説明

円筒状塗布物の乾燥装置及び乾燥方法

【課題】簡便な構成で、乾燥工程における円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを抑制し、品種による設備の切替えのない円筒状塗布物の乾燥装置及び乾燥方法を提供する。
【解決手段】円筒状基体の外周面に所定の塗布液が塗布されてなるワークWを内部に保持する加熱室10hと、加熱室10hのワークWの長手方向における一方の端部側に設けられ、所定温度の熱風H1をワークWに供給する熱風供給手段1と、加熱室10hのワークWの長手方向における他方の端部側に設けられ、ワークWの円筒外部及び円筒内部を通過した熱風H3を外部に排気する熱風排気手段3と、ワークWの円筒内部であって前記他方の端部側に配置され、該円筒内部の熱風H2bについてワークWの略内径中心領域を遮り、前記円筒内壁側を通過させるようにする円柱形状のセンターコア部材3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状塗布物、特に電子写真感光体等の製造工程のうち、乾燥工程に好適に用いられる円筒状塗布物の乾燥装置及び乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感光体ドラム(以下、「静電潜像担持体」、「電子写真感光体」、「光導電性絶縁体」と称することもある)の製造では、例えば、まず切削された円筒状基体を水系の洗浄剤等を用いて洗浄し、切削時の油分、切粉等の除去を行う。
【0003】
次に、洗浄後、円筒状基体表面に残る水分を除去するため、乾燥が行われ、ついで円筒状基体外周面に感光層、下引き層及び、保護層を塗布により形成する。
【0004】
これら各層の形成には、一般に有機溶剤を含む塗布液が使用されていることから、各層を形成する毎に有機溶剤を蒸発させる為の乾燥処理が行われる。このとき、この乾燥工程において、円筒状基体の上端部と下端部とで温度の違いを生じることがあり、それによって、形成された電子写真感光体の電子写真特性に部分的なムラが生じて、一様な画像を形成するのに支障を生じていた。
【0005】
そこで、前記電子写真感光体の製造工程における円筒状塗布物の乾燥方法として、例えば、円筒状塗布物の内面中心部と、該円筒状塗布物の支持体によって支持された端部と、反対側の端部とに熱風を吹き付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、前記円筒状塗布物の長手方向(上下方向)の温度ムラを解消する方法として、例えば、乾燥炉の底部を予め加熱しておき、円筒状塗布物の下端部をも加熱して、円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを解消する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載の円筒状塗布物の乾燥方法においては、前記円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを解消する為に、円筒状塗布物の上端部側から熱風を吹付ける装置とは別に、下端部側から熱風を吹付ける装置や、予め下端部を加熱する装置が、それぞれ必要であり、エネルギー、スペース、コスト共に多大になってしまうという問題があった。また、近年の電子写真感光体の生産では、数多くのニーズに対応する為に、少量多品種が求められており、それらの品種に応じて、個々に設備が用意され、設備を切替えて生産を行っていることから、切替えに伴う交換も頻繁に起こり生産タクトがあがり、生産性が落ちる原因ともなっていた。
【0008】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で、乾燥工程における円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを抑制し、品種による設備の切替えのない円筒状塗布物の乾燥装置及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 円筒状基体の外周面に所定の塗布液が塗布されてなる円筒状塗布物(ワークW)を内部に保持する加熱室(加熱室10h)と、前記加熱室の前記円筒状塗布物の長手方向における一方の端部側に設けられ、所定温度の熱風(熱風H1)を該円筒状塗布物に供給する熱風供給手段(熱風供給手段1)と、前記加熱室の前記円筒状塗布物の長手方向における他方の端部側に設けられ、該円筒状塗布物の円筒外部及び円筒内部を通過した前記熱風(熱風H3)を外部に排気する熱風排気手段(熱風排気手段2)と、前記円筒状塗布物の円筒内部であって前記他方の端部側に配置され、該円筒内部の熱風について前記円筒状塗布物の略内径中心領域を遮り、前記円筒内壁側を通過させるようにする円柱形状のセンターコア部材(センターコア部材3)と、を備えることを特徴とする円筒状塗布物の乾燥装置(乾燥装置10、図1)。
〔2〕 前記センターコア部材は、その先端の形状が半球状または円錐状となっていることを特徴とする前記〔1〕に記載の円筒状塗布物の乾燥装置(図3)。
〔3〕 前記センターコア部材は、該センターコア部材の外周面と前記円筒状塗布物の内壁との距離が円周方向で均等になるように配置されていることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の円筒状塗布物の乾燥装置(図4)。
〔4〕 前記センターコア部材の長さは、前記円筒状塗布物の長さの1/2以下であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置(図5)。
〔5〕 前記熱風供給手段は、前記熱風中の塵粒子を除去するフィルタ(フィルタ1f)を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
〔6〕 乾燥開始10分後の加熱室内のクリーン度が、30個/1ft以下であることを特徴とする前記〔5〕に記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
〔7〕 前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置(乾燥装置10)を用いて、前記円筒状塗布物を前記加熱室に戴置し、前記熱風により前記円筒状塗布物を加熱して、その外周面に所定の塗布液が塗布されて設けられた少なくとも1層の塗布層を乾燥することを特徴とする円筒状塗布物の乾燥方法。
〔8〕 前記円筒状塗布物は、電子写真感光体であることを特徴とする前記〔7〕に記載の円筒状塗布物の乾燥方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の円筒状塗布物の乾燥装置によれば、円筒状塗布物の円筒内部であって前記他方の端部側に設けられるセンターコア部材が、該円筒内部の熱風について前記円筒状塗布物の略内径中心領域を遮り、前記円筒内壁側を通過させるようにするので、前記円筒状塗布物の円筒内部かつ前記他方の端部側において通過する熱風の流れが速くなり、該円筒状塗布物の他方の端部側が効率的に加熱されることから、前記円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを抑制することができる。
また本発明の円筒状塗布物の乾燥方法によれば、本発明の円筒状塗布物の乾燥装置により円筒状塗布物の長手方向の温度ムラを抑制できるので、円筒状基体上に均一な塗布層を形成することが可能となる。例えば、画像欠陥のない高品質な電子写真感光体を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る円筒状塗布物の乾燥装置の構成を示す概略図である。
【図2】加熱室におけるワークの配置状態を示す概略図である。
【図3】図1の乾燥装置で用いられるセンターコア部材の形状を示す概略図である。
【図4】ワークの円筒内部におけるセンターコア部材の配置状態を示す概略図である。
【図5】ワークとセンターコア部材の長さ関係を示す概略図である。
【図6】実施例1のワークの表面温度測定結果を示す図である。
【図7】比較例1のワークの表面温度測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る円筒状塗布物の乾燥装置及び乾燥方法について説明する。
図1は、本発明に係る円筒状塗布物の乾燥装置の構成を示す概略図である。
円筒状塗布物の乾燥装置(以下、単に乾燥装置)10は、電子写真感光体等の円筒状基体の外周面に所定の塗布液が塗布されてなる円筒状塗布物(以下、ワーク)Wにおける塗布層の乾燥に好適に用いられる乾燥炉であり、図1に示すように、ワークWを内部に保持する加熱室10hと、加熱室10hのワークWの長手方向における一方の端部側(図中上側)に設けられ、所定温度の熱風H1をワークWに供給する熱風供給口1aを含む熱風供給手段1と、加熱室10hのワークWの長手方向における他方の端部側(図中下側)に設けられ、ワークWの円筒外部及び円筒内部を通過した前記熱風H3を外部に排気する熱風排気口である熱風排気手段2と、ワークWの円筒内部であって前記他方の端部側(図中下側)に配置され、該円筒内部の熱風H2bについてワークWの内径中心領域を遮り、前記円筒内壁側を通過させるようにする円柱形状のセンターコア部材3と、を備える。
【0013】
ここで、熱風供給手段1は、空気などの気体を加熱する加熱手段(不図示)と、加熱された気体を熱風H1として熱風供給口1aを通して加熱室10hに供給する供給手段(不図示)と、を有する。
【0014】
このとき、熱風H1の温度は、ワークWの乾燥に必要な温度であり、例えばワークWが電子写真感光体である場合、60〜180℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。また、熱風H1の供給手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば換気扇やターボファン、シロッコファン等の送風機などが挙げられる。
【0015】
また、熱風供給手段1は、熱風H1中の塵粒子を除去するフィルタ1fを有することが好ましい。例えば、図1に示すように、熱風供給口1aと加熱室10hの間の熱風H1の流路に、熱風H1中の塵粒子を除去するHEPAフィルタからなるフィルタ1fを設ける。
これにより、清浄な熱風H1が加熱室10h内に供給され、ワークWの塗布層が汚染されることなく、あるいは欠陥を発生させることなく、乾燥を行うことができる。
【0016】
またワークWが電子写真感光体である場合、乾燥開始10分後の加熱室10h内のクリーン度が、30個/1ft以下であることが好ましく、10個/1ft以下がより好ましい。ここで、前記クリーン度は、1ft中の塵粒子の個数で表され、塵粒子数は0.5μm以上の塵粒子の個数をパーティカルカウンターにより測定し、クリーン度とする。
【0017】
なお、熱風供給手段1と熱風排気手段2における熱風の流路は、加熱室10h外で連結されており、熱風を効率よく循環して、乾燥効率を高めることが可能となっている。
【0018】
加熱室10hは、熱風供給手段1から供給された熱風H1が熱風排気手段2側(図1中、下方向)へ一方向に流れる内部空間を有しており、その内部空間にワークWを配置してその塗布層を乾燥するものである。この加熱室10hの内部形状としては、例えば、細板状、箱状、円筒状などが挙げられるが、このうち円筒状がより好ましい。また加熱室10hを構成する材質としては、熱風H1の温度に耐える程度の耐熱性を有する金属、プラスチックなどが挙げられる。
【0019】
また、加熱室10hは、その内部空間にワークWの長手方向が熱風の流れる方向と平行となるように該ワークWを支持する支持機構(不図示)を有する。
【0020】
この支持機構は、ワークWの長手方向における熱風供給手段1とは反対側の端部で該ワークWを支持した状態で、ワークWの長手方向が加熱室10hの長手方向(熱風が流れる方向)と平行になり、さらに加熱室10h内の所定位置に配置されるように保持している。すなわち、図2(a)に示すように、ワークWは、この支持機構により、ワークWの外周面と加熱室10hの内壁との距離Aが円周方向で均等になるように配置されている。このとき、ワークWの外周面と加熱室10hの内壁との距離Aを10mm以上、200mm以下に配置することで、供給された熱風H1のうち、ワークWの円筒外部を通過する熱風H2aのもつ熱エネルギーを効率良くワークWに与えることができる。
【0021】
また、ワークWは、図2(b)に示すように、前記支持機構により、加熱室10hの長手方向(図中上下方向)の略中央部に配置されている。
【0022】
なお、前記支持機構は、ワークWを支持するとともに、センターコア部材3をワークWの円筒内部であってワークWの長手方向における熱風排気手段2側(図1における下側)の端部側の所定位置で支持している(詳細は後述)。また、該支持機構は、ワークWの円筒外部を流れる熱風H2a及び円筒内部を流れる熱風H2bの熱風排気手段2側への通過を阻害しない構造となっている。
【0023】
また、加熱室10hは、図1に示すように、該加熱室10h内へワークWを搬入し、又は加熱室10h内から搬出するための開閉可能な遮蔽手段4を備えている。
遮蔽手段4としては、加熱室10h内部を露出可能に開閉するシャッターなどが挙げられる。このシャッターを構成する部材としては、大きさ、形状、材質などに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、その形状としては円筒状、板状、箱状などが挙げられ、その材質としては金属、プラスチックなどが挙げられる。
【0024】
センターコア部材3は、ワークWの円筒内部であってワークWの長手方向における熱風排気手段2側(図1における下側)の端部側の所定位置に配置されるものである。詳しくは、センターコア部材3は、ワークWの円筒内部において通過する熱風H2bに対してワークWの内径中心領域で遮りつつ、センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との間に熱風H2bが通過可能な隙間が形成されるように、ワークWの略内径中心に配置されている。
【0025】
これにより、ワークWの長手方向における一方の端部(熱風供給手段1側の端部)から円筒内部に入る熱風H2bは、ワークWの円筒内部をある程度の長さまでそのまま円筒内部の直径方向断面全域を通過し、ついでセンターコア部材3の先端位置においてワークWの内径中心領域で遮られることから、センターコア部材3の外形に沿って案内されて円筒内壁側(センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との間の隙間)を通過して、最終的にワークWの長手方向における他方の端部(熱風排気手段2側の端部)から出てくるようになる。
【0026】
センターコア部材3は、このような熱風H2bの流れを制御する機能をもたせることができれば、その形状(外形)に特に制限はないが、例えば円柱形状、砲弾形状、ラグビーボール形状などが挙げられる。その中で、図3に示すように、所定の長さと径を有する円柱形状のものが好ましく、砲弾形状のものがより好ましい。
【0027】
またセンターコア部材3において、熱風H2bが衝突する先端(図3(b)において上側先端)は、そこから熱風H2bをワークWの円筒内壁側に効率的に案内する形状であることが好ましく、例えば半球状、円錐状、角状など挙げられるが、このうち半球状がより好ましい。
【0028】
またセンターコア部材3を構成する材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス及び鋼等の金属類、テフロン(登録商標)、フッ素系樹脂等の耐熱性及び耐薬品性に優れた合成樹脂等が挙げられる。
【0029】
またセンターコア部材3は、前述のように、ワークWとともに支持機構によりワークWの円筒内部で保持されているが、図4に示すように、センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との距離Bが円周方向で均等になるように配置されていることが好ましい。
またこのとき、センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との距離Bは、5mm以上30mm以下であることが好適である。これにより、ワークWをその円周方向において均一に加熱することができる。
【0030】
また、センターコア部材3の長さがわずかであっても、ワークWの長手方向の温度ムラの改善効果が得られるが、例えば、センターコア部材3の長さは、図5に示すように、ワークWの長さLの1/2以下であることが好ましい。具体的なセンターコア部材3の長さとしては、該センターコア部材3がない場合に発生するワークWの長手方向の温度ムラの状態に基づいてできるだけその温度ムラをなくすことができるように決定すればよい。
【0031】
また、センターコア部材3のワークWの長手方向における配置位置は、ワークWの前記他方の端部(熱風排気手段2側の端部)が効率的に加熱されるように熱風H2bの流れを制御できる限り、センターコア部材3の熱風排気側の端部がワークWの端部よりも該ワークWの内側であってもよいし、ワークWの外側であってもよい。
【0032】
ワークWは、円筒状基体の外周面に所定の塗布液を塗布し少なくとも1層の塗布層を設けたものである。なお、ワークWの構成には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1層の塗布層を設けた円筒状基体を含む電子写真感光体が特に好ましい(詳細は後述する)。
【0033】
以上の構成により、本発明の乾燥装置10は、加熱室10hにおいてワークWは、その円筒外部を流れる熱風H2aと円筒内部を流れる熱風H2bとにより加熱されるが、このうちワークWの円筒内部における熱風H2bの流れを制御することにより、ワークWの長手方向の温度ムラを改善することができる。すなわち、加熱室10hにおいて、ワークWの長手方向における一方の端部(熱風供給手段1側の端部)から円筒内部に入る熱風H2bは、ワークWの円筒内部をある程度の長さまでそのまま円筒内部の直径方向断面全域を通過し、ついでセンターコア部材3の先端位置においてワークWの内径中心領域で遮られることから、センターコア部材3の外形に沿って案内されて円筒内壁側(センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との間の隙間)を通過して、最終的にワークWの長手方向における他方の端部(熱風排気手段2側の端部)から出てくるようになる。その結果、ワークWの長手方向において、その円筒内部かつ前記他方の端部(熱風排気手段2側の端部)側における熱風H2bの流速が前記一方の端部(熱風供給手段1側の端部)側における熱風H2bの流速よりも速くなり、ワークWの前記他方の端部側が前記一方の端部側よりも効率的に加熱されることから、ワークWの長手方向の温度ムラを抑制することが可能となる。
【0034】
(円筒状塗布物の乾燥方法)
本発明に係る円筒状塗布物の乾燥方法は、本発明の円筒状塗布物の乾燥装置(乾燥装置10)を用いて、ワークWを前記支持機構により加熱室10hに戴置し、熱風H2a,H2bによりワークWを加熱して、その外周面に所定の塗布液が塗布されて設けられた少なくとも1層の塗布層を乾燥することを特徴とするものである。
【0035】
すなわち、図1に示す乾燥装置10において次の手順でワークWの乾燥工程が行われる。
(S1) まず加熱室10h内にワークWを所定位置に戴置する。
(S2) 熱風供給手段1により所定温度の熱風H1を装置上部(熱風供給口1a)から加熱室10h内に供給し、装置下部に設けた熱風排気手段2から外部へと排気する。
このとき、加熱室10h内では、ワークWの円筒外部を熱風H2aが流れ、円筒内部を熱風H2bが流れて、ワークWを加熱する。
(S3) 所定時間、ステップS2の状態を維持し、ワークWの塗布層を乾燥する。
(S4) 加熱室10hよりワークWを取り出し、乾燥工程を終了する。
【0036】
この本発明の円筒状塗布物の乾燥方法によれば、センターコア部材3を有する乾燥装置10を用いるので、前述のようにワークWの長手方向において、その円筒内部かつ前記他方の端部(熱風排気手段2側の端部)側における熱風H2bの流速が前記一方の端部(熱風供給手段1側の端部)側における熱風H2bの流速よりも速くなり、ワークWの前記他方の端部側が前記一方の端部側よりも効率的に加熱されることから、ワークWの長手方向の温度ムラがなくなり、少ないエネルギーで速く均一な温度上昇によって長手方向の性能が均一な円筒状塗装品、例えば画像欠陥のない高品質な電子写真感光体を効率よく製造することができる。
【0037】
なお、乾燥装置10を用いた乾燥時間については、少なくとも1層の塗布層を設けたワークWを乾燥する場合、10分以上が好ましく、例えば10〜30分がより好ましい。
【0038】
(電子写真感光体)
本発明は、前述したようにワークWが電子写真感光体である場合にとくに好適なものである。
この電子写真感光体としては、第一の形態では、円筒状基体と、該基体上に単層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、下引き層、保護、中間層、その他の層を有してなる。また、前記感光体としては、第二の形態では、円筒状基体と、該基体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、下引き層、保護層、中間層、その他の層を有してなる。なお、前記第二の形態では、電荷発生層、及び電荷輸送層は逆に積層しても構わない。
このような電子写真感光体を構成する基体や各層の詳細は次のとおりである。
【0039】
−基体−
前記基体としては、導電性を有し、円筒状(ドラム状)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができ、例えば導電体又は導電処理をした絶縁体が好適であり、例えば、Al、Ni、Fe、Cu、Au等の金属、又はそれらの合金;ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属、あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの;樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、Al、Cu、Ni等の金属粉、導電性ガラス粉などを均一に分散させて、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙、などが挙げられる。
【0040】
−複層型感光層−
前記複層型感光層は、電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有し、更に必要に応じて、下引き層、保護層、中間層、その他の層を有してなる。
【0041】
(電荷発生層)
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機系材料と有機系材料とのいずれかを用いることができる。
【0042】
このうち、前記無機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができ、例えば、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、などが挙げられる。
【0043】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスC.I.21180)、シーアイピグメントレッド41(C.I.21200)、シーアイシッドレッド52(C.I.45100)、シーアイベーシックレッド3(C.I.45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料等のアゾ顔料;シーアイピグメントブルー16(C.I.74100)等のフタロシアニン系顔料;シーアイバットブラウン(C.I.73410)、シーアイバットダイ(C.I.730.50)等のインジゴ系顔料;アルゴールスカーレット5(バイエル社製)、インダスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料;スクエリック染料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質を添加することもできる。
【0045】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
このうち、前者の真空薄膜作製法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この真空薄膜作製法は、上述した無機系材料又は有機系材料を良好に形成することができる。また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、電荷発生層形成用塗工液を用いて、浸漬塗工法やスプレーコート法、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
【0046】
前記電荷発生層形成用塗工液に用いられる有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、沸点が40℃〜80℃のテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、メタノール、エタノールは、塗工後の乾燥が容易であることから特に好適である。
【0047】
前記電荷発生層形成用塗工液は、上記有機溶媒中に前記電荷発生物質と、バインダー樹脂を分散、溶解して製造する。有機顔料を有機溶媒に分散する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、振動ミルなどの分散メディアを用いた分散方法、高速液衝突分散方法などが挙げられる。
【0048】
前記電荷発生層の厚みは、通常、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0049】
(電荷輸送層)
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成する為には、誘電率が小さく且つ、電荷移動性が良いことが要求される。
【0050】
ここで、前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0051】
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
【0052】
このうち、前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、等に記載の化合物が挙げられる。また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
【0055】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0056】
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥する事により形成できる。
【0057】
前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加する事もできる。
【0058】
前記電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができ、5〜100μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0059】
−単層型感光層−
前記単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0060】
ここで、前記電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダー樹脂としては、上述した材料を用いる事ができる。
また前記その他の成分としては、例えば、可塑剤、微粒子、各種添加剤、などが挙げられる。
【0061】
前記単層型感光層の厚みは、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。前記膜厚が5μm未満であると、帯電性が低下することがあり、100μmを超えると感度の低下をもたらすことがある。
【0062】
前記感光層上には、必要に応じて保護層を設けても良い。該保護層は、少なくともバインダー樹脂、電荷輸送物質、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。このとき、前バインダー樹脂、及び電荷輸送物質としては、上述した材料を用いる事ができる。また、前記保護層には、更に必要に応じて接着性、平滑性、化学的安定性を向上させる目的で、種々の添加剤を加えても構わない。
【0063】
前記保護層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができ、例えば1〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0064】
また、前記基体と前記感光層との間には、必要に応じて、下引き層を設けてもよい。前記下引き層は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
【0065】
前記下引き層は、少なくとも樹脂、及び微粉末を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0066】
このうち、前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂、などが挙げられる。
【0067】
前記微粉末としては、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、金属硫化物、又は金属窒化物などが挙げられる。
【0068】
前記下引き層の厚みについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0069】
前記感光体においては、必要に応じて前記基体上に、接着性、電荷ブロッキング性を向上させる為に中間層を設けてもよい。該中間層は樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。前記樹脂としては、上記下引き層と同様のものを適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
つぎの条件で、ワークWを作製し、図1の乾燥装置10により乾燥処理を行った。
まず、外径100mm、内径97mm及び長さ370mmのアルミニウムドラム(円筒状基体)上に、下記組成の下引き層用塗工液を浸漬法により厚みが5μmとなるように塗布してワークWとした。
【0072】
−下引き層用塗工液の組成−
・酸化チタン・・・20質量部
・アルキッド樹脂・・・10質量部
・メラミン樹脂・・・10質量部
・メチルエチルケトン・・・60質量部
【0073】
つぎに、ワークWの長手方向の両端部に熱電対を取付け、図1に示す乾燥装置10に投入した。その際、ワークWの外周面と円筒状の加熱室10hの内壁との距離Aを30mmとし、センターコア部材3の外周面とワークWの内壁との距離を10mmとした。また、センターコア部材3の長さを120mmとした。
ついで、乾燥装置10の加熱室10h内で、温度130℃の熱風H1にて乾燥時間900秒(15分)で乾燥した際のワークWの表面温度(ワーク温度)を測定した。
その結果を図6に示す。
【0074】
−感光体の作製及び画像評価−
次に、下記組成の電荷発生層用塗工液を調製した。得られた塗工液を、前記下引き層上に、同様の浸漬法により塗布し、図1の乾燥装置10により前記下引き層の場合と同じ条件(ただし熱風H1の温度、乾燥時間は除く)で、100℃にて10分間乾燥し、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0075】
−電荷発生層用塗工液の組成−
・ブチラール樹脂(UCC社製、XYHL)・・・1質量部
・チタニルフタロシアニン・・・9質量部
・シクロヘキサノン・・・30質量部
・テトラヒドロフラン(THF)・・・30質量部
【0076】
次に、下記組成の電荷輸送層用塗工液を調製した。得られた塗工液を前記電荷発生層上に、同様の浸漬法により塗布し、図1の乾燥装置10により前記下引き層の場合と同じ条件(ただし熱風H1の温度は除く)で、120℃にて15分間乾燥して、厚み20μmの電荷輸送層を形成した。
最後に、円筒状塗装品の両端にフランジを取り付けて、実施例1の感光体とした。
【0077】
−電荷輸送層用塗工液の組成−
・ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製、パンライトK−1300)・・・10質量部
・下記構造式で表される電荷移動剤・・・10質量部
・ジクロロメタン・・・80質量部
【0078】
<画像評価>
得られた感光体を装着したフルカラーレーザープリンター(株式会社リコー製、IPSIO Color 5000の改造機)(λ=655nm、1200dpi、ビームスポット2.7×10−3mmに改造)を用いて、白ベタ5枚、黒ベタ2枚、2×2ドット画像3枚、細線画像3枚を出力したところ、異常画像は認められなかった。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、図1の乾燥装置10についてセンターコア部材3を外し、それ以外は実施例1と同じ条件で、前記下引き層用塗工液を塗布したワークWの乾燥処理を行った。
このとき、実施例1と同様に、ワークWの温度測定を行った結果を図7に示す。
【0080】
<ワーク表面温度の評価結果>
図6,図7において、上端部は図1の乾燥装置10に投入されたワークWの長手方向における熱風供給手段1側の端部の温度を示しており、下端部はワークWの長手方向における熱風排気手段2側の端部の温度を示している。
まず実施例1のワークWは、図6に示すように、上端部と下端部は昇温過程、加熱保持過程のいずれにおいても温度差はなく、長手方向において温度ムラなく加熱されていることが分かる。
一方比較例1のワークWは、図7に示すように、昇温過程において下端部の方が上端部よりも温度が低く、ワークWの長手方向において温度ムラが発生していた。また、加熱保持過程においても上端部と下端部の温度が等しくなるまでに時間を要していた。
このように、実施例1では、センターコア部材3により、ワークWの下端部の温度上昇が比較例1の場合よりも速まり、昇温過程において上端部、下端部の温度差がなくなり、長手方向において均一に温度上昇し、温度ムラが発生している比較例1のものに比べて良好な加熱(乾燥)が行なわれている。
【0081】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 熱風供給手段
1a 熱風供給口
1f フィルタ
2 熱風排気手段
3 センターコア部材
4 遮蔽手段
10 乾燥装置
10h 加熱室
H1,H2a,H2b,H3 熱風
W ワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2003−122032号公報
【特許文献2】特開平1―177552号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状基体の外周面に所定の塗布液が塗布されてなる円筒状塗布物を内部に保持する加熱室と、
前記加熱室の前記円筒状塗布物の長手方向における一方の端部側に設けられ、所定温度の熱風を該円筒状塗布物に供給する熱風供給手段と、
前記加熱室の前記円筒状塗布物の長手方向における他方の端部側に設けられ、該円筒状塗布物の円筒外部及び円筒内部を通過した前記熱風を外部に排気する熱風排気手段と、
前記円筒状塗布物の円筒内部であって前記他方の端部側に配置され、該円筒内部の熱風について前記円筒状塗布物の略内径中心領域を遮り、前記円筒内壁側を通過させるようにする円柱形状のセンターコア部材と、
を備えることを特徴とする円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項2】
前記センターコア部材は、その先端の形状が半球状または円錐状となっていることを特徴とする請求項1に記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項3】
前記センターコア部材は、該センターコア部材の外周面と前記円筒状塗布物の内壁との距離が円周方向で均等になるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項4】
前記センターコア部材の長さは、前記円筒状塗布物の長さの1/2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項5】
前記熱風供給手段は、前記熱風中の塵粒子を除去するフィルタを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項6】
乾燥開始10分後の加熱室内のクリーン度(直径0.5μm以上の塵粒子に関する)が、30個/1ft以下であることを特徴とする請求項5に記載の円筒状塗布物の乾燥装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の円筒状塗布物の乾燥装置を用いて、前記円筒状塗布物を前記加熱室に戴置し、前記熱風により前記円筒状塗布物を加熱して、その外周面に所定の塗布液が塗布されて設けられた少なくとも1層の塗布層を乾燥することを特徴とする円筒状塗布物の乾燥方法。
【請求項8】
前記円筒状塗布物は、電子写真感光体であることを特徴とする請求項7に記載の円筒状塗布物の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125680(P2012−125680A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278126(P2010−278126)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】