説明

写真表装のスキミング防止カード

【課題】非接触型の情報保存媒体を搭載したカードからの不正読み取り(スキミング)を防止でき、画像が鮮明な写真表装のスキミング防止カードを提供する。
【解決手段】写真乳剤を塗布したプラスチック薄膜を支持体上に積層する印画素材と、電磁波の通過を阻止する金属系素材3を有し且つ少なくとも片面に軟質シート5を配置した電磁波シールド材2とを用い、印画素材に画像を焼付けて現像処理した後に、該印画素材から支持体を剥離して薄膜状の写真フィルムを形成し、該写真フィルムを電磁波シールド材2の少なくとも片面に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が鮮明な写真表装のスキミング防止カードに関し、特に非接触型の情報保存媒体を搭載したICカードからの不正読み取り(スキミング)を防止できる写真表装のスキミング防止カードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品購入の際に現金を使用することが少なくなり、その代わりにキャッシュカード、クレジットカードやデビットカードなどを提示することが多い。これらのカード類には、例えば、個人情報を記憶する情報保存媒体として磁気ストライプを設け、この磁気ストライプにおいて必要な情報を保存する。これらのカード類が盗難されると、保存した情報を磁気読み取り機でコピーするという手口でカードをスキミングされ、一時はこのスキミングによる犯罪が話題になっていた。従来のカード類は、ICカードであっても多くは非接触型であるので、磁気読み取り機でコピーされない限り情報が漏出することがなく、盗難届を速やかに提出すると被害を最小限度に抑えることができる。
【0003】
一方、更に進歩した非接触型のICカードは、従来のカード類のように読み取り装置内に挿入する必要がなく、財布やカードケースに入れたままで読み取り装置と通信できるため利便性が非常に高い反面、非接触で通信できるために、スキミングによる不正行為を受ける蓋然性が相対的に高くなる。例えば、カード犯罪者自身が読み取り機を所持していると、電車の中、人込み、商業施設の出入口などのような日常生活の場所において、犯罪者と接触することなく、ICカードを簡単にスキミングされてしまう危険性がある。この際に、非接触型のICカード所持者は、スキミングされたこと自体を認識できないので、スキミングされた場所や日時も判らず、カード被害額が膨大になるおそれがある。このような事態を未然に防止するために、非接触型のICカードについて効果的なスキミング防止措置を採ることが望ましい。
【0004】
スキミング防止措置について、特開昭63−92498号は、表裏面を硫化銅で表面加工した内装材を用い、特開平9−269985号は、アルミニウムや銅などの金属箔によって構成するシート構造を有し、さらに金属板材を介在させるシート構造も存在する。また、登録実用新案第3118623号は、ポリプロピレンを主成分とする合成紙(商標名:ユポ)からなるカバー層を電磁波シールド材と一体的に接着するか、または2枚のカバー層の間に電磁波シールド材を挟着した構造を有する。登録実用新案第3121113号では、電磁波シールド材の片面または両面に、印刷可能な表面を有する印刷シートと重ね合せて一体化している。
【特許文献1】特開昭63−92498号公報
【特許文献2】特開平9−269985号公報
【特許文献3】登録実用新案第3118623号公報
【特許文献4】登録実用新案第3121113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開昭63−92498号および特開平9−269985号のように、電磁波シールド材について金属で表面加工するか、または剥がれやすい金属箔で構成したり硬い金属板を内蔵するシート構造では、得たシートを殆ど曲げたり撓ませたりすることができず、使用勝手が相当に悪いという欠点がある。また、電磁波シールド材の表面層に布地を使用すると、表面加工が困難になるうえに、その表面に鮮明な印刷を施すことができず、カードの装飾性を欠くことになる。
【0006】
登録実用新案第3118623号のように、ポリプロピレンを主成分とする合成紙の間に電磁波シールド材を挟着すると、該合成紙として印刷用途に適した専用グレード品を選ぶ必要があってかなりのコストアップにつながり、しかも印刷の鮮明度の点では未だ十分とは言えない。登録実用新案第3121113号のように、印刷シートを電磁波シールド材と貼り合わせると、該印刷シートをインクジェットプリンタや昇華型プリンタで印刷可能であっても、簡易プリンタによる印刷は写真に比べて不鮮明である。また、この種のカード類では、使用を続けるうちにカード表面の印刷が磨耗し、印刷像が不鮮明になるという問題も存在する。
【0007】
本発明は、従来のスキミング防止カードに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、画像が鮮明で耐久性も良好な写真表装のスキミング防止カードを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、使用の継続で画像が磨耗することが少ない写真表装のスキミング防止カードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る写真表装のスキミング防止カードでは、写真乳剤を塗布したプラスチック薄膜を支持体上に積層する印画素材と、電磁波の通過を阻止する金属系素材を有し且つ少なくとも片面に軟質シートを配置した電磁波シールド材とを用いる。本発明のスキミング防止カードを製造するには、印画素材に画像を焼付けて現像処理した後に、該印画素材から支持体を剥離して薄膜状の写真フィルムを形成し、該写真フィルムを電磁波シールド材の少なくとも片面に貼り付ける。
【0009】
本発明のスキミング防止カードの製造において、現像処理した印画素材は、その表面に透明または半透明のカバーフィルムを熱圧着するとともに、支持体を剥離してカバーフィルム被覆の写真フィルムを形成すると好ましい。また、薄膜状の写真フィルムを電磁波シールド材の表面に貼り付ける際に、該シールド材と写真フィルムとの間に薄膜状の熱融着シートを介在させてから全体を熱圧着すると好ましい。
【0010】
望ましくは、本発明のスキミング防止カードでは、電磁波シールド材は厚さが100μm以下および薄膜状の写真フィルムは厚さが40μm以下であって、全体厚が220μm以下である。例えば、印画素材では、プラスチック薄膜として高密度ポリエチレンさらに酸化チタンを含有する低密度ポリエチレンを支持体上に溶融塗布し、表面をコロナ放電処理した後に写真乳剤を塗布する。また、電磁波シールド材において、金属系素材の片面または両面に配置した軟質シートは、ポリプロピレンを主成分とする合成紙である。
【0011】
本発明を図面に基づいて説明すると、図1には、一般的な写真表装のスキミング防止カード1の断面を示す。スキミング防止カード1において、シート状の電磁波シールド材2は、電磁波の通過を阻止する金属系素材3の両面または片面に、該素材を保護且つ支持する軟質シート5を全面配置し、該軟質シート上にさらに写真フィルム7を貼り付ける。
【0012】
金属系素材3は、電磁波を反射、吸収または干渉してその通過を阻止する性質の銅、アルミニウム、銀のような金属または炭素、ケイ素などからなり、これらをシート状に成形したり、他のシート材に対して被覆、積層または塗布などによってシート状に成形すればよい。例えば、金属系素材3として、周波数約14MHzにおいて磁界強度減衰率−9.54dB以下である厚さ25〜50μmの金、銀、銅またはアルミニウムの金属薄板を用いると好ましい。アルミニウムと炭素とを主成分とする薄いシート状の金属系素材3は、アルミニウムが電磁波の反射材として有効であるから、電磁波の吸収材料として安価な炭素と組み合わせることができる。また、金属系素材3は、ポリエステル(PET)やポリアミドなどのプラスチックフィルムの片面に、銅箔のメッシュ膜を積層した構造であり、このメッシュ膜はフォトエッチング、スクリーン印刷、真空蒸着または電気メッキなどによって形成すればよい。このメッシュ膜には、さらに金属被膜や絶縁体被膜をスパッタリングなどで積層・保護し、電磁波シールド性をより確実に維持させてもよい。
【0013】
電磁波シールド材1について、金属系素材3が、他のシート材であるプラスチックフィルム(図示しない)に積層した薄い金属膜や蒸着層であるならば、金属系素材3の露出面だけに軟質シート5を全面配置した構造にすることも可能である。この場合には、該軟質シートが存在しないフィルム面はそのままかまたは印刷を施してもよく、あるいは適宜の表装処理に加えてもよい。
【0014】
金属系素材3の全面に配置する軟質シート5,5は、耐水性や耐屈曲性を有する合成紙やプラスチックフィルムであると好ましく、例えば、耐水性を有するポリプロピレンを主成分とする合成紙(商標名:ユポ)を用いる。このユポ紙は、一般に表面が滑らかで油や薬品に強いので、金属系素材3の表裏面の保護に適している。軟質シート5,5は、通常、裏面に塗布されたのり引き加工面を介して金属系素材3に接着され、または特殊熱プレス、、超音波溶接、高周波溶接などによって溶着されてシート状に一体化してもよい。
【0015】
電磁波シールド材2は、その表面に写真フィルム7を貼り付ける前に、薄膜状の熱融着シート8を枚葉的または図2に示すように連続的に、その片側または両側に写真フィルム7を予備接着で貼り付けておくと好ましい。図2において、感熱性樹脂である熱融着シート8は、熱間ラミネータ10によって加熱され、該ラミネータのロール12,12の周面と融着しない程度の温度まで加熱され、加熱軟化によって電磁波シールド材2と予備接着される。
【0016】
一方、写真フィルム7は、図3に示すような印画素材14から製造すればよく、該印画素材は写真乳剤16を塗布したプラスチック薄膜18を支持体20上に積層する。印画素材14において、支持体20は、パルプやポリオレフィン類を繊維状にした天然または合成紙であり、所望に応じてサイズ剤、紙力剤、定着剤などを添加し、コート紙やプラスチックフィルムでもよい。プラスチック薄膜18は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性プラスチックであり、好ましくは低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたはその混合物であり、所望に応じて顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤などを添加する。写真乳剤16には、ハロゲン化銀の微細結晶をゼラチンなどに分散した公知のものを使用すればよい。
【0017】
印画素材14では、例えば、プラスチック薄膜18として高密度ポリエチレンさらに酸化チタンを含有する低密度ポリエチレンを支持体上に溶融塗布すると好ましい。高密度ポリエチレンは、低密度ポリエチレンに比べて溶融粘度が高いので、押出成形すると支持体20との剥離強度を高くすることができる。低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンに比べて液体透過率が高く、さらに表面をコロナ放電処理すると、その上に塗布する写真乳剤16との密着性がより良好になる。
【0018】
プラスチック薄膜18は、押出成形、塗布またはスプレーなどによって支持体20上に積層され、該支持体との剥離強度を15〜150g重に定めることが望ましい。この剥離強度が15〜150g重であると、押出成形における製造工程が簡略できるうえに、プラスチック薄膜18の厚みを薄くでき、平滑性などの品質も良化する。例えば、プラスチック薄膜18を支持体20上に押出成形するには、所望の剥離強度を得るために押出温度を280〜305℃に定め、その温度が高い場合には、押出成形直後のプラスチック薄膜18に不活性ガスまたは冷却空気を吹き付けて冷却してもよい。
【0019】
印画素材14は、1枚ずつ写真乳剤16に画像を焼付けて現像処理しても、図4に示すような画像22が連続状に現像された長寸状でもよい。印画素材14は、現像処理した後に、図3に一点鎖線で示すように支持体20を個別に剥離するか、または図5のように支持体20を連続的に剥離して、長寸である薄膜状の写真フィルム7を形成する。写真フィルム7は、個別に切断して電磁波シールド材2に貼り付けても、図6において電磁波シールド材2の片面または両面に連続的に貼り付けてから、枚葉に型抜きしてもよい。
【0020】
現像処理した印画素材14は、所望に応じて、その表面に透明または半透明のカバーフィルム24を熱圧着し、この熱圧着の前または後に支持体20を剥離すればよい。カバーフィルム24は、熱圧着が可能な熱可塑性プラスチックであることが望ましい。印画素材14は、通常、図5に示すように、熱間ラミネータ25のロール26,26を通してカバーフィルム24を連続的熱圧着すればよく、さらに周面加工の異なる上方ロール26または他の冷却ロールやエンボスロールを通し、フィルム表面をマット状や網目状などにすることも可能である。
【0021】
スキミング防止カード1において、電磁波シールド材2は厚さが100μm以下および薄膜状の写真フィルム7は厚さが40μm以下であり、さらにカバーフィルム24は30〜40μmであることが望ましい。電磁波シールド材2では、金属系素材3を厚さ10〜30μmおよびユポ紙などの軟質シート5を厚さ20〜40μmに定め、シールド材2にある程度の湾曲性と剛性を付与する。写真フィルム7は、厚さが15〜40μmであり、厚さ15μm未満ではフィルム切れや伸びなどを起こすおそれがある。カバーフィルム24は、厚さが30〜40μmであり、厚さ30μm未満では熱圧着作業に支障が発生することがある。さらに、スキミング防止カード1の全体厚は220μm以下であり、厚さが220μmを超えると財布やポケットに入れた際に存在感が気になることがある。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るスキミング防止カードは、非接触型のICカードと重ね合わせた状態で財布、ポケットやパスポート入れに入れて使用することにより、非接触型のICカードに対する外部からの通信用電磁波が遮断され、不正な非接触通信によるスキミングを効果的に防ぐことができる。非接触型のICカードは、通常、長方形のシート状であり、ICチップに蓄積された情報が非接触処理装置によって読取りおよび書込み処理されものであり、プリペイドカード、クレジットカード、キャッシュカード、パスポート、定期券、社員証、学生証、各種会員カードなどに利用されているから、本発明のような美麗で耐久性の良好なスキミング防止カードの用途は非常に広い。
【0023】
本発明に係るスキミング防止カードは、薄膜状の写真フィルムを電磁波シールド材の片面または両面に貼り付け、該写真フィルムにおける画像は簡易プリンタによる印刷などに比べて遙かに鮮明であり、得たカードの商品価値は非常に高い。この写真フィルムは、通常のグラビア印刷などに比べて画像枚数が少なくてもよいため、簡易印刷による少量枚数の単調な装飾や広告の表示とは全く異なり、10枚単位や100枚単位のカード枚数でも美麗なカード製作が可能である。本発明のスキミング防止カードは、企業宣伝用やお土産用の写真カードだけでなく、各種グループの記念写真や個人の肖像写真を入れたカードとしても利用が可能である。
【0024】
本発明に係るスキミング防止カードでは、電磁波の通過を阻止する金属系素材を軟質シートで支持するうえに比較的厚みが薄いことにより、適度の湾曲性と剛性が付与されて折り曲げても復元力を有し、財布やポケットに入れても嵩張らずしかも折り曲がってしまうことが少ない。本発明のスキミング防止カードにおいて、写真フィルムの表面をカバーフィルムで被覆すると、財布やポケットに繁雑に入れることで表面が擦られても写真フィルムの画像は鮮明さを維持するので、長期間の使用に耐えることができる。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図1に示すスキミング防止カード1を手作業で製作する場合、写真乳剤16を塗布したプラスチック薄膜18を支持体20上に積層した長方形平面の印画素材14(図3)を用いる。印画素材14に画像を焼付けて現像処理した後に、同じく長方形平面のカバーフィルム24を重ね合わせてから熱間ラミネータ(図示しない)に通して両者を一体化させる。印画素材14にカバーフィルム24を貼り付けた後に支持体20を剥離し、薄膜状の写真フィルム7を得る。
【0026】
一方、電磁波シールド材2として、金属系素材3であるアルミニウム薄板の両面に軟質シート5,5を全面配置して接着したものを使用し、該軟質シートは、ポリプロピレンを主成分とする合成紙(例えば、商標名:ユポ)である。また、熱融着シート8は、離型紙(図示しない)の上に積層された態様である。電磁波シールド材2および熱融着シート8は、いずれもカード状に裁断されている。電磁波シールド材2の両面に、離型紙を外側にして2枚の熱融着シート8を上下に配置し、熱間ラミネータ(図示しない)に通して全体を一体化させる。電磁波シールド材2の両面に熱融着シート8を貼り付けた後に、離型紙を2枚とも剥離する。
【0027】
次に、熱融着シート8,8を両面に貼り付けた電磁波シールド材2の両側に、カバーフィルム面を外側に向けた2枚の写真フィルム7,7を上下に配置し、加熱プレス(図示しない)によって全体を一体化させる。上下配置の写真フィルム7,7では、通常、画像の図柄が異なっている。積層したカード素材について、コーナー部を面取りしたカード状に四辺を裁断するとスキミング防止カード1を得る。このスキミング防止カード1の厚さは220μmであった。
【0028】
このスキミング防止カード1は、10枚単位で製作することができ、各種グループの記念写真や個人の肖像写真を入れたカードとして利用可能である。スキミング防止カード1は、非接触型のICカードと重ね合わせた状態で財布やポケットに入れると、非接触型のICカードに対する外部からの通信用電磁波が遮断され、不正な非接触通信によるスキミングを防止できる。
【実施例2】
【0029】
スキミング防止カード1を量産する場合、写真乳剤16を塗布したプラスチック薄膜18を支持体20上に積層した印画素材14は、図4に例示するような幅102mm、長さ60mのロール状の長寸体であり、写真焼付け専用のプリンタで焼付け・現像処理すると、縦60mm、横90mmの画像22が連続的に形成される。
【0030】
ロール状の印画素材14は、図5に示すように、支持体20を連続的に剥離して薄膜状の写真フィルム7を形成すると直ちに、カバーフィルム24を連続的に重ね合わせて熱間ラミネータ25に通す。印画素材14は、熱間ラミネータ25のロール26,26を通過するとカバーフィルム24が熱圧着され、両者は長寸のシート状に一体化して積層体7aとなる。
【0031】
一方、電磁波シールド材2も長寸のシート状であり、その素材は実施例1と同様である。図2に示すように、長寸の電磁波シールド材2をロールから引き出し、その両側に薄膜状の熱融着シート8,8を送り込んで、ラミネータ10のロール12,12間を通過させる。この加熱・加圧により、熱融着シート8,8は、熱ラミネータ10で加熱されて軟化して電磁波シールド材2と予備接着してシールド材2aとなるが、加熱溶融しないのでロール12,12の周面とは融着しない。
【0032】
次に、図6において、熱融着シート8,8を両面に貼り付けた長寸の電磁波シールド材2aはロールから引き出され、その両側に薄膜状の写真フィルム7,7を送り込んで、ラミネータ28のロール30,30間を通過させる。この加熱・加圧により、熱融着シート8,8が加熱溶融され、写真フィルム7,7を電磁波シールド材2の両側に接着する。シート状のスキミング防止素材から画像22ごとに型抜きすると、スキミング防止カード1を得る。スキミング防止カード1の厚さは200μmであった。
【0033】
このスキミング防止カード1は、100枚単位で量産することができ、企業宣伝用カード、お土産用の写真カード、映画スターや野球選手のブロマイドカードなどとして利用可能である。スキミング防止カード1は、非接触型のICカードと重ね合わせた状態で財布やポケットに入れると、非接触型のICカードに対する外部からの通信用電磁波が遮断され、不正な非接触通信によるスキミングを防止できる。
【実施例3】
【0034】
印画素材は実施例1と同様に製作する。一方、図7に示すように、電磁波シールド材31について、フォトエッチングによって厚さ40μmのポリエステルフィルム32の表面に銅箔のエッチングメッシュ膜34を形成する。金属系素材である銅箔のメッシュ膜34は、フィルム32の片面に10μm厚にエッチングされている。銅箔のエッチングメッシュ膜34の表面に、厚さ30μmのポリプロピレンを主成分とする合成紙36(例えば、商標名:ユポ)を接着する。
【0035】
電磁波シールド材31の合成紙側に、離型紙を外側にして熱融着シート38を上方に配置し、熱間ラミネータ(図示しない)に通して全体を一体化させる。熱融着シート38を電磁波シールド材31に貼り付けた後に、該シートから離型紙を剥離する。
【0036】
電磁波シールド材31において、熱融着シート38の上側に、カバーフィルム面を外側に向けた写真フィルム40を配置し、加熱プレス(図示しない)によって全体を一体化させる。積層したカード素材について、コーナー部を面取りしたカード状に四辺を裁断すると、スキミング防止カード42を得る。このスキミング防止カード42の厚さは150μmであった。
【0037】
図7に示すスキミング防止カード42は、その表面が写真フィルム40で表装され、且つポリエステルフィルム32の裏面には適宜の印刷を施す。カード42は、片面だけが写真表装であるので、実施例1で得たカード1に比べて薄くすることが可能である。
【実施例4】
【0038】
印画素材および電磁波シールド材は、実施例1と同様に、図8に示すスキミング防止カード44を製作する。長方形平面の印画素材において、画像を逆向けに焼付けて現像処理し、該印画素材から支持体を剥離すると、逆向けの画像を有する薄膜状の写真フィルム46,46を得る。
【0039】
電磁波シールド材47の両面に、離型紙を外側にして2枚の熱融着シート48を上下に配置し、熱間ラミネータ(図示しない)に通して全体を一体化させる。電磁波シールド材47の両面に熱融着シート48を貼り付けた後に、離型紙を2枚とも剥離する。
【0040】
ついで、電磁波シールド材47の両側に、裏向きにして画像を内側に向けた2枚の写真フィルム46,46を上下に配置し、加熱プレス(図示しない)によって全体を一体化させる。積層したカード素材について、コーナー部を面取りしたカード状に四辺を裁断すると、スキミング防止カード44を得る。このスキミング防止カード44の厚さは140μmであった。
【0041】
図8に示すスキミング防止カード44は、写真フィルム46自体がカバーフィルムを兼ねている。カード44では、2枚のカバーフィルムが不要であるので、実施例1で得たカード1に比べて薄くすることが可能である。
【実施例5】
【0042】
図9について、印画素材におけるプラスチック薄膜を形成するために、支持体上に高密度ポリエチレン(密度0.96)を樹脂厚さ25μmになるように押出成形する。その上側に、酸化チタンを10重量%含有する低密度ポリエチレン(密度0.92)を樹脂厚さ25μmになるように押出成形し、表面をコロナ放電処理した後に写真乳剤を塗布すると、マット面のプラスチック薄膜を得る。この印画素材には、さらにカバーフィルム49が熱圧着される。
【0043】
この印画素材は、支持体とプラスチック薄膜との剥離強度が15〜150g重であるので,焼付け・現像処理の間に支持体とプラスチック薄膜とが剥離することがなく、使用時に剥離することは容易である。このプラスチック薄膜から得た写真フィルム50は、接着剤を介在させることなく、加熱・加圧だけで実施例1と同様に電磁波シールド材2に貼り付けることができる。このスキミング防止カード52の厚さは180μmであった。
【0044】
図9に示すスキミング防止カード52は、写真フィルム50自体が熱融着シートを兼ねている。カード52では、2枚の熱融着シートが不要であるので、実施例1で得たカード1に比べて薄くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るスキミング防止カードの一例を示す拡大断面図である。
【図2】電磁波シールド材に2枚の熱融着シートを接着する工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明で用いる印画素材を示す拡大断面図である。
【図4】図3の印画素材を示す部分平面図である。
【図5】印画素材から支持体を剥離し、カバーフィルムを熱圧着する工程を示す概略断面図である。
【図6】電磁波シールド材に2枚の写真フィルムを接着する工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明の変形例を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の他の変形例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の別の変形例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 スキミング防止カード
2 電磁波シールド材
3 金属系素材
5 軟質シート
7 写真フィルム
8 熱融着シート
14 印画素材
16 写真乳剤
18 プラスチック薄膜
20 支持体
22 画像
24 カバーフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真乳剤を塗布したプラスチック薄膜を支持体上に積層する印画素材と、電磁波の通過を阻止する金属系素材を有し且つ少なくとも片面に軟質シートを配置した電磁波シールド材とを用い、印画素材に画像を焼付けて現像処理した後に、該印画素材から支持体を剥離して薄膜状の写真フィルムを形成し、該写真フィルムを電磁波シールド材の少なくとも片面に貼り付ける写真表装のスキミング防止カード。
【請求項2】
現像処理した印画素材は、その表面に透明または半透明のカバーフィルムを熱圧着するとともに、支持体を剥離してカバーフィルム被覆の写真フィルムを形成する請求項1記載のスキミング防止カード。
【請求項3】
薄膜状の写真フィルムを電磁波シールド材の表面に貼り付ける際に、該シールド材と写真フィルムとの間に薄膜状の熱融着シートを介在させてから全体を熱圧着する請求項1記載のスキミング防止カード。
【請求項4】
電磁波シールド材は厚さが100μm以下および薄膜状の写真フィルムは厚さが40μm以下であって、防止カードの全体厚が220μm以下である請求項1記載のスキミング防止カード。
【請求項5】
印画素材では、プラスチック薄膜として高密度ポリエチレンさらに酸化チタンを含有する低密度ポリエチレンを支持体上に溶融塗布し、表面をコロナ放電処理した後に写真乳剤を塗布している請求項1記載のスキミング防止カード。
【請求項6】
電磁波シールド材において、金属系素材の片面または両面に配置した軟質シートは、ポリプロピレンを主成分とする合成紙である請求項1記載のスキミング防止カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−147216(P2008−147216A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329040(P2006−329040)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(506025637)株式会社フジカラー北陸 (2)
【Fターム(参考)】