説明

冷凍サイクルの配管用継手

【課題】シール性を長期間にわたって維持しうるとともに、部品点数の少ない冷凍サイクルの配管用継手を提供する。
【解決手段】配管用継手は、円筒状の嵌合凸部12を有する雄側継手部材11と、雄側継手部材11の嵌合凸部12が嵌る嵌合凹部14を有する雌側継手部材13と、嵌合凸部12の外周面に装着されて嵌合凸部12と嵌合凹部14との間を密封するシールリング15とを備えている。シールリング15を、嵌合凸部12の外周面に形成した環状溝23内に装着する。環状溝23の底面に、シールリング係合用突起24を全周にわたって一体に形成する。シールリング15の内周面における嵌合凸部12の長さ方向の中間部に、係合用突起24が嵌合する環状の凹所25を全周にわたって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍サイクルの配管用継手に関し、さらに詳しくは、圧縮機、ガスクーラ、エバポレータ、減圧器、気液分離器およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器が配管により接続されており、かつたとえばCO(二酸化炭素)などの超臨界冷媒が用いられる超臨界冷凍サイクルにおいて、配管用パイプと各種機器との接続、および/または配管用パイプどうしの接続に好適に使用される配管用継手に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「超臨界冷凍サイクル」とは、高圧側において、冷媒が臨界圧力を超えた超臨界状態となる冷凍サイクルを意味するものとし、「超臨界冷媒」とは、超臨界冷凍サイクルに用いられる冷媒を意味するものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、たとえば自動車に搭載されるカーエアコンとしては、圧縮機、コンデンサ、エバポレータ、気液分離器および減圧器が配管により接続されており、かつフロン系冷媒が用いられる冷凍サイクルが広く使用されている。このような冷凍サイクルにおける配管用パイプと各種機器との接続、および/または配管用パイプどうしの接続に用いられる配管用継手としては、一般的に、円筒状の嵌合凸部を有する雄側継手部材と、雄側継手部材の嵌合凸部が嵌る嵌合凹部を有する雌側継手部材と、嵌合凸部の外周面に装着されて嵌合凸部と嵌合凹部との間を密封する断面円形のシールリングとを備えており、嵌合凸部の外周面に、環状溝が全周にわたって形成され、環状溝内にシールリングが弾性変形した状態で装着されたもの用いられている。
【0004】
ところが、超臨界冷凍サイクルに用いられる超臨界冷媒は作動圧力が高いので、フロン系冷媒が用いられる冷凍サイクルの配管用継手を使用した場合、図5に示すように、超臨界冷凍サイクルの作動時には、シールリング(30)に図5に矢印で示す外部側、すなわち嵌合凸部(32)の基端部側を向いた大きな力が作用する。その結果、シールリング(30)が外部側、すなわち雄側継手部材(31)の嵌合凸部(32)の基端部側に変形して環状溝(33)内からはみ出し、シールリング(30)の一部分が嵌合凸部(32)の外周面と雌側継手部材(34)の嵌合凹部(35)の内周面との間に挟み込まれることがあり、超臨界冷凍サイクルのオン、オフを繰り返すことによりシールリング(30)が部分的に破損し、シール性が短期間で低下するおそれがある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、超臨界冷凍サイクルに用いられる配管用継手として、円筒状の嵌合凸部を有する雄側継手部材と、雄側継手部材の嵌合凸部が嵌る嵌合凹部を有する雌側継手部材と、嵌合凸部の外周面に装着されて嵌合凸部と嵌合凹部との間を密封する断面円形のシールリングと、シールリングの環状溝内からのはみ出しを防止するバックアップリングとを備えており、嵌合凸部の外周面に、環状溝が全周にわたって形成され、環状溝内にシールリングとバックアップリングとが、後者が外部側に位置するように装着されたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の配管用継手によれば、シールリングの他にバックアップリングを必要とするので、部品点数が多くなるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−42815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、シール性を長期間にわたって維持しうるとともに、部品点数の少ない冷凍サイクルの配管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
1)円筒状の嵌合凸部を有する雄側継手部材と、雄側継手部材の嵌合凸部が嵌る嵌合凹部を有する雌側継手部材と、嵌合凸部の外周面に装着されて嵌合凸部と嵌合凹部との間を密封するシールリングとを備えており、嵌合凸部の外周面に、シールリング装着用の環状溝が全周にわたって形成され、環状溝内にシールリングが装着された冷凍サイクルの配管用継手であって、
環状溝の底面に、シールリング係合用突起が形成され、シールリングにシールリング係合用突起が嵌合する凹所が形成されている冷凍サイクルの配管用継手。
【0009】
2)シールリング係合用突起が、環状溝の底面に一体に設けられている上記1)記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【0010】
3)シールリング係合用突起が、環状溝の全周にわたって設けられている上記1)または2)記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【0011】
4)シールリングの内周面における嵌合凸部の長さ方向の中間部に、環状の凹所が全周にわたって形成されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【0012】
5)嵌合凸部の環状溝における嵌合凸部基端部側の側面と、シールリングとの間に隙間が形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【0013】
6)雄側継手部材および雌側継手部材にそれぞれ冷媒流路が形成されており、雄型継手部材の嵌合凸部の内部が冷媒流路に通じるとともに、雌型継手部材の嵌合凹部が冷媒流路に通じている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【0014】
7)圧縮機、ガスクーラ、エバポレータ、減圧器、気液分離器およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器が配管により接続されており、かつ超臨界冷媒を用いる冷凍サイクルであって、配管用パイプと各種機器、および/または配管用パイプどうしが、上記1)〜6)のうちのいずれかに記載された配管用継手により接続されている超臨界冷凍サイクル。
【0015】
8)超臨界冷媒が二酸化炭素からなる上記7)記載の超臨界冷凍サイクル。
【0016】
9)上記7)または8)記載の超臨界冷凍サイクルがカーエアコンとして搭載されている車両。
【発明の効果】
【0017】
上記1)の配管用継手によれば、環状溝の底面に、シールリング係合用突起が設けられ、シールリングにシールリング係合用突起が嵌合する凹所が形成されているので、この配管用継手を適用した超臨界冷凍サイクルの作動時には、シールリングがシールリング係合用突起に係合することによって、シールリングが、外部側に変形して環状溝内からはみ出すことが防止され、その結果シールリングの一部分が嵌合凸部の外周面と嵌合凹部の内周面との間に挟み込まれることが防止される。したがって、超臨界冷凍サイクルのオン、オフを繰り返すことによるシールリングの部分的な破損が防止され、シール性が長期間にわたって維持される。しかも、特許文献1記載の配管用継手のようにバックアップリングを必要とせず、部品点数が少なくなる。
上記2)の配管用継手によれば、環状溝の底面に、シールリング係合用突起を比較的簡単に設けることができる。
【0018】
上記3)〜5)の配管用継手によれば、この配管用継手を適用した超臨界冷凍サイクルの作動時におけるシールリングの環状溝内からのはみ出し防止効果が、一層優れたものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による配管用継手を、超臨界冷凍サイクルの配管用パイプどうしの接続に適用したものである。
【0020】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、以下の説明において、図3の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0021】
図1は超臨界冷凍サイクルを示し、図2および図3は配管用継手の全体構成を示し、図4はその要部の構成を示す。
【0022】
図1において、超臨界冷凍サイクルは、たとえばCO(二酸化炭素)などの超臨界冷媒が用いられるものであって、圧縮機(1)、ガスクーラ(2)、エバポレータ(3)、気液分離器としてのアキュムレータ(4)、減圧器としての膨張弁(5)、およびガスクーラ(2)から出てきた冷媒とエバポレータ(3)から出てアキュムレータ(4)を通過してきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器(6)が、配管(7)により接続されたものであり、配管(7)を構成する配管用パイプと超臨界冷凍サイクル用各種機器、および/または配管用パイプどうしが、配管用継手により接続されている。ここで、超臨界冷凍サイクル用各種機器とは、圧縮機(1)、ガスクーラ(2)、エバポレータ(3)、アキュムレータ(4)、膨張弁(5)および中間熱交換器(6)である。この超臨界冷凍サイクルは、たとえばカーエアコンとして自動車などの車両に搭載される。なお、超臨界冷媒としては、COに代えて、エチレン、エタン、酸化窒素なども使用可能である。
【0023】
図2および図3において、配管用パイプ(21)(22)どうしを接続する配管用継手(10)は、円筒状の嵌合凸部(12)を有する雄側継手部材(11)と、内周面が円筒面となされかつ雄側継手部材(11)の嵌合凸部(12)が嵌る嵌合凹部(14)を有する雌側継手部材(13)と、雄側継手部材(11)の嵌合凸部(12)の外周面および雌側継手部材(13)の嵌合凹部(14)の内周面の間をシールするシールリング(15)とを備えている。
【0024】
雄側継手部材(11)および雌側継手部材(13)はそれぞれ金属、ここではアルミニウムから形成されたブロック状であり、その一端部(上端部)に左右方向にのびる貫通状の冷媒流路(16)(17)が互いに合致するように形成されている。また、雄側継手部材(11)の他端部(下端部)に左右方向にのびる貫通穴(18)が形成されるとともに、雌側継手部材(13)の他端部に左右方向にのびる貫通状のめねじ穴(19)が、雄側継手部材(11)の貫通穴(18)と合致するように形成されている。雄側継手部材(11)の円筒状の嵌合凸部(12)は、その内部が冷媒流路(16)に通じるように、冷媒流路(16)の右端開口の周囲の部分に右方突出状に一体に形成されている。また、雄側継手部材(11)の冷媒流路(16)内の他端部には、金属製、ここではアルミニウム製配管用パイプ(21)の端部が挿入され、雄側継手部材(11)に接合されている。雌側継手部材(13)の嵌合凹部(14)は、冷媒流路(17)の一端部を含みかつ冷媒流路(17)と同心状になるように形成され、冷媒流路(17)と通じている。また、雌側継手部材(13)の冷媒流路(17)内の他端部には、金属製、ここではアルミニウム製配管用パイプ(22)の端部が挿入され、雌側継手部材(13)に接合されている。
【0025】
雄側継手部材(11)の嵌合凸部(12)の外周面には、シールリング(15)を装着するための環状溝(23)が全周にわたって形成されている。図4に示すように、環状溝(23)の底面には、環状のシールリング係合用突起(24)が全周にわたって一体に形成されている。シールリング(15)は、たとえばHNBR、NBRなどにより形成されたものであり、内周面が環状溝(23)の幅よりも狭い幅の円筒面状となされている。シールリング(15)の内周面における嵌合凸部(12)の長さ方向(左右方向)の中間部に、シールリング係合用突起(24)が嵌合する環状凹溝(25)(凹所)が全周にわたって形成されている。そして、シールリング(15)は、凹所(25)内にシールリング係合用突起(24)が嵌め入れられた状態で環状溝(23)内に装着されている。
【0026】
雄側継手部材(11)と雌側継手部材(13)とは、雄側継手部材(11)の嵌合凸部(12)が雌側継手部材(13)の嵌合凹部(14)内に嵌め入れられた状態で、雄側継手部材(11)の貫通穴(18)に通されたボルト(26)を雌側継手部材(13)のめねじ穴(19)にねじ嵌めることによって相互に連結されて配管用継手(10)が形成されており、これにより両配管用パイプ(21)(22)が配管用継手(10)を介して接続されている。このとき、シールリング(15)は弾性変形してその外周面が雌側継手部材(13)の嵌合凹部(14)の内周面に密着するが、環状溝(23)の外部側(嵌合凸部(12)の基端部側)の側面とシールリング(15)との間には隙間(27)が形成されている。
【0027】
超臨界冷凍サイクルの作動時には、シールリング(15)に図4に矢印で示す外部側を向いた大きな力が作用する。ところが、シールリング(15)がシールリング係合用突起(24)に係合しているので、シールリング(15)が変形して環状溝(23)内からはみ出すことが防止され、その結果シールリング(15)の一部分が嵌合凸部(12)の外周面と嵌合凹部(14)の内周面との間に挟み込まれることが防止される。したがって、超臨界冷凍サイクルのオン、オフを繰り返すことによるシールリング(15)の部分的な破損が防止され、シール性が長期間にわたって維持される。
【0028】
上記実施形態においては、この発明の配管用継手(10)が、超臨界冷凍サイクルの配管(7)を構成する配管用パイプ(21)(22)どうしの接続に用いられているが、これに限定されるものではなく、この発明の配管用継手(10)は、超臨界冷凍サイクルの配管(7)を構成する配管用パイプと圧縮機(1)、ガスクーラ(2)、エバポレータ(3)、アキュムレータ(4)、膨張弁(5)および中間熱交換器(6)のうちの少なくともいずれか1つの機器との接続に用いられることもある。この場合、雄側継手部材(11)および雌側継手部材(13)のうちのいずれか一方が、上記機器に直接取り付けられる。
【0029】
また、上記実施形態においては、この発明の配管用継手(10)が、超臨界冷凍サイクルにおける配管用パイプと各種機器との接続、および/または配管用パイプどうしの接続に用いられているが、これに限定されるものではなく、圧縮機、コンデンサ、エバポレータ、気液分離器および減圧器が配管により接続されており、かつフロン系冷媒が用いられる冷凍サイクルにおける配管用パイプと各種機器との接続、および/または配管用パイプどうしの接続に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による配管用継手を用いた超臨界冷凍サイクルを示す図である。
【図2】この発明による配管用継手を示す一部切り欠き分解斜視図である。
【図3】この発明による配管用継手を示す縦断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】従来の配管用継手の問題点を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
(1):圧縮機
(2):ガスクーラ
(3):エバポレータ
(4):アキュムレータ(気液分離器)
(5):膨張弁(減圧器)
(6):中間熱交換器
(7):配管
(10):配管用継手
(11):雄側継手部材
(12):嵌合凸部
(13):雌側継手部材
(14):嵌合凹部
(15):シールリング
(16)(17):冷媒流路
(21)(22):配管用パイプ
(23):環状溝
(24):シールリング係合用突起
(25):環状凹溝(凹所)
(27):隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の嵌合凸部を有する雄側継手部材と、雄側継手部材の嵌合凸部が嵌る嵌合凹部を有する雌側継手部材と、嵌合凸部の外周面に装着されて嵌合凸部と嵌合凹部との間を密封するシールリングとを備えており、嵌合凸部の外周面に、シールリング装着用の環状溝が全周にわたって形成され、環状溝内にシールリングが装着された冷凍サイクルの配管用継手であって、
環状溝の底面に、シールリング係合用突起が設けられ、シールリングにシールリング係合用突起が嵌合する凹所が形成されている冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項2】
シールリング係合用突起が、環状溝の底面に一体に設けられている請求項1記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項3】
シールリング係合用突起が、環状溝の全周にわたって設けられている請求項1または2記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項4】
シールリングの内周面における嵌合凸部の長さ方向の中間部に、環状の凹所が全周にわたって形成されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項5】
嵌合凸部の環状溝における嵌合凸部基端部側の側面と、シールリングとの間に隙間が形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項6】
雄側継手部材および雌側継手部材にそれぞれ冷媒流路が形成されており、雄型継手部材の嵌合凸部の内部が冷媒流路に通じるとともに、雌型継手部材の嵌合凹部が冷媒流路に通じている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の冷凍サイクルの配管用継手。
【請求項7】
圧縮機、ガスクーラ、エバポレータ、減圧器、気液分離器およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器が配管により接続されており、かつ超臨界冷媒を用いる冷凍サイクルであって、配管用パイプと各種機器、および/または配管用パイプどうしが、請求項1〜6のうちのいずれかに記載された配管用継手により接続されている超臨界冷凍サイクル。
【請求項8】
超臨界冷媒が二酸化炭素からなる請求項7記載の超臨界冷凍サイクル。
【請求項9】
請求項7または8記載の超臨界冷凍サイクルがカーエアコンとして搭載されている車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−198549(P2007−198549A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19974(P2006−19974)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】