説明

冷却システムおよびそれを用いた溶剤回収システム

【課題】従来の冷却塔の運転では、外気状況を把握していないので、外気状況が変化すると供給水温が変化していた。また、外気状況を見ている場合でも、外気状況に応じた省エネを考慮したものではなかった。
【解決手段】冷却器10と、冷却器との間で循環する冷却水を冷却する循環ユニット11と、外気湿球温度センサ24と、循環ユニットを制御する制御装置22を有し、前記循環ユニットは、冷却塔30と、冷却水を冷却器に送る送水パイプ32と、冷却器から冷却水を返す戻りパイプ34と、送水パイプと戻りパイプの間を連通するバイパスパイプ36と、バイパスパイプに配設されたバイパス弁37と、戻りパイプに設けられた絞り弁35と、冷却塔の出口に設けられた出口水温センサ38と、冷却器の手間に設けられた供給水温センサ39を含み、制御装置は、それぞれの球温度センサの検出値に応じて、冷却水の温度が一定になるように循環ユニットを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔を用いた冷却システムとそれを用いた溶剤回収システムに関する発明である。特に、冷却器に供給する水温を高い精度で一定に保持でき、また、外気の温度湿度といった条件が変わっても、冷却器に安定した温度の冷却水を送ることができ、また、省エネのための細かな設定が可能となる冷却システムおよびそれを用いた溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却塔を用いた冷却システムは多く提案されている。例えば、特許文献1には、冷却塔が複数(4機)配されて熱負荷に対して冷却水を冷凍機に供給するシステムが開示されている。ここでは、冷水の供給温度を安定化することを目的としている。そのため、各冷却塔からの冷水を供給する供給管に温度センサを配設し、それぞれの冷却塔のファンの回転数を2段に調整できるようにする。そして、冷凍機に返ってくる冷水の温度から負荷変動率を検出し、その負荷変動率と、温度センサによる冷却水の温度と、その変化温度の3つのパラメータから、冷却塔のファンの回転個数を決めるというものである。
【0003】
また、特許文献2には、室内機の熱交換器を冷却塔からの冷却水を利用して、いわゆるフリークーリング運転を行い、省エネルギーを達成することを目的としている。ここでは、冷凍機と冷却塔が用意され、通常は冷却塔と冷凍機で運転を行う。このシステムでは外気温度を計測しており、外気温度が所定の温度になったら、冷凍機を停止し、冷却塔だけの運転に切り替える。したがって、外気温度によって冷凍機を停止した分は省エネが達成できることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−009796号公報
【特許文献2】特開平07−019523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、熱負荷の変動を検知し、その変動に応じて冷却塔の運転の切り替えを行っている。しかし、外気の温度湿度の変化は、検出していない。したがって、供給する冷却水の温度が変化するまでは、なんの制御も行われない。しかし、供給する冷却水の温度が変わってしまってから冷却塔の運転状況を変更しても、冷却水自体はすぐには冷たくならない。すなわち、水温が下がるにはタイムラグが生じる。結果、水温の安定した冷却水の提供は困難である。
【0006】
この原因は、冷凍機に供給する冷却水の温度制御を冷却塔の運転で行っている点にある。つまり、熱容量の大きな冷却塔で水温を直接制御するのは、冷却塔を数多く設置しなければならない。すなわち、コスト高になるという課題も生じる。
【0007】
また、冷却塔は気温や湿度といった外気の状況に左右されるので、外気がどれほどの冷却能力を有している状態で、現在運転が行われているかという点を把握できない構成では、そもそも外気の変化に応じて素早く所定の温度の冷却水を供給することはできない。
【0008】
特許文献2は、外気温度に応じて、冷凍機の使用の有無を決めるものである。そのため、一定の効果を有するものと認められる。しかし、冷却塔だけの運転になった時に、さらに省エネを行う点に関してはなんらの考察もない。すなわち、フリークーリングが行える状況になったときに、さらに消費電力を押さえる工夫については何も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑み想到されたものであり、最も基本的には、冷却塔から熱負荷に供給される冷却水を安定して所定の温度に維持するものである。さらには、供給する冷却水の温度を極めて安定して維持しつつ、さらに省エネが可能になる冷却システムを提供する。
【0010】
より具体的には、本発明の冷却システムは、
前記被冷却体を冷却水で冷却する冷却器と、
前記冷却器に前記冷却水を供給し、冷却後の前記冷却水を再び冷却する循環ユニットと、
外気の湿球温度を検出する外気湿球温度センサと、
前記循環ユニット中に配置された温度センサと前記外気湿球温度センサとに連結され、前記循環ユニット中の弁とインバータと循環ポンプを制御する制御装置とを有し、
前記循環ユニットは、
前記インバータで回転制御されるファンを有し前記冷却後の冷却水を再び冷却する冷却塔と、
前記冷却塔で温度の下がった前記冷却水を前記冷却器に送る送水パイプと、
前記冷却器から前記冷却塔に前記冷却器から熱を奪った後の冷却水を返す戻りパイプと、
前記送水パイプと前記戻りパイプの間を連通するバイパスパイプと、
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却器の間に配設される循環ポンプと、
前記バイパスパイプに設けられたバイパス弁と、
前記戻りパイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却塔との間に設けられた絞り弁と、
前記冷却塔の出口に設けられた出口水温センサと、
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記ポンプの間に設けられた供給水温センサを含み、
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサと前記出口水温センサおよび供給水温センサの検出値に応じて、前記バイパス弁と前記絞り弁と前記インバータと前記循環ポンプを前記供給水温センサの検出値が所定の値になるように制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の冷却システムは、上記の冷却システムを複数直列に連結してもよく、具体的には、
前記冷却器の後段に第2の冷却器を設け、
前記第2の冷却器に2次側冷却水を供給し、冷却後の前記2次側冷却水を再び冷却する冷凍機を有する第2の循環ユニットを有し、
前記制御装置は、さらに前記第2の循環ユニット中に配置された温度センサと、弁とインバータと循環ポンプと前記冷凍機に接続され、
前記第2の循環ユニットは、
第2のインバータで回転制御されるファンを有し前記冷凍機に供給する1次側冷却水を再び冷却する第2の冷却塔と、
前記第2の冷却塔で温度の下がった前記1次側冷却水を前記冷凍機に送る第2の送水パイプと、
前記冷凍機から前記第2の冷却塔に前記冷凍機から熱を奪った後1次側冷却水を返す第2の戻りパイプと、
前記第2の送水パイプと前記第2の戻りパイプの間を連通する第2のバイパスパイプと、
前記第2の送水パイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記冷凍機の間に配設される第2の循環ポンプと、
前記第2のバイパスパイプに設けられた第2のバイパス弁と、
前記第2の戻りパイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の冷却塔との間に設けられた第2の絞り弁と、
前記第2の冷却塔の出口に設けられた第2の出口水温センサと、
前記第2の送水パイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の循環ポンプの間に設けられた第2の供給水温センサと、
前記第2の戻りパイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記冷凍機との間に配設された戻り水温センサを含み、
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサと前記第2の出口水温センサと第2の供給水温センサおよび前記戻り水温センサの検出値に応じて、前記第2のバイパス弁と前記第2の絞り弁と前記第2のインバータと前記第2の循環ポンプと、前記冷凍機を前記供給水温センサの検出値が所定の値になるように制御することを特徴とする。
【0012】
また、上記の冷却システムは溶剤回収装置に利用することができ、具体的には、
高温の溶剤含有空気を発生する溶剤発生源と、
前記溶剤含有空気を冷却し前記溶剤含有空気中の溶剤を結露し回収する第1のガス冷却器と、
前記第1のガス冷却器を通過した前記溶剤含有空気をさらに冷却し前記溶剤含有空気中の溶剤を結露させ回収する第2のガス冷却器と、
前記第2のガス冷却器を通過した前記溶剤含有空気からミスト成分を回収するデミスタと、
前記デミスタを通過した前記溶剤含有空気から溶剤を除去し、再生空気を排出する吸脱着ロータと、
前記第1のガス冷却器と前記第2のガス冷却器と前記デミスタから回収される前記溶剤含有空気中の溶剤を回収するドレインパイプを有し、
前記第1のガス冷却器と前記第2のガス冷却器を上記の冷却システムにおける前記循環ユニットおよび前記第2の循環ユニットでそれぞれ冷却する溶剤回収システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却システムは、冷却塔から冷却器まで冷却水を送る送水パイプと、冷却器から戻ってくる戻りパイプの間を連通するバイパスパイプを設け、バイパスパイプと戻りパイプの流量を調整することで、冷却塔で冷やされた冷却水と、冷却器で熱変換され温かくなった冷却水を混合して、冷却器に供給するので、供給する水温が変化しても、冷やされた冷却水と温かい冷却水の混合比を調整することで、ほとんど瞬時に近い速度で供給する冷却水の温度を一定にすることができる。
【0014】
また、外気湿球温度センサを有しているので、外気の冷却能力に対する現在の運転状態を把握することができる。したがって、外気の冷却能力が高い場合は、冷却塔の冷却力を落として、運転することができ、省エネを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の冷却システムの基本的な構成を示す図
【図2】冷却塔の出口水温とファン回転数の関係を説明する図
【図3】外気湿球温度とアプローチ温度の関係を示す図
【図4】定格冷却能力比Qとインバータの消費電力の関係を示す図
【図5】制御装置22のフローを示す図
【図6】本発明の他の冷却システムの基本的な構成を示す図
【図7】本発明の他の冷却システムの基本的な構成を示す図
【図8】複数の循環ユニットを有する冷却システムを示す図
【図9】冷凍機を有する冷却システムの構成を示す図
【図10】冷凍機を有する場合の消費電力を推定するための状態を説明する図
【図11】冷凍機を有する他の冷却システムの構成を示す図
【図12】本発明の冷却システムを有する溶剤回収システムの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の冷却システムと、それを用いた溶剤回収システムについて説明する。まず、本発明の最も基本的な構成について、本実施形態において説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1には、本発明の冷却システムの構成を示す。本発明の冷却システム1には、熱負荷となる冷却器10と冷却器10を冷却するための熱媒体となる冷却水を冷却する循環ユニット11と、循環ユニット11の動作を制御する制御装置22と、外気湿球温度センサ24からなる。
【0018】
熱負荷となる冷却器10は、特に限定されるものではないが、定常的に所定の熱量を交換するように設計されるものがよい。例えば、冷凍機であってもよいし、後述する溶剤回収システム中では、溶剤を含んだガスを冷却するガス冷却器などが好適に利用できる。
【0019】
外気湿球温度センサ24は、水で湿った不織布などに接触した乾球の温度を計測するセンサである。水分が蒸発している温度を計測できるのであれば、構成はこれに限定されるものではない。この外気湿球温度センサ24よって、現在循環ユニット11が置かれている環境での、水の蒸発量を推定することができる。外気湿球温度センサ24の出力は、制御装置22に連結されている。
【0020】
循環ユニット11は、インバータ31によって回転するファンを有する冷却塔30と、冷却塔30から冷却器10に冷却水を送る送水パイプ32と、冷却器10で熱交換され水温の上がった冷却水を冷却塔30に戻す戻りパイプ34によって循環系が構成されている。また、本発明の冷却システムでは、送水パイプ32と戻りパイプ34との間を連通するバイパスパイプ36が配置されている。ここで送水パイプ32とバイパスパイプ36の連通点を送水側連通点41とし、戻りパイプ34とバイパスパイプ36の連通点を戻り側連通点42とする。
【0021】
冷却塔30は、冷却器10から戻りパイプ34で戻ってきた冷却水を上方から落下させ、空気と接触若しくは一部の冷却水の気化熱によって冷却水を冷却する構成を有している。また、上部から落下する際に空気との接触を促進させるため、ファンによる通風ができることを想定している。このファンはインバータ31によって駆動させられる。
【0022】
バイパスパイプ36には、流量調整が可能なバイパス弁37が配設されている。また、戻りパイプ34の冷却塔30付近には、同じく流量調整が可能な絞り弁35が配設されている。この絞り弁35は、、戻り側連通点42と冷却塔30の間に配置される。
【0023】
送水パイプ32には、冷却塔30の出口付近に出口水温センサ38が配設されている。また、送水側連通点41と冷却器10との間に、供給水温センサ39が配設されている。また、供給水温センサ39と冷却器10との間には、循環ポンプ40が配設されている。これらの温度センサ(38、39)、流量調整弁(37、35)および循環ポンプ40は、制御装置22と電気的に連結されている。
【0024】
従って、制御装置22は、これらの温度センサ(38、39)、流量調整弁(37、35)循環ポンプ40およびインバータ31、さらには外気湿球温度センサ24のそれぞれの機器から状態に関する信号を受け、また、それぞれの機器の状態を変化させるための指示信号を送ることで、循環ユニット11の運転を制御することができる。
【0025】
また、後述する実施の形態のように、循環ユニット11には、複数の止水弁を設けることもできる。これらの止水弁の開閉も制御装置22は行うことができる。従って、制御装置22は、循環ユニット11中の弁(流量調整弁と止水弁)と、インバータと循環ポンプを制御すると言える。
【0026】
次に本発明の冷却システム1において、冷却水の流れについて説明する。図1を参照して、冷却水Wcは、冷却塔30から送水パイプ32を通り、送水側連通点41を通過し、冷却器10に送られる。冷却器10内では、熱変換が行われ、冷却器10に入る前より高い温度の冷却水Whとなって戻りパイプ34を冷却塔30に向かって流れる。この水流を作るのは循環ポンプ40である。
【0027】
この流路において、バイパス弁37と絞り弁35をそれぞれ調整することで、冷却水Whの一部をバイパスパイプ36を通して送水パイプ32に戻すことができる。すなわち、送水側連通点41で、冷却水Wcに冷却水Whが混合される。つまり、冷却器10に供給される冷却水は、正確に述べると、冷却水Wcと冷却水Whの混合されたものである。そこで冷却器10に供給される冷却水を冷却水Wmとする。冷却塔30から送水パイプ32を流れる冷却水Wcは、送水側連通点41を過ぎると、冷却水Wmとなる。冷却水Wmの水温は供給水温センサ39で得る事ができる。
【0028】
送水側連通点41において冷却水Wcと冷却水Whの混合の比率は、全て冷却水Wcとする場合と、全て冷却水Whにする場合の間で制御することができる。すなわち、バイパス弁37を全閉とし、絞り弁35を全開とすれば、冷却水Wmは全て冷却水Wcとなる。また、バイパス弁37を全開とし、絞り弁35を全閉とすれば、冷却水Wmは全て冷却水Whとなる。
【0029】
ここで、冷却水Whは冷却水Wcより高い温度である。したがって、冷却水Wmは、冷却水Wcの水温から冷却水Wmの水温までの間の温度に、設定することができる。しかも、冷却水Wmの温度設定は、バイパス弁37と絞り弁35の流量調整によって、瞬時といってもよい程度の時間で調整を行うことができる。
【0030】
すなわち、供給水温センサ39で冷却器10に供給される冷却水Wmの水温は、所定の設定値からずれた場合に、その「ずれ」を知った制御装置22がバイパス弁37と絞り弁35(場合によっては循環ポンプ40も)を調整することで、ただちに、所定の水温に戻すことができる。この「ずれ」は供給水温センサ39が冷却水Wmの水温を検出しており、また所定の設定値(供給する冷却水の水温の目標値)は制御装置22が予め知っているからである。
【0031】
従って、本発明の冷却システムでは、従来のように、冷却器10に供給する冷却水の温度が変化した際に、冷却塔30の運転自体(ファン回転数)を修正することで冷却水の温度を調整しているわけではない。つまり、非常に水温の安定した冷却水Wmを冷却器10に供給することができる。
【0032】
また、上記のようにバイパスパイプ36を利用した方法は、温度や湿度といった外気の状態(以後「外気状態」と呼ぶ)に冷却能力が左右される冷却塔30から供給される冷却水Wcを使用する冷却システム1にとっては、安定した冷却水Wmを冷却器10に供給するために大変有利である。
【0033】
これを以下に説明する。冷却塔30は、冷却器10から戻りパイプ34を通って戻ってきた冷却水Whから熱を奪い、冷却水Wcに変換する熱交換器である。ここで、冷却塔30は屋外に設置され外気を使って冷却水Whを冷却する。従って、外気状態によって、得られる冷却水Wcの水温は変化する。例えば、通常1日のうち時間帯によって外気状態は異なるため、朝から昼にかけて、昼から夕方にかけて、また夕方から夜にかけた外気状態の変化に応じて冷却水Wcの水温は変化する。また、湿度によっても変化する。
【0034】
しかし、上記のようにバイパスパイプ36を利用した方法であれば、送水側連通点41に供給される冷却水Wcの温度が変化し、冷却器10への供給水温(供給水温センサ39の値)が変化しても、バイパス弁37と絞り弁35(場合によっては循環ポンプ40)を制御装置22が調整することで、ただちに、所定の水温に戻すことができる。よって、冷却器10に供給する冷却水Wmの水温は安定する。なお、供給水温の目標値は供給水温設定値(TDSSP)として、予め与えられているものとする。
【0035】
上記のようなバイパス弁37と絞り弁35の制御を言い換えると、制御装置22は、出口水温センサ38の検出値TDPV1(出口水温実測値)と、供給水温センサ39の検出値TDPV2(供給水温)との偏差に応じて、供給水温が所定の値(供給水温設定値TDSSP)になるように、バイパス弁37(MV1)と前記絞り弁35(MV2)を制御しているといえる。
【0036】
さらに、上記のような構成を有する本発明の冷却システム1は、以下に説明する運転を行うことで、所費電力を低減することができる。
【0037】
よく知られているように、外気を使った冷却の場合、外気湿球温度以下の温度には冷却水Wcを冷却することはできない。また、実際的には、さまざまなロスによって外気湿球温度より5℃程度高い温度までしか冷却水Wcは温度を下げられない。また、外気湿球温度がある程度高いと、冷却水Whは、冷却塔30の上部から落下させただけでは十分に冷却されず、強制的に外気と接触させるために、ファンを回して風を当てる。
【0038】
従来は、このファンの運転に関しては、冷却器10側の水温などから、ファンの運転状態を制御することを行っていた。しかし、冷却水Wcの水温は、外気状態に依存するものである。したがって、従来知られているファンの運転方法であると、現在の外気状態から考慮して、まだ冷却水Wcの水温を下げることができる状態でファンを回転させているのか、これ以上は冷却水Wcの水温を下げることができない状態でファンを回しているのかが分からなかった。
【0039】
本発明の冷却システム1は、外気湿球温度センサ24を有していて、この外気湿球温度センサ24の値と、冷却塔30からの出口水温に応じて、冷却塔30のファンを回転させる。つまり、冷却器10へ供給する冷却水Wmの水温と比べて、外気湿球温度の値が十分に低ければ、冷却塔30のファンの回転を下げる、若しくは止めても、冷却システム1自体を支障なく運転することができる。このような判断を行えるので、本発明の冷却システム1は消費電力を低減することができる。
【0040】
これをより詳細に説明する。外気湿球温度センサ24の値をTOWPV、出口水温センサ38の値をTDPV1とする。なお、供給水温センサ39の値はTDPV2とする。そして、冷却塔30の出口水温の目標設定値をTDOSPとする。TDOSPは例えば外気湿球温度TOWPVより5℃高い温度である。すなわち、TDOSP=TOWPV+5℃である。一方、冷却塔30の出口水温は出口水温センサ38で検出することができる。この温度は上記のようにTDPV1とした。TDPV1は冷却水Wcの水温である。
【0041】
図2(a)には、冷却塔30の出口水温であるTDPV1とファンの回転数(風量)の関係を示す。横軸は冷却水Wcの水温(TDPV1)であり、縦軸はファンの回転数(風量)である。図2中TDOSPのラインは、上記の説明より例えば外気湿球温度より5℃高い温度であり、事実上、これ以下には、TDPV1(冷却水Wcの水温)を下げることができない点である。例えば、現在TDPV1とTDOSPが一致している場合(図2(a)中のTDPV1)は、外気状態に対して、これ以上はTDPV1を下げることができない状態で運転されていることを示している。
【0042】
この時、ファンの回転数は最大回転数の半分程度に設定されるのが動作点という考え方から好ましい。もしTDPV1の温度が少し上昇した場合(TDPV1+α)には、ファンの回転数を上げることで、再び冷却水Wcの温度をTDPV1に戻すことができるからである。また、もしTDPV1の水温が少し下降した場合(TDPV1−β)は、ファンの回転数を下げることで、消費電力を削減することができるからである。もちろん、夏などの最悪条件下での運転がファン回転数の80%程度で成立するように設計をおこなってもよい。図2(a)で冷却水Wcの水温とファンの回転数の関係を示すラインは、ファンの回転数の動作線である。
【0043】
今、図2(b)において、外気状態が変化し、TDOSP1がTDOSP2まで下がったとする。外気の熱を奪う能力が増えたので、ファンの回転数をR1からR2まで下げてもWcの水温(W1)は追従し、W2まで低下したとする。すなわち、ファンの回転数は低下し、送水側連通点41に供給される冷却水Wcの水温も低下する。もちろん、冷却器10へ供給する冷却水Wmの温度は予め決められているので、バイパス弁37と絞り弁35の開度を調整し、冷却器10から戻ってきた冷却水Whの混合割合を大きくすれば冷却水Wmは一定に保たれる。
【0044】
この時、ファンの回転数をもっと下げる(R3)と、冷却塔30での冷却能力が低下するために、冷却水Wcの水温(TDPV1)は上昇する。そして、水温がW3で安定したとする。これは、冷却塔30の冷却能力を十分に利用したとは言えない。しかし、冷却水Wmの供給温度を一定にしておけるのであれば、冷却水Wcの水温が上昇しても、冷却システム1としての運転は成立し、しかも、ファンの回転数を減らした分だけ消費電力を削減することができる。なお、上記のようにするには、冷却塔30からの冷却水Wcの温度(TDPV1)の目標値であるTDOSPを変更することで実現する。これは図2(b)の点線で示すようにファンの回転数の動作線をずらすことに対応する。
【0045】
以上のようなファンの回転数(インバータ31)の制御を言い換えると、制御装置22は、外気湿球温度センサ24の検出値から演算した冷却塔出口水温の目標値TDOSPと、出口水温センサ38の検出値TDPV1(出口水温実測定値)との偏差に応じて、冷却塔30に設けた前記インバータ31(ファンの回転数)を制御すると言える。
【0046】
一方、ファンの回転数を減らすと冷却水Wcの温度は上昇した。そこで、送水側連通点41において、戻りパイプ34からの冷却水Whの割合を減らすことになるが、それだけでは所定の冷却水Wmが得られない場合は、循環ポンプ40の回転数を上げて、冷却水の流量を増やさなければならない。つまり、冷却塔30のファンの回転数と循環ポンプ40の回転数(流量)は、相反する関係となる。
【0047】
すなわち、所定の冷却水Wmを供給するに当たって、ファンの回転数を下げて(TDPV1は上昇)、循環ポンプ40の回転数(流量)を上げるか、ファンの回転数を上げて(TDPV1は下降)、循環ポンプ40の回転数(流量)を減らすかの選択が可能になる。これらの関係は設計時の冷却システム1の能力および設置場所、設置場所での年間の気候などで変化するので、ケースバイケースとなる。しかし、インバータ31での消費電力と循環ポンプ40の消費電力が相反する条件を作り出すことができる本発明の冷却システム1は、システム全体の消費電力の合計が最小となるように制御することが可能である。
【0048】
なお、循環ポンプ40の消費電力は予め負荷および回転数で消費電力が求められるので、制御装置22は予め指示する指標に対する消費電力のテーブルで持っておくことができる。ここでいう指標とは制御装置22が循環ポンプに対して直接行う制御の指標であり、たとえば、電圧、流量、ポンプ軸回転数等である。つまり、制御装置22は、循環ポンプ40へ送信した指示によって循環ポンプ40の消費電力を推定できる。これを循環ポンプ40の推定消費電力Wpと呼ぶ。
【0049】
一方、インバータ31での消費電力を見積もるのは容易ではない。しかし、本発明の冷却システム1は、外気湿球温度センサ24を有しているので、ファンの回転数を制御するインバータ31の消費電力を、特別な装置がなくても得る事ができる。次にこの点について説明を行う。
【0050】
図3は、外気湿球温度TOWPVと、アプローチ温度ΔT1との関係を示す図である。ここで、冷却塔30に戻される戻りパイプ34からの冷却水Whの水温は、予め設計された水温の水である。アプローチ温度ΔT1とは、外気湿球温度TOWPVと、冷却塔30の出口水温TDPV1の差をいう。あらわに書くと、ΔT1=TDPV1−TOWPVである。
【0051】
図3において、横軸は外気湿球温度TOWPVであり、縦軸はアプローチ温度ΔT1である。なお、物理的に冷却塔30の出口水温度TDPV1が外気湿球温度TOWPVより低くなることはないので、常にTDPV1≧TOWPVの関係がある。すなわち、ΔT1は常に正の値をとる。
【0052】
図3は、また冷却塔30の性能特性でもある。つまり、ある運転状態(例えば定格運転状態)をしている時に、外気湿球温度TOWPVが変化すると、どれくらいまで冷却水Wcの水温TDPV1を下げることができるかという能力を示している。たとえば、現在の外気湿球温度TOWPVがTW1℃であったとする。この時、定格運転をすれば、アプローチ温度ΔT1は、ΔT1a℃にできるとする。
【0053】
つまり、冷却塔30の出口水温TDPV1は(TW1+ΔT1a)℃にすることができるということを表す。このように、冷却塔30に戻ってくる水温が決っている場合には、定格運転をした時の外気湿球温度とアプローチ温度との関係は、冷却塔30の性能特性として予め求めておくことができる。図3では、ラインRRが定格運転を表すラインである。これを定格運転ラインRRとも呼ぶ。
【0054】
上記のような関係が予めわかっているとして、現在のアプローチ温度ΔT1がΔT1b℃であったとする。外気湿球温度TW1℃は同じであるとする。これは冷却塔30の出口水温の温度TDPV1から外気湿球温度TOWPV(この場合はTW1℃)を引けば得る事ができる。
【0055】
ΔT1bがΔT1aよりも高ければ、冷却塔30としては、あまり冷却をしていないということであるので、冷却塔30での消費電力は、定格運転状態よりも少なくなるはずである。一方、アプローチ温度ΔT1が、定格運転時のアプローチ温度であるΔT1aより低いΔT1cであるとすると、出口水温が定格運転時よりも低いのであるから、定格運転よりも冷却をしている(消費電力が大きい)こととなる。
【0056】
つまり、それぞれの外気湿球温度の時に、定格運転の状態からどれくらい運転状態が異なるとアプローチ温度ΔT1がどのような値となるかを予めテーブルで持っていれば、アプローチ温度ΔT1から現在の運転状態と定格運転状態の比(定格冷却能力比)Qを求めることができる。
【0057】
図4は、定格冷却能力比Qとファンを駆動するインバータの推定消費電力Winvの関係を示す。横軸は定格冷却能力比Qであり、定格運転をしている際はQ=1.0である。縦軸は推定消費電力Winvを表わす。例えば図3の現在の運転点Bは、定格運転状態との比較によって、定格冷却能力比QがQBとなったとすると、図4よりインバータ31の推定消費電力はWBとなる。図3の関係図と図4の関係図は予め作製しておくことができ、制御装置22は、この関係をテーブル若しくは近似式として有することができる。
【0058】
つまり、制御装置22は、外気湿球温度TOWPVと、冷却水Wcの温度TDPV1を知ることで、インバータ31の消費電力を見積もることができる。外気湿球温度センサ24の検出値と、出口水温センサ38の検出値とから、上記のようにして求めたインバータ31の消費電力をインバータ31の推定消費電力Winvと呼ぶ。
【0059】
以上のように、本発明の冷却システム1では、外気湿球温度TOWPVと、出口水温TDPV1によってインバータ31の消費電力を推定し(Winv)、また、循環ポンプ40への指示から循環ポンプ40の消費電力を推定する(Wp)。そこでシステム全体の消費電力を推定合計消費電力ΣWとすると、ΣW=Winv+Wpの関係が成り立つ。このΣWを最小にするように、出口水温の目標値TDOSP(つまりファンの回転数)と循環ポンプ40を制御することで、システム全体の省電力が可能となる。
【0060】
なお、実際に冷却器10へ供給する冷却水Wmの水温(TDPV2)を一定にしながら、冷却塔30のインバータ31の推定消費電力Winvと循環ポンプ40の推定消費電力Wpとの総和が最小になる制御をするのは簡単ではない。また、これらは推定された電力であるので、実際の電力との比較も必要となる。さらに、正確な最小点を求めなくても、最小に近似する運転状態を求めることができればよい。したがって、多変量解析による手法若しくは遺伝的アルゴリズムを用いるので好適である。
【0061】
以上の運転フローを図5に示す。図5を参照して、冷却システム1の運転がスタートすると(ステップS100)、初期設定が行われる(ステップS102)。ここで初期設定とは、冷却器10へ供給する冷却水Wmの水温と、冷却塔30からの冷却水Wcの水温の目標値設定等である。この目標値とは、TDPV1の目標値(TDOSP)である。
【0062】
次に終了判定を行う(ステップS104)。終了判定は、所定の期間で決めてもよいし、なんらかの異常を検知する信号によるものでもよい。終了する場合(ステップS104のY分岐)は、システムを停止させる(ステップS120)。
【0063】
次に制御装置22は外気湿球温度センサ24から外気湿球温度TOWPVの値を得る(ステップS106)。ここから冷却水Wcの水温の目標温度TDOSPを求める。具体的にはアプローチ温度を5℃とすると、TDOSP=TOWPV+5℃である。TOWPVの値を得たら、所定の水量となるように循環ポンプ40を駆動する(ステップS108)。なお、図5において、循環ポンプの回転数をPrevと表した。循環ポンプ40が駆動すると冷却水の循環が始まる。
【0064】
次に、冷却塔30の出口水温であるTDPV1の温度からインバータ31を制御しファンを回転させる(ステップS110)。これは、図2に示したファンの回転数と、TDPV1の関係を使う。また、出口水温センサ38(Wcの水温:TDPV1)と、供給水温センサ39(Wmの水温:TDPV2)とから、バイパス弁37、絞り弁35の開度を調整し、所定の水温の冷却水Wmを供給する(ステップS112)。なお、図5において、バイパス弁37をMV1、絞り弁35をMV2と表した。
【0065】
冷却塔30のファンおよび循環ポンプ40が作動し、バイパス弁37と絞り弁35が制御されると、冷却システム1は稼動状態に入ることとなる。
【0066】
次にインバータ31での推定消費電力Winvと、循環ポンプ40での推定消費電力Wpを見積もる(ステップS114)。特にインバータ31の推定消費電力Winvの見積には、図3および図4で説明した方法を用いる。これから、冷却システム1での推定合計消費電力ΣWが最小であるかどうかを判断する(ステップS116)。最小と判断されれば(ステップS116のY分岐)、終了判断(ステップS104)まで戻り、フローを繰り返す。
【0067】
もし、推定合計消費電力ΣWが最小でない場合(ステップS116のN分岐)は、TDPV1の目標値(TDOSP)と循環ポンプ40の回転数を設定しなおす(ステップS118)。そして、フローを終了判定(ステップS104)まで戻す。本発明の冷却システム1は、上記のような構成を有し、図5で示した手順で運転を行うので、冷却器10に対して、常に安定した冷却水を供給することができ、また消費電力も最小に抑えることができる。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態は実施の形態1に外部から冷却水が供給される場合にも対応できる冷却システム2を示す。冷却システムを設置するような施設では、施設内で様々な共通素材を自製する場合が多い。例えば、窒素ガスであったり、共通の溶剤などである。冷却水についても、他の工程において、何か熱が必要とされ、水から熱を奪うような工程が行われていたとすると、熱を奪われた水は冷却システムで使用する冷却水となりえる。そのような冷却水が冷却システムの外部から供給される状態となった際には、そちらの冷却水を使用し、冷却塔30を停止すれば、消費電力の削減となる。
【0069】
図6には、本発明の冷却システム2の概要を示す。本実施形態における冷却システム2は、実施の形態1の冷却システム1に対して、外部冷却水供給パイプ45が冷却塔30と送水側連通点41との間に配置され、外部冷却水返送パイプ46が、冷却塔30と戻り側連通点42の間に配置される。外部冷却水供給パイプ45には止水弁47が配置されている。また、外部冷却水供給パイプ45が送水パイプ32と連通している点より冷却塔30側には、止水弁48が配設されている。
【0070】
また、外部冷却水返送パイプ46と戻りパイプ34の連通点と冷却塔30の間に止水弁49が設けられている。さらに、外部冷却水返送パイプ46には止水弁50が設けられている。これらの止水弁47乃至50は、制御装置22−2に連結されており、制御装置22−2からの指示信号で開閉が可能になっている。なお、止水弁47乃至50は、それぞれ第1の弁、第2の弁、第3の弁、第4の弁ともよぶ。
【0071】
また、インバータ31によって回転するファンを有する冷却塔30と、冷却塔30から冷却器10に冷却水を送る送水パイプ32と、冷却器10で熱交換され水温の上がった冷却水を冷却塔30に戻す戻りパイプ34と外部冷却水供給パイプ45および外部冷却水返送パイプ46を含めて循環ユニット12を形成する。
【0072】
制御装置22−2は、実施の形態1における制御装置22であるとともに、上記の止水弁と電気的に連結され、外部の冷却水供給元から外部フリークーリング可能信号Fwを受けることができるように構成されている。外部から冷却水が供給されることが可能か否かは、冷却システム2自身は知ることができないからである。
【0073】
外部フリークーリング可能信号Fwを受信した制御装置22−2は、止水弁47、50を開くとともに、止水弁48、49を閉じる。このようにすることで、冷却器10には、外部冷却水供給パイプ45から冷却水が供給され、熱交換されて温度があがった冷却水は、外部冷却水返送パイプ46で供給元等に戻される。さらに制御装置22−2は、冷却塔30のファンの回転をゼロ、つまりインバータ31を停止させる。これによって、冷却システム2の消費電力を著しく低下させることができる。なお、この外部フリークリング可能信号Fwを受信した際の制御装置22−2の処理は、図5で示した処理フローのどこから割り込んでもよい。
【0074】
またこのとき、外部からの冷却水Wcは、送水側連通点41および戻り側連通点42より冷却塔30側から供給されるので、実施の形態1で説明したバイパスパイプ36およびバイパス弁37の調整機構はそのまま使用することができる。すなわち、冷却器10から出た、温度の高い冷却水Whの一部を冷却器10に供給する冷却水Wcと混合し、冷却水Wmとすることができる。すなわち、制御装置22−2は、供給水温センサ39と供給水温設定値TDSSPの値からバイパス弁37を制御することで、冷却水Wmの水温を所定の温度に維持する。
【0075】
(実施の形態3)
図7には、本発明の冷却システム3の概要を示す。本実施形態における冷却システム3は、実施の形態1の冷却システム1に対して、外部冷却水供給パイプ45が送水側連通点41と冷却器10との間に配置され、外部冷却水返送パイプ46が、冷却器10と戻り側連通点42の間に配置される。外部冷却水供給パイプ45には止水弁47が配置されている。また、外部冷却水供給パイプ45が送水パイプ32と連通している点より送水側連通点41側には、止水弁48が配設されている。すなわち、実施の形態2の場合と外部冷却水供給パイプ45と外部冷却水返送パイプ46の接続位置が違う。
【0076】
また、外部冷却水返送パイプ46と戻りパイプ34の連通点と戻り側連通点42の間に止水弁49が設けられている。さらに、外部冷却水返送パイプ46には止水弁50が設けられている。これらの止水弁47乃至50は、制御装置22−3に連結されており、制御装置22からの指示信号で開閉が可能になっている。これらの止水弁は、実施の形態2同様に、それぞれ止水弁47乃至50は、それぞれ第1の弁、第2の弁、第3の弁、第4の弁ともよぶ。
【0077】
従って、循環ユニット13を構成する要素は、循環ユニット12の場合と同じである。すなわち、インバータ31によって回転するファンを有する冷却塔30と、冷却塔30から冷却器10に冷却水を送る送水パイプ32と、冷却器10で熱交換され水温の上がった冷却水を冷却塔30に戻す戻りパイプ34と外部冷却水供給パイプ45および外部冷却水返送パイプ46を含めて循環ユニット13が形成される。
【0078】
制御装置22−3は、上記の止水弁と電気的に連結されるとともに、外部の冷却水供給元から外部フリークーリング可能信号Fwを受けることができるように構成されている。外部から冷却水が供給されることが可能か否かは、冷却システム3自身は知ることができないからである。
【0079】
外部フリークーリング可能信号Fwを受信した制御装置22−3は、止水弁47、50を開くとともに、止水弁48、49を閉じる。このようにすることで、冷却器10には、外部冷却水供給パイプ45から冷却水が供給され、熱交換されて温度があがった冷却水は、外部冷却水返送パイプ46で供給元等に戻される。さらに制御装置22−3は、冷却塔30のファンの回転をゼロ、つまりインバータ31を停止させる。これによって、冷却システム3の消費電力を著しく低下させることができる。
【0080】
ただし、この形式(循環ユニット13)では、バイパスパイプ36とバイパス弁37による供給温度の制御はできない。冷却器10からの温度の高い冷却水Whはバイパスパイプ36まで戻ってこないからである。つまり、制御装置22−3は、外部フリークーリング可能信号Fwを受信したら、外部冷却水供給パイプ45および外部冷却水返送パイプ46に切り替え、冷却塔30を停止させた後は、循環ポンプ40のみを動作させる。
【0081】
(実施の形態4)
本実施の形態では、冷却システムが複数個直列に配置されている場合を示す。例えば、被冷却体が、液体や気体などで元々の温度が高い場合は、一段だけの冷却システムだけでは十分に冷却できない場合がある。このような際に複数個の冷却システムを直列に配置し、一段目の冷却システムで粗熱をとり、二段目の冷却システムでさらに温度を下げるということを行えば、システム自体にも大きな負荷がかからず、安定して冷却を行うことができる。
【0082】
図8には、冷却システム4の全体構成を示す。循環ユニット11と冷却器10によって実施の形態2の冷却システム2とほぼ同じ構成が形成されている(制御装置は異なる)。また、循環ユニット112は循環ユニット11とほぼ同じ構成をしている。但し、循環ユニット中に水冷チラー55が設けられている点が異なる。また、循環ユニット112は、温度センサの個数が異なる。この点は後ほど詳細に説明する。水冷チラー55の運転状態を把握するためである。水冷チラー55は、第2の冷却器110からの1次冷却水を冷却する。
【0083】
被冷却体60は、図8の左側より送られ、冷却器10で冷却され被冷却体62となる。その後、さらに第2の冷却器110で冷却され、被冷却体64となる。また、第2の冷却器110には水冷チラー55によって冷却水を冷やすため、外気条件より低い温度まで冷却することができる。つまり、被冷却体64は、数度程度まで冷却することができる。
【0084】
これに対して制御装置23は、1ユニットが用意される。すなわち、2つの循環ユニットのそれぞれを1つの制御装置23によって制御する。これによって、全体としての消費電力を低減させることができる。なお、循環ユニット11と循環ユニット112はほぼ同じ構成をしている。そのため、循環ユニット11側の機器や設備については、必要に応じて「第1の」とよび、循環ユニット112側の機器や設備であって循環ユニット11と重複する機器や設備については、「第2の」と呼ぶ。なお、循環ユニット112自体が第2の循環ユニットである。
【0085】
図9には、循環ユニット112および水冷チラー55、第2の冷却器110の構成を示す。なお、循環ユニット11に関しては、実施の形態2(図6)で示した循環ユニット12と同じ構成である。循環ユニット112の構成を簡単に概説する。第2の冷却塔130には、水冷チラー55の1次側に1次側冷却水Wc2を送る第2の送水パイプ132が配設されている。
【0086】
水冷チラー55では、この1次側冷却水と水冷チラー55の2次側に連結される第2の冷却器110に流れる2次側冷却水との間で熱交換が行われ、温度の上がった1次側冷却水Wh2が排出される。この排出された1次側冷却水Wh2は、第2の戻りパイプ134で第2の冷却塔130の上部まで運ばれ、第2の冷却塔130内を落下させられる内に熱を放出する。
【0087】
第2の送水パイプ132と第2の戻りパイプ134との間には、第2のバイパスパイプ136が形成されている。第2の送水パイプ132と第2のバイパスパイプ136の連通点は第2の送水側連通点141である。また、第2の戻りパイプ134と第2のバイパスパイプ136との連通点は第2の戻り側連通点142である。
【0088】
第2のバイパスパイプ136には第2のバイパス弁137が設けられている。また、第2の戻り側連通点142から第2の冷却塔130までの間には第2の絞り弁135が設けられている。
【0089】
第2の冷却塔130の出口には、第2の出口水温センサ138が設けられ、第2の送水側連通点141と水冷チラー55の間には第2の供給水温センサ139が設けられている。第2の出口水温センサ138での計測温度はTDPV3とし、第2の供給水温センサ139での計測温度はTDPV4とする。第2の供給水温センサ139より水冷チラー55側には第2の循環ポンプ140が配設されている。
【0090】
また、水冷チラー55から第2の戻り側連通点142までの間に戻り水温センサ144が配置されている。これは水冷チラー55の消費電力を水冷チラー55で交換された熱量から求めるためである。この戻り水温センサ144は第1の循環ユニット11には設けられていない。なお、戻り水温センサ144での計測温度はTDPV5とする。
【0091】
また、第2の送水パイプ132において、第2の送水側連通点141と第2の出口水温センサ138の間と、第2の戻りパイプ134において第2の戻り側連通点142と第2の絞り弁135との間には、外部からの冷却水を取り入れるために、それぞれ第2の外部冷却水供給パイプ145と第2の外部冷却水返送パイプ146が連通されている。また、第2の外部冷却水供給パイプ145には止水弁147、第2の外部冷却水返送パイプ146には止水弁150が設けられている。
【0092】
また、第2の送水パイプ132と第2の外部冷却水供給パイプ145の連通点と第2の出口水温センサ138の間と、第2の外部冷却水返送パイプ146と第2の戻りパイプ134との間には、それぞれ止水弁148、149が設けられている。また、これらの止水弁は制御装置23に結合されており、制御装置23の信号によって開閉可能に構成されている。なお、止水弁147乃至150は、それぞれ第5の弁、第6の弁、第7の弁、第8の弁と呼ぶ。第1の循環ユニットから続いて指定するからである。
【0093】
なお、水冷チラー55と第2の冷却器110の間(水冷チラー55の2次側)にも、供給パイプ70、返水パイプ71、が形成されている。また、図示しない送水モータが配され、水冷チラー55と第2の冷却器110の間には冷却水がいつも循環している。
【0094】
循環ユニット112は、循環ユニット12(基本的には循環ユニット11)と同じ動作を行う。すなわち、外気湿球温度センサ24でTOWPVを取得し、第2の冷却塔130の出口水温の目標値である第2のTDOSPを算出する。第2のTDOSPは第2の冷却水出口水温の目標値である。そして、第2のTDOSPの値と、第2の出口水温センサ138で得た水温TDPV3に基づいて、ファンの回転数を決める。なお、第2のTDOSPと第1のTDOSPは同じ値であってもよい。
【0095】
一方、水冷チラー55に供給される冷水Wm2は、第2のバイパスパイプ136と、第2のバイパス弁137、第2の絞り弁135によって、水冷チラー55から戻ってくる1次側冷却水Wh2と第2の冷却塔130から供給される1次側冷却水Wc2が混合され、常に所定の温度に調整することができる。
【0096】
また、図3および図4で示したように、外気湿球温度TOWPVと第2の出口水温TDPV3とから第2の冷却塔130のインバータ131の消費電力を見積もることができる。
【0097】
図10には、水冷チラー55の推定消費電力と水冷チラー55に供給される1次側冷却水Wm2(TDPV4)と、熱交換が終了した1次側冷却水Wh2(TDPV5)の差分との関係を示す。水冷チラー55は冷凍機であるので、冷媒を圧縮、減圧蒸発させることで、第2の冷却器110側(水冷チラー55の2次側)から第2の循環ユニット112側(水冷チラー55の1次側)に熱を移動させるヒートポンプである。従って、水冷チラー55に出入りする1次側の冷却水の温度差によって内部で行われた仕事量を見積もることができる。
【0098】
図10で、横軸は戻り水温センサ144の水温TDPV5と第2の供給水温センサ139の水温TDPV4の差である。また縦軸は、水冷チラー55の推定消費電力である。ここで求めた水冷チラー55の推定消費電力をWchとする。また、第2のインバータ131と第2の循環ポンプ140の推定消費電力は、それぞれWinv2およびWp2とする。そして、第2の循環ユニット112側で消費する電力の推定合計消費電力をΣW2とする。ΣW2はあらわに書くと、ΣW2=Winv2+Wp2+Wchである。
【0099】
なお、制御装置23は、第2の供給水温センサ139の検出値(TDPV4)を一定に維持しつつ、このΣW2が最小になるように第2の循環ポンプ140、第2のインバータ131、水冷チラー55を運転すれば、第2の循環ユニット112での全消費電力を最小にすることができる。
【0100】
また、制御装置23は、第1の循環ユニット11に関しても同様の情報を得る事ができた(実施の形態1参照)。第1の循環ユニット11において、第1のインバータ31の推定消費電力をWinv1とし、第1の循環ポンプ40の推定消費電力をWp1とすると、第1の循環ユニット11側での推定合計消費電力ΣW1はこれらの和である。あらわに記載すれば、ΣW1=Winv1+Wp1である。
【0101】
従って、制御装置23は、第1の供給水温センサ39の検出値(TDPV2)と、第2の供給水温センサ139の検出値(TDPV4)を所定の値に維持したまま、ΣW1+ΣW2を最小にするように、第1の冷却塔30の出口水温TDPV1、第1の循環ポンプ40、第2の冷却塔130の出口水温TDPV3と、第2の循環ポンプ140、水冷チラー55の設定若しくは運転状態を変更すれば、2つの冷却システムを統合した状態で消費電力を最小にすることができる。このような制御は多変量解析でも可能ではあるが、遺伝アルゴリズムなどの手法を用いるのが好適である。
【0102】
なお、実施の形態2および3同様に、制御装置23が、外部からの冷却水が使用できるという信号である外部フリークーリング信号Fwを受信したときは、実施の形態2同様に、第2の送水パイプ132と第2の戻りパイプ134上に形成された止水弁148、149を閉め、第2の外部冷却水供給パイプ145と第2の外部冷却水返送パイプ146を開くことで、第2の冷却塔130を停止させることができる。すなわち、大変な省エネになる可能性がある。この場合は、第2のバイパスパイプ136と第2のバイパス弁137による水冷チラー55に供給する冷却水Wm2の水温を制御することができる。
【0103】
また、冷却システムは、外部からの冷却水を水冷チラー55に直接流れるようにしてもよい。図11には、外部からの冷却水が直接供給される水冷チラー55を有する循環ユニット113を示す。第2の外部冷却水供給パイプ145と第2の外部冷却水返送パイプ146の連結位置が図10の場合と異なる。図11では、これらの外部冷却水関係のパイプは水冷チラー55と冷却器110の間に設けられる。
【0104】
すなわち、供給パイプ70と返水パイプ71には外部からの冷却水を取り入れるために、第2の外部冷却水供給パイプ145と第2の外部冷却水返送パイプ146が連通されている。また、第2の外部冷却水供給パイプ145には止水弁147、第2の外部冷却水返送パイプ146には止水弁150が設けられている。また、第2の冷却器110側の水冷チラー55の冷却水の出口および入り口にはそれぞれ止水弁148、149が設けられている。また、これらの止水弁は制御装置23に結合されており、制御装置23の信号によって開閉可能に構成されている。
【0105】
このような構成であれば、制御装置23は外部フリークーリング信号Fwを受信したときは、止水弁148、149を閉め、第2の外部冷却水供給パイプ145と外部冷却水返送パイプ146を開くことで、第2の冷却塔130および循環ポンプ140を停止させることができる。すなわち、大変な省エネになる可能性がある。ただし、この場合は、第2のバイパスパイプ136と第2のバイパス弁137による水冷チラー55に供給する冷却水Wm2の水温を制御することはできない。
【0106】
(実施の形態5)
図12には、本発明の冷却システムを用いた溶剤回収システム5を示す。溶剤回収システムとは、塗工機などで生成した溶剤を多量に含んだ空気から溶剤を回収するシステムである。溶剤回収システムでは、溶剤を多量に含む空気の発生源がある。これを溶剤発生源と呼ぶ。ここでは溶剤発生源は塗工機80として説明する。なお、溶剤発生源は実際には塗工機80に限定されない。
【0107】
本発明の溶剤回収システム5は、溶剤含有空気を発生させる塗工機80と、熱交換器82と、第1のガス冷却器84と、第2のガス冷却器86と、デミスタ88と吸脱着ロータ90と、ドレインパイプ92と、制御装置22および外気湿球温度センサ24を含む。また、第1のガス冷却器84と第2のガス冷却器86には、それぞれ第1の循環ユニット11と第2の循環ユニット112が備えられている。これらの2つの循環ユニットは、1つの制御装置23で、それぞれの構成機器を制御できるように構成されている。また、制御装置23は、外気湿球温度センサ24とも結合されており、外気状況を得る事ができる。
【0108】
ここで、第1の循環ユニット11と第1のガス冷却器84と第2の循環ユニット112と第2のガス冷却器86と制御装置23と外気湿球温度センサ24は、実施の形態4で示した冷却システム4を構成する。なお、ここで第1の循環ユニット11は実施の形態2および3で示した循環ユニット12若しくは13を用いてもよいし、第2の循環ユニット112は、実施の形態4で示した循環ユニット113を用いてもよい。
【0109】
塗工機80に続く、熱交換器82は、塗工機80からの高温で溶剤を含有した空気D1と、溶剤をほとんど含まず、冷えた空気D6を直接混合せずに、熱交換する装置である。装置の下方にはドレイン83が設けられており、ドレインパイプ92に結露した溶剤を回収できるように構成されている。
【0110】
第1のガス冷却器84は、吹き込まれた溶剤含有空気D2をさらに冷やす装置である。一気に40℃近く温度を下げる。この第1のガス冷却器84に冷却水を送る第1の循環ユニット11は、大気との熱のやり取りを行うだけであるので、外気湿球温度よりも5℃程度高い温度の冷却水しか供給できない。つまり、第1のガス冷却器84からは、その程度の温度の溶剤含有空気D3が排出される。なお、第1のガス冷却器84の下方にもドレイン85が設けられ、ドレインパイプ92に結露した溶剤を流す。
【0111】
第2のガス冷却器86は、第1のガス冷却器84で冷やされた溶剤含有空気D3をさらに冷やす。第2のガス冷却器86には、第2の循環ユニット112からの冷却水が供給される。第2の循環ユニット112には、水冷チラー55が設けられているので、夏季であっても10℃以下の冷却水を供給させることができる。第2のガス冷却器86も下方にドレイン87が設けられ、ドレインパイプ92に結露した溶剤を流す。
【0112】
デミスタ88は、第2のガス冷却器86から排出された溶剤含有空気D4からミスト成分を除去するための装置である。第2のガス冷却器86で温度を下げられた溶剤含有空気D4には、装置内に露結して回収される溶剤だけでなく、空気中にミストとなって出現するものもある。このようなミスト成分はデミスタ88で一様に回収することができる。デミスタ88も下方にドレイン89が設けられ、ドレインパイプ92に結露した溶剤を流す。
【0113】
吸脱着ロータ90は、デミスタ88を抜けた溶剤含有空気D5から溶剤を回収するための装置である。多孔質の微粒子を配した円筒がゆっくりと回転しながら溶剤の吸着、脱着の工程を繰り返す構成をしている。微粒子に空気(D5)中の溶剤を吸着させ、加熱して脱着させる。溶剤が吸着された空気D6は、ほとんど溶剤が含まれない空気となる。
【0114】
次に溶剤含有空気の流れについて説明する。塗工機80から排出された溶剤含有空気D1は、最初に熱交換器82を通過する。これは、溶剤を回収され温度の下がった空気D6を再び塗工機80内で使用する際に、有る程度温度を上げておく必要があるため、熱交換器82により溶剤含有空気D1の温度を下げ、また再生された空気D6の温度を上げることを目的としている。
【0115】
次に、熱交換器82を通過した溶剤含有空気D2を第1のガス冷却器84に流す。ここでは第1の循環ユニット11によって供給される冷却水によって溶剤含有空気D2の温度をさげ、溶剤を結露させ、回収する。次に第1のガス冷却器84を通過した溶剤含有空気D3は、第2のガス冷却器86を通過させられる。第2のガス冷却器86には第2の循環ユニット112からの冷却水が供給されており、さらに温度はさがる。結果、ここでも結露した溶剤をドレインパイプ92で回収することができる。
【0116】
第2のガス冷却器86を通過した溶剤含有空気D4はデミスタ88でミスト成分が除去され、吸脱着ロータ90で溶剤成分をほとんど除去される。従って、吸脱着ロータ90を出た溶剤含有空気D6は、溶剤はほとんど含まないものの、温度は冷えている。このまま使用することも可能であるが、塗工機80で用いるには、温度を上げておいた方が好適である。
【0117】
そこで、吸脱着ロータ90を出た空気は熱交換器82に送られ、塗工機80からの高温の溶剤含有空気D1から熱を奪うことに利用する。熱交換器82で温度が高くなった空気Dh6は、再び塗工機80に送られ使用される。なお、空気Dh6は、塗工機80以外に送って利用してもよい。
【0118】
一方、吸脱着ロータ90で吸着された溶剤は、吸脱着ロータ90の脱着工程を経て、再び高温の空気D7に含有され、第1のガス冷却器84に戻される。これによって、99%以上の溶剤を回収することができる。
【0119】
ここで、第1の循環ユニット11と第1のガス冷却器84と第2の循環ユニット112と第2のガス冷却器86と、制御装置23と外気湿球温度センサ24からなる冷却システム4は、実施の形態1乃至4で説明したように、規定の能力を維持しつつ、消費電力を最小にすることができる。したがって、冷却システム4を用いた溶剤回収システム5は、省エネを実現しながら運転することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は上記の説明の通り、溶剤回収システムに利用できるほか、冷却若しくは暖房を冷却塔とヒートポンプを利用して行うシステムであれば、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1、2、3 冷却システム
10 冷却器
11、12、13 循環ユニット
22、22−2、22−3 制御装置
23 制御装置
24 外気湿球温度センサ
30 冷却塔
31 インバータ
32 送水パイプ
34 戻りパイプ
35 絞り弁
36 バイパスパイプ
37 バイパス弁
38 出口水温センサ
39 供給水温センサ
40 循環ポンプ
45 外部冷却水供給パイプ
46 外部冷却水返送パイプ
47乃至50 止水弁
55 水冷チラー
60、62、64 被冷却体
70 供給パイプ
71 返水パイプ
80 塗工機
82 熱交換器
84 第1のガス冷却器
86 第2のガス冷却器
88 デミスタ
90 吸脱着ロータ
83、85、87、89 ドレイン
110 第2の冷却器
112、113 第2の循環ユニット
130 第2の冷却塔
131 第2のインバータ
132 第2の送水パイプ
134 第2の戻りパイプ
135 第2の絞り弁
136 第2のバイパスパイプ
137 第2のバイパス弁
138 第2の出口水温センサ
139 第2の供給水温センサ
140 第2の循環ポンプ
144 戻り水温センサ
145 第2の外部冷却水供給パイプ
146 第2の外部冷却水返送パイプ
147乃至50 止水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却体を冷却水で冷却する冷却器と、
前記冷却器に前記冷却水を供給し、冷却後の前記冷却水を再び冷却する循環ユニットと、
外気の湿球温度を検出する外気湿球温度センサと、
前記循環ユニット中に配置された温度センサと前記外気湿球温度センサとに連結され、前記循環ユニット中の弁とインバータと循環ポンプを制御する制御装置とを有し、
前記循環ユニットは、
前記インバータで回転制御されるファンを有し前記冷却後の冷却水を再び冷却する冷却塔と、
前記冷却塔で温度の下がった前記冷却水を前記冷却器に送る送水パイプと、
前記冷却器から前記冷却塔に前記冷却器から熱を奪った後の冷却水を返す戻りパイプと、
前記送水パイプと前記戻りパイプの間を連通するバイパスパイプと、
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却器の間に配設される循環ポンプと、
前記バイパスパイプに設けられたバイパス弁と、
前記戻りパイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却塔との間に設けられた絞り弁と、
前記冷却塔の出口に設けられた出口水温センサと、
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記ポンプの間に設けられた供給水温センサを含み、
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサと前記出口水温センサおよび供給水温センサの検出値に応じて、前記バイパス弁と前記絞り弁と前記インバータと前記循環ポンプを前記供給水温センサの検出値が所定の値になるように制御する冷却システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサの検出値から演算した冷却塔出口水温の目標値(TDOSP)と、
前記出口水温センサの検出値(TDPV1)との偏差に応じて、前記冷却塔に設けた前記インバータを制御する請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記出口水温センサの検出値(TDPV1)と、
前記供給水温センサの検出値(TDPV2)との偏差に応じて、前記バイパス弁(MV1)と前記絞り弁(MV2)を制御する請求項1または2の何れかの請求項に記載された冷却システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
さらに前記循環ポンプへの指示電力から推定したポンプ推定消費電力Wpと、
前記外気湿球温度センサと前記出口水温センサの検出値から推定したインバータ推定消費電力Winvとから推定合計消費電力ΣWを求め、
前記推定合計消費電力ΣWが最小になるように前記循環ポンプと前記インバータを制御する請求項1乃至3の何れかの一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項5】
前記循環ユニットは、さらに
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却塔との間に連通された外部冷却水供給パイプと、
前記戻りパイプと前記バイパスパイプの連通点と前記冷却塔の間に連通された外部冷却水返送パイプと、
前記外部冷却水供給パイプに設けられた第1の弁と、
前記送水パイプと前記外部冷却水供給パイプの連通点と、前記冷却塔の間に設けられた第2の弁と、
前記戻りパイプと前記外部冷却水返送パイプの連通点と、前記冷却塔の間に設けられた第3の弁と、
前記外部冷却水供給パイプに設けられた第4の弁とを有し、
前記制御装置は、さらに、外部フリークーリング可能信号を受信した際には、前記第1乃至第4の弁を制御し、前記外部冷却水供給パイプからの冷却水を前記冷却器に供給する請求項1乃至4の何れか一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項6】
前記循環ユニットは、さらに
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と前記供給水温センサとの間に連通された外部冷却水供給パイプと、
前記戻りパイプと前記バイパスパイプの連通点と前記ガス冷却器の間に連通された外部冷却水返送パイプと、
前記外部冷却水供給パイプに設けられた第1の弁と、
前記送水パイプと前記バイパスパイプの連通点と、前記送水パイプと前記外部冷却水供給パイプの間に設けられた第2の弁と、
前記戻りパイプと前記バイパスパイプの連通点と、前記戻りパイプと前記外部冷却水供給パイプの間に設けられた第3の弁と、
前記外部冷却水供給パイプに設けられた第4の弁とを有し、
前記制御装置は、さらに、外部フリークーリング可能信号を受信した際には、前記第1乃至第4の弁を制御し、前記外部冷却水供給パイプからの冷却水を前記冷却器に供給する請求項1乃至4の何れか一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一の請求項に記載された前記冷却器の後段に第2の冷却器を設け、
前記第2の冷却器に2次側冷却水を供給し、冷却後の前記2次側冷却水を再び冷却する冷凍機を有する第2の循環ユニットを有し、
前記制御装置は、さらに前記第2の循環ユニット中に配置された温度センサと、弁とインバータと循環ポンプと前記冷凍機に接続され、
前記第2の循環ユニットは、
第2のインバータで回転制御されるファンを有し前記冷凍機に供給する1次側冷却水を再び冷却する第2の冷却塔と、
前記第2の冷却塔で温度の下がった前記1次側冷却水を前記冷凍機に送る第2の送水パイプと、
前記冷凍機から前記第2の冷却塔に前記冷凍機から熱を奪った後1次側冷却水を返す第2の戻りパイプと、
前記第2の送水パイプと前記第2の戻りパイプの間を連通する第2のバイパスパイプと、
前記第2の送水パイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記冷凍機の間に配設される第2の循環ポンプと、
前記第2のバイパスパイプに設けられた第2のバイパス弁と、
前記第2の戻りパイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の冷却塔との間に設けられた第2の絞り弁と、
前記第2の冷却塔の出口に設けられた第2の出口水温センサと、
前記第2の送水パイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の循環ポンプの間に設けられた第2の供給水温センサと、
前記第2の戻りパイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記冷凍機との間に配設された戻り水温センサを含み、
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサと前記第2の出口水温センサと第2の供給水温センサおよび前記戻り水温センサの検出値に応じて、前記第2のバイパス弁と前記第2の絞り弁と前記第2のインバータと前記第2の循環ポンプと、前記冷凍機を前記供給水温センサの検出値が所定の値になるように制御する冷却システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記外気湿球温度センサの検出値から演算した第2の冷却塔出口水温の目標値(TDOSP)と、
前記第2の出口水温センサの検出値(TDPV3)との偏差に応じて、前記第2の冷却塔に設けた前記第2のインバータを制御する請求項7記載の冷却システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第2の出口水温センサの検出値(TDPV3)と、
前記第2の供給水温センサの検出値(TDPV4)との偏差に応じて、前記第2のバイパス弁と前記第2の絞り弁を制御する請求項7または8の何れかの請求項に記載された冷却システム。
【請求項10】
前記制御装置は、
さらに前記第2の循環ポンプへの指示電力から推定したポンプ推定消費電力Wp2と、
前記外気湿球温度センサと前記第2の出口水温センサの検出値から推定した前記第2のインバータ推定消費電力Winv2と、
前記冷凍機の推定消費電力Wchから第2の推定合計消費電力ΣW2を求め、
前記第2の推定合計消費電力ΣW2が最小になるように前記第2の循環ポンプと前記第2のインバータと前記冷凍機を制御する請求項7乃至9の何れかの一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項11】
前記第2の循環ユニットは、さらに
前記第2の送水パイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の冷却塔との間に連通された第2の外部冷却水供給パイプと、
前記第2の戻りパイプと前記第2のバイパスパイプの連通点と前記第2の冷却塔の間に連通された第2の外部冷却水返送パイプと、
前記第2の外部冷却水供給パイプに設けられた第5の弁と、
前記第2の送水パイプと前記第2の外部冷却水供給パイプの連通点と、前記第2の冷却塔の間に設けられた第6の弁と、
前記第2の戻りパイプと前記第2の外部冷却水返送パイプの連通点と、前記第2の冷却塔の間に設けられた第7の弁と、
前記第2の外部冷却水供給パイプに設けられた第8の弁とを有し、
前記制御装置は、さらに、外部フリークーリング可能信号を受信した際には、前記第5乃至第8の弁を制御し、前記第2の外部冷却水供給パイプからの冷却水を前記冷凍機に供給する請求項7乃至10の何れか一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項12】
前記冷凍機は前記第2の冷却器に2次側冷却水を送る供給パイプと、
前記第2の冷却器で熱を奪った後の前記2次側冷却水を戻す返水パイプを有し、
前記供給パイプと前記第2の冷却器との間に連通された第2の外部冷却水供給パイプと、
前記第2の冷却器と前記返水パイプとの間に連通された第2の外部冷却水返送パイプと、
前記第2の外部冷却水供給パイプに設けられた第5の弁と、
前記送水パイプと、前記送水パイプと前記第2の外部冷却水供給パイプの間に設けられた第6の弁と、
前記返水パイプと、前記戻りパイプと前記第2の外部冷却水供給パイプの間に設けられた第7の弁と、
前記第2の外部冷却水供給パイプに設けられた第8の弁とを有し、
前記制御装置は、さらに、第2の外部フリークーリング可能信号を受信した際には、前記第4乃至第8の弁を制御し、前記第2の外部冷却水供給パイプからの冷却水を前記冷却器に供給する請求項7乃至10の何れか一の請求項に記載された冷却システム。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記供給水温センサと前記第2の供給水温センサの値が所定の値を維持したまま、
前記循環ユニットの前記推定合計消費電力ΣWと、
前記第2の循環ユニットの前記推定合計消費電力ΣW2との合計を最小にするように、
前記循環ポンプと前記インバータと、
前記第2の循環ポンプと前記第2のインバータと前記冷凍機を制御する請求項7乃至12の何れか一項の請求項に記載された冷却システム。
【請求項14】
高温の溶剤含有空気を発生する溶剤発生源と、
前記溶剤含有空気を冷却し前記溶剤含有空気中の溶剤を結露し回収する第1のガス冷却器と、
前記第1のガス冷却器を通過した前記溶剤含有空気をさらに冷却し前記溶剤含有空気中の溶剤を結露させ回収する第2のガス冷却器と、
前記第2のガス冷却器を通過した前記溶剤含有空気からミスト成分を回収するデミスタと、
前記デミスタを通過した前記溶剤含有空気から溶剤を除去し、再生空気を排出する吸脱着ロータと、
前記第1のガス冷却器と前記第2のガス冷却器と前記デミスタから回収される前記溶剤含有空気中の溶剤を回収するドレインパイプを有し、
前記第1のガス冷却器と前記第2のガス冷却器を請求項7乃至13の何れかの冷却システムにおける前記循環ユニットおよび前記第2の循環ユニットでそれぞれ冷却する溶剤回収システム。
【請求項15】
前記吸脱着ロータから排出された再生空気を
前記溶剤発生源から発生した前記溶剤含有空気との間で熱交換を行う熱交換器をさらに有する請求項14に記載された溶剤回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−2802(P2013−2802A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138055(P2011−138055)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】