説明

円滑走行支援システム

【課題】フィードフォワード制御的なサービスとフィードバック制御的なサービスの両方を実現でき、情報提供の信頼性を高めることができ、ドライバへの訴求効果が高く、情報の有効期限を伝達でき、過度の車線変更を検知でき、情報提供装置やセンサの設置位置を適正化できる、円滑走行支援システムを提供する。
【解決手段】第1区間S1に設置された第1交通流センサ11と、第2区間S2に設置された第2交通流センサ12と、第1区間S1と第2区間S2の交通状況を把握して渋滞緩和情報を作成する路側処理装置25と、路側処理装置25からの指令に基づいて車両3に対して情報提供を行う第1情報提供装置14とを備る。路側処理装置25は、第1区間S1と第2区間S2の交通状況に基づいて渋滞緩和情報を作成し、第1情報提供装置25は、第1区間S1を走行する車両3に対して渋滞緩和情報を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通流センサ、情報提供装置を利用して、運転者に情報を提供することにより、交通渋滞緩和を実現する円滑走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や自動車専用道路における交通渋滞を緩和する手段として、従来から多くの提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の交通渋滞緩和装置40は、図2に示すように、車両専用道路41上の第1区間43に設けられた交通流センサ45と、第1区間43より下流の第2区間44に設けられた情報提供装置46,47と、路側システム48とを備える。
【0004】
路側システム48は、各車線の平均交通量と平均速度の相関分布データと、相関分布データから渋滞が発生する直前の渋滞直前領域に設定された各車線の渋滞直前監視領域を記憶しており、交通流センサ45で検出した各走行車線の平均交通量と平均速度の組合せのすべてが渋滞直前監視領域に入ったことをもって渋滞の発生を予測し、情報提供装置46,47により渋滞緩和情報を提供するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−309735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術には以下のような問題があった。
(1)交通流センサ45の設置位置は1ヶ所のみであり、その設置位置によって、例えば、区間の上流に情報提供装置と近接している位置に交通流センサ45がある場合は、情報提供を受ける地点での交通量に基づいたフィードフォワード制御的なサービスとなり、区間の下流に交通流センサ45がある場合には、フィードバック制御的なサービスとなり、どちらかに限定される。
(2)平均交通量と平均速度の相関分布データからの渋滞予測は、過去のデータに基づく予測であるため、実際の交通状況と異なる場合があり、信頼性に限界がある。
(3)平均交通量と平均速度は、平均であるために一定時間(例えば1分間)のデータが必要であり、そのため渋滞の発生を把握するのに一定時間(例えば1分間)の計測が必要である。渋滞が発生しているにもかかわらず情報提供を行う時間が発生し、渋滞中に情報を提供することで、ドライバに対して無意味な情報を提供することになり、情報の信頼性を損なう可能性がある。
(4)情報提供が一度であるため、ドライバへの訴求が低く、効果が限定される。
(5)情報の有効期限が不明であるため、情報提供に協力したドライバが、区間内に元の運転行動に戻ってしまう可能性がある。
(6)情報提供によって車線変更を促した場合、過度に車線変更が行われたことを検知することができない。
(7)情報提供位置とセンサ検出位置の関係が明確になっておらず、実際に情報提供装置やセンサを設置するには、なんらかの決定手法が必要である。
(8)区間を走行する速度を一定速度と仮定しているもしくは車両を時空間上に仮想的に配置しているなど、現実の交通状況と乖離がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、フィードフォワード制御的なサービスとフィードバック制御的なサービスの両方を実現でき、情報提供の信頼性を高めることができ、ドライバへの訴求効果が高く、情報の有効期限を伝達でき、過度の車線変更を検知でき、情報提供装置やセンサの設置位置を適正化できる、円滑走行支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の円滑走行支援システムは、以下の技術的手段を採用する。
(1)本発明の円滑走行支援システムは、複数の車線を有する道路上の第1区間に設置された第1交通流センサと、前記道路上の前記第1区間より下流側にある第2区間に設置された第2交通流センサと、前記第1交通流センサと前記第2交通流センサからの検出信号に基づいて第1区間と第2区間の交通状況を把握する路側処理装置と、前記第1区間に設置され、前記路側処理装置からの指令に基づいて車両に対して情報提供を行う第1情報提供装置とを備え、前記路側処理装置は、第1区間と第2区間の交通状況に基づいて渋滞緩和情報を作成し、前記第1情報提供装置は、前記第1区間を走行する車両に対して渋滞緩和情報を提供する、ことを特徴とする。
【0009】
上記の本発明の構成によれば、第1区間と第2区間にそれぞれ交通流センサが設置されているので、第1区間と第2区間の交通状況から、第1情報提供装置による車両への情報提供を行うか否かを判断することができる。したがって、第1区間の交通状況に基づくフィードフォワード制御的なサービス、第2区間の交通状況に基づくフィードバック制御的なサービス、および両者を組み合わせたサービスの提供が可能となる。
【0010】
(2)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記路側処理装置は、第1区間について車線ごとに平均交通量と平均速度を計算し、第1区間の混雑度と、車線間の平均交通量の差及び平均速度の差に基づいて、情報提供するか否かを判定し、情報提供の開始又は終了を指示する。
【0011】
上記の構成によれば、各車線の平均交通量と平均速度の相関分布に基づく渋滞予測ではなく、実際の交通状況である第1区間の混雑度、車線間の平均交通量の差及び平均速度の差に基づいて情報提供の開始と終了を判定するので、渋滞緩和情報の信頼性が高い。
【0012】
(3)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記路側処理装置は、第1区間と第2区間の交通状況に所定以上の差がある場合、情報提供の停止を指示する。
【0013】
上記の構成によれば、第1区間と第2区間とで交通状況が著しく異なる場合、第1交通流センサから第2交通流センサまでの間で事故等の異常が発生している可能性があるので、速やかに情報提供を停止することで、状況に適さない情報提供による混乱を避けることができる。
【0014】
(4)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記路側処理装置は、第1区間から第2区間までの間で車線変更した車両割合が所定以上である場合、情報提供の停止を指示する。
【0015】
上記の構成によれば、第1区間から第2区間までの間で車線変更した車両割合が所定以上である場合に情報提供を停止するので、過度の車線変更を抑制できる。
【0016】
(5)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記路側処理装置は、第2区間で渋滞を検出した場合、情報提供の停止を指示する。
【0017】
上記の構成によれば、第2区間で渋滞を検出した場合に情報提供を停止することで、ドライバに対する無意味な情報提供を防止でき、これにより情報の信頼性を向上できる。
【0018】
(6)また上記の円滑走行支援システムにおいて、さらに、前記第1区間又は第2区間であって前記第1情報提供装置より下流側に設置され、前記路側処理装置からの指令に基づいて車両に対して情報提供を行う第2情報提供装置を備える。
【0019】
上記の構成によれば、例えば、第2情報提供装置により第1情報提供装置と同じ情報を提供することで、ドライバに対する訴求効果が高くなり、高い反応が期待できる。また、例えば、第2情報提供装置により第1情報提供装置とは異なる情報を提供することで、区間や交通状況に応じた情報を提供できる。
【0020】
(7)また上記の円滑走行支援システムにおいて、さらに、第2区間の終了地点に設置され、提供された渋滞緩和情報の終了を告げるための情報を提供する第3情報提供装置を備える。
【0021】
上記の構成によれば、区間の終了地点で情報提供を行うことによって、渋滞対策の終了を伝えられる。これにより、ドライバの次回以降の継続的な協力の意志を醸成することが期待できる。
【0022】
(8)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記第1情報提供装置は、最も近い上流側の合流部による車線利用率の乱れが終了する位置よりも下流で、前記第2交通流センサに到達するまでに情報提供によって期待されるドライバの行動が完了するのに十分な距離だけ上流に遡った位置において、情報提供が可能なように設置されている。
【0023】
上記の情報提供位置は、上流側の合流部における乱れの影響を受けない位置であり、また、情報提供に従ってドライバが行動を完了するのに十分な時間が与えられる位置であるので、情報提供のタイミングが適正化され、高い渋滞緩和効果が期待できる。
【0024】
(9)また上記の円滑走行支援システムにおいて、前記第2交通流センサは、ショックウェーブが延伸し解消不可能となる位置の交通状況を計測できる位置に設置されている。
【0025】
上記の構成によれば、ショックウェーブが延伸し解消不可能となる位置の交通状況を監視することで、渋滞の発生を的確に判断できる。
【0026】
(10)また上記の円滑走行支援システムにおいて、車両の平均速度をV、渋滞延伸速度をU、前記第2交通流センサの検出信号に基づく交通状況の判定周期をp、前記第1情報提供装置からの情報提供を車両が受ける位置と前記第2交通流センサによる検出位置との距離をhとしたとき、p<h/(V+U)の関係を満たす。
【0027】
上記の構成によれば、短期間周期の渋滞検出により速やかに情報提供を停止できるので、ドライバに対する無意味な情報提供を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、フィードフォワード制御的なサービスとフィードバック制御的なサービスの両方を実現でき、情報提供の信頼性を高めることができ、ドライバへの訴求効果が高く、情報の有効期限を伝達でき、過度の車線変更を検知でき、情報提供装置やセンサの設置位置を適正化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態にかかる円滑走行支援システム10の構成を示す図である。この円滑走行支援システム10は、複数の車線1a,1b,1cを有する道路1を走行中の車両3のドライバに渋滞を緩和するための情報を提供することにより、交通渋滞の緩和を実現するものである。道路1は、車両3が走行する高速道路や車両専用道路であり、車両3は道路1上を図1の右側に向って走行するものとする。
【0031】
図1には、円滑走行支援システム10による交通支援を行う範囲が示されており、当該範囲に第1区間S1と第2区間S2が設定されている。第2区間S2は第1区間S1の下流側に位置している。また図1の例では、「サグ」と呼ばれる、下り坂から上り坂に変わる地形が第2区間S2に形成されている。ドライバは下り坂でアクセルをゆるめて、上り坂になってもアクセルを踏まないため、速度が落ちてしまい、それが後続車に伝播して渋滞になる。よって、サグでは渋滞が発生しやすい。
【0032】
車線1a,1b,1cは、この例ではそれぞれ第1走行車線、第2走行車線および追越車線である。なお、車線数は3に限定されず、2あるいは4以上でもよい。ここで、「車両3」とは、自動車または自動二輪車をいう。
【0033】
図1に示すように、円滑走行支援システム10は、第1交通流センサ11と、第2交通流センサ12と、路側処理装置25と、第1情報提供装置14と、第2情報提供装置18と、第3情報提供装置22とを備える。
【0034】
第1交通流センサ11は、第1区間S1に設置されている。第1交通流センサ11は、第1区間S1の始点付近の交通状況を計測できるように設置されている。交通状況には、車両3の平均交通量や平均速度などの情報が含まれる。
第2交通流センサ12は、第2区間S2に設置されている。第2交通流センサ12は、第2区間S2の始点付近の交通状況および渋滞を計測・検出できるように設置されており、渋滞を判定するために個別車両3の走行状態(位置、速度など)を計測する機能を有する。
【0035】
第1交通流センサ11及び第2交通流センサ12としては、3次元レーザレーダやカメラを適用することができる。3次元レーザレーダの場合、所定区間を走行する車両3に対してパルスレーザ光を三次元的に走査し、車両3で反射したパルスレーザ光の帰還時間を計測することで各車両3の位置を算出し、これに基づいて平均速度と平均交通量を車線毎に算出することができる。カメラの場合、所定区間を撮像してそこを走行する車両3を画像処理により識別し、各車両3の位置を算出し、これに基づいて平均速度と平均交通量を車線毎に算出することができる。
【0036】
また第1交通流センサ11及び第2交通流センサ12としては、各車線にそれぞれ設けられたトラフィックセンサであってもよい。トラフィックセンサは、走行方向に間隔をおいて埋め込まれた一対のコイルからなり、その上を通過する車両3を磁気変化から検出し、同時に検出時間差から通過する車両3の速度を検出することで、平均速度と平均交通量を車線毎に算出することができる。
【0037】
路側処理装置25は、第1交通流センサ11と第2交通流センサ12からの検出信号に基づいて第1区間S1と第2区間S2の交通状況を把握し、この交通状況に基づいて渋滞緩和情報を作成する。
本実施形態において路側処理装置25は、第1区間S1について車線ごとに平均交通量と平均速度を計算し、第1区間S1の混雑度と、車線間の平均交通量の差及び平均速度の差に基づいて、情報提供するか否かを判定し、第1情報提供装置14に対して情報提供の開始又は終了を指示する。
【0038】
路側処理装置25は、第1交通流センサ11、第2交通流センサ12、第1情報提供装置14、第2情報提供装置18及び第3情報提供装置22と有線通信又は無線通信が可能であり、第1交通流センサ11及び第2交通流センサ12からの検出信号を受信し、第1情報提供装置14、第2情報提供装置18及び第3情報提供装置22を制御するようになっている。
【0039】
第1情報提供装置14は、第1区間S1に設置されており、路側処理装置25からの指令に基づいて、第1区間S1を走行する車両3に対して渋滞緩和情報を提供する。第1情報提供装置14は、第1交通流センサ11で交通状況を検出している位置またはその付近で車両3に対して情報提供できる位置に設置されるのがよい。
【0040】
第2情報提供装置18は、第1区間S1又は第2区間S2で第1情報提供装置14より下流側に設置されており、路側処理装置25からの指令に基づいて、車両3に対して渋滞緩和情報を提供する。図1の構成例では、第2区間S2の始点付近で情報提供できる位置に第2情報提供装置18が設置されているが、それより上流側または下流側の位置に設置されてもよい。
【0041】
第3情報提供装置22は、第2区間S2の終了地点に設置されており、路側処理装置25からの指令に基づいて、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18によって提供された渋滞緩和情報の終了情報を提供する。
【0042】
第1〜第3情報提供装置14、18、22は、図1の構成例では、それぞれ表示板15、19、23と通信装置16、20、24を有する。表示板15、19、23は例えば電光表示装置であり、路側処理装置25で作成した渋滞緩和情報を文字表示する。通信装置16、20、24は、車載器を搭載した車両3に対して、路側処理装置25で作成した渋滞緩和情報を送信するものであり、例えば、公知のシステムである、5.8GHz帯(ミリ波帯)による狭域専用通信(DSRC)を適用することができる。
【0043】
車載器による情報発信は、文字表示と音声出力を併用してもよく、いずれか一方でもよい。なお車載器は、ある程度の割合で車両3に搭載されていればよく、すべての車両3に搭載されている必要はない。
【0044】
図1の構成例において、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18の表示板15,19は、車両に搭載された移動式であり、第3情報提供装置22の表示板23は柱に固定された固定式であるが、各情報提供装置においては、いずれの形態を採用してもよい。
【0045】
次に、上記のように構成された円滑走行支援システム10の動作について説明する。
路側処理装置25は、第1交通流センサ11と第2交通流センサ12からの検出信号に基づいて第1区間S1と第2区間S2の交通状況を把握し、この交通情報に基づいて渋滞緩和情報を作成する。具体的には、路側処理装置25により、第1区間S1について車線ごとに平均交通量と平均速度を計算し、第1区間S1の混雑度が所定以上となり、車線間の平均交通量の差と平均速度の差が所定以上となったら渋滞緩和情報を作成し、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18に対して情報提供の開始を指示する。上記の所定の混雑度は、渋滞が始まりなそうなくらいの混雑度である。
【0046】
路側処理装置25は渋滞緩和情報に対応する信号を第1情報提供装置14に送り、第1情報提供装置14により車線変更を促すような情報を提供する。例えば、表示板15において、「この先追越車線混雑」という文字表示とともに左車線への車線変更を示唆するような絵柄・図形・記号などを表示する。また例えば、通信装置16からの情報を受信した車載器において、表示板15と同様の情報を文字表示または音声出力、または両方をする。
【0047】
また上記の渋滞緩和情報として、車線ごとの車線利用率または交通量を表示するようにしてもよい。例えば、追い越し車線:車線利用率70%、走行車線:車線利用率30%と表示することにより、走行車線への車線変更を促し、車線利用率を追い越し車線50%、走行車線50%に誘導する。
【0048】
追越車線利用率が70%で走行車線利用率が30%の場合には、追い越し車線から渋滞が始まって、結果として走行車線も渋滞してしまうが、追越車線利用率50%、走行車線利用率50%の場合には、渋滞の開始を遅らせることができ、渋滞を緩和できる。
【0049】
したがって、渋滞緩和情報の提供により、各車線の利用率が適正化されることで渋滞緩和を図ることができる。
また上記の構成によれば、各車線の平均交通量と平均速度の相関分布に基づく渋滞予測ではなく、実際の交通状況である第1区間S1の混雑度、車線間の平均交通量の差及び平均速度の差に基づいて情報提供の開始を判定するので、渋滞緩和情報の信頼性が高い。
【0050】
路側処理装置25は、第1区間S1と第2区間S2の交通状況に所定以上の差がある場合、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18に対して情報提供の停止を指示するのがよい。第1区間S1と第2区間S2とで交通状況が著しく異なる場合、第1交通流センサ11から第2交通流センサ12までの間で事故等の異常が発生している可能性があるので、速やかに情報提供を停止することで、状況に適さない情報提供による混乱を避けることができる。
【0051】
路側処理装置25は、第1区間S1から第2区間S2までの間で車線変更した車両3割合が所定以上である場合、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18に対して情報提供の停止を指示するのがよい。これにより、期待以上の過度の車線変更を抑制できる。
【0052】
路側処理装置25は、第2区間S2で渋滞を検出した場合、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18に対して情報提供の停止を指示するのがよい。このように第2区間S2で渋滞を検出した場合に情報提供を停止することで、ドライバに対する無意味な情報提供を防止でき、これにより情報の信頼性を向上できる。
【0053】
このように本発明の円滑走行支援システム10では、第1区間S1と第2区間S2にそれぞれ交通流センサが設置されているので、第1区間S1と第2区間S2の交通状況から、車両3への情報提供を行うか否かを判断することができる。したがって、第1区間S1の交通状況に基づくフィードフォワード制御的なサービス、第2区間S2の交通状況に基づくフィードバック制御的なサービス、および両者を組み合わせたサービスの提供が可能となる。
【0054】
図1の構成例のように、第2区間S2の始点付近で情報提供できる位置に第2情報提供装置18を設置した場合、第2情報提供装置18による情報提供の内容は、第1情報提供装置14と異なる内容とするのがよく、これにより区間や交通状況に応じた情報を提供できる。この場合、第2情報提供装置18により、例えば現在走行している車線をキープするよう促す情報を提供する。
【0055】
また、図1の構成例と異なり、第1区間S1内で第1情報提供装置14より下流側に第2情報提供装置18を設置した場合、第2情報提供装置18による情報提供の内容は、第1情報提供装置14と同じ内容とするのがよく、これによりドライバに対する訴求効果が高くなり、高い反応が期待できる。
【0056】
第3情報提供装置22では、第1情報提供装置14と第2情報提供装置18により提供された情報の有効期限が終了することを告げるための情報を提供する。例えば表示板23において「ご協力ありがとうございました。」と文字表示し、通信装置24からの情報を受信した車載器において表示板と同様の情報を文字表示または音声出力、または両方をする。このように区間の終了地点で情報提供を行うことによって、渋滞対策の終了を伝えられる。これにより、ドライバの次回以降の継続的な協力の意志を醸成することが期待できる。
【0057】
第1情報提供装置14は、最も近い上流側の合流部による車線利用率の乱れが終了する位置よりも下流で、第2交通流センサ12に到達するまでに情報提供によって期待されるドライバの行動が完了するのに十分な距離だけ上流に遡った位置において、情報提供が可能なように設置されるのが好ましい。このような情報提供位置は、上流側の合流部における乱れの影響を受けない位置であり、また、情報提供に従ってドライバが行動を完了するのに十分な時間が与えられる位置であるので、情報提供のタイミングが適正化され、高い渋滞緩和効果が期待できる。
【0058】
第2交通流センサ12は、ショックウェーブが延伸し解消不可能となる位置の交通状況を計測できる位置に設置されるのが好ましい。渋滞の先頭となるボトルネック位置からショックウェーブが発生したり消滅したりを繰り返すが、ショックウェーブが延伸し解消不可能となる位置の交通状況を監視することで、渋滞の発生を的確に判断できる。なお、ショックウェーブとは、渋滞発生の原因のひとつであり、混雑した道路1で走行中の一台が何らかの理由で減速することで、後続車が接近を避けるようと前方車よりも強く減速し、この減速が大きくなりながら後続車に伝わって後方で車両3の流れが止まってしまう現象をいう。
【0059】
上記において渋滞が発生したら情報提供を停止することを説明したが、この停止は渋滞発生後速やかに行われるのがよい。これについて以下説明する。
【0060】
渋滞が始まりそうなくらい混在しているときには、ショックウェーブが発生と消滅を繰り返している。ショックウェーブの延伸はいつはじまりいつ終わるかわからない。ショックウェーブがある位置まで延伸したとき、これ以上延伸したらショックウェーブから渋滞になる位置を超えたと判断し、情報提供を速やかに止める。このとき、どんなに早く情報提供を止めたとしても、第1情報提供装置14より下流にいる車両3には情報が提供されてしまっている(本当は情報は提供されるべきではない)。しかし、第1情報提供装置14と第2交通流センサ12は離れているので、情報を受けてしまう車両3が0台というのは現実的にはあり得ない。
【0061】
ここで、ショックウェーブがある位置を超えた(渋滞が発生した)と判断してから、情報提供を止めるタイミングが遅れれば遅れるほど、情報提供を止めるまでの間に情報提供位置を通過する車両3が増えるため、本当は情報を提供されるべきでない車両3が増える。したがって、ある位置においてショックウェーブが延伸したと判断される状況になったら、速やかに情報提供を止めることが好ましい。したがって、第2交通流センサ12の検出信号に基づく交通状況の判定周期は1分周期よりも10秒周期の方が、10秒周期よりも1秒周期の方が、1秒周期よりも100msecの方がよい。
【0062】
以下、数式を使って補足する。
走行している車両3の平均速度をV、1車線あたりの平均交通量をN[台]、第2交通流センサ12の検出信号に基づく交通状況の判定周期をp、第1情報提供装置14からの情報提供を車両3が受ける位置と第2交通流センサ12による検出位置との距離をhとする。
【0063】
平均交通量がN[台]であることから、1台が通過して次の1台が通過するまでの平均時間は、1/Nである。よって、平均車頭間距離は、V/Nになる。したがって、距離h上に平均的に存在する車両数は、h/(V/N)=hN/V[台]となる。すなわち、第2交通流センサ12がショックウェーブが渋滞になる状況でないと判定した時刻において、平均してh/NV[台]の車両3が、距離h上に存在する。
【0064】
ここで、時刻t=t0において、第2交通流センサ12はショックウェーブが渋滞になる状況ではないと判定したとする。このとき、別途定義されている混雑していることを判定する条件は満たされており、情報提供が行われているものとする。第2交通流センサ12の状況判定周期1周期後の時刻t=t0+pにおいて、第2交通流センサ12はショックウェーブが渋滞になる状況だと判定したとする。そうして速やかに情報提供を中止したとする。ただし、実際に渋滞が発生した時刻は、t0からt0+pの間のいつかは分からない。このときの情報処理速度や情報伝達速度等は、本説明には本質的には影響を及ぼさないので、ここでは無視する。
【0065】
実際に渋滞が発生した時刻は第2交通流センサ12では正確に分からないが、最悪の場合、時刻t=t0の次の瞬間(極微小時間経過後)に渋滞が発生したとすると、ほぼp時間に経過した車両3は、渋滞が発生しているにもかかわらず情報提供を受けてしまうことになる。このとき、時刻t=t0から時刻t=t0+pの間に情報提供を受けた車両3は、pN[台]となる。
【0066】
すなわち、pが大きければ大きいほど、本当は情報提供がされるべきではない車両3数が増えることなになる。したがって、pは小さければ小さいほど望ましい。ただし、渋滞が発生したその瞬間に理想的に情報提供をやめたとしても、すでに情報提供を受け走行している車両3は平均してhN/V[台]おり、これを減らすことはできない。
【0067】
しかし、不適切となる状況判定周期は避けるべきである。以下、上記の判定周期pの好ましい範囲について説明する。この説明では、上記の車両平均速度V、センサ判定周期p、距離hの定義に、さらに渋滞延伸速度Uを用いる。この「渋滞延伸速度U」は、センサを用いてリアルタイムで求める必要はなく、当該場所の計測結果の実績から、K−Q曲線(交通密度Kと交通量Qの関係曲線)を用いて求めることができる。
【0068】
第2交通流センサ12の検出位置において、実際にショックウェーブが渋滞になる瞬間の時刻をtxとする。その瞬間に第1情報提供装置14で情報を受けた車両3が、延伸してくる渋滞に出会うまでの時間は、h/(V+U)である。このときの状況として最も良いのは、時刻txの直後に第2交通流センサ12の情報判定周期が訪れた場合である。この場合、第2交通流センサ12は実際にショックウェーブが渋滞になった直後に渋滞の発生を検知することができ、すぐに情報提供を止めることができ、情報提供を受けてしまって渋滞に出会う車両3を最少化することができる。
【0069】
逆に、状況として最も悪いのは、時刻txの直前に第2交通流センサ12の情報判定周期が訪れた場合である。この場合、第2交通流センサ12は実際にショックウェーブが渋滞になった後の最初の計測周期が訪れたときに初めて渋滞の発生を検知することになるので、それまでの間は、情報提供を止めることができず、情報提供を受けるべきでない車両3が増大する。
【0070】
このとき、p<h/(V+U)とすると、ショックウェーブが渋滞になり第1交通流センサ11の計測位置(第1情報提供装置14による情報提供位置と同等)にまで渋滞が達したときには、まだ第2交通流センサ12の計測周期が訪れておらず渋滞が検出できていないことになる。すると、第1交通流センサ11の計測位置(第1情報提供装置14の情報提供位置)にまで延伸してきている渋滞に巻き込まれた車両3に対しても、引き続き情報を提供することになり、不適切な状態となる。よって、p<h/(V+U)の関係を満たすのが好ましい。
【0071】
上記において本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の改変を加えてもよい。
【0072】
上記の構成では、情報提供装置14,18,22として、表示板と通信装置を併用したが、第1〜第3情報提供装置22において、表示板と通信装置の両方を有するものと、いずれか一方を有するものがあってもよい。また、第1〜第3情報提供装置22のすべてが表示板と通信装置のいずれか一方のみを有してもよく、この場合、表示板を有するものと、通信装置を有するものとが混在していていもよい。
【0073】
情報内容に応じて、表示板と車載器を使い分けてもよい。これにより、より安全で高い効果が期待できる。また走行車両全体に情報提供したい場合は表示板と車載器の両方を利用し、一部に提供したい場合は車載器を利用する、という運用も可能である。
第1及び第2交通流センサ12とは別に、区間全体に交通流センサを取り付けることにより、よりきめ細かな交通状況の把握が可能となり、より精度のよい交通状況データに基づいて、情報提供の開始/終了を判断できる。
【0074】
本発明において、第2情報提供装置18と第3情報提供装置22は必須ではなく、どちらか一方または両方を省略してもよい。
【0075】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態にかかる円滑走行支援システムの構成を示す図である。
【図2】特許文献1に開示された従来技術の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
S1 第1区間
S2 第2区間
1 道路
3 車両
10 円滑走行支援システム
11 第1交通流センサ
12 第2交通流センサ
14 第1情報提供装置
15、19、22 表示板
16、20、24 通信装置
18 第2情報提供装置
22 第3情報提供装置
25 路側処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車線を有する道路上の第1区間に設置された第1交通流センサと、
前記道路上の前記第1区間より下流側にある第2区間に設置された第2交通流センサと、
前記第1交通流センサと前記第2交通流センサからの検出信号に基づいて第1区間と第2区間の交通状況を把握する路側処理装置と、
前記第1区間に設置され、前記路側処理装置からの指令に基づいて車両に対して情報提供を行う第1情報提供装置とを備え、
前記路側処理装置は、第1区間と第2区間の交通状況に基づいて渋滞緩和情報を作成し、
前記第1情報提供装置は、前記第1区間を走行する車両に対して渋滞緩和情報を提供する、ことを特徴とする円滑走行支援システム。
【請求項2】
前記路側処理装置は、第1区間について車線ごとに平均交通量と平均速度を計算し、第1区間の混雑度と、車線間の平均交通量の差及び平均速度の差に基づいて、情報提供するか否かを判定し、情報提供の開始又は終了を指示する、請求項1記載の円滑走行支援システム。
【請求項3】
前記路側処理装置は、第1区間と第2区間の交通状況に所定以上の差がある場合、情報提供の停止を指示する、請求項1又は2記載の円滑走行支援システム。
【請求項4】
前記路側処理装置は、第1区間から第2区間までの間で車線変更した車両割合が所定以上である場合、情報提供の停止を指示する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項5】
前記路側処理装置は、第2区間で渋滞を検出した場合、情報提供の停止を指示する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項6】
さらに、前記第1区間又は第2区間であって前記第1情報提供装置より下流側に設置され、前記路側処理装置からの指令に基づいて車両に対して情報提供を行う第2情報提供装置を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項7】
さらに、第2区間の終了地点に設置され、提供された渋滞緩和情報の終了を告げるための情報を提供する第3情報提供装置を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項8】
前記第1情報提供装置は、最も近い上流側の合流部による車線利用率の乱れが終了する位置よりも下流で、前記第2交通流センサに到達するまでに情報提供によって期待されるドライバの行動が完了するのに十分な距離だけ上流に遡った位置において、情報提供が可能なように設置されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項9】
前記第2交通流センサは、ショックウェーブが延伸し解消不可能となる位置の交通状況を計測できる位置に設置されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。
【請求項10】
車両の平均速度をV、渋滞延伸速度をU、前記第2交通流センサの検出信号に基づく交通状況の判定周期をp、前記第1情報提供装置からの情報提供を車両が受ける位置と前記第2交通流センサによる検出位置との距離をhとしたとき、p<h/(V+U)の関係を満たす、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の円滑走行支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−9366(P2010−9366A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168837(P2008−168837)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(国土交通省国土技術政策総合研究所委託研究、「平成18年度及び19年度走行支援道路システム技術研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】