説明

冗長系システム

【課題】運用系装置と非運用系装置を備える冗長系システムにおいて、電源回路に不具合が生じた場合でも冗長系システムの連続的な運用を可能にする手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る冗長系システム10は、通常時に使用される運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eと、非常時に使用される非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fと、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E及び非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fの両方に対して電圧を供給する直流電源50と、直流電源50と運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eとの間に介在された運用系電源回路60A、及び直流電源50と非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fとの間に介在された非運用系電源回路60Bを有するパワーサプライカード40と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運用系装置と非運用系装置とを備える冗長系システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置の故障等に影響を受けることなく連続的な運用が要求されるシステムは、運用系装置と非運用系装置とを備えて二重化された冗長系システムとして構成されるのが一般的である。
【0003】
ここで、図4は、従来例に係る冗長系システム1の全体構成を示す模式図である。冗長系システム1は、合計6個のインターフェイスカード2と、これらインターフェイスカード2を制御する2個のコントロールカード3と、各インターフェイスカード2に対して電圧を供給する直流電源4と、直流電源4から供給される電圧を調整するパワーサプライカード5と、を備えるものである。
【0004】
ここで、6個のインターフェイスカード2は、3個の運用系インターフェイスカード2A,2C,2Eと、3個の非運用系インターフェイスカード2B,2D,2Fとを有している。ここで、運用系インターフェイスカード2Aと非運用系インターフェイスカード2Bとが冗長系を構成している。同様に、運用系インターフェイスカード2Cと非運用系インターフェイスカード2Dとが冗長系を構成している。更に、運用系インターフェイスカード2Eと非運用系インターフェイスカード2Fとが冗長系を構成している。
【0005】
また、2個のコントロールカード3は、運用系コントロールカード3Aと、非運用系コントロールカード3Bとを有している。そして、この運用系コントロールカード3Aと非運用系コントロールカード3Bとが冗長系を構成している。
【0006】
そして、運用系インターフェイスカード2A,2C,2Eは、運用系コントロールカード3Aによりその動作がそれぞれ制御される。一方、非運用系インターフェイスカード2B,2D,2Fは、非運用系コントロールカード3Bによりその動作がそれぞれ制御される。
【0007】
また、図4に示すように、6個のインターフェイスカード2及び2個のコントロールカード3に対しては、直流電源4から供給される例えば48Vの電圧が、パワーサプライカード5を構成する1個の電源回路6によって12Vの電圧に変換されてそれぞれ供給されている。
【0008】
そして、運用系インターフェイスカード2A,2C,2Eに故障等が生じた場合には、これらを非運用系インターフェイスカード2B,2D,2Fにそれぞれ切り替えることにより、冗長系システム1の連続的な運用を可能としている。
【0009】
ここで、特許文献1,2,3,及び4には、運用系装置と非運用系装置とを備える冗長系システムにおいて、運用系装置及び非運用系装置に対して電圧を供給する電源を複数個設けることにより、電源供給についても冗長系を構成することが開示されている。そのうち、特許文献1及び4には、複数個の電源を切り替えるための複数個のスイッチ、及びこれらスイッチの動作を制御する制御部を更に備える点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−111740号公報
【特許文献2】特開平5−100881号公報
【特許文献3】特開平11−3146号公報
【特許文献4】特開平11−306752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の冗長系システム1では、運用系または非運用系の別によらず、全てのインターフェイスカード2及びコントロールカード3に対し、共通の電源回路6を介して直流電源4からの電圧を供給している。従って、この共通の電源回路6に故障等の不具合が発生した場合、運用系インターフェイスカード2A,2C,2E及び運用系コントロールカード3Aだけでなく、非運用系インターフェイスカード2B,2D,2F及び非運用系コントロールカード3Bまでもがその機能を停止することにより、冗長系システム1の連続的な運用に支障を来たすという問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、運用系装置と非運用系装置を備える冗長系システムにおいて、電源回路に不具合が生じた場合でも冗長系システムの連続的な運用を可能にする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る冗長系システムは、通常時に使用される運用系インターフェイスカードと、非常時に使用される非運用系インターフェイスカードと、前記運用系インターフェイスカード及び前記非運用系インターフェイスカードの両方に対して電圧を供給する電源と、前記電源と前記運用系インターフェイスカードとの間に介在された運用系電源回路、及び前記電源と前記非運用系インターフェイスカードとの間に介在された非運用系電源回路を有するパワーサプライカードと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る冗長系システムによれば、運用系電源回路に故障等の不具合が発生した場合には、運用系電源回路から非運用系電源回路に切り替えて、非運用系インターフェイスカードを作動させることができる。これにより、運用系電源回路に故障等の不具合が発生した場合でも、これに影響を受けることなく冗長系システムの連続的な運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る冗長系システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】通常時における冗長系システムの状態を示す模式図である。
【図3】非常時における冗長系システムの状態を示す模式図である。
【図4】従来例に係る冗長系システムの全体構成を示す模式図である。
【図5】パワーサプライカードを冗長化した構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る冗長系システム10の全体構成を示す模式図である。冗長系システム10は、6個のインターフェイスカード20と、2個のコントロールカード30と、インターフェイスカード20及びコントロールカード30それぞれに対して電気的に接続されたパワーサプライカード40と、パワーサプライカード40に対して電気的に接続された直流電源50と、を備えるものである。
【0017】
インターフェイスカード20は、外部と通信信号を送受信する役割を果たすものである。このインターフェイスカード20は、図1に示すように、通常時に使用される3個の運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eと、非常時に使用される3個の非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fとを有している。そして、運用系インターフェイスカード20Aと非運用系インターフェイスカード20Bとが冗長系を構成している。同様に、運用系インターフェイスカード20Cと非運用系インターフェイスカード20Dとが冗長系を構成している。更に、運用系インターフェイスカード20Eと非運用系インターフェイスカード20Fとが冗長系を構成している。
尚、インターフェイスカード20の個数や冗長系の構成の仕方等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0018】
また図1に詳細は示さないが、これらインターフェイスカード20A〜20Fは、それぞれ通信ケーブルが接続可能に構成されており、運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eは互いに異なる通信速度で外部と通信を行うものとなっている。そして、その通信速度は、運用系インターフェイスカード20A,20B,20Cの順に、相対的に高速、中速、低速となっている。例えば本実施形態では、運用系インターフェイスカード20Aが100GE(ギガビットイーサネット(登録商標))の光通信にて、運用系インターフェイスカード20Cが10GEの光通信にて、運用系インターフェイスカード20Eが1GEの無線通信にて、それぞれ通信を行うものとしている。また、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fに関しても、互いに異なる通信速度で外部と通信を行い、その通信速度は、冗長系を構成する運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eの通信速度にそれぞれ対応している。
尚、インターフェイスカード20A〜20Fの通信速度は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0019】
コントロールカード30は、インターフェイスカード20の動作を制御する役割を果たすものである。このコントロールカード30は、図1に示すように、運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eの動作を制御する運用系コントロールカード30Aと、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fの動作を制御する非運用系コントロールカード30Bとを有している。そして、運用系コントロールカード30Aと非運用系コントロールカード30Bとが冗長系を構成している。
尚、コントロールカード30の個数や冗長系の構成の仕方等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0020】
パワーサプライカード40は、直流電源50から供給される電圧を調整する役割を果たすものである。このパワーサプライカード40は、図1に示すように、2個の電源回路60を備えている。
尚、パワーサプライカード40自体を冗長化することも可能である。例えば、図5に示すように、複数のインターフェイスカード20と複数のコントロールカード30とが搭載される伝送装置70において、通常時に使用される運用系パワーサプライカード40Aと、非常時に使用される非運用系パワーサプライカード40Bとを別々に搭載してもよい。
【0021】
電源回路60は、直流電源50から供給される電圧を変換する役割を果たすものである。この電源回路60は、図1に示すように、運用系インターフェイスカード20A,20C,20Eに対して電気的に接続された運用系電源回路60Aと、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20Fに対して電気的に接続された非運用系電源回路60Bとを有している。また、これら運用系電源回路60A及び非運用系電源回路60Bは、直流電源50に対してそれぞれ電気的に接続されている。このように構成される電源回路60によれば、例えば直流電源50から供給された48Vの電圧が、運用系電源回路60Aによって12Vの電圧に変換された後、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、及び運用系コントロールカード30Aに対してそれぞれ供給される。同様に、直流電源50から供給された48Vの電圧が、非運用系電源回路60Bによって12Vに変換された後、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bに対してそれぞれ供給される。
尚、電源回路60の個数や冗長系の構成の仕方等は、インターフェイスカード20やコントロールカード30の個数等に応じて適宜設計変更が可能である。
例えば、電源回路60A及び電源回路60Bとは別に電源回路をもう1つ追加し、この追加した電源回路から運用系コントロールカード30A及び非運用系コントロールカード30Bに対して電圧を供給するようにしてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る冗長系システム10の動作、及びその作用効果について説明する。図2は、通常時における冗長系システム10の状態を示す模式図である。通常時には、直流電源50から供給される電圧が運用系電源回路60Aを介して供給されることにより、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、及び運用系コントロールカード30Aがそれぞれ動作している。一方この時、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bは、非運用系電源回路60Bから電圧が供給されることなく、それぞれ待機状態となっている。
【0023】
他方、図3は、非常時における冗長系システム10の状態を示す模式図である。図2に示す通常時に、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、運用系コントロールカード30A、及び運用系電源回路60Aのうち少なくとも一つに故障等の不具合が発生したことが検出されると、運用系電源回路60Aから運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、及びコントロールカード30Aへの電圧供給が停止する。これにより、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、及び運用系コントロールカード30Aは、運用系から非運用系にそれぞれ切り替わる。
【0024】
またこれと同時に、非運用系電源回路60Bから非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bに対して所定の電圧が供給されることにより、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bが、非運用系から運用系にそれぞれ切り替わる。
その後は、それまでの非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bが、運用系としてそれぞれ動作する。
【0025】
このように、冗長系を構成する、運用系インターフェイスカード20A,20C,20E、及び運用系コントロールカード30Aと、非運用系インターフェイスカード20B,20D,20F、及び非運用系コントロールカード30Bに対応して、直流電源50から供給される電圧を変換する電源回路60として、運用系電源回路60A及び非運用系電源回路60Bを別々に設けた。これにより、運用系電源回路60Aと非運用系電源回路60Bとが冗長系を構成し、一方の電源回路60が故障した場合にも、他方の電源回路60が機能することにより、冗長系システム10の停止を回避することができる。これにより、電源回路60に不具合が生じた場合でも、それに影響を受けることなく冗長系システム10の連続的な運用が可能となる。
【0026】
また、運用系と非運用系とで電源回路60を別々に設けたので、運用系と非運用系とで共通の電源回路60を備える図4に示す従来の冗長系システム1と比較して、運用系電源回路60A,60Bのそれぞれを、電源容量の小さなものとすることができる。
更に、上述の構成によれば、電源が直流電源50の1個だけであるため、複数個の電源を切り替えるためのスイッチやスイッチの動作を制御するための制御部を設ける必要がなく、冗長系システム10の小規模化及び低コスト化を図ることができる。
しかも、本発明に係る冗長系システム10は、複数個の電源回路60を備えた1枚のパワーサプライカード40のみによって実現することができるので、例えば図4に示したような既存の冗長系システム1に対しても、パワーサプライカード5を置換するだけで容易に適用することができる。
【0027】
なお、本発明に係る冗長系システム10は、運用系が作動している間は非運用系が作動することなく待機状態にある、いわゆるコールドスタンバイ方式で構成したが、これに代えて、運用系が作動している間は非運用系も同様に作動しながら待機状態にある、いわゆるホットスタンバイ方式で構成することも可能である。
【0028】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 冗長系システム
2 インターフェイスカード
2A 運用系インターフェイスカード
2B 非運用系インターフェイスカード
2C 運用系インターフェイスカード
2D 非運用系インターフェイスカード
2E 運用系インターフェイスカード
2F 非運用系インターフェイスカード
3 コントロールカード
3A 運用系コントロールカード
3B 非運用系コントロールカード
4 直流電源
5 パワーサプライカード
6 電源回路
10 冗長系システム
20 インターフェイスカード
20A 運用系インターフェイスカード
20B 非運用系インターフェイスカード
20C 運用系インターフェイスカード
20D 非運用系インターフェイスカード
20E 運用系インターフェイスカード
20F 非運用系インターフェイスカード
30 コントロールカード
30A 運用系コントロールカード
30B 非運用系コントロールカード
40 パワーサプライカード
40A 運用系パワーサプライカード
40B 非運用系パワーサプライカード
50 直流電源
60 電源回路
60A 運用系電源回路
60B 非運用系電源回路
70 伝送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時に使用される運用系インターフェイスカードと、
非常時に使用される非運用系インターフェイスカードと、
前記運用系インターフェイスカード及び前記非運用系インターフェイスカードの両方に対して電圧を供給する電源と、
前記電源と前記運用系インターフェイスカードとの間に介在された運用系電源回路、及び前記電源と前記非運用系インターフェイスカードとの間に介在された非運用系電源回路を有するパワーサプライカードと、
を備えることを特徴とする冗長系システム。
【請求項2】
前記運用系インターフェイスカード及び前記非運用系インターフェイスカードがそれぞれ複数個ずつ設けられ、各運用系インターフェイスカード及び各非運用系インターフェイスカードの通信速度が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の冗長系システム。
【請求項3】
前記パワーサプライカードが、通常時に使用される運用系パワーサプライカードと、非常時に使用される非運用系パワーサプライカードとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の冗長系システム。
【請求項4】
前記電源は、通常時には前記運用系インターフェイスカードに対してのみ電圧を供給するとともに、非常時には前記非運用系インターフェイスカードに対してのみ電圧を供給することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の冗長系システム。
【請求項5】
前記運用系インターフェイスカードの動作を制御する運用系コントロールカードと、前記非運用系インターフェイスカードの動作を制御する非運用系コントロールカードとを更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の冗長系システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212972(P2012−212972A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76345(P2011−76345)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】