説明

再生可能材料からのポリアミド微粉末と、その製造方法

【課題】少なくとも部分的に再生可能な材料に由来するポリアミドPA(ホモポリアミドまたはコポリアミド)の粉末と、このポリアミド粉末の製造方法。
【解決手段】粒子が非球状で、体積平均直径が20μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉末、例えば化粧品、医薬品または香水で使用される微粉末に関するものである。
本発明は特に、再生可能な材料からのポリアミド微粉末に関するものである。
本発明はさらに、再生可能な出発材料から上記微粉末を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の化粧品中には基本的に石油起源または合成起源の成分が含まれている。それらを得るための製造方法は時として環境汚染源とみなされている。すなわち、これら成分の合成で使用される出発材料が石油留分のスチームクラッキングや接触分解で得られ、これらの材料を使用することは温室化効果の増大の原因となる。鉱油の埋蔵鉱量は世界的に減少しており、これら出発材料の資源は徐々に枯渇する。
【0003】
バイオマスに由来する出発材料は再生可能な資源であり、生育環境への影響は少なく、石油製品の精製工程(高エネルギーを必要とする)は不必要である。また、C02の発生量が減り、地球温暖化に対する影響は少ない。従って、化石燃料起源の出発材料に依存しない、再生可能材料を起源とする出発材料を使用した合成プロセスが必要である。
【0004】
今日の消費者は植物起源の製品により多くの魅力を感じており、より安全で、肌により良いと評価されている。さらに、化粧品の市場のように競争の激しい分野では、有効性、きめ(texture)、感覚性(sensorielles)の性能を合せた化粧配合組成に対する消費者の要求に応えなければならない。しかし、これらの性質は出発材料と使用プロセスに依存する。
さらに、消費者の期待と要求に応える新しい化粧品を創るにはそれに適した出発材料の探索が必要である。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の各種条件を満たし、しかも、有効性、きめ細かさ、感覚性および生態学的かつ生物倫理的にも満足するポリマー粉末を提供することにある。
【0006】
現在化粧品で広く使用されている粉末は無機質起源のもの(タルク、シリカ、カオリン、セリサイト、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウム)、酸化物(T102、ZnO)、植物起源のもの(デンプン)、動物起源のもの(絹の粉末)、合成起源のもの(ポリ(メチル)メタクリレート、PMMA、ポリアミド12、PA 12)である。
【0007】
無機質起源の粉末は合成粉末より感覚性を劣っており、その手触りは多くの場合粗く、乾燥しており、肌を乾燥させ、炎症を生じることもある。
【0008】
石油起源のポリアミド12の粉末はその絹のような柔らかい感じのために化粧品の処方で特に認められていきる。このPA12粉末は化粧品(アイシャドー、ファンデーション、口紅、マスカラ、その他)、スキンケア処方(デークリーム、ナイトクリーム、ボディー乳液)、日焼け止め処方、その他で用いられている。これらの処方に必要な感覚性を得るために、この粉末の平均粒度は100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下でなければならない。
【0009】
化粧品処方用PA 12粉末の例としては下記の商用製品を挙げることができる:Orgasol 2002 EXD NAT COS(Arkema)、Nylonpoly WL 10(cration Couleurs)、Covabead N12-10(LCW)、5P500(東レ)、Ubesta(UBE)、Tegolon 12-20(Evonik)。
【0010】
製造プロセスが異なると、異なる粉末特性を有するポリアミド12の粉末が生産できる。例えば、直接合成方法ではラウリルラクタムまたはアミノドデカン酸の重合によってポリアミド12の粉末を生産する。製造プロセスの種類に応じて孔のない完全球形の粉末または多孔質回転楕円体の粉末になる。後者の粉末の例としてはArkema France社から商品名Orgasolで市販のPA 12を挙げることができる。
【0011】
さらに、溶解/沈殿法もある。この方法ではポリマーを溶剤に溶解し、次いで再沈殿させてポリマー粉末を生産する。この方法では回転楕円体の粉末が得られ、気孔率は種々変化する。
【0012】
例えば特許文献1(ドイツ特許第DE4421454号公報)に溶解/沈殿法でポリアミド12粉末を製造する方法が記載されている。この特許の目的は球形で粒度の幅が狭いPA 12粉末を得ることにある。この方法では沈殿可能な高分子量かつ粘度が十分に高いポリアミドを使用する必要がある。従って沈殿後に得られる粉末は厳しい条件下で粉砕して30μm以下の直径にする必要がある。
【0013】
しかし、上記方法の全てはPA 12の粉末を得るためには石油化学に由来するラウリルラクタムおよびアミノドデカン酸を重合する必要がある。さらに、20μm以下の粒度を有する粉末を得るためには、多量の溶剤を使用する必要があり、この用材も石油化学品から誘導される。
【0014】
ポリアミド12の粉末と違って、ポリアミド11(PA11)の粉末は植物起源の出発材料から作られる。
【0015】
植物材料は地球上の多くの場所で再生可能な状態で需要に応じて多量に耕作できるという利点がある。この再生可能な出発材料は天然の動物または植物の資源であり、これらは人間の時間で短い期間に再構成することができる。特に、これら資源は消費速度以上の速さで再生可能であることが必要である。
【0016】
PA11がArkema社で生産されており、PA11-ベースの製品が商品名Rilsan(登録商標)11またはRilsan(登録商標)Bで市販されている。これらの製品のベースとなる出発材料はひまし油(caster oil)で、ひま(ricin)の植物のひま豆から抽出される。これまで、PA11の粉末は衝撃粉砕機を使用してプレポリマーを磨砕して得ている。この衝撃粉砕機は機械的粉砕を実行するロータ−ステータ装置を有する。ローターはピンまたはハンマーを有し、生成物はステータによって形成される溝板に向かって放出される。この方法では生成物は衝撃、衝突または摩擦によって粉砕される。従って、得られる粉末の粒子は大なり小なり異なっている。
【0017】
しかし、従来の特徴、特に粒度(一般に100μm以上)および/または形状を有するPAll粉末は、化粧およびスキンケア用途(例えばデークリーム、ナイトクリームまたは日焼け止めクリーム)に適した感覚性を有する化粧品粉末として使用することができなかった。特に、現在使用している製造方法では工業プロセスで平均直径が30μm以下のPA11粉末の粒子を得ることができない。
【0018】
特許文献2(欧州特許第EP1847559号公報)および特許文献3(米国特許第US 6 127 513号明細書)には直接合成法または溶解-沈殿法によって粒度が100μm以下の多孔質または無孔の球状粉末のポリアミド粉末、特にPA11または12を製造する方法が記載されている。しかし、これらの粉末は溶剤を使用して得られ、従って、環境に対する影響は無視できない。
【0019】
従って、上記の直接合成法、溶解-沈殿法あるいはプレポリマー粉砕法で得られる従来のPA11または12の粉末は全ての上記の要求条件を満たしていない。
【0020】
再生可能な出発材料から得られるPA11の粉末にも、種々のポリアミド、ホモポリアミドまたはコポリアミドの粉末が存在する。例えば、完全に再生可能な出発材料、例えば植物油および脂肪酸から作ることができるモノマー10.10または10.36から成るポリアミドおよびコポリアミドを挙げることができる。
【0021】
他の選択肢では、ポリアミド粉末を「混成物」にする。すなわち、部分的に再生可能な出発材料から作るポリアミドをベースにすることができる。例えばセバシン酸(ClO)のみを再生可能な材料起源にしたホモポリアミド 6.10の場合である。また、コポリアミド11/l0.Tの場合にはテレフタル酸(T)だけが再生可能な材料起源ではない。
【0022】
Arkema社ではこれらのコポリアミド粉末は凍結粉砕法で作られる。しかし、現在使われている製造プロセスでは30μm以下の平均粒度を有する粒子を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】ドイツ特許第DE4421454号公報
【特許文献2】欧州特許第EP1847559号公報
【特許文献3】米国特許第US 6 127 513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、再生可能な材料を起源とし、しかも性能が高い新規なポリアミド粉末またはコポリアミド粉末と、エネルギーやコストのかかる面倒な化学物質のハンドリングや技術を必要とせず、汚染物がないその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、単純で、迅速、簡単に実行できる(工程数が少ない)超微粉末の PA粉末の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、所望の粉末粒度に応じて容易かつ迅速に調節可能で、粉末工業の既存の製造装置に容易に適応可能な、変更自在かつ自由度の高い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本出願人は高性能なバイオ資源由来のポリアミドの製造に専門的知識を有している。本発明者は、再生可能な出発材料から誘導される新しい超微粒子のポリアミド粉末に見出した。この超微粒子ポリアミド粉末は特に化粧品、医薬品および香水の分野で使用さるが、これらの分野に限定されるものではない。
本発明者はさらに、平均直径が30μm以下のPA粉末と、この粒子の製造方法とを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
より正確には、本発明の対象は、少なくとも部分的に再生可能な材料に由来するポリアミドPA(ホモポリアミドまたはコポリアミド)の粉末であり、本発明粒子は非球状(nonspherical)で、平均直径(体積平均直径)が30μm以下である。
【0027】
本発明ポリアミド粉末は下記分子の少なくとも1つを含むのが好ましい:11-アミノウンデカン酸、n-ヘプチル-1l-アミノウンデカン酸、セバシン酸、デカンジアミン、脂肪酸ジアシッド、脂肪酸ダイマーおよびこれらの混成物。
【0028】
本発明のポリアミドPA粉末はPA11、PA 10.10および以下のモノマーの少なくとも1つを含むコポリアミドの中から選択するのが好ましい:11、10.10、10.36、6.10、10.Tおよびこれらの混成物。
【0029】
上記ポリアミド(ホモポリアミドまたはコポリアミド)は完全に再生可能な材料に由来するのが好ましい。
本発明のポリアミド粉末はPA11であるのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末粒子の比表面積は1〜20m2/g、好ましくは2〜10m2/g、さらに好ましくは3〜6m2/gの範囲内にあるのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末粒子の体積平均直径は20μm以下、好ましくは5〜15μmの範囲内にあるのが好ましい。
【0030】
本発明のポリアミドPA粉末粒子のDIN ISO 787N規格に従って測定した粉末の吸収容量は50〜180gの油/100gのポリアミド粉末、好ましくは55〜110gの油/100gのポリアミド粉末、さらに好ましくは60〜90gの油/100gのポリアミド粉末の範囲内にあるのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末粒子の1トンの力で圧縮して圧密した時の破壊強度は100〜600ニュートン、好ましくは150〜500ニュートンの範囲内にあるのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末は14Cから成るのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末は再生可能な材料起源のカーボン量が少なくとも50%、好ましくは再生可能な材料起源のカーボンの量が少なくとも20%であるのが好ましい。
本発明のポリアミドPA粉末の14Cの質量は少なくとも0.2×10-10%、好ましくは0.6×10-10%であるのが好ましい。
【0031】
本発明の他の対象は、上記定義の粉末の化粧品、医薬品または香水での使用にある。上記粉末はコンパクト化粧処方(formulations cosmetiques comPActes)の成形剤またはマティフアイニイング剤(matifying agent)として有利に使用できる。
【0032】
本発明のさらに他の対象は上記定義の天然ポリアミド粉末の製造方法にある。本発明方法は固有粘度が0.5以下(アルケマ(Arkema)法でメタクレゾール中0.5 g/dl、25℃で測定)、好ましくは0.25〜0.5(アルケマ法でメタクレゾール中0.5 g/dl、25℃で測定)の範囲内にあるプレポリマー粉末を粉砕することから成る。
【0033】
本発明方法では、粉砕前にプレポリマー粉末にシリカ、好ましくはヒュームドシリカを添加することができる。
本発明方法は大気中すなわち外界温度で粉砕することができる。
粉砕は空気ジェットミルで行うことができる。
本発明方法は、粉砕前に数平均分子量が5000グラム/モル以下、好ましくは500〜3000グラム/モル(溶剤としてHFIPを使用したサイズ排除クロマトグラおよび屈折測定法で求めた数平均分子質量)の範囲内で、固有粘度が0.5以下(Arkema法でメタクレゾール中で0.5g/dl、25℃で測定)のPAのプレポリマーを製造する。
【0034】
本発明方法では、粉砕後に、粉砕されたプレポリマー粒子の粘度を粉末に要求される最終粘度へ再上昇させる。
この粘度の再上昇は乾燥機中で固相縮重合を行うことで有利に実行できる。本発明方法の各段階では溶剤を使用しない。
PA粉末の最終粒度は粉砕速度を調節することによって直接調節できる。
粉砕速度は粉砕機に組み込まれたセレクタで調節することができる。
【0035】
本発明のさらに他の対象は、顔料、充填剤、抗酸化剤および粉末結合剤の中から選択される添加剤を含む上記定義の化粧用粉末にある。
この化粧用粉末はシリカ粉体を含むことができる。この化粧用粉末はファンデーションまたはアイシャドーを構成することができる。
【0036】
本発明粉末は、コーテング、ペイント、腐蝕防止剤組成物、紙用添加剤、溶融による粉末凝集または照射による焼結での物品製作、電気泳動ゲル、多層複合材料、パッキング業界、おもちゃの業界、繊維産業、自動車産業および/または電子産業で有利には使用できる。
【0037】
本発明のポリアミド(ホモポリアミドまたはコポリアミド)の粉末粒子は(完全または部分的に)植物起源の再生可能な出発材料に由来し、従って、再生可能な材料起源の炭素から成る点に特徴がある。
「ポリアミド」という用語はラクタム、アミノ酸またはジアミンと二酸の縮合生成物を意味し、互いにアミド基で結合した単位で形成される任意のポリマーである。
【0038】
本発明の粉末組成物で完全に再生可能な材料起源のポリアミドとは下記を意味する:
(1)ラクタムまたはアミノ酸から得られる脂肪族ポリアミド(例えば11−アミノウンデカン酸の縮重合で得られるPA11);
(2)ジカルボン酸とジアミンとの縮合生成物(例えばPA 10.10、デカンジアミンとセバシン酸との縮合生成物、PA 10.36、デカンジアミンと脂肪酸ダイマーの縮合生成物);
(3)各種モノマー、例えば上記の各モノマーの重合で得られるコポリアミド、例えば下記のコポリアミド:PA11/10.10、PA11/10.36、PA 10.10/10.36、アミノ−11-ウンデカン酸/n-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸コポリアミド、再生可能な材料起源(少なくとも2つのモノマーから成る)のコポリアミド、特に下記文献に記載のコポリアミド
【特許文献4】フランス国特許出願第07.53319号公報
【0039】
コポリアミドの「モノマー」という用語は「反復単位」を意味する。すなわち、PAの反復単位の場合、ジアミンと二酸との組み合わせを意味する。これはジアミンと二酸との組み合わせ、すなわち、モノマーに対応するジアミン.二酸組み合せ(等モル量の)と考えることができる。これは二酸またはジアミンは個別には構造単位で、単独では重合するのには十分でないということで説明される。
【0040】
再生可能な材料起源のアミノ酸の例としては下記を挙げることができる:例えばひまし油から得られる11-アミノウンデカン酸、例えばひまし油から得られる12-アミノドデカン酸、例えばオレイン酸のメタセシスで得られるデシレン酸から得られる10-アミノデカン酸、例えばオレイン酸から得られる9-アミノノナン酸。
【0041】
再生可能な材料起源の二酸の例としては分子(Cx)の炭素数xに従って下記を挙げることができる:
C4:例えばグルコースから得られるコハク酸;
C6:例えばグルコースから得られるアジピン酸;
C7:例えばひまし油から得られるピメリン酸;
C9:例えばオレイン酸から得られる(オゾン分解)アゼライン酸;
ClO:例えばひまし油から得られるセバシン酸;
【0042】
C11:例えばひまし油から得られるウンデカンジオン酸;
C12:例えばドデカン酸=ラウリン酸(ひまし油:ココナッツ油、パーム油)のバイオ発酵で得られるドデカンジオン酸;
C13:例えばナタネ中のエルカ酸(オゾン分解)から得られるブラシル(brassylic)酸;
C14:例えばミリスチン酸(ひまし油、ココナッツ油、パーム油)のバイオ発酵で得られるテトラセバシン酸;
C16:例えばパルミチン酸(主としてにパーム油)のバイオ発酵で得られるヘキサデカンジオン酸;
C18:例えばステアリン酸(主として動物脂肪中に存在し、全ての植物油にわずかに存在する)のバイオ発酵で得られるオクタデカンジオン酸;
C20:例えばアラキジン酸(主として菜種油中)のバイオ発酵で得られるアイコサンジオン酸;
C22:例えばウンデシレン酸(ひまし油)のメタセシスで得られるドコサンジオン酸
C36:例えばクラフト法で変換された樹脂の副生成物から得られる脂肪酸ダイマー。
【0043】
再生可能な材料起源のジアミンの例としては分子(Cx)の炭素数xに従って下記を挙げることができる:
C4:コハク酸のアミノ化で得られるブタンジアミン;
C5:(リシンからの)ペンタメチレンジアミン;および
上記の再生可能な材料起源の二酸のアミノ化で得られるジアミンのためのその他。
【0044】
「部分的に再生可能な材料起源のポリアミド」すなわち一部のみが再生可能な材料に由来するポリアミド(「混成、mixte」ポリアミドという)には下記が含まれる:
(1)ジカルボン酸とジアミンの縮合生成物で、その一つまたは2つ(二酸またはジアミン)だけが再生可能な材料起源のもの。例えばPA 6.10の場合で、この場合、6.10モノマーでセバシン酸のみが再生可能な材料起源で、ヘキサメチレンジアミンは石油化学に由来する;
【0045】
(2)例えば上記の各種モノマー(再生可能または再生不可能または両者の混成物)の重合で得られるコポリアミド。これは例えばCoPA 6.6、10.10の場合で、この場合の「6.6」モノマーは再生不可能な材料起源であるが、「10.10」モノマーは再生可能な材料起源である。また、例えばPA11/10.Tの場合で、これは再生可能な材料起源「11」モノマーと部分的に再生可能な材料起源の混成(「10.T」モノマー以下から成る(デカンジアミンは再生可能な座起源であるが、テレフタル酸(T)はそうではない)。
【0046】
以下の本発明の好ましい実施例では、本発明を完全に再生可能な座起源であるPA11の粉末に関して一般的に説明するが、本発明がPA11の粉末に限定されないということは明らかである。すなわち、本発明は、粒子は非球形(nonspherical)で且つ体積平均直径は30μm以下である、完全または部分的(混成ポリアミドの場合)に再生可能な出発材料から得られるPA(ホモポリアミドまたはコポリアミド)のすべての粉末を含む。
【0047】
「再生可能な材料起源のポリアミド(ホモポリアミドまたはコポリアミド)粉末」とは、再生可能な材料起源のカーボンから成るポリアミドの粉末を意味する。
【0048】
再生可能な出発材料から成る材料は14Cを含む点で化石原料に由来する材料とは違っている。生物(動物または植物)から得られる全ての炭素のサンプルは3つの同位元素:12C(約98.892%)、13C(約1.108%)および14C(痕跡量:1.2×10-12%)の混合物である。生物組織の14C/12C比は大気のそれと同じである。環境中では14Cは2つの優れた形:無機の形すなわち二酸化炭素(C02)の形と、有機の形すなわち有機分子中に一体化された炭素の形で存在する。
【0049】
有機生物体中では炭素が環境と絶えず交換しているので、14C/12C比は新陳代謝によって一定に保たれる。大気中の14Cの比率は一定であるので、その比は生物中でも同じである。生きている間、生物は12Cと一緒に14Cも吸収し、14C/12C比の平均値は1.2×l0-12に等しい。
【0050】
12Cは安定しており、サンプル中の12C原子の数は経時敵に一定である。一方、14Cは放射性であり(生物中の炭素の1グラム当たり毎分、13.6個の14C同位元素が崩壊)、サンプル中のこの原子の数は下記の式に従って時間(t)の関数で減少する:
n=no exp(−at)
(ここで、noは材料(死ぬ運命にある生物、動物または植物)の14Cの数であり、nは時間tの開始時に残っている14C原子の数であり、aは壊変定数(または放射性定数)で、半減期に関連する)
【0051】
半減期(または半減時間)は生物種の放射性核または不安定粒子の数が壊変によって半分に減少するまでの期間であり、この半減期T1/2は壊変定数aに関連し、式aT1/2=In2で表される。14Cの半減期は5730年である。
【0052】
14Cの半減期(T1/2)から考えると、植物出発材料の抽出からポリマー製造まで、さらにはちその使用終了時まで、14Cの含有量は一定である。
【0053】
本出願人は、再生可能な材料起源のCの質量を炭素の全質量に対して少なくとも20%を含む場合、好ましくは再生可能な材料起源のCの質量を炭素の全質量に対して少なくとも50%を含む場合、そのポリマー(今の場合はポリアミド)は再生可能な出発材料に由来するとみなす。
【0054】
換言すれば、14Cを少なくとも0.2×10-10%含む場合、好ましくは0.6×10-10%含む場合に、そのポリマー(今の場合はポリアミド)は再生可能な出発材料に由来する。
【0055】
現在、サンプル中の14Cの含有量を測定する方法はとも2つある:
(1) 液体シンチレーションを用いたスペクトロメトリ:
この方法の基本は14Cの崩壊で生じた「β」粒子をカウントすることにある。質量(12Cの原子数)が分かっているサンプルに由来するβ線を一定時間測定する。この「放射能」は14C原子の数に比例し、それは求めることができる。サンプル中に存在する14Cはβ線を発し、それが液体発光物質(シンチレータ)と接触すると光子が出る。この光子は種々のエネルギー(O〜156Kev)を有し、14Cスペクトルを形成する。この方法にと2つの変形法があり、適当な吸収剤の溶液中で炭素化サンプルが予め出したC02を測定するか、炭素化サンプルを予めベンゼンに変換してベンゼンを測定する。
【0056】
(2) マススペクトル分析:
サンプルをグラファイトまたはCO2ガスにし、質量分析機で分析する。この方法では14Cイオンを12Cイオンから分離するための加速器と質量分析装置とを使用して、2つの同位元素の比を求める。
【0057】
材料中の14Cの量を測定するこれらの方法はASTM規格D686.6(特にD686.6−06)およびASTM規格D7026(特に7026−04)に記載されている。これらの方法でサンプル中の14C/12C比を測定し、再生可能な材料が100%の参照サンプルの14C/12C比と比較することで、各サンプル中の再生可能な材料起源のCの相対百分比を求めることができる。
【0058】
本発明のポリアミドの場合に好ましくは使用される測定方法はASTM規格D686.6−06(「加速付き質量分析」)に記載のマススペクトル分析である。
【0059】
本発明のポリアミド、例えばPA11の粉末粒子は不規則な非球状(nonspherical)形状を有する。この粒子は鋭いエッジをも有さず、触覚的にすべり効果、ころがり効果を有する。
【0060】
本発明のポリアミド粒子の平均直径(体積平均直径)は30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm〜15μmの範囲、さらに好ましくはほぼ10μmであるのが好ましい。
【0061】
本発明の粉末粒子の比表面積は1〜20m2/g、好ましくは2〜10m2/g、さらに好ましくは3〜6m2/gの範囲内にある。この粒子の吸収能(DIN ISO規格787Nに従って測定)は55〜110gの油/100gのPA粉末の範囲内、好ましくは60〜90gの油/100gのPA粉末の範囲内である。
【0062】
本発明粉末は皮脂腺分泌物 (sebum) 制御性、さらにはマスティファイイング (matifying、マスチック化)効果を有する。従って、本発明粉末は化粧および/またはヒトのスキンケア、特に、顔、首およびボディー用化粧品、医薬品または香水製品(例えばボディーまたは足用香料粉末)に極めて完全に適用することができる。
【0063】
本発明粉末は従来のポリアミド粉末と比較して、らの形状、粒度およびの比表面積が良く、感覚が改良され、さらには圧密性(compactage)および吸油性が改良される。
【0064】
直径がほぼ10μmのPA12(再生不可能な材料起源)およびPA11(再生可能な材料起源)の粉末を自由な形式で10人の人から成る訓練された官能パネリストが査定した。下記に示した評価基準を使用して、1から10までのスケールで査定した。このスケールでは「1」はのび性(etalement)、被覆性(pouvoir couvrant)、柔軟性(veloute)が劣ることを表し、「10」はのび性、被覆性、滑らかさが優れていることを表す。
【0065】
のび(etalement)が容易
定義: 粉末を広げるのが容易であることで特徴付けられる。
プロトコル: 粉末をへらの先端に採り、それを小箱に入れ、薄層に広げる。
価値判断:粉末を広げる(すべる感覚)がどれくらい簡単かを記録する。
【0066】
被覆能(pouvoir couvrant)
定義:皮膚を白く均一にカバーする粉末特性を特徴付ける。
プロトコル:粉末をへらの先端に採り、小箱に入れ、手で広げる(手で粉末を前方に広げる運動)。
価値判断:のびの均一性とカバーの均一性を視覚的に評価する。
【0067】
柔軟性(veloute)
定義:一定期間、最初のすべる感覚(ベルベット感覚、クリーム性)が変らないことで特徴付けられる。
プロトコル:不,待つを指の間に採り、圧力を加えずに小さな円運動を行う。
価値判断:一定期間での柔らかさを人の感覚で評価する。
【0068】
【表1】

【0069】
上記の官能性分析結果は、本発明方法で得たポリアミド11粉末は特許文献1(ドイツ特許第DE4421454号公報)に記載の方法に従って粉砕して得たポリアミド12粉末に比較して、柔軟性(滑らかさ)が同じレベルにあることを示している。ポリアミド11およびポリアミド12は類似した感覚性状を示している。
【0070】
さらに、粉砕したポリアミド11の粉末はポリアミド12の粉末よりのび性に優れているが、それに関連して被覆性が劣り、自然な仕上げになる。この特徴は粒度分布に関係し、本発明方法では粉砕条件の関数で簡単に調節することができる。
【0071】
さらに、本発明のPA粉末は、その粒子の形状が非球状であるため、従来方法で得られる他のポリアミド粉末(形状が球形)と比較して、圧密性が改良され、その結果、圧密化粧品の構成粉末、特にファンデーションまたはアイシャドーで使用することができる。
【0072】
従って、粉末を1トンの圧力で一方向に圧密したときの破壊強度は100〜600ニュートン、好ましくは150〜500ニュートンの範囲である。
この圧縮能は下記の方法で評価する:
1.圧密化
圧密化は0.5±0.002gの各粉末を用いて直径が13mmのディスクで実行する。圧縮は3つの相で実行する:
1回目の圧縮は1トンで行う:この最初の圧縮相では圧密体(コンパクト、compact)に対する圧力は極めて急速に低下する(空気の減少、粉末の最適積配置化)。5秒後に圧力を開放する。
第2回目の圧縮は1トンで行う:粉末が圧密され、圧力はほとんど低下しない。5秒後に圧力を開放する。
第3回目の圧縮では粉末に1トンの圧力を5秒間加える。
上記の3回の圧縮後、粉末は直径が13mm、厚さが4.5mmの形の錠剤に圧密される。
【0073】
2.圧密体の凝集力の測定
得られた各圧密体は医薬で錠剤を特徴付けるために極めて一般的に使用されているの機械的テスト(直径方向の破断テストまたは「脆化」テスト)でテストした。このテストは錠剤が破断するまで圧縮方向に直角に(すなわち圧密体の耳に)力を加える。下記の[表2]は各種ポリアミド粉末の破壊強度の結果を示す。
【0074】
【表2】

【0075】
[表2]は球形のPA12の粉末は圧密化できないことを示している。球形のPA11の粉末でも同じである。それに対して本発明の新しい方法で得られたPA11粉末はきわめて良く圧密化されている。すなわち、脂肪族化合物の添加無しで、機械的に圧縮するだけで錠剤が得られる。得られた錠剤の機械強度は、圧縮特性をよくするために開発した多孔質回転楕円体のポリアミド12粉末で得られた機械強度にわずかに劣るだけである。従って、本発明のPA11粉末は圧密剤(agent compactage)、特に圧密粉末化粧処方に適している。
【0076】
本発明のPA11の粉末はさらに、有利なエマルション特性も有している。すなわち、本発明のPA11の粉末は連続脂肪質相から成るエマルションのベトベトした粘着性が減少し、皮膚上で粉状艶消し仕上げが得られ、本発明粉末を含む処方の使用を完全に楽なものに変える。
【0077】
事実、連続脂肪質相から成る化粧組成物は多くの場合、塗布に問題があり、消費者の使用が制限される。皮膚表面上での連続したベトついた膜は油性の粘着した感覚を与え、今日の消費者には受入れられない。さらに、ギラついた油性の概観はクリームの化粧/美容特性を損なう。この粘着性のために、デークリームまたはナイトクリームを塗布した後のメイキャップでは皮膚上で化粧品をのばすのが難しくなる。従って、化粧がうまくいかず、不均一になる。さらに、時間の経過とともに化粧の耐久性が悪くなり、化粧の色が変化し、失なわれる。
【0078】
連続脂肪質相から成る上記組成物の油っこく、べたついた粘着性の外概を減らすためにシリコンオイルのような揮発性オイルを加えることは公知であるが、それらは連続脂肪質相と一緒に保護をする役割はなく、肌の湿潤性を保持することもない。さらに、肌に湿潤性およびみずみずしさを与えるために上記組成物に一般に加えるポリオールは、上記組成物の化粧オイルに加えて、肌には望ましくない粘着効果を肌に常に与える。
【0079】
従って、上記のスキンを保護する役目をすると同時に、感覚上および美容上の上記課題に応えることができる化粧組成物を作ることが重要である。上記の技術的課題は本発明の細かな粉末を含む水/油エマルションで解決できる。特に、化粧組成物のオイルおよび/またはポリオールに起因するベト付きと粘着性を大幅に減らすことができる。この効果はオイル種類、揮発性タイプか否か、無機、動物、植物または合成の起源か、炭化水素、シリコーンまたはフルオロオイルかに関わりなく観測される。
【0080】
例えば、水/シリコーン・エマルションおよびグリセリンを含む下記処方(以下、「組成物1」という)を挙げることができる:
【表3】

【0081】
連続脂肪質相から成るエマルションに本発明PA粉末を添加したときの効果を各種組成物の官能解析によって測定した。各組成物の官能性プロフィルを5人の専門家パネラーが下記に従って研究した:
(1) 製品の塗布中(油っこさ、浸透の速さ);
(2) 塗布直後(肌のかがやき、肌の柔らかさ、肌のべたつき)。
【0082】
各組成物は一つのシリーズを成す全てのテストを比較して盲検で分析した。種々の評価基準(クライテリア)は0から8までのスケールで評価した。値0はその判定基準(例えば、脂っこさがないという感覚)が該当しないことを表し、値8はその判定基準(例えば、脂っこさが非常に高いという感覚)が極めて顕著な傾向にあることを表す。
【0083】
[表4]は本発明粉末を含む連続脂肪質相から成るエマルション(組成物1)を塗布した場合と、本発明粉末を含んでいない同じエマルション(対照)を塗布した場合の挙動を比較した結果を示している。
【0084】
組成物1は3.5%のポリアミド粉末(実施例7に対応)を含み、粉砕後に粘度を上昇させて、溶液粘度(アルケマ法で0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定)を0.8にしたものである。
【0085】
【表4】

【0086】
本発明のPA11粉末の固有の特徴によってそれを効果的な量だけ含む組成物は塗布したときに柔らかな感じがし、肌に塗布した時に(例えば2〜3回の操作だけで)非常に急速に吸収され、肌を艶消し仕上げすることができる。従来の粉末のマスチック(matified)粉末と比較して、PA11粉末はより柔らかさ(ベルベット効果)を与え、特に気がつかない自然な仕上がりになる。消費者はより自然な化粧を求める傾向にある。従って、本発明の非球形粉末は化粧品、特に人の化粧品に適している。本発明粉末を用いることで塗布の仕方および肌の仕上げが人間らしいものにできる。
【0087】
本発明粉末は化粧の分野(女性用および/または男性用)で使用できるが、その特性、特に粒度、圧密性、再生可能な材料起源であることが要求される他の任意の分野で使用できる。
【0088】
その例として、本発明粉末は特にコーテング(錆止め、ペイント、その他)に適している。本発明粉末はさらに、紙用添加剤、電気泳動、溶融または焼結による粉末の凝集法、例えばレーザー光線(レーザー焼結)による物品の製造で使用できる。本発明粉末はさらに、複合材料、特に、複数の層から成る材料の層の間のスペーサとして使用できる。さらに、パッケージングの分野、おもちゃの分野、繊維工業、自動車工業および電子工業での使用もできる。
【0089】
本発明の他の対象は、上記定義のポリアミド粉末の製造方法にある。本発明法方法の特徴は固有粘度が低いプレポリマーの粉末を粉砕する点にある。
【0090】
以下では本発明の製造方法を本発明の好ましい(しかし、それに限定されるものではない)実施例であるポリアミド11の粉末の製造方法で説明するが、その同じ方法を他のタイプのホモポリアミドまたはコポリアミドの製造の場合にも適用できるということは言うまでもない。
【0091】
ポリアミド11は公知のように11−アミノウンデカン酸またはラクタム11の縮重合で得られる。本発明方法の一つの実施例で使用されるプレポリマーは数平均分子量が小さくかつ粘度が低いポリアミド11である。
【0092】
同様に、その他のコポリアミドの粉末を製造する場合には、本発明方法で数平均分子量が小さくかつ粘度が低いCoPAのプレポリマーを使用する。このCoPAプレポリマーは少なくとも2つのモノマーから成り、その一つが主成分(すなわちCoPAの全重量に対する重量百分率が50%以上)であるのが好ましい。この主成分のモノマーはCoPAの融点があまりに低くないもの、例えば170℃程度のもので、本発明の粉砕を凍結粉砕条件下で実行する必要がないものを選択するのが有利である。CoPAの主成分モノマーは11-アミノウンデカン酸であるのが好ましい。
【0093】
粘度が低いプレポリマーは粉砕が簡単にでき、従来のポリアミドの粉砕方法より厳しくない条件で粉砕できるという利点がある。
【0094】
本発明のプレポリマー(PA11、その他)はGCで測定した数平均分子量(Mn)が5000g/モル以下、好ましくは500〜3000グラム/モルの範囲内にある。
【0095】
「粘度が低い」とはプレポリマーの固有粘度が0.5以下(メタクレゾール中、0.5g/dlで、25℃で測定)であることを意味する。
【0096】
プレポリマーの固有粘度は0.25〜0.50の範囲、好ましくは0.30〜0.45の範囲内にあるのが有利である。このポリアミドの固有粘度は意図する用途に応じて必要に応じてさらに下げることができる。すなわち、本発明方法では、出発材料のプレポリマーの粘度が低くなる程、粉砕がより簡単になり、得られるPA粉末の平均直径がより小さくなる。本発明方法は柔軟性または変更可能性に優れているので、目的とする粉末の粒度に応じて出発材料のプレポリマーの粘度を調節すれば十分である。
【0097】
粘度の低いプレポリマーを得るには、例えばオートクレーブ中に30〜50%の水と一緒に11-アミノウンデカン酸を、必要に応じてリン酸等の触媒を添加して入れる。一般に、本発明方法では触媒の添加は必要でなく、リン触媒の添加のない系から出発することができる。上記混合物を10バールの圧力下で約190℃の温度まで加熱する。水を留出し、反応装置を脱気する。除去した蒸気を再凝縮して秤量する。除去した蒸気がプレポリマーの所望粘度に対応する一定量に達するまで、除去した蒸気の量をモニターする。所定粘度を有するプレポリマーを抜出す。排出弁の所ではプレポリマーは溶融しており、それを水蒸気効果下に冷却し、再び固体にする。固化したプレポリマーを造粒機または粉砕機に通して、3mm以下の平均直径を有する粗い粉末にする。
【0098】
この段階で、得られたプレポリマーをコンパウンディングして、例えば顔料、抗酸化剤、粉末結合剤のような全ての添加剤を加えるのが有利である。この粉末から全ての色の製品を製造できる。このコンパウンディングの本質はPAと添加剤を溶融相(例えば加熱したスリーブ中で2本のスクリューで)混合することにある。次いで、混合物を冷水が循環する2本の鋼ローラやカンンダー装置を用いて冷却する。次に、プレポリマーを顆粒にし、粗粉砕した後に、粉砕機へ供給することがきる。粉砕機へのPAの供給は2重弁式システムを用いて連続的に行うことができる。
【0099】
本発明の粉砕は大気中での粉砕すなわち外界温度(約25℃)で実行される。この大気中での粉砕によって、粉末粒子の表面に鋭いエッジが形成されるのを防ぐことができ、これが感覚、特に、得られた粉末の肌触りに対して影響する。
【0100】
さらに、本発明方法は、溶媒媒体への溶解/沈殿法に比べて、環境への影響が非常に少ない。すなわち、溶解/沈殿法では一般に化石燃料から得られる大量の溶剤を加熱し、冷却する必要がある。この溶剤は再循環回路が何度か再利用できたとしても、最終的には除去しなければならない。
【0101】
本発明方法で使用する粉砕装置は粉末の製造に適した任意のタイプにすることができる。本発明の好ましい実施例では粉砕は、一般に8.5バール(8.5×105Pa)の圧縮空気が供給される互いに対向する2つのノズルを有する対向空気ジェットミル(broyeur a jets d'air opposes)で実行される。使用する空気はフィルターを通して乾燥し、汚染菌を入れないようにするのが好ましい。ノズルに空気の代わりに他の任意の適切な気体を供給することができる。プレポリマーはノズルから出る空気で直接輸送することができる。プレポリマー粒子は対向空気ジェットの作用下で互いに衝突し、粒度を下げ、鋭いエッジのない不規則な形の最終形状になる。
【0102】
粉砕装置の大きさや使用する気体の入口速度は流動性が良く、所望粒度が得られるように調節する。例えば、粉砕で消費される動力は粉末1kg当たり約1〜2kW.hである。
この種の粉砕装置はポリマー業界で広く一般的に使用されている。対向空気ジェットミルは粒度分布の幅が狭い細かな粉末の製造に特に適している。機械的粉砕機の相対速度(インパクトミルで140m/s以下、逆回転粉砕機で250m/s以下)に対して、本発明方法で使用する対向空気ジェットミルでは相対粉砕速度をはるかに高くすることができ、400m/s以上にすることができる。
【0103】
対向空気ジェットミルは、所望粒度を得るために粉砕速度を直接調節することができる選別機またはセレクタを一体で有するのが有利である。これに対して、一般では追加の装置を直列に加える必要がある。セレクタは本発明で選択した規格に合わない直径の粒子を粉砕チャンバのフィード系へ戻し、本発明で設定した粒度を有する粒子を空気フィルターで回収する。例えば、この空気フィルターの底部のバッグで粉末を直接回収することができる。本発明方法に従った調節閾値は所望粒度を得るための粉砕速度と、粉砕チャンバ中に一定量の生成物を維持するための供給速度である。粉砕速度はセレクタの所で直接調節でき、本発明方法中に粉末の粒度を変える遷移は極めて迅速に実行できる。この対向空気ジェットミルを使用することで本発明方法の生産性を改善することができる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の好ましい実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
書き実施例で使用した粉砕機は対向空気ジェットミル(2ノズル)で、その空気吐出量は実質的に1250m3/hである(モデル:MultiNO 6240、メーカ:Schuttgutveredelung NOLL GmbH)。
【0105】
実施例1
D50=8μmの粉末を製造する。このD50は体積平均寸法、すなわち、被検査粒子群を正確に2に分ける粒度値を表す。
当業者は2、3分で8μmのD50を得るためのセレクタ速度をセットできる。15kgの粉末のバッグ(袋)を4つ(すなわち全体で60kg)を生産速度60kg/hで作った(従って、消費されたエネルギーは粉末1kg当たりの2kW.h)。セレクタ速度は1900回転数/分である。生産中、D50は極めて安定している:
バッグNo.1: D50=8.06 μm
バッグNo.2: D50=8.07 μm
バッグNo.3: D50=8.11 μm
バッグNo.4: D50=8.10 μm
【0106】
実施例2
D50=12μmの粉末を製造した。
セレクタ速度1150回転数/分で生産速度は100kg/h。15kgの4つのバックすなわち60kgを製造した。
【0107】
実施例3
D50=10μmの粉末を製造した。
セレクタ速度1450回転数/分で生産速度は150kg/h。
D50値は安定している:
バッグNo.1: D50= 10.33μm
バッグNo.2: D50= 10.1 μm
バッグNo.3: D50= 10.08μm
バッグNo.4: D50= 10.33μm

【0108】
さらに、空気ジェットミルは粉砕具がないので、そのクリーニングおよび維持は容易であり、従来の器具の磨耗の問題はなく、粉末汚染の危険もない。空気ジェットミルには可動金属部品を用いた粉砕機と比較して、金属粒子による粉末の汚染の危険を避けることができる。本発明方法のこの実施例を用いることで本発明ポリアミド粉末の純度と、天然性および再生可能性品質は保存される。
本発明で使用する粉砕装置がこの実施例に限定れるものではなく、発明で定義の粉末を得ることが可能であれば、他の任意の装置、例えばボールミル、ロッドミル、ローラーミル、その他を使用することもできる。
【0109】
本発明方法の粉砕装置では30μm以下、好ましくは20μm以下の平均直径を有する粉末粒子を得ることができる。本発明方法では平均直径は5μm以下にすることができる。本発明方法で得られる粉末粒子の平均直径は所望する用途に応じて選択される。例えば、化粧品用の場合の粉末粒子の平均直径は5〜15μmの範囲が有利であり、好ましくはほぼ10μmにすることができる。
【0110】
本発明方法の一実施例では、超微粒子グレードの「加工性」を改善するために、粉砕前にプレポリマー粉末にシリカ(好ましくはヒュームドシリカ)をさらに加えることができる。このシリカの量は全重量(PA−シリカ)に対して1質量%である。その例としては会社DEGUSSA Evonik社からAEROSIL(例えばAerosil R972)の名称で市販の製品や、CABOT社からCAB-O-SILの名称で市販の製品を挙げることができる。
【0111】
本発明の好ましい実施例では、粉砕後に得られる粉末を乾燥機中で固相縮合重合させる。この段階(「乾燥」段階ともよばれる)は粉砕されたプレポリマー粒子の粘度を上昇させる役目をする。この粘度上昇段階では粉末を例えば回転乾燥機中で約20mbarの絶対圧力の減圧下(すなわち2×103PA)で粉末の所望最終粘度に従った時間、加熱(約150℃の温度)する。本発明では粘度を上昇させる他の適切な方法を当然使用でき、例えば窒素パージ下の加熱、回転二重円錐乾燥、攪拌二重円錐乾燥機を用いた乾燥等を使用できる。
【0112】
本発明方法の好ましい実施例では、乾燥時に生じた集塊、その他の大径粒子を除去するために分別(篩い分け)を行う。こうして得られたPA粉末(ホモポリアミドまたはコポリアミド粉末)は例えばバッグ(袋)に包装することができる。
本発明はさらに、再生可能な材料起源の高性能の粉末(特に化粧品用粉末)を製造する方法を提供する。この本発明方法では初期製品(プレポリマー)には化学的な変換はほとんど行わず、主として機械的一次変換、例えば粉砕または機械的濾過を行う。本発明方法は溶解と沈殿の2つの段階を避けることができ、溶剤の使用も必要としない。従って、環境にやさしい。さらに、本発明の粉末製造方法は残渣がわずかで、その残渣も容易に再循環できる。
【0113】
本発明の粉末はさらに、天然物(果実粉末、イネ粉末、バンブー粉末、その他)に比較して、合成材料の利点を有する。すなわち、特性(特に不純物)を合成条件によって完全に制御できる。本発明方法は毒性またはアレルギー性化合物による汚染の危険を制限できる。従って、本発明方法で得られた粉末は細菌学または菌類学的な見解から汚染がなく、後で汚染除去段階や保存剤を添加する必要がない。
【0114】
実施例4〜7は本発明方法の別の実施例を示し(これら実施例に限定されるものではない)、レーザー回折法を用いたCilas 920の粒径分析計で得られる粉末の粒度特徴を示す。これら実施例で用いた粉砕機は対向空気ジェットミル(2ノズル)である。この粉砕機は小型のパイロット粉砕機である(モデル:MultiNO 1290、メーカ:SchuttgutveredelungNOLL GMBH)(空気速度はほぼ100m3/h)。
【0115】
実施例4
相対粘度(Arkema法で0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定)が0.45であるチップの形をしたポリアミド11(製品A)のプレポリマーを鋼ロッド式二重円錐粉砕機にバッチで粉砕した。数時間回転運転した後、粉末を取り出した。Cilas 920粒径分析計で測定した粒度は以下の通り:
D50=15.6μm、D10=7.6μm、D90=26.2 μm
【0116】
実施例5
上記の製品A(実施例4参照)を粉砕/選別機を用いて予め90μm近傍の平均直径に予備粉砕した後、Aerosil 972(DEGUSSA AG社)を加えた。添加量はPA11+シリカの全重量に対して質量比で1%である。この粉末を対向空気ジェットミルに供給した。圧縮空気は有効5バールで吐出速度100Nm3/hであり、分別機の回転速度は9000回転数/分である。Cilas 920の粒径分析計で測定した粉末粒度は以下の通り:
D50=10μm、D10= 1.6μm、D90= 19.6μm
【0117】
実施例6
相対粘度(Arkema法で0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定)が0.3であるチップの形をしたポリアミド11(製品B)のプレポリマーに1重量%のAerosil 972を加えた。この粉末を対向空気ジェットミルに供給した。圧縮空気は有効5バールで吐出速度100Nm3/hであり、分別機の回転速度は9000回転数/分である。Cilas 920の粒径分析計で測定した粉末粒度は以下の通り:
D50=5.1μm、D10=1.2μm、D90=11.5μm
【0118】
実施例7
相対粘度(Arkema法で0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定)が0.3であるチップの形をしたポリアミド11(製品B)のプレポリマーに1重量%のAerosil 972を加えた。この粉末を対向空気ジェットミルに供給した。有効5バールに圧縮した空気の吐出速度は100Nm3/hで、分別機の回転速度は6000回転数/分である。Cilas 920の粒径分析計で測定した粉末粒度は以下の通り:
D50=8.9μm、D10=1.5μm、D90=18.4μm
【0119】
本発明の超微細なポリアミド粉末の製造方法を用いることで石油の消費量を減らすことができ、エネルギー使用量を減らすことができ、栽培植物から得た材料を使用することが可能になる、さらに、生産コストが低下し、エネルギーバランスを良くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が非球状で、不規則で、鋭いエッジがなく、体積平均直径が20μm以下であることを特徴とする、少なくとも部分的に再生可能な材料に由来するポリアミドPA(ホモコポリアミドまたはコポリアミド)の粉末、
【請求項2】
11-アミノウンデカン酸、n-ヘプチルアミノ-11-ウンデカン酸、セバシン酸、デカンジアミン、脂肪酸ジアシッド、脂肪酸のダイマーおよびこれの混成物の分子の少なくとも1つから成る請求項1に記載のポリアミド粉末。
【請求項3】
PAがPA11およびPA 10.10から選択され、コポリアミドが11、10.10、10.36.6.10、1O.Tおよびこれらの混成物から成るモノマーの少なくとも1つを含む請求項1または2に記載のポリアミド粉末。
【請求項4】
ポリアミド(ホモポリアミドまたはコポリアミド)が完全に再生可能な材料に由来する請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項5】
粒子の比表面積が1〜20m2/g、好ましくは2〜10m2/g、さらに好ましくは3〜6m2/gの範囲内にある請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド粉末
【請求項6】
粒子が5〜15μmに体積平均直径を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項7】
DIN ISO規格787Nに従って測定した吸収容積が100gのポリアミド粉末に対して55〜110gの油、好ましくは100gのポリアミド粉末に対して60〜90gの油の範囲内にある請求項1〜6ののいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項8】
1トンの圧力で圧縮して圧密化した時の粉末の破壊強度が100〜600ニュートン、好ましくは150〜500ニュートンの範囲内にある請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項9】
14Cから成る請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項10】
再生可能な材料起源のカーボンの量を少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%含む請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。、。
【請求項11】
14Cの質量が少なくとも0.2×10-10%、好ましくは少なくとも0.6×10-10%である請求項1〜10つのいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアミド粉末の化粧品、医薬品または香水での使用。
【請求項13】
ポリアミド粉末の圧密化粧品処方での圧密剤としての請求項12に記載の使用。
【請求項14】
ポリアミド粉末のマティフアイニイング剤(matifying agent)としての請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
アルケマ(Arkema)法に従って0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定した固有粘度が0.5以下であるプレポリマーの粉末を外界温度で粉砕し、この粉砕を対向空気ジェットミルで実行することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアミド粉末の製造方法。
【請求項16】
上記プレポリマーのアルケマ(Arkema)法に従って0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定した固有粘度が0.25〜0.5の範囲内にある請求項16に記載の方法。
【請求項17】
粉砕の前にヒュームドシリカをプレポリマー粉末に加える請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
数平均値分子量が5000 g/モル以下、好ましくは500〜3000g/モルの範囲内にあり、アルケマ(Arkema)法に従って0.5g/dlのメタクレゾール中で25℃で測定した固有粘度が0.5以下であるのPAのプレポリマーを粉砕前に製造する請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
粉砕段階の後に、粉末に要求される最終粘度まで粉砕されたプレポリマー粒子の粘度を上昇させる請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記の粘度の上昇を乾燥機中での固相縮合重合で行う請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
各段階が溶剤を全く含まない請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
PA粉末の最終粒度が粉砕速度を調節することによって直接調節する請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
粉砕機と一体化されたセレクタによって粉砕速度を調節する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
顔料、充填剤、抗酸化剤および粉末結合剤の中から選択される添加剤を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアミドの化粧粉末。
【請求項25】
シリカ粉体を含む請求項24に記載のポリアミドの化粧粉末。
【請求項26】
ファンデーションまたはアイシャドーを構成する請求項24または25に記載のポリアミドの化粧粉末。
【請求項27】
コーテング、ペイント、腐蝕防止剤組成物、紙用添加剤、電磁波照射によって粉末を溶融または焼結する方法、電気泳動ゲル、多層複合材料、包装、おもちゃ、テキスタイル、自動車および/または電子工業での請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアミド粉末の使用。

【公表番号】特表2011−524425(P2011−524425A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546379(P2010−546379)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050160
【国際公開番号】WO2009/101320
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】