説明

冷凍サイクル

【課題】冷凍サイクルにおける装置構成や制御方式を複雑にすることなく、その空調性能を高く維持する。
【解決手段】本発明のある態様の冷凍サイクルは、可変容量圧縮機1と、圧縮機1から吐出された冷媒を冷却する凝縮器2と、凝縮器2から送出された冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させて導出するとともに、その導出された冷媒の下流側圧力が設定圧力となるようにその弁開度が自律的に調整される膨張装置3と、膨張装置3から導出された冷媒を蒸発させて外部と熱交換をするとともに、その冷媒を圧縮機1に向けて送出する蒸発器4と、冷凍サイクルの所定の2点間の差圧または流量が一定となるように、圧縮機1の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御して、圧縮機1の吐出容量を変化させる制御弁6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置に好適な冷凍サイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
ところで、このような圧縮機は、エンジンの大きな負荷になり得る。このため、例えば車両の急加速時や登坂走行時など、エンジンの動力を車両の推進力に振り向けたい高負荷時には、その圧縮機の負荷トルクを低減する必要がある。従来においては、この負荷トルクを一時的にカットできるように、回転軸の一端にエンジンの駆動力を伝達または遮断する電磁クラッチが設けられた可変容量圧縮機も採用されていた。しかし、低コスト化等の理由から近年では電磁クラッチを用いずにエンジンと回転軸とを直結したいわゆるクラッチレス式の圧縮機が主流になりつつある。
【0005】
このクラッチレス式の圧縮機には、例えば吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、その弁部を閉じ方向に作用させるような電磁力を発生させるソレノイドとを備えた外部制御方式の制御弁が用いられる。この制御弁では、ソレノイドへの通電を遮断すると弁部が全開状態となり、クランク圧力Pcを高く維持できる。その結果、揺動板が回転軸に対してほぼ直角になり、圧縮機を最小容量運転に移行させることができる。つまり、エンジンと回転軸とが直結されていても、実質的に吐出容量をゼロに近づけることができ、それにより負荷トルクを最小化することができるのである。このような制御弁としては、例えば圧縮機の吸入圧力Psに基づいて弁開度を調整して容量制御を行ういわゆるPs感知弁、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)に基づいて容量制御を行ういわゆるPd−Ps弁、圧縮機の吐出容量そのものが設定値となるように制御するいわゆる流量制御弁などが採用される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
Ps感知弁は、蒸発器出口側の冷媒温度に比例する吸入圧力Psを直接制御するため、蒸発器にて熱交換される空気の除湿温度を調整し易いといった利点がある。すなわち、一般に蒸発器の前後には送風用のファンとヒータがそれぞれ配置されており、ファンにより送られた空気が蒸発器を通過する際に蒸発潜熱により冷却される。冷却された空気はヒータにて適温に加熱されて車室内に送られる。空気を乾燥させるためには、蒸発器を通過する冷媒温度を低くして空気中の水分を多く除去すればよく、逆にある程度の湿度を保持するためには、その冷媒温度をやや高めに設定すればよい。このような冷媒温度の調整や、それによって熱交換される空気の湿度の調整を安定に行うことができるといった利点がある。しかし、吸入圧力Psに基づく制御であるため、吐出容量を制御するうえでは応答性に欠ける場合がある。
【0007】
これに対し、Pd−Ps弁は、吐出圧力Pd自体の大きさに基づいた容量制御を行うため、吐出容量を変化させるのに応答性に優れる。また、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が圧縮機の負荷トルクを反映するものであるため、エンジンの負荷に応じてその負荷トルクを調整しやすいといった利点がある。流量制御弁は、その吐出容量そのものを直接変化させるため、その容量制御の応答性に優れるという利点がある。
【特許文献1】特開2005−214059号公報
【特許文献2】特開2001−132650号公報
【特許文献3】特開2006−17035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、逆に、Pd−Ps弁や流量制御弁は吸入圧力Psを制御するものではないため、その差圧制御や流量制御に伴って吸入圧力Psが変化すると、蒸発器出口の空気の吹き出し温度が不安定になり、意図した除湿性能が得られなくなる可能性がある。また、場合によっては吸入圧力Psが下がりすぎて過剰冷房となることもあり得る。このため、通常は蒸発器の出口温度がフィードバックされて吸入圧力Psが下がりすぎることのないよう、各制御弁の開度が制御される。すなわち、各制御弁においてその本来の制御方式を基本としながらも、状況に応じて他の制御弁の機能を補わなければならず、その点で制御方法および装置の構成が煩雑になるといった問題があった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、冷凍サイクルにおける装置構成や制御方式を複雑にすることなく、その空調性能を高く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の冷凍サイクルは、空調装置を構成する冷凍サイクルにおいて、吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出するとともに、その冷媒の吐出容量がクランク室内のクランク圧力に応じて変化する可変容量圧縮機と、可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、外部熱交換器から送出された冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させて導出するとともに、その導出された冷媒の下流側圧力が設定圧力となるようにその弁開度が自律的に調整される膨張装置と、膨張装置から導出された冷媒を蒸発させて外部と熱交換をするとともに、その冷媒を可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、冷凍サイクルの所定の2点間の差圧または流量が一定となるように、可変容量圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、を備える。
【0011】
ここでいう「制御弁」は、可変容量圧縮機の吐出圧力と吸入圧力との差圧など、2点間の差圧が設定差圧となるように制御する定差圧弁であってもよい。あるいは、可変容量圧縮機の冷媒出口から導出される冷媒の流量が設定流量となるように制御する流量制御弁であってもよい。後者の場合、冷媒の流量が設定流量となるよう弁開度が自律的に調整されるものでもよい。あるいは、可変容量圧縮機の出口と吐出室との間の所定位置の冷媒通路断面を固定する一方、その出口圧力と吐出室圧力との差圧が設定差圧となるように制御することで、可変容量圧縮機の冷媒出口から導出される冷媒の流量が設定流量となるように制御するものでもよい。
【0012】
この態様によると、膨張装置の下流側圧力が設定圧力となるようにその弁開度が自律的に調整されるため、その設定圧力を適切に設定することにより、蒸発器内の冷媒圧力を適正値に保持でき、その蒸発器による所望の除湿性能を得ることができる。一方、制御弁により可変容量圧縮機の吐出容量を直接的に制御することもできるため、その容量制御の応答性を良好に保つことができる。その結果、装置構成や制御方式を複雑にすることなく、その空調性能を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷凍サイクルにおける装置構成や制御方式を複雑にすることなく、その空調性能を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【0016】
この冷凍サイクルは、車両用空調装置を構成し、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮する可変容量圧縮機(以下、単に「圧縮機」と表記する)1、圧縮された冷媒を凝縮して冷却する凝縮器2(「外部熱交換器」に該当する)、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張装置3、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器4を備えている。蒸発器4の前後には送風用のファン5と図示しないヒータがそれぞれ配置されており、ファン5により送られた空気が蒸発器4を通過する際に蒸発潜熱により冷却される。冷却された空気はヒータにて適温に加熱されて車室内に送られる。
【0017】
圧縮機1は、蒸発器4側から吸入室に導入された冷媒ガスをシリンダに導入して圧縮し、吐出室から凝縮器2側へ高温・高圧の冷媒を吐出する。この吐出冷媒の一部は可変容量圧縮機用制御弁(以下、単に「制御弁」と表記する)6を介してクランク室54内に導入され、圧縮機1の容量制御に供される。制御弁6は、ソレノイド駆動の電磁弁として構成され、図示しない制御部が駆動回路を駆動してこれを通電制御する。
【0018】
図2は、圧縮機の構成を表す断面図である。
圧縮機1は、そのハウジングとして、複数のシリンダ52が形成されたシリンダブロック101と、その前端側に接合されたフロントハウジング102と、後端側にバルブプレート103を介して接合されたリアハウジング104とを備えている。シリンダブロック101とフロントハウジング102とにより囲まれた内部空間にクランク室54およびシリンダ52が区画形成されている。リアハウジング104は、その内部空間に吸入室51、吐出室53および弁収容室55が区画形成されている。リアハウジング104には、また、蒸発器4側から吸入室51に冷媒を導入する冷媒入口56、および吐出室53から凝縮器2側へ吐出冷媒を導出する冷媒出口57が設けられている。
【0019】
クランク室54には、その中心を貫通するように回転軸106が配置されている。この回転軸106は、シリンダブロック101に設けられた軸受107と、フロントハウジング102に設けられた軸受108とによって回転自在に支持されている。回転軸106にはラグプレート109が固定されており、そのラグプレート109に突設された支持アーム110等を介して揺動板111(「揺動体」に該当する)が支持されている。揺動板111は、回転軸106の軸線に対して傾動可能となっており、複数のシリンダ52に摺動自在に配置されたピストン112にシュー114を介して連結されている。回転軸106は、その前端部分がフロントハウジング102を貫通して外部に延出しており、その先端部分にはブラケット117が螺着されている。また、回転軸106とフロントハウジング102との前端部分の隙間を外側からシールするように、軸シール部材としてのリップシール115が設けられている。リップシール115は、回転軸106の周面に摺接しつつ、その周面に沿った冷媒ガスの漏洩を防止している。
【0020】
フロントハウジング102の前端部分には、エンジンからの駆動力を伝達するプーリ118が軸受119を介して回転自在に支持されている。このプーリ118は、エンジンの駆動力をブラケット117を介して回転軸106に伝達する。
【0021】
リアハウジング104の吸入室51は、バルブプレート103に設けられた吸入用リリーフ弁121を介してシリンダ52に連通するとともに冷媒入口56を介して蒸発器4にも連通している。吐出室53は、バルブプレート103に設けられた図示しない吐出用リリーフ弁を介してシリンダ52に連通するとともに冷媒出口57を介して凝縮器2にも連通している。弁収容室55は、リアハウジング104のシリンダブロック101と反対側に突設されており、吐出室53およびクランク室54にそれぞれ連通している。
【0022】
圧縮機1の揺動板111は、その角度がクランク室54内でその揺動板111を付勢するスプリング125、126の荷重や、揺動板111につながるピストン112の両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この圧縮機1の揺動板111の角度は、クランク室54内に吐出冷媒の一部を導入してクランク圧力Pcを変化させ、ピストン112の両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。この揺動板111の角度の変化によってピストン112のストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量を調整するようにしている。このクランク室54内の圧力は、制御弁6により制御される。
【0023】
クランク室54と吸入室51とを連通する図示しない冷媒通路には、断面積が固定されたオリフィスが配設されており、クランク室54から吸入室51へ予め設定した最低流量の冷媒の流れを許容し、圧縮機1における冷媒の内部循環を確保している。圧縮機1の吐出室53と凝縮器2との間の冷媒通路には、一方向への冷媒の流れを許容する図示しない逆止弁が設けられてもよい。
【0024】
図1に戻り、膨張装置3は、いわゆる定圧膨張弁を含んで構成されており、凝縮器2側から導入された液冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させて蒸発器4側に導出する。膨張装置3は、その下流側圧力が外部から設定された設定圧力となるようにその弁開度が自律的に調整されるものである。蒸発器4を通過した冷媒は圧縮機1に戻され、再び圧縮される。制御弁6および膨張装置3は、図示しない制御部によってその弁開度が制御される。すなわち、制御部は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部は、エンジン回転数、車室内外の温度、蒸発器4の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて冷凍サイクルを流れる冷媒の設定流量を決定し、その設定流量が保持されるソレノイド力が得られるように制御弁6への通電制御を行う。制御部は、また、所定の外部情報に基づいて膨張装置3の下流側圧力の設定値(設定圧力)を決定し、その設定圧力が保持されるように膨張装置3への通電制御を行う。この設定圧力の設定により、実質的に蒸発器4内を流れる低圧冷媒の圧力が調整されることになる。
【0025】
図3は、制御弁の構成を示す断面図である。図4は、図3に示す制御弁の上半部拡大図である。
制御弁6は、圧縮機1から導出される冷媒の流量を設定流量に保つように、吐出室53からクランク室54に導入する冷媒流量を制御する流量制御弁として構成されている。
【0026】
図3に示すように、制御弁6は、内部に主弁および副弁を有する弁本体8と、弁本体8の各弁を開閉駆動するソレノイド9とを一体に組み付けて構成される。制御弁6には、コネクタ90が着脱可能に接続される。制御弁6は、有底段付円筒状のボディ10を有する。ボディ10の側部には吐出室53に連通する入口ポート71が設けられ、上端開口部には圧縮機1の出口に連通する出口ポート72が設けられている。ボディ10とソレノイド9との間には、クランク室54に連通する連通ポート73が設けられている。
【0027】
図4にも示すように、ボディ10の上部には、入口ポート71と出口ポート72とを連通する冷媒通路(「第1冷媒通路」に該当する)が軸線方向に延設され、この冷媒通路の中間部に弁孔15が形成されている。弁孔15の出口ポート72側の開口端部には上方に向かって拡径されたテーパ面が形成され、そのテーパ面により弁座16が形成されている。一方、弁座16に出口ポート72側から対向するように、有底段付円筒状の弁体18(「主弁体」に該当する)が接離自在に配置されている。弁体18と弁座16とにより主弁が構成されている。弁体18は、その下半部に下方に向かって縮径された円錐状の側面を有し、その側面にて弁座16に着脱して主弁を開閉する。弁体18の下端部は、下方に延出して弁座形成部19となっている。
【0028】
ボディ10の上端開口部には、有底段付円筒状のばね受け部材11が底部を上にして嵌着されている。ばね受け部材11の段部には、内外を連通する複数の連通孔が形成されており、この連通孔により出口ポート72と圧縮機1の出口とが連通されている。弁体18は、その上端開口部がばね受け部材11の上半部に摺動可能に挿通されてガイドされている。ばね受け部材11と弁体18とにより囲まれた空間はダンパ室76となっており、ばね受け部材11の底部中央に設けられた小孔77を介して冷媒の出入りが可能となっている。ダンパ室76におけるばね受け部材11と弁体18との間には、弁体18を閉弁方向に付勢するスプリング13が介装されている。
【0029】
吐出室53から導出された吐出冷媒は入口ポート71を介して制御弁6に導入され、その一部が主弁を通過して出口ポート72から導出される。この冷媒は、圧縮機1の出口から下流側へ導出される。このように吐出冷媒が主弁を通過することにより、吐出圧力Pdが吐出室53の吐出室圧力Pdhからやや低下して圧縮機1の出口圧力Pdlとなって凝縮器2側に導出されるようになる。なお、以下の説明においては、吐出室圧力Pdhと出口圧力Pdlを特に区別せずに吐出圧力Pdと総称することがある。
【0030】
一方、ボディ10の下部は内部が段階的に縮径しており、その底部中央にはガイド孔20が形成されている。このガイド孔20を貫通するように筒状の弁体22(「副弁体」に該当する)が挿通され、軸線方向に摺動可能に軸支されている。ガイド孔20を介して入口ポート71と連通ポート73とが連通するが、ボディ10の底部と弁体22との間にシール部材としてのVリング23が介装されているため、その弁体22の外周面を伝った冷媒の漏洩は防止されている。ボディ10の底部におけるVリング23の直上には有底円筒状のストッパ24が圧入されており、Vリング23の軸線方向への変位を規制している。ストッパ24は、下方から弁体22の上部を挿通するとともに、上方から弁体18の弁座形成部19を挿通している。ストッパ24の側部には、内外を連通する連通孔78が形成され、その連通孔78を覆うようにストレーナ79が嵌着されている。連通孔78は、入口ポート71に連通している。
【0031】
弁体22は有底円筒状をなし、その底部近傍の側部に内外を連通する連通孔25が設けられている。弁体22は、その内部が弁孔26を構成し、上端部が弁座形成部19の下面に形成された弁座27に着脱することにより副弁を開閉する。つまり、上述した弁体18は可動弁座としても機能し、弁体22と弁座27とにより副弁が構成されている。副弁は連通孔78に対応して位置し、その副弁の開弁時には、入口ポート71から導入された吐出冷媒が連通孔78、副弁、弁孔26、連通孔25を経由して連通ポート73から導出される。弁体22の下端部は、連通ポート73を介してクランク室54に連通する圧力室28に配置され、その下端部とボディ10との間には、弁体22を副弁の開弁方向に付勢するスプリング29が介装されている。
【0032】
入口ポート71を介して導入された吐出冷媒の一部は、副弁を通過することによりクランク圧力Pcに減圧されて圧力室28に導かれ、連通ポート73から導出される。この冷媒は、クランク室54に導入されて圧縮機1の吐出容量の制御に用いられる。
【0033】
図3に戻り、ソレノイド9は、ヨークとしても機能するケース31と、ケース31内に固定されたコア32と、コア32と軸線方向に対向配置されたプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。コア32の上端部はその外径が拡径されており、ケース31の上端部が加締め接合されている。コア32の上端開口部にはボディ10の下端部が圧入され、それによって弁本体8とソレノイド9とが組み付けられている。
【0034】
コア32には、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔35が設けられており、ソレノイド力を弁体22へ伝達するためのシャフト36を挿通している。コア32の上端部には、リング状の軸受部材38が圧入されており、シャフト36の上端部がこの軸受部材38に摺動可能に支持されている。圧力室28内のクランク圧力Pcは、シャフト36と軸受部材38との微少な間隙を介してソレノイド9の内部にも導入可能となっている。シャフト36は、その上端面により弁体22を下方から支持している。
【0035】
コア32には、また、下端が閉じた有底スリーブ39が外挿されている。有底スリーブ39内においては、プランジャ33がコア32の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。有底スリーブ39の底部には、ばね受け部材40が配設されている。プランジャ33は、円筒状をなし、シャフト36の下半部に圧入されている。プランジャ33とばね受け部材40との間には、プランジャ33を副弁の閉弁方向(主弁の開弁方向)に付勢するスプリング41が介装されている。また、コア32とプランジャ33との間には、プランジャ33を副弁の開弁方向(主弁の閉弁方向)に付勢するスプリング45が介装されている。スプリング29およびスプリング45によるばね荷重がスプリング41によるばね荷重よりも大きくなるように設定されているため、ソレノイド9の非通電時には副弁が全開状態に保持されるようになっている。また、有底スリーブ39にはボビン37が外挿されており、そのボビン37に電磁コイル34が巻回されている。
【0036】
ケース31の底部中央には挿通孔61が設けられ、有底スリーブ39の下端部がその挿通孔61を介して露出している。ボビン37の底部からは一対の端子導出部62(同図には1つのみ表示)および一対の被嵌合部63(同図には1つのみ表示)が下方に延出し、それぞれケース31の底部を貫通している。端子導出部62には導電端子64が埋設されている。導電端子64の一端部は電磁コイル34の端部に接続され、他端部は端子導出部62から下方に露出している。被嵌合部63には、コネクタ90を固定するための係止孔65が設けられている。ケース31の底部には、ボビン37との間に介装されるようにカラー66が配設されている。カラー66は磁性部材からなり、ソレノイド9の底部を構成するとともに、ケース31とともに磁気回路を構成する。
【0037】
コネクタ90は、コネクタハウジング92の内部に接続端子94を配設して構成されている。コネクタハウジング92は、耐食性を有する有底段付筒状の樹脂材からなり、接続端子94の下半部を外部に気密に露出させている。コネクタハウジング92の上端開口部近傍には内方に突出した爪部96(「嵌合部」に該当する)が一体成形されている。爪部96が上述した被嵌合部63の係止孔65に嵌合することにより、コネクタハウジング92がソレノイド9に固定される。コネクタハウジング92の開口端部の外周面には、Oリング97(「シール部材」に該当する)が嵌着されている。
【0038】
制御弁6およびコネクタ90により制御弁ユニットが構成される。この制御弁ユニットは、コネクタハウジング92にOリング97を嵌着してコネクタ90を形成した後に、そのコネクタ90をソレノイド9に装着して組み付けられる。このようにして組み付けられた制御弁ユニットを図2に示した圧縮機1の弁収容室55に挿入し、Cリング60により固定する。図示のように、Oリング97が制御弁6とコネクタ90との接続部よりも開口部側に配置されているため、外部雰囲気が弁収容室55の内方に侵入することが防止される。
【0039】
以上に説明した制御弁6の構成において、弁座27がテーパ面となっており、弁体22がその先端開口部の外周縁にて弁座27に着脱するため、弁体22に作用するクランク圧力Pcの影響は実質的にキャンセルされる。したがって、ソレノイド9の通電制御がなされた状態での副弁の閉弁時には、弁体18にソレノイド力に応じた開弁方向の力が作用することになる。
【0040】
次に、制御弁6および圧縮機1の基本動作について説明する。
制御弁6において、ソレノイド9が非通電状態にあるときには、弁体18がスプリング13の付勢力により弁座16に着座し、主弁が閉弁状態となる。一方、スプリング29,41,45の合力により弁体22がシャフト36と一体となって開弁方向に動作し、弁座27から離間して全開状態となる。この状態で、車両エンジンの駆動により図1に示した圧縮機1の回転軸106が回転すると、揺動板111が揺動運動をするため、これに連結されたピストン112が往復運動する。これによって吸入室51に導入された冷媒がシリンダ52内に吸入されて圧縮され、圧縮された冷媒が吐出室53へ吐出される。このとき、主弁が全閉状態にあるので、その吐出冷媒は全開状態の副弁を通過して圧力室28に導入され、さらに連通ポート73を介してクランク室54に導入される。その結果、クランク圧力Pcが高められるため、圧縮機1は最小容量運転を行うことになる。
【0041】
そして、ソレノイド9に所定の制御電流が供給されると、プランジャ33がコア32に吸引されるため、弁体22は、スプリングの合力による開弁方向の力と閉弁方向のソレノイド力とがバランスする位置に保持される。このとき、弁体22が閉弁状態にある弁体18に瞬間的に着座して副弁が全閉状態になるため、クランク室54への冷媒導入が遮断されてクランク圧力Pcが低下し、圧縮機1が速やかに最大容量運転に移行する。その結果、吐出圧力Pdが急増して弁体18をスプリング13の付勢力に抗してリフトさせ、主弁が冷媒の流量に応じたリフト量だけ開弁することになる。また、それにより可動弁座としての弁体18が弁体22から離間して副弁が開弁状態になるため、両弁体の隙間からそれらの相対位置に応じた冷媒流量がクランク室54へ導入されるようになり、圧縮機1が所定容量の運転状態を保持するようになる。
【0042】
ここで、車両エンジンの回転数が上昇して吐出圧力Pdが上昇すると、吐出室53から吐出される冷媒流量が増加し、それに応じて弁体18がさらにリフトして主弁の弁開度を大きくするため、圧縮機1から吐出される冷媒の流量が増加しようとする。しかし、弁体18がリフトすることにより弁体22との相対間隔、つまり副弁の開度がさらに大きくなると、クランク室54に導入される冷媒流量が増加して、クランク圧力Pcが上昇する。その結果、圧縮機1は、冷媒の吐出流量を減少させるように制御される。逆に、車両エンジンの回転数が低下すると、吐出室53から吐出される冷媒流量が減少し、クランク室54に導入される冷媒流量も減少してクランク圧力Pcが低下する。その結果、圧縮機1は、冷媒の吐出流量を増加させるように制御される。このように、エンジンの回転数が変動して吐出冷媒の流量が変化しようとしても、制御弁6が吐出冷媒の流量の変化が小さくなるように制御するため、圧縮機1からの吐出冷媒の流量が一定に制御されるようになる。この吐出冷媒の設定流量は、ソレノイド9に供給される電流値に応じて変化させることができる。制御部は、外部情報に基づいて設定流量を決定し、ソレノイド9への通電制御を行う。
【0043】
図5は、膨張装置の構成を示す断面図である。
本実施の形態に係る膨張装置は、上流側から導入された冷媒を絞り膨張させて下流側へ導出するとともに、下流側の冷媒圧力が設定圧力に保持されるように冷媒流量を制御する定圧膨張弁を含んで構成される。この膨張装置は、内部に冷媒通路が形成されたボディと、ボディにおける上流側の高圧冷媒通路と下流側の低圧冷媒通路とを区画するように配置され、上流側から導入された冷媒を絞り膨張させて下流側へ導出する第1弁部と、設定圧力以上の中間圧力が満たされる中圧室と、中間圧力を感知し、その中間圧力が予め設定された基準圧力となるように第1弁部の開閉方向の力を発生させる感圧部と、中圧室と低圧冷媒通路とを連通させる調圧通路に設けられ、その開閉によりその前後差圧を発生させる第2弁部と、第2弁部の前後差圧が供給電流量に応じた設定差圧となるようソレノイド力を発生させ、その設定差圧の変更により設定圧力を変化させるソレノイドと、を備える。
【0044】
すなわち、膨張装置3は、定圧膨張弁として構成された膨張弁131と、膨張弁131の設定圧力を調整するための調整弁132とを組み付けて構成されている。膨張弁131は、内部に弁部が設けられたボディ140を備える。ボディ140の端部には、弁部を開閉駆動するパワーエレメント142(「感圧部」に該当する)が装着されている。
【0045】
ボディ140の側部には高圧の冷媒を導入する入口ポート144が設けられ、下部には低圧の冷媒を導出する出口ポート146が設けられている。これらのポートは、ボディ140の内部で直交する冷媒通路を介して連通している。その冷媒通路の中間部には円板状の区画部材148が設けられ、その区画部材148を貫通するように弁孔150(「第1弁孔」に該当する)が形成されている。そして、弁孔150に下流側から対向するように弁体152(「第1弁体」に該当する)が配置されている。区画部材148は、弁体152との対向部において凹状に形成された段部を有し、その段部の中央を貫通するようにガイド孔154が形成されている。弁孔150は、その段部においてガイド孔154の周りに所定の間隔で設けられた複数の貫通孔により形成される。冷媒通路において区画部材148の上流側が高圧冷媒通路156となり、下流側が低圧冷媒通路158となる。
【0046】
ボディ140の上部には、高圧冷媒通路156を内外に連通させる連通孔160が形成されている。弁体152には長尺状の作動ロッド164が一体に設けられている。作動ロッド164は、ガイド孔154に摺動可能に挿通され、連通孔160に到るように延設されている。作動ロッド164の上端部には円筒状のガイド部材166が圧入されている。ガイド部材166は、連通孔160の内壁に沿って摺動可能に支持されている。すなわち、弁体152は、作動ロッド164がガイド孔154および連通孔160に沿ってガイドされつつ軸線方向に駆動されることにより、弁部の開閉方向に動作する。本実施の形態においては、連通孔160の径と弁孔150の径とが実質的に等しく構成されており、その結果、弁体152に直接または間接的に作用する高圧の冷媒による圧力がキャンセルされている。
【0047】
弁孔150の下流側開口端縁によって弁座168が形成されており、弁体152の上端部近傍のテーパ面が弁座168に着脱することにより弁部が開閉される。連通孔160とガイド部材166との間には所定のクリアランス(「冷媒漏洩通路」に該当する)が設けられており、高圧冷媒通路156を流れる冷媒の一部がそのクリアランスを介して漏洩する。ボディ140の下端開口部にはリング状のアジャスト部材170が圧入され、アジャスト部材170と弁体152との間には、弁体152を閉弁方向に付勢するスプリング171(「付勢部材」に該当する)が介装されている。スプリング171のばね荷重は、アジャスト部材170のボディ140への圧入量により調整することができる。
【0048】
パワーエレメント142は、中空のハウジング172と、ハウジング172内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイアフラム174(「感圧部材」に該当する)とを含んで構成されている。ハウジング172は、ともにステンレスからなる有蓋状のアッパーハウジング176および段付円筒状のロアハウジング178からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部にステンレス等の金属薄板からなるダイアフラム174の外縁部を挟むようにして組み付けられる。ハウジング172は、アッパーハウジング176とロアハウジング178との間にダイアフラム174を挟んだ状態でその接合部の外周に沿ってTIG溶接等が施されることにより、容器状に形成されている。密閉空間S1は基準圧力室を構成し、本実施の形態では真空状態に保持されている。すなわち、真空雰囲気下において上記溶接が施された後、その上面中央に設けられた孔をボール状の封体180にて封止することにより密閉されている。封体180は、例えばステンレス等から構成される。密閉空間S1は基準圧力室を構成し、開放空間S2は感圧室を構成する。なお、変形例においては、密閉空間S1に例えば大気圧を満たすようにしてもよい。
【0049】
ダイアフラム174の上面には円板状のばね受け部材175が配設されている。アッパーハウジング176の底部とばね受け部材175との間には、ばね受け部材175を介してダイアフラム174を開弁方向に付勢するスプリング177(「付勢部材」に該当する)が介装されている。ガイド部材166の上端部には半径方向外向きに延出するフランジ部179が設けられており、このフランジ部179の上面がダイアフラム174の下面に当接している。このような構成により、ダイアフラム174の変位による駆動力がガイド部材166、作動ロッド164を介して弁体152に伝達される。フランジ部179がボディ140に係止されることにより、ダイアフラム174の下死点位置(開弁方向への変位量)が規制される。
【0050】
調整弁132は、ボディ140の一部がそのボディを兼ねている。すなわち、ボディ140には、高圧冷媒通路156と低圧冷媒通路158とをつなぐ冷媒通路とは別に、開放空間S2と調整弁132とを連通させる調圧通路182が形成されている。調圧通路182は、パワーエレメント142の感圧室とともに中圧室を構成する。上述のように、高圧冷媒通路156からのクリアランスを介して高圧冷媒が漏洩するため、中圧室には膨張弁131の出口圧力Pxの設定値(設定圧力Pset)以上の中間圧力Pmが満たされる。
【0051】
調整弁132は、その弁部を開閉駆動するソレノイド184を有する。ソレノイド184は、ボディ140の入口ポート144とは反対側の側部に設けられたボディ形成部186に連結されている。ボディ形成部186の側部には、蒸発器4の出口側の冷媒通路に連通するポート188が設けられている。ボディ形成部186は、そのソレノイド184との連結部において内径が拡大されており、その段部中央の開口端縁が円ボス状に突出して弁座190を形成している。また、この弁座190を形成する円ボス部の内部により弁孔(「第2弁孔」に該当する)が形成されている。
【0052】
ソレノイド184は、ヨークとしても機能する段付円筒状のケース191と、ケース191内に固定されたコア192と、コア192と軸線方向に対向配置されたプランジャ193と、コア192に外挿された円筒状の非磁性体からなるスリーブ194と、スリーブ194に外挿されて外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル195とを備えている。スリーブ194内において、プランジャ193がコア192に対して軸線方向に進退可能に配置されている。ケース191の一端部が縮径されてボディ形成部186に圧入され、それによってソレノイド184がボディ140に組み付けられている。
【0053】
プランジャ193は、円柱状をなし、弁座190との対向面がフラットに形成されている。この弁座190と対向する部分が弁体部196(「第2弁体」に該当する)となって、弁座190に着脱して弁部を開閉可能に構成されている。プランジャ193は、その弁座190とは反対側でコア192と対向し、その対向面がコア192側に向かって小径化するテーパ面をなしている。一方、コア192は、プランジャ193との対向面の中央に凹部を有し、プランジャ193側に向かって広がる相補形状のテーパ面となっている。コア192とプランジャ193との間には、プランジャ193を閉弁方向に付勢するスプリング198が介装されている。そして、ソレノイド184の他端側を封止するようにコネクタ部200が設けられている。コネクタ部200は、電磁コイル195に接続された電極端子を樹脂モールドして形成され、ケース191との間にリング状のカラー202を介装させた状態で加締め接合されている。カラー202は磁性部材からなり、ケース191とともに磁気回路を構成する。
【0054】
以上の構成において、凝縮器2側から送出されて入口ポート144に入口圧力Poにて導入された冷媒は、弁部を通過することにより出口圧力Pxとなって出口ポート146から導出され、蒸発器4に供給される。この出口圧力Pxの設定値(設定圧力Pset)は、ダイアフラム174の有効受圧面積、およびスプリング171とスプリング177とのつり合いによって決まる基本設定値が設定されているが、調整弁132により設定変更可能となっている。入口圧力Peにて蒸発器4に導入される冷媒の一部は、ポート188に導入される。なお、この入口圧力Peは膨張弁131の出口圧力Pxよりもやや低くなるが、実質的に等しいとみることができる。
【0055】
調整弁132は、その弁部の前後差圧をソレノイド184により設定変更可能な差圧弁として構成されており、調圧通路182の冷媒圧力である中間圧力Pmと入口圧力Peとの差圧を制御する。調整弁132が全開状態にあるとき、中間圧力Pmと入口圧力Peとは等しくなる。調圧通路182には高圧冷媒通路156からクリアランスを介して冷媒が漏洩するため、常に中間圧力Pmが満たされる。言い換えれば、中間圧力Pmが上記基本設定値(基準圧力)となっている。調整弁132の弁開度が調整されてその前後差圧ΔPが発生したとき、中間圧力Pmと入口圧力Peとの関係は、下記式(1)のようになる。
【0056】
Pe=Pm−ΔP ・・・(1)
すなわち、調整弁132の前後差圧を変化させることにより、蒸発器4の入口圧力Peひいては膨張弁131の出口圧力Pxの設定値(設定圧力Pset)を変更することができる。制御部は、外部情報に基づいて調整弁132への通電制御を実行することにより、設定圧力Psetを変化させる。パワーエレメント142は、その出口圧力Pxが設定圧力Psetに保持されるように動作する。
【0057】
以上のように構成された膨張装置3において、スプリング171のばね荷重がスプリング177のばね荷重よりも大きく設定されているため、車両用空調装置が停止しているときには、膨張弁131は全閉状態となる。
【0058】
ここで、車両用空調装置が起動すると、制御部が調整弁132を所定開度に制御する。このとき、コンプレッサによって冷媒が吸引されるので、蒸発器4の入口圧力Peが低下する。その結果、パワーエレメント12がこれを感知してダイアフラム174が開弁方向へ変位する。その変位が弁体152に伝達され、膨張弁131は所定の開弁状態へ移行する。
【0059】
一方、圧縮機1によって圧縮された冷媒は凝縮器2にて凝縮され、図示しないレシーバにて気液分離された液冷媒が入口ポート144に供給されるようになる。高温・高圧の液冷媒は、膨張弁131を通過するときに絞り膨張され、低温・低圧の気液混合冷媒となって出口ポート146から蒸発器4に供給され、その内部で蒸発されることにより車室内温度との熱交換を行う。蒸発器4を通過した冷媒は、ポート188を介して調整弁132にも導入される一方、図示しない配管を介して圧縮機1に戻る。
【0060】
膨張弁131の出口圧力Pxは、この車両用空調装置の運転中に設定圧力Psetに保持される。すなわち、出口圧力Pxが設定圧力Psetよりも低くなると、パワーエレメント142がこれを感知し、ダイアフラム174が開弁方向へ変位して弁部を通過する冷媒流量を増加させて出口圧力Pxを上昇させる。逆に、出口圧力Pxが設定圧力Psetよりも高くなると、パワーエレメント142がこれを感知し、ダイアフラム174が閉弁方向へ変位して弁部を通過する冷媒流量を減少させて出口圧力Pxを低下させる。このようにして、出口圧力Pxが設定圧力Psetに維持される。この設定圧力Psetは、調整弁132の設定差圧を変化させることにより、変化させることができる。
【0061】
以上のように、圧縮機1の制御弁6を流量制御弁として構成する一方、膨張装置3を膨張弁131(定圧膨張弁)として構成することで、例えば、以下のような制御を効果的に実行することができる。図6は、第1の実施の形態の冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。同図において、横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。図中の一点鎖線は、等温線を表している。なお、実際には吐出圧力Pdについて圧縮機1の吐出室圧力Pdhと出口圧力Pdlとの差があるが、同図においてはこれを簡略的に吐出圧力Pdとして示している。
【0062】
1)外部情報の一つとして、蒸発器4の出口側にその出口冷媒温度Teを外部情報の一つとして検出する温度センサ(「冷媒温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部が、外部情報に基づいて蒸発器4の出口側の冷媒の過熱度SHを設定する一方、膨張弁131に対して設定した設定圧力Psetと出口冷媒温度Teとに基づいて、冷媒の過熱度SHを逐次算出する。制御部は、算出された過熱度SHが設定値よりも大きくなると、圧縮機1の吐出容量が大きくなるように制御弁6を通電制御し、その過熱度SHが設定値よりも小さくなると、圧縮機1の吐出容量が小さくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。例えば、過熱度SHの設定値を小さくすれば、蒸発器4の温度むらを抑制することができる。それにより、蒸発器4を通過する空気の吹き出し温度をその全長にわたって均一化することができる。具体的には、図1に示した蒸発器4の出口から離間した位置の空気温度t21と、出口近傍の位置の空気温度t22との温度差を小さくし、その吹き出し温度のむらを抑制することができる。その結果、冷凍サイクルの除湿性能を高く維持することができる。
【0063】
2)図1に示すように、外部情報の一つとして蒸発器4近傍の空気の温度を、冷媒の流れに対して上流側位置と下流側位置においてそれぞれ第1空気温度t21、第2空気温度t22として検出する温度センサ(「空気温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部が、外部情報に基づいて第2空気温度t22と第1空気温度t21との目標温度差を設定し、温度センサにより検出された第2空気温度と第1空気温度との温度差Δtが目標温度差よりも大きくなると、圧縮機1の吐出容量が大きくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。このようにして、蒸発器4による熱交換の温度むらを少なくすることで、その空気の蒸発温度を安定化させることができ、除湿性能を高く維持することができる。
【0064】
3)外部情報の一つとして、圧縮機1の出口側所定位置の冷媒温度Tdを検出する温度センサ(「冷媒温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部が、外部情報に基づいてその所定位置の冷媒温度を設定し、温度センサにより検出された冷媒温度Tdが設定値よりも高くなると、圧縮機1の吐出容量が小さくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。このように、冷媒温度Tdを監視することで、吐出冷媒の温度が異常高温となるのを防止することができる。あるいは、圧縮機1の出口側所定位置ではなく、内部所定位置の冷媒温度に基づいて同様の制御を行うようにしてもよい。
【0065】
4)外部情報の一つとして、圧縮機1の出口側所定位置の吐出圧力Pdを検出する圧力センサ(「冷媒圧力検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部が、外部情報に基づいてその所定位置の吐出圧力Pdを設定し、圧力センサにより検出された吐出圧力Pdが設定値よりも高くなると、圧縮機1の吐出容量が小さくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。これにより、吐出圧力Pdが異常に高くなることを防止できる。なお、この態様では、圧縮機1の吐出圧力Pdについては圧力センサの出力値から取得でき、吸入圧力Psについては膨張装置3の設定圧力Psetと実質的に等しいとして取得することができる。そして、さらに流量制御方式をとるためその設定流量が冷媒の吐出流量として取得できる。このため、圧縮機1の動力を容易に推定することができ、冷凍サイクルの効率化を実現する制御を容易に実行できるようになる。
【0066】
以上に説明したように、本実施の形態においては、膨張装置3の下流側圧力が設定圧力Psetとなるようにその弁開度が自律的に調整されるため、その設定圧力Psetを適切に設定することにより、蒸発器4内の冷媒圧力を適正値に維持して蒸発温度を安定に保持でき、その蒸発器4による所望の除湿性能を得ることができる。一方、制御弁6を流量制御弁として構成し、圧縮機1の吐出容量を直接的に制御することができるため、その容量制御の応答性を良好に保つことができる。その結果、装置構成や制御方式を複雑にすることなく、その空調性能を高く維持することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態においては、膨張装置3を膨張弁131と調整弁132とにより構成し、調整弁132により調圧通路182内の中間圧力Pmと蒸発器4の入口圧力Peとの差圧を制御するようにした。すなわち、定圧膨張弁の設定値を差圧弁によって変更する構成とした。この調整弁132は、膨張弁131のように主流量を制御するのではなく、高圧冷媒通路156から漏洩してくる冷媒の流れを制御するものであるため、弁開度は小さく保持することができ、制御も容易になる。主流量を制御するものではないため、弁部を流れる流量も小さく、その流動音も小さく抑えられる。また、弁部(弁体部196)の有効受圧面積を小さく抑えることができるため、ソレノイド184のコンパクト化を実現することもできる。
【0068】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、冷凍サイクルに内部熱交換器が設けられている点が異なる以外は第1の実施の形態とほぼ同様である。このため、第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付して適宜その説明を省略する。図7は、第2の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【0069】
図7に示すように、本実施の形態の冷凍サイクルにおいては、凝縮器2から膨張装置3へ送られる冷媒と、蒸発器4から圧縮機1へ送られる冷媒との間で熱交換をさせる内部熱交換器205が設けられている。内部熱交換器205は二重管構造を有しており、蒸発器4から圧縮機1に向かって流れる冷媒が内側の通路を通過し、凝縮器2から膨張装置3に向かって流れる冷媒が外側の通路を通過する。これにより、凝縮器2から膨張装置3に向かって流れる冷媒が、蒸発器4から圧縮機1に向かって流れる冷媒によって冷却される一方、蒸発器4から圧縮機1に向かって流れる冷媒が、凝縮器2から膨張装置3に向かって流れる冷媒によって加熱され、冷凍サイクルの熱交換率が高められている。
【0070】
膨張装置3の膨張弁131は、蒸発器4の出口側の圧力(出口圧力Pe)を感知している。本実施の形態においても、圧縮機1の制御弁6を流量制御弁として構成する一方、膨張装置3を膨張弁131(定圧膨張弁)として構成されており、例えば以下のような制御を効果的に実行することができる。図8は、第2の実施の形態の冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。同図において、横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。図中の一点鎖線は、等温線を表している。なお、実際には吐出圧力Pdについて圧縮機1の吐出室圧力Pdhと出口圧力Pdlとの差があるが、同図においてはこれを簡略的に吐出圧力Pdとして示している。図中のSHは過熱度を、SCは過冷却度をそれぞれ表している。
【0071】
1)外部情報の一つとして、圧縮機1の入口側の冷媒温度Tsを検出する温度センサ(「冷媒温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部は、外部情報に基づいて圧縮機1の入口側の冷媒の過熱度SHを設定し(同図(A)参照)、膨張装置3に対して設定した設定圧力Psetと冷媒温度Tsとに基づいてその冷媒の過熱度SHを算出し、その過熱度SHが設定値よりも大きくなると、圧縮機1の吐出容量が大きくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。あるいは、内部熱交換器205の低圧側の出口側温度Tloutを検出する温度センサ(「冷媒温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部は、外部情報に基づいて内部熱交換器205の低圧側出口側の冷媒の過熱度SHを設定し、膨張装置3に対して設定した設定圧力Psetと、出口側温度Tloutとに基づいてその冷媒の過熱度SHを算出し、その過熱度SHが設定値よりも大きくなると、圧縮機1の吐出容量が大きくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。
【0072】
2)外部情報の一つとして、内部熱交換器205の高圧側の入口側温度Thinおよび出口側温度Thout、並びに低圧側の出口側温度Tloutをそれぞれ検出する温度センサ(「冷媒温度検出部」に該当する)を設けてもよい。そして、制御部は、外部情報に基づいて蒸発器4の出口側の冷媒の湿り度を設定し、温度センサが検出した各冷媒温度に基づいて内部熱交換器205の低圧側における入口側の冷媒の湿り度を算出し(同図(B)参照)、これを蒸発器4の出口側の冷媒の湿り度と仮定する。そして、その仮定した湿り度が設定値よりも小さければ圧縮機1の吐出容量が大きくなるように制御弁6を通電制御し、その湿り度が設定値よりも大きければ圧縮機1の吐出容量が小さくなるように制御弁6を通電制御するようにしてもよい。
【0073】
同図(B)のように、蒸発器4の出口においては一定の湿り度をもたせることで、蒸発器4の全体にわたってその蒸発温度を一定に保持し、空気の吹き出し温度を均一に保持することができる。図示の例では、蒸発器4の第1空気温度te1と第2空気温度te2との温度差を小さくすることができる。その結果、その除湿性能を高めることができる。また、蒸発器4を流れる冷媒に一定の湿り度をもたせることで、低負荷時においても冷媒に含まれる潤滑用のオイルを圧縮機1側に送出しやすくなる、つまり冷凍サイクルを循環させやすくなるといった利点もある。一方、同図のように圧縮機1の入口において所定の過熱度SHをもたせることで、圧縮機1の圧縮効率を高く保持することができる。なお、湿り度が大きいと冷凍サイクルの効率が低下する傾向にあるため、制御部は、そのような湿り度をもたせる期間を特定の期間に限定するように制御してもよい。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0075】
上記実施の形態では、膨張装置3として、膨張弁131に対して調整弁132を組み付け、中間圧力Pmを減圧して出口圧力Pxの設定圧力Psetを設定変更可能な構成を示した。変形例においては、このような調圧用の制御弁を有しない機構を採用することもできる。図9は、変形例に係る膨張装置の構成を示す断面図である。なお、本変形例において図5に示した構成と同様の構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
膨張装置203は、定圧膨張弁として構成された膨張弁231と、膨張弁231の設定圧力を調整するための調圧機構232とを組み付けて構成されている。
膨張弁231は、内部に弁部が設けられたボディ240を備える。ボディ240の端部には、弁部を開閉駆動するパワーエレメント242が装着されている。
【0077】
作動ロッド164の上端部には円筒状のガイド部材266が圧入されている。ガイド部材266は、連通孔160の内壁に沿って摺動可能に支持されている。ガイド部材266の側部には凹部が周設されており、シール用のOリング270が嵌着されている。すなわち、膨張弁231においては、高圧冷媒通路156の冷媒が開放空間S2に漏洩するのが防止されている。なお、本変形例においても、連通孔160の径と弁孔150の径とが実質的に等しく構成されており、その結果、弁体152に直接または間接的に作用する高圧の冷媒による圧力がキャンセルされている。
【0078】
パワーエレメント242のハウジング272は、そのアッパーハウジング276が大気に開放されており、上記実施の形態とは異なり開放空間S21を形成している。その開放空間S21に対向するように調圧機構232が配置されている。調圧機構232は、ダイアフラム174に対して進退駆動可能な駆動ロッド282と、これを駆動するアクチュエータ284を有する。アクチュエータは、例えばソレノイドやギヤードモータによる構成することができる。駆動ロッド282は、円板状のディスク280、スプリング177およびばね受け部材175を介してダイアフラム174に作動連結されている。駆動ロッド282は、アクチュエータ284により軸線方向に駆動されて弁部の開閉方向に進退して、スプリング177とともに弁体152を開弁方向に付勢する。制御部は、アクチュエータを通電制御して駆動ロッド282の開弁方向への変位量を制御し、それにより膨張弁231の開弁特性、つまり出口圧力Pxの設定圧力Psetを調整する。
【0079】
本変形例では、膨張装置203が調圧用の制御弁を有しておらず、アクチュエータ284がスプリング177の設定荷重を直接変更する形態を有する点で上記実施の形態とは異なっている。この場合、アクチュエータ284は、ダイアフラム174の比較的大きな有効受圧面積に作用する冷媒圧力による荷重に対抗する必要がある。このため、例えばアクチュエータ284をソレノイドで構成した場合、設定圧力Psetの変更範囲によっては大きなソレノイド力を要する。言い換えれば、上記実施の形態のほうが、ソレノイドをコンパクトに構成することができるといった利点がある。
【0080】
第1の実施の形態では、膨張弁131におけるパワーエレメント142の感圧室が、調整弁132の弁部を介して蒸発器4の入口側の冷媒通路に連通する例を示したが、蒸発器4の出口側(圧縮機1の入口側)の冷媒通路に連通するように構成してもよい。同様に、第2の実施の形態では、膨張弁131におけるパワーエレメント142が、調整弁132の弁部を介して蒸発器4の出口側の冷媒通路に連通する例を示したが、蒸発器4の入口側あるいは圧縮機1の入口側(内部熱交換器205の低圧側出口側)の冷媒通路に連通するように構成してもよい。
【0081】
上記実施の形態では、流量制御弁を用いて吐出流量を設定流量に保持するいわゆる流量制御方式の圧縮機について例示した。変形例においては、例えば吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)に基づいて容量制御を行ういわゆるPd−Ps弁など、冷凍サイクルの所定の2点間の差圧を設定差圧に保持する方式の圧縮機を採用してもよい。
【0082】
上記実施の形態の圧縮機は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、本発明の可変容量圧縮機は、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにおいて凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【図2】圧縮機の構成を表す断面図である。
【図3】制御弁の構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す制御弁の上半部拡大図である。
【図5】膨張装置の構成を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態の冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。
【図7】第2の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【図8】第2の実施の形態の冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。
【図9】変形例に係る膨張装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 可変容量圧縮機、 2 凝縮器、 3 膨張装置、 4 蒸発器、 5 ファン、 6 制御弁、 8 弁本体、 9 ソレノイド、 10 ボディ、 12 パワーエレメント、 15 弁孔、 16 弁座、 18 弁体、 19 弁座形成部、 20 ガイド孔、 22 弁体、 26 弁孔、 27 弁座、 36 シャフト、 51 吸入室、 52 シリンダ、 53 吐出室、 54 クランク室、 71 入口ポート、 72 出口ポート、 73 連通ポート、 76 ダンパ室、 90 コネクタ、 111 揺動板、 112 ピストン、 121 吸入用リリーフ弁、 131 膨張弁、 132 調整弁、 140 ボディ、 142 パワーエレメント、 144 入口ポート、 146 出口ポート、 148 区画部材、 150 弁孔、 152 弁体、 154 ガイド孔、 156 高圧冷媒通路、 158 低圧冷媒通路、 164 作動ロッド、 166 ガイド部材、 168 弁座、 170 アジャスト部材、 172 ハウジング、 174 ダイアフラム、 182 調圧通路、 184 ソレノイド、 186 ボディ形成部、 188 ポート、 190 弁座、 196 弁体部、 200 コネクタ部、 203 膨張装置、 205 内部熱交換器、 231 膨張弁、 232 調圧機構、 240 ボディ、 242 パワーエレメント、 266 ガイド部材、 270 Oリング、 282 駆動ロッド、 284 アクチュエータ、 S1 密閉空間、 S2 開放空間、 S21 開放空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を構成する冷凍サイクルにおいて、
吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出するとともに、その冷媒の吐出容量がクランク室内のクランク圧力に応じて変化する可変容量圧縮機と、
前記可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、
前記外部熱交換器から送出された冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させて導出するとともに、その導出された冷媒の下流側圧力が設定圧力となるようにその弁開度が自律的に調整される膨張装置と、
前記膨張装置から導出された冷媒を蒸発させて外部と熱交換をするとともに、その冷媒を前記可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、
前記冷凍サイクルの所定の2点間の差圧または流量が設定値となるように、前記可変容量圧縮機の前記吐出室から前記クランク室へ導入する冷媒流量を制御して、前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
を備えたことを特徴とする冷凍サイクル。
【請求項2】
前記制御弁が、前記可変容量圧縮機の冷媒出口から導出される冷媒の流量が設定流量となるように制御する流量制御弁として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル。
【請求項3】
前記膨張装置の設定圧力が電気的に設定変更可能に構成される一方、前記制御弁の設定流量が電気的に設定変更可能に構成され、
所定の外部情報に基づいて前記設定圧力および前記設定流量を決定し、決定された設定圧力に応じて前記膨張装置への通電制御を実行するとともに、決定された設定流量に応じて前記制御弁への通電制御を実行する制御部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の冷凍サイクル。
【請求項4】
前記制御弁は、
前記可変容量圧縮機の冷媒出口と吐出室とを連通させる第1冷媒通路と、
前記第1冷媒通路を開閉する主弁と、
前記吐出室と前記クランク室とを連通させる第2冷媒通路と、
前記主弁に対して相対変位して前記第2冷媒通路を開閉する副弁と、
前記副弁を開閉方向に駆動し、前記副弁の閉弁時には前記主弁を開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含み、
前記主弁を経て前記冷媒出口から導出される冷媒の流量を、前記ソレノイドに供給される電流値に応じた設定流量となるように制御することを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル。
【請求項5】
前記制御弁は、
前記主弁として、前記第1冷媒通路に形成された弁座と、付勢部材により閉弁方向に付勢された状態で前記弁座に下流側から接離する主弁体とを含み、
前記副弁として、開弁方向へのソレノイド力を受けて前記主弁体を可動弁座として接離する筒状体からなり、その一方の開口部が前記主弁体に接離して開閉されるとともに、その開弁時には前記吐出室に開口した入口ポートに連通し、他方の開口部が前記クランク室に連通する連通ポートに連通する弁体であって、閉弁時にはソレノイド力を前記主弁体の開弁方向の付勢力として伝達可能な副弁体を含むことを特徴とする請求項4に記載の冷凍サイクル。
【請求項6】
前記外部情報の一つとして、前記蒸発器の出口側の冷媒温度を検出する冷媒温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記蒸発器の出口側の冷媒の過熱度を設定し、前記膨張装置に対して設定した設定圧力と、前記蒸発器の出口側の冷媒温度とに基づいてその冷媒の過熱度を算出し、その過熱度が設定値よりも大きくなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が大きくなるように前記制御弁を制御し、その過熱度が設定値よりも小さくなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が小さくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
【請求項7】
前記外部情報の一つとして、前記蒸発器を通過した前記蒸発器近傍の空気の温度を、冷媒の流れに対して上流側位置と下流側位置においてそれぞれ第1空気温度、第2空気温度として検出する空気温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記第2空気温度と前記第1空気温度との目標温度差を設定し、前記空気温度検出部により検出された第2空気温度と第1空気温度との温度差が前記目標温度差よりも大きくなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が大きくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
【請求項8】
前記外部情報の一つとして、前記可変容量圧縮機の出口側所定位置の冷媒温度、または前記可変容量圧縮機の内部所定位置の冷媒温度を検出する冷媒温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記所定位置の冷媒温度を設定し、前記冷媒温度検出部により検出された冷媒温度が設定値よりも高くなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が小さくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
【請求項9】
前記外部情報の一つとして、前記可変容量圧縮機の出口側所定位置の冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記出口側所定位置の冷媒圧力を設定し、前記冷媒圧力検出部により検出された冷媒圧力が設定値よりも高くなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が小さくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
【請求項10】
前記外部熱交換器から前記膨張装置へ送られる冷媒と、前記蒸発器から前記可変容量圧縮機へ送られる冷媒との間で熱交換をさせる内部熱交換器と、
前記外部情報の一つとして、前記可変容量圧縮機の入口側の冷媒温度または前記内部熱交換器の低圧側出口側の冷媒温度を検出する冷媒温度検出部と、さらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記可変容量圧縮機の入口側または前記内部熱交換器の低圧側出口側の冷媒の過熱度を設定し、前記膨張装置に対して設定した設定圧力と、前記冷媒温度検出部が検出した冷媒温度とに基づいてその冷媒の過熱度を算出し、その過熱度が設定値よりも大きくなると、前記可変容量圧縮機の吐出容量が大きくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
【請求項11】
前記外部熱交換器から前記膨張装置へ送られる冷媒と、前記蒸発器から前記可変容量圧縮機へ送られる冷媒との間で熱交換をさせる内部熱交換器と、
前記外部情報の一つとして、前記内部熱交換器の高圧側の入口側温度および出口側温度、並びに低圧側の出口側温度を検出する冷媒温度検出部と、さらに備え、
前記制御部は、前記外部情報に基づいて前記蒸発器の出口側の冷媒の湿り度を設定し、冷媒温度検出部が検出した各冷媒温度に基づいて前記内部熱交換器の低圧側における入口側の冷媒の状態を算出し、その状態から推定される前記蒸発器の出口側の冷媒の湿り度が設定値よりも小さければ前記可変容量圧縮機の吐出容量が大きくなるように前記制御弁を制御し、その湿り度が設定値よりも大きければ前記可変容量圧縮機の吐出容量が小さくなるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−48498(P2010−48498A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214572(P2008−214572)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】