説明

冷たく、暗色を示すコーティング系

冷たく暗いコーティング構成物を生成するのに使用される層状コーティング構成物。このコーティング系は、樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射層を含む。光線吸収層がIR反射層上にコーティングされる。光線吸収層は、樹脂バインダーに分散したナノサイズ顔料を含む。本発明はまた、赤外線に曝される基材の温度上昇を抑制する方法を含み、この方法は、第1層として基材上にIR反射コーティング組成物を塗布すること、および、第1層の上に第2層を形成するように、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性コーティング組成物を塗布することを含み、ここで、第2層は、第2層が暗色を示すように樹脂バインダー中のチントを含み、このチントは、100nmまでの平均1次粒径を有するナノサイズの顔料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年2月5日に出願された、米国仮特許出願第60/899,608号の利益を主張し、この仮特許出願はその全体を参考として本明細書により援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、暗色を示し、また近赤外スペクトルの放射線を最少量だけ吸収するコーティング系に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
自動車コーティング、航空宇宙用コーティング、工業用コーティングおよび建築コーティングのような多くのコーティング用途において、暗色、例えば黒色および暗青色は、美感目的にとって特に望ましい。しかし、暗色の乗物および建築物(または他の囲まれたスペース)は、赤外(IR)線の吸収の影響を受けやすい。これらの暗色構造体は、わずかな量のIR線を反射するにすぎない。結果として、これらの構造体は温度上昇を示し、特によく晴れた日に、かなり高温になり、これらの構造体は、中に居る者にとって不快なものとなる。さらに、この場合、このような乗物または建築物は、高い反射率のより明るい色を有する構造体(例えば、白色または銀色のコーティング組成物(coating composition)によりコーティングされた乗物)に比べて、より高レベルの空調が、それらを快適に保つために必要とされるので、運用するのにより費用がかかる。
【0004】
暗色コーティング組成物は、通常、顔料としてカーボンブラックを用いている。カーボンブラックは可視光線の広いスペクトルを吸収し、コーティング組成物に使用された時に、望ましい暗黒色(漆黒(jet black))をもたらす。しかし、この広いスペクトルはまた、可視領域の外の放射線も含む。それゆえに、カーボンブラックを含む黒色コーティングでは、非可視光線のエネルギーが可視光線と共に吸収されるので、温度が上昇する傾向を有する。
【0005】
カーボンブラックを含む黒色コーティングが受ける熱負荷を避けるための1つの解決策は、2層系を提供することであった。上側の層は、暗色を示すように可視光線を吸収するがIR線に対して実質的に透過性である有機黒色顔料または有機顔料の混合物を含み、下側の層は、IR線を反射する組成物を含む。下側のIR反射層はIR線を反射し、コーティング系の温度上昇を最小にするが、上にある有機顔料層は、よく分散したカーボンブラック顔料に比べてかなり光を散乱する顔料を含む。それゆえに、有機黒色顔料層は真の黒色を実現せず、灰色または茶色に見え得る。
【0006】
別の手法として、IR反射組成物が、着色剤としての黒色顔料、およびIR線を反射するために反射性顔料を含む。やはり、このようなコーティング組成物は、漆黒のような深い色を通常示さない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、暗色を示す層状コーティング系を対象とし、前記コーティング系は、樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射性第1層、および、暗色を示し、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性第2層を含み、第2層は、樹脂バインダー中のチント(tint)を含み、このチントは、100nmまでの平均1次粒径を有するナノサイズの顔料を含む。本発明はまた、赤外線に曝される基材の温度上昇を抑制する方法を含み、この方法は、第1層として基材上にIR反射コーティング組成物を塗布すること、および、第1層の上に第2層を形成するように、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性コーティング組成物を塗布することを含み、ここで、第2層は、第2層が暗色を示すように樹脂バインダー中のチントを含み、このチントは、100nmまでの平均1次粒径を有するナノサイズの顔料を含む。やはり本発明に含まれるのは、樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射性第1層、および暗色を示し、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性第2層を含むコーティング系であり、この第2層は樹脂バインダー中のチントを含み、チントはナノサイズ顔料を含み、ここで、顔料は100nmまでのサイズであり、チントは1%の最大ヘーズを示し、コーティング系は少なくとも240の漆黒度(jetness)値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の層状コーティング系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、暗色(例えば漆黒)を示し、日光のような広いスペクトルの放射線に曝された時に、カーボンブラックを含むコーティングに比べて、かなり低下した温度上昇を受けるコーティング系を対象とする。暗色コーティング構成物、コーティング系などは、構成物または系が、漆黒、またはかなり黒い、もしくは本明細書において後に定められる漆黒度の値を示すのに十分なだけ濃い着色のような暗い色を示すことを意味する。カーボングラックコーティングに比べてかなり低下した温度上昇によって、本発明のコーティング系を有する物品が、カーボンブラックコーティングの温度上昇より少ないと容易に(例えば、触れることによって)検知される、放射線吸収に帰因する温度上昇を受けることを意味する。本明細書において記載される場合、IR線は太陽光のIR線を表し、それは約700nmから2500nmの波長の電磁スペクトルにおける放射線を含む。本明細書では、可視光線は、約400nmから700nmまでの波長の電磁スペクトルにおける放射線を含むと見なされている。
【0010】
図1は、基材4に塗布され、IR反射層6および可視光線吸収層8を含む、本発明のコーティング系2を示す。基材4は、数多くの形態をとり、自動車部品(金属パネル、革もしくはファブリックの座席部分、プラスチック部品(例えば、ダッシュボードもしくはステアリングホイール)、および/または乗物の他の内部表面が含まれる);航空宇宙用構成要素(航空機外部パネル(これは、金属であるかもしくは複合材料などから製造され得る)、革、プラスチックまたはファブリックの座席部分および内部パネル(制御パネルなどが含まれる)が含まれる);建築構成要素(外部パネルおよびルーフィング材が含まれる);ならびに工業用構成要素を含めて、様々な構成物(composition)から生じ得る。これらの例は限定しようとするものではない。コーティングされる任意の物品、特に暗色コーティング組成物によりコーティングされる物品は、日光のような広いスペクトルの放射線に曝された時に僅かな温度上昇を受け特に赤外線を反射する暗色コーティング組成物を塗布するために、本発明で使用されるのに適切であり得る。
【0011】
本発明のコーティング系2は、樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射層6を含む。適切な樹脂バインダーは水性または溶剤系であり、これらには、自動車用OEM組成物、自動車補修(refinish)組成物、工業用コーティング、建築用コーティング、電気(electric)コーティング、粉末コイルコーティングおよび航空宇宙用コーティングに使用されるものが含まれる。このような適切な樹脂バインダーは、ヒドロキシルもしくはカルボン酸含有アクリルコポリマーおよびヒドロキシルもしくはカルボン酸含有ポリエステルポリマーとオリゴマーおよびイソシアネートもしくはヒドロキシル含有ポリウレタンポリマーまたはアミンもしくはイソシアネート含有ポレウレア(これは硬化速度、外観および硬化したコーティングの他の物理的性質を向上させる)のような成分を含む硬化性コーティング組成物を含み得る。一実施形態において、IR反射層6は、通常のように、赤外線を反射するための成分、例えば、酸化鉄粉末、酸化チタン粉末、鱗片状アルミニウム粉末、ステンレス鋼粉末およびマイカ粉末(これは酸化チタンによりコーティングされていてもよい)を含む。そのようなものとして、IR反射層6は、IR線を反射する明るい色の層(例えば、白色であり得る)であり得る。代わりに、IR反射層6はまた、IR非吸収性顔料も含み得る。IR非吸収性顔料は、IR反射層6が何らかの色を有し、本質的に明るく着色していないように、供給され得る。IR非吸収性顔料の非限定的例は、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 139、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15:3、Pigment Green 36、BASFによるPaliogenおよびLumogen黒色顔料である。コーティング系2の使用中に可視光線吸収層8が損傷され、IR反射層6を露出させる場合には、何らかの色を有するIR反射層6は、損傷したコーティング系2「を通して姿をのぞかせる」明るい色を示さないであろう。さらに、IR反射層6はまた、通常のIR反射性黒色顔料、例えば、Ceramic Color AG235 Black、および、Ceramic Color AB820 Black(川村化学)、V−780 IR Black、V−799 IR Black、および10201 Eclipse Black、10202 Eclipse Black、および10203 Eclipse Black(Ferro Pigments)、Black 411A(Shepherd)、ならびにSicopal Black K 0095(BASF)を含み得る。
【0012】
IR反射層6は、温度上昇が問題である物品の基材4に直接、塗布されると想定されている。基材4はまた、さらなる処理層を含み得ること、および、第1層6は、さらなる層が基材4上に塗布されている場合でもやはり基材4上に塗布されると見なされていることが理解されるべきである。例えば、基材4が乗物(例えば、自動車または航空機)のパネルである場合、この乗物のパネルはまた、その上に、電着処理層またはホスフェート処理層を含み得る。この事例では、前記第1層は、実際には、電着層などに塗布されるが、本発明では、それでも第1層6は基材4上に塗布されると見なされる。
【0013】
所望の色を示すように所望の波長の可視光線を吸収するための第2層8は、IR反射層6上に塗布され、樹脂バインダーに分散したナノサイズ顔料を含む。樹脂バインダーは、IR反射層6の樹脂バインダーと同じであっても異なっていてもよく、前記のポリマー成分を含み得る。可視光線吸収層8におけるナノサイズ顔料は、IR線の波長では実質的に透過性であり、そのため、基材4の外部から来るIR線は、第2層8を実質的に透過する。実質的に透過性によって、可視光線吸収層8のナノサイズ顔料が、赤外線のエネルギーを、認められるほど散乱または吸収しないで、透過させることを意味する。したがって、IR線は、IR反射層6のIR反射顔料によって、基材4から反射される。IR反射層6によるIR線の反射により、基材4および下にある構成要素は、IR線の吸収低下のせいで、通常の暗色コーティング(例えば、カーボンブラックコーティング)に比べて、かなり低下した温度上昇を示す。
【0014】
可視光線吸収層に含まれるナノサイズの顔料は、BASFから入手可能なLumogen(登録商標)黒色顔料(ペリレン系黒色顔料)のような単一成分、または所望の色を実現するために選択される複数の顔料からなり得る。ナノサイズによって、顔料が、1ミクロン未満、より特別には約100nmまで、または約50nmまで、例えば約30nmまでの平均1次粒径(個々の粒子もしくはそれらの凝集体)を有することを意味する。
【0015】
光線吸収層8を調製するために、本発明の一実施形態では、ナノサイズ顔料が、チントの形態で樹脂バインダーに添加される。チントによって、分散剤中の顔料組成物を意味し、これは溶剤系樹脂バインダーと共存し得る樹脂(ポリマー)材料であり得る、あるいは、それは水性コーティング系と共存し得る。
【0016】
一実施形態において、ナノサイズ顔料を含むチントは、赤色、緑色、紫色、黄色および青色を含めて、様々な色の通常の顔料から生成される。適切な顔料の非限定的例には、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 139、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15:3、およびPigment Green 36が含まれる。ナノサイズ顔料を含むチントは、約0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満、より好ましくは約0.1mm以下の粒径を有するミル加工媒体により、バルクの有機顔料をミル加工することによって調製され得る。顔料粒子を含むチントは、高エネルギーミルで、任意選択のポリマー粉砕樹脂(grinding resin)と共に、有機溶剤系(例えば、分散剤を用いるブチルアセテート)中、顔料の1次粒径をナノ微粒子のサイズに低下させるようにミル加工される。
【0017】
適切な分散剤には、原子移動ラジカル重合によって製造され、頭(head)部分および尾(tail)部分を有するアクリルコポリマーが含まれ、このコポリマーにおいて、頭部分は顔料に対してアフィニティを示し(例えば、芳香族基)、尾部分はコーティング組成物の樹脂バインダーに適合性があり(例えば、アクリル基)、このポリマーは1,000から20,000の重量平均分子量を有する。例えば、分散剤は、多環式芳香族カルボン酸と反応したオキシラン官能性モノマーを含む第1ブロック、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む1つまたは複数のさらなるブロックを有するブロックコポリマーを含み得る。一実施形態において、第1ブロックは、ナフトエ酸と反応したグリシジル(メタ)アクリレートを含み、また互いに異なる第2および第3ブロックは、それぞれ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。このような分散剤の例は、SAC8R61(PPG Industries,Inc.から市販されているコーティング)に見出すことができる。
【0018】
他の適切な分散剤には、Lubrizol Corporation(オハイオ州、Wickliffe)から入手可能なSolsperse(登録商標)32,500、Byk Additives & Instruments(ドイツ、Wesel)から入手可能なDisperbyk 2050、またはLubrizol Corporationから入手可能なSolsperse(登録商標)27,000(水系で用いられる)が含まれる。
【0019】
一実施形態において、チントは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6875800号に記載のように、10%の最大ヘーズを、例えば、5%の最大ヘーズまたは1%の最大ヘーズを有する。ヘーズは、材料の透明性の測定であり、ASTM D 1003によって定められる。本明細書に記載されているヘーズの値は、n−ブチルアセテートのような適切な溶剤に分散した顔料について、経路長500ミクロンのセルにより透過率モードで、X−Rite 8400分光光度計を用いて求められている。液体試料のヘーズ(パーセント)は濃度(従って、液体を通る光の透過率)に依存するので、本明細書では、ヘーズ(パーセント)は、最大吸光度の波長で、約15%から約20%(例えば、17.5%で)の透過率で記述されている。
【0020】
チントのナノサイズ顔料を製造する他の適切な方法には、晶析、沈殿、気相凝縮、および化学的摩耗(chemical attrition)(すなわち、部分溶解)が含まれる。ナノサイズ顔料を含むチントは、所望の暗色を得るために混合され得る。
【0021】
コーティング内でのナノ粒子の再凝集を最少限度に抑えるために、樹脂コーティングナノ粒子分散体が使用され得る。本明細書で用いられる場合、「樹脂コーティングナノ粒子分散体」は、ナノ粒子およびナノ粒子上の樹脂コーティングを含む離散的「コンポジット微粒子」が分散した連続相を表す。樹脂コーティングナノ粒子分散体の例およびそれらの製造方法は、米国特許出願公開第2005/0287348号A1(2004年6月24日出願)および米国特許出願公開第2006/0251896号(2006年1月20日出願)に認められ、どちらの特許も参照によって本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の一実施形態において、コーティング系は、漆黒色を示す。色の漆黒度は色の暗さの尺度である。漆黒度は、分光光度計による色のデータを得ること、および、K.Lippok−Lohmer、Farbe+Lack、92、1024頁(1986年)において検討されている次の式を用いることによって定量化され得る。
【0023】
漆黒度=100(log10(Xn/X)−log10(Yn/Y)−log10(Zn/Z))
それゆえに、望ましい黒色コーティング系は大きな漆黒度の値を有する。本発明の一実施形態において、漆黒度の値は少なくとも240である。大きな漆黒度の値を実現するために、チントは、本発明のコーティング系に暗色をもたらすように、個別に、または組み合わせて使用され得る。特に、複数のチント(カーボンブラック顔料であるようなチント無しで)が、例えば少なくとも240の漆黒度の値を有する、漆黒色を実現するために、組み合わせてコーティング組成物に使用され得ることが見出された。
【0024】
本発明の層状コーティング系は、様々な基材に適用されるコーティング構成物に、冷たく暗い色を生み出すのに特に適することが見出された。可視光線吸収層は、可視光線の広いスペクトルを吸収して暗色を実現するが、IR線に対して透過性である。ナノサイズ顔料粒子は入射光が散乱しないようにするので、すっきりした(clean)暗色が認められる。可視光線吸収層を通過するIR線は、下にあるIR反射層によって反射される。この様に、本発明のコーティング系はIR線を吸収しないので、それによりコーティングされた物品は、IR線を追い出すことによって、通常のカーボンブラックコーティングに比べて低下した温度上昇を受ける。本発明のコーティング系は、自動車コーティング、建築コーティング、工業用コーティング、航空宇宙用コーティング(例えば、航空機)および柔軟コーティング(例えば、履き物)に特に有用である。
【0025】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに説明される。
【実施例】
【0026】
(実施例1〜7):顔料分散
(実施例1)
Pigment Yellow 138(PY 138)を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0027】
(実施例2)
Pigment Yellow 139(PY 139)を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0028】
(実施例3)
Pigment Red 179(PR 179)を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0029】
(実施例4)
Pigment Violet 29(PV 29)を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0030】
(実施例5)
Pigment Blue 15:3(PB 15:3)を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0031】
(実施例6)
Lumogen Black FK 4280を、QM−1 QMAX Supermill(Premier Mill、SPX Process Equipment)で、0.3mmのYTZミル加工媒体を用いて、表2に示す最終%ヘーズ値まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0032】
(比較例7)
Lumogen Black FK 4280の通常の顔料分散体を、Dispermat CN F2型分散機を、Dispermat+TML 1(バスケットミル)付属品と共に用い、1.2〜1.7mmのZirconoxミル加工媒体を用いて、6ヘグマン(Hegman)まで、表1に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。最終%ヘーズ値は表2に示す。
【0033】
【表1】

アクリルポリマーを、米国特許第6365666号に一般的に記載されているようにして、原子移動ラジカル重合法によって、重量ベースで次のモノマーから調製した:ブチルアクリラート19.9%、ブチルメタクリラート21.5%、グリシジルメタクリラート20.5%、およびヒドロキシルプロピルメタクリラート38.1%。ポリマーにおけるグリシジルメタクリラート単位は、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸により官能基化した。ポリマーは約9300の重量平均分子量を有する。
【0034】
【表2】

分析のために、最終のチントは溶剤により希釈した。%ヘーズは、X−Rite 8400分光光度計を用い、経路長500ミクロンのセルにより透過率モードで測定した。ここで報告した%ヘーズは、最大吸光度の波長で約17.5%の透過率でのものである。
【0035】
(実施例8〜12:コーティング組成物)
(実施例8)
7.15gのPPG Industries,Inc.の自動車用クリアコーティング(Diamond coat、DCT5002HC/DCT5001B)と、2.96gのチント混合物(10.14wt%の実施例1によるチント、6.17wt%の実施例2によるチント、12.21wt%の実施例3によるチント、33.40wt%の実施例4によるチント、および38.08wt%の実施例5によるチントからなる)とを用いて、塗料を配合した。塗料中の顔料の量は、塗料中の全不揮発分の6wt%であり、全顔料含有物に対するそれぞれの個々の顔料の重量パーセントは、10% Pigment Yellow 138、6% Pigment Yellow 139、12% Pigment Red 179、34% Pigment Violet 29、および38% Pigment Blue 15:3であった。この塗料を、#40のワイヤーバー(wire wound draw down bar)(PA−4140、Byk−Gardner)を用いて、コイルコーティングされ研磨されてない処理された白色パネル(APR33700、ACT Test Panels)であるTRUアルミニウム(04×12×038)上に塗布した。硬化塗料皮膜の漆黒度の値、全太陽光パーセント反射率、およびパネルの熱の蓄積を測定し、表3に報告する。
【0036】
(比較例9)
チント混合物を通常のチントの混合物から製造したことを除いて、実施例8を、塗料を塗られたパネルを生成するために繰り返した。ここで、最終の塗料における顔料の重量パーセントは、実施例8におけるものと同じであった、すなわち、全不揮発分に対して顔料が6wt%で、そのうち、10%がPigment Yellow 138、6%がPigment Yellow 139、12%がPigment Red 179、34%がPigment Violet 29、また38%がPigment Blue 15:3である。パネルは、表3に報告するように、漆黒度、%TSRおよび熱の蓄積について試験した。実施例8は、比較例9に比べて、かなり向上した漆黒度を示した。
【0037】
(実施例10)
7.15gのPPG Industries,Inc.の自動車用クリアコーティング(Diamond coat、DCT5002HC/DCT5001B)と、実施例6による2.89gのチントとを用いて、塗料を配合した。塗料中の顔料の量は、塗料中の全不揮発分の6wt%であった。この塗料を、実施例8におけるようにパネル上に塗布し、表3に報告するように、漆黒度、%TSRおよび熱の蓄積について試験した。
【0038】
(比較例11)
実施例6のチントの代わりに、比較例7による2.78gのチントを用いたこと以外は、実施例10を繰り返した。塗料中の顔料の量は塗料中の全不揮発分の6wt%であった。この塗料を、実施例10におけるようにパネル上に塗布し、表3に報告するように、漆黒度、%TSRおよび熱の蓄積について試験した。実施例10は、実施例11に比べて、かなり向上した漆黒度を示した。
【0039】
(比較例12)
実施例8〜11に対する比較例として、カーボンブラック含有塗料を、PPG Industries,Inc.の自動車用クリアコーティング(Diamond coat、DCT5002HC/DCT5001B)と、通常の黒色チントとを用いて配合した。塗料中のカーボンブラック顔料の量は塗料中の全不揮発分の6wt%であった。この塗料を、実施例8〜11におけるようにパネル上に塗布し、表3に報告するように、漆黒度、%TSRおよび熱の蓄積について試験した。実施例8、9、10、および11は全て、実施例12より、かなり向上した%TSR、および周囲温度を超えるかなり小さい温度上昇を示した。
【0040】
【表3】

漆黒度は、分光光度計(XRite MA68、75°のカラーデータを用いる)によりカラーデータを得ること、および、K. Lippok−Lohmer、Farbe+Lack、92、1024頁(1986年)において検討されている次の式:漆黒度=100(log10(Xn/X)−log10(Yn/Y)−log10(Zn/Z))を用いることによって求めた。
**全太陽光パーセント反射率(%TSR)は、300〜2500nmの波長範囲に渡ってCary 500(Varian)分光光度計により測定したデータから、ASTM E 903およびASTM E 891の方法を用いて計算した。
***熱の蓄積は、ASTM D 4803−97に記載されているように、ヒートランプの下で、実験室における周囲温度を超える温度上昇によって定量化した。
【0041】
(実施例13〜14:顔料分散)
(実施例13)
Lumogen Black FK 4280を、実験用分散機(Model 2000、Premier Mill)を用い、1.25クォート(quart)の水冷ステンレス鋼フラスコ中、40〜80ミクロンのホウケイ酸ガラススフィアであるDurasphere(GL−0179、MoSci Corporationによる)により、表5に示す最終%ヘーズ値を有するナノサイズ粒子に、表4に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させた。
【0042】
(比較例14)
Lumogen Black FK 4280を、Red Devilシェーカーで30分間、0.7〜1.2mmのZirconoxミル加工媒体を用い、8オンスの容器中で、8ヘグマンまで、表4に示すミルベース配合中でミル加工し、分散させ、表5に示す最終%ヘーズ値を達成した。
【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

分析のために、最終のチントは溶剤により希釈した。%ヘーズは、X−Rite 8400分光光度計を用い、経路長500ミクロンのセルにより透過率モードで測定した。ここで報告した%ヘーズは、最大吸光度の波長で約17.5%の透過率でのものである。
【0045】
(実施例15〜16:コーティング組成物)
(実施例15)
5.72gのPPG Industries,Inc.の自動車用クリアコーティング(Diamond coat、DCT5002HC/DCT5001B)と、実施例13による4.32gのチントとを用いて、塗料を配合した。塗料中の顔料の量は、塗料中の全不揮発分の6wt%であった。この塗料を、#60のワイヤーバー(PA−4140、Byk−Gardner)を用いて、コイルコーティングされ研磨されてない処理された白色パネル(APR33700、ACT Test Panels)であるTRUアルミニウム(04×12×038)上に塗布した。漆黒度、%TSRおよびパネルの熱の蓄積を表6に示す。
【0046】
(比較例16)
実施例15に対する比較例として、5.72gのPPG Industries,Inc.の自動車用クリアコーティング(Diamond coat、DCT5002HC/DCT5001B)と、比較例14による2.55gのチントとを用いて、塗料を配合した。塗料中の顔料の量は、塗料中の全不揮発分の6wt%であった。この塗料を、#60のワイヤーバー(PA−4140、Byk−Gardner)を用いて、コイルコーティングされ研磨されてない処理された白色パネル(APR33700、ACT Test Panels)であるTRUアルミニウム(04×12×038)上に塗布した。漆黒度、%TSRおよびパネルの熱の蓄積を表6に示す。実施例15は、比較例16に比べて、かなり向上した漆黒度を示した。
【0047】
【表6】

漆黒度は、分光光度計(X−Rite MA68、75°)によりカラーデータを得ること、および、K.Lippok−Lohmer、Farbe+Lack、92、1024頁(1986年)において検討されている次の式:漆黒度=100(log10(Xn/X)−log10(Yn/Y)−log10(Zn/Z))を用いることによって求めた。
**全太陽光%反射率(%TSR)は、300〜2500nmの波長範囲に渡ってCary 500(Varian)分光光度計により測定したデータから、ASTM E 903およびASTM E 891の方法を用いて計算した。
***熱の蓄積(ΔTlu)は、ASTM D 4803−97に記載されているように、ヒートランプの下で、実験室における周囲温度を超える温度上昇によって定量化した。
【0048】
(比較例17:白色パネル)
実施例8〜12、15および16のコーティングしたパネルに対する比較例として、漆黒度、全太陽光%反射率(%TSR)、および熱の蓄積(ΔTlu)を、これらの実施例において使用したコーティングされた白色パネルについて、すなわち、コイルコーティングされ研磨されてない処理された白色パネル(APR33700、ACT Test Panels)であるTRUアルミニウム(04×12×038)について求めた。漆黒度の値は11であり、%TSRは73.3であり、ΔTluは95°Fであった。
【0049】
変更が、前述の説明において開示された基本理念から逸脱することなく本発明になされ得ることが、当業者によって容易に理解されるであろう。このような変更は、特許請求の範囲が、その言葉によって、そうではないと明示的に述べているのでなければ、以下の特許請求の範囲内に含まれると見なされるべきである。したがって、本明細書において詳細に説明された特定の実施形態は、例示にすぎず、添付の特許請求の範囲、および任意のおよび全てのその等価物の最大限の範囲を与えられるべきである、本発明の範囲に対する限定ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射性第1層;および
暗色を示し、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性第2層
を含み、前記第2層が樹脂バインダー中のチントを含み、前記チントが100nmまでの平均1次粒径を有するナノサイズ顔料を含む、暗色を示す層状コーティング系。
【請求項2】
前記ナノサイズ顔料が50nmまでの平均1次粒径を有する、請求項1に記載の層状コーティング系。
【請求項3】
前記ナノサイズ顔料が30nmまでの平均1次粒径を有する、請求項1に記載の層状コーティング系。
【請求項4】
前記層状コーティング系が少なくとも240の漆黒度の値を示す、請求項1に記載の層状コーティング系。
【請求項5】
前記チントがそれぞれ10%の最大ヘーズを有する、請求項1に記載の層状コーティング系。
【請求項6】
前記チントがそれぞれ1%の最大ヘーズを有する、請求項1に記載の層状コーティング系。
【請求項7】
前記チントがそれぞれ1%の最大ヘーズを有する、請求項4に記載の層状コーティング系。
【請求項8】
物品の表面に位置する請求項1に記載の層状コーティング系を備えるコーティングされた物品。
【請求項9】
前記表面が、金属、複合材料、ファブリック、革またはプラスチックである、請求項8に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
航空機部品である、請求項8に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
基材上に第1層としてIR反射性コーティング組成物を塗布すること;および
前記第1層上に、第2層を生成するように、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性コーティング組成物を塗布すること
を含み、前記第2層が樹脂バインダー中のチントを含み、その結果、前記第2層が暗色を示し、前記チントが100nmまでの平均1次粒径を有するナノサイズ顔料を含む、赤外線に曝される基材の温度上昇を抑制する方法。
【請求項12】
ナノサイズ顔料が50nmまでの平均1次粒径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ナノサイズ顔料が30nmまでの平均1次粒径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
層状コーティング系が少なくとも240の漆黒度の値を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
チントがそれぞれ10%の最大ヘーズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
チントがそれぞれ1%の最大ヘーズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
チントがそれぞれ1%の最大ヘーズを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
樹脂バインダー中のIR反射顔料を含むIR反射性第1層;および
暗色を示し、IR線に対して実質的に透過性である可視光線吸収性第2層
を含み、前記第2層が樹脂バインダー中のチントを含み、前記チントがナノサイズ顔料を含み、前記顔料が100nmまでの平均1次粒径を有し、前記チントが1%の最大ヘーズを示し、前記コーティング系が少なくとも240の漆黒度の値を有する、暗色コーティング系。
【請求項19】
複数の前記チントを含む、請求項18に記載のコーティング系。
【請求項20】
物品の表面に位置する、請求項18に記載のコーティング系を備えるコーティングされた物品。
【請求項21】
前記表面が、金属、複合材料、ファブリック、革またはプラスチックである、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項22】
前記物品が航空機構成要素である、請求項20に記載のコーティングされた物品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−517817(P2010−517817A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548487(P2009−548487)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/052899
【国際公開番号】WO2008/097895
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】