え、クーラント供給路からクーラントを供給しながら前記環状被加工物を研削する内面研削装置であって、
前記クーラント供給路は、前記環状被加工物の加工点とその円周上に向けて指向していることを特徴とする内面研削用被加工物支持装置。
【請求項2】
前記主軸と前記バッキングプレートとの間には、ディスタンスピースが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内面研削装置。
【請求項3】
前記クーラント供給路は前記バッキングプレートに形成された複数の分岐流路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内面研削装置。
【請求項4】
前記バッキングプレートは、前記主軸又は前記ディスタンスピースと軸心を通る締結部材で締結され、
前記クーラント供給路は、前記バッキングプレートの締結部材用貫通孔と前記締結部材のヘッドの隙間により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内面研削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−41987(P2011−41987A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189924(P2009−189924)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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