説明

冷凍装置

【課題】並列に接続されて運転される一方の圧縮機が吐油量の少ない圧縮機で、他方の圧縮機が吐油量の多い圧縮機である場合に、各圧縮機内の冷凍機油量をほぼ均等化する。
【解決手段】室外ユニット100に並列に接続された第1圧縮機110と第2圧縮機120の少なくとも2台の圧縮機を備え、各圧縮機110,120の吐出管にオイルセパレータ111,121を設け、第1圧縮機側の第1オイルセパレータ111を油戻し配管114を介して第2圧縮機120の吸入管164に接続し、第2圧縮機側の第2オイルセパレータ121を油戻し配管124を介して第1圧縮機110の吸入管163に接続する冷凍装置において、第1圧縮機110にロータリー圧縮機を用い、第2圧縮機120にスクロール圧縮機を用い、第1圧縮機110の油貯留部110bを導油管118を介して第2圧縮機120の吸入管164に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外ユニットに並列に接続された第1圧縮機と第2圧縮機の少なくとも2台の圧縮機を備え、オフィスビルや共同住宅等の大型建物に好適な冷凍装置に関し、さらに詳しく言えば、各圧縮機内の冷凍機油量をほぼ均等化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや共同住宅等の大型建物の空調設備には、1台の室外ユニットから建物内に設置される複数台の室内ユニットに冷媒を供給する、いわゆるマルチエアコンシステムが採用されている。なお、大規模システムでは、室外ユニットが複数台とされることもある。
【0003】
マルチエアコンシステムにおいては、室内ユニットの運転台数により要求される冷房能力もしくは暖房能力が異なるため、これに対応できるように、室外ユニットには複数台の圧縮機が搭載される。
【0004】
圧縮機が2台の場合について説明すると、通常、第1圧縮機にはインバータ制御による回転数可変型の圧縮機が用いられ、第2圧縮機には回転数一定の一定速型の圧縮機が用いられる。
【0005】
所定の能力までは、第2圧縮機を停止状態として、第1圧縮機のみがインバータにより回転数が制御されて運転される。これに対して、所定以上の能力が要求される場合には、第1圧縮機とともに、一定速型の第2圧縮機が運転される。
【0006】
このように、第1圧縮機のみを運転する場合、第1,第2圧縮機をともに運転する場合のいずれの場合においても、各圧縮機内で冷凍機油の過不足が生じないようにする必要がある。
【0007】
その対策の一例として、特許文献1に記載された発明では、第1圧縮機の油貯留部と第2圧縮機の吸入管とを油戻し配管を介して接続し、第2圧縮機の油貯留部と第1圧縮機の吸入管とを油戻し配管を介して接続するようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−324230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載された発明によれば、圧縮機を2台とも運転する場合には、第1圧縮機から第2圧縮機に、また、第2圧縮機から第1圧縮機にそれぞれ余剰の冷凍機油が戻され、圧縮機を1台だけ運転する場合には、余剰の冷凍機油が自機に戻されるため、各圧縮機内に適正量の冷凍機油が保たれる。
【0010】
しかしながら、各圧縮機で冷凍機油の吐油量(吐出ガスとともに吐出される冷凍機油の量)が異なると、上記従来技術では対応できない場合がある。
【0011】
例えば、常に運転されるインバータ制御による第1圧縮機がロータリ圧縮機で、所定以上の能力が要求される場合に運転される一定速型の第2圧縮機がスクロール圧縮機であるとすると、構造的にスクロール圧縮機の方がロータリ圧縮機よりも吐油量が多い。
【0012】
その理由は、ロータリ圧縮機では、通常、冷媒圧縮部は電動機の下部側に配置され、冷媒圧縮部にて生成された冷媒ガスは、電動機側に存在する通路や隙間を通って吐出管から吐出されるため、冷媒ガスと冷凍機油とが分離されやすい。これに対して、スクロール圧縮機では、通常、冷媒圧縮部は電動機の上部に配置されるため、内部高圧型の場合にしても、冷媒圧縮部にて生成された冷媒ガスは、電動機をほとんど通過することなく、吐出管から吐出されることによる。
【0013】
このように、各圧縮機で吐油量の差により冷凍機油の量に偏りが生じた場合、上記従来技術ではその差を解消することは困難で、最悪の場合、油面低下により油ぎれとなり焼き付き事故に至るおそれがある。なお、同じロータリ圧縮機の中でも、また、同じスクロールの中でも、吐油量が異なる場合がある。
【0014】
したがって、本発明の課題は、並列に接続されて運転される一方の圧縮機が吐油量の少ない圧縮機で、他方の圧縮機が相対的に吐油量が多い圧縮機である場合においても、各圧縮機内の冷凍機油量をほぼ均等化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、室外ユニットに、並列に接続された第1圧縮機と第2圧縮機の少なくとも2台の圧縮機を備え、上記各圧縮機の吐出管にオイルセパレータが設けられ、上記第1圧縮機側の第1オイルセパレータが第1油戻し配管を介して上記第2圧縮機の吸入管に接続されているとともに、上記第2圧縮機側の第2オイルセパレータが第2油戻し配管を介して上記第1圧縮機の吸入管に接続されている冷凍装置において、上記第1圧縮機と上記第2圧縮機は吐油量が異なり、上記吐油量の少ない方の第1圧縮機の油貯留部が、減圧手段を含む導油管を介して上記吐油量の多い方の第2圧縮機の吸入管に接続されていることを特徴としている。
【0016】
特に言えば、上記第1圧縮機にはロータリー圧縮機が用いられ、上記第2圧縮機にはスクロール圧縮機が用いられる。
【0017】
本発明において、上記第1圧縮機の吸入管と上記第2圧縮機の吸入管は相互に連通されており、上記第2圧縮機の吸入管に対する上記第1油戻し配管および上記導油管の接続位置は、上記第2圧縮機が運転停止状態のとき、上記第1油戻し配管および上記導油管から上記第2圧縮機側に供給される冷凍機油が重力により落下し、上記第1圧縮機に吸い込まれる位置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、室外ユニットに、並列に接続された第1圧縮機と第2圧縮機の少なくとも2台の圧縮機を備え、各圧縮機の吐出管にオイルセパレータが設けられ、第1圧縮機側の第1オイルセパレータが第1油戻し配管を介して第2圧縮機の吸入管に接続されているとともに、第2圧縮機側の第2オイルセパレータが第2油戻し配管を介して第1圧縮機の吸入管に接続されている冷凍装置において、第1圧縮機と第2圧縮機は吐油量が異なり、吐油量の少ない方の第1圧縮機の油貯留部を減圧手段を含む導油管を介して吐油量の多い方の第2圧縮機の吸入管に接続するようにしたことにより、比較的冷凍機油が潤沢に存在する第1圧縮機(例えば、ロータリ圧縮機)から吐油量の多い第2圧縮機(例えば、スクロール圧縮機)に導油管を介して冷凍機油が供給されるため、各圧縮機内の冷凍機油量をほぼ均等化することができる。
【0019】
また、第1圧縮機の吸入管と第2圧縮機の吸入管が相互に連通されており、第2圧縮機の吸入管に対する第1油戻し配管および導油管の接続位置を、第2圧縮機が運転停止状態のとき、第1油戻し配管および導油管から第2圧縮機側に供給される冷凍機油が重力により落下し、第1圧縮機に吸い込まれる位置とすることにより、第2圧縮機が運転停止状態のときには、第1油戻し配管および導油管から第2圧縮機側に供給される冷凍機油が第1圧縮機に吸い込まれ、第2圧縮機が運転状態のときには、第1油戻し配管および導油管から第2圧縮機側に供給される冷凍機油がそのまま第2圧縮機に吸い込まれることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は本発明の実施形態に係る冷凍装置の全体的な構成を示す冷媒回路図で、図2は上記冷凍装置に含まれる室外ユニットの圧縮機構部を示す拡大図である。
【0021】
まず、図1を参照して、この冷凍装置は、室外ユニット100と室内ユニット200とを備える。室外ユニット100には、圧縮機構部101と、四方弁(流路切替弁)130と、室外ファン141を有する室外熱交換器140と、室外膨張弁150と、アキュムレータ160とが含まれている。
【0022】
室内ユニット200には、それぞれ室内膨張弁211を有する複数台(この例では作図上3台)の室内熱交換器210が液側配管11とガス側配管12との間に並列に接続されている。各室内熱交換器210には室内ファンが付設されるが、その図示は省略されている。
【0023】
次に、図2を参照して、この実施形態によると、圧縮機構部101には、吐出側ガス配管13に対して並列に接続される第1,第2の2台の圧縮機110,120が設けられている。
【0024】
この実施形態において、第1圧縮機110には、インバータ制御による回転数可変型のロータリー圧縮機が用いられ、第2圧縮機120には、回転数一定の一定速型のスクロール圧縮機が用いられる。ロータリ圧縮機は、シングルロータ,通常のツインロータやインジェクション方式のツインロータ等であってよい。
【0025】
第1圧縮機110の冷媒吐出管110aは、オイルセパレータ111および逆止弁112を介して吐出側ガス配管13に接続され、また、第2圧縮機120の冷媒吐出管120aは、オイルセパレータ121および逆止弁122を介して吐出側ガス配管13に接続される。
【0026】
オイルセパレータ111,121は、それぞれ高圧吐出ガス冷媒に含まれている冷凍機油を分離し、逆止弁112,122は、それぞれ他機からの高圧吐出ガス冷媒が自機に入り込むのを阻止する。
【0027】
アキュムレータ160は、各圧縮機110,120の冷媒の吸い込み側に設けられ、仕事を終えた冷媒が戻される。アキュムレータ160から低圧冷媒ガスの主吸込管161が引き出され、その端部に分岐管162が設けられている。
【0028】
分岐管162は二股であって、その一方に第1圧縮機110の吸入管163が接続され、その他方に第2圧縮機120の吸入管164が接続される。なお、この実施形態において、第1圧縮機110は液バック量がより少ないことが要求されるロータリー圧縮機であるため、第1圧縮機110の吸い込み側には、サブアキュムレータ113が設けられている。
【0029】
第1圧縮機10側のオイルセパレータ111は、減圧手段としてのキャピラリーチューブ115を有する油戻し配管114を介して第2圧縮機120の吸入管164に接続される。
【0030】
同様に、第2圧縮機120側のオイルセパレータ121は、減圧手段としてのキャピラリーチューブ125を有する油戻し配管124を介して第1圧縮機120の吸入管163に接続される。
【0031】
これ以外に、本発明では、第1圧縮機(ロータリ圧縮機)110の油貯留部110bが減圧手段としてのキャピラリーチューブ117を含む導油管116を介して第2圧縮機(スクロール圧縮機)120の吸入管164に接続される。
【0032】
吸入管164に対する油戻し配管114および導油管116の接続位置は、油戻し配管114および導油管116から第2圧縮機120側に供給される冷凍機油が重力により落下し得る位置とされる。例えば、吸入管164に分岐管162側に向けて下り勾配となる傾斜部がある場合、その傾斜部に油戻し配管114および導油管116を接続する。
【0033】
これによれば、吸入管163と吸入管164は、分岐管162の部分で相互に連通しているため、第2圧縮機120が運転停止状態のときには、油戻し配管114および導油管116から第2圧縮機側に供給される冷凍機油が第1圧縮機110に吸い込まれ、第2圧縮機120が運転状態のときには、油戻し配管114および導油管116から第2圧縮機120側に供給される冷凍機油がそのまま第2圧縮機120に吸い込まれる。
【0034】
次に、この冷凍装置の運転動作について説明する。所定の能力までは、第2圧縮機120を停止状態として、第1圧縮機110のみがインバータにより回転数が制御されて運転される。これに対して、所定以上の能力が要求される場合には、第1圧縮機110とともに、一定速型の第2圧縮機120が運転される。
【0035】
冷房運転時には、四方弁130が図1の実線状態に切り替えられる。これにより、圧縮機構部101から吐出されたガス冷媒は四方弁130から室外熱交換器140に至り、外気と熱交換して凝縮する(冷房運転時、室外熱交換器140は凝縮器として作用する)。
【0036】
室外熱交換器140で凝縮された液冷媒は、室外膨張弁150に対して並列に接続されている逆止弁151を通り、室内ユニット200に供給される。
【0037】
室内ユニット200側において、液冷媒は各室内膨張弁211で所定の圧力に減圧されたのち、室内熱交換器210で室内空気と熱交換して蒸発し、これにより、室内空気が冷却される(冷房運転時、室熱交換器210は蒸発器として作用する)。
【0038】
室内熱交換器210で蒸発されたガス冷媒は、四方弁130を介してアキュムレータ160に入り、液冷媒が分離されたのち、圧縮機構部101に戻される。
【0039】
暖房運転時には、四方弁130が図1の鎖線状態に切り替えられる。これにより、圧縮機構部101から吐出されたガス冷媒は四方弁130から室内熱交換器210に至り、室内空気と熱交換して凝縮し、これにより、室内空気が暖められる(暖房運転時、室内熱交換器210は凝縮器として作用する)。
【0040】
室内熱交換器210で凝縮された液冷媒は、暖房能力に応じて弁開度が制御される室内膨張弁211を通り、室外ユニット100に供給される。
【0041】
室外ユニット100側において、液冷媒は室外膨張弁150で所定の圧力に減圧されたのち、室外熱交換器140で外気と熱交換して蒸発する(暖房運転時、室外交換器140は蒸発器として作用する)。
【0042】
室外熱交換器140で蒸発されたガス冷媒は、四方弁130を介してアキュムレータ160に入り、液冷媒が分離されたのち、圧縮機構部101に戻される。
【0043】
第1,第2圧縮機110,120がともに運転しているときには、第1圧縮機110側のオイルセパレータ111にて分離された冷凍機油が油戻し配管114を介して、また、第1圧縮機110の油貯留部110b内の冷凍機油が導油管116を介して第2圧縮機120の吸入管164に供給されるとともに、第2圧縮機120側のオイルセパレータ121にて分離された冷凍機油が油戻し配管124を介して第1圧縮機120の吸入管163に供給され、これにより、各圧縮機110,120内の冷凍機油量がほぼ均等化される。
【0044】
第1圧縮機110のロータリ圧縮機と、第2圧縮機120のスクロール圧縮機とでは、上記した理由により、構造的にスクロール圧縮機の方がロータリ圧縮機よりも高圧ガスとともに吐出される冷凍機油の量も多いが、本発明によれば、その分、第1圧縮機110のロータリ圧縮機側から導油管116を介して余剰の冷凍機油が第2圧縮機120のスクロール圧縮機側に供給されるため、各圧縮機110,120で吐油量の差による冷凍機油の量に偏りを解消することができる。
【0045】
また、第1圧縮機110のみが運転され、第2圧縮機120が停止している場合には、油戻し配管114および導油管116から第2圧縮機120側に供給される冷凍機油が第1圧縮機110に吸い込まれる。
【0046】
上記実施形態では、第1圧縮機(インバータ制御によるロータリ圧縮機)1台と、第2圧縮機(一定速型スクロール圧縮機)1台の組み合わせとしているが、第1,第2圧縮機がともに複数台の場合でも、本発明は適用可能である。
【0047】
また、吐油量が異なることを前提として、2台ともに同一圧縮形式の圧縮機(例えば、ロータリ圧縮機もしくはスクロール圧縮機)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る冷凍装置の全体的な構成を示す冷媒回路図。
【図2】上記冷凍装置に含まれる室外ユニットの圧縮機構部を示す拡大図。
【符号の説明】
【0049】
100 室外ユニット
101 圧縮機構部
110 第1圧縮機
120 第2圧縮機
111,121 オイルセパレータ
112,122 逆止弁
114,124 油戻し管
115,117,125 キャピラリーチューブ
116 導油管
130 四方弁
140 室外熱交換器
150 室外膨張弁
160 アキュムレータ
163,164 吸入管
200 室内ユニット
210 室内熱交換器
211 室内膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外ユニットに、並列に接続された第1圧縮機と第2圧縮機の少なくとも2台の圧縮機を備え、上記各圧縮機の吐出管にオイルセパレータが設けられ、上記第1圧縮機側の第1オイルセパレータが第1油戻し配管を介して上記第2圧縮機の吸入管に接続されているとともに、上記第2圧縮機側の第2オイルセパレータが第2油戻し配管を介して上記第1圧縮機の吸入管に接続されている冷凍装置において、
上記第1圧縮機と上記第2圧縮機は吐油量が異なり、上記吐油量の少ない方の第1圧縮機の油貯留部が、減圧手段を含む導油管を介して上記吐油量の多い方の第2圧縮機の吸入管に接続されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
上記第1圧縮機がロータリー圧縮機で、上記第2圧縮機がスクロール圧縮機であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
上記第1圧縮機の吸入管と上記第2圧縮機の吸入管は相互に連通されており、上記第2圧縮機の吸入管に対する上記第1油戻し配管および上記導油管の接続位置は、上記第2圧縮機が運転停止状態のとき、上記第1油戻し配管および上記導油管から上記第2圧縮機側に供給される冷凍機油が重力により落下し、上記第1圧縮機に吸い込まれる位置であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−139155(P2010−139155A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315651(P2008−315651)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】