冷却装置
【課題】エンジンコンパートメント内の過密化を解消し、かつ、バッテリ付近の設置自由度も大幅に縮小することがない、電力変換装置の冷却装置を提供する。
【解決手段】高圧バッテリ10内に冷却風CAを導入するための送風ダクト31の一部分を、放熱ダクト41で中継する。そして、その放熱ダクト41にDC/DCコンバータ40を取り付ける。DC/DCコンバータ40は、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAによって冷却される。このため、DC/DCコンバータ40をエンジンコンパートメント90の外部に設置することができ、エンジンコンパートメント90の過密化を低減することができる。また、送風ダクト31の基本的構造を変更する必要がないため、高圧バッテリ10付近の設置自由度を大幅に縮小することはない。
【解決手段】高圧バッテリ10内に冷却風CAを導入するための送風ダクト31の一部分を、放熱ダクト41で中継する。そして、その放熱ダクト41にDC/DCコンバータ40を取り付ける。DC/DCコンバータ40は、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAによって冷却される。このため、DC/DCコンバータ40をエンジンコンパートメント90の外部に設置することができ、エンジンコンパートメント90の過密化を低減することができる。また、送風ダクト31の基本的構造を変更する必要がないため、高圧バッテリ10付近の設置自由度を大幅に縮小することはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられる電力変換装置の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーなど、モータを車両の走行に用いる電動自動車は、モータを駆動するための高圧バッテリと、ランプやオーディオ等を駆動するための補機バッテリとを備えている。図4は、従来の電動自動車100における高圧バッテリ110や補機バッテリ120等の構成を示した図である。
【0003】
高圧バッテリ110は、たとえばリアシートの下部などに設置されている。高圧バッテリ110は、充放電に伴って熱を帯びるため、これを冷却するための空冷機構130を備えている。空冷機構130は、送風ダクト131とファン132とを有し、ファン132を動作させることによって、送風ダクト131を通って高圧バッテリ10内へ冷却風CAを導入する構成となっている。
【0004】
一方、補機バッテリ120は、電力変換装置であるDC/DCコンバータ140を介して高圧バッテリ110と接続されている。DC/DCコンバータ140は、高圧バッテリ110から供給される電力を低電圧に変換して補機バッテリ120に与え、補機バッテリ120を充電する。
【0005】
DC/DCコンバータ140は、スイッチング素子、トランス、整流ダイオード、平滑コイル等の部品を有し、これらの部品から熱量を損失する。このため、DC/DCコンバータ140は、電動自動車100のエンジンコンパートメント190内に収容され、エンジンコンパートメント190内のインバータ150と共通の水冷機構160によって冷却される構成となっていた。
【0006】
DC/DCコンバータをエンジンコンパートメント内に配置した構成については、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−114775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年においては、エンジンコンパートメント190内の過密化が問題となっている。そこで、DC/DCコンバータ140の熱量の損失を低減させることによって水冷を不要とし、DC/DCコンバータ140を高圧バッテリ110付近へ移設することが検討されている。
【0009】
しかしながら、DC/DCコンバータ140を高圧バッテリ110付近へ移設すると、DC/DCコンバータ140を空冷するための空冷機構も高圧バッテリ110付近に設ける必要があり、高圧バッテリ110付近の設置自由度が大幅に縮小してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、エンジンコンパートメント内の過密化を低減し、かつ、バッテリ付近の設置自由度も大幅に縮小することがない、電力変換装置の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、自動車に設けられた電圧の異なる少なくとも2つのバッテリの一方から他方へ充電を行うために、前記2つのバッテリの間で電圧の変換を行う電力変換装置の冷却装置であって、前記一方のバッテリへ冷却風を送るための送風ダクトの一部分を中継する放熱ダクトを備え、前記放熱ダクト内を流れる冷却風によって前記電力変換装置を冷却することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、金属により構成されており、前記電力変換装置は、前記放熱ダクトの外周面上に設置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、前記電力変換装置を構成する部品は、前記放熱ダクトの内部流路に露出されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、前記放熱ダクトを構成する樹脂の内部に、前記電力変換装置の電気配線が埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載の発明によれば、バッテリ用の送風ダクトの一部分を放熱ダクトによって中継し、電力変換装置を、バッテリと共通の冷却風によって冷却する。したがって、電力変換装置をエンジンコンパートメントの外部に設置することができ、エンジンコンパートメント内の過密化を低減することができる。また、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを設けるため、送風ダクトの基本的構造を変更することなく電力変換装置用の冷却装置を配置することができる。このため、バッテリ付近の設置自由度を大幅に縮小することがない。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、熱伝導率の高い金属を材料として放熱ダクトを構成している。このため、放熱ダクトの外周面に電力変換装置を取り付けることによって、容易に優れた放熱効果を得ることができる。
【0017】
特に、請求項3に記載の発明によれば、成型容易な樹脂を材料として放熱ダクトを構成している。このため、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを容易に接続することができる。また、発熱源となる部品に直接的に冷却風を当てるため、電力変換装置を効率よく冷却することができる。
【0018】
特に、請求項4に記載の発明によれば、成型容易な樹脂を材料として放熱ダクトを構成している。このため、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを容易に接続することができる。また、放熱ダクトを構成する樹脂の内部に電気配線を埋め込むため、配線を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<1.電力系の構成について>
図1は、本発明に係る冷却装置70を備えた電動自動車1の電力系の構成を示したブロック図である。この電動自動車1は、高圧バッテリ10、補機バッテリ20、DC/DCコンバータ40等を備えている。
【0020】
高圧バッテリ10は、走行用のモータを駆動するための電源となる。高圧バッテリ10は充電可能な2次電池により構成されており、例えば200Vのニッケル水素電池やリチウムイオン電池が用いられる。高圧バッテリ10は、リアシートの下部などに設置される。すなわち、高圧バッテリ10は、エンジンコンパートメント90の外部に設置される。
【0021】
高圧バッテリ10は、充放電に伴って熱を帯びるため、空冷機構30を備えている。空冷機構30は、送風ダクト31とファン32とを有し、ファン32を動作させることによって、送風ダクト31を通って高圧バッテリ10内へ冷却風CAを導入する構成となっている。高圧バッテリ10内へ導入された冷却風CAは、高圧バッテリ10内に設けられたバッテリモジュールの隙間を流れ、高圧バッテリ10を冷却する。送風ダクト31には、樹脂製またはゴム製の配管が用いられる。また、ファン32には、シロッコファン等の電動ファンが用いられる。
【0022】
補機バッテリ20は、ランプやオーディオ等を駆動するための電源となる。補機バッテリ20は、高圧バッテリ10よりも電圧の低い電源であり、例えば14Vの鉛蓄電池が用いられる。補機バッテリ20は、トランクルームの脇などに設置される。すなわち、補機バッテリ20も、エンジンコンパートメント90の外部に設置される。
【0023】
補機バッテリ20は、電力変換装置であるDC/DCコンバータ40を介して高圧バッテリ10と電気的に接続されている。DC/DCコンバータ40は、高圧バッテリ10から供給される電力を、補機バッテリ20の電圧に変換し、補機バッテリ20を充電する。具体的には、高圧バッテリ10から供給される直流電流を、DC/DCコンバータ40内のトランジスタブリッジ回路で一旦交流に変換する。そして、DC/DCコンバータ40内のトランスで電圧を低下させた後、整流・直流化して、補機バッテリ20へ供給する。
【0024】
この電動自動車1においては、高圧バッテリ10からの直流電流をモータ駆動用の交流電流に変換するためのインバータ50と、インバータ50を冷却するための水冷機構60とは、エンジンコンパートメント90の内部に配置される。しかしながら、DC/DCコンバータ40は、エンジンコンパートメント90の外部に配置され、高圧バッテリ10の送風ダクト31に取り付けられる。
【0025】
DC/DCコンバータ40は、送風ダクト31に直接または所定の部材を介して取り付けられる。そして、送風ダクト31を流れる冷却風CAによって、DC/DCコンバータ40が冷却される。すなわち、送風ダクト31の一部分に、DC/DCコンバータ40を冷却するための冷却装置70が構成されている。以下には、このDC/DCコンバータ40の冷却装置70について、説明する。
【0026】
<2.DC/DCコンバータ40の冷却装置70について>
図2は、DC/DCコンバータ40の冷却装置70の概略を示した斜視図である。冷却装置70は、送風ダクト31の一部分に介挿された放熱ダクト41により構成されている。そして、DC/DCコンバータ40は、この放熱ダクト41の外周面に取り付けられている。なお、図2では、DC/DCコンバータ40は2つに分割されて放熱ダクト41に取り付けられている。
【0027】
放熱ダクト41内には、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAが、高圧バッテリ10と共通のファン32(図1参照)によって流される。そして、放熱ダクト41は、DC/DCコンバータ40において発生した熱を、放熱ダクト41内を流れる冷却風CAへ向けて放熱させることができる。このように、放熱ダクト41は、送風ダクト31の冷却風CAの流れを中継する役割と、DC/DCコンバータ40から発生する熱を放熱させる役割とを果たしている。
【0028】
放熱ダクト41は、たとえば、アルミニウム等の金属を材料として構成することができる。金属を材料とすれば、熱伝導率が高いため、優れた放熱効果を得ることができる。このため、放熱ダクト41の外周にDC/DCコンバータ40を取り付けることによって、十分に冷却を行うことができる。一方、放熱ダクト41は、樹脂を材料として構成してもよい。樹脂を材料とすれば、成型や送風ダクト31への接続を容易に行うことができる。
【0029】
より効率のよい放熱効果を得るために、冷却装置70を図3のように構成してもよい。図3は、放熱ダクト41を冷却風CAの流れと平行な平面で切断した断面図である。図3の冷却装置70では、DC/DCコンバータ40のスイッチング素子、トランス、整流ダイオード、平滑コイル等の部品42を、放熱ダクト41の部材に直接埋め込んで保持している。そして、これらの部品42を、放熱ダクト41の内部流路41aに露出させている。このようにすれば、発熱源となる部品42に直接冷却風CAが当たるため、これらの部品42を効率よく冷却することができる。
【0030】
特に、放熱ダクト41を樹脂により構成する場合には、金属を材料とした場合と比較して熱伝導率は低くなるが、図3のような構成をとれば、放熱効果を向上させることができる。樹脂材料には、気密性を保持したまま部品42を容易に埋め込むことができる。部品42の間を接続する電気配線は、放熱ダクト41の外側や内側を通してもよいし、図3に示した電気配線43のように、放熱ダクト41を構成する樹脂の内部に埋め込んでもよい。
【0031】
以上のように、この電動自動車1においては、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAによって、DC/DCコンバータ40を冷却している。このため、DC/DCコンバータ40をエンジンコンパートメント90の外部に設置することができ、エンジンコンパートメント90の過密化を低減することができる。また、DC/DCコンバータ40に独自の冷却媒体を与える必要がないため、高圧バッテリ10付近の設置自由度を大幅に縮小することもない。
【0032】
特に、この電動自動車1においては、送風ダクト31の基本的構造を変更することなく、その一部分にDC/DCコンバータ40の冷却装置70を介挿している。このため、高圧バッテリ10付近の設置自由度をさらに向上させることができる。
【0033】
<3.その他>
ファン32は、所定のコンピュータからの電気信号に基づいて動作させることができる。特に、DC/DCコンバータ40の動作状況(動作時間や実測温度など)に基づいてファン32の回転数を制御すれば、効率よくDC/DCコンバータ40を冷却することができる。
【0034】
上記の例では、冷却装置70を、ファン32と高圧バッテリ10との間の位置P1に配置していた。しかしながら、図1に仮想線で示したように、冷却装置70は、ファン32よりも上流側の位置P2に配置してもよいし、高圧バッテリ10よりも下流側の位置P3に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の冷却装置を備えた電動自動車の電力系の構成を示したブロック図である。
【図2】DC/DCコンバータの冷却装置の概略を示した斜視図である。
【図3】放熱ダクトを冷却風の流れと平行な平面で切断した断面図である。
【図4】従来の電動自動車の電力系の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電動自動車
10 高圧バッテリ
20 補機バッテリ
30 空冷機構
31 送風ダクト
32 ファン
40 コンバータ
41 放熱ダクト
43 電気配線
50 インバータ
60 水冷機構
70 冷却装置
90 エンジンコンパートメント
CA 冷却風
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられる電力変換装置の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーなど、モータを車両の走行に用いる電動自動車は、モータを駆動するための高圧バッテリと、ランプやオーディオ等を駆動するための補機バッテリとを備えている。図4は、従来の電動自動車100における高圧バッテリ110や補機バッテリ120等の構成を示した図である。
【0003】
高圧バッテリ110は、たとえばリアシートの下部などに設置されている。高圧バッテリ110は、充放電に伴って熱を帯びるため、これを冷却するための空冷機構130を備えている。空冷機構130は、送風ダクト131とファン132とを有し、ファン132を動作させることによって、送風ダクト131を通って高圧バッテリ10内へ冷却風CAを導入する構成となっている。
【0004】
一方、補機バッテリ120は、電力変換装置であるDC/DCコンバータ140を介して高圧バッテリ110と接続されている。DC/DCコンバータ140は、高圧バッテリ110から供給される電力を低電圧に変換して補機バッテリ120に与え、補機バッテリ120を充電する。
【0005】
DC/DCコンバータ140は、スイッチング素子、トランス、整流ダイオード、平滑コイル等の部品を有し、これらの部品から熱量を損失する。このため、DC/DCコンバータ140は、電動自動車100のエンジンコンパートメント190内に収容され、エンジンコンパートメント190内のインバータ150と共通の水冷機構160によって冷却される構成となっていた。
【0006】
DC/DCコンバータをエンジンコンパートメント内に配置した構成については、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−114775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年においては、エンジンコンパートメント190内の過密化が問題となっている。そこで、DC/DCコンバータ140の熱量の損失を低減させることによって水冷を不要とし、DC/DCコンバータ140を高圧バッテリ110付近へ移設することが検討されている。
【0009】
しかしながら、DC/DCコンバータ140を高圧バッテリ110付近へ移設すると、DC/DCコンバータ140を空冷するための空冷機構も高圧バッテリ110付近に設ける必要があり、高圧バッテリ110付近の設置自由度が大幅に縮小してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、エンジンコンパートメント内の過密化を低減し、かつ、バッテリ付近の設置自由度も大幅に縮小することがない、電力変換装置の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、自動車に設けられた電圧の異なる少なくとも2つのバッテリの一方から他方へ充電を行うために、前記2つのバッテリの間で電圧の変換を行う電力変換装置の冷却装置であって、前記一方のバッテリへ冷却風を送るための送風ダクトの一部分を中継する放熱ダクトを備え、前記放熱ダクト内を流れる冷却風によって前記電力変換装置を冷却することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、金属により構成されており、前記電力変換装置は、前記放熱ダクトの外周面上に設置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、前記電力変換装置を構成する部品は、前記放熱ダクトの内部流路に露出されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の冷却装置であって、前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、前記放熱ダクトを構成する樹脂の内部に、前記電力変換装置の電気配線が埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載の発明によれば、バッテリ用の送風ダクトの一部分を放熱ダクトによって中継し、電力変換装置を、バッテリと共通の冷却風によって冷却する。したがって、電力変換装置をエンジンコンパートメントの外部に設置することができ、エンジンコンパートメント内の過密化を低減することができる。また、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを設けるため、送風ダクトの基本的構造を変更することなく電力変換装置用の冷却装置を配置することができる。このため、バッテリ付近の設置自由度を大幅に縮小することがない。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、熱伝導率の高い金属を材料として放熱ダクトを構成している。このため、放熱ダクトの外周面に電力変換装置を取り付けることによって、容易に優れた放熱効果を得ることができる。
【0017】
特に、請求項3に記載の発明によれば、成型容易な樹脂を材料として放熱ダクトを構成している。このため、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを容易に接続することができる。また、発熱源となる部品に直接的に冷却風を当てるため、電力変換装置を効率よく冷却することができる。
【0018】
特に、請求項4に記載の発明によれば、成型容易な樹脂を材料として放熱ダクトを構成している。このため、送風ダクトの一部分に放熱ダクトを容易に接続することができる。また、放熱ダクトを構成する樹脂の内部に電気配線を埋め込むため、配線を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<1.電力系の構成について>
図1は、本発明に係る冷却装置70を備えた電動自動車1の電力系の構成を示したブロック図である。この電動自動車1は、高圧バッテリ10、補機バッテリ20、DC/DCコンバータ40等を備えている。
【0020】
高圧バッテリ10は、走行用のモータを駆動するための電源となる。高圧バッテリ10は充電可能な2次電池により構成されており、例えば200Vのニッケル水素電池やリチウムイオン電池が用いられる。高圧バッテリ10は、リアシートの下部などに設置される。すなわち、高圧バッテリ10は、エンジンコンパートメント90の外部に設置される。
【0021】
高圧バッテリ10は、充放電に伴って熱を帯びるため、空冷機構30を備えている。空冷機構30は、送風ダクト31とファン32とを有し、ファン32を動作させることによって、送風ダクト31を通って高圧バッテリ10内へ冷却風CAを導入する構成となっている。高圧バッテリ10内へ導入された冷却風CAは、高圧バッテリ10内に設けられたバッテリモジュールの隙間を流れ、高圧バッテリ10を冷却する。送風ダクト31には、樹脂製またはゴム製の配管が用いられる。また、ファン32には、シロッコファン等の電動ファンが用いられる。
【0022】
補機バッテリ20は、ランプやオーディオ等を駆動するための電源となる。補機バッテリ20は、高圧バッテリ10よりも電圧の低い電源であり、例えば14Vの鉛蓄電池が用いられる。補機バッテリ20は、トランクルームの脇などに設置される。すなわち、補機バッテリ20も、エンジンコンパートメント90の外部に設置される。
【0023】
補機バッテリ20は、電力変換装置であるDC/DCコンバータ40を介して高圧バッテリ10と電気的に接続されている。DC/DCコンバータ40は、高圧バッテリ10から供給される電力を、補機バッテリ20の電圧に変換し、補機バッテリ20を充電する。具体的には、高圧バッテリ10から供給される直流電流を、DC/DCコンバータ40内のトランジスタブリッジ回路で一旦交流に変換する。そして、DC/DCコンバータ40内のトランスで電圧を低下させた後、整流・直流化して、補機バッテリ20へ供給する。
【0024】
この電動自動車1においては、高圧バッテリ10からの直流電流をモータ駆動用の交流電流に変換するためのインバータ50と、インバータ50を冷却するための水冷機構60とは、エンジンコンパートメント90の内部に配置される。しかしながら、DC/DCコンバータ40は、エンジンコンパートメント90の外部に配置され、高圧バッテリ10の送風ダクト31に取り付けられる。
【0025】
DC/DCコンバータ40は、送風ダクト31に直接または所定の部材を介して取り付けられる。そして、送風ダクト31を流れる冷却風CAによって、DC/DCコンバータ40が冷却される。すなわち、送風ダクト31の一部分に、DC/DCコンバータ40を冷却するための冷却装置70が構成されている。以下には、このDC/DCコンバータ40の冷却装置70について、説明する。
【0026】
<2.DC/DCコンバータ40の冷却装置70について>
図2は、DC/DCコンバータ40の冷却装置70の概略を示した斜視図である。冷却装置70は、送風ダクト31の一部分に介挿された放熱ダクト41により構成されている。そして、DC/DCコンバータ40は、この放熱ダクト41の外周面に取り付けられている。なお、図2では、DC/DCコンバータ40は2つに分割されて放熱ダクト41に取り付けられている。
【0027】
放熱ダクト41内には、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAが、高圧バッテリ10と共通のファン32(図1参照)によって流される。そして、放熱ダクト41は、DC/DCコンバータ40において発生した熱を、放熱ダクト41内を流れる冷却風CAへ向けて放熱させることができる。このように、放熱ダクト41は、送風ダクト31の冷却風CAの流れを中継する役割と、DC/DCコンバータ40から発生する熱を放熱させる役割とを果たしている。
【0028】
放熱ダクト41は、たとえば、アルミニウム等の金属を材料として構成することができる。金属を材料とすれば、熱伝導率が高いため、優れた放熱効果を得ることができる。このため、放熱ダクト41の外周にDC/DCコンバータ40を取り付けることによって、十分に冷却を行うことができる。一方、放熱ダクト41は、樹脂を材料として構成してもよい。樹脂を材料とすれば、成型や送風ダクト31への接続を容易に行うことができる。
【0029】
より効率のよい放熱効果を得るために、冷却装置70を図3のように構成してもよい。図3は、放熱ダクト41を冷却風CAの流れと平行な平面で切断した断面図である。図3の冷却装置70では、DC/DCコンバータ40のスイッチング素子、トランス、整流ダイオード、平滑コイル等の部品42を、放熱ダクト41の部材に直接埋め込んで保持している。そして、これらの部品42を、放熱ダクト41の内部流路41aに露出させている。このようにすれば、発熱源となる部品42に直接冷却風CAが当たるため、これらの部品42を効率よく冷却することができる。
【0030】
特に、放熱ダクト41を樹脂により構成する場合には、金属を材料とした場合と比較して熱伝導率は低くなるが、図3のような構成をとれば、放熱効果を向上させることができる。樹脂材料には、気密性を保持したまま部品42を容易に埋め込むことができる。部品42の間を接続する電気配線は、放熱ダクト41の外側や内側を通してもよいし、図3に示した電気配線43のように、放熱ダクト41を構成する樹脂の内部に埋め込んでもよい。
【0031】
以上のように、この電動自動車1においては、高圧バッテリ10と共通の冷却媒体である冷却風CAによって、DC/DCコンバータ40を冷却している。このため、DC/DCコンバータ40をエンジンコンパートメント90の外部に設置することができ、エンジンコンパートメント90の過密化を低減することができる。また、DC/DCコンバータ40に独自の冷却媒体を与える必要がないため、高圧バッテリ10付近の設置自由度を大幅に縮小することもない。
【0032】
特に、この電動自動車1においては、送風ダクト31の基本的構造を変更することなく、その一部分にDC/DCコンバータ40の冷却装置70を介挿している。このため、高圧バッテリ10付近の設置自由度をさらに向上させることができる。
【0033】
<3.その他>
ファン32は、所定のコンピュータからの電気信号に基づいて動作させることができる。特に、DC/DCコンバータ40の動作状況(動作時間や実測温度など)に基づいてファン32の回転数を制御すれば、効率よくDC/DCコンバータ40を冷却することができる。
【0034】
上記の例では、冷却装置70を、ファン32と高圧バッテリ10との間の位置P1に配置していた。しかしながら、図1に仮想線で示したように、冷却装置70は、ファン32よりも上流側の位置P2に配置してもよいし、高圧バッテリ10よりも下流側の位置P3に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の冷却装置を備えた電動自動車の電力系の構成を示したブロック図である。
【図2】DC/DCコンバータの冷却装置の概略を示した斜視図である。
【図3】放熱ダクトを冷却風の流れと平行な平面で切断した断面図である。
【図4】従来の電動自動車の電力系の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電動自動車
10 高圧バッテリ
20 補機バッテリ
30 空冷機構
31 送風ダクト
32 ファン
40 コンバータ
41 放熱ダクト
43 電気配線
50 インバータ
60 水冷機構
70 冷却装置
90 エンジンコンパートメント
CA 冷却風
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に設けられた電圧の異なる少なくとも2つのバッテリの一方から他方へ充電を行うために、前記2つのバッテリの間で電圧の変換を行う電力変換装置の冷却装置であって、
前記一方のバッテリへ冷却風を送るための送風ダクトの一部分を中継する放熱ダクトを備え、前記放熱ダクト内を流れる冷却風によって前記電力変換装置を冷却することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、金属により構成されており、
前記電力変換装置は、前記放熱ダクトの外周面上に設置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、
前記電力変換装置を構成する部品は、前記放熱ダクトの内部流路に露出されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、
前記放熱ダクトを構成する樹脂の内部に、前記電力変換装置の電気配線が埋め込まれていることを特徴とする冷却装置。
【請求項1】
自動車に設けられた電圧の異なる少なくとも2つのバッテリの一方から他方へ充電を行うために、前記2つのバッテリの間で電圧の変換を行う電力変換装置の冷却装置であって、
前記一方のバッテリへ冷却風を送るための送風ダクトの一部分を中継する放熱ダクトを備え、前記放熱ダクト内を流れる冷却風によって前記電力変換装置を冷却することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、金属により構成されており、
前記電力変換装置は、前記放熱ダクトの外周面上に設置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、
前記電力変換装置を構成する部品は、前記放熱ダクトの内部流路に露出されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記放熱ダクトは、樹脂により構成されており、
前記放熱ダクトを構成する樹脂の内部に、前記電力変換装置の電気配線が埋め込まれていることを特徴とする冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−282129(P2006−282129A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108435(P2005−108435)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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