説明

冷却装置

【課題】冷却通路を流れる冷却風全体が発熱体との熱交換を行うことにより、この発熱体の冷却効率を向上させる。
【解決手段】発熱体(電池20)を定位置に支持するためのプレート部材10が複数個のリブ12を備え、これらの各リブは所定の間隔で、かつ、個々に連続して成形されており、各リブを発熱体に接合させることによって各リブの間に発熱体に接した状態の冷却通路14がそれぞれ構成され、これらの冷却通路に冷却風を流すことによって発熱体を冷却する形式の冷却装置であって、各冷却通路14の底面が、冷却風の流れる方向に沿って凹凸を繰り返す形状に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車における集合電池といった発熱体を空気冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却装置に関しては、特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、集合電池における電池モジュールの壁面に、複数個のリブが所定の間隔で、かつ、個々に連続して成形され、各リブの間が冷却通路になっている。これらの冷却通路に冷却風を流すことにより、集合電池が冷却される。
【特許文献1】特開2003−249202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術では、各冷却通路を流れる冷却風が整流であるため、発熱体である集合電池に直接的あるいは間接的に接して流れる部分の空気は熱交換が行われるものの、冷却通路の中央を流れる空気は熱を受けることなく、そのまま排気される。つまり、各冷却通路を流れる冷却風全体を有効に利用しているとは言えず、その分、集合電池の冷却効率がわるい。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、冷却通路を流れる冷却風全体が発熱体との熱交換を行うことにより、この発熱体の冷却効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、発熱体を定位置に支持するためのプレート部材が複数個のリブを備え、これらの各リブは所定の間隔で、かつ、個々に連続して成形されており、各リブを発熱体に接合させることによって各リブの間に発熱体に接した状態の冷却通路がそれぞれ構成され、これらの冷却通路に冷却風を流すことによって発熱体を冷却する形式の冷却装置であって、各冷却通路の底面が、冷却風の流れる方向に沿って凹凸を繰り返す形状に構成されている。
【0006】
この構成によれば、各冷却通路における底面の凹凸形状により、これらの冷却通路を流れる冷却風に乱流が生じて冷却風全体が発熱体との熱交換を行うこととなる。このため、整流の冷却風のように流れの中央部では殆ど熱交換が行われないのと異なり、発熱体の冷却効率が向上する。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、プレート部材が各リブと共に合成樹脂による一体成形品であり、各冷却通路の底面を構成するプレート部材に対し、冷却風の流れる方向に沿って複数個の凹部が間欠的に形成されている。
これにより、プレート部材において凹部の箇所の板厚が基準板厚よりも小さくなり、樹脂成形時に各リブが原因となってプレート部材に生じるヒケを抑えることができる。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、プレート部材の各凹部が、冷却通路の幅方向に関する複数箇所において形成されている。
これにより、プレート部材において基準板厚よりも小さい領域が増えるので、プレート部材に生じるヒケをより効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
まず、本発明における実施の形態1を図1〜図5によって説明する。
図1は、電気自動車における集合電池パック内の一部を表した断面図である。図2は、集合電池パック内の部材を表した斜視図である。図3は、図1のA−A矢視方向の断面図である。これらの図面で示すように集合電池パック内には、発熱体である複数個の電池(セル)20が合成樹脂製のプレート部材10によって定位置に支持され、これらがアッパーカバー30およびロアカバー32によって覆われている。プレート部材10には、電池20と接する側の面には、複数個のリブ12が一体に成形されている。これらのリブ12は、所定の間隔をもって相互に平行に、かつ、個々に連続して形成されている。
【0010】
各リブ12は電池20の一つの面に接合しており、これによって各リブ12の間には電池20に接した状態の冷却通路14がそれぞれ構成されている。これらの各冷却通路14は、アッパーカバー30側の吸気ダクト34とロアカバー32側の排気ダクト36とにわたって連通している。吸気ダクト34には冷却風が供給され、この冷却風が各冷却通路14の中を排気ダクト36に向かって流れる。
【0011】
図4は、図3の一部を拡大して表した断面図である。図5は、図1のB−B矢視方向の一部を拡大して表した断面図である。これらの図面からも明らかなように、各冷却通路14において個々の底面を構成するプレート部材10には、冷却風の流れる方向に沿って複数個の凹部16が間欠的に形成されている。また、これらの凹部16は各冷却通路14の両側に位置するリブ12の根本近くに位置し、各冷却通路14においてそれぞれ二列ずつ配列されている。つまり、各凹部16は冷却通路14の幅方向に関する複数箇所(二箇所)に形成されている。そして、各凹部16は、プレート部材10の肉厚を部分的にえぐり取った格好のいわゆる「肉盗み」によって形成されている。したがって、図4で示すようにプレート部材10の基準板厚T1に対して各凹部16の箇所の板厚T2が小さくなる。
【0012】
一般にプレート部材10の各リブ12の部分では、他の部分と比較して成形後の冷却速度が遅いためにプレート部材10の表面にヒケが生じやすい。ただし、リブ12の高さHがプレート部材10における基準板厚T1の2/5〜1/2以下であれば、ヒケが抑えられるとされている。本実施の形態では、リブ12の高さHが例え基準板厚T1の1/2以上であっても各凹部16の箇所の板厚T2が小さくなることで、ヒケが抑えられる。しかも、各凹部16は冷却通路14の幅方向に関する複数箇所に形成されていることから、プレート部材10の基準板厚T1よりも小さい領域が増え、このプレート部材10に生じるヒケをより効果的に抑えることができる。
【0013】
以上の構成において、集合電池パック内の吸気ダクト34から排気ダクト36に向けて各冷却通路14内を冷却風が流れることにより、これらの冷却通路14に接している電池20が冷却される。そして、各冷却通路14の底面は、各凹部16により、冷却風の流れる方向に沿って凹凸を繰り返す形状になっている。このため、各冷却通路14を流れる冷却風に乱流が生じ、冷却風全体が電池20との熱交換を行うこととなる。つまり、各冷却通路14の中央部を流れる冷却風も乱流によって電池20からの熱を受けることとなり、冷却効率が大幅に向上する。
【0014】
実施の形態2
つづいて、本発明における実施の形態2を図6によって説明する。
図6は、実施の形態2の冷却構造を図5と対応させて表した断面図である。この図面で示すように、冷却通路14の底面を構成するプレート部材10には、冷却風の流れる方向に沿って複数個の凸部116が間欠的に形成されている。これらの凸部116により、冷却通路14の底面は冷却風の流れる方向に沿って凹凸を繰り返す形状になっている。このため、実施の形態1と同様に冷却通路14を流れる冷却風に乱流が生じ、冷却風全体が電池20との熱交換を行うこととなり、電池20の冷却効率が向上する。
なお、実施の形態2において、各凸部116の間に凹部を形成すれば、冷却通路14を流れる冷却風の乱流をより効果的に生じさせることができるとともに、凹部の箇所の板厚がプレート部材10の前述した基準板厚T1よりも小さくなってプレート部材10のヒケが抑えられる。
【0015】
実施の形態3
つぎに、本発明における実施の形態3を図7によって説明する。
図7は、実施の形態3の冷却構造を図4と対応させて表した断面図である。この図面で示すように、冷却通路14の底面を構成するプレート部材10には、冷却風の流れる方向に沿って連続する溝216が、冷却通路14の幅方向に関する複数箇所(五箇所)に形成されている。これにより、プレート部材10の基準板厚T1に対して各溝216の箇所の板厚T2が小さくなる。そして、各溝216は冷却通路14に沿って連続していることから、プレート部材10の基準板厚T1よりも小さい領域が一段と増大され、このプレート部材10に生じるヒケが効果的に抑えられる。
また、実施の形態3において各溝216を適当な間隔で分断すれば、冷却通路14を流れる冷却風に乱流を起こさせることができ、電池20の冷却効率を高めることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における集合電池パック内の一部を表した断面図
【図2】実施の形態1における集合電池パック内の部材を表した斜視図
【図3】図1のA−A矢視方向の断
【図4】図3の一部を拡大して表した断面図
【図5】図1のB−B矢視方向の一部を拡大して表した断面図
【図6】実施の形態2の冷却構造を図5と対応させて表した断面図
【図7】実施の形態3の冷却構造を図4と対応させて表した断面図
【符号の説明】
【0017】
10 プレート部材
12 リブ
14 冷却通路
20 電池(発熱体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を定位置に支持するためのプレート部材が複数個のリブを備え、これらの各リブは所定の間隔で、かつ、個々に連続して成形されており、各リブを発熱体に接合させることによって各リブの間に発熱体に接した状態の冷却通路がそれぞれ構成され、これらの冷却通路に冷却風を流すことによって発熱体を冷却する形式の冷却装置であって、
各冷却通路の底面が、冷却風の流れる方向に沿って凹凸を繰り返す形状に構成されている冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載された冷却装置であって、
プレート部材が各リブと共に合成樹脂による一体成形品であり、各冷却通路の底面を構成するプレート部材に対し、冷却風の流れる方向に沿って複数個の凹部が間欠的に形成されている冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載された冷却装置であって、
プレート部材の各凹部が、冷却通路の幅方向に関する複数箇所において形成されている冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−16285(P2009−16285A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179255(P2007−179255)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(504305359)ハマプロト株式会社 (6)
【Fターム(参考)】