説明

再生利用可能なポリエステルフィルム

【課題】再利用性に優れ、透明性、接着性、ハンドリング性、帯電防止性を兼ね備えた積層ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】滑剤を含まないポリエステル層(A)と、ポリエステル層(B)と、塗布層(C)とからなる積層ポリエステルフィルムであって、下記(1)および(2)を満足する積層ポリエステルフィルム。(1)ポリエステル層(B)に平均一次粒子径が1.2μm以上2.8μm未満の滑剤を0.02重量%以上0.08重量%重量%以下含有する。(2)積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、(a)〜(d)を含有する塗布層(C)が設けられてなる。(a):アルキレンオキシドとリン酸塩基を有するアクリル樹脂、(b):アクリル共重合体、(c):チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物およびアルミニウム有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物、(d):平均粒径80〜300nmのシリカ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステル基材に特定の樹脂と化合物を有してなるコーティング用組成物を含有する塗布層(組成物層)が積層された再生利用可能なポリエステルフィルムに関するものであり、更に詳しくは本発明のフィルムをポリエステル原料として再生し、該再生ポリエステル原料を50%以上含有しても、優れた透明性を有し、着色が少なく、接着性、ハンドリング性、帯電防止性を兼ね備えたPOP広告用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる再生利用可能なポリエステルフィルム関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐熱性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアーツ、印刷材料などの多くの分野の基材フィルムとして広く使用されている。また、近年環境への意識の高まりにより、従来は廃棄されていたポリエステルフィルムを他工場から回収し、ポリエステル原料に戻し、再度フィルム化してリサイクルすることが望まれている。中でもPOP広告の基材用として用いられるポリエステルフィルムは、顧客の目に触れる機会も多く、リサイクル原料を使用していることをアピールすることによって、広告主が環境へ配慮していることも同時にPRすることができるため、UVオフセット印刷などの手法に代表される方法により広告の柄に印字されたインキとフィルムの接着性を満足し、印刷工程などにおいて重要となるハンドリング性が優れ、かつ、広告の柄の色を損なわない、着色の少ない透明な再生ポリエステルフィルムが強く求められている。
【0003】
しかしながら、二軸延伸ポリエステルフィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料、接着剤、インキなどとの接着性に乏しく、また、基材そのものが絶縁体であるため、摩擦による静電気の帯電が著しいことなどの欠点を持っている。そのため、一定サイズに断裁された後に印刷機へ搬送される際にフィルムが帯電していると一度に複数枚数が印刷機に誤って投入され、印刷工程の生産性を大きく損なう問題や、工程中の粉塵が付着し精度良く印刷できない問題がある。また、接着性が乏しいため、印刷面側に直接粘着テープを貼り付けて使用する場合、粘着テープを貼り直す際に印刷インキが粘着層側に移行してしまい、印刷柄が抜けるという問題がある。
【0004】
そのため、このような問題を解決するために、接着性を付与する方法としては、各種ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理などの物理的方法やアルカリ、トリクロロ酢酸、アミン、フェノールなどによる化学的処理、あるいはこれらを併用した処理方法などが試みられているがいずれも十分な接着性が得られなかったり、経時的に処理効果が薄れるなどの欠点があった。一方、ポリエステルフィルムの表面にプライマー層を設けることによる易接着処理が盛んに行なわれており、特にポリエステルフィルム製造工程中で一気にプライマー処理を行なう方法(インラインコート法)が工程簡略化や製造コスト、環境保全などの点で有力視され盛んに実施されている。これに使用されるプライマー層として易接着性を目的とした有機スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂(特許文献1)、有機スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂とアニオン性ウレタン樹脂の混合物(特許文献2)などがある。
【0005】
また帯電防止性の付与を目的として帯電防止剤を添加する方法(特許文献3)やスチレンスルホン酸共重合体を塗布する方法(特許文献4)などが提案されている。
【0006】
また、基材ポリエステルフィルム中に各種の帯電防止剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸またはその塩等の低分子量界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸またはその塩を練り込んだり、あるいは塗剤中に配合して塗布したりする方法(特許文献5)等が取られてきた。
【0007】
一方、ポリエステルフィルムを製造する際には、屑フィルムが生じる。例えば、立上げ中において塗布状態が安定するまでの間に発生したフィルム屑や、工程検査の結果として品位が不足しており製品にならなかった屑フィルム、または製品から切断除去したフィルム端部等の屑フィルムについて再利用またはリサイクルする方法が試みられてきた。しかしながら、これらの屑フィルムのように易接着樹脂や帯電防止樹脂などの被覆層を有するフィルムは、リサイクルして再生ポリエステル原料を主原料として50重量%以上用いる際には、得られる再生ポリエステルフィルムは、再生ポリエステル原料中に含まれる被覆層成分が熱劣化し、得られたフィルムが著しく着色してしまうという問題があった。そのため、自己回収原料を含み、着色や濁りの少ない再生フィルムを得ることを目的として、アクリル樹脂とウレタン樹脂からなる易接着層を用いてハードコート剤などとの接着性、回収性が優れた積層ポリエステルフィルムが得られる方法(特許文献6)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−1727号公報
【特許文献2】特開昭58−78761号公報
【特許文献3】特開昭60−141525号公報
【特許文献4】特開昭61−204240号公報
【特許文献5】特開昭50−30979号公報
【特許文献6】特開2001−200075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
帯電防止性を付与する方法に関して、ドデシルベンゼンスルホン酸またはその塩といった低分子量界面活性剤等を練り込んだり、塗剤中に配合して塗布したものは、帯電防止剤が表面や界面にブリードアウトしたり、経時とともにマイグレーションを起こし弱境界層を形成するため、基材フィルムとの接着性や各種バインダとの接着性を低下させる等の欠点がある。更に、インラインコート法に適用した場合には、結晶配向を完了させるための高温での熱処理によってその帯電防止性を失う等の欠点を有する。また、ポリスチレンスルホン酸またはその塩を練り込んだものは、ポリエステルとの親和性が悪いため十分な帯電防止性が得られず、また透明性低下が著しいものであった。更にこれらをインラインコート法によって積層した場合には二軸延伸によって塗膜に亀裂が生じ、透明性や帯電防止性、易接着性を低下させるという欠点を有している。
【0010】
一方、再生ポリエステル原料に関して、アクリル樹脂とウレタン樹脂を含む易接着層を用いる方法などの公知の方法では、リサイクルに用いることのできる易接着層の種類が著しく限定されているため、再生ポリエステル原料の供給性に乏しく、また、製品の着色は抑えられても、易接着成分が再生ポリエステル原料の表面などに残存するため、フィルム製膜前の原料の乾燥工程において、チップ同士が融着するという問題があり、この対策として、例えば予備結晶化処理や、他の融着し難いポリエステル材料と混ぜ合わせるなどの必要があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は上記した欠点を解消せしめ、再生ポリエステル原料を50%以上含有する環境に配慮した、接着性、ハンドリング性、帯電防止性を兼ね備え、透明で着色の少ないPOP広告用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる再生利用可能なポリエステルフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は次の構成からなる。すなわち、
少なくとも滑剤を含まないポリエステル層(A)とポリエステル層(B)と塗布層(C)とからなる積層ポリエステルフィルムであって、下記(1)および(2)を満足することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
(1)ポリエステル層(B)に平均一次粒子径が1.2μm以上2.8μm未満の滑剤を0.02重量%以上0.08重量%重量%以下の配合割合で含有する。
(2)積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、以下の(a)〜(d)を含有する塗布層(C)が設けられてなる。
(a):アルキレンオキシドとリン酸塩基を有するアクリル樹脂、
(b):アクリル共重合体、
(c):チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物およびアルミニウム有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物、
(d):平均粒径80〜300nmのシリカ粒子。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルムをポリエステル原料として再生し、該再生ポリエステル原料を50%以上含有しても、優れた透明性を有し着色が少なく、かつ接着性、ハンドリング性、帯電防止性を兼ね備え、POP広告用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のフィルムは、少なくとも滑剤を含まないポリエステル層(A)とポリエステル層(B)を有してなる基材ポリエステルフィルム(「ポリエステル基材」と称することもある。)の少なくとも片面に、以下の(a)〜(d)を含有する塗布層(C)が設けられてなる積層ポリエステルフィルムである。
(a):アルキレンオキシドとリン酸塩基を有するアクリル樹脂、
(b):アクリル共重合体、
(c):チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物およびアルミニウム有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物、
(d):平均粒径80〜300nmのシリカ粒子。
【0016】
かかる塗布層(C)を設けることによって、優れた接着性、ハンドリング性、帯電防止性をポリエステルフィルムに付与することができ、かつ、使用後のポリエステルフィルムの再利用性を高めることができる。一般に、塗布層が設けられたポリエステルフィルムを再利用することは難しいが、これは、ポリエステルフィルムから再生原料を得る際に加えられる熱によって、塗布層が劣化し、再生原料が著しく着色してしまうためである。本発明の塗布層は、アクリル処理等を行うことによって、容易に基材ポリエステルフィルムと塗布層を分離することができる。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、高い再利用性を有する。
【0017】
本発明の塗布層(C)を構成するアクリル樹脂(a)は、樹脂を構成するモノマのいずれかにアルキレンオキシドとリン酸基を含有し、下記の他のモノマと共重合後、陽イオンを付加する方法あるいはアルキレンオキシドとリン酸基を有するモノマのリン酸基をあらかじめ中和法によってリン酸塩化したものをモノマの1成分とすることによって得ることができるが、中でもアルキレンオキシドとリン酸基が1つのモノマ中に存在しているのが好ましく、更には重合後においてアクリル樹脂の側鎖にアルキレンオキシドを介在してリン酸塩基が存在するのがより好ましい。アルキレンオキシドはC2 〜C8 の範囲で任意に選定できその繰り返し単位は限定しない。特に好ましい例としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方を含むものが好適である。このようなモノマとしてはアシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3クロロ2アシッドホスホオキシエチルアクリレート、3クロロ2アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノアクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノアクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノアクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートなどをその代表例として挙げることができる。
【0018】
アクリル樹脂を構成する他のモノマ成分としては公知のものを使用することができる。例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基など)を基本骨格とし、更に架橋性官能基を付与する目的で以下のモノマと共重合しても良い。このような官能基としてはカルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド基またはメチロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、あるいはアルキロール化されたアミノ基、水酸基、エポキシ基などを例示することができる。
【0019】
上記官能基を有するモノマを例示するとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、および上記アミノ基をメチロール化したもの、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどを挙げることができるが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0020】
さらに上記以外に次のような化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸およびイタコン酸のモノあるいはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシランなどを共重合成分としても良い。
【0021】
本発明に用いるアクリル樹脂は上記モノマおよび架橋性官能基含有モノマなどを任意の比率で共重合したものを用いることができる。架橋性官能基を有するモノマの共重合比は特に限定しないが1〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜20重量%であるのが接着性の点で望ましい。
【0022】
また本発明のアクリル樹脂の分子量は10万以上が好ましく、さらに好ましくは30万以上とするのが易接着性の点で望ましい。
【0023】
更に架橋性官能基を架橋させる目的で官能基と反応する架橋剤、例えばメラミン樹脂、イソシアネート基を有するポリマなどを添加するとより好ましい。
【0024】
上記アルキレンオキシドとリン酸塩基を有するモノマと他のモノマとは任意の比率で共重合し得るが、好ましくは前記モノマが20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であるのが帯電防止性や透明性の点で好ましい。リン酸塩基は1価の陽イオンの付加により形成されたものであれば任意に選ばれるが、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびアンモニウムが帯電防止性の点で好ましく、更にはカリウム、ルビジウムが帯電防止性の点で特に好ましい。
【0025】
本発明の塗布層(C)を構成するアクリル共重合体(b)は、公知のアクリル樹脂の重合方法によって得ることができるが、インラインコート法に適用する場合には水に溶解あるいは分散したものが好ましいため、乳化重合、懸濁重合などの方法によって作成したものが好ましい。積層膜の厚みは特に限定しないが本発明においては0.01〜2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.04〜1.0μm、より好ましくは0.06〜0.5μmであるのが望ましい。
【0026】
本発明の塗布層(C)を構成する有機金属化合物(c)は、中心金属にチタニウム、ジルコニウム、アルミニウム、を有する化合物のことであり、チタン有機化合物のアルコキシド、キレート化合物が好ましい。チタン有機化合物としては、アルコキシドを形成したテトライソプロピルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等、キレートを形成したチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩等が例示される。この中でもチタンキレート化合物が好ましく、チタンキレート化合物としては、配位子としてグリコール、β−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ケトエステル、ケトアルコール等がO配位したチタンキレート、あるいは配位子としてアミノアルコール、オキシキノリン、シッフ塩基等がN配位したチタンキレート等を挙げることができる。また、インラインコート法に適用することを考えた場合、防爆性、環境汚染等の点で水溶性チタンキレート化合物が好ましい。前述のチタンキレート化合物において代表的な水溶性チタンキレート化合物としては、トリエタノールアミンチタンキレート、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、チタンラクテート、アンモニウムチタンラクテート等が挙げられ、この中でも水中での安定性に優れたチタンラクテート、アンモニウムチタンラクテート等が特に好ましい。
【0027】
アクリル樹脂(a)と有機金属化合物(c)の配合比は特に限定されないが、好ましくは(a)100重量部に対し(c)が1〜40重量部、特に好ましくは2〜30重量部である。(c)の割合が多くなり過ぎると易接着性や透明性が低下する傾向にあり、少な過ぎると帯電防止性が低下する傾向となる。
【0028】
本発明の塗布層(C)に含まれる平均粒径80〜300nmのシリカ粒子(d)は、透明性を損なわずに、耐ブロッキング性や、フィルムの滑り性などのハンドリング性を付与するために用いられる。上記粒子が80nm未満の場合は、高温高湿環境下でフィルムロールを保管した際に、フィルム同士が密着するブロッキングが発生したり、ハンドリング性が不足し易いため、好ましくない。また、300nm以上の場合は、耐削れ性が低下し好ましくなく、また、フィルムの透明性が損なわれるため本発明の再生ポリエステルフィルムをPOP広告用フィルム基材として用いる場合は、好ましくない。
【0029】
本発明にて用いられる基材ポリエステルフィルムは、滑剤を含まないポリエステル層(A)と、平均一次粒子径が1.2μm以上2.8μm未満の滑剤を0.02重量%以上0.08重量%重量%以下の配合割合で含有するポリエステル層(B)を有してなる積層フィルムである。
【0030】
本発明で言うポリエステルとしては、ジカルボン酸成分骨格とジオール成分骨格との重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステル、もしくはその2種類以上のブレンドポリエステルのことをいう。ここで、ホモポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが代表的なものである。特にポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができ好ましい。
【0031】
また、本発明における共重合ポリエステルとは、次にあげるジカルボン酸骨格を有する成分とジオール骨格を有する成分とより選ばれる少なくとも3つ以上の成分からなる重縮合体のことと定義される。ジカルボン酸骨格を有する成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。グリコール骨格を有する成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。
【0032】
上述したポリエステルは、常法により製造することができ、極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるのもが本発明を実施する上で好適である。
【0033】
本発明におけるポリエステル基材は、上記組成物を主成分とするが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他種ポリマーをブレンドしてもよいし、およびまたは酸化防止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、減粘剤、顔料、染料、充填剤、屈折率調整のためのドープ剤、結晶核生成剤等の無機または有機添加剤が通常添加される程度添加されていてもよい。
【0034】
本発明における再生ポリエステルフィルムのポリエステル基材は、少なくとも滑剤を含まないポリエステル層(A)とポリエステル層(B)から積層されてなり、全てのポリエステル層が押出し機のダイから共溶融押出しされる、共押出し法により得られた未延伸フィルムを延伸、熱処理したものが好ましく挙げられる。このポリエステル基材は、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)からなる2層構造または、ポリエステル層(A)の両面にポリエステル層(B)を有する3層構成であってもよい。
【0035】
上記ポリエステル基材は、フィルムの滑り性、巻き性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善する目的で、少なくとも一方の最表層を形成するポリエステル層(B)に平均一次粒子径が1.2μm以上2.8μm未満の滑剤を0.02重量%以上0.08重量%重量%以下の配合割合で含有されてなる。
【0036】
本発明におけるポリエステル層に添加する滑剤としては、有機や無機の微粒子を用いることができる。具体例としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等のような無機微粒子、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような耐熱性ポリマーからなる有機微粒子などが挙げられる。上記粒子のサイズが小さい場合や、添加量が少なすぎる場合は、効果が得られず、また、粒子のサイズが大き過ぎたり、添加量が多過ぎる場合にはフィルムの透明性が損なわれ好ましくない。
【0037】
本発明の目的を損なわない範囲でポリエステル層(A)に滑剤を含んでいても差し支えないが、透明性を損なうことになるため、好ましくはない。
【0038】
ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)の好ましい組み合わせとしては、両ポリエステルのガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、ロール状の巻物としたときにフィルムの厚薄によりフィルムの平面性が悪化してしまう。また、積層フィルムを延伸する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
【0039】
上記ポリエステルを使用したポリエステル基材は、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向していない場合には、導電性フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0040】
また、本発明にて用いられる基材ポリエステルフィルムには、再生ポリエステル原料が用いられていても良い。
【0041】
ここで、再生ポリエステル原料とは、易接着性などの機能を付与する目的で添加された公知の各種コーティング用樹脂組成物(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂および/またはこれらの特殊変性樹脂など)で被覆された層と、基材層となるポリエステルフィルム層を有する積層ポリエステルフィルムにおいて、積層ポリエステルフィルムから被覆層を除去した後に、ポリエステルフィルム層を、溶融押出、ペレタイズして得られたペレット状の再生原料などを指す。上記積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするものであれば得に限定されるものではなく、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他種ポリマーをブレンドしてもよい。積層ポリエステルフィルムから被覆層の除去は、アルカリ等の薬剤にて溶かして除去する方法や表面をマット加工等で削り取る方法などを用いることが出来る。被覆層を除去したフィルムは粉砕し、水分を除去するためにガラス転移温度〜160℃程度で乾燥することが好ましい。乾燥後の水分率は100ppm程度以下に低減することがポリマーの加水分解を抑制するために好ましい。乾燥した粉砕フィルムを押出機にて溶融し、ダイからストランド状に吐出せしめて冷水で急冷固化させる。押出機で溶融している時間を短縮して熱劣化を抑制することが望ましい。また、固化したストランドはストランドカッタにてペレット形状に切断した後、フィルム製膜時の乾燥工程で融着を防ぐために、熱風乾燥機等でペレットの表面を結晶化させることも好ましい態様の一つである。
【0042】
特に、使用済みの本発明の積層ポリエステルから塗布層(C)を除去し、基材ポリエステルフィルムのみとし、これから再生原料を得て、該再生原料を再生ポリエステル原料として用いて、再び本発明のフィルムを得ることも、非常に好ましい態様の一つである。
【0043】
再生ポリエステル原料が用いられる場合、フィルム総重量に対する再生ポリエステル原料の割合は50重量%以上とすることが好ましい。再生原料をフィルム総重量の50重量%以上含有することにより、(財)日本環境協会エコマーク事務局からエコマークの認定を受けることができる。エコマークをPOP広告に表示することで、広告主の環境への意識を強くPRすることが可能となる。
【0044】
本発明において塗布層(C)は、上記の塗布層組成物を含む水性塗液を、基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥、延伸することにより塗設する。用いる水性塗液は、水を媒体とし、前記成分の組成物が溶解および/または分散されているものである。なお、水性塗液には、塗液の安定性を助ける目的で若干量の有機溶剤を含ませても良い。この有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールを例示することができる。有機溶剤は複数種含まれていてもよい。
【0045】
上述の水性塗液には本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、有機、無機の微粒子などを添加しても良い。特に架橋剤の添加は易接着性をより向上させる点で好ましい。架橋剤の具体例を挙げればメチロール化、あるいはアルキロール化された尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系、およびエポキシ化合物、ブロックされたイソシアネート化合物などがある。塗布の方法は公知の塗布方法、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法など任意の方法を用いることができる。
【0046】
本発明においては、上述の塗布層(C)を構成する水性塗液を基材ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布するが、基材のポリエステルフィルムの結晶配向が完了する前に塗布され、その後、少なくとも1方向に延伸された後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる方法によって製造されるのが本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい方法である。すなわち無延伸あるいは長手方向に延伸された基材ポリエステルフィルムの片面あるいは両面に必要に応じてコロナ放電処理を施し、本発明の塗布層(C)を構成する水性塗液からなる調合液を塗布するのが好ましい。
【0047】
基材ポリエステルフィルムへの塗布層(C)を構成する水性塗液の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法を単独または組み合わせて適用すると良い。
【0048】
塗布量は走行しているフィルム1m2あたり3〜46g、さらには6〜25gが好ましい。最終乾燥塗膜(被膜)の厚さとしては0.08〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.3μmである。塗膜の厚さが0.08μm未満であると帯電防止性が不十分となり、0.4μmを超えると耐ブロッキング性が低下する。塗布はフィルムの用途に応じて片面のみに行うことも両面に行うこともできる。塗布後、乾燥することにより均一な塗膜となる。
【0049】
本発明においては、ポリエステル基材に水性塗液を塗布した後、乾燥、延伸処理を行うが、この乾燥は80〜130℃で2〜20秒間行うのが好ましい。この乾燥は延伸処理の予熱処理ないし延伸時の加熱処理をかねることができる。ポリエステルフィルムの延伸処理は、温度70〜140℃で縦方向に2.5〜7倍、横方向に2.5〜7倍、面積倍率で8倍以上、さらには9〜28倍延伸するのが好ましい。再延伸する場合には、1.05〜3倍の倍率で延伸するのが好ましい(但し、面積倍率は前記と同じ)。延伸後の熱固定処理は160〜250℃で1〜30秒行うのが好ましい。
【0050】
本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは100〜300μm、より好ましくは125〜250μmである。この厚みが100μm未満では、フィルムの腰が弱くなり、一方フィルムが厚すぎ、例えば300μmを超えるとフィルムの腰が強すぎてロール状に巻き取り難くなるなど製膜性が劣る傾向が見られ好ましくない。
【0051】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、色調、特に黄味−青味を示すb値が重要である。b値は−0.5〜2.0であることが好ましい。b値が2.0を超えると、フィルムが黄ばんで見え、かかるフィルムの非印刷部をそのまま広告として掲示した場合、劣化、変色といった印象を与えるばかりか、広告の印象を著しく損なう可能性があるため、好ましくない。また、b値が−0.5未満だと、フィルムが青く見え、かかるフィルムの非印刷部をそのまま広告として掲示した場合、暗い印象を与えるため、好ましくない。
【0052】
かくして得られた積層ポリエステルフィルムは、再利用性が高いので環境への負荷が小さく、かつ、接着性、ハンドリング性、帯電防止性を兼ね備え、透明で着色の少ないPOP広告用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0054】
(物性値の評価法)
(1)透明性
フィルムサンプルを5cm×5cmで切り出し、直読式ヘイズメータHGM−2DP(スガ試験機器製作所製)を用いn=3で表面ヘイズを測定した。3.0%以上を不良、3.0%未満を良好とした。
【0055】
(2)色調 b値
NIPPON DENSHOKU社製分光式色彩計SE−2000を使用し、JIS−K−7105に従ってフィルムサンプルの色調を透過法で測定した。
【0056】
(3)帯電防止性
フィルムサンプルを常態(23℃、相対湿度65%)で一昼夜以上放置した後、その環境下においてデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧100Vで1分間印加し表面比抵抗値を測定した。5×1012 Ω/□以下を帯電防止性良好とした。
【0057】
(4)搬送性
フィルムサンプルの表面と裏面の静摩擦係数を摩擦試験機(HEIDON−14DR 新東科学製)を用いて、静摩擦係数をASTM D1894に則り評価した。
【0058】
(5)接着性(UVオフセット塗料密着性)
フィルムサンプルの塗布層面に紫外線硬化型印刷インキ(“UV Lカートン”墨GW 株式会社ティーアンドケイ東華製)をRIテスター(明製作所製)により印刷した後、UVキュア装置(EYE INVERTOR GRANDAGE 4kw×1灯用インバーター式コンベア装置 ECS−401GX アイグラフィックス株式会社製)でキュアリングを行い、厚み約2.0μmのUVインキ層を形成した。塗料乾燥膜に1mm2 のクロスカットを100個入れ、このUVインキ層上にセロテープ(登録商標)(18mm幅;ニチバン製)を15cmの長さに貼り、この上を2kgの手動式荷重ロールで一定の荷重を与え、フィルムを固定してセロハンテープの一端を90゜方向に剥離して、剥離接着力を残存した個数により評価した。
【0059】
(実施例1)
コーティング用組成物を下記の通り調整した。
【0060】
アクリル樹脂(a):
予め水酸化カリウムで中和したアシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート(オキシエチレングリコールの繰返し数n=5)/ブチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミドを70/20/5/5(重量%)としたアクリル樹脂(分子量約15万)の水分散体を用いた。
【0061】
アクリル共重合体(b):
メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸を60/35/5(重量比)の比率で乳化重合させた分子量約30万のアクリル樹脂水分散体の3.5重量%液を用いた。
【0062】
有機金属化合物(c):
乳酸チタン(マツモトファインケミカル(株)製“オルガチックス”TC−315)を用いた。
【0063】
シリカ粒子(d):
平均粒子径0.24〜0.34μmのアモルファスシリカ水分散体((株)日本触媒製“シーホスター”KE−W30)を用いた。
【0064】
水系溶媒(e):
純水。
【0065】
上記した(a)〜(d)および、(e)を用いて、固形分重量比で、(a)/(b)/(c)/(d)=40/60/10/0.8となるように、かつ固形分濃度が3%となるように混合し、コーティング用組成物を得た。
【0066】
ポリエステル原料の組成を下記の通り調整した。
ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(原料B)としては、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレットを準備した。
【0067】
原料A,Bを、それぞれ別々に160℃で4時間乾燥した後、別々の押出機に供給した。
原料AおよびBは、それぞれ押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルターを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流させた後のポリエステル基材は、ポリエステル層(A)の両側にポリエステル層(B)の樹脂が配置される構成とし、それぞれの層の重量比はポリエステル層(B):ポリエステル層(A):ポリエステル層(B)=約 1:5:1 とした。
このようにして得られた積層体を、マルチマニホールドダイに供給、シート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.0倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、コロナ処理面にコーティング用組成物を塗布し、塗布層(C)を形成した。
【0068】
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に8%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、各層の厚みが25/125/25μmで、全厚みは175μmであった。得られた結果を表1に示す。
【0069】
(実施例1−1)
実施例1にて得られた積層ポリエステルフィルムをアクリル薬剤に浸漬して、塗布層を除去した。また、塗布層を除去した後のポリエステルフィルムから、再生ポリエステル原料ペレットを製造した。
【0070】
次いで、ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを48%、再生ポリエステル原料ペレット52%を配合した混合ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(樹脂B)としては、再生ポリエステル原料ペレットを52%と、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレット48%を配合した混合ペレットを準備した。
【0071】
これらの原料A,Bを用いて、実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を調べたところ、実施例1にて得られた積層ポリエステルと実質的に同等の特性を有していた。
【0072】
(実施例2)
実施例1におけるポリエステル基材を、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)からなる2層構成とし、その重量比をポリエステル層(A):ポリエステル層(B)=約6:1とし、ポリエステル層(B)の側に塗布層(C)を形成した以外は実施例1と同様とした。
【0073】
(実施例2−1)
実施例2にて得られた積層ポリエステルフィルムをアクリル薬剤に浸漬して、塗布層を除去した。また、塗布層を除去した後のポリエステルフィルムから、再生ポリエステル原料ペレットを製造した。
【0074】
次いで、ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを48%、再生ポリエステル原料ペレット52%を配合した混合ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(樹脂B)としては、再生ポリエステル原料ペレットを52%と、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレット48%を配合した混合ペレットを準備した。
【0075】
これらの原料A,Bを用いて、実施例2と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を調べたところ、実施例2にて得られた積層ポリエステルと実質的に同等の特性を有していた。 (実施例3)
実施例1におけるポリエステル基材を、ポリエステル層(A)の方側にポリエステル層(B)の樹脂が配置される構成とし、それぞれの層の重量比はポリエステル層(A):ポリエステル層(B)=約6:1とし、ポリエステル層(A)側に塗布層(C)を形成した以外は実施例1と同様とした。
【0076】
(実施例3−1)
実施例3ににて得られた積層ポリエステルフィルムをアクリル薬剤に浸漬して、塗布層を除去した。また、塗布層を除去した後のポリエステルフィルムから、再生ポリエステル原料ペレットを製造した。
【0077】
次いで、ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを48%、再生ポリエステル原料ペレット52%を配合した混合ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(樹脂B)としては、再生ポリエステル原料ペレットを52%と、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレット48%を配合した混合ペレットを準備した。
【0078】
これらの原料A,Bを用いて、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を調べたところ、実施例3にて得られた積層ポリエステルと実質的に同等の特性を有していた。
【0079】
(実施例4)
実施例1のコーティング用組成物に架橋剤として、ヘキサメチロール化メラミン樹脂を10重量%添加した。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4−1)
実施例4にて得られた積層ポリエステルフィルムをアクリル薬剤に浸漬して、塗布層を除去した。また、塗布層を除去した後のポリエステルフィルムから、再生ポリエステル原料ペレットを製造した。
【0081】
次いで、ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを48%、再生ポリエステル原料ペレット52%を配合した混合ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(樹脂B)としては、再生ポリエステル原料ペレットを52%と、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレット48%を配合した混合ペレットを準備した。
【0082】
これらの原料A,Bを用いて、実施例4と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を調べたところ、実施例4にて得られた積層ポリエステルと実質的に同等の特性を有していた。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル層(B)に凝集シリカ粒子を0.01重量%とした。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0084】
(比較例2)
実施例1において、ポリエステル層(B)に凝集シリカ粒子を0.2重量%とした。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0085】
(比較例3)
実施例1において、樹脂B中の凝集シリカとして平均二次粒径3.0μmのものを使用した。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0086】
(比較例4)
実施例1において、樹脂B中の凝集シリカとして平均二次粒径0.8μmのものを使用した。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0087】
(比較例5)
実施例1において、塗布層(C)を設けなかった。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0088】
(比較例6)
実施例1のコーティング用組成物において、シリカ粒子(d)の代わりに平均粒子径0.04μmの架橋アクリル樹脂粒子を用いた。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0089】
(比較例7)
実施例1のコーティング用組成物において、アクリル樹脂(a)の代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0090】
(比較例8)
実施例1のコーティング用組成物において、アクリル共重合体(b)を添加しなかった。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0091】
(比較例9)
実施例1のコーティング用組成物において、有機金属化合物(c)を添加しなかった。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られた結果を表1に示す。
【0092】
(参考例1)
実施例1にて得られた積層ポリエステルを、塗布層を除去せずに粉砕、ペレタイズし、再生ポリエステル原料ペレットを製造した。
【0093】
次いで、ポリエステル層(A)の原料組成(原料A)として、バージンのポリエチレンテレフタレートの原料ペレットを48%、再生ポリエステル原料ペレット52%を配合した混合ペレットを準備した。またポリエステル層(B)の原料組成(樹脂B)としては、再生ポリエステル原料ペレットを52%と、バージンのポリエチレンテレフタレート原料ペレットに平均二次粒径が2.1μmの凝集シリカ粒子が0.04重量%添加した原料ペレット48%を配合した混合ペレットを準備した。
【0094】
これらの原料A,Bを用いて、実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。しかし、塗布層を除去しなかったため、押出機供給前の乾燥工程において、再生ポリエステル原料ペレット同士が融着し、生産性が著しく低下した。また、得られた積層ポリエステルフィルムの特性も、実施例1の積層ポリエステルフィルムに劣り、特にb値が悪化した。
【0095】
【表1−1】

【0096】
【表1−2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
POP広告用途の基材フィルムなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも滑剤を含まないポリエステル層(A)と、ポリエステル層(B)と、塗布層(C)とからなる積層ポリエステルフィルムであって、下記(1)および(2)を満足することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
(1)ポリエステル層(B)に平均一次粒子径が1.2μm以上2.8μm未満の滑剤を0.02重量%以上0.08重量%重量%以下の配合割合で含有する。
(2)積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、以下の(a)〜(d)を含有する塗布層(C)が設けられてなる。
(a):アルキレンオキシドとリン酸塩基を有するアクリル樹脂、
(b):アクリル共重合体、
(c):チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物およびアルミニウム有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物、
(d):平均粒径80〜300nmのシリカ粒子。
【請求項2】
積層ポリエステルフィルムの厚さ150.0μmでのヘイズの値が3%未満、かつb値が−0.5〜2.0であることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記積層ポリエステルフィルムがPOP広告用フィルム基材に使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−39764(P2013−39764A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178852(P2011−178852)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】