説明

円筒形ストレーナの清掃装置及びこの装置によるストレーナの清掃方法

【課題】 本発明はカセット型ストレーナの清掃作業のために作業者がプール内に潜水せず、大気中での作業を可能とすることでコスト面の問題を解決し、さらに、放射能汚染の問題をもなくして管理面の負担の大幅な削減を図ろうとするものである。
【解決手段】 原子力発電所のサプレッション・チャンバやサプレッション・プール内のカセット型ストレーナの清掃装置であって、カセット型ストレーナの外周にストレーナの端部から挿入可能なリングフレーム1と、リングフレーム1の外周に装着されたタイミングベルト2と、タイミングベルト2の上を走行する可動台4と、可動台4に搭載された確認用のカメラ5及び高圧水洗浄器6と、リングフレーム1に取付けられ、可動台4を駆動するための水中モータ7とからなっている。
そして、リングフレーム1上の可動台4を円周方向移動と軸方向の移動を繰返すことで、カセット型ストレーナの全面を清掃し、かつ角錐形カセットの先端部まで清掃と点検を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所のサプレッション・チャンバ内またはサプレッション・プール内にあるストレーナ、特にカセット型ストレーナを洗浄する際に使用するための清掃装置及びこの清掃装置を使用して行う洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストレーナ、特に原子力発電所の非常用炉心冷却系統等のストレーナ(以下「ストレーナ」)の水をろ過するストレーナの清掃においては、これまで、上方からブラシやカメラをストレーナにアクセスさせ、人力により清掃していた。
また、ストレーナのうち、カセット型ストレーナはこれまで洗浄を行ったことが無く、仮に行う場合は、作業者を潜水させて手作業で清掃する必要があった。このように作業者を潜水させる場合は、コスト面、管理面に多大の負荷がかかるという問題があった。
【0003】
また、カセット型ストレーナは、メッシュ部が円筒表面より内部へ角錐状のカセットが入り込んで取り付けられているため、メッシュの汚れ具合の確認や洗浄が困難であった。
さらに、カセット型ストレーナとプールの底部とが接近しているため、従来のカメラではカセット型ストレーナ底部の撮影が困難であるため、従来のブラシによる工法では清掃が不可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストレーナ、特にカセット型ストレーナは、これまで作業者が潜水して清掃、点検する以外は、有効なメンテナンス方法は無かったのでコスト・期間ともに莫大なものを要した。
本発明は清掃作業のために作業者がプール内に潜水せず、大気中での作業を可能とすることでコスト面の問題を解決し、さらに、放射能汚染の問題をもなくして管理面での負担の大幅な削減を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明のストレーナ清掃装置は、原子力発電所のサプレッション・チャンバやサプレッション・プール内にあるストレーナの清掃装置であって、前記ストレーナの外周にストレーナの端部から挿入可能なリングフレームと、前記リングフレームの外周に装着されたタイミングベルトと、前記タイミングベルトの上を走行する可動台と、前記可動台に搭載された確認用の水中カメラ及び洗浄用機器と、前記リングフレームに取付けられ、前記可動台を駆動するための水中モータとからなっている。
そして、前記ストレーナがカセット型ストレーナであっても清掃可能な清掃装置である。
また、前記リングフレーム上に取付けたタイミングベルトの間に前記可動台を案内するガイドが設けられて、可動台がリングフレーム上をスムーズに移動できる構成とするのが好ましい。
【0006】
さらに、前記洗浄用機器に高圧水洗浄器を使用し、カセット型ストレーナの内部まで清掃できるようにするのが好ましい。
そして、本発明のストレーナの清掃装置を使用して、ストレーナの清掃を行うには、確認用の水中カメラ及び洗浄用機器を搭載した可動台と水中モータとを備えたリングフレームを、円筒形ストレーナの端部から気中で の作業で挿入し、
前記可動台を前記水中モータによって前記リングフレーム上を移動させて前記ストレーナを円周方向に沿ってカメラで確認しつつ清掃し、
次に前記リングフレームを前記ストレーナの軸心方向に順次横移動させ、円周方向の清掃を繰返すことで、前記カセット型ストレーナの全周面の清掃と点検を行うことができるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のストレーナ清掃装置は、リングフレームにタイミングベルトを装着し、このタイミングベルト上で確認用の水中カメラや洗浄機器を装着した可動台を、作業者が大気中での操作で移動して清掃できるようにした。さらに、リングフレームをストレーナの円周方向と軸心方向に移動することで、ストレーナの全周面の清掃が可能となった。
さらに、放射能汚染されたプールに作業者が潜水して作業する必要が無く、サプレッション・プールの上部、すなわち大気中に設けた作業台で作業者が操作できるので、管理面の負担を大きく削減できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基いて説明する。
【0009】
原子力発電所におけるサプレッションチャンバーやサプレッションプール内に設置されているストレーナ、特にカセット型ストレーナの清掃装置は、円筒形をしたストレーナの外周に挿入できる直径を有する例えばアルミニウム合金製のリングフレーム1を清掃装置の本体としている。そしてリングフレーム1の外周にタイミングベルト2が装着されている。
タイミングベルト2の中間位置には、例えば合成樹脂製のガイド3が設けられ、これに案内されて可動台4が円周方向(図1)に走行する。可動台4は例えば約1cm/secのゆっくりとした速さでリングフレーム1上を走行する。
【0010】
前記円筒形ストレーナはカセット型ストレーナで、図4に示すように円筒形をなし、ストレーナ8の外表面に軸心に向って細くなる角錐状カセット81(図5(a)参照)または81’(図5(b)参照)が規則的に取付けられている。そして角錐面82(82’)(図5)がろ過用のメッシュになっている。
【0011】
また前記リングフレーム1上に設けたタイミングベルト2に添って例えばその中間位置にガイド3が設けられ、このガイドに案内されて前記可動台4がスムーズに円周運動することができるようになっている。
可動台4には、前記タイミングベルト2と噛み合う歯車が取付けられ、前記水中モータ7からの動力が例えば歯車伝動機構を介して可動台4の前記歯車に伝えられる。
【0012】
可動台4上には確認用のカメラ5と高圧水洗浄器6が搭載されている。カメラ5には、照明、撮影機能を持たせ、かつ、ストレーナ8とプール底部9(図1)は接近しているので、この寸法条件を満足するものとした。カメラ5は例えば38万画素の白黒カメラで、電源としてはDC24Vが使用され、このカメラによって前記ストレーナ8に取付けられたカセット8の内部、カセット81の上端隅部まで確認できるようになっている。
高圧水洗浄器6は、例えば使用圧力約8MPaで噴射水量約9.2L/minの能力を備えたものが使用される。噴射ノズルは平射ノズルで噴射角約40°のものが使用され、カセットの内部まで高圧水を噴射できるようになっている。
【0013】
リングフレーム1の上部側方(タイミングベルト2から離れた位置)に水中モータ7が立設されている。この水中モータ7は前記可動台4の駆動源で、例えば使用水深10m、モータ仕様はAC100V、100Wのものが使用される。図示しないが、電源コードが設けられており、空気中で作業者によって水中モータ7の操作が行われる。
【0014】
なお清掃中に、カセット型ストレーナ内にたまったクラッドの拡散によって視界が低下することがあるが、これに対応して図示しないが吸引回収ノズルがストレーナ清掃装置に具備されているのが望ましい。この吸引回収ノズルによって、前記クラッドに限らず、ストレーナ内に引掛ったボルトやナット等の異物をも吸引除去できる。
【0015】
次に以上説明した清掃装置を使用して円筒形ストレーナの清掃方法について
説明する。
図3(a)に示すように、リングフレーム1を水中のカセット型ストレーナ8と同心の位置まで下げる。次に図3(b)に示すように、カセット型ストレーナ8に対して、カメラ5と、洗浄機器6を備えた可動台4が搭載されているリングフレーム1を、大気中にいる作業員が手作業によりカセット型ストレーナ8の端部から軸心方向に移動させて挿入する。可動台4に取付けられている確認用のカメラ5によって高圧水洗浄器6の健全性を確認したのち、高圧水を噴射してカセット型ストレーナ8の清掃を行う。手作業でカセット型ストレーナ8に対するリングフレーム1の挿入量を調節しつつ移動し、可動台4をストレーナ8に対してその円周方向の移動と軸心方向の移動を順次繰返すことによって、即ち図3(c)の矢印a方向とb方向の移動を繰返すことによってカセット型ストレーナの円周部全面を清掃することができる。この場合、可動台4はガイド3に沿ってガイドされるので、安定した作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るストレーナ清掃装置の正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】リングフレームを円筒形をしたストレーナに挿入し、清掃作業に入る手順の説明図である。
【図4】カセット型ストレーナの側面図である。
【図5】カセットの単品斜視図で、(a)は角錐状カセットが1個,(b)は同じく4個の例である。
【符号の説明】
【0017】
1 リングフレーム
2 タイミングベルト
3 ガイド
4 可動台
5 確認用のカメラ
6 高圧水洗浄器
7 水中モータ
8 円筒形ストレーナ
81(81’) 角錐状カセット
9 プール底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所のサプレッション・チャンバやサプレッション・プール内にあるストレーナの清掃装置であって、
前記ストレーナの外周にストレーナの端部から挿入可能なリングフレームと、
前記リングフレームの外周に装着されたタイミングベルトと、
前記タイミングベルトの上を走行する可動台と、
前記可動台に搭載された確認用のカメラ及び洗浄用機器と、
前記リングフレームに取付けられ、前記可動台を駆動するための水中モータとからなるストレーナ清掃装置。
【請求項2】
前記ストレーナがカセット型ストレーナである請求項1記載のストレーナ清掃装置。
【請求項3】
前記リングフレーム上に取付けたタイミングベルトの間に前記可動台を案内するガイドが設けられている請求項1記載のストレーナ清掃装置。
【請求項4】
前記洗浄用機器が高圧水洗浄器である請求項1記載のストレーナ清掃装置。
【請求項5】
確認用のカメラ及び洗浄用機器を搭載した可動台と水中モータとを備えたリングフレームを、円筒形ストレーナの端部から挿入し、
前記可動台を前記水中モータによって前記リングフレーム上を円周方向に移動させ、前記ストレーナを円周方向に沿ってカメラで確認しつつ洗浄し、
次に前記リングフレームを前記ストレーナの軸心方向に順次横移動させて円周方向の清掃を繰返すことで、前記カセット型ストレーナの全周面の清掃と点検を行うことを特徴とするストレーナの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−25060(P2009−25060A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186492(P2007−186492)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000142791)株式会社アトックス (25)
【Fターム(参考)】