説明

冷却した加熱合材を用いた道路舗装面仮復旧方法

【課題】冷却した加熱合材を再利用し早期に道路舗装面が固まる仮復旧を行える道路舗装面仮復旧方法を提供することである。
【解決手段】加熱合材が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材を用意し、粒状加熱合材にアスファルト乳剤を混合してバーナーで加熱して混合加熱合材を生成し、混合加熱合材を道路舗装面の復旧箇所に敷き詰め、敷き詰めた混合加熱合材を平坦にし、平坦にした混合加熱合材の表面に養生砂を散布して道路の舗装面を仮復旧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却した加熱合材を用いて道路舗装面の仮復旧を行う道路舗装面仮復旧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、架空配電線工事においては電柱の埋設や修理補修のために道路舗装面を開削することがある。その開削箇所の仮復旧は、常温合材を使用して実施される場合が多い。これは、架空配電線工事における開削箇所は面積が小さいことから復旧面積が小さく、また、常温合材は15kg単位で購入でき小規模の復旧に適おり、かつ、工事後すぐに復旧を必要とするために調達の容易性を考慮しているからである。その一方で、常温合材は、固まるまでに数週間かかることから、復旧後に歩行者や車が乗り上げると凹んでしまうことがある。このようなことから、仮復旧であっても早期に道路舗装面が固まるものであることとの要請が道路管理者からあり、常温合材による仮復旧箇所の改善が要請されている。
【0003】
そこで、常温合材に代えて、常温合材より早く固まる加熱合材を使用することが考えられるが、加熱合材は「t」単位など大量購入しかできないため、仮復旧のような小規模で随時必要に応じて実施する工事には適さない。また、加熱合材は、一旦固まると再利用することが困難であるので、未使用で残ったら産業廃棄物として処理することになり、大量の加熱合材を有効に使用できない。
【0004】
ここで、アスファルト舗装面に対して規定の小面積の開削を行った後の復旧工事を簡略化できるようにした舗装用廃材の現場再生方法がある(例えば、特許文献1参照)。これは、熱源により加熱される廃材中に添加する現場再生用軟化剤および早期硬化促進剤となるアスファルト改質剤を、廃材が出された現場で一括添加できるように、規定の開削面積に対する再生対象のアスファルト舗装材の厚さに応じて、それぞれ予め定量で準備するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3273942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、仮復旧ではなく本復旧のものであり、再生添加剤である現場再生用軟化剤とアスファルト改質剤との双方を用意しなければならず、しかも、それらが塊状の添加剤とならないように舗装用廃材中に添加しなければならない。
【0007】
そこで、仮復旧にあたって、本復旧で使用して余って固まった加熱合材を再利用することも考えられるが、前述したように、固まった加熱合材は容易に再利用することができない。これは、加熱合材は一旦固まると再加熱に時間がかかり、再加熱しても粘り気が失われてしまっており纏まりが悪いからである。
【0008】
本発明の目的は、冷却した加熱合材を再利用し早期に道路舗装面が固まる仮復旧を行える道路舗装面仮復旧方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の道路舗装面仮復旧方法は、加熱合材が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材を用意し、前記粒状加熱合材にアスファルト乳剤を混合してバーナーで加熱して混合加熱合材を生成し、前記混合加熱合材を道路舗装面の復旧箇所に敷き詰め、敷き詰めた混合加熱合材を平坦にし、平坦にした混合加熱合材の表面に養生砂を散布して道路の舗装面を仮復旧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱合材が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材を用意するので再加熱が容易であって可搬性も高く、また、粒状加熱合材にアスファルト乳剤を混合するので、その混合加熱合材は粘り気を有し纏まりもよくなる。従って、道路舗装面の仮復旧箇所に敷き詰めた場合、加熱合材を敷き詰めた場合とほぼ同じ状態となり、道路舗装面が早期に固まる仮復旧を行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る道路舗装面仮復旧方法の工程を示すフローチャート。
【図2】図1の工程1で用意した粒状加熱合材の写真図。
【図3】図1の工程2で混合加熱合材を得る作業の写真図。
【図4】図1の工程3で混合加熱合材を敷き詰める作業の写真図。
【図5】図1の工程4で敷き詰めた混合加熱合材を振動コンパクタで平坦にする作業の写真図。
【図6】図1の工程4で敷き詰めた混合加熱合材を角形突き棒で平坦にする作業の写真図。
【図7】図1の工程4で敷き詰めた混合加熱合材に養生砂を散布して仮復旧を完了させた状態の写真図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明に至った経緯を説明する。早期に道路舗装面の硬さを確保できる仮復旧の実現を目指すこととし、以下の2つの実証試験(A)、(B)を実施した。
【0013】
<実証試験(A)>
常温合材をバーナーで加熱し余分な接着剤を蒸発させて、早期に常温合材を固める試験。
【0014】
<実証試験(B)>
常温合材に代えて、固まる土「まさ王(登録商標)」にて復旧する試験。
【0015】
実証試験(A)について、常温合材を加熱したところ、表面は密になったが固まらなかった。また、実証試験(B)について、まさ王(登録商標)は非常に出来栄えは良いが、道路での使用実績が過去に無いことから、道路管理者からの使用許可が得られず、適用を見送ることとした。
【0016】
次に、実証試験(A)から、常温合材は早期に固まる性質のものではないことが分かったので、加熱合材を使用することを検討した。加熱合材は購入単位の量が多く、道路舗装面の仮復旧において使用する量が少ないので、未使用で残った加熱合材が無駄となる。そこで、未使用で残った加熱合材を再利用することが課題となる。しかし、加熱合材の再利用のコストは高く、未使用の加熱合材が残っても、むしろ加熱用材を新規購入した方が全体としては安い。このように、加熱合材を使用する場合には、未使用で残った加熱合材の再利用を低コストで行えるようにしなければならない。
【0017】
そこで、加熱合材のバラ(粒状の冷却した加熱合材)と常温合材とを混ぜて加熱すれば望み通りの合材が出来るのではないかと考え、さらに、以下の2つの実証試験(C)、(D)を実施した。
【0018】
<実証試験(C)>
常温合材と加熱合材のバラとを50%:50%の比率で混ぜ合わせて、常温合材をバーナーで加熱し合材を固める試験。
【0019】
<実証試験(D)>
加熱合材のバラ100%にアスファルト乳剤を加えてバーナーにて加熱し合材を固める試験。
【0020】
実証試験(C)について、混合合材は、一応、固まったがばらけ易く硬度が不足した。一方、実証試験(D)について、アスファルト乳剤を加えた加熱合材は、通常の加熱合材と遜色のない固まりで硬度も得られた。
【0021】
アスファルト乳剤は、アスファルトの接着性を良くするために添加するものであり、アスファルトと水分との混合剤であることから、バーナーで水分を蒸発させると固まりも早くなるためであると考えられる。
【0022】
そこで、本発明では、加熱合材のバラ100%にアスファルト乳剤を加えてバーナーにて加熱した合材を使用することとする。すなわち、冷えて固まってしまった加熱合材を再加熱して使用するために、本発明では、以下のように改善した。
【0023】
(1)再加熱の時間短縮
冷えて固まってしまった加熱合材は再加熱に時間がかかるので、本発明では、完全に固まってしまう前に加熱合材を散らしておき、冷えた状態で粒状の加熱合材になるようにした。これにより、運搬の際に小袋に分けて持ち運びできることから運搬性も良くなり、さらに、バーナーで加熱した際に、早く均等に熱を加えることができるようになった。
【0024】
(2)粘り気の確保
冷えて固まってしまった加熱合材は冷えてしまうとアスファルトの粘性が失われてしまうので、本発明では、アスファルト乳剤を加えて加熱することで粘り気を復元させることとした。これにより、合材がバラけることがなくなり道路舗装面への敷き詰めも容易に行えるようになり、通常の加熱合材と同様に固まりも早くなった。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る道路舗装面仮復旧方法の工程を示すフローチャートである。前述したように、加熱合材の購入単位は量が多いので、未使用の加熱合材が完全に固まってしまう前に加熱合材を散らして、冷えた状態で粒状の加熱合材になるようにして、その粒状加熱合材を道路舗装面の仮復旧の材料として予め保管しておく。そして、道路舗装面の仮復旧に際しては、図2に示すように、その粒状加熱合材11を用意する(S1)。
【0026】
そして、図3に示すように、用意した粒状加熱合材11に格納容器12に格納したアスファルト乳剤を混合しバーナー13で加熱する(13)。粒状加熱合材11であることから均等に加熱することができ、アスファルト乳剤により粘り気が確保された混合加熱合材が得られる。
【0027】
次に、図4に示すように、工程S2で得られた混合加熱合材14を道路舗装面の仮復旧箇所15に敷き詰め(S3)、図5に示すように、敷き詰めた混合加熱合材14を振動コンパクタ16にて転圧し、さらに、図6に示すように、敷き詰めた混合加熱合材14を角形突き棒17にて転圧して、敷き詰めた混合加熱合材14を平坦にする(S4)。そして、平坦にした合成加熱合材14の表面に養生砂を散布して(S5)、図7に示すように、道路の舗装面の仮復旧が完了する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、加熱合材が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材11を用意し、粒状加熱合材11にアスファルト乳剤を混合してバーナー13で加熱するので、再加熱が容易であり作業時間が短縮され、また、加熱した混合加熱合材14は粘り気を有し纏まりもよくなる。
【0029】
従って、道路舗装面の仮復旧作業が加熱合材と同等に行え、しかも、冷えて固まった加熱用合材を有効活用できる。
【符号の説明】
【0030】
11…粒状加熱合材、12…格納容器、13…バーナー、14…混合加熱合材、15…仮復旧箇所、16…振動コンパクタ、17…角形突き棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱合材が塊で固まってしまう前に散らして得た粒状加熱合材を用意し、
前記粒状加熱合材にアスファルト乳剤を混合してバーナーで加熱して混合加熱合材を生成し、
前記混合加熱合材を道路舗装面の復旧箇所に敷き詰め、
敷き詰めた混合加熱合材を平坦にし、
平坦にした混合加熱合材の表面に養生砂を散布して道路の舗装面を仮復旧することを特徴とする道路舗装面仮復旧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−112197(P2012−112197A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263292(P2010−263292)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】