説明

冷凍麺の解凍調理機

【課題】 湯槽の入口までの高さを低く抑えつつ、冷凍麺の解凍調理に要する時間を短縮する。
【解決手段】 偏平形状となるように冷凍された冷凍麺を偏平状態のまま収納する偏平な麺籠201を偏平状態のまま湯槽103に収納保持し、湯槽103に収納保持された麺籠201の下方に位置する熱源を発熱させ、これによって発生した気泡を噴流集中箱の内部に閉じ込め、閉じ込めた気泡を湯槽103に収納保持された麺籠201の中央部下方に位置する噴流吐出孔120から吐出させて麺籠201内の冷凍麺に導き、冷凍麺を解凍調理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レストラン等での業務使用に適した冷凍麺を解凍するための解凍調理機に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、そば、スパゲティー等の麺類を一旦茹でた後に急速冷凍した冷凍麺は、家庭用としても業務用としても急速な普及を遂げている。
【0003】
図8は、冷凍麺の一例として、一旦茹でたうどんを急速冷凍した冷凍麺1の例を示す。このような冷凍麺1を解凍するために、従来、図9に例示するような麺籠2が用いられている。この場合、図10に例示するような冷凍麺の解凍調理機3の使用が想定される。この解凍調理機3は、湯槽4の内部に複数個の麺籠2を収納保持できる構造を有し、湯槽4に導入された水5をヒータ6で加熱し、沸騰させる。ヒータ6の上方位置には噴流吐出孔7を有する噴流集中板8が配置されている。
【0004】
このような解凍調理機3は、ヒータ6を発熱させることによって湯槽4に導入された水を加熱して沸騰させ、噴流集中板8の下方で発生した気泡を噴流吐出孔7から熱渦噴流として吐出させ、麺籠2に収納した冷凍麺1に噴射させる。これにより、麺籠2に収納された冷凍麺1が加熱され、解凍される。
【0005】
しかしながら、図9に例示する従来の麺籠2は、同図に示すように、例えば直径が130mmで深さが150mmである。そして、底部が丸くなっているため、底部に近付くほど直径が狭くなる。これに対して、冷凍麺1は、一例として、図8に示すように、長さ150mm、幅120mm、厚さ25mm程度の寸法を有しているものが多い。このような寸法関係からして、図9に例示する従来の麺籠2に冷凍麺1を収納した場合、冷凍麺1の上部が麺籠2に入りきらないことが多い。このため、図10に例示するように、一例ではあるが、冷凍麺1の上部1/3程度は、水5が沸騰した茹で湯につからない状態で解凍調理が始まることになる。この状態で解凍調理が始まると、噴流吐出孔7から吐出する熱渦噴流は冷凍麺1の下部に集中するため、冷凍麺1の下部から徐々に解凍が進み、冷凍麺1の全部が茹で湯に浸かるまでには20〜30秒程度かそれ以上かかる。その後、冷凍麺1が完全に解凍されて調理が完了するまでには、更に60〜90秒程度かかる。概ね、解凍調理の完了までに2〜3分程度必要となる。
【0006】
そこで、冷凍麺1を解凍するために、図11に例示するような麺籠2の使用が想定される。図11に例示する麺籠2は、深さが深い円筒形をしており、冷凍麺1をすっぽり収納することができる。このため、図11に例示する麺籠2を用いる場合には、図12に例示するように、湯槽4の深さを深くする必要がある。
【0007】
図11に例示する麺籠2を用いて図12に例示する解凍調理機3で冷凍麺1を解凍調理した場合、冷凍麺1は初めから茹で湯に浸けられた状態となっているため、概ね60〜90秒程度で解凍調理完了となる。
【0008】
なお、特許文献1にも冷凍麺の解凍調理機が開示されている。図10に例示した解凍調理機3、図12に例示した解凍調理機3、そして特許文献1に記載された解凍調理機に共通することは、いずれも、冷凍麺1を縦に立てた状態に保持して解凍調理をする点である。
【0009】
【特許文献1】特開2002−272400公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9に例示する麺籠2を用いて図10に例示する解凍調理機3で冷凍麺1を解凍調理する場合、前述したように、解凍調理の完了までに時間がかかるという問題がある。
【0011】
図11に例示する麺籠2を用いて図12に例示する解凍調理機3で冷凍麺1を解凍調理する場合には、解凍調理の完了までの時間を60〜90秒程度と短縮することができるが、湯槽4の深さを深くしなければならないため、湯槽4の入口までの高さが高くなってしまう。一例として、湯槽4の入口までの高さは、35〜50cm程度必要となる。このため、卓上型として用いる場合には、作業性が悪くなってしまうという問題がある。例えば、図13に例示するように、立ち作業用の一般的なワークテーブル11の高さは80cm程度であることから、このワークテーブル11に解凍調理機3を載置して使用すると、湯槽4の入口までの高さが115〜150cm程度となり、特に背が低い作業者にとっては、作業性が極めて低下してしまうことになる。
【0012】
また、前述したように、図10に例示した解凍調理機3、図12に例示した解凍調理機3、そして特許文献1に記載された解凍調理機は、いずれも冷凍麺1を縦に立てた状態に保持して解凍調理を行なう。これに対して、図10及び図12の例で説明すると、噴流吐出孔7から吐出する熱渦噴流は冷凍麺1の下部に集中するため、冷凍麺1の上部側及び中央部の解凍がどうしても遅れてしまうという問題がある。
【0013】
この点、一般家庭では、冷凍麺を解凍調理するに際して、例えば、鍋に入れたお湯を沸騰させ、この沸騰したお湯のなかに冷凍麺を扁平状態のまま入れる、ということが行われる。この場合には、図10及び図12に例示した装置に固有の問題、つまり、噴流吐出孔7から吐出する熱渦噴流が冷凍麺1の下部に集中するために冷凍麺1の上部側の解凍が遅れてしまうという問題の解決が図られる。しかしながら、沸騰するお湯の中に冷凍麺を扁平状態の浸したとしても、冷凍麺ではその周囲から解凍が進み、中央部が氷結した状態で残るため、なかなか解凍しない。時間にすると、完全に解凍して調理が完了するまでに、2〜3分程度の時間が必要となる。
【0014】
さらに、図10に例示した解凍調理機3、図12に例示した解凍調理機3、そして特許文献1に記載された解凍調理機によれば、湯槽からの湯気や蒸気の発生量が多大であり、解凍効率及び経済性が悪い上に周辺環境を劣悪にしてしまうという問題もある。
【0015】
本発明の目的は、冷凍麺の解凍調理に要する時間を短縮することである。
【0016】
本発明の別の目的は、湯槽の入口までの高さを低く抑えることである。
【0017】
本発明の更に別の目的は、湯槽からの湯気や蒸気の発生量を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の冷凍麺の解凍調理機の発明は、偏平形状となるように冷凍された冷凍麺を偏平状態のまま収納する麺収納部と、前記麺収納部の底部に設けられて前記冷凍麺を支持する網状部材と、前記麺収納部の上面に開閉自在に取り付けられた蓋と、を有する偏平な麺籠と、前記麺籠を偏平状態のまま収納保持する保持部を有する湯槽と、前記湯槽に収納保持された前記麺籠の下方に熱源を有し、前記熱源を発熱させることによって、前記湯槽に導入された水を加熱する加熱部と、前記熱源を遮蔽して前記熱源の発熱によって発生した気泡を閉じ込め、閉じ込めた気泡を前記湯槽に収納保持された前記麺籠の中央部下方に位置する噴流吐出孔から吐出させる噴流集中箱と、を備える。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の冷凍麺の解凍調理機において、前記湯槽は、X列Y行の形態で合計X×Y個の前記麺籠を収納保持する。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の冷凍麺の解凍調理機において、同一列又は同一行の方向に並ぶX個又はY個の前記麺籠に対応する前記噴流吐出孔を一組として前記噴流吐出孔をY組又はX組に分けるように前記噴流集中箱の内部を仕切る仕切り板を備え、前記熱源は、前記仕切り板によって仕切られた各組の空間毎に配列され、前記加熱部は、それぞれの前記熱源を独立に発熱させる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の冷凍麺の解凍調理機において、前記仕切り板を跨いで前記両方の組の空間に配置されるU字形状をした第2の熱源を備え、前記加熱部は、前記第2の熱源を常時発熱させる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項2、3又は4記載の冷凍麺の解凍調理機において、水源からの水を前記湯槽に供給する給水管と、前記水供給路を開閉する電磁弁と、前記湯槽に供給された水の水位について、前記湯槽に収納保持された前記麺籠よりも低い水位であって当該麺籠に収納された前記冷凍麺を覆う水位を目的水位として検知する水位センサと、を備え、前記電磁弁を開いて前記湯槽に水を供給した後、前記水位センサによって前記目的水位が検知されると前記電磁弁を閉じるようにした。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の冷凍麺の解凍調理機において、前記湯槽は、X列Y行の形態で配列されたX×Y個の前記麺籠の外側面との間に僅かな隙間だけを開けて前記麺籠を収納する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、麺籠を偏平状態のまま湯槽に収納保持することにより、湯槽の入口までの高さを低く抑えることができ、しかも、噴流吐出孔から吐出された気泡が偏平状態のまま麺籠に収納された冷凍麺の中央部に噴射されるため、冷凍麺の解凍調理に要する時間を40〜50秒程度の短時間に短縮することができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、X×Y個の冷凍麺を40〜50秒程度の短時間で効率良く解凍調理することができる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、同一列又は同一行の方向に並ぶ二つの麺籠に収納された冷凍麺の単位で解凍調理を行なうことができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、第2の熱源の常時発熱によって湯槽に導入された水を常に微沸騰させておき、冷凍麺の解凍調理を行なうときにのみ熱源を発熱させて沸騰噴流を瞬時に起こすことで、冷却麺の下部中央部に集中させることができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、湯槽内の水位を理想的な状態に維持することができる。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、X×Y個の麺籠によって湯槽が蓋をされた状態と等価な状態になるため、湯槽からの湯気や蒸気の発生量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の一形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
【0031】
図1は、水位調節のための一部の電気部品をブロック図として模式的に付加して冷凍麺の解凍調理機の外観を示す斜視図である。本実施の形態の解凍調理機101は、ハウジング102の内部に湯槽103を有する。この湯槽103には、解凍調理機101の正面側から見て横方向に四本のワイヤ状部材が平行に取り付けられて形成された保持部104が設けられ(図5参照)、この保持部104に四つの麺籠201が保持されている。四つの麺籠201は、二列二行の形態で湯槽103の内部に収納されている。
【0032】
ハウジング102には、後方に位置させて、水道等の水源に接続された給水管105と、給水管105を介して湯槽103に導入された水106(図7参照)の水位が一定水位を超えた場合に余分な水106を外部に排水するためのオーバーフロー管107と、水位センサ108とが配設されている。水位センサ108は、給水管105を介して湯槽103に導入された水106がある理想的な水位、つまり目標水位となった場合にスイッチオフするフロート式液面スイッチ構成のセンサである。図1中に示すように、水位センサ108の出力信号はリレー装置109に出力される。リレー装置109は、水位センサ108の出力信号に応じて、給水管105を開閉する電磁弁110を駆動制御する。すなわち、リレー装置109は、給水管105を介して湯槽103に水106を導入する際には電磁弁110を開き、給水管105から湯槽103に水106が供給されるようにする。そして、水位センサ108がスイッチオフした場合には、給水管105を介して湯槽103に導入された水106が目標水位に達したことになるので、電磁弁110を閉じ、湯槽103への水106の供給を停止させる。
【0033】
ハウジング102には、正面側に位置させて、左側の手動設定スイッチ111a及びタイマスタートスイッチ112aと、右側の手動設定スイッチ111b及びタイマスタートスイッチ112bとが配列されている。
【0034】
図2(a)は、蓋を閉めた状態の麺籠201の斜視図、図2(b)は、蓋を開いた状態の麺籠201の斜視図である。麺籠201は、偏平形状となるように冷凍された冷凍麺1(図8参照)を偏平状態のまま収納する麺収納部202を内部に備えたケーシング203を有する。このケーシング203は、底面及び天井面が開口している。そこで、開口するケーシング203の底面には、麺収納部202の底部に位置するように網状部材204が取り付け固定されている。この網状部材204は、例えば複数本のワイヤを格子状に連結して形成されており、麺収納部202に収納された冷凍麺1を支持する。また、開口するケーシング203の天井面である麺収納部202の上面には、蓋205が蝶番206によって開閉自在に取り付けられている。蓋205には、その表面側に円柱棒状のつまみ207が取り付けられており、ガラス張りの覗き窓208が形成されている。さらに、麺籠201には、ケーシング203に把手209が固定されている。
【0035】
図3は、蓋を開いて冷凍麺が収納されている状態を示す麺籠の斜視図である。図3を参照すると、麺籠201の麺収納部202に、偏平形状となるように冷凍された冷凍麺1が偏平状態のまま収納されている様子が分かる。
【0036】
図4は、噴流集中箱を分解してその内部に配置された各部を示す分解斜視図である。解凍調理機101の説明に戻る。解凍調理機101は、湯槽103の底部に後述する噴流集中板113を有し、この噴流集中板113を取り除くと露出する位置には熱源としての三つのヒータ114を有している(図5、図6参照)。これらのヒータ114は、解凍調理機101の正面側から見て逆U字形状をしている。なお、真中のヒータ114は、第2の熱源として機能する。
【0037】
図5は、タイマを模式的に付加して解凍調理機101の外観を示す平面図である。図5には、三つのヒータ114が破線で示されている。これらのヒータ114は、その二つの端部がそれぞれコネクタ115に接続されて保持され、屈曲部分が支持体116に支持されている。図5に示すように、各ヒータ114は、電源117からの電力供給によって駆動される。前述した左右のタイマスタートスイッチ112a,112bは、その投入によって規定時間分だけ各ヒータ114に対して電源117からの電力を供給するように開閉する。
【0038】
図5に示すように、左側のタイマスタートスイッチ112aは、電源117と左側に位置するヒータ114との間に介在接続され、右側のタイマスタートスイッチ112bは、電源117と右側に位置するヒータ114との間に介在接続されている。真中のヒータ114には、電源117から電力が常時供給されるように配線されている。
【0039】
このようなヒータ114、左右のタイマスタートスイッチ112a,112bは、熱源であるヒータ114を発熱させることによって湯槽103に導入された水106を加熱する加熱部118を構成する。そして、以上説明した左右のタイマスタートスイッチ112a,112bについては、周知の回路構成によって容易に実施可能なので、その説明を省略する。
【0040】
図6は、二つの麺籠201を収納する解凍調理機101の外観を示す平面図である。図6では、湯槽103の左側にのみ二つの麺籠201が収納保持されている。この図から分かるように、左側のヒータ114は、湯槽103の左側に収納保持された二つの麺籠201の真下に位置付けられている。そして、真中のヒータ114の左側部分も、湯槽103の左側に収納保持された二つの麺籠201の真下に位置付けられている。図6には図示しないが、湯槽103の右側に二つの麺籠201を収納保持させた場合には、右側のヒータ114及び真中のヒータ114の右側部分が、湯槽103の右側に収納保持された二つの麺籠201の真下に位置付けられることは、図6からも明白である。
【0041】
また、湯槽103と麺籠201との大きさの関係としては、二列二行の形態で配列された四つの麺籠201が湯槽103に収納された場合、湯槽103は、二列二行の形態で配列された四つの麺籠201の外周面との間に僅かな隙間だけを開けて麺籠201を収納するように設定されている。
【0042】
図7は、制御ボックスや給水管等を省略して湯槽103の内部のみを示す解凍調理機101の縦断側面図である。湯槽103の底部に配置された噴流集中板113は、下面開口の深さが浅い筐体構造を有しており、三つのヒータ114を覆うように取り付けられる。これにより、湯槽103の底面と噴流集中板113の天井面は、ヒータ114を遮蔽して114の発熱によって発生した気泡を閉じ込める噴流集中箱119を構成する。そして、噴流集中板113の天井面には、閉じ込めた気泡を湯槽103に収納保持された四つの麺籠201のそれぞれの真下に位置させて四つの噴流吐出孔120が形成されている。これらの噴流吐出孔120は、噴流集中板113の上面から上方に向けて突出している。
【0043】
ここで、図4に示すように、噴流集中板113の天井面からは、仕切り板121が垂直に延出している。この仕切り板121は、噴流集中箱119の内部空間を左空間121Lと右空間121Rとに分割する。左空間121Lには、左側のヒータ114及び真中のヒータ114の左側部分が収納され、右空間121Rには、右側のヒータ114及び真中のヒータ114の右側部分が収納される。つまり、仕切り板121は、同一列の方向に並ぶ二つの麺籠201に対応する噴流吐出孔120を一組として噴流吐出孔120を二組に分けるように噴流集中箱119の内部を仕切る。このような仕切り板121には、真中に位置するヒータ114の屈曲部分との干渉を避けるために、切欠部122が形成されている。
【0044】
このような構成において、給水管105を介して湯槽103に水106を導入する際には、リレー装置109が電磁弁110を開き、給水管105から湯槽103に水106を供給する。この際、水位センサ108がスイッチオフした場合には、給水管105を介して湯槽103に導入された水106が目標水位に達したことになるので、リレー装置109は電磁弁110を閉じ、湯槽103への水106の供給を停止させる。
【0045】
そして、解凍調理機101の待機時には、真中のヒータ114に電源117からの電力が常時供給されている。これにより、湯槽103へ供給された水106は、微沸騰する程度に加熱されている。この状態で左右タイマスタートスイッチ112a,112bのいずれか一方又は両方が投入されると、対応する側のヒータ114に電源117からの電力が供給され、そのヒータ114が駆動されて発熱する。すると、噴流集中箱119の内部におけるヒータ114が発熱した側の左空間121L又は右空間121Rにおいて、予め加熱されていた水106が沸騰して気泡が発生する。発生した気泡は、ヒータ114が発熱した側の左空間121L又は右空間121Rの内部に閉じ込められ、閉じ込められた気泡は噴流吐出孔120から吐出し、熱渦となって直上に位置する麺籠201に収納された冷凍麺1に噴射される。これにより、冷凍麺1の解凍調理が進み、冷凍麺1は、短時間で効率よく解凍調理される。
【0046】
ここで、タイマスタートスイッチ112a,112bが投入されると、前述したように、対応する方のヒータ114に電力が供給され、予め設定された時間の経過と共に電力供給が停止される。この際の設定時間としては、一応の目安として、冷凍麺1がうどんの場合には50秒、より細麺である蕎麦やスパゲッティーの場合には35秒程度が好適である。もっもと、冷凍麺1がうどんであったとしても、実際には40秒程度で解凍調理を完了させることができる。これを50秒としたのは、この範囲であれば茹で過ぎとならないからである。このように、本実施の形態の解凍調理機101において解凍調理完了までの時間を短くすることができるのは、麺籠201を偏平状態のまま湯槽103に収納保持することにより、噴流吐出孔120から吐出された気泡が偏平状態のまま麺籠201に収納された冷凍麺1の中央部分に噴射されるからである。
【0047】
また、本実施の形態の解凍調理機101は、麺籠201を偏平状態のまま湯槽103に収納保持することにより、湯槽103の入口までの高さを低く抑えることができるという優れた効果を有する。具体的には、設置面から湯槽103の入口までの高さを、15cm程度にすることが可能である。したがって、設置面から湯槽103の入口までの高さが35〜50cm程度になってしまう図12及び図13に例示した解凍調理機3との比較において、本実施の形態の解凍調理機101は、その高さを飛躍的に低くすることに成功している。
【0048】
次いで、本実施の形態では、例えば一個又は二個の冷凍麺1しか解凍調理しないのであれば、左側又は右側の麺籠201にのみ冷凍麺1を収納し、対応する側のタイマスタートスイッチ112a又は112bのみを投入すればよい。これにより、仕切り板121によって仕切られた左空間121L又は右空間121Rに配置されているヒータ114のみに電力供給がなされ、電力消費量を抑えることができる。この際、左空間121Lとは右空間121Rとは仕切り板121によって仕切られて小空間になっているため、加熱しなければならない水106の水量が少ない。この面からも、ヒータ114の発熱による水106の加熱を効率よく行なわせることが可能となる。
【0049】
次いで、水位センサ108がスイッチオフする水位、つまり目標水位は、湯槽103に収納保持された麺籠201の蓋205の位置よりも低い水位であって、当該麺籠201に収納された冷凍麺1を覆う水位に設定されている。これにより、冷凍麺1は必ず茹で湯に浸けられて効率よく解凍調理されながら、四つの麺籠201が湯槽103に蓋をしたのと等価な効果をもたらす。湯槽103は、二列二行の形態で配列された四個の麺籠201の外周面との間に僅かな隙間だけを開けて麺籠201を収納するからである。このため、湯槽103からの湯気や蒸気の発生量を低減することができ、冷凍麺1の解凍効率及び経済性に優れ、周辺環境を損なうこともない。そこで、例えば、解凍調理機101を客席に近いカウンタ等へ設置することも可能となる。
【0050】
実際の運用に際しては、四つの麺籠201が湯槽103に蓋をしたのと等価な効果を得るためには、未使用の麺籠201であっても、四個全ての湯槽103に収納保持させておく必要がある。そこで、このような状態の麺籠201に冷凍麺1を収納させるには、麺籠201を湯槽103から取り外すことなく、蓋205に取り付けられたつまみ207を掴んで蓋205を開け、そのまま麺収納部202に冷凍麺1を投入し、再び蓋205を閉めればよい。
【0051】
なお、本実施の形態では、2列2行の形態で合計4個の麺籠201を湯槽103に収納保持する例を示したが、実施に際しては、2列2行の形態に限らず、1列1行(麺籠201は一個)、2列1行、1列2行、3列2行、2列3行、3列3行等、X列Y行のいかなる形態であっても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の一形態として、水位調節のための一部の電気部品をブロック図として模式的に付加して冷凍麺の解凍調理機の外観を示す斜視図である。
【図2】(a)は蓋を閉めた状態の麺籠の斜視図、(b)は蓋を開いた状態の麺籠の斜視図である。
【図3】蓋を開いて冷凍麺が収納されている状態を示す麺籠の斜視図である。
【図4】噴流集中箱を分解してその内部に配置された各部を示す分解斜視図である。
【図5】タイマを模式的に付加して冷凍麺の解凍調理機の外観を示す平面図である。
【図6】二つの麺籠を収納する冷凍麺の解凍調理機の外観を示す平面図である。
【図7】制御ボックスや給水管等を省略して湯槽の内部のみを示す冷凍麺の解凍調理機の縦断側面図である。
【図8】冷凍麺を例示する斜視図である。
【図9】従来の麺籠の一例を示す斜視図である。
【図10】図9に例示した従来の麺籠を用いて冷凍麺を解凍する場合を想定した冷凍麺の解凍調理機の一例を示す縦断側面図である。
【図11】従来の別の麺籠の一例を示す斜視図である。
【図12】図11に例示した従来の麺籠を用いて冷凍麺を解凍する場合を想定した冷凍麺の解凍調理機の一例を示す縦断側面図である。
【図13】図12に例示する冷凍麺の解凍調理機を卓上型として用いる場合に想定される各部の寸法関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 冷凍麺
103 湯槽
104 保持部
105 給水管
106 水
108 水位センサ
110 電磁弁
114 熱源、第2の熱源(ヒータ、真中のヒータ)
118 加熱部
119 噴流集中箱
120 噴流吐出孔
121 仕切り板
201 麺籠
202 麺収納部
204 網状部材
205 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平形状となるように冷凍された冷凍麺を偏平状態のまま収納する麺収納部と、前記麺収納部の底部に設けられて前記冷凍麺を支持する網状部材と、前記面収納部の上面に開閉自在に取り付けられた蓋と、を有する偏平な麺籠と、
前記麺籠を偏平状態のまま収納保持する保持部を有する湯槽と、
前記湯槽に収納保持された前記麺籠の下方に熱源を有し、前記熱源を発熱させることによって、前記湯槽に導入された水を加熱する加熱部と、
前記熱源を遮蔽して前記熱源の発熱によって発生した気泡を閉じ込め、閉じ込めた気泡を前記湯槽に収納保持された前記麺籠の中央部下方に位置する噴流吐出孔から吐出させる噴流集中箱と、
を備える冷凍麺の解凍調理機。
【請求項2】
前記湯槽は、X列Y行の形態で合計X×Y個の前記麺籠を収納保持する、請求項1記載の冷凍麺の解凍調理機。
【請求項3】
同一列又は同一行の方向に並ぶX個又はY個の前記麺籠に対応する前記噴流吐出孔を一組として前記噴流吐出孔をY組又はX組に分けるように前記噴流集中箱の内部を仕切る仕切り板を備え、
前記熱源は、前記仕切り板によって仕切られた各組の空間毎に配列され、
前記加熱部は、それぞれの前記熱源を独立に発熱させる、
請求項2記載の冷凍麺の解凍調理機。
【請求項4】
前記仕切り板を跨いで前記両方の組の空間に配置されるU字形状をした第2の熱源を備え、
前記加熱部は、前記第2の熱源を常時発熱させる、
請求項3記載の冷凍麺の解凍調理機。
【請求項5】
水源からの水を前記湯槽に供給する給水管と、
前記水供給路を開閉する電磁弁と、
前記湯槽に供給された水の水位について、前記湯槽に収納保持された前記麺籠よりも低い水位であって当該麺籠に収納された前記冷凍麺を覆う水位を目的水位として検知する水位センサと、
を備え、前記電磁弁を開いて前記湯槽に水を供給した後、前記水位センサによって前記目的水位が検知されると前記電磁弁を閉じるようにした、
請求項2、3又は4記載の冷凍麺の解凍調理機。
【請求項6】
前記湯槽は、X列Y行の形態で配列されたX×Y個の前記麺籠の外側面との間に僅かな隙間だけを開けて前記麺籠を収納する、請求項5記載の冷凍麺の解凍調理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−87816(P2006−87816A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279892(P2004−279892)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(591052125)日本洗浄機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】