説明

再塗布可能なマスカラ組成物

本発明は、化学修飾ワックスならびにビニルピロリドンおよびアミノアクリレートのコポリマーを含む、ポリマー塗膜形成剤の独特な組み合わせを含む、再塗布可能なマスカラ組成物に関する。本発明のマスカラ組成物は、既にコーティングされた睫毛にマスカラを再塗布する試みにより通常引き起こされる不快感と「だま」を生じることなく、最初の塗布の数時間後に睫毛に容易に再塗布でき、睫毛のボリュームを増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケラチン繊維(さらに好ましくは睫毛)への塗布に好適である化粧品組成物に関する。本発明の化粧品組成物は化学修飾ワックスおよびポリマー塗膜形成剤の独特な組み合わせを含み、優れた再湿潤性を提供し、最初のコーティングを睫毛から除去する必要なく、最初の塗布から数時間後に睫毛のボリュームを増大させるために化粧品組成物を睫毛へ再塗布できる。
【背景技術】
【0002】
従来のマスカラは1種以上の溶媒に分散した種々の塗膜形成剤で作られている。塗布後、溶媒は蒸発し、睫毛上に塗膜形成剤からなる硬く、液体不浸透性のコーティングを残す。かかるコーティングは睫毛にしっかりと付着するように考案され、睫毛に長時間留まり、所望の長持ちする効果を達成する。しかし、かかる硬く、液体不浸透性のコーティングは一度形成されるとマスカラ組成物により再湿潤できず、そのため追加のコーティングを睫毛に塗布し、以前に塗布されたマスカラを新しくし、あるいは睫毛のボリュームを増大させることが困難になる。
【0003】
マスカラで覆われた睫毛にブラシをかけようとすると、著しい不快感がある。睫毛の分離は極めて困難になり、最初のコーティングの著しい「だま(clumping)」と潜在的な剥離を伴う。今のところ、さらに劇的な効果を達成するため、以前に塗布され、既に乾燥したマスカラコーティングにマスカラを快適に再塗布できる市販のマスカラ組成物は存在しない。したがって、睫毛のボリュームを増大させ、所望の劇的な効果を達成するため、一般に、ユーザーはよりボリュームを出すマスカラ製品を再塗布する前に、以前に塗布したマスカラコーティングと他の全てのアイメイクを完全に除去しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、マスカラコーティングを施した睫毛へ快適に再塗布できる新規のマスカラ組成物が必要とされている。ユーザーがたった1回の最初のマスカラコーティングで適度な日中の外観を達成でき、その後、最初のマスカラコーティングを除去する必要なく、不快感と「だま」を最小限にしながら、必要なだけの追加のコーティングを再塗布し、睫毛のボリュームを連続的に増大させ、より劇的な晩の外観を達成することができるマスカラ組成物を提供することが特に有利であろう。さらに、皮膚の皮脂と相互作用せず、したがって従来のマスカラ製品に匹敵する快適さでユーザーが身につけることができる汚れの少ない、または汚れのないマスカラ組成物を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、本発明は、再塗布に好適な十分な再湿潤性を有するマスカラ組成物に関する。
【0006】
1つの側面において、本発明は
(a)1以上の親水性官能基を有する、化学修飾ワックス、
(b)式(X)を有するモノマー
【化1】

【0007】
および式(Y)を有するモノマー
【化2】

【0008】
[式中、
nは3〜6であり、PはOまたはNR3であり、R1、R2、R3、R4、およびR5は独立してHまたはC1-C5アルキルであり、R6はC2-C16アルキルまたはアルキレンであり、Xモノマーの重量%は約60〜約99の範囲であり、かつYモノマーの重量%は約1〜約40の範囲である]
を含む、ポリマー塗膜形成剤、
(c)顔料、および
(d)水
を含むマスカラ組成物に関する。
【0009】
別の側面において、本発明は前記マスカラ組成物の最初のコーティングを睫毛に塗布するステップ、次いで、最初のコーティングを十分な期間乾燥させた後に1以上のかかるマスカラ組成物の追加のコーティングを睫毛に塗布するステップを含む、睫毛の外観を向上させる方法に関する。
【0010】
本発明の他の側面および目的は以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲からさらに明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例および比較例、または他の明確に記載される場合を除き、材料または反応条件の量または比、材料の物理的性質および/または用途を示す本明細書中の全ての数字は「約」の語に修飾されているとして理解されるべきである。パーセンテージは、特記しない限り、全て最終組成物の重量パーセンテージとして示される。
【0012】
本発明は化学修飾ワックスおよび特定のポリマー塗膜形成剤の独特の組み合わせを使用し、既にかかるマスカラでコーティングされた睫毛に容易に再塗布することができる、優れた再湿潤性を有するマスカラ組成物を形成する。本発明のマスカラ組成物は長時間の後に最初の外観をフレッシュアップするために使用することができ、あるいはより劇的な効果を達成するために、必要な限りの追加のコーティングを提供し、連続的に睫毛のボリュームを増大させることに使用できる。
【0013】
本発明のマスカラ組成物は水性組成物である。本明細書中で使用される「水性」の用語は1種以上の水相を含む任意の組成物を広く含み、主として水相を含む組成物、油相と水相の両方を含む水中油(O/W)型、油中水(W/O)型、油中水中油(O/W/O)型または水中油中水(W/O/W)型エマルション、シリコーン中水型または水中シリコーン型エマルション等を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本発明のマスカラ組成物は水中油型エマルションの形態である。水相は本発明のマスカラ組成物中に、約1%〜約90%の範囲の合計量で存在できる。さらに好ましくは、水相は本発明のマスカラ組成物中に大量に(例えば、組成物の全重量に対して20%より多く、最も好ましくは約40%〜約70%)存在する。
【0014】
「化学修飾ワックス」の用語は親水性官能基により官能化された天然または合成ワックスを意味する。好ましくは、必然的ではないが、本発明の化学修飾ワックスはカルボン酸基を有する天然または合成ワックスをモノ-、ジ-もしくは多価アルコールまたはアルコキシル化アルコール、C2-C4アルキレングリコール等と反応させることにより形成される。さらに好ましくは、本発明の化学修飾ワックスはエトキシ化アルコール(好ましくはポリエチレングリコール(PEG))と反応させたカルボン酸基を有する天然ワックスである。本発明での使用に好適なワックスの例は、繰り返しエチレンオキシド基の数が約2〜100の範囲であるポリエチレングリコールと反応させた天然または合成ワックスを含む。かかるワックスは、PEG-エステル化蜜ろう、PEG-エステル化キャンデリラワックス、PEG-エステル化カルナバワックス、PEG-エステル化ラノリン、PEG-エステル化鯨ろうワックス、PEG-エステル化セラックワックス、PEG-エステル化ヤマモモワックスおよびPEG-エステル化サトウキビワックスを含むがこれらに限定されず、その中でもPEG-8蜜ろう、PEG-6蜜ろう、PEG-12蜜ろう、PEG-12カルナバワックスおよびPEG-ソルビタン蜜ろうが好ましい。最も好ましいのはPEG-8 蜜ろうであり、「APIFIL(登録商標)」の商標名でGattefosse Canada Inc(Toronto, Canada)から市販されている。
【0015】
化学修飾ワックスは初めに上記の天然または合成ワックスとアルコールを高温で反応させることにより前もって形成することができ、その後、他の成分と混合し、本発明の組成物を形成することができる。また、化学修飾ワックスは(例えば上記の天然または合成ワックスとアルコールを本発明の組成物の他の成分と混合し、その後混合物を高温で加熱しワックスとアルコールの間のin situ反応を達成することにより)in situで形成でき、その結果、in situで形成された化学修飾ワックスを有する組成物が得られる。
【0016】
化学修飾ワックスは好ましくは組成物の全重量に対して約0.1%〜約20%の範囲の量で存在する。さらに好ましくは、化学修飾ワックスは組成物の全重量に対して15%以下(例えば約1%〜約10%、最も好ましくは約2%〜約6%)の量で存在する。
【0017】
本発明のマスカラ組成物の別の成分は、
式(X)を有するモノマー
【化3】

【0018】
および式(Y)を有するモノマー
【化4】

【0019】
[式中、
nは3〜6であり、PはOまたはNR3であり、R1、R2、R3、R4、およびR5は独立してHまたはC1-C5アルキルであり、R6はC2-C16アルキルまたはアルキレンであり、Xモノマーの重量%は約60〜約99、さらに好ましくは約70〜約95、最も好ましくは約80〜約90の範囲であり、かつYモノマーの重量%は約1〜約40、さらに好ましくは約5〜約30、最も好ましくは約10〜約20の範囲である]
を含む、ポリマー塗膜形成剤である。
【0020】
好ましくは、nが3であり、その結果Xモノマーはビニルピロリドンである。Yモノマーはアルキルアミノアルキルメタクリルアミドモノマー、アルキルアミノアルキレンメタクリルアミドモノマー、アルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、アルキルアミノアルキレンメタクリレートモノマー、アルキルアミノアルキルアクリルアミドモノマー、アルキルアミノアルキレンアクリルアミドモノマー、アルキルアミノアルキルアクリレートモノマーおよびアルキルアミノアルキレンアクリレートモノマーからなる群から選択することができる。したがって、本発明のポリマー塗膜形成剤はビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルメタクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンメタクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルメタクリレートコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンメタクリレートコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルアクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンアクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルアクリレートコポリマーおよびビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンアクリレートコポリマーからなる群から選択できる。本発明のポリマー塗膜形成剤として最も好ましいのはビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)コポリマーであり、「STYLEZE(登録商標)CC-10」の商標名でInternational Specialty Products(ISP)(Wayne, NJ)から市販されている。
【0021】
上記のポリマー塗膜形成剤は好ましくは組成物の全重量に対して約0.1%〜約70%の範囲の量で存在する。さらに好ましくは、ポリマー塗膜形成剤は組成物の全重量に対して約1%〜約20%、最も好ましくは約2%〜約10%の範囲の量で存在する。
【0022】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者は、本発明の化学修飾ワックスおよび特定のポリマー塗膜形成剤が一緒になって、新しく塗布されるマスカラコーティングに含まれる水相により容易に再湿潤できる柔軟、フレキシブルなマスカラコーティングを睫毛上に形成し、それによって、かかるマスカラ組成物を、マスカラでコーティングされている睫毛へ直接再塗布できると考えている。以下の比較例に示されるように、化学修飾ワックスを、一般に従来のマスカラ組成物に使用されるいくつかのポリマー塗膜形成剤と一緒に含むマスカラ組成物は、本発明のマスカラ組成物の特徴である再湿潤性を有さず、マスカラでコーティングされた睫毛に快適に再塗布できない。したがって、本発明により、特定のポリマー塗膜形成剤を選択し、その特定の塗膜形成剤と化学修飾ワックスを組み合わせて使用して、再塗布可能なマスカラ組成物を形成することは、従来技術に対し驚くべきであり予期されなかったことである。
【0023】
本発明のマスカラ組成物は、一般に1種以上のフィラー(filler充填材)、無機または有機顔料、例えば酸化鉄またはD&CもしくはFD&C着色剤またはそのレーキを含む。かかるフィラーおよび顔料の推奨される範囲は約0.1〜80%、好ましくは約0.1〜50%である。微粒子フィラーの具体的な例はタルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム・アルミニウム、シリカ、ポリエチレン粉末、メタクリレート粉末、ポリスチレン粉末、シルク(silk)粉末、結晶セルロース、澱粉、雲母チタン(titanated mica)、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛等を含む。顔料は酸化鉄、例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、ウルトラマリン、酸化鉄雲母チタン(iron oxide titanated mica)、アルミニウム、バリウムまたはカルシウムの塩またはレーキ等を含む。他の着色剤(color)、例えば有機または合成染料も本発明の化粧品組成物に含むことができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、必須ではないが、顔料は親水性であり、その極性により本質的に親水性である顔料(例えば、金属酸化物)または親水性を与えるように材料で表面処理された顔料(例えば、カーボンブラック)を含むことができるがこれらに限定されない。親水性を与えることができる顔料処理材料はシリコーン界面活性剤、例えばオキシアルキレン化シリコーン、PEG-ジメチコーン、ジメチコーンコポリオール、アルキル置換ジメチコーンコポリオール(例えばセチルまたはステアリルジメチコーンコポリオール);スルホポリエステル、例えばEastman AQ 14000およびEastman AQ 55(Eastman Chemical Company (Kingsport, TN))の商標名で市販されているものを含む。親水性顔料の使用は本発明のマスカラ組成物の再湿潤性をさらに改良する働きをする。例えば、PEG-9ジメチコーンまたはデシルグルコシドにより表面処理された酸化鉄は本発明に容易に使用できる。Eastman AQ 55 ポリマーにより表面処理されたカーボンブラックも本発明の実施に使用できる。親水性顔料は本発明のマスカラ組成物中に組成物の全重量に対して約0.1%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約20%の範囲の量で存在できる。
【0025】
前記のように、本発明のマスカラ組成物は水性であり、好ましくは約5%〜約90%、最も好ましくは約20%〜約70%の水を含む。さらに、水相は水に加えて水混和性溶媒(一般に、25℃で50重量%より大きい水混和性を有する)を含むことができる。かかる水混和性溶媒の例はC1-C5モノアルコール(例えばエタノールまたはイソプロパノール)、C2-C8グリコール(例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコールおよびジプロピレングリコール)、C3-C4ケトンならびにC2-C4アルデヒドを含む。かかる水混和性溶媒は組成物の全重量に対して約0.01%〜約40%、さらに好ましくは約0.5%〜約10%の範囲の量で存在できる。
【0026】
本発明の水性マスカラ組成物は1種以上の親油性材料をその中に含む、水中油型エマルションまたは油中水型エマルションのいずれかの形態で存在することができる。親油性材料は化粧品中に通常使用される油脂類から選択することができ、存在する場合には、かかる油脂は組成物の全重量に対して約0.1%〜約40%、さらに好ましくは約0.5%〜約20%の範囲の合計量で提供される。一般に、化粧品に使用される油は極性油、非極性油、揮発性油、不揮発性油およびその混合物を含む。さらに具体的には、油は炭化水素ベースの油、フルオロおよび/またはシリコーン油、鉱物、動物、植物または合成由来の油からなる群から選択することができるが、ただし、それらは本発明のマスカラ組成物の他の成分と一緒に、均一かつ安定な混合物を形成する。本発明のマスカラ組成物に使用する油の例はポリイソブテン、ポリブテン、ポリデセンまたはその水素化誘導体を含む。本発明に使用される油脂は植物性油脂、合成油脂およびその混合物からなる群から選択できる。好ましくは、本発明に使用される油脂はC6-C30脂肪酸またはステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、パルミチン酸グリセリル、パルミチン酸C18-C36トリグリセリド、ベヘン酸グリセリルおよびその混合物からなる群から選択される、グリセリンのC6-C30脂肪酸モノ-もしくはジエステルである。
【0027】
本明細書中に記載される化学修飾ワックスに加えて、本発明のマスカラ組成物は化粧品に通常使用される他のワックス、または組成物の粘度もしくは濃度(thickness)を増大させる他の成分を含む、1種以上の追加のストラクチャリング剤(structuring agent構造化剤)を含むことができる。存在する場合には、追加のストラクチャリング剤は好ましくは組成物の全重量に対して約0.1%〜約70%、さらに好ましくは約0.5%〜約60%の範囲の合計量で提供される。他のワックスの例は動物ワックス、植物ワックス、ミネラルワックス、種々の留分の天然ワックス、合成ワックス、石油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリウレタンワックス、炭化水素ベースのワックス(例えばフィッシャー-トロプシュワックス)、シリコーンワックスおよびその混合物を含むが、これらに限定されない。本発明の実施の際に好ましい他のワックスは蜜ろう、ラノリンワックス、セラックワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ヤマモモワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、C24-C45メチコーン等を含む。その他の種類のストラクチャリング剤も本発明のマスカラ組成物の粘度または濃度を増大させるために使用することができ、例えば約1〜約8のHLBを有し、少なくとも約45℃の融点を有するものがある。
【0028】
他の好適なストラクチャリング剤はC14〜C30飽和脂肪族アルコール、約1〜約5モルのエチレンオキシドを含むC16〜C30飽和脂肪族アルコール、C16〜C30飽和ジオール、C16〜C30飽和モノグリセロールエーテル、C16〜C30飽和ヒドロキシ脂肪酸、C14〜C30ヒドロキシル化およびヒドロキシル化されていない飽和脂肪酸、C14〜C30エトキシ化飽和脂肪酸、約1〜約5モルのエチレンオキシドジオールを含むアミンおよびアルコール、少なくとも40%のモノグリセリド含有量を有するC14〜C30飽和グリセリルモノエステル、約1〜約3個のアルキル基および約2〜約3個の飽和グリセロール単位を有するC14〜C30飽和ポリグリセロールエステル、C14〜C30グリセリルモノエーテル、C14〜C30ソルビタンモノ/ジエステル、約1〜約5モルのエチレンオキシドを有するC14〜C30エトキシ化飽和ソルビタンモノ/ジエステル、C14〜C30飽和メチルグルコシドエステル、C14〜C30飽和スクロースモノ/ジエステル、約1〜約5モルのエチレンオキシドを有するC14〜C30エトキシ化飽和メチルグルコシドエステル、平均して1〜2のグルコース単位を有するC14〜C30飽和ポリグルコシドならびに少なくとも約45℃の融点を有するその混合物を含むことができる。本発明の実施に好ましい他のストラクチャリング剤はステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、約1〜約5個の平均エチレンオキシド単位を有する、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、約1〜約5個の平均エチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテルならびにその混合物から選択される。さらに好ましい他のストラクチャリング剤はステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、約2個の平均エチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(steareth-2)、約2個の平均エチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテルならびにその混合物から選択される。さらに好ましいストラクチャリング剤はステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアレス-2およびその混合物から選択される。
【0029】
ストラクチャリング剤として(特に本発明の組成物の水相において)同様に有用なのは親水性ゲル化剤、例えばアクリル酸/エチルアクリレートコポリマーおよびカルボキシビニルポリマー(「Carbopol(登録商標)樹脂」の商標名でB.F. Goodrich Companyより市販されている)である。これらの樹脂は0.75%〜2.00%の架橋剤(例えばポリアリルスクロースまたはポリアリルペンタエリトリトール)で架橋された、アクリル酸の水溶性コロイドポリアルケニルポリエーテル架橋ポリマーから本質的になる。例としてはCarbopol 934、Carbopol 940、Carbopol 950、Carbopol 980、Carbopol 951およびCarbopol 981を含む。Carbopol 934はスクロース1分子当り平均約5.8個のアリル基を有する、約1%のスクロースのポリアリルエーテルで架橋されたアクリル酸の水溶性ポリマーである。同様に本発明での使用に好適なのはCarbopol Ultrez 10、Carbopol ETD2020、Carbopol 1382、Carbopol 1342およびPemulen TR-1(CTFA名:アクリレート/10-30アルキルアクリレートクロスポリマー)」の商標名で市販されているカルボマーである。前記ポリマーの組み合わせも本発明において有用である。本発明における使用に好適な他のゲル化剤はオレオゲル(例えばトリヒドロキシステアリン)を含む。疎水的に変性されたセルロースもストラクチャリング剤としての使用に好適である。存在する場合には、ゲル化剤は組成物の全重量に対して、約0.05%〜約20%、さらに好ましくは約0.5%〜約10%の範囲の合計量で提供される。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明のマスカラ組成物は睫毛を伸ばす効果のために、さらに繊維を含むことができる。本発明に有用な繊維は天然繊維または合成繊維のいずれかであることができる。天然繊維は綿繊維、絹繊維、羊毛繊維等であることができるが、これらに限定されない。合成繊維はポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維および他のポリアミド繊維を含むが、これらに限定されない。存在する場合には、繊維は好ましくは組成物の全重量に対して約0.01%〜約10%の範囲の量で提供される。
【0031】
さらに、本発明のマスカラ組成物は1種以上のヘアケアアクティブ(例えばヘアストレイトニング剤、ヘアカーリング剤、ヘアコンディショニング剤、育毛剤等)を含むこともできる。存在する場合には、かかるヘアケアアクティブは組成物の全重量に対して約0.01%〜約50%、好ましくは約0.05%〜約35%の範囲であることができる。
【0032】
さらに、本発明の化粧品組成物は1種以上の保湿剤を含むこともできる。存在する場合には、保湿剤は全組成物の約0.1〜20重量%の範囲であることができ、グリセロール、C1-C4アルキレングリコール(例えばブチレン、プロピレン、エチレングリコール)、グリセリン等、ポリアルキレングリコールおよびアルキレンポリオールならびにその混合物を含む多価アルコール、ヒアルロン酸、尿素、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチルおよびゼラチンを含むことができる。
【0033】
種々の水溶性保存剤を本発明の化粧品組成物に加え、長期の保存期間を提供することができる。好適な保存剤はソルビン酸カリウム、イミダゾリジニル尿素、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、種々のパラベン(CTFA's International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第12版)に開示されている)、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール/フェノキシエタノール/ヘキシレングリコール等を含むがこれらに限定されない。本発明の化粧品組成物における使用に好適な他の保存剤はCTFA's International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第12版)に開示されており、その全開示は本明細書中に参照により組み込まれている。
【0034】
本発明の化粧品組成物は場合によって、香料を組成物を消費者により魅力的にさせる十分な量で含むことができる。好ましくは、香料は組成物の全重量に対して約0.001%〜約10%の量である。
【0035】
本出願のマスカラ組成物は、まず最初に睫毛に塗布して最初のコーティングをその上に形成でき、最初のコーティングを十分な期間乾燥させた後、マスカラが既にコーティングされている睫毛に容易に再塗布し、1以上の追加のコーティングを睫毛上に形成できる。かかる十分な期間は約10秒〜約2分の範囲であることができる。さらに、本出願のマスカラ組成物はマスカラコーティングされた睫毛に、最初のコーティングの塗布後長時間(例えば、10分より長く、さらに好ましくは1時間より長く)の後に再塗布できる。最も有利には、本出願のマスカラ組成物は所望により何度でも再塗布し、複数の追加のコーティングを形成することができ、そのそれぞれを十分な期間乾燥させ、それぞれ前のコーティングに直接塗布し、所望の劇的な効果のために連続的に睫毛のボリュームを増大させる。
【0036】
以下の実施例は本発明の広い範囲を限定することなく、本発明の種々の具体的な実施形態をさらに例示する。
【実施例】
【0037】
実施例1:マスカラ組成物
【表1】

【0038】
実施例2:比較研究
比較研究を行い、再塗布可能なマスカラ組成物の形成における、VP/DMAPMAコポリマー以外のポリマー塗膜形成剤とPEG-8蜜ろうの親和性を評価した。具体的には、VP/DMAPMAコポリマーを他のポリマーに置き換えることを除き、配合1の全ての成分を含む比較配合2-5を以下のように形成した。
【表2】

【0039】
睫毛に塗布すると、配合1は、最初の塗布の3時間後に容易に再湿潤でき、最小限の塗布の困難かつ、「だま」がほとんどなく、再塗布できるフレキシブルなコーティングを形成した。一方、比較配合2-5は全て、それぞれの比較マスカラ式による再湿潤ができない硬いコーティングを形成し、既にコーティングされた睫毛への比較マスカラ組成物の再塗布は困難であった。したがって、本発明により、特定のポリマー塗膜形成剤を選択し、かかる特定の塗膜形成剤を化学修飾ワックスと組み合わせて使用して再塗布可能なマスカラ組成物を形成することは、先行技術に対して驚くべきであり、予期されなかったことが示された。
【0040】
以上、実例の実施形態および特徴に関連して本発明を種々に開示して来たが、上記の実施形態および特徴は本発明の範囲を限定する目的ではなく、当業者には他の変形、修正および他の実施形態が明らかであろう。したがって、本発明は以下に記載される特許請求の範囲と一致して広範に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカラ組成物であって、
(a)1以上の親水性官能基を有する化学修飾ワックス、
(b)式(X)を有するモノマー
【化1】

および式(Y)を有するモノマー
【化2】

[式中、
nは3〜6であり、PはOまたはNR3であり、R1、R2、R3、R4、およびR5は独立してHまたはC1-C5アルキルであり、R6はC2-C16アルキルまたはアルキレンであり、Xモノマーの重量%は約60〜約99の範囲であり、かつYモノマーの重量%は約1〜約40の範囲である]
を含む、ポリマー塗膜形成剤、
(c)顔料、および
(d)水
を含む、前記組成物。
【請求項2】
化学修飾ワックスが、合成または天然ワックスを、モノ-、ジ-もしくは多価またはアルコキシル化アルコールと反応させることにより形成されたものである、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項3】
化学修飾ワックスが、天然ワックスを、ポリエチレングリコール(PEG)と反応させることにより形成されたものである、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項4】
化学修飾ワックスが、PEG-エステル化蜜ろう、PEG-エステル化キャンデリラワックス、PEG-エステル化カルナバワックス、PEG-エステル化ラノリン、PEG-エステル化鯨ろうワックス、PEG-エステル化セラックワックス、PEG-エステル化ヤマモモワックスおよびPEG-エステル化サトウキビワックスからなる群から選択される、請求項3に記載のマスカラ組成物。
【請求項5】
化学修飾ワックスが、PEG-8蜜ろう、PEG-6蜜ろう、PEG-12蜜ろう、PEG-12カルナバワックスおよびPEG-ソルビタン蜜ろうからなる群から選択される、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項6】
化学修飾ワックスが、組成物の全重量に対して約0.1%〜約20%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項7】
化学修飾ワックスが、組成物の全重量に対して約1%〜約10%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項8】
ポリマー塗膜形成剤が、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルメタクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンメタクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルメタクリレートコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンメタクリレートコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルアクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンアクリルアミドコポリマー、ビニルピロリドン/アルキルアミノアルキルアクリレートコポリマーおよびビニルピロリドン/アルキルアミノアルキレンアクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項9】
ポリマー塗膜形成剤が、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)コポリマーである、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項10】
ポリマー塗膜形成剤が、組成物の全重量に対して約0.1%〜約20%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項11】
ポリマー塗膜形成剤が、組成物の全重量に対して約1%〜約10%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項12】
顔料が親水性顔料である、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項13】
親水性顔料が、親水性材料で表面処理された顔料を含む、請求項12に記載のマスカラ組成物。
【請求項14】
顔料が、組成物の全重量に対して約1%〜約30%の範囲の合計量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項15】
水が、組成物の全重量に対して約20%〜約90%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項16】
水が組成物の全重量に対して約40%〜約70%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項17】
組成物が水中油型エマルションの形態である、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項18】
睫毛の外観を向上させる方法であって、マスカラ組成物の最初のコーティングを睫毛に塗布するステップ、その後、最初のコーティングを十分な期間乾燥させた後に前記マスカラ組成物の1以上の追加のコーティングを睫毛に塗布するステップを含む前記方法であって、前記マスカラ組成物が、
(a)1以上の親水性官能基を有する化学修飾ワックス、
(b)式(X)を有するモノマー
【化3】

および式(Y)を有するモノマー
【化4】

[式中、
nは3〜6であり、PはOまたはNR3であり、R1、R2、R3、R4、およびR5は独立してHまたはC1-C5アルキルであり、R6はC2-C16アルキルまたはアルキレンであり、Xモノマーの重量%は約60〜約99の範囲であり、かつYモノマーの重量%は約1〜約40の範囲である]
を含む、ポリマー塗膜形成剤、
(c)顔料、および
(d)水
を含む、前記方法。
【請求項19】
追加のコーティングの塗布の前に、最初のコーティングを少なくとも10分間乾燥させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
後の追加のコーティングの塗布を最初のコーティングの塗布後1時間を超えた後に行う、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
2回以上の追加のコーティングを睫毛に逐次塗布し、そのそれぞれの追加のコーティングを次のコーティングの塗布の前に十分な時間乾燥させる、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2011−526902(P2011−526902A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516465(P2011−516465)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/047796
【国際公開番号】WO2010/002602
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】