説明

再生装置および再生方法

【課題】動画ファイルを通常再生とは異なる再生速度で再生したとき、現在の再生速度に合わせて正しく再生残視聴時間を表示する再生装置を提供する。
【解決手段】映像音声再生時刻取得部51は、映像デコーダ21の映像符号、および音声デコーダ31の音声符号より再生時刻を取得する。再生残視聴時間計算部52は、再生速度指定部32より再生速度、動画ファイルより録画時間を取得する。再生残視聴時間計算部52は、再生速度、録画時間、再生時刻にもとづき再生残視聴時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画を再生する再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、受信したテレビ番組を動画ファイルとして記録し、再生を行う再生装置、記録媒体に格納された動画ファイルを読み出して再生を行う再生装置などが知られている。これらの再生装置のうち、再生する動画ファイルの視聴時間を計算し、現在の再生位置からあと何時間何分で動画ファイルの視聴が完了するかを示した再生残視聴時間を表示する特許文献1のような技術が知られている。
【0003】
一方、動画ファイルを再生するにあたり、通常の再生速度よりも速く、または遅く再生する特殊再生の技術も知られている。特許文献2には、音声データを変換し、ユーザーの指定した再生速度にあわせて音声を出力することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000‐030420公報
【特許文献2】特開平8−137491公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の再生残視聴時間の表示は、通常再生において動画ファイルを視聴することを想定して計算されている。したがって、特殊再生にて動画を視聴するとき、あと何時間で視聴が完了するのか、正しく表示されないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の再生装置は、指定された再生速度を受信する再生速度指定部と、前記指定された再生速度に基づき動画を出力する出力部と、前記指定された再生速度に基づき再生残視聴時間を計算し、前記再生残視聴時間を表示部に表示する計算部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記再生残視聴時間計算部は、前記指定された再生速度、動画ファイルの録画時間、再生中の動画データの再生時刻を取得し、前記録画時間から前記再生時刻を減じ、その結果を前記再生速度で除した値を再生残視聴時間としてもよい。
【0008】
また、動画ファイルはMPEG形式で記録され、前記再生時刻は前記動画ファイルに含まれるPTSであってもよい。
【0009】
また、前記再生時刻は、動画ファイルのファイルサイズ、および再生位置に基づいて計算されてもよい。
【0010】
また、本発明の再生方法は、指定された再生速度を受信する工程と、前記指定された再生速度に基づき動画を出力する工程と、前記指定された再生速度に基づき再生残視聴時間を計算し、前記再生残視聴時間を表示部に表示する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、動画ファイルを通常再生とは異なる再生速度で再生したときであっても、現在の再生速度に合わせて正しく再生残視聴時間を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態を構成する再生装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】動画ファイルの管理情報の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態の再生装置1の動作を示す図である。
【図4】第1の実施形態の再生残視聴時間算出の動作を示す図である。
【図5】第1の実施形態の動画ファイルと再生時刻Tnとの関係を示す模式図である。
【図6】第3の実施形態を構成する再生装置の機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態では、MPEG規格で多重化されて圧縮符合化された動画ファイルを再生する再生装置を考える。図1は、本実施形態を構成する再生装置の機能ブロックを示す図である。再生装置1は、映像音声分離処理部11、映像デコーダ21、同期手段22、映像合成処理部23、映像出力部24、音声デコーダ31、音声出力部32、再生速度指定部41、音声時間軸変換倍率指定部42、音声時間軸変換処理部43、映像音声再生時刻取得部51、再生算視聴時間計算部52を有する。
【0015】
不図示のメモリに格納された動画ファイルより、多重化符号が読み出されて、映像音声分離処理部11に送信される。映像音声分離処理部11は、多重化符号を映像符号と音声符号に分離し、それぞれ映像デコーダ21と音声デコーダ31に出力する。
【0016】
映像デコーダ21は映像符号を復号し、映像データとする。同期手段22は、映像データを音声データに同期させて出力する。
【0017】
映像合成処理部23は、映像データ、及び後述する再生残視聴時間表示データを取得し、これらを合成する。映像出力部24は、合成された映像データをモニター等の不図示の表示装置に表示する。
【0018】
音声デコーダ31は音声符号を復号し、音声データとする。音声出力部32は、音声時間軸変換処理部32より音声データを取得し、不図示のスピーカ等に出力する。
【0019】
ユーザーは、不図示のユーザーインターフェースを介して再生速度を指定することができる。再生速度とは、通常再生を基準(1.0倍)とした再生の早さの割合であり、通常再生よりも早く再生するときは1.0より大きく、通常再生よりも遅く再生するときには1.0未満の値になる。例えば0.5倍以上2.0倍以下の値をユーザーは指定することができる。また、再生速度について、0.5倍から2.0倍の間の値を無段階に指定できるようにしてもよいし、0.5倍、0.7倍、1.0倍、1.2倍、1.5倍、1.7倍、2.0倍のように段階的に指定できるようにしてもよい。
【0020】
再生速度指定部41は、ユーザーが指定した再生速度を取得し、音声時間軸変換倍率指定部42、及び再生残視聴時間計算部52に送信する。音声時間軸変換倍率指定部42は、後述する方法にて再生速度に基づき音声時間軸変換倍率を算出する。音声時間軸変換処理部43は、算出された音声時間軸変換倍率に基づき音声データを変換する。
【0021】
映像音声再生時刻取得部51は、映像デコーダ21の映像符号、および音声デコーダ31の音声符号より再生時刻を取得する。
【0022】
再生残視聴時間計算部52は、再生速度指定部41より再生速度、および映像音声再生時刻取得部51より再生時刻を取得する。また、再生残視聴時間計算部52は、不図示のメモリに格納された動画ファイルより、動画ファイル管理情報を参照して録画時間を取得する。動画ファイル管理情報とは、予め動画ファイルに格納されている情報であり、図2に示すように、例えば、動画ファイルのタイトル、作成日時、ファイルサイズ、録画時間などである。ここで、録画時間とは、当該動画ファイルを通常再生、すなわち1.0倍ですべて再生したときの再生時間である。
【0023】
さらに、再生残視聴時間計算部52は、再生時刻および録画時間を用いて、後述する方法にて再生残視聴時間を算出する。再生残視聴時間とは、現在再生中の映像データ及び音声データを、巻き戻し、早送り、一時停止等をすることなしに、現在の再生倍率で再生し続けた場合、あと何時間何分で再生が終了するのかを示すものである。また、再生残視聴時間計算部52は、算出した再生残視聴時間を表示するための再生残視聴時間表示データを生成する。
【0024】
続いて、図3を参照して、本実施形態の再生装置1の動作について説明する。
【0025】
再生速度指定部41は、ユーザーインターフェースを介してユーザーが指定した再生速度を取得する。音声時間軸変換倍率指定部42は、再生速度に基づき、音声時間軸変換倍率を算出する。(ステップS11)ここで、音声時間軸変換倍率とは、音声データを通常再生時の何倍の時間で再生するのかを示すものであり、再生速度の逆数になる。つまり、再生速度が2.0倍の場合には、音声時間軸変更倍率は1/2となる。
【0026】
また、映像音声再生時刻取得部51は、復号化前の映像符号または音声符号より再生時刻を取得する。(ステップS12)ここで、再生時刻とは、再生開始から現在までの再生経過時間であり、例えば、映像符号、及び音声符号に含まれる属性情報のうち、各符号のPTS(Presentation Time Stamp)であってもよい。なお、本実施形態では映像符号および音声符号に分離した後に再生時刻を取得しているが、分離前の多重化符号より再生時刻を取得することも可能である。
【0027】
その後、映像デコーダ21および音声デコーダは、映像符号及び音声符号をそれぞれ伸張して復号し、映像データ及び音声データとする。(ステップS13)
次に、音声時間軸変換処理部43は、音声時間軸変換倍率に基づき音声データの時間軸変換処理を行う。(ステップS14)この時間軸変換処理は、既知の方法にて行うことができ、変換前と変換後とで、ピッチが変わることがないように音声データを変換する。既知の方法とは、例えば、音声データの基本周期を検出し、基本周期単位で間引きや補間を行って音声データの再生時間を変換する方法であってもよい。時間軸変換処理後の音声データは、音声出力部32により出力される。(ステップ16)
また、同期手段22は、映像データを音声データに同期させて出力する。(ステップ15)同期は既知の方法にて行うことができる。例えば、同期手段22は、PCクロック周波数と同一の早さで進むリファレンスクロックを有してもよい。また、S12にて取得した映像符号および音声符号のPTSをPCクロック周波数単位に変換してTimeとする。そして、音声データが音声出力部で出力される際に、リファレンスクロックを当該音声データのTimeに補正する。一方、同期手段22は、リファレンスクロックと画像データのTimeが同期するように画像データを出力する。上記の方法にて、リファレンスクロックを介して映像データを音声データに同期させてもよい。
【0028】
また、再生残視聴時間計算部52は、不図示のメモリに格納された動画ファイルに含まれる動画ファイル管理情報より、録画時間を取得する。(ステップ21)また、再生残視聴時間計算部52は、再生速度および再生時刻を取得する。続いて、再生残視聴時間計算部52は、録画時間、ステップS11の前に取得した再生速度、およびステップS12にて取得した再生時刻を用いて、後述する方法にて再生残視聴時間を算出する。(ステップ22)また、再生残視聴時間計算部52は、算出した再生残視聴時間を表示するための再生残視聴時間表示データを生成する。
【0029】
映像合成処理部23は、ステップS15にて音声データと同期された映像データ、およびステップS22にて生成された再生残視聴時間表示データを合成する。(ステップ“23)映像出力部24は、合成された映像データを出力する。(ステップ24)
再生残視聴時間表示データの表示場所は、例えば表示装置における動画データを表示する画面の中の右上の箇所である。また、再生残視聴時間は常に表示装置に表示されてもよいし、ユーザーインターフェースを介してユーザーが指示をしたときのみ表示してもよい。また、ユーザーが動画ファイルを選択後であって、当該動画ファイルの再生を指示する前に、当該動画ファイルの録画時間を再生残視聴時間として表示してもよい。
【0030】
続いて、図4を参照して、ステップS22の再生残視聴時間算出の動作について詳述する。
【0031】
再生残視聴時間計算部52は、再生速度X、録画時間Tmax、再生時刻Tnを取得する。(ステップ221)再生時刻Tnは、例えば、現在デコーダに格納されている画像符号または音声符号のPTSである。図5に動画ファイルと再生時刻Tnとの関係を示す。nは0から録画時間までの値をとりうる自然数である。動画ファイルのデータの先頭における再生時刻はT0で、動画ファイルの末尾の再生時刻はTmaxであり、録画時間と一致する。現在の動画または音声データの再生時刻をTnとすると、その1つ前の動画または音声データの再生時刻はTn−1である。
【0032】
次に、ステップS223にて、再生残視聴時間計算部52は、(Tmax−Tn)/Xの値を算出する。この値がすなわち再生残視聴時間である。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実実施形態では、MPEG形式の動画ファイルと異なり、動画ファイルに再生時刻が含まれていない場合を考える。本実施形態はアナログ放送で放送されたテレビ番組を録画した動画ファイル等に適用可能である。
【0034】
本実施形態の場合、映像音声再生取得部は、再生時刻に代わり、動画ファイルの現在の再生位置を取得する。ここで再生位置とは、現在再生している動画ファイルの画像または音声が、画像ファイルの先頭から何バイト目であるかを示している。
【0035】
また、映像音声再生取得部は、動画ファイル全体が何バイトであるか、すなわち動画ファイルのファイルサイズを取得する。さらに、映像音声再生取得部は、以下の式に基づいて動画ファイルの再生時刻を算出する。
【0036】
再生時刻=再生位置/ファイルサイズ×録画時間
本実施形態では以上の方法を用いて再生時刻を算出する。続いて、第1の実施形態と同様の方法で再生残視聴時間を算出し、表示装置に表示することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明の別の実施形態を説明する。本実施形態では、画像データと再生残視聴時間表示データとを合成することなく、画像データと重ねて再生残視聴時間表示データを表示することが可能になる。
【0038】
図6は、本実施形態を構成する再生装置の機能ブロックを示す図である。第1の実施形態と同様の構成には同一の参照番号を付している。本実実施形態では、動作状態出力部53が追加されている。再生残視聴時間計算部52は、第1または第2の実施例と同様の方法にて再生残視聴時間表示データを生成する。動作状態出力部53は、表示装置のうち、画像データが表示される画面の一部に重なるよう、再生残視聴時間表示データを出力する。
【0039】
これらの実施形態においては、画像データと再生残視聴時間データとを重ねて表示装置に表示する場合について説明した。しかし、本発明は、再生残視聴時間データを別の表示装置に出力することも可能である。また、一つの表示装置の一つの画面上に、動画データと再生残視聴時間データとが重ならないように出力することも可能である。
【0040】
本発明は、受信した放送波を記録した動画ファイル、記録媒体に格納された動画ファイル、インターネット等の電気通信回路を通じてダウンロードした動画ファイルなどに適用可能である。
【0041】
本発明は、動画ファイルを通常再生とは異なる再生速度で再生したときであっても、現在の再生速度に合わせて正しく再生残視聴時間を表示することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 再生装置
41 再生速度指定部
43 音声時間軸変換処理部
51 映像音声再生時刻取得部
52 再生残視聴時間計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された再生速度を受信する再生速度指定部と、
前記指定された再生速度に基づき動画を出力する出力部と、
前記指定された再生速度に基づき再生残視聴時間を計算し、前記再生残視聴時間を表示部に表示する計算部と、を有することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1において、前記再生残視聴時間計算部は、前記指定された再生速度、動画ファイルの録画時間、再生中の動画データの再生時刻を取得し、
前記録画時間から前記再生時刻を減じ、その結果を前記再生速度で除した値を再生残視聴時間とすることを特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項2おいて、動画ファイルはMPEG形式で記録され、前記再生時刻は前記動画ファイルに含まれるPTSであることを特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項2において、前記再生時刻は、動画ファイルのファイルサイズ、および再生位置に基づいて計算されることを特徴とする再生装置。
【請求項5】
指定された再生速度を受信する工程と、
前記指定された再生速度に基づき動画を出力する工程と、
前記指定された再生速度に基づき再生残視聴時間を計算し、前記再生残視聴時間を表示部に表示する工程と、を有することを特徴とする再生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−205439(P2011−205439A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71253(P2010−71253)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】