説明

円偏波アンテナ

【課題】給電素子と無給電素子との組合せにより、円偏波を放射させる。
【解決手段】円偏波を送受信する円偏波アンテナにおいて、線状の給電素子1と、前記線状の給電素子に対して電気的に切り離されたL型形状を呈する無給電素子2とを有し、前記L型無給電素子の短辺2aを前記給電素子に直角に配置し、前記短辺の先端を前記給電素子に接近させ、前記L型無給電素子の長辺2bを前記給電素子と前記L型無給電素子の短辺とで形成する面内に配置する。前記給電素子と前記無給電素子とを電磁結合させ、さらに前記L型無給電素子が前記給電素子を挟んで対峙していることを利用して前記給電素子と前記無給電素子とに流れる電流の位相差を生じさせて、円偏波を送受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円偏波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、簡易な構成で良好な円偏波特性を得ることができ、且つ小型化を図る平面アンテナが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている円偏波アンテナは、線状の給電アンテナ素子と、複数の線状の無給電アンテナ素子とを備え、前記無給電アンテナ素子をそれぞれ前記給電アンテナ素子と非接触で交差する位置及び方向に配置するとともに、その交差部分を前記給電アンテナ素子と並行するように折り曲げ加工した構造に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−35219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された円偏波アンテナについてシミュレーションを行った結果、次の様な課題があることを突き止めた。
すなわち、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子とが接近するとその両者の位相差は少なくなり、かつ誘導される電流も大きくなるので、同相の電流が卓越し、円偏波に向かないというシミュレーションの結果を得た。
【0006】
具体的に説明すると、特許文献1では、前記無給電アンテナ素子は、前記給電素子に沿う並行辺を中心として、その先端をクランク状に折り曲げ加工して並行辺から左右に伸びた左右辺を有している構造であり、しかも、前記無給電アンテナ素子は前記給電アンテナ素子に非接触で交差する構造であるから、前記無給電アンテナ素子の並行辺と前記給電アンテナ素子との間隔を調整すると、前記無給電アンテナ素子の左右辺と前記給電アンテナ素子との交差する位置が変動する、即ち無給電アンテナ素子の並行辺を中心とした無給電アンテナ素子の左右の長さにアンバランスが生じる。
そのため、前記無給電アンテナ素子と前記給電アンテナ素子との位相差を十分に確保することが不可能となり、円偏波に向かない事となる。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成で良好な円偏波特性を得ることができ、且つ小型化を図る円偏波アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許文献1に開示された円偏波アンテナについてシミュレーションを行った結果によると、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子とが接近するとその両者の位相差は少なくなり、かつ誘導される電流も大きくなるので、同相の電流が卓越し、円偏波に向かなくなるという課題がある。
本発明は、無給電素子を給電素子に交差する構造に代えて、無給電素子を線状の給電素子を挟んで対峙させることにより、特許文献1の課題を解決するものである。
すなわち、本発明に係る円偏波アンテナは、円偏波を送受信する円偏波アンテナにおいて、線状の給電素子と、前記線状の給電素子に対して電気的に切り離された逆L型形状を呈する無給電素子とを有し、前記逆L型無給電素子の短辺を前記給電素子に直角に配置し、前記短辺の先端を前記給電素子に接近させ、前記逆L型無給電素子の長辺を前記給電素子と前記L型無給電素子の短辺とで形成する面内に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、逆L型形状の無給電素子を線状の給電素子と電気的に切り離して、前記逆L型無給電素子の短辺を給電素子に対して直角に配置したため、給電素子と無給電素子との間隔を調整して、給電素子と無給電素子との位相差を大きくすることができ、円偏波特性を改善することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る円偏波アンテナを示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態1に係る円偏波アンテナを示す平面図、(b)は同側面図である。
【図3】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図4】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合の垂直面内の円偏波放射パターンを示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図5】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合における無給電素子の立ち上がり部の高さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図6】(a),(b)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合における無給電素子の立ち上がり部の高さを変化させた場合の垂直面内の円偏波放射パターンを示す図である。
【図7】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合におけるダイポール素子の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図8】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合における無給電素子の短辺の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図9】(a)は、給電素子としてダイポール素子を用いた場合における無給電素子の長辺の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図10】本発明の実施形態2に係る円偏波アンテナを示す斜視図である。
【図11】(a)は、本発明の実施形態2に係る円偏波アンテナを示す平面図、(b)は同側面図である。
【図12】(a)は、給電素子としてモノポール素子を用いた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図13】(a)は、給電素子としてモノポール素子を用いた場合における無給電素子の立ち上がり部の高さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図14】(a)は、給電素子としてモノポール素子を用いた場合におけるダイポール素子の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図15】(a)は、給電素子としてモノポール素子を用いた場合における無給電素子の短辺の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【図16】(a)は、給電素子としてモノポール素子を用いた場合における無給電素子の長辺の長さを変化させた場合の反射特性を示す図、(b)は、同軸比特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る円偏波アンテナは図1及び図10に示す様に、基本的な構成として、円偏波を送受信する円偏波アンテナにおいて、線状の給電素子1と、前記線状の給電素子1に対して電気的に切り離された逆L型形状を呈する無給電素子2とを有し、前記逆L型無給電素子2の短辺2aを前記給電素子1に直角に配置し、前記短辺2aの先端を前記給電素子1に接近させ、前記逆L型無給電素子2の長辺2bを前記給電素子1と前記L型無給電素子2の短辺2aとで形成する面内に配置したことを特徴とするものである。
【0013】
次に、本発明の実施形態における給電素子1にダイポール素子とモノポール素子とを用いた例をそれぞれ説明する。先ず、給電素子1にダイポール素子を用いた例を説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1及び図2に示す様に、給電素子1としてダイポール素子を用いている。そして、逆L型形状の無給電素子2の短辺2aの先端を垂直に折り曲げ加工して立ち上がり部2cを形成し、その立ち上がり部2cの下端を接地板3に固定している。したがって、前記無給電素子2は、その立ち上がり部2cが接地板3に対して垂直に立ち上がり、z方向から見たx−y面内での形状が図2(a)に示す様に逆L型形状を呈している。
【0015】
前記L型形状の無給電素子2,2はy軸上に離間して配置され、それぞれの立ち上がり部2c,2cが前記接地板3に対して垂直に立ち上がっている。
【0016】
前記ダイポール素子1は、図示しない誘電体に保持されて、前記2本の無給電素子2,2間に水平に配置されている、すなわち接地板3に対して平行に配置されている。
一方、前記2本の無給電素子2,2は図2(a),(b)に示す様に、その短辺2a,2aの先端が前記ダイポール素子1の中央部分、すなわち給電点1aの位置で前記ダイポール素子1に対して直角に配置され、前記無給電素子2,2は前記ダイポール素子1を挟んで対峙して配置されている。さらに、前記2本の無給電素子2,2は図2(a)(b)に示す様に、その長辺2b,2bが前記ダイポール素子1の長さ方向、すなわち図1のx軸方向に平行に配置されている。
【0017】
また、図2(a),(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の短辺2a,2aの先端と前記ダイポール素子1との間隔Wは等しく設定されている。また、図2(a),(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の短辺2a,2aの長さは等しい長さL2に設定されており、その長辺2b,2bの長さは等しい長さL2´に設定されている。また、前記ダイポール素子1の給電点1aからそれぞれ両端までの長さは等しい長さL1に設定されている。また、図2(a),(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の立ち上がり部2c,2cの高さは等しい高さHに設定されている。
【0018】
次に、本発明の実施形態1に係る円偏波アンテナについてシミュレーションを行って、円偏波アンテナとして機能することを実証する。
【0019】
図2(a)(b)に示す寸法を次の様に設定してシミュレーションを行った。設計周波数(λ)を1.5GHz、L1=0.25λ(50mm)、L2=5mm、L2´=45mm、L2+L2´=0.25λ(50mm)、H=80mm、W=0.5mmにそれぞれ設定した。
【0020】
先ず、反射特性及び軸比特性についてシミュレーションを行った。そのシミュレーションした反射特性の結果を図3(a)に、軸比特性を図3(b)に示している。図3(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失を示している。
図3(a)から明らかなように1.61GHz付近で共振しており、図3(b)から明らかなように1.71GHz付近で軸比が1となっている。
これらの結果からして、円偏波或いはこれに近似した楕円偏波の特性をもつことが分かる。
【0021】
次に、図3(b)から得た1.71GHzでの放射特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションした円偏波放射パターンを図4(a)、軸比特性を図4(b)にそれぞれ示している。
図4(a)において、a1は図1のz−x面内での円偏波放射パターン、a2は図1のz−y面内での円偏波放射パターンをそれぞれ示している。また、図4(b)のa3は図1のz−x面内での軸比特性、a4は図1のz−y面内での軸比特性をそれぞれ示している。
図4(a)から明らかなように、図1のz−x面及びz−y面内に円偏波放射パターンが現れている。また、図4(b)から明らかなように、z軸を0°とし、そこから30°の範囲で軸比率が1であって、それを超えると、軸比率が徐々に増加する傾向を示しており、これらの結果からして、円偏波或いはこれに近似した楕円偏波の特性をもつことが分かる。
【0022】
次に、無給電素子2の立ち上がり部2cの高さHを50mm,60mm,70mm及び80mmにそれぞれ変化させた場合における反射特性と軸比特性とをシミュレーションした。高さHを変化させた場合の反射特性の変化を図5(a)、軸比特性の変化を図5(b)にそれぞれ示している。図5(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失を示している。図5(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。
図5(a)において、a5は高さHを50mm、a6は高さHを60mm、a7は高さHを70mm、a8は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の反射特性を示している。図5(b)において、a5は高さHを50mm、a6は高さHを60mm、a7は高さHを70mm、a8は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の軸比特性を示している。また、図5(a)において、b1はダイポール素子1の共振点、b2,b3,b4は無給電素子2の共振周波数をそれぞれ示している。
図5(a)から、高さHの変化により、無給電素子2の共振周波数b2,b3,b4が高い方から1.6GHzに近づくことが分かる。また、図5(b)から、軸比は無給電素子2の長さL2+L2´の長さにより変化する事が分かる。
【0023】
次に、前記高さHを変化させた場合における円偏波放射パターンを図6(a),(b)に示す。図6(b)において横軸はz軸を0°とした仰角、縦軸は利得をそれぞれ示している。図6(a)において、a5は高さHを50mm、a6は高さHを60mm、a7は高さHを70mm、a8は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の反射特性を示しており、図6(b)において、a5は高さHを50mm、a6は高さHを60mm、a7は高さHを70mm、a8は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の軸比特性を示している。
図6(a)(b)から、高さHを下げるにつれて利得が高くなる傾向にあることが分かる。これは、接地板3の影響が高くなったためである。
【0024】
次に、ダイポール素子1の長さL1を変化させた場合における反射特性を図7(a)、軸比特性を図7(b)にそれぞれ示している。図7(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図7(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図7(a)において、a9は長さL1が37mmに変化させた場合の反射特性、a10は長さL1が42mmに変化させた場合の反射特性、a11は長さL1が47mmに変化させた場合の反射特性を示している。図7(b)において、a9は長さL1が37mmに変化させた場合の軸比特性、a10は長さL1が42mmに変化させた場合の軸比特性、a11は長さL1が47mmに変化させた場合の軸比特性を示している。
ダイポール素子1の長さL1を変化させると、共振点を調整することができる、すなわち送受信する周波数を調整することができる。
【0025】
次に、無給電素子2の短辺2aの長さL2を変化させた場合における反射特性を図8(a)、軸比特性を図8(b)にそれぞれ示している。図8(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図8(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図8(a)において、a12は長さL2を4mmに変化させた場合の反射特性、a13は長さL2を8mmに変化させた場合の反射特性、a14は長さL2を12mmに変化させた場合の反射特性、a15は長さL2を16mmに変化させた場合の反射特性を示している。図8(b)において、a12は長さL2を4mmに変化させた場合の軸比特性、a13は長さL2を8mmに変化させた場合の軸比特性、a14は長さL2を12mmに変化させた場合の軸比特性、a15は長さL2を16mmに変化させた場合の軸比特性を示している。
無給電素子2の短辺2aの長さL2を変化させることにより、軸比を調整することができることが分かる。
【0026】
次に、無給電素子2の長辺2bの長さL2´を変化させた場合における反射特性を図9(a)、軸比特性を図9(b)にそれぞれ示している。図9(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図9(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図9(a)において、a16は長さL2´を0mmに変化させた場合の反射特性、a17は長さL2´を8mmに変化させた場合の反射特性、a18は長さL2´を16mmに変化させた場合の反射特性、a19は長さL2´を24mmに変化させた場合の反射特性、a20は長さL2´を28mmに変化させた場合の反射特性を示している。図9(b)において、a16は長さL2´を0mmに変化させた場合の軸比特性、a17は長さL2´を8mmに変化させた場合の軸比特性、a18は長さL2´を16mmに変化させた場合の軸比特性、a19は長さL2´を24mmに変化させた場合の軸比特性、a20は長さL2´を28mmに変化させた場合の軸比特性を示している。
図9(a),(b)から、無給電素子2の長辺2bが存在しないと、軸比が取れないことが分かる。
【0027】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態における給電素子1としてモノポール素子を用いた例を実施形態2として説明する。
【0028】
図10及び図11に示す様に、給電素子1としてモノポール素子(以下、モノポール素子10として表記する)を用いている。そして、逆L型形状無給電素子2の短辺2aの先端を垂直に折り曲げ加工して立ち上がり部2cを形成し、その立ち上がり部2cの下端を接地板3に固定している。したがって、前記無給電素子2は、その立ち上がり部2cが接地板3に対して垂直に立ち上がり、z方向から見たx−y面内での形状が図11(a)に示す様に逆L型形状を呈している。
【0029】
前記L型形状の無給電素子2は1本を備えており、その1本の無給電素子2はモノポール素子10に対してy軸上に離間して配置され、その立ち上がり部2cが前記接地板3に対して垂直に立ち上がっている。
【0030】
前記モノポール素子10は、図示しない誘電体に保持されて、前記接地板3に対して水平に配置されている。前記無給電素子2は図11(a),(b)に示す様に、その短辺2aの先端が前記モノポール素子10の中央部分、すなわち給電点10aの位置で前記モノポール素子10に対して直角に配置されている。さらに、前記無給電素子2は図11(a),(b)に示す様に、その長辺2bが前記モノポール素子10の長さ方向、すなわち図1のx軸方向に平行に配置されている。
【0031】
また、図2(a)(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の短辺2a,2aの先端と前記モノポール素子10との間隔Wは等しく設定されている。また、図2(a),(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の短辺2a,2aの長さは等しい長さL2に設定されており、その長辺2b,2bの長さは等しい長さL2´に設定されている。また、前記モノポール素子10の給電点10aからそれぞれ両端までの長さは等しい長さL1に設定されている。また、図2(a),(b)に示す様に、前記2本の無給電素子2,2の立ち上がり部2c,2cの高さは等しい高さHに設定されている。
【0032】
次に、本発明の実施形態2に係る円偏波アンテナについてシミュレーションを行って、円偏波アンテナとして機能することを実証する。
【0033】
図11(a),(b)に示す寸法を次の様に設定してシミュレーションを行った。設計周波数(λ)を105GHz、L1=0.25λ(50mm)、L2=5mm、L2´=45mm、L2+L2´=0.25λ(50mm)、H=80mm、W=0.5mmにそれぞれ設定した。
【0034】
先ず、反射特性及び軸比特性についてシミュレーションを行った。そのシミュレーションした反射特性の結果を図12(a)に、軸比特性を図12(b)に示している。図12(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失を示している。
図12(a)から明らかなように1.55GHz付近で共振しており、図12(b)から明らかなように1.81GHz付近で軸比が1となっている。
これらの結果からして、円偏波或いはこれに近似した楕円偏波の特性をもつことが分かる。
【0035】
次に、図12(b)から得た1.81GHzでの放射特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションした結果、z軸を0°として仰角40°と215°の方向に次第利得が得られ、チルトした円偏波放射パターンが得られることが分かった。
【0036】
次に、無給電素子2の立ち上がり部2cの高さHを50mm,60mm,70mm及び80mmにそれぞれ変化させた場合における反射特性と軸比特性とをシミュレーションした。高さHを変化させた場合の反射特性の変化を図13(a)、軸比特性の変化を図13(b)にそれぞれ示している。図13(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失を示している。図13(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。
図13(a)において、a21は高さHを50mm、a22は高さHを60mm、a23は高さHを70mm、a24は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の反射特性を示している。図13(b)において、a21は高さHを50mm、a22は高さHを60mm、a23は高さHを70mm、a24は高さHを80mmにそれぞれ変化させた場合の軸比特性を示している。また、図13(a)において、b1はモノポール素子10の共振点、b2,b2,b3,b4は無給電素子2の共振周波数をそれぞれ示している。
図13(a)から、高さHの変化により、無給電素子2の共振周波数b2,b3,b4が高い方から1.6GHzに近づくことが分かる。また、図13(b)から、軸比は無給電素子2の長さL2+L2´の長さにより変化する事が分かる。
【0037】
また、高さHを下げるにつれて利得が高くなる傾向にあることが分かった。これは、接地板3の影響が高くなったためである。
【0038】
次に、モノポール素子10の長さL1を変化させた場合における反射特性を図14(a)、軸比特性を図14(b)にそれぞれ示している。図14(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図14(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図14(a)において、a25は長さL1が45mmに変化させた場合の反射特性、a26は長さL1が50mmに変化させた場合の反射特性、a27は長さL1が55mmに変化させた場合の反射特性を示している。図14(b)において、a25は長さL1が45mmに変化させた場合の軸比特性、a26は長さL1が50mmに変化させた場合の軸比特性、a27は長さL1が55mmに変化させた場合の軸比特性を示している。
ダイポール素子1の長さL1を変化させると、共振点を調整することができる、すなわち送受信する周波数を調整できることが分かる。
【0039】
次に、無給電素子2の短辺2aの長さL2を変化させた場合における反射特性を図15(a)、軸比特性を図15(b)にそれぞれ示している。図15(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図15(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図15(a)において、a28は長さL2を20mmに変化させた場合の反射特性、a29は長さL2を30mmに変化させた場合の反射特性、a30は長さL2を40mmに変化させた場合の反射特性を示している。図15(b)において、a28は長さL2を20mmに変化させた場合の軸比特性、a29は長さL2を30mmに変化させた場合の軸比特性、a30は長さL2を40mmに変化させた場合の軸比特性を示している。
無給電素子2の長さL2を変化させることにより、軸比を調整することができることが分かる。
【0040】
次に、無給電素子2の長辺2bの長さL2´を変化させた場合における反射特性を図16(a)、軸比特性を図16(b)にそれぞれ示している。図16(a)の横軸は周波数、縦軸は反射損失をそれぞれ示している。図16(b)の横軸は周波数、縦軸は軸比率をそれぞれ示している。図16(a)において、a31は長さL2´を0mmに変化させた場合の反射特性、a32は長さL2´を20mmに変化させた場合の反射特性、a33は長さL2´を40mmに変化させた場合の反射特性を示している。図16(b)において、a31は長さL2´を0mmに変化させた場合の軸比特性、a32は長さL2´を20mmに変化させた場合の軸比特性、a33は長さL2´を40mmに変化させた場合の軸比特性に変化させた場合の軸比特性を示している。
図16(a),(b)から、無給電素子2の長辺2bが存在しないと、軸比が取れないことが分かる。
【0041】
次に、本発明の実施形態における給電素子1にダイポール素子及びモノポール素子を用いた例について考察する。
共に円偏波として動作することが確認できた。
給電素子1の長さL1を変化させることにより、周波数を調整でき、無給電素子2の短辺2aと長辺2bとを変える事により軸比を調整できる。
ダイポール素子1では、長さL1をλ/4、無給電素子2の短辺2aの長さL2+長辺2bの長さL2´をλ/4とした場合、立ち上がり部2cの高さHを0.45λとすることにより、周波数を設計周波数λに近づけることができた。但し、λはシミュレーションを行った使用周波数であり、λは設計周波数である。
モノポール素子1の場合、z軸を基点とした仰角40°,220°方向にチルトした円偏波を放射することが確認できた。
ダイポール素子及びモノポール素子のいずれでも、無給電素子2の立ち上がり部2cの高さを低くすることにより、利得が高くなることが確認できた。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態によれば、逆L型形状の無給電素子を線状の給電素子と電気的に切り離して、前記逆L型無給電素子の短辺を給電素子に対して直角に配置したため、給電素子と無給電素子との間隔を調整して、給電素子と無給電素子との位相差を大きくすることができ、円偏波特性を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、円偏波での情報の伝送を行う分野に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 給電素子(ダイポール素子)
1a 給電素子の給電点
2 無給電素子
2a 無給電素子の短辺
2b 無給電素子の長辺
2c 無給電素子の立ち上がり部
10 給電素子(モノポール素子)
10a 給電素子の給電点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円偏波を送受信する円偏波アンテナにおいて、
線状の給電素子と、
前記線状の給電素子に対して電気的に切り離された逆L型形状を呈する無給電素子とを有し、
前記逆L型無給電素子の短辺を前記給電素子に直角に配置し、前記短辺の先端を前記給電素子に接近させ、
前記逆L型無給電素子の長辺を前記給電素子と前記L型無給電素子の短辺とで形成する面内に配置したことを特徴とする円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記逆L型無給電素子の短辺先端部に、接地板から立ち上がった立ち上がり部を有する請求項1に記載の円偏波アンテナ。
【請求項3】
前記給電素子をダイポールで形成した請求項1に記載の円偏波アンテナ。
【請求項4】
前記給電素子をモノポールで形成した請求項1に記載の円偏波アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−130002(P2011−130002A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284110(P2009−284110)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】