冷凍装置及び膨張機
【課題】補助吸入路を通じて膨張機構の流体室へ冷媒を導入する膨張機構について、閉鎖状態とした補助吸入路の死容積を削減し、動力回収効率の向上を図る。
【解決手段】第1膨張機構(41)の内部には、第1流体室(52)の吸入側から分岐して第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置と繋がる補助吸入路(70)が形成される。第1膨張機構(41)の内部には、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉塞可能な弁体(83)が設けられる。
【解決手段】第1膨張機構(41)の内部には、第1流体室(52)の吸入側から分岐して第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置と繋がる補助吸入路(70)が形成される。第1膨張機構(41)の内部には、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉塞可能な弁体(83)が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体室で膨張した冷媒の動力を回収する膨張機構を備えた冷凍装置と、この冷凍装置に適用される膨張機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルを行う冷凍装置は、空気調和装置等に広く適用されている。この種の冷凍装置として、冷媒回路に膨張機構を接続し、膨張機構で冷媒の動力を回収するものがある。
【0003】
特許文献1には、この種の冷凍装置が開示されている。この冷凍装置の膨張機構では、高圧冷媒から回収された動力が、駆動軸を介して圧縮機構へ伝えられ、圧縮機構の駆動動力として利用される。
【0004】
ところで、冷媒回路は閉回路であるため、単位時間当たりに圧縮機構を通過する冷媒の循環量(質量流量に相当、以下同じ)と膨張機構を通過する冷媒の循環量は、常に一致していなければならない。ところが、膨張機構をある設計仕様点(例えば暖房定格)で設計すると、その設計仕様点から外れた条件で運転した場合には、圧縮機構での循環量と膨張機構での循環量との間に過不足が生じることになる。具体的には、例えば、暖房定格時に上記圧縮機構と膨張機構との循環量が一致するように設計すると、圧縮機構の吸入圧力が高くなる冷房定格時には、最適な膨張機構の吸入容積は暖房定格時の場合よりも大きくなるため、冷媒が不足して過膨張が生じることになる。
【0005】
そこで、上記特許文献1では、膨張機構に連通管を接続するようにしている。この連通管は、一端が膨張機構の主吸入路と連通し、他端側が膨張機構を貫通して流体室の吸入/膨張過程位置に連通している。また、連通管には、膨張機構の外側において電動弁が設けられている。膨張機構では、例えば圧縮機構の吸入圧力が高くなる運転条件において、電動弁が所定開度に開放され、高圧冷媒が連通管を通じて流体室の吸入/膨張過程位置に導入される。これにより、膨張機構の流出側の冷媒の圧力が圧縮機構の吸入圧力に近づくので、上述したような過膨張の発生を防止することができる。
【特許文献1】特開2004−197640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された膨張機構では、圧縮機構の吸入圧力と、膨張機構の流出側の冷媒の圧力とがほぼ等しい場合、電動弁を閉鎖状態としながら冷媒を膨張させている。ところが、電動弁を閉鎖状態とした場合には、連通管において、閉鎖状態の電動弁から流体室に至るまでの空間が死容積となり、膨張機構での動力回収効率が低下してしまうことがある。
【0007】
この点について、図13を参照しながら説明する。図13は、膨張機構でのシリンダ容積と冷媒の圧力との関係を示すPV線図である。膨張機構の連通管内に上述の死容積が形成されない場合、A点→B点→C点→D点のような挙動で冷媒の圧力及びシリンダ容積が変化する。即ち、膨張機構では、A点からB点に至るまで流体室の容積が拡大され、流体室へ冷媒が吸入される(吸入過程)。次に、BからC点では更に流体室の容積が拡大し、冷媒の圧力が徐々に低下する(膨張過程)。その後、C点からD点に至るまで流体室の容積が縮小され、減圧後の冷媒が流体室から流出する(吐出過程)。
【0008】
これに対し、連通管内に上述の死容積が形成される場合には、例えばA点→B’点→B1’点→B2’点→C点→D点のような挙動で冷媒の圧力及びシリンダ容積が変化してしまう。即ち、A点からC点に至るまでの間の吸入/膨張過程では、流体室に吸入された冷媒が死容積の影響により膨張/減圧される。その結果、死容積がある場合には、死容積がない場合と比較して、膨張機構で回収される動力(即ち、A〜Dで囲まれる面積(仕事量))が減少してしまう。
【0009】
以上のように、特許文献1に開示されるような膨張機構では、電動弁を閉鎖状態とした場合に、死容積が形成されて動力回収効率が低下してしまう問題が生じる。特に、特許文献1では、電動弁が膨張機構の外側に配置されているので、電動弁から流体室に至るまでの空間(死容積)が比較的大きくなる。従って、この膨張機構では、死容積に起因する動力回収効率の低下が一層顕著となってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、補助吸入路を通じて膨張機構の流体室へ冷媒を導入する膨張機構について、閉鎖状態とした補助吸入路の死容積を削減し、動力回収効率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた冷凍装置を前提としている。そして、この冷凍装置は、膨張機構(41)の内部に、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明の膨張機構(41)では、第1部材(50)と第2部材(51)との間の形成された流体室(52)で冷媒が膨張する。流体室(52)で膨張した冷媒の動力は、第1部材(50)や第2部材(51)の回転動力として回収される。本発明の膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐する補助吸入路(70)が形成される。更に、補助吸入路(70)の内部には、開閉部材(83)が設けられる。これにより、開閉部材(83)を開閉させることで、流体室(52)の吸入/膨張過程へ導入される冷媒の流量が調節可能となる。従って、圧縮機構と膨張機構(41)との冷媒循環量をバランスさせることができ、膨張機構(41)での過膨張の発生が防止される。
【0013】
ここで、本発明では、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)の内部に開閉部材(83)を設けている。従って、特許文献1のように膨張機構の外側に開閉部材(電動弁)を配置した場合と比較すると、本発明の方が、閉鎖状態とした開閉部材(83)から流体室(52)までの距離を短くできる。その結果、本発明では、補助吸入路(70)に形成される死容積を縮小できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、開閉部材(83)が弁体(83)によって構成される。弁体(83)は、補助吸入路(70)を閉鎖する閉鎖状態となると、流体室(52)の内壁に沿うように流出端(75)を閉塞する。これにより、補助吸入路(70)の閉鎖時には、弁体(83)と流体室(52)との間にほとんど空間(死容積)が形成されなくなる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側と上記膨張機構(41)の内部で分岐していることを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、膨張機構(41)の内部で流体室(52)の吸入側と補助吸入路(70)とが分岐される。つまり、本発明では、膨張機構(41)の外側に流体室(52)の吸入側と分岐する配管を設けることなく、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)が形成される。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記膨張機構(41)の内部には、上記弁体(83)を上記補助吸入路(70)の開閉位置の間で変位自在に収容する弁体室(80)が形成され、上記弁体室(80)における弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路(26,27,28,77)と、該冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構(19,20)とを更に備えていることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、膨張機構(41)の内部に形成された弁体室(80)に弁体(83)が収容される。弁体(83)の背面側には、冷媒導入路(26,27,28,77)からの冷媒が導入される。一方、弁体(83)の先端側には、流体室(52)からの冷媒の圧力が作用する。圧力制御機構(19,20)によって冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を低く制御すると、流体室(52)からの冷媒の圧力により弁体(83)が背面側に変位する。その結果、弁体(83)を開放位置に変位させることができる。また、圧力制御機構(19,20)によって冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を高く制御すると、冷媒導入路(26,27,28,77)からの冷媒の圧力により弁体(83)が先端側に変位する。その結果、弁体(83)を閉鎖位置に変位させることができる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明の冷凍装置において、上記冷媒導入路(26,27,28,77)は、一端が上記膨張機構(41)の流出側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる低圧側導入路(27)と、一端が上記膨張機構(41)の吸入側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる高圧側導入路(28,77)とを有し、上記圧力制御機構は、上記低圧側導入路(27)と高圧側導入路(28,77)とのいずれか一方又は両方の開度を調節する開度調節弁(19,20)を有していることを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明では、圧力制御機構としての開度調節弁(19,20)によって高圧側導入路(28,77)と低圧側導入路(27)とのいずれか一方又は両方の開度が調節される。その結果、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を適宜調整することができ、弁体(83)を開放位置と閉鎖位置との間で変位させることができる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明の冷凍装置において、上記開閉調節弁は、上記低圧側導入路(27)を開閉する開閉弁(19)で構成され、上記高圧側導入路(28,77)には、冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部(90)が設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明では、開度調節弁としての開閉弁(19)を開放させることで、弁体(83)の背面側に低圧冷媒が導入される。その結果、弁体(83)は流体室(52)の圧力によって開放位置に変位する。ここで、高圧側導入路(28,77)には、絞り部(90)が設けられているので、高圧冷媒が弁体室(80)へ導入されてしまうのを最小限に抑えることができる。一方、低圧側導入路(27)の開閉弁(19)を閉鎖させると、高圧側導入路(28,77)の高圧冷媒が絞り部(90)を通じて弁体室(80)へ徐々に流れ、弁体(83)の背面側に高圧冷媒が作用する。その結果、高圧冷媒によって弁体(83)を閉鎖位置に変位させることができる。
【0024】
第7の発明は、第5の発明の冷凍装置において、上記高圧側導入路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように上記膨張機構(41)の内部に形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
第7の発明では、膨張機構(41)の内部に高圧側導入路(77)が形成される。高圧側導入路(77)には、補助吸入路(70)内の高圧冷媒が導入され、この高圧冷媒が弁体室(80)における弁体(83)の背面側に作用する。
【0026】
第8の発明は、第4乃至第7のいずれか1つの発明において、上記弁体室(80)には、上記弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段(87)が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
第8の発明では、付勢手段(87)によって弁体(83)が補助吸入路(70)の流出端(75)を閉鎖する閉鎖位置に付勢される。このため、流体室(52)の内圧が変化しても弁体(83)が前後に揺れ動くことが防止される。その結果、補助吸入路(70)の流出端(75)での死容積の発生も確実に防止される。
【0028】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1つの冷凍装置において、上記膨張機構は、上記第1部材としてのシリンダ(50)と、該シリンダ(50)内に回転自在に収容される上記第2部材としてのピストン(51)と、上記シリンダ(50)の端部を閉塞する閉塞部材(43,44)とを有するロータリー式の膨張機構(41)で構成されることを特徴とするものである。
【0029】
第9の発明では、膨張機構が、いわゆるロータリー式の膨張機構で構成される。
【0030】
第10の発明は、第9の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路(72)を含んでいることを特徴とするものである。
【0031】
第10の発明の膨張機構(41)では、シリンダ(50)に沿うように周方向に延びる円弧状流路(72)が形成され、この円弧状流路(72)が補助吸入路(70)の少なくとも一部を構成する。このように、シリンダ(50)に沿うように円弧状流路(72)を形成することで、補助吸入路(70)が他の部材等に干渉してしまうことを回避できる。
【0032】
第11の発明は、第9又は第10の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)の少なくとも一部は、上記シリンダ(50)及び上記閉塞部材(43,44)のいずれか一又は両方の端面に形成される溝部(71,72,73)によって構成されることを特徴とするものである。
【0033】
第11の発明では、シリンダ(50)と閉塞部材(43,44)とのいずれか一方又は両方の端面に溝部(71,72,73)が形成され、この溝部(71,72,73)が補助吸入路(70)の一部を構成する。これにより、補助吸入路(70)を膨張機構(41)の内部に比較的容易に加工/成形することができる。
【0034】
第12の発明は、第1乃至第11のいずれか1つの発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側から複数本に分岐する分岐流路(70a,70b)と、一端が複数本の分岐流路(70a,70b)の流出端と接続し、他端が流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する1本の合流流路(74)とを有し、上記開閉部材(83)は、上記合流流路(74)を開閉するように構成されていることを特徴とするものである。
【0035】
第12の発明の補助吸入路(70)は、複数の分岐流路(70a,70b)と1本の合流流路(74)とを有している。開閉部材(83)が合流流路(74)を開放させると、流体室(52)の吸入側の冷媒は、各分岐流路(70a,70b)を流れた後、合流流路(74)で合流して流体室(52)の吸入/膨張過程位置に導入される。このように複数本の分岐流路(70a,70b)を形成することで、補助吸入路(70)での冷媒の圧力損失が小さくなる。その結果、補助吸入路(70)から流体室(52)へ導入される冷媒の圧力が低下してしまうのを回避できる。
【0036】
第13の発明は、相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた膨張機を前提としている。そして、この冷凍装置は、上記膨張機構(41)の内部に、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とするものである。
【0037】
第13の発明では、第1の発明の冷凍装置に適用される膨張機を構成することができる。
【0038】
第14の発明は、第13の発明の膨張機において、上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とするものである。
【0039】
第14の発明では、第2の発明の冷凍装置に適用される膨張機を構成することができる。
【発明の効果】
【0040】
第1の発明では、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)内に開閉部材(83)を設けている。これにより、膨張機構(41)の外側に開閉部材を設ける場合と比較して、補助吸入路(70)の流出開口部から流体室(52)までの距離を短くすることができ、閉鎖状態の開閉部材(83)から流体室(52)までの間の空間(死容積)を削減することができる。その結果、死容積に起因して流体室(52)の冷媒が減圧されるのを防止でき、膨張機構(41)の動力回収効率を向上できる。
【0041】
特に、第2の発明では、閉鎖状態とした弁体(83)が流体室(52)の内壁に沿うように補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する。これにより、閉鎖状態の弁体(83)と流体室(52)との間の死容積をほぼ無くすことができ、膨張機構(41)の動力回収効率を更に向上できる。
【0042】
第3の発明では、膨張機構(41)の内部において、流体室(52)の吸入側と補助吸入路(70)とを分岐させている。これにより、膨張機構(41)の外部に分岐用の配管を設けることなく、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成することができ、部品点数の削減、膨張機構(41)のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
第4の発明では、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を制御することで、弁体(83)を開放位置と閉鎖位置との間で変位させている。これにより、比較的シンプルな構造により、膨張機構(41)の内部の弁体(83)を開閉させることができる。
【0044】
特に、第5の発明によれば、膨張機構(41)の流入側と繋がる高圧側導入路(28,77)と、膨張機構(41)の流出側と繋がる低圧側導入路(27)との開度を開度調節弁(19,20)で調節することで、弁体(83)の背面に作用する冷媒の圧力を容易且つ速やかに変化させることができる。
【0045】
また、第6の発明によれば、低圧側導入路(27)に開閉弁(19)を設け、低圧側導入路(27)に絞り部(90)を設けることで、2つの開閉弁を用いることなく、弁体(83)の開閉制御を行うことができる。
【0046】
また、第7の発明によれば、高圧側導入路(77)を補助吸入路(70)と連通するように膨張機構(41)の内部に形成しているので、膨張機構(41)の外部に高圧側導入路を構成するための配管等を設ける必要がない。従って、膨張機構(41)のコンパクト化、簡素化を図ることができる。
【0047】
更に、第8の発明によれば、付勢手段(87)によって弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢しているので、流体室(52)の内圧の変化に伴う弁体(83)のバタツキを抑えることができ、これに伴う死容積の発生や振動の発生等を防止できる。
【0048】
第9の発明によれば、ロータリー式の膨張機構(41)について、閉鎖状態とした補助吸入路(70)での死容積の発生を防止でき、動力回収効率を向上できる。
【0049】
また、10の発明によれば、補助吸入路(70)の少なくとも一部として、シリンダ(50)に沿うように周方向に延びる円弧状流路(72)を用いているので、補助吸入路(70)が他の部材等と干渉することを回避でき、所望とする角度位置に補助吸入路(70)の流出端(75)を形成することができる。
【0050】
第11の発明によれば、補助吸入路(70)の少なくとも一部として、シリンダ(50)や閉塞部材(43,44)の端面の溝部(71,72,73)を用いているので、比較的単純な加工により、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成することができる。
【0051】
第12の発明によれば、補助吸入路(70)の一部を複数の分岐流路(70a,70b)によって構成しているので、補助吸入路(70)の圧力損失を低減できる。これにより、補助吸入路(70)から流体室(52)へ導入される流体の圧力が低下してしまうのを抑制でき、流体室(52)で回収される冷媒の動力を増加させることができる。
【0052】
第13の発明によれば、第1の発明の作用効果を奏する膨張機を提供でき、第14の発明によれば、第2の発明の作用効果を奏する膨張機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0054】
本実施形態では、本発明に係る冷凍装置が空気調和装置(10)を構成している。空気調和装置(10)は、室内の冷房と暖房とを切り換えて行うように構成されている。
【0055】
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う閉回路を構成している。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。つまり、冷媒回路(11)では、二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルが行われる。冷媒回路(11)には、圧縮・膨張ユニット(30)と室外熱交換器(12)と室内熱交換器(13)と四方切換弁(14)とブリッジ回路(15)と予膨張弁(17)とが設けられている。
【0056】
圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(31)を備えている。ケーシング(31)内には、その下部から上部へ向かって順に、圧縮機構(32)、電動機(33)、及び2段膨張ユニット(40)が設けられている。また、圧縮・膨張ユニット(30)には、圧縮機構(32)と電動機(33)と2段膨張ユニット(40)とを連結する出力軸(34)が設けられている。
【0057】
圧縮機構(32)は、ロータリー式の容積型圧縮機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、吐出口を通じてケーシング(31)内に導入される。つまり、圧縮・膨張ユニット(30)は、ケーシング(31)の内部が高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム式に構成されている。
【0058】
電動機(33)は、ケーシング(31)の内周面に固定されるステータ部(35)と、ステータ部(35)の内側に位置して出力軸(34)と連結するロータ部(36)とを有している。電動機(33)は、その出力周波数が調節されることで、回転速度が可変となっている。つまり、圧縮・膨張ユニット(30)は、インバータ式に構成されている。
【0059】
2段膨張ユニット(40)は、いわゆる2シリンダ型の膨張ユニットであって、第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とを有している。第1膨張機構(41)及び第2膨張機構(42)は、ロータリー式の容積型膨張機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とは直列に接続され、第1膨張機構(41)が上流側の膨張機構を、第2膨張機構(42)が下流側の膨張機構を構成している。第1膨張機構(41)の押しのけ容積は、第2膨張機構(42)の押しのけ容積よりも小さくなっている。また、第1膨張機構(41)及び第2膨張機構(42)は、出力軸(34)に連結されている。2段膨張ユニット(40)の詳細は後述する。
【0060】
圧縮・膨張ユニット(30)には、吸入管(21)と吐出管(22)と流入管(23)と流出管(24)とが設けられている。吸入管(21)は、ケーシング(31)を貫通して圧縮機構(32)の吸入側に直に接続されている。吐出管(22)は、ケーシング(31)を貫通して該ケーシング(31)の内部に開口している。流入管(23)は、ケーシング(31)を貫通して第1膨張機構(41)の吸入側(流入側)に直に接続されている。流出管(24)は、ケーシング(31)を貫通して第2膨張機構(42)の吐出側(流出側)に直に接続されている。
【0061】
上記室外熱交換器(12)及び室内熱交換器(13)は、いずれもクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ式熱交換器を構成している。上記四方切換弁(14)は、第1から第4までのポートを有している。第1ポートは吸入管(21)と連通し、第2ポートは吐出管(22)と連通している。第3ポートは室外熱交換器(12)の一端と連通し、第4ポートは室内熱交換器(13)の一端と連通している。四方切換弁(14)は、第1のポートと第4のポートとが連通して第2のポートと第3のポートとが連通する状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通して第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1の破線で示す状態)とに切り換え自在に構成されている。
【0062】
上記ブリッジ回路(15)は、各々が逆止弁(16)を有する4本の配管がブリッジ状に接続されて構成されている。このブリッジ回路(15)は、四方切換弁(14)の切り換えに伴い冷媒の循環方向が変更されても、2段膨張ユニット(40)に対して常に同じ方向で冷媒を流通させるものである。なお、ブリッジ回路(15)に換えて四方切換弁を設けるようにしても良い。上記予膨張弁(17)は、ブリッジ回路(15)と流入管(23)とを繋ぐ配管に設けられている。予膨張弁(17)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0063】
冷媒回路(11)には、バイパス管(25)と主導入管(26)と低圧導入管(27)と高圧導入管(28)とが接続されている。バイパス管(25)は、一端が予膨張弁(17)と流入管(23)との間の配管に接続し、他端がブリッジ回路(15)と流出管(24)との間の配管に接続している。バイパス管(25)には、バイパス弁(18)が設けられている。バイパス弁(18)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0064】
主導入管(26)は、その終端が第1膨張機構(41)の弁体室(詳細は後述する)に接続されている。主導入管(26)の始端には、上記低圧導入管(27)及び高圧導入管(28)の終端がそれぞれ接続されている。低圧導入管(27)の始端は、2段膨張ユニット(40)の流出側(即ち、冷媒回路(11)の低圧ライン)に接続している。つまり、低圧導入管(27)は、2段膨張ユニット(40)の流出側と連通する低圧側導入路を構成している。高圧導入管(28)の始端は、2段膨張ユニット(40)の吸入側(即ち、冷媒回路(11)の高圧ライン)に接続している。つまり、高圧導入管(28)は、2段膨張ユニット(40)の吸入側と連通する高圧側導入路を構成している。また、低圧導入管(27)には低圧導入弁(19)が、高圧導入管(28)には高圧導入弁(20)がそれぞれ設けられている。低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)は、開閉自在な開閉弁(開度調節弁)を構成している。なお、低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)は、必ずしも開閉の2段階に切り換えられるものでなくても良く、その開度の微調整が可能な流量調節弁(電動弁)であっても良い。
【0065】
〈2段膨張ユニットの構成〉
図2に示すように、上記圧縮・膨張ユニット(30)の上部には、上述した2段膨張ユニット(40)が設けられている。2段膨張ユニット(40)は、上記第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とフロントヘッド(43)と中間プレート(44)とリアヘッド(45)とを備えている。2段膨張ユニット(40)では、出力軸(34)の下端から上端に向かって、フロントヘッド(43)、第1膨張機構(41)、中間プレート(44)、第2膨張機構(42)、及びリアヘッド(45)が順に配列されて積層されている。
【0066】
第1膨張機構(41)は、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)とを有している。第2膨張機構(42)は、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)とを有している。各膨張機構(41,42)では、第1部材としてのシリンダ(50,60)に対して第2部材としてのピストン(51,61)が相対的に偏心回転するように構成されている。
【0067】
シリンダ(50,60)は、上下の両端が開放された略筒状に形成されている。第1シリンダ(50)の内径及び厚みは、第2シリンダ(60)の内径及び厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。第1シリンダ(50)は、その下端面がフロントヘッド(43)に閉塞され、その上端面が中間プレート(44)に閉塞されている。第2シリンダ(60)は、その下端面が中間プレート(44)に閉塞され、その上端面がリアヘッド(45)に閉塞されている。つまり、フロントヘッド(43)、中間プレート(44)、及びリアヘッド(45)は、シリンダ(50,60)の端部を閉塞する閉塞部材を構成している。また、これらの閉塞部材(43,44,45)及びシリンダ(50,60)は、ケーシング(31)に固定される固定部材を構成している。
【0068】
第1シリンダ(50)の内部には、第1ピストン(51)が収容され、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)との間に第1流体室(52)が区画形成されている。第2シリンダ(60)の内部には、第2ピストン(61)が収容され、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)との間に第2流体室(62)が区画形成されている。ピストン(51,61)は、筒状あるいは環状に形成されている。第1ピストン(51)の内径、外径、及び厚みは、第2ピストン(51)の内径、外径、及び厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。第1ピストン(51)の内部には、出力軸(34)の第1偏心部(34a)が、第2ピストン(61)の内部には、出力軸(34)の第2偏心部(34b)がそれぞれ内嵌している。偏心部(34a,34b)は、ピストン(51,61)のクランク軸を構成している。第1偏心部(34a)における出力軸(34)の軸心に対する偏心量は、第2偏心部(34b)の偏心量よりも小さくなっている。
【0069】
図3に示すように、第1膨張機構(41)には第1ブレード(53)及び一対の第1ブッシュ(54)が、第2膨張機構(42)には第2ブレード(63)及び一対の第2ブッシュ(64)がそれぞれ設けられている。ブレード(53,63)は、ピストン(51,61)の外周面から径方向外側へ延びる板状に形成されている。一対のブッシュ(54,64)は、シリンダ(50,60)に形成されたブッシュ溝(55,65)に内嵌している。一対のブッシュ(56,64)は、それぞれ平面部及び円弧部を有し、その平面部が互いに向き合うように配置されている。一対のブッシュ(56,64)の間には、上記ブレード(53,63)が挟み込まれる。ブッシュ(56,64)は、シリンダ(50,60)に対して回動自在となり、且つブレード(53,63)はブッシュ(54,64)に対して進退自在となっている。これにより、ブレード(53,63)と一体化されたピストン(51,61)は、シリンダ(50,60)の内壁に摺接しながら旋回(公転)する運動が許容されている。
【0070】
第1シリンダ(50)の第1流体室(52)には、主吸入路(46)の流出端が開口している。主吸入路(46)は、上記中間プレート(44)を径方向に延びて形成され、その流入端側に上記流入管(23)が接続されている(図2を参照)。第1シリンダ(50)の第1流体室(52)には、連通路(47)の流入端が開口している。連通路(47)は、中間プレート(44)を軸方向斜めに延びて形成されている。第1膨張機構(41)では、主吸入路(46)の流出端と連通路(47)の流入端とが、第1ブレード(53)によって遮断されながら互いに近接するように配置されている。
【0071】
第2シリンダ(60)の第2流体室(62)には、上記連通路(47)の流出端が開口している。また、第2シリンダ(60)の第2流体室(62)には、流出路(48)の流入端が開口している。流出路(48)は、第2シリンダ(60)を径方向に延びて形成され、その流出端側に上記流出管(24)が接続されている(図2を参照)。第2膨張機構(42)では、連通路(47)の流出端と流出路(48)の流入端とが、第2ブレード(63)によって遮断されながら互いに近接するように配置されている。
【0072】
第1流体室(52)は、第1ブレード(53)によって2つの空間に仕切られている。図3においては、第1ブレード(53)の右側に仕切られる空間が、主吸入路(46)と連通する高圧室(52a)を構成し、左側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第1膨張室(52b)を構成する。第2流体室(62)は、第2ブレード(63)によって2つの空間に仕切られている。図3においては、第2ブレード(63)の右側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第2膨張室(62a)を構成し、左側に仕切られる空間が、流出路(48)と連通する低圧室(62b)を構成する。
【0073】
本実施形態では、第1膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)が形成されている。補助吸入路(70)は、第1流体室(52)の吸入側から分岐して第1流体室(52)に連通している。
【0074】
図2若しくは図3に示すように、補助吸入路(70)は、第1から第4までの流路(71,72,73,74)によって構成されている。第1流路(71)は、始端が上記主吸入路(46)と接続し、他端が第1シリンダ(50)の上端面に臨むように中間プレート(44)を軸方向に延びて形成されている。つまり、主吸入路(46)と補助吸入路(70)とは、第1膨張機構(41)の内部で分岐している。また、第1流路(71)は、中間プレート(44)の下端面に形成される溝部によって構成される。第2流路(72)は、その始端が第1流路(71)と接続し、第1シリンダ(50)の上端面を周方向に延びている。つまり、第2流路(72)は、シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路を構成している。第3流路(73)は、その始端が第2流路(72)の終端と接続して第1シリンダ(50)の内部に向かって軸方向に延びて形成されている。第2流路(72)及び第3流路(73)は、第1シリンダ(50)の上端面に形成される溝部によって構成される。第4流路(74)は、その始端が第3流路(73)の終端と接続し、その終端が第1流体室(52)に開口するように第1シリンダ(50)の内部を径方向に延びて形成されている。
【0075】
以上のような構成の補助吸入路(70)は、その流出端が第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置に開口している。つまり、補助吸入路(70)の流出開口部(75)は、第1ピストン(51)の回転動作時において、高圧室(52a)を介して主吸入路(46)の流出端と連通可能で、且つ第1膨張室(52b)を介して連通路(47)の流入端と連通可能となるように角度位置が設定されている。
【0076】
具体的に、本実施形態では、第1ブレード(53)ないし第1ブッシュ(54)を角度位置0度として基準とした場合に、補助吸入路(70)の流出開口部(75)の角度位置は、回転方向に向かって約220°に設定されている。なお、流出開口部(75)の角度位置は、これに限らず、空気調和装置(10)の運転条件に応じて任意に設定される。
【0077】
本実施形態では、第1膨張機構(41)の内部に弁体室(80)も形成されている。具体的に、第1シリンダ(50)には、その外周面から径方向に膨出する膨出部(57)が形成され、この膨出部(57)に上記弁体室(80)が形成されている。弁体室(80)は、大径筒部(81)と小径筒部(82)とによって構成されている。大径筒部(81)は、一端が膨出部(57)の先端に開口するように膨出部(57)の内部を径方向に延びて形成されている。大径筒部(81)の一端側の開口部には、上記主導入管(26)の流出端部が内嵌して接続されている。小径筒部(82)は、大径筒部(81)よりも小径に形成され、一端が大径筒部(81)の他端と接続している。小径筒部(82)は、径方向に延びて形成され、その他端が上記第4流路(74)と連通している。また、小径筒部(82)の内径は、第4流路(74)の内径と概ね等しくなっている。
【0078】
弁体室(80)には、弁体(83)が収容されている。弁体(83)は、補助吸入路(70)を開閉するための開閉部材を構成している。弁体(83)は、大径部(84)と小径部(85)とによって構成されている。大径部(84)及び小径部(85)は、それぞれ円柱状に形成され、大径部(84)が大径筒部(81)に内嵌し、小径部(85)が小径筒部(82)に内嵌している。弁体(83)は、弁体室(80)内をその軸方向に進退自在に構成されている。これにより、弁体(83)は、第3流路(73)と第4流路(74)とを連通させて補助吸入路(70)を開放する位置(図2及び図3を参照)と、第3流路(73)と第4流路(74)とを遮断して補助吸入路(70)を閉鎖する閉鎖位置(図4を参照)とに変位可能となっている。ここで、弁体(83)は、閉鎖位置(閉鎖状態)において、小径部(85)の先端が第1シリンダ(50)の内周面(第1流体室(52)の内壁)に沿うように補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉塞する。つまり、弁体(83)は、その大径部(84)が大径筒部(81)の他端部と当接する位置(閉鎖位置)に変位すると、その小径部(85)の先端面が第1流体室(52)の内周面と略一致する(あるいは僅かに陥没する)ように、小径部(85)の長さが設定されている。なお、小径部(85)の先端面において、第1シリンダ(50)の内周面の半径と同じ円弧半径となるような円弧状の凹みを形成しても良い。
【0079】
弁体室(80)には、弁体(83)の背面側にバネ部材(87)が収容されている。バネ部材(87)は、一端が主導入管(26)の流出端部と当接若しくは接続し、他端が弁体(83)の大径部(84)と当接若しくは接続されている。バネ部材(87)は、弁体(83)を第1シリンダ(50)の径方向内側に向かって付勢している。つまり、バネ部材(87)は、弁体(83)を上記の閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段を構成している。
【0080】
また、弁体室(80)では、上記主導入管(26)から弁体(83)の背面側に向かって冷媒が導入可能となっている。具体的に、弁体室(80)には、上記低圧導入管(27)からの低圧冷媒(即ち、2段膨張ユニット(40)の吐出側の冷媒)と、上記高圧導入管(28)からの高圧冷媒(即ち、2段膨張ユニット(40)の吸入側の冷媒)とが主導入管(26)を介して導入されるように構成されている(図1を参照)。つまり、主導入管(26)と低圧導入管(27)と高圧導入管(28)とは、弁体室(80)における弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路を構成している。
【0081】
また、弁体室(80)には、上述した低圧導入弁(19)と高圧導入弁(20)の開閉の切り換えにより、低圧冷媒と高圧冷媒とが選択的に導入される。具体的に、低圧導入管(27)の低圧導入弁(19)を開放して高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)を閉鎖すると、冷媒回路(11)の低圧ラインと弁体室(80)とが連通して弁体室(80)が低圧雰囲気となる。これにより、弁体(83)は、第1流体室(52)の内圧によって開放位置に変位する。一方、低圧導入管(27)の低圧導入弁(19)を閉鎖して高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)を開放すると、冷媒回路(11)の高圧ラインと弁体室(80)とが連通して弁体室(80)が高圧雰囲気となる。その結果、弁体(83)は、バネ部材(87)によって付勢されて開放位置に変位する。以上のように、低圧導入弁(19)、高圧導入弁(20)、及び冷媒導入路(26,27,28)は、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構を構成している。
【0082】
−空気調和装置の動作−
まず、空気調和装置(10)の基本的な運転動作について説明する。空気調和装置(10)では、四方切換弁(14)の設定に応じて冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。
【0083】
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四方切換弁(14)が図1の実線で示す状態に設定される。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(33)に通電すると、室外熱交換器(12)が放熱器となり室内熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0084】
圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、圧縮・膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)を経由して室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気へ放熱する。
【0085】
室外熱交換器(12)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を通じて2段膨張ユニット(40)へ吸入される。2段膨張ユニット(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経由して室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気から吸熱し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(13)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機構(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0086】
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四方切換弁(14)が図1の破線で示す状態に設定される。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(33)に通電すると、室内熱交換器(13)が放熱器となり室外熱交換器(12)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0087】
圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、圧縮・膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)を経由して室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。
【0088】
室内熱交換器(13)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を通じて2段膨張ユニット(40)へ吸入される。2段膨張ユニット(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経由して室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(12)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機構(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0089】
−2段膨張ユニットの動作−
次に、2段膨張ユニット(40)の動作について説明する。2段膨張ユニット(40)では、低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)の開閉状態に応じて、第1動作と第2動作とが切り換え可能となっている。第1動作と第2動作とは、冷房運転と暖房運転の切り換え、あるいは外気温度の変化などに応じて適宜切り換えられる。
【0090】
〈第1動作〉
第1動作では、冷媒回路(11)の低圧導入弁(19)が閉鎖状態となり高圧導入弁(20)が開放状態となる。これにより、上述のように、弁体室(80)における弁体(83)の背面側は高圧雰囲気となる。このため、弁体(83)の背面側の圧力は、弁体(83)の先端側(第1流体室(52)側)の圧力と同等、あるいはそれ以上となる。従って、弁体(83)は、バネ部材(87)に付勢されながら弁体室(80)の径方向内側に向かって変位する。その結果、弁体(83)は、その大径部(84)が小径筒部(82)に当接して保持される(図4及び図5を参照)。弁体(83)がこのように閉鎖位置に変位すると、上記補助吸入路(70)の第4流路(74)がほぼ完全に閉塞される。
【0091】
このような状態において、2段膨張ユニット(40)では、冷媒が吸入される過程(吸入過程)、冷媒が膨張する過程(膨張過程)、及び冷媒が吐出される過程(吐出過程)が順次繰り返される。
【0092】
吸入過程では、第1膨張機構(41)の第1流体室(52)へ高圧冷媒が吸入される。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が0°の状態(図5(A)に示す状態)から僅かに回転すると、第1ピストン(51)と第1シリンダ(50)との接触位置が主吸入路(46)の流出開口部を通過し、主吸入路(46)から高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、偏心部(34a,34b)の回転角が90°(図5(B))、180°(図5(C))、270°(図5(D))と次第に大きくなるに連れて、高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。主吸入路(46)から高圧室(52a)への高圧冷媒の流入は、偏心部(34a,34b)の回転角が約360°に達するまで(主吸入路(46)の流出開口部が閉じられるまで)続く。また、第1動作の吸入過程では、上記のように補助吸入路(70)が弁体(83)によって閉塞されている。従って、吸入過程において、補助吸入路(70)から高圧室(52a)へ冷媒が導入されることはない。
【0093】
次の膨張過程では、第1流体室(52)及び第2流体室(62)で冷媒が膨張する。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が360°の状態から僅かに回転すると、主吸入路(46)と仕切られた高圧室(52a)が連通路(47)の流入開口部と連通し、高圧室(52a)が第1膨張室(52b)となる。更に、第1膨張室(52b)は、連通路(47)を介して第2膨張機構(42)の第2膨張室(62a)と連通する。偏心部(34a,34b)の回転角が540°、630°と次第に大きくなるに連れ、第1膨張室(52b)の容積が縮小するが、第2膨張室(62a)の容積がそれ以上に拡大される。この第1膨張室(52b)と第2膨張室(62a)の容積の総和の拡大は、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達する直前まで続く。その結果、膨張過程では、冷媒が膨張して減圧されると共に、膨張した冷媒の動力がピストン(51,61)及び偏心部(34a,34b)を介して出力軸(34)の回転動力に変換される。これにより、電動機(33)による圧縮機構(32)の駆動動力が軽減され、空気調和装置(10)の省エネ化が図られる。また、第1動作の膨張過程においても、補助吸入路(70)が弁体(83)によって閉塞されている。従って、膨張過程において、補助吸入路(70)から第1膨張室(52b)へ冷媒が導入されることはない。
【0094】
次の吐出過程では、第2膨張機構(42)の第2流体室(62)から冷媒が流出する。具体的には、偏心部(34a,34b)の回転角が720°の状態から僅かに回転すると、第2膨張室(62a)と流出路(48)とが連通し、第2膨張室(62a)が低圧室(62b)となる。偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。低圧室(62b)から流出路(48)への冷媒の流出は、偏心部(34a,34b)の回転角が約1080°に達するまで続く。
【0095】
〈第2動作〉
第2動作では、冷媒回路(11)の低圧導入弁(19)が開放状態となり高圧導入弁(20)が閉鎖状態となる。これにより、上述のように、弁体室(80)における弁体(83)の背面側は低圧雰囲気となる。このため、弁体(83)の背面側の圧力は、弁体(83)の先端側(第1流体室(52)側)の圧力よりも小さくなる。従って、弁体(83)は、バネ部材(87)に付勢力に抗して弁体室(80)の径方向外側に向かって変位する。その結果、弁体(83)は、その小径部(85)の先端が小径筒部(82)内に収容される(図3及び図6を参照)。弁体(83)がこのように開放位置に変位すると、補助吸入路(70)の第3流路(73)と第4流路(74)とが繋がり、補助吸入路(70)と第1流体室(52)とが連通する。
【0096】
このような状態において、2段膨張ユニット(40)では、上記の第1動作と同様にして吸入過程、膨張過程、及び吐出過程が順次繰り返される。
【0097】
吸入過程では、上述と同様にして、偏心部(34a,34b)の回転角が0°(図6(A))、90°(図6(B))、180°(図6(C))、270°(図6(D))と次第に大きくなるに連れて、主吸入路(46)から高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。ここで、偏心部(34a,34b)の回転角が約220°に達すると、高圧室(52a)と補助吸入路(70)の流出開口部(75)とが連通し始める。従って、第2動作の吸入過程では、主吸入路(46)と補助吸入路(70)との双方から高圧冷媒が導入されることになる。
【0098】
次の膨張過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が360°に達した後から、第1膨張室(52b)が連通路(47)を介して第2膨張室(62a)と連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が540°、630°、720°と次第に大きくなるに連れ、膨張室(52b,62a)で冷媒が膨張する。ここで、偏心部(34a,34b)の回転角が約580°に達するまでは、第1膨張室(52b)と補助吸入路(70)とは連通したままである。従って、第2動作の膨張過程では、補助吸入路(70)から第1膨張室(52b)へ冷媒が導入される。
【0099】
次の吐出過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達した後から、第2膨張室(62a)と流出路(48)とが連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°、1080°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。ここで、第2動作中に低圧室(62b)から流出する冷媒の圧力は、補助吸入路(70)からの冷媒の導入により、第1動作中よりも高くなる。
【0100】
以上のように、本実施形態の2段膨張ユニット(40)では、上記第1動作と第2動作とを選択的に切り換えることで、2段膨張ユニット(40)から流出する冷媒の圧力を適宜調節することができる。これにより、例えば冷房運転と暖房運転の切り換え、あるいは外気温度の変化などに起因して、圧縮機構の吸入圧力が変化した場合にも、2段膨張ユニット(40)では、これに追随させて冷媒を膨張させることができ、いわゆる過膨張の発生を防止できる。
【0101】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、2段膨張ユニット(40)の第1膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)を開閉自在な弁体(83)を設けている。これにより、本実施形態によれば、弁体(83)を開閉させて第1動作と第2動作とを切り換えることで、第1流体室(52)に吸入される冷媒量を調節でき、圧縮機構(32)と2段膨張ユニット(40)との冷媒循環量をバランスさせることができる。その結果、空気調和装置(10)の運転条件が変化しても、2段膨張ユニット(40)の流出側で過膨張が発生することを回避でき、2段膨張ユニット(40)での動力回収効率の向上を図ることができる。
【0102】
また、上記実施形態では、第1動作中に弁体(83)が補助吸入路(70)を閉鎖する状態となると、弁体(83)の先端が補助吸入路(70)の流出開口部(75)をほぼ完全に閉塞するようにしている。これにより、弁体(83)の先端から第1流体室(52)までの間の空間(死容積)をほぼ無くすことができる。これにより、例えば死容積が形成された場合には、図13の実線で示すように死容積に起因して動力回収量(仕事量)が小さくなってしまうのに対し、本実施形態では、図13の破線で示すように、動力回収量が低減することがなく、2段膨張ユニット(40)で所望とする動力回収効率を得ることができる。
【0103】
また、上記実施形態では、低圧導入弁(19)と高圧導入弁(20)との開閉状態を切り換えることで、弁体(83)の背面に作用する冷媒の圧力を変化させて弁体(83)の開閉位置を容易に切り換えることができる。また、弁体(83)の背面側には、弁体(83)を閉鎖位置に付勢するバネ部材(87)を設けたので、第1動作中の弁体(83)が第1流体室(52)の内圧の変化の影響により前後に変位してしまうことを回避でき、死容積の発生や振動の発生等を確実に防止できる。
【0104】
更に、上記実施形態では、補助吸入路(70)の第1流路(71)や第2流路(72)や第3流路(73)を溝部によって構成しているので、中間プレート(44)や第1シリンダ(50)において、これらの流路(71,72,73)の加工が容易となる。また、第2流路(72)を第1シリンダ(50)の周方向に延びる円弧状としたので、第1膨張機構(41)において、他の部材等に干渉することなく補助吸入路(70)を形成することができる。
【0105】
《実施形態の変形例》
上記実施形態については、以下のような各変形例のような構成としても良い。
【0106】
〈変形例1〉
図7に示す変形例1の空気調和装置(10)は、上記実施形態の空気調和装置(10)において、高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)をキャピラリーチューブ(90)に置き換えたものである。キャピラリーチューブ(90)は、高圧導入管(28)を流れる高圧冷媒に対して所定の抵抗を付与する絞り部を構成している。
【0107】
変形例1の第1動作では、低圧導入弁(19)が閉鎖状態となる。一方、高圧導入管(28)側の高圧冷媒は、キャピラリーチューブ(90)を徐々に通過し、主導入管(26)を介して弁体(83)の背面側に送られる。これにより、弁体(83)は高圧冷媒及びバネ部材(87)によって閉鎖位置に変位し、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉鎖する(図4及び図5を参照)。
【0108】
一方、変形例1の第2動作では、低圧導入弁(19)が開放状態となる。これにより、弁体(83)の背面側の冷媒は、徐々に低圧雰囲気となるので、弁体(83)は第1流体室(52)の内圧によって開放位置に押し付けられ、補助吸入路(70)の流出開口部(75)が開放状態となる(図2及び図3を参照)。ここで、高圧導入管(28)にはキャピラリーチューブ(90)が設けられているので、第2動作中において、高圧導入管(28)側の冷媒が第1膨張機構(41)の吸入側に漏れてしまうことが最小限に抑えられる。
【0109】
以上のように、変形例1では、上記実施形態のように低圧導入管(27)と高圧導入管(28)の双方に開閉弁(19,20)を設けることなく、弁体(83)を開閉位置の間で変位させることができる。これにより、変形例1によれば、空気調和装置(10)の構造や弁体(83)の開閉制御の簡素化を図ることができる。
【0110】
〈変形例2〉
図8に示す変形例2の空気調和装置(10)は、上記実施形態の空気調和装置(10)において、高圧導入管(28)及び高圧導入弁(20)が省略された構成となっている。一方、図9に示すように、変形例2の第1膨張機構(41)には、第1シリンダ(50)に高圧分流路(77)が形成されている。
【0111】
高圧分流路(77)は、その流入端が補助吸入路(70)の第2流路(72)に連通し、その流出端は弁体室(80)に連通している。つまり、高圧分流路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように第1膨張機構(41)の内部に形成される、高圧側導入路を構成している。また、高圧分流路(77)は、補助吸入路(70)と比較して、その流路断面が小さくなっている。つまり、高圧分流路(77)は、その内部を流れる冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部を構成している。
【0112】
更に、高圧分流路(77)は、弁体(83)の開閉位置に応じて弁体室(80)との連通状態が切り換わるように構成されている。具体的に、弁体(83)が開放位置となると、高圧分流路(77)の流出端が弁体(83)の大径部(84)によって閉塞される。その結果、高圧分流路(77)は、弁体(83)の背面側と僅かな隙間を介して仕切られる状態となる(図9(A)を参照)。一方、弁体(83)が閉鎖位置となると、高圧分流路(77)の流出端が弁体(83)の背面側と連通する状態となる(図9(B)を参照)。
【0113】
変形例2の第1動作では、低圧導入弁(19)が閉鎖状態となる。一方、補助吸入路(70)側の高圧冷媒は、高圧分流路(77)を通じて弁体(83)の大径部(84)の周囲まで送られる。これにより、高圧分流路(77)の冷媒は、大径部(84)の周囲より弁体(83)の背面側に徐々に漏れ込む。このため、弁体(83)の背面側の圧力が徐々に上昇し、弁体(83)が閉鎖位置に向かって変位する。その結果、最終的には、弁体(83)が補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉鎖する状態となる(図9(B)を参照)。この状態では、高圧分流路(77)が弁体(83)の背面側と完全に繋がった状態となるので、弁体(83)は閉鎖位置で確実に保持される。
【0114】
一方、変形例2の第2動作では、低圧導入弁(19)が開放状態となる。これにより、弁体(83)の背面側の冷媒は、徐々に低圧雰囲気となるので、弁体(83)は第1流体室(52)の内圧によって開放位置に押し付けられ、補助吸入路(70)の流出開口部(75)が開放状態となる(図9(A)を参照)。ここで、高圧分流路(77)の流出端は弁体(83)の大径部(84)によってほぼ閉塞され、且つ高圧分流路(77)は絞り部を構成しているので、補助吸入路(70)側の冷媒が弁体(83)の背面側に漏れてしまうことが最小限に抑えられる。
【0115】
以上のように、変形例2では、上記実施形態のような高圧導入管(28)や高圧導入弁(20)を設けることなく、弁体(83)を開閉位置の間で変位させることができる。これにより、変形例2によれば、空気調和装置(10)の構造や弁体(83)の開閉制御の簡素化を図ることができる。
【0116】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0117】
上記各実施形態において、補助吸入路(70)や主吸入路(46)等を異なる箇所に形成しても良い。具体的に、図10、図11、及び図12に示す例では、主吸入路(46)が第1シリンダ(50)を径方向に貫通するように形成されている。一方、図10の例の補助吸入路(70)は、その第1流路(71)が第1シリンダ(50)の上端面に、第2流路(72)が中間プレート(44)の下端面に形成されている。また、図11の例の補助吸入路(70)は、その第1流路(71)が第1シリンダ(50)の下端面に、第2流路(72)がフロントヘッド(43)の上端面に形成されている。
【0118】
更に、図12に示す例の補助吸入路(70)は、2本の分岐流路(70a,70b)と、1本の合流流路(74)とを有している。具体的に、2本の分岐流路は、第1シリンダ(50)の上端側に形成される上側分岐流路(70a)と、第1シリンダ(50)の下端側に形成される下側分岐流路(70b)とを有している。上側分岐流路(70a)と下側分岐流路(70b)の一端は、それぞれ主吸入路(46)と連通している。一方、合流流路は、上記各実施形態の第4流路(74)を構成しており、その始端が上側分岐流路(70a)と下側分岐流路(70b)の他端と連通している。第4流路(74)の終端は、第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通している。
【0119】
図12に示す例では、補助吸入路(70)に2本の分岐流路(70a,70b)を形成することにより、補助吸入路(70)の流路断面の総和が大きくなる。このため、補助吸入路(70)を開放させた状態において、補助吸入路(70)での圧力損失を低減できる。その結果、補助吸入路(70)から第1流体室(52)へ導入される冷媒の圧力が補助吸入路(70)で減圧されてしまうことを抑制でき、動力回収効率を高めることができる。また、このように2本の分岐流路(70a,70b)を形成したとしても、弁体(83)は合流流路(74)の流出開口部(75)を開閉させているので、分岐流路(70a,70b)に対応するように複数の弁体(83)を設ける必要もない。
【0120】
また、上記実施形態では、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を流体室(52)内に一つだけ設けているが、これを2つ以上設けるようにしても良い。この場合には、各流出開口部(75)に対応するように、複数の弁体(83)を用いるようにすれば良い。また、上記実施形態では、複数の膨張機構を有する2段膨張ユニットについて本発明を適用しているが、1つの膨張機構、あるいは3つ以上の膨張機構から成る膨張ユニットについて、本発明を適用しても良いし、各膨張機構のそれぞれについて本発明の補助吸入路(70)や弁体(83)を適用しても良い。
【0121】
また、上記実施形態では、いわゆるロータリー式の容積型の膨張機構について、本発明を適用しているが、例えばスクロール式の膨張機構のように他の膨張機構に本発明を適用しても良い。また、上記実施形態では、室内の空調を行う空気調和装置について、本発明を適用しているが、例えば給湯機やチラーユニット、庫内の冷蔵/冷凍を行う冷却機等の冷凍装置に本発明を適用しても良い。
【0122】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上説明したように、本発明は、流体室で膨張した冷媒の動力を回収する膨張機構を備えた冷凍装置と、この冷凍装置に適用される膨張機に関し有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本実施形態に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図2】図2は、2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を開放状態としたものである。
【図3】図3は、2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、弁体を開放状態としたものである。
【図4】図4は、2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図5】図5は、第1動作中の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図6】図6は、第2動作中の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図7】図7は、変形例1に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図8】図8は、変形例2に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図9】図9は、変形例2の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、図9(A)は弁体を閉鎖状態としたものであり、図9(B)は弁体を開放状態としたものである。
【図10】図10は、その他の変形例1の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図11】図11は、その他の変形例2の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図12】図12は、その他の変形例2の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図13】図13は、膨張動作におけるシリンダ容積と冷媒圧力との関係を示すPV線図であり、従来例の課題を説明するためのものである。
【符号の説明】
【0125】
10 空気調和装置(冷凍装置)
19 低圧導入弁(圧力制御機構、開度調節弁)
20 高圧導入弁(圧力制御機構、開度調節弁)
26 主導入管(冷媒導入路)
27 低圧導入管(冷媒導入路、低圧側導入路)
28 高圧導入管(冷媒導入路、高圧側導入路)
40 2段膨張ユニット(膨張機)
41 第1膨張機構(膨張機構)
43 フロントヘッド(閉塞部材)
44 中間プレート(閉塞部材)
50 第1シリンダ(第1部材)
51 第1ピストン(第2部材)
52 第1流体室(流体室)
70 補助吸入路
70a 上側分岐流路(分岐流路)
70b 下側分岐流路(分岐流路)
71 第1流路(補助吸入路、溝部)
72 第2流路(補助吸入路、溝部、円弧状流路)
73 第3流路(補助吸入路、溝部)
74 第4流路(補助吸入路、合流流路)
75 流出開口部(流出端)
77 高圧分流路(冷媒導入路、高圧側導入路、絞り部)
80 弁体室
83 弁体(開閉部材)
87 バネ部材(付勢手段)
90 キャピラリーチューブ(絞り部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体室で膨張した冷媒の動力を回収する膨張機構を備えた冷凍装置と、この冷凍装置に適用される膨張機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルを行う冷凍装置は、空気調和装置等に広く適用されている。この種の冷凍装置として、冷媒回路に膨張機構を接続し、膨張機構で冷媒の動力を回収するものがある。
【0003】
特許文献1には、この種の冷凍装置が開示されている。この冷凍装置の膨張機構では、高圧冷媒から回収された動力が、駆動軸を介して圧縮機構へ伝えられ、圧縮機構の駆動動力として利用される。
【0004】
ところで、冷媒回路は閉回路であるため、単位時間当たりに圧縮機構を通過する冷媒の循環量(質量流量に相当、以下同じ)と膨張機構を通過する冷媒の循環量は、常に一致していなければならない。ところが、膨張機構をある設計仕様点(例えば暖房定格)で設計すると、その設計仕様点から外れた条件で運転した場合には、圧縮機構での循環量と膨張機構での循環量との間に過不足が生じることになる。具体的には、例えば、暖房定格時に上記圧縮機構と膨張機構との循環量が一致するように設計すると、圧縮機構の吸入圧力が高くなる冷房定格時には、最適な膨張機構の吸入容積は暖房定格時の場合よりも大きくなるため、冷媒が不足して過膨張が生じることになる。
【0005】
そこで、上記特許文献1では、膨張機構に連通管を接続するようにしている。この連通管は、一端が膨張機構の主吸入路と連通し、他端側が膨張機構を貫通して流体室の吸入/膨張過程位置に連通している。また、連通管には、膨張機構の外側において電動弁が設けられている。膨張機構では、例えば圧縮機構の吸入圧力が高くなる運転条件において、電動弁が所定開度に開放され、高圧冷媒が連通管を通じて流体室の吸入/膨張過程位置に導入される。これにより、膨張機構の流出側の冷媒の圧力が圧縮機構の吸入圧力に近づくので、上述したような過膨張の発生を防止することができる。
【特許文献1】特開2004−197640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された膨張機構では、圧縮機構の吸入圧力と、膨張機構の流出側の冷媒の圧力とがほぼ等しい場合、電動弁を閉鎖状態としながら冷媒を膨張させている。ところが、電動弁を閉鎖状態とした場合には、連通管において、閉鎖状態の電動弁から流体室に至るまでの空間が死容積となり、膨張機構での動力回収効率が低下してしまうことがある。
【0007】
この点について、図13を参照しながら説明する。図13は、膨張機構でのシリンダ容積と冷媒の圧力との関係を示すPV線図である。膨張機構の連通管内に上述の死容積が形成されない場合、A点→B点→C点→D点のような挙動で冷媒の圧力及びシリンダ容積が変化する。即ち、膨張機構では、A点からB点に至るまで流体室の容積が拡大され、流体室へ冷媒が吸入される(吸入過程)。次に、BからC点では更に流体室の容積が拡大し、冷媒の圧力が徐々に低下する(膨張過程)。その後、C点からD点に至るまで流体室の容積が縮小され、減圧後の冷媒が流体室から流出する(吐出過程)。
【0008】
これに対し、連通管内に上述の死容積が形成される場合には、例えばA点→B’点→B1’点→B2’点→C点→D点のような挙動で冷媒の圧力及びシリンダ容積が変化してしまう。即ち、A点からC点に至るまでの間の吸入/膨張過程では、流体室に吸入された冷媒が死容積の影響により膨張/減圧される。その結果、死容積がある場合には、死容積がない場合と比較して、膨張機構で回収される動力(即ち、A〜Dで囲まれる面積(仕事量))が減少してしまう。
【0009】
以上のように、特許文献1に開示されるような膨張機構では、電動弁を閉鎖状態とした場合に、死容積が形成されて動力回収効率が低下してしまう問題が生じる。特に、特許文献1では、電動弁が膨張機構の外側に配置されているので、電動弁から流体室に至るまでの空間(死容積)が比較的大きくなる。従って、この膨張機構では、死容積に起因する動力回収効率の低下が一層顕著となってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、補助吸入路を通じて膨張機構の流体室へ冷媒を導入する膨張機構について、閉鎖状態とした補助吸入路の死容積を削減し、動力回収効率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた冷凍装置を前提としている。そして、この冷凍装置は、膨張機構(41)の内部に、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明の膨張機構(41)では、第1部材(50)と第2部材(51)との間の形成された流体室(52)で冷媒が膨張する。流体室(52)で膨張した冷媒の動力は、第1部材(50)や第2部材(51)の回転動力として回収される。本発明の膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐する補助吸入路(70)が形成される。更に、補助吸入路(70)の内部には、開閉部材(83)が設けられる。これにより、開閉部材(83)を開閉させることで、流体室(52)の吸入/膨張過程へ導入される冷媒の流量が調節可能となる。従って、圧縮機構と膨張機構(41)との冷媒循環量をバランスさせることができ、膨張機構(41)での過膨張の発生が防止される。
【0013】
ここで、本発明では、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)の内部に開閉部材(83)を設けている。従って、特許文献1のように膨張機構の外側に開閉部材(電動弁)を配置した場合と比較すると、本発明の方が、閉鎖状態とした開閉部材(83)から流体室(52)までの距離を短くできる。その結果、本発明では、補助吸入路(70)に形成される死容積を縮小できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、開閉部材(83)が弁体(83)によって構成される。弁体(83)は、補助吸入路(70)を閉鎖する閉鎖状態となると、流体室(52)の内壁に沿うように流出端(75)を閉塞する。これにより、補助吸入路(70)の閉鎖時には、弁体(83)と流体室(52)との間にほとんど空間(死容積)が形成されなくなる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側と上記膨張機構(41)の内部で分岐していることを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、膨張機構(41)の内部で流体室(52)の吸入側と補助吸入路(70)とが分岐される。つまり、本発明では、膨張機構(41)の外側に流体室(52)の吸入側と分岐する配管を設けることなく、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)が形成される。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記膨張機構(41)の内部には、上記弁体(83)を上記補助吸入路(70)の開閉位置の間で変位自在に収容する弁体室(80)が形成され、上記弁体室(80)における弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路(26,27,28,77)と、該冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構(19,20)とを更に備えていることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、膨張機構(41)の内部に形成された弁体室(80)に弁体(83)が収容される。弁体(83)の背面側には、冷媒導入路(26,27,28,77)からの冷媒が導入される。一方、弁体(83)の先端側には、流体室(52)からの冷媒の圧力が作用する。圧力制御機構(19,20)によって冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を低く制御すると、流体室(52)からの冷媒の圧力により弁体(83)が背面側に変位する。その結果、弁体(83)を開放位置に変位させることができる。また、圧力制御機構(19,20)によって冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を高く制御すると、冷媒導入路(26,27,28,77)からの冷媒の圧力により弁体(83)が先端側に変位する。その結果、弁体(83)を閉鎖位置に変位させることができる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明の冷凍装置において、上記冷媒導入路(26,27,28,77)は、一端が上記膨張機構(41)の流出側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる低圧側導入路(27)と、一端が上記膨張機構(41)の吸入側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる高圧側導入路(28,77)とを有し、上記圧力制御機構は、上記低圧側導入路(27)と高圧側導入路(28,77)とのいずれか一方又は両方の開度を調節する開度調節弁(19,20)を有していることを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明では、圧力制御機構としての開度調節弁(19,20)によって高圧側導入路(28,77)と低圧側導入路(27)とのいずれか一方又は両方の開度が調節される。その結果、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を適宜調整することができ、弁体(83)を開放位置と閉鎖位置との間で変位させることができる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明の冷凍装置において、上記開閉調節弁は、上記低圧側導入路(27)を開閉する開閉弁(19)で構成され、上記高圧側導入路(28,77)には、冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部(90)が設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明では、開度調節弁としての開閉弁(19)を開放させることで、弁体(83)の背面側に低圧冷媒が導入される。その結果、弁体(83)は流体室(52)の圧力によって開放位置に変位する。ここで、高圧側導入路(28,77)には、絞り部(90)が設けられているので、高圧冷媒が弁体室(80)へ導入されてしまうのを最小限に抑えることができる。一方、低圧側導入路(27)の開閉弁(19)を閉鎖させると、高圧側導入路(28,77)の高圧冷媒が絞り部(90)を通じて弁体室(80)へ徐々に流れ、弁体(83)の背面側に高圧冷媒が作用する。その結果、高圧冷媒によって弁体(83)を閉鎖位置に変位させることができる。
【0024】
第7の発明は、第5の発明の冷凍装置において、上記高圧側導入路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように上記膨張機構(41)の内部に形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
第7の発明では、膨張機構(41)の内部に高圧側導入路(77)が形成される。高圧側導入路(77)には、補助吸入路(70)内の高圧冷媒が導入され、この高圧冷媒が弁体室(80)における弁体(83)の背面側に作用する。
【0026】
第8の発明は、第4乃至第7のいずれか1つの発明において、上記弁体室(80)には、上記弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段(87)が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
第8の発明では、付勢手段(87)によって弁体(83)が補助吸入路(70)の流出端(75)を閉鎖する閉鎖位置に付勢される。このため、流体室(52)の内圧が変化しても弁体(83)が前後に揺れ動くことが防止される。その結果、補助吸入路(70)の流出端(75)での死容積の発生も確実に防止される。
【0028】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1つの冷凍装置において、上記膨張機構は、上記第1部材としてのシリンダ(50)と、該シリンダ(50)内に回転自在に収容される上記第2部材としてのピストン(51)と、上記シリンダ(50)の端部を閉塞する閉塞部材(43,44)とを有するロータリー式の膨張機構(41)で構成されることを特徴とするものである。
【0029】
第9の発明では、膨張機構が、いわゆるロータリー式の膨張機構で構成される。
【0030】
第10の発明は、第9の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路(72)を含んでいることを特徴とするものである。
【0031】
第10の発明の膨張機構(41)では、シリンダ(50)に沿うように周方向に延びる円弧状流路(72)が形成され、この円弧状流路(72)が補助吸入路(70)の少なくとも一部を構成する。このように、シリンダ(50)に沿うように円弧状流路(72)を形成することで、補助吸入路(70)が他の部材等に干渉してしまうことを回避できる。
【0032】
第11の発明は、第9又は第10の発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)の少なくとも一部は、上記シリンダ(50)及び上記閉塞部材(43,44)のいずれか一又は両方の端面に形成される溝部(71,72,73)によって構成されることを特徴とするものである。
【0033】
第11の発明では、シリンダ(50)と閉塞部材(43,44)とのいずれか一方又は両方の端面に溝部(71,72,73)が形成され、この溝部(71,72,73)が補助吸入路(70)の一部を構成する。これにより、補助吸入路(70)を膨張機構(41)の内部に比較的容易に加工/成形することができる。
【0034】
第12の発明は、第1乃至第11のいずれか1つの発明の冷凍装置において、上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側から複数本に分岐する分岐流路(70a,70b)と、一端が複数本の分岐流路(70a,70b)の流出端と接続し、他端が流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する1本の合流流路(74)とを有し、上記開閉部材(83)は、上記合流流路(74)を開閉するように構成されていることを特徴とするものである。
【0035】
第12の発明の補助吸入路(70)は、複数の分岐流路(70a,70b)と1本の合流流路(74)とを有している。開閉部材(83)が合流流路(74)を開放させると、流体室(52)の吸入側の冷媒は、各分岐流路(70a,70b)を流れた後、合流流路(74)で合流して流体室(52)の吸入/膨張過程位置に導入される。このように複数本の分岐流路(70a,70b)を形成することで、補助吸入路(70)での冷媒の圧力損失が小さくなる。その結果、補助吸入路(70)から流体室(52)へ導入される冷媒の圧力が低下してしまうのを回避できる。
【0036】
第13の発明は、相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた膨張機を前提としている。そして、この冷凍装置は、上記膨張機構(41)の内部に、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とするものである。
【0037】
第13の発明では、第1の発明の冷凍装置に適用される膨張機を構成することができる。
【0038】
第14の発明は、第13の発明の膨張機において、上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とするものである。
【0039】
第14の発明では、第2の発明の冷凍装置に適用される膨張機を構成することができる。
【発明の効果】
【0040】
第1の発明では、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)内に開閉部材(83)を設けている。これにより、膨張機構(41)の外側に開閉部材を設ける場合と比較して、補助吸入路(70)の流出開口部から流体室(52)までの距離を短くすることができ、閉鎖状態の開閉部材(83)から流体室(52)までの間の空間(死容積)を削減することができる。その結果、死容積に起因して流体室(52)の冷媒が減圧されるのを防止でき、膨張機構(41)の動力回収効率を向上できる。
【0041】
特に、第2の発明では、閉鎖状態とした弁体(83)が流体室(52)の内壁に沿うように補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する。これにより、閉鎖状態の弁体(83)と流体室(52)との間の死容積をほぼ無くすことができ、膨張機構(41)の動力回収効率を更に向上できる。
【0042】
第3の発明では、膨張機構(41)の内部において、流体室(52)の吸入側と補助吸入路(70)とを分岐させている。これにより、膨張機構(41)の外部に分岐用の配管を設けることなく、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成することができ、部品点数の削減、膨張機構(41)のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
第4の発明では、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を制御することで、弁体(83)を開放位置と閉鎖位置との間で変位させている。これにより、比較的シンプルな構造により、膨張機構(41)の内部の弁体(83)を開閉させることができる。
【0044】
特に、第5の発明によれば、膨張機構(41)の流入側と繋がる高圧側導入路(28,77)と、膨張機構(41)の流出側と繋がる低圧側導入路(27)との開度を開度調節弁(19,20)で調節することで、弁体(83)の背面に作用する冷媒の圧力を容易且つ速やかに変化させることができる。
【0045】
また、第6の発明によれば、低圧側導入路(27)に開閉弁(19)を設け、低圧側導入路(27)に絞り部(90)を設けることで、2つの開閉弁を用いることなく、弁体(83)の開閉制御を行うことができる。
【0046】
また、第7の発明によれば、高圧側導入路(77)を補助吸入路(70)と連通するように膨張機構(41)の内部に形成しているので、膨張機構(41)の外部に高圧側導入路を構成するための配管等を設ける必要がない。従って、膨張機構(41)のコンパクト化、簡素化を図ることができる。
【0047】
更に、第8の発明によれば、付勢手段(87)によって弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢しているので、流体室(52)の内圧の変化に伴う弁体(83)のバタツキを抑えることができ、これに伴う死容積の発生や振動の発生等を防止できる。
【0048】
第9の発明によれば、ロータリー式の膨張機構(41)について、閉鎖状態とした補助吸入路(70)での死容積の発生を防止でき、動力回収効率を向上できる。
【0049】
また、10の発明によれば、補助吸入路(70)の少なくとも一部として、シリンダ(50)に沿うように周方向に延びる円弧状流路(72)を用いているので、補助吸入路(70)が他の部材等と干渉することを回避でき、所望とする角度位置に補助吸入路(70)の流出端(75)を形成することができる。
【0050】
第11の発明によれば、補助吸入路(70)の少なくとも一部として、シリンダ(50)や閉塞部材(43,44)の端面の溝部(71,72,73)を用いているので、比較的単純な加工により、膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成することができる。
【0051】
第12の発明によれば、補助吸入路(70)の一部を複数の分岐流路(70a,70b)によって構成しているので、補助吸入路(70)の圧力損失を低減できる。これにより、補助吸入路(70)から流体室(52)へ導入される流体の圧力が低下してしまうのを抑制でき、流体室(52)で回収される冷媒の動力を増加させることができる。
【0052】
第13の発明によれば、第1の発明の作用効果を奏する膨張機を提供でき、第14の発明によれば、第2の発明の作用効果を奏する膨張機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0054】
本実施形態では、本発明に係る冷凍装置が空気調和装置(10)を構成している。空気調和装置(10)は、室内の冷房と暖房とを切り換えて行うように構成されている。
【0055】
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う閉回路を構成している。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。つまり、冷媒回路(11)では、二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルが行われる。冷媒回路(11)には、圧縮・膨張ユニット(30)と室外熱交換器(12)と室内熱交換器(13)と四方切換弁(14)とブリッジ回路(15)と予膨張弁(17)とが設けられている。
【0056】
圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(31)を備えている。ケーシング(31)内には、その下部から上部へ向かって順に、圧縮機構(32)、電動機(33)、及び2段膨張ユニット(40)が設けられている。また、圧縮・膨張ユニット(30)には、圧縮機構(32)と電動機(33)と2段膨張ユニット(40)とを連結する出力軸(34)が設けられている。
【0057】
圧縮機構(32)は、ロータリー式の容積型圧縮機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、吐出口を通じてケーシング(31)内に導入される。つまり、圧縮・膨張ユニット(30)は、ケーシング(31)の内部が高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム式に構成されている。
【0058】
電動機(33)は、ケーシング(31)の内周面に固定されるステータ部(35)と、ステータ部(35)の内側に位置して出力軸(34)と連結するロータ部(36)とを有している。電動機(33)は、その出力周波数が調節されることで、回転速度が可変となっている。つまり、圧縮・膨張ユニット(30)は、インバータ式に構成されている。
【0059】
2段膨張ユニット(40)は、いわゆる2シリンダ型の膨張ユニットであって、第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とを有している。第1膨張機構(41)及び第2膨張機構(42)は、ロータリー式の容積型膨張機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とは直列に接続され、第1膨張機構(41)が上流側の膨張機構を、第2膨張機構(42)が下流側の膨張機構を構成している。第1膨張機構(41)の押しのけ容積は、第2膨張機構(42)の押しのけ容積よりも小さくなっている。また、第1膨張機構(41)及び第2膨張機構(42)は、出力軸(34)に連結されている。2段膨張ユニット(40)の詳細は後述する。
【0060】
圧縮・膨張ユニット(30)には、吸入管(21)と吐出管(22)と流入管(23)と流出管(24)とが設けられている。吸入管(21)は、ケーシング(31)を貫通して圧縮機構(32)の吸入側に直に接続されている。吐出管(22)は、ケーシング(31)を貫通して該ケーシング(31)の内部に開口している。流入管(23)は、ケーシング(31)を貫通して第1膨張機構(41)の吸入側(流入側)に直に接続されている。流出管(24)は、ケーシング(31)を貫通して第2膨張機構(42)の吐出側(流出側)に直に接続されている。
【0061】
上記室外熱交換器(12)及び室内熱交換器(13)は、いずれもクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ式熱交換器を構成している。上記四方切換弁(14)は、第1から第4までのポートを有している。第1ポートは吸入管(21)と連通し、第2ポートは吐出管(22)と連通している。第3ポートは室外熱交換器(12)の一端と連通し、第4ポートは室内熱交換器(13)の一端と連通している。四方切換弁(14)は、第1のポートと第4のポートとが連通して第2のポートと第3のポートとが連通する状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通して第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1の破線で示す状態)とに切り換え自在に構成されている。
【0062】
上記ブリッジ回路(15)は、各々が逆止弁(16)を有する4本の配管がブリッジ状に接続されて構成されている。このブリッジ回路(15)は、四方切換弁(14)の切り換えに伴い冷媒の循環方向が変更されても、2段膨張ユニット(40)に対して常に同じ方向で冷媒を流通させるものである。なお、ブリッジ回路(15)に換えて四方切換弁を設けるようにしても良い。上記予膨張弁(17)は、ブリッジ回路(15)と流入管(23)とを繋ぐ配管に設けられている。予膨張弁(17)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0063】
冷媒回路(11)には、バイパス管(25)と主導入管(26)と低圧導入管(27)と高圧導入管(28)とが接続されている。バイパス管(25)は、一端が予膨張弁(17)と流入管(23)との間の配管に接続し、他端がブリッジ回路(15)と流出管(24)との間の配管に接続している。バイパス管(25)には、バイパス弁(18)が設けられている。バイパス弁(18)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0064】
主導入管(26)は、その終端が第1膨張機構(41)の弁体室(詳細は後述する)に接続されている。主導入管(26)の始端には、上記低圧導入管(27)及び高圧導入管(28)の終端がそれぞれ接続されている。低圧導入管(27)の始端は、2段膨張ユニット(40)の流出側(即ち、冷媒回路(11)の低圧ライン)に接続している。つまり、低圧導入管(27)は、2段膨張ユニット(40)の流出側と連通する低圧側導入路を構成している。高圧導入管(28)の始端は、2段膨張ユニット(40)の吸入側(即ち、冷媒回路(11)の高圧ライン)に接続している。つまり、高圧導入管(28)は、2段膨張ユニット(40)の吸入側と連通する高圧側導入路を構成している。また、低圧導入管(27)には低圧導入弁(19)が、高圧導入管(28)には高圧導入弁(20)がそれぞれ設けられている。低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)は、開閉自在な開閉弁(開度調節弁)を構成している。なお、低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)は、必ずしも開閉の2段階に切り換えられるものでなくても良く、その開度の微調整が可能な流量調節弁(電動弁)であっても良い。
【0065】
〈2段膨張ユニットの構成〉
図2に示すように、上記圧縮・膨張ユニット(30)の上部には、上述した2段膨張ユニット(40)が設けられている。2段膨張ユニット(40)は、上記第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とフロントヘッド(43)と中間プレート(44)とリアヘッド(45)とを備えている。2段膨張ユニット(40)では、出力軸(34)の下端から上端に向かって、フロントヘッド(43)、第1膨張機構(41)、中間プレート(44)、第2膨張機構(42)、及びリアヘッド(45)が順に配列されて積層されている。
【0066】
第1膨張機構(41)は、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)とを有している。第2膨張機構(42)は、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)とを有している。各膨張機構(41,42)では、第1部材としてのシリンダ(50,60)に対して第2部材としてのピストン(51,61)が相対的に偏心回転するように構成されている。
【0067】
シリンダ(50,60)は、上下の両端が開放された略筒状に形成されている。第1シリンダ(50)の内径及び厚みは、第2シリンダ(60)の内径及び厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。第1シリンダ(50)は、その下端面がフロントヘッド(43)に閉塞され、その上端面が中間プレート(44)に閉塞されている。第2シリンダ(60)は、その下端面が中間プレート(44)に閉塞され、その上端面がリアヘッド(45)に閉塞されている。つまり、フロントヘッド(43)、中間プレート(44)、及びリアヘッド(45)は、シリンダ(50,60)の端部を閉塞する閉塞部材を構成している。また、これらの閉塞部材(43,44,45)及びシリンダ(50,60)は、ケーシング(31)に固定される固定部材を構成している。
【0068】
第1シリンダ(50)の内部には、第1ピストン(51)が収容され、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)との間に第1流体室(52)が区画形成されている。第2シリンダ(60)の内部には、第2ピストン(61)が収容され、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)との間に第2流体室(62)が区画形成されている。ピストン(51,61)は、筒状あるいは環状に形成されている。第1ピストン(51)の内径、外径、及び厚みは、第2ピストン(51)の内径、外径、及び厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。第1ピストン(51)の内部には、出力軸(34)の第1偏心部(34a)が、第2ピストン(61)の内部には、出力軸(34)の第2偏心部(34b)がそれぞれ内嵌している。偏心部(34a,34b)は、ピストン(51,61)のクランク軸を構成している。第1偏心部(34a)における出力軸(34)の軸心に対する偏心量は、第2偏心部(34b)の偏心量よりも小さくなっている。
【0069】
図3に示すように、第1膨張機構(41)には第1ブレード(53)及び一対の第1ブッシュ(54)が、第2膨張機構(42)には第2ブレード(63)及び一対の第2ブッシュ(64)がそれぞれ設けられている。ブレード(53,63)は、ピストン(51,61)の外周面から径方向外側へ延びる板状に形成されている。一対のブッシュ(54,64)は、シリンダ(50,60)に形成されたブッシュ溝(55,65)に内嵌している。一対のブッシュ(56,64)は、それぞれ平面部及び円弧部を有し、その平面部が互いに向き合うように配置されている。一対のブッシュ(56,64)の間には、上記ブレード(53,63)が挟み込まれる。ブッシュ(56,64)は、シリンダ(50,60)に対して回動自在となり、且つブレード(53,63)はブッシュ(54,64)に対して進退自在となっている。これにより、ブレード(53,63)と一体化されたピストン(51,61)は、シリンダ(50,60)の内壁に摺接しながら旋回(公転)する運動が許容されている。
【0070】
第1シリンダ(50)の第1流体室(52)には、主吸入路(46)の流出端が開口している。主吸入路(46)は、上記中間プレート(44)を径方向に延びて形成され、その流入端側に上記流入管(23)が接続されている(図2を参照)。第1シリンダ(50)の第1流体室(52)には、連通路(47)の流入端が開口している。連通路(47)は、中間プレート(44)を軸方向斜めに延びて形成されている。第1膨張機構(41)では、主吸入路(46)の流出端と連通路(47)の流入端とが、第1ブレード(53)によって遮断されながら互いに近接するように配置されている。
【0071】
第2シリンダ(60)の第2流体室(62)には、上記連通路(47)の流出端が開口している。また、第2シリンダ(60)の第2流体室(62)には、流出路(48)の流入端が開口している。流出路(48)は、第2シリンダ(60)を径方向に延びて形成され、その流出端側に上記流出管(24)が接続されている(図2を参照)。第2膨張機構(42)では、連通路(47)の流出端と流出路(48)の流入端とが、第2ブレード(63)によって遮断されながら互いに近接するように配置されている。
【0072】
第1流体室(52)は、第1ブレード(53)によって2つの空間に仕切られている。図3においては、第1ブレード(53)の右側に仕切られる空間が、主吸入路(46)と連通する高圧室(52a)を構成し、左側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第1膨張室(52b)を構成する。第2流体室(62)は、第2ブレード(63)によって2つの空間に仕切られている。図3においては、第2ブレード(63)の右側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第2膨張室(62a)を構成し、左側に仕切られる空間が、流出路(48)と連通する低圧室(62b)を構成する。
【0073】
本実施形態では、第1膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)が形成されている。補助吸入路(70)は、第1流体室(52)の吸入側から分岐して第1流体室(52)に連通している。
【0074】
図2若しくは図3に示すように、補助吸入路(70)は、第1から第4までの流路(71,72,73,74)によって構成されている。第1流路(71)は、始端が上記主吸入路(46)と接続し、他端が第1シリンダ(50)の上端面に臨むように中間プレート(44)を軸方向に延びて形成されている。つまり、主吸入路(46)と補助吸入路(70)とは、第1膨張機構(41)の内部で分岐している。また、第1流路(71)は、中間プレート(44)の下端面に形成される溝部によって構成される。第2流路(72)は、その始端が第1流路(71)と接続し、第1シリンダ(50)の上端面を周方向に延びている。つまり、第2流路(72)は、シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路を構成している。第3流路(73)は、その始端が第2流路(72)の終端と接続して第1シリンダ(50)の内部に向かって軸方向に延びて形成されている。第2流路(72)及び第3流路(73)は、第1シリンダ(50)の上端面に形成される溝部によって構成される。第4流路(74)は、その始端が第3流路(73)の終端と接続し、その終端が第1流体室(52)に開口するように第1シリンダ(50)の内部を径方向に延びて形成されている。
【0075】
以上のような構成の補助吸入路(70)は、その流出端が第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置に開口している。つまり、補助吸入路(70)の流出開口部(75)は、第1ピストン(51)の回転動作時において、高圧室(52a)を介して主吸入路(46)の流出端と連通可能で、且つ第1膨張室(52b)を介して連通路(47)の流入端と連通可能となるように角度位置が設定されている。
【0076】
具体的に、本実施形態では、第1ブレード(53)ないし第1ブッシュ(54)を角度位置0度として基準とした場合に、補助吸入路(70)の流出開口部(75)の角度位置は、回転方向に向かって約220°に設定されている。なお、流出開口部(75)の角度位置は、これに限らず、空気調和装置(10)の運転条件に応じて任意に設定される。
【0077】
本実施形態では、第1膨張機構(41)の内部に弁体室(80)も形成されている。具体的に、第1シリンダ(50)には、その外周面から径方向に膨出する膨出部(57)が形成され、この膨出部(57)に上記弁体室(80)が形成されている。弁体室(80)は、大径筒部(81)と小径筒部(82)とによって構成されている。大径筒部(81)は、一端が膨出部(57)の先端に開口するように膨出部(57)の内部を径方向に延びて形成されている。大径筒部(81)の一端側の開口部には、上記主導入管(26)の流出端部が内嵌して接続されている。小径筒部(82)は、大径筒部(81)よりも小径に形成され、一端が大径筒部(81)の他端と接続している。小径筒部(82)は、径方向に延びて形成され、その他端が上記第4流路(74)と連通している。また、小径筒部(82)の内径は、第4流路(74)の内径と概ね等しくなっている。
【0078】
弁体室(80)には、弁体(83)が収容されている。弁体(83)は、補助吸入路(70)を開閉するための開閉部材を構成している。弁体(83)は、大径部(84)と小径部(85)とによって構成されている。大径部(84)及び小径部(85)は、それぞれ円柱状に形成され、大径部(84)が大径筒部(81)に内嵌し、小径部(85)が小径筒部(82)に内嵌している。弁体(83)は、弁体室(80)内をその軸方向に進退自在に構成されている。これにより、弁体(83)は、第3流路(73)と第4流路(74)とを連通させて補助吸入路(70)を開放する位置(図2及び図3を参照)と、第3流路(73)と第4流路(74)とを遮断して補助吸入路(70)を閉鎖する閉鎖位置(図4を参照)とに変位可能となっている。ここで、弁体(83)は、閉鎖位置(閉鎖状態)において、小径部(85)の先端が第1シリンダ(50)の内周面(第1流体室(52)の内壁)に沿うように補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉塞する。つまり、弁体(83)は、その大径部(84)が大径筒部(81)の他端部と当接する位置(閉鎖位置)に変位すると、その小径部(85)の先端面が第1流体室(52)の内周面と略一致する(あるいは僅かに陥没する)ように、小径部(85)の長さが設定されている。なお、小径部(85)の先端面において、第1シリンダ(50)の内周面の半径と同じ円弧半径となるような円弧状の凹みを形成しても良い。
【0079】
弁体室(80)には、弁体(83)の背面側にバネ部材(87)が収容されている。バネ部材(87)は、一端が主導入管(26)の流出端部と当接若しくは接続し、他端が弁体(83)の大径部(84)と当接若しくは接続されている。バネ部材(87)は、弁体(83)を第1シリンダ(50)の径方向内側に向かって付勢している。つまり、バネ部材(87)は、弁体(83)を上記の閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段を構成している。
【0080】
また、弁体室(80)では、上記主導入管(26)から弁体(83)の背面側に向かって冷媒が導入可能となっている。具体的に、弁体室(80)には、上記低圧導入管(27)からの低圧冷媒(即ち、2段膨張ユニット(40)の吐出側の冷媒)と、上記高圧導入管(28)からの高圧冷媒(即ち、2段膨張ユニット(40)の吸入側の冷媒)とが主導入管(26)を介して導入されるように構成されている(図1を参照)。つまり、主導入管(26)と低圧導入管(27)と高圧導入管(28)とは、弁体室(80)における弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路を構成している。
【0081】
また、弁体室(80)には、上述した低圧導入弁(19)と高圧導入弁(20)の開閉の切り換えにより、低圧冷媒と高圧冷媒とが選択的に導入される。具体的に、低圧導入管(27)の低圧導入弁(19)を開放して高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)を閉鎖すると、冷媒回路(11)の低圧ラインと弁体室(80)とが連通して弁体室(80)が低圧雰囲気となる。これにより、弁体(83)は、第1流体室(52)の内圧によって開放位置に変位する。一方、低圧導入管(27)の低圧導入弁(19)を閉鎖して高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)を開放すると、冷媒回路(11)の高圧ラインと弁体室(80)とが連通して弁体室(80)が高圧雰囲気となる。その結果、弁体(83)は、バネ部材(87)によって付勢されて開放位置に変位する。以上のように、低圧導入弁(19)、高圧導入弁(20)、及び冷媒導入路(26,27,28)は、弁体(83)の背面側の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構を構成している。
【0082】
−空気調和装置の動作−
まず、空気調和装置(10)の基本的な運転動作について説明する。空気調和装置(10)では、四方切換弁(14)の設定に応じて冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。
【0083】
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四方切換弁(14)が図1の実線で示す状態に設定される。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(33)に通電すると、室外熱交換器(12)が放熱器となり室内熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0084】
圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、圧縮・膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)を経由して室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気へ放熱する。
【0085】
室外熱交換器(12)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を通じて2段膨張ユニット(40)へ吸入される。2段膨張ユニット(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経由して室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気から吸熱し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(13)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機構(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0086】
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四方切換弁(14)が図1の破線で示す状態に設定される。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(33)に通電すると、室内熱交換器(13)が放熱器となり室外熱交換器(12)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0087】
圧縮機構(32)で圧縮された冷媒は、圧縮・膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)を経由して室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。
【0088】
室内熱交換器(13)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を通じて2段膨張ユニット(40)へ吸入される。2段膨張ユニット(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経由して室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(12)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機構(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0089】
−2段膨張ユニットの動作−
次に、2段膨張ユニット(40)の動作について説明する。2段膨張ユニット(40)では、低圧導入弁(19)及び高圧導入弁(20)の開閉状態に応じて、第1動作と第2動作とが切り換え可能となっている。第1動作と第2動作とは、冷房運転と暖房運転の切り換え、あるいは外気温度の変化などに応じて適宜切り換えられる。
【0090】
〈第1動作〉
第1動作では、冷媒回路(11)の低圧導入弁(19)が閉鎖状態となり高圧導入弁(20)が開放状態となる。これにより、上述のように、弁体室(80)における弁体(83)の背面側は高圧雰囲気となる。このため、弁体(83)の背面側の圧力は、弁体(83)の先端側(第1流体室(52)側)の圧力と同等、あるいはそれ以上となる。従って、弁体(83)は、バネ部材(87)に付勢されながら弁体室(80)の径方向内側に向かって変位する。その結果、弁体(83)は、その大径部(84)が小径筒部(82)に当接して保持される(図4及び図5を参照)。弁体(83)がこのように閉鎖位置に変位すると、上記補助吸入路(70)の第4流路(74)がほぼ完全に閉塞される。
【0091】
このような状態において、2段膨張ユニット(40)では、冷媒が吸入される過程(吸入過程)、冷媒が膨張する過程(膨張過程)、及び冷媒が吐出される過程(吐出過程)が順次繰り返される。
【0092】
吸入過程では、第1膨張機構(41)の第1流体室(52)へ高圧冷媒が吸入される。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が0°の状態(図5(A)に示す状態)から僅かに回転すると、第1ピストン(51)と第1シリンダ(50)との接触位置が主吸入路(46)の流出開口部を通過し、主吸入路(46)から高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、偏心部(34a,34b)の回転角が90°(図5(B))、180°(図5(C))、270°(図5(D))と次第に大きくなるに連れて、高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。主吸入路(46)から高圧室(52a)への高圧冷媒の流入は、偏心部(34a,34b)の回転角が約360°に達するまで(主吸入路(46)の流出開口部が閉じられるまで)続く。また、第1動作の吸入過程では、上記のように補助吸入路(70)が弁体(83)によって閉塞されている。従って、吸入過程において、補助吸入路(70)から高圧室(52a)へ冷媒が導入されることはない。
【0093】
次の膨張過程では、第1流体室(52)及び第2流体室(62)で冷媒が膨張する。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が360°の状態から僅かに回転すると、主吸入路(46)と仕切られた高圧室(52a)が連通路(47)の流入開口部と連通し、高圧室(52a)が第1膨張室(52b)となる。更に、第1膨張室(52b)は、連通路(47)を介して第2膨張機構(42)の第2膨張室(62a)と連通する。偏心部(34a,34b)の回転角が540°、630°と次第に大きくなるに連れ、第1膨張室(52b)の容積が縮小するが、第2膨張室(62a)の容積がそれ以上に拡大される。この第1膨張室(52b)と第2膨張室(62a)の容積の総和の拡大は、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達する直前まで続く。その結果、膨張過程では、冷媒が膨張して減圧されると共に、膨張した冷媒の動力がピストン(51,61)及び偏心部(34a,34b)を介して出力軸(34)の回転動力に変換される。これにより、電動機(33)による圧縮機構(32)の駆動動力が軽減され、空気調和装置(10)の省エネ化が図られる。また、第1動作の膨張過程においても、補助吸入路(70)が弁体(83)によって閉塞されている。従って、膨張過程において、補助吸入路(70)から第1膨張室(52b)へ冷媒が導入されることはない。
【0094】
次の吐出過程では、第2膨張機構(42)の第2流体室(62)から冷媒が流出する。具体的には、偏心部(34a,34b)の回転角が720°の状態から僅かに回転すると、第2膨張室(62a)と流出路(48)とが連通し、第2膨張室(62a)が低圧室(62b)となる。偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。低圧室(62b)から流出路(48)への冷媒の流出は、偏心部(34a,34b)の回転角が約1080°に達するまで続く。
【0095】
〈第2動作〉
第2動作では、冷媒回路(11)の低圧導入弁(19)が開放状態となり高圧導入弁(20)が閉鎖状態となる。これにより、上述のように、弁体室(80)における弁体(83)の背面側は低圧雰囲気となる。このため、弁体(83)の背面側の圧力は、弁体(83)の先端側(第1流体室(52)側)の圧力よりも小さくなる。従って、弁体(83)は、バネ部材(87)に付勢力に抗して弁体室(80)の径方向外側に向かって変位する。その結果、弁体(83)は、その小径部(85)の先端が小径筒部(82)内に収容される(図3及び図6を参照)。弁体(83)がこのように開放位置に変位すると、補助吸入路(70)の第3流路(73)と第4流路(74)とが繋がり、補助吸入路(70)と第1流体室(52)とが連通する。
【0096】
このような状態において、2段膨張ユニット(40)では、上記の第1動作と同様にして吸入過程、膨張過程、及び吐出過程が順次繰り返される。
【0097】
吸入過程では、上述と同様にして、偏心部(34a,34b)の回転角が0°(図6(A))、90°(図6(B))、180°(図6(C))、270°(図6(D))と次第に大きくなるに連れて、主吸入路(46)から高圧室(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。ここで、偏心部(34a,34b)の回転角が約220°に達すると、高圧室(52a)と補助吸入路(70)の流出開口部(75)とが連通し始める。従って、第2動作の吸入過程では、主吸入路(46)と補助吸入路(70)との双方から高圧冷媒が導入されることになる。
【0098】
次の膨張過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が360°に達した後から、第1膨張室(52b)が連通路(47)を介して第2膨張室(62a)と連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が540°、630°、720°と次第に大きくなるに連れ、膨張室(52b,62a)で冷媒が膨張する。ここで、偏心部(34a,34b)の回転角が約580°に達するまでは、第1膨張室(52b)と補助吸入路(70)とは連通したままである。従って、第2動作の膨張過程では、補助吸入路(70)から第1膨張室(52b)へ冷媒が導入される。
【0099】
次の吐出過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達した後から、第2膨張室(62a)と流出路(48)とが連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°、1080°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。ここで、第2動作中に低圧室(62b)から流出する冷媒の圧力は、補助吸入路(70)からの冷媒の導入により、第1動作中よりも高くなる。
【0100】
以上のように、本実施形態の2段膨張ユニット(40)では、上記第1動作と第2動作とを選択的に切り換えることで、2段膨張ユニット(40)から流出する冷媒の圧力を適宜調節することができる。これにより、例えば冷房運転と暖房運転の切り換え、あるいは外気温度の変化などに起因して、圧縮機構の吸入圧力が変化した場合にも、2段膨張ユニット(40)では、これに追随させて冷媒を膨張させることができ、いわゆる過膨張の発生を防止できる。
【0101】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、2段膨張ユニット(40)の第1膨張機構(41)の内部に補助吸入路(70)を形成し、この補助吸入路(70)を開閉自在な弁体(83)を設けている。これにより、本実施形態によれば、弁体(83)を開閉させて第1動作と第2動作とを切り換えることで、第1流体室(52)に吸入される冷媒量を調節でき、圧縮機構(32)と2段膨張ユニット(40)との冷媒循環量をバランスさせることができる。その結果、空気調和装置(10)の運転条件が変化しても、2段膨張ユニット(40)の流出側で過膨張が発生することを回避でき、2段膨張ユニット(40)での動力回収効率の向上を図ることができる。
【0102】
また、上記実施形態では、第1動作中に弁体(83)が補助吸入路(70)を閉鎖する状態となると、弁体(83)の先端が補助吸入路(70)の流出開口部(75)をほぼ完全に閉塞するようにしている。これにより、弁体(83)の先端から第1流体室(52)までの間の空間(死容積)をほぼ無くすことができる。これにより、例えば死容積が形成された場合には、図13の実線で示すように死容積に起因して動力回収量(仕事量)が小さくなってしまうのに対し、本実施形態では、図13の破線で示すように、動力回収量が低減することがなく、2段膨張ユニット(40)で所望とする動力回収効率を得ることができる。
【0103】
また、上記実施形態では、低圧導入弁(19)と高圧導入弁(20)との開閉状態を切り換えることで、弁体(83)の背面に作用する冷媒の圧力を変化させて弁体(83)の開閉位置を容易に切り換えることができる。また、弁体(83)の背面側には、弁体(83)を閉鎖位置に付勢するバネ部材(87)を設けたので、第1動作中の弁体(83)が第1流体室(52)の内圧の変化の影響により前後に変位してしまうことを回避でき、死容積の発生や振動の発生等を確実に防止できる。
【0104】
更に、上記実施形態では、補助吸入路(70)の第1流路(71)や第2流路(72)や第3流路(73)を溝部によって構成しているので、中間プレート(44)や第1シリンダ(50)において、これらの流路(71,72,73)の加工が容易となる。また、第2流路(72)を第1シリンダ(50)の周方向に延びる円弧状としたので、第1膨張機構(41)において、他の部材等に干渉することなく補助吸入路(70)を形成することができる。
【0105】
《実施形態の変形例》
上記実施形態については、以下のような各変形例のような構成としても良い。
【0106】
〈変形例1〉
図7に示す変形例1の空気調和装置(10)は、上記実施形態の空気調和装置(10)において、高圧導入管(28)の高圧導入弁(20)をキャピラリーチューブ(90)に置き換えたものである。キャピラリーチューブ(90)は、高圧導入管(28)を流れる高圧冷媒に対して所定の抵抗を付与する絞り部を構成している。
【0107】
変形例1の第1動作では、低圧導入弁(19)が閉鎖状態となる。一方、高圧導入管(28)側の高圧冷媒は、キャピラリーチューブ(90)を徐々に通過し、主導入管(26)を介して弁体(83)の背面側に送られる。これにより、弁体(83)は高圧冷媒及びバネ部材(87)によって閉鎖位置に変位し、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉鎖する(図4及び図5を参照)。
【0108】
一方、変形例1の第2動作では、低圧導入弁(19)が開放状態となる。これにより、弁体(83)の背面側の冷媒は、徐々に低圧雰囲気となるので、弁体(83)は第1流体室(52)の内圧によって開放位置に押し付けられ、補助吸入路(70)の流出開口部(75)が開放状態となる(図2及び図3を参照)。ここで、高圧導入管(28)にはキャピラリーチューブ(90)が設けられているので、第2動作中において、高圧導入管(28)側の冷媒が第1膨張機構(41)の吸入側に漏れてしまうことが最小限に抑えられる。
【0109】
以上のように、変形例1では、上記実施形態のように低圧導入管(27)と高圧導入管(28)の双方に開閉弁(19,20)を設けることなく、弁体(83)を開閉位置の間で変位させることができる。これにより、変形例1によれば、空気調和装置(10)の構造や弁体(83)の開閉制御の簡素化を図ることができる。
【0110】
〈変形例2〉
図8に示す変形例2の空気調和装置(10)は、上記実施形態の空気調和装置(10)において、高圧導入管(28)及び高圧導入弁(20)が省略された構成となっている。一方、図9に示すように、変形例2の第1膨張機構(41)には、第1シリンダ(50)に高圧分流路(77)が形成されている。
【0111】
高圧分流路(77)は、その流入端が補助吸入路(70)の第2流路(72)に連通し、その流出端は弁体室(80)に連通している。つまり、高圧分流路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように第1膨張機構(41)の内部に形成される、高圧側導入路を構成している。また、高圧分流路(77)は、補助吸入路(70)と比較して、その流路断面が小さくなっている。つまり、高圧分流路(77)は、その内部を流れる冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部を構成している。
【0112】
更に、高圧分流路(77)は、弁体(83)の開閉位置に応じて弁体室(80)との連通状態が切り換わるように構成されている。具体的に、弁体(83)が開放位置となると、高圧分流路(77)の流出端が弁体(83)の大径部(84)によって閉塞される。その結果、高圧分流路(77)は、弁体(83)の背面側と僅かな隙間を介して仕切られる状態となる(図9(A)を参照)。一方、弁体(83)が閉鎖位置となると、高圧分流路(77)の流出端が弁体(83)の背面側と連通する状態となる(図9(B)を参照)。
【0113】
変形例2の第1動作では、低圧導入弁(19)が閉鎖状態となる。一方、補助吸入路(70)側の高圧冷媒は、高圧分流路(77)を通じて弁体(83)の大径部(84)の周囲まで送られる。これにより、高圧分流路(77)の冷媒は、大径部(84)の周囲より弁体(83)の背面側に徐々に漏れ込む。このため、弁体(83)の背面側の圧力が徐々に上昇し、弁体(83)が閉鎖位置に向かって変位する。その結果、最終的には、弁体(83)が補助吸入路(70)の流出開口部(75)を閉鎖する状態となる(図9(B)を参照)。この状態では、高圧分流路(77)が弁体(83)の背面側と完全に繋がった状態となるので、弁体(83)は閉鎖位置で確実に保持される。
【0114】
一方、変形例2の第2動作では、低圧導入弁(19)が開放状態となる。これにより、弁体(83)の背面側の冷媒は、徐々に低圧雰囲気となるので、弁体(83)は第1流体室(52)の内圧によって開放位置に押し付けられ、補助吸入路(70)の流出開口部(75)が開放状態となる(図9(A)を参照)。ここで、高圧分流路(77)の流出端は弁体(83)の大径部(84)によってほぼ閉塞され、且つ高圧分流路(77)は絞り部を構成しているので、補助吸入路(70)側の冷媒が弁体(83)の背面側に漏れてしまうことが最小限に抑えられる。
【0115】
以上のように、変形例2では、上記実施形態のような高圧導入管(28)や高圧導入弁(20)を設けることなく、弁体(83)を開閉位置の間で変位させることができる。これにより、変形例2によれば、空気調和装置(10)の構造や弁体(83)の開閉制御の簡素化を図ることができる。
【0116】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0117】
上記各実施形態において、補助吸入路(70)や主吸入路(46)等を異なる箇所に形成しても良い。具体的に、図10、図11、及び図12に示す例では、主吸入路(46)が第1シリンダ(50)を径方向に貫通するように形成されている。一方、図10の例の補助吸入路(70)は、その第1流路(71)が第1シリンダ(50)の上端面に、第2流路(72)が中間プレート(44)の下端面に形成されている。また、図11の例の補助吸入路(70)は、その第1流路(71)が第1シリンダ(50)の下端面に、第2流路(72)がフロントヘッド(43)の上端面に形成されている。
【0118】
更に、図12に示す例の補助吸入路(70)は、2本の分岐流路(70a,70b)と、1本の合流流路(74)とを有している。具体的に、2本の分岐流路は、第1シリンダ(50)の上端側に形成される上側分岐流路(70a)と、第1シリンダ(50)の下端側に形成される下側分岐流路(70b)とを有している。上側分岐流路(70a)と下側分岐流路(70b)の一端は、それぞれ主吸入路(46)と連通している。一方、合流流路は、上記各実施形態の第4流路(74)を構成しており、その始端が上側分岐流路(70a)と下側分岐流路(70b)の他端と連通している。第4流路(74)の終端は、第1流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通している。
【0119】
図12に示す例では、補助吸入路(70)に2本の分岐流路(70a,70b)を形成することにより、補助吸入路(70)の流路断面の総和が大きくなる。このため、補助吸入路(70)を開放させた状態において、補助吸入路(70)での圧力損失を低減できる。その結果、補助吸入路(70)から第1流体室(52)へ導入される冷媒の圧力が補助吸入路(70)で減圧されてしまうことを抑制でき、動力回収効率を高めることができる。また、このように2本の分岐流路(70a,70b)を形成したとしても、弁体(83)は合流流路(74)の流出開口部(75)を開閉させているので、分岐流路(70a,70b)に対応するように複数の弁体(83)を設ける必要もない。
【0120】
また、上記実施形態では、補助吸入路(70)の流出開口部(75)を流体室(52)内に一つだけ設けているが、これを2つ以上設けるようにしても良い。この場合には、各流出開口部(75)に対応するように、複数の弁体(83)を用いるようにすれば良い。また、上記実施形態では、複数の膨張機構を有する2段膨張ユニットについて本発明を適用しているが、1つの膨張機構、あるいは3つ以上の膨張機構から成る膨張ユニットについて、本発明を適用しても良いし、各膨張機構のそれぞれについて本発明の補助吸入路(70)や弁体(83)を適用しても良い。
【0121】
また、上記実施形態では、いわゆるロータリー式の容積型の膨張機構について、本発明を適用しているが、例えばスクロール式の膨張機構のように他の膨張機構に本発明を適用しても良い。また、上記実施形態では、室内の空調を行う空気調和装置について、本発明を適用しているが、例えば給湯機やチラーユニット、庫内の冷蔵/冷凍を行う冷却機等の冷凍装置に本発明を適用しても良い。
【0122】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上説明したように、本発明は、流体室で膨張した冷媒の動力を回収する膨張機構を備えた冷凍装置と、この冷凍装置に適用される膨張機に関し有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本実施形態に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図2】図2は、2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を開放状態としたものである。
【図3】図3は、2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、弁体を開放状態としたものである。
【図4】図4は、2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図5】図5は、第1動作中の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図6】図6は、第2動作中の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図7】図7は、変形例1に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図8】図8は、変形例2に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図9】図9は、変形例2の2段膨張ユニットの横断面を示す拡大断面図であり、図9(A)は弁体を閉鎖状態としたものであり、図9(B)は弁体を開放状態としたものである。
【図10】図10は、その他の変形例1の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図11】図11は、その他の変形例2の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図12】図12は、その他の変形例2の2段膨張ユニットの縦断面図であり、弁体を閉鎖状態としたものである。
【図13】図13は、膨張動作におけるシリンダ容積と冷媒圧力との関係を示すPV線図であり、従来例の課題を説明するためのものである。
【符号の説明】
【0125】
10 空気調和装置(冷凍装置)
19 低圧導入弁(圧力制御機構、開度調節弁)
20 高圧導入弁(圧力制御機構、開度調節弁)
26 主導入管(冷媒導入路)
27 低圧導入管(冷媒導入路、低圧側導入路)
28 高圧導入管(冷媒導入路、高圧側導入路)
40 2段膨張ユニット(膨張機)
41 第1膨張機構(膨張機構)
43 フロントヘッド(閉塞部材)
44 中間プレート(閉塞部材)
50 第1シリンダ(第1部材)
51 第1ピストン(第2部材)
52 第1流体室(流体室)
70 補助吸入路
70a 上側分岐流路(分岐流路)
70b 下側分岐流路(分岐流路)
71 第1流路(補助吸入路、溝部)
72 第2流路(補助吸入路、溝部、円弧状流路)
73 第3流路(補助吸入路、溝部)
74 第4流路(補助吸入路、合流流路)
75 流出開口部(流出端)
77 高圧分流路(冷媒導入路、高圧側導入路、絞り部)
80 弁体室
83 弁体(開閉部材)
87 バネ部材(付勢手段)
90 キャピラリーチューブ(絞り部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた冷凍装置であって、
上記膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、
上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記開閉部材は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側と上記膨張機構(41)の内部で分岐していることを特徴とする冷凍装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において、
上記膨張機構(41)の内部には、上記弁体(83)を上記補助吸入路(70)の開閉位置の間で変位自在に収容する弁体室(80)が形成され、
上記弁体室(80)と接続して弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路(26,27,28,77)と、該冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構(19,20)とを更に備えていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項5】
請求項4において、
上記冷媒導入路は、一端が上記膨張機構(41)の流出側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる低圧側導入路(27)と、一端が上記膨張機構(41)の吸入側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる高圧側導入路(28,77)とを有し、
上記圧力制御機構は、上記低圧側導入路(27)と高圧側導入路(28,77)とのいずれか一方又は両方の開度を調節する開度調節弁(19,20)を有していることを特徴とする冷凍装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記開閉調節弁は、上記低圧側導入路(27)を開閉する開閉弁(19)で構成され、
上記高圧側導入路(28,77)には、冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部(90)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項7】
請求項5において、
上記高圧側導入路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように上記膨張機構(41)の内部に形成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1つにおいて、
上記弁体室(80)には、上記弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段(87)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つにおいて、
上記膨張機構は、上記第1部材としてのシリンダ(50)と、該シリンダ(50)内に回転自在に収容される上記第2部材としてのピストン(51)と、上記シリンダ(50)の端部を閉塞する閉塞部材(43,44)とを有するロータリー式の膨張機構(41)で構成されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
請求項9において、
上記補助吸入路(70)は、上記シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路(72)を含んでいることを特徴とする冷凍装置。
【請求項11】
請求項9又は10において、
上記補助吸入路(70)の少なくとも一部は、上記シリンダ(50)及び上記閉塞部材(43,44)のいずれか一方又は両方の端面に形成される溝部(71,72,73)によって構成されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つにおいて、
上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側から複数本に分岐する分岐流路(70a,70b)と、一端が複数本の分岐流路(70a,70b)の流出端と接続し、他端が流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する1本の合流流路(74)とを有し、
上記開閉部材(83)は、上記合流流路(74)を開閉するように構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項13】
相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた膨張機であって、
上記膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、
上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とする膨張機。
【請求項14】
請求項13において、
上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とする膨張機。
【請求項1】
相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた冷凍装置であって、
上記膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、
上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記開閉部材は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端(75)を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側と上記膨張機構(41)の内部で分岐していることを特徴とする冷凍装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において、
上記膨張機構(41)の内部には、上記弁体(83)を上記補助吸入路(70)の開閉位置の間で変位自在に収容する弁体室(80)が形成され、
上記弁体室(80)と接続して弁体(83)の背面側へ冷媒を導入する冷媒導入路(26,27,28,77)と、該冷媒導入路(26,27,28,77)の冷媒の圧力を制御する圧力制御機構(19,20)とを更に備えていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項5】
請求項4において、
上記冷媒導入路は、一端が上記膨張機構(41)の流出側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる低圧側導入路(27)と、一端が上記膨張機構(41)の吸入側と連通して他端が弁体室(80)と繋がる高圧側導入路(28,77)とを有し、
上記圧力制御機構は、上記低圧側導入路(27)と高圧側導入路(28,77)とのいずれか一方又は両方の開度を調節する開度調節弁(19,20)を有していることを特徴とする冷凍装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記開閉調節弁は、上記低圧側導入路(27)を開閉する開閉弁(19)で構成され、
上記高圧側導入路(28,77)には、冷媒の流れに対して抵抗を付与する絞り部(90)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項7】
請求項5において、
上記高圧側導入路(77)は、一端が上記補助吸入路(70)と連通して他端が弁体室(80)と繋がるように上記膨張機構(41)の内部に形成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1つにおいて、
上記弁体室(80)には、上記弁体(83)を閉鎖位置に向かって付勢する付勢手段(87)が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つにおいて、
上記膨張機構は、上記第1部材としてのシリンダ(50)と、該シリンダ(50)内に回転自在に収容される上記第2部材としてのピストン(51)と、上記シリンダ(50)の端部を閉塞する閉塞部材(43,44)とを有するロータリー式の膨張機構(41)で構成されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
請求項9において、
上記補助吸入路(70)は、上記シリンダ(50)に沿うように周方向に形成される円弧状流路(72)を含んでいることを特徴とする冷凍装置。
【請求項11】
請求項9又は10において、
上記補助吸入路(70)の少なくとも一部は、上記シリンダ(50)及び上記閉塞部材(43,44)のいずれか一方又は両方の端面に形成される溝部(71,72,73)によって構成されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つにおいて、
上記補助吸入路(70)は、上記流体室(52)の吸入側から複数本に分岐する分岐流路(70a,70b)と、一端が複数本の分岐流路(70a,70b)の流出端と接続し、他端が流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する1本の合流流路(74)とを有し、
上記開閉部材(83)は、上記合流流路(74)を開閉するように構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項13】
相対的に偏心回転運動する第1部材(50)と第2部材(51)との間に流体室(52)を形成すると共に、上記流体室(52)に吸入された冷媒の動力を回収する膨張機構(41)を備えた膨張機であって、
上記膨張機構(41)の内部には、流体室(52)の吸入側から分岐して該流体室(52)の吸入/膨張過程位置に連通する補助吸入路(70)が形成され、
上記補助吸入路(70)内に、該補助吸入路(70)を開閉する開閉部材(83)が設けられていることを特徴とする膨張機。
【請求項14】
請求項13において、
上記開閉部材(83)は、閉鎖状態で上記流体室(52)の内壁に沿うように上記補助吸入路(70)の流出端を閉塞する弁体(83)で構成されていることを特徴とする膨張機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−228568(P2009−228568A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75707(P2008−75707)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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