説明

冷却装置

【課題】基板を回転させながら効率よく冷却することができる技術の実現。
【解決手段】スパッタリング装置100の真空容器101内部の基板を冷却するための冷却装置であって、前記基板Wを冷却する基板冷却台104と、前記基板冷却台を冷却する冷却機構102と、前記基板冷却台に冷却ガスを導入する冷却ガス供給部110,111と、前記基板を前記基板冷却台から所定の間隙だけ離間させた状態で保持し、当該基板を保持した状態で回転駆動される基板回転機構105と、前記基板回転機構を所定の回転数で回転駆動する駆動機構106と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置は、更なる記録密度向上が要求されており、記録媒体に記録された磁気信号を電気信号に変換する磁気記録再生ヘッドにおいても高性能化が要求されている。磁気記録再生ヘッドに関する技術課題のうち高感度化技術向上を例に挙げると、MR比が非常に高いトンネル磁気抵抗効果(TMR)を使用したセンサが有力であり、開発が進められている。
【0003】
例えば、文献;アプライドフィジークスレター86巻,デビッド他(APPLIED PHYSICS LETTERS 86, 092502(2005) David他)によれば、磁気トンネル結合(MTJ)を形成させるにあたり、FeCoBを室温で成膜することでアモルファス膜を形成させ、この上にMgO膜を形成させる。このMgO膜上にFeCoBアモルファス膜を形成させ、このFeCoB/MgO/FeCoB積層体を360℃で2時間熱処理することで230%の磁気抵抗変化を示すTMR膜ができると述べている。これは、FeCoBの室温成膜によりアモルファス膜が形成され、このアモルファスFeCoB上にMgOを成膜することでMgO(001)が得られる。FeCoBでMgOをサンドイッチ状にした積層体を熱処理したことで、MgOをテンプレートとしてFeCoBのうちFeCoが結晶化したからである。
【0004】
一方、上記文献では比較例としてCoFeBの代わりにFeCo/MgO/FeCoなるMTJを形成させ結晶構造を解析している。この結果では、室温CoFe成膜によりCoFeがアモルファス構造にならず、上部に成膜されたMgOは(001)結晶面を持たないことが述べられている。
【0005】
また、基板を低温(例えばマイナス領域)で成膜することでアモルファス膜形成の可能性を期待できる。これは、スパッタ粒子が基板へ付着したのと同時に低温基板によりエネルギーを失い、粒子の表面移動が抑えられるからである。すなわち、基板を低温に保ったままFeCoをスパッタリング成膜(もしくは蒸着)することでアモルファス膜を形成しMTJを形成すれば、FeCoB/MgO/FeCoB積層体と同様の特性を得ることが可能になる。
【0006】
上述したことから、基板を低温に保持したスパッタリング装置が望まれている。低温領域におけるスパッタリング処理を実現するには、基板保持台(基板ステージ)を低温制御できることが必要である。基板ステージを低温制御するには、冷凍機をステージ下部に直付けすることで可能になる。
【0007】
他方、スパッタリング装置では基板ステージの中心軸とスパッタリングカソード(もしくはスパッタリングターゲット)の中心軸が一致した、いわゆる静止対向成膜方式と、基板ステージに対して複数のスパッタリングカソードが斜方に(もしくはカソード中心軸がオフセットされ)取り付けられたマルチカソード成膜方式などがある。特に後者のマルチカソード成膜方式は複数のターゲットによる同時スパッタや、斜め入射成膜による良好な膜厚分布が得られるため、広く使用されている。
【0008】
ここで、基板を極低温に保ったまま、マルチカソードにより成膜する場合を考える。マルチカソード成膜方式では、基板中心とターゲット中心がオフセットしているため、基板を回転させなければ良好な膜厚分布を得ることができない。
【0009】
特許文献1には、このような基板を回転させてスパッタリングを行う装置において、所定の温度に冷却された冷却水などが循環される冷却器を基板ステージに接続し、基板ステージと共に回転させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−156746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、基板ステージを100K以下のような極低温にするために、基板ステージにGM(Gifford−McMahon)サイクルを利用した冷凍機などの冷凍能力の高い冷凍機を直結した場合、基板ステージを回転することは困難を極める。例えばGMサイクル冷凍機にはコンプレッサとヘリウムホースが必要であり、これらも含めて回転させることは困難である。また、冷凍機と基板ステージを機械的に切り離し、基板ステージのみを回転させる方法が考えられるが、この場合、熱伝達においても両者は切り離されてしまい、ステージを冷却することが困難になる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、基板を回転させながら効率よく冷却することができる冷却技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の冷却装置は、スパッタリング装置の真空容器内部の基板を冷却するための冷却装置であって、前記基板を冷却する基板冷却台と、前記基板冷却台を冷却する冷却機構と、前記基板冷却台に冷却ガスを導入する冷却ガス供給部と、前記基板を前記基板冷却台から所定の間隙だけ離間させた状態で保持し、当該基板を保持した状態で回転駆動される基板回転機構と、前記基板回転機構を所定の回転数で回転駆動する駆動機構と、を有する。
【0014】
また、本発明のスパッタリング装置は、プロセスガスが供給される真空容器と、前記真空容器内部に配置され、上記冷却装置と、前記冷却装置に保持された基板に対向配置され、当該基板にスパッタリング処理を施すカソード電極部と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板を低温に冷却された基板冷却台に近接させながら基板を回転させることができるので、基板の回転と冷却が同時に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態1のスパッタリング装置の構成を例示する図である。
【図2】図1の基板保持台の詳細な構成を示す図である。
【図3】図1の基板保持台の詳細な構成を示す図である。
【図4】図1の基板冷却台に形成された冷却ガス通路の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る実施形態2のスパッタリング装置の構成を例示する図である。
【図6】実施形態2による基板の把持から搬出までの動作を例示する図である。
【図7】図5の基板冷却台の詳細な構成を示す図である。
【図8】本発明に係る実施形態3のスパッタリング装置の構成を例示する図である。
【図9】図8の基板保持台の詳細な構成を示す図である。
【図10】図9のIV−IV方向から見た図である。
【図11】図8の基板冷却台の詳細な構成を示す図である。
【図12】基板温度測定用の樹脂製ステージの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る実施形態1のスパッタリング装置の構成を例示する図である。なお、外部との基板Wの授受機構は図示を省略している。スパッタリング装置100は真空容器101内にスパッタリングカソード118、スパッタリングターゲット119、基板保持台103を備えている。
【0019】
真空容器101には、外部からプロセスガス供給ライン112が導入されており、ここからスパッタ成膜に必要なプロセスガスが供給される。また、真空容器101は、プロセスガス供給ライン112から供給されるプロセスガスや、真空容器101から不純物ガスを排気するための排気機構113を備えている。
【0020】
スパッタリングカソード118は整合器117を介して高周波電源116ならびに直流電源115に接続されている。これにより、スパッタリングカソード118には高周波のみの電力供給、高周波+直流重畳による電力供給、及び直流電力のみの電力供給のいずれかが可能である。当然ながら、高周波放電が必要ないのであれば、整合器117と高周波電源116を省略して直流電源115のみによる電力供給としてもよい。
【0021】
基板保持台103は、基板冷却台104と基板回転台105を備え、基板冷却台104下部には冷凍機102が接続されている。冷凍機102は冷媒導入口102aから冷媒が導入される。冷凍機102は冷凍能力を考慮するとGM(Gifford−McMahon)サイクルを利用したタイプが好適である。また、基板保持台103には冷却ガス供給ライン110を介して冷却ガスが導入可能であり、基板冷却台104内部に設けられた冷却ガス通路を通じて基板Wの対向面に冷却ガスが導入される。冷却ガスは熱伝導を考慮すればヘリウムや水素ガスが好適であるが、アルゴンやネオンなどの希ガスでもよい。更にはスパッタリング処理で使用するガスを用いてもよい。
【0022】
一方、冷却ガスは、基板Wを冷却した後に冷却ガス排出ライン111を通って真空容器101の外へ排気されるか、基板冷却台104と基板Wの隙間から真空容器101内に放出され、プロセスガスと混合される。冷却ガスはスパッタリング処理のプロセスガスと同じであれば好適であるが、ヘリウム等の熱伝導率の高い希ガスを用いてもよい。このときの冷却ガスの流量は、3sccm〜150sccmの間で設定することが好ましい。3sccmより少ない場合は、基板の冷却効率が低下してしまい、反対に150sccmより大きい場合は、基板Wと基板保持台103の間に発生した圧力により基板Wが浮上してしまうからである。但し、後述する実施形態2のように例えば基板Wを機械的に固定する場合は、150sccmより大きくすることもできる。
【0023】
ここで図2を参照して、図1の基板保持台103の詳細な構成について説明する。図2に示すように、基板冷却台104には、その中央部に貫通加工されたガス排出孔202と、座繰り加工された凹部203が設けられている。この凹部203の最外径よりも小さな外径を有する円盤状の基板回転台105に第1回転シャフト106aが固定され、傘歯車201を介して第2回転シャフト106bと連結されている。第2回転シャフト106bは不図示のモータなどの動力源に接続され、その駆動力を基板回転台105に伝達する。基板回転台105の基板保持面は、基板冷却台104の基板側の対向面よりもわずかに突出しており、基板回転台105に載置された基板Wが基板冷却台104に触れないように構成されている。このように構成することで、基板Wを基板冷却台104に近づけつつ基板Wを回転させることが可能になる。基板回転台105の突出量は、低すぎると回転時に基板冷却台104に接触する可能性があり、高すぎると基板Wから離れて冷却能力が低下してしまう。これらを考慮すると突出量は0.2mm〜1.5mm程度が好適である。なお、基板冷却台104の基板側の対向面を、放射率の高い材質(放射率>0.5)で表面処理を施すことで輻射熱の授受を積極的に行うことも可能である。
【0024】
ところで、第1回転シャフト106aは基板回転台105との接続側を樹脂材料で構成してよい(樹脂部材106c)。これは、樹脂材料等のように、駆動源から基板回転台105の回転軸に回転を伝達する回転伝達部(ここでは、駆動源から傘歯車201までの部分)よりも熱伝導率の低い材料を使用することで、回転伝達部から基板回転台105への伝熱を低減できるからである。ただし、その近傍は極低温になるので極低温でも使用可能なポリィミド樹脂やポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI樹脂)が好適である。第1回転シャフト106aと基板回転台105との固定にはネジ210を使用し、かつ、第1回転シャフト106aの中心軸からオフセットさせることで、回転によるネジ210の緩みを抑えることができる。傘歯車201は、ギヤケース204でカバーされており、樹脂ブロック205を介して冷凍機102に固定されている。これにより、第1回転シャフト106aから冷凍機102への伝熱を抑えつつ基板回転台105を安定に保つことが可能になる。
【0025】
なお、図3に示すように、第2回転シャフト106bに、平板状のマグネットカップリング106dを適用してもよい。これにより、基板冷却台104へ通じる冷却ガス通路の一部を欠如させることなく、不図示のモータなどの動力源から駆動力を基板回転台105に伝達できるようになる。なお、図3において、図1と同一の要素には同様の符号を付して示している。
【0026】
基板の回転速度は、プロセス、膜種、要求される膜質等により決定され、本発明の適用において限定されないが、基板全面に膜を形成する場合には下記式(1)による回転数R以上とすることが好ましい。
R=60/t[rpm]…(1)
上記式1の値よりも小さいと成膜時間内に基板Wが1回転未満となり成膜されない領域が発生してしまう。
【0027】
次に、図4を参照して、図1の基板冷却台104に形成された冷却ガス通路の構成について説明する。図4において、基板冷却台104を基板冷却台ベース板408と基板冷却台封止板409の2分割構成とし、基板冷却台ベース板408側に冷却ガス導入路403、冷却ガス噴出口401を座繰り加工により形成し、ベース板408の上部に基板冷却台封止板409をロウ付けやネジ止めすることで冷却ガス通路を形成することが可能になる。当然ながら、基板冷却台ベース板408には冷却ガス供給ライン接続口405が貫通加工されており、基板冷却台104の外部との冷却ガスの授受が可能になっている。そして基板冷却台封止板409には冷却ガス噴出孔407が貫通加工されている。また、基板冷却台ベース板408に基板冷却台封止板409を固定する場合には、冷却ガス噴出口401と冷却ガス噴出孔407とを一致させ固定させることは言うまでもない。本実施形態では、比較的簡素な構成で基板Wの冷却と回転を両立させることが可能になる。
【0028】
[実施形態2]
次に、図5を参照して、実施形態2について説明する。図5は実施形態2のスパッタリング装置の構成を例示しており、基板回転台105の代わりに基板冷却台104よりも外側に基板回転ユニット501〜506が設けられて、この基板回転ユニット501〜506が基板の保持を行う。
【0029】
図5において、基板Wは基板台座508と基板チャック501によって上下方向から挟まれた状態で把持される。基板チャック501は回転台座502上に固定され、回転台座502の下部には支柱504を介して軸受506が接続されている。軸受506の外輪ギヤには回転ギヤ505が噛合されており、動力源507により回転駆動される回転ギヤ505を介して駆動力が伝達され、基板Wを回転させることができる。また、基板回転ユニットは、基板台座508との干渉を考慮して、基板冷却台104の外周部分104aに座繰り処理が施されている。基板台座508と回転台座502との間には基板押さえバネ511が設けられ、適度な力で基板Wを挟持する。なお、図5において、図1と同一の要素には同様の符号を付して示している。
【0030】
図6(a)〜(d)は、実施形態2による基板Wの把持から搬出までの動作を例示しており、(a)は成膜終了時の状態である。このとき基板Wは、基板冷却台104に近接した位置で、基板押さえバネ511の力で基板台座508と基板チャック501によって把持されている。(b)は昇降機構510により基板台座508、基板チャック501、回転台座502、基板W及び基板押さえバネ511が上方へ持ち上げられている状態である。このとき基板Wは基板押さえバネ511の力により把持されたままの状態である。(c)は昇降機構510が更に上昇することで、基板台座508は基板冷却台104に当接して上昇が停止されるが、回転台座502はそのまま上昇して基板Wの把持が解除された状態である。(d)は、基板台座508上の基板Wを不図示の搬送機構により外部に搬出している状態である。
【0031】
図7は、実施形態2の基板冷却台104の詳細な構成を例示しており、基板冷却台104は厚さ方向に基板冷却台ベース板709と基板冷却台封止板710の2分割構成されている。基板冷却台ベース板709は、その内周側に凹部700が座繰り加工により形成され、外周側の凸部で基板Wを保持可能となっている。また、この凹部700の底面には、冷却ガス噴出口701、冷却ガス導入路703、冷却ガス導入路703と冷却ガス供給ライン110とを連通させるガス供給ライン接続口705、冷却ガス導入路703より内周側に形成された冷却ガス排出口702、冷却ガス排出路704、冷却ガス排出路704と冷却ガス排出ライン111とを連通する冷却ガス排出ライン接続口706が形成されている。図中、凹部底面と高さが異なる部分をハッチング又は網掛けで示している。
【0032】
上記基板冷却台ベース板709の凹部底面に基板冷却台封止板710をロウ付けやネジ止めすることでガス通路を形成することが可能になる。基板冷却台封止板710には、冷却ガス導入路703に連通する冷却ガス噴出孔708と、冷却ガス排出路704に連通する冷却ガス排出孔707が貫通加工されている。
【0033】
このように、基板冷却台104を2分割構成とし、溝を形成して分岐路を設けることで、設計の自由度を高めることができ、より冷却効果の高い装置を構成可能である。例えば、図7の例では、ガス供給ライン接続口705から各冷却ガス噴出孔708に至る通路の長さは略同等(相対差(中央値からの差/中央値)±5%の範囲)に設定され、接続口705からの分岐路の長さが等しく設定されている。冷却ガス排出路704についても同様に分岐路の長さが略等しく(相対差(中央値からの差/中央値)±5%の範囲)設定されている。これにより、冷却ガスの分散のバラツキを防ぐことができる。
【0034】
なお、分岐路の長さを同等に設定する場合に限らず、例えば、真空容器101内へ基板Wを搬入するための搬出入口付近では部材の温度が低下しやすいことから、基板搬出入口から近い方に開口する分岐路を遠い方よりも長く又は狭くし、コンダクタンスが小さくなるように構成してもよい。このような定常的に冷却効率の誤差等が発生する部分については、ガス通路を分けて独立に制御するよりも、分岐路の調整を行うことで、低コスト、簡易に冷却効果の均一を図ることができる。同様に、基板冷却台104の外周側および内周側にガス通路を設ける場合に、内周側の分岐路を長く又は狭くし、コンダクタンスを小さくしても、同様の効果が得られる。
【0035】
実施形態2では、基板回転ユニットが基板冷却台104よりも外側に配置されているため、基板冷却台104の全面を利用して基板Wの冷却を行うことができる。そして、基板Wの外周縁部を機械的に把持しているため、基板回転数を例えば180rpm以上上昇させることができる。これにより基板を高速回転させながら効率よく基板冷却を行うことが可能になる。
【0036】
[実施形態3]
次に、図8及び図9を参照して、実施形態3について説明する。図8では、基板冷却台104の中心から外周側に所定距離離間した部位に同心円状に基板回転台105が設けられている。なお、外部との基板Wの授受機構は図示を省略している。なお、図8において、図1と同一の要素には同様の符号を付して示している。
【0037】
図9は、図8の基板保持台103の詳細な構成を例示している。図9において、基板冷却台104は、冷凍機912から第1熱伝導ブロック904を介して固定されている円盤状の第1基板冷却台901と、冷凍機912から第2熱伝導ブロック905を介して固定されている円環状の第2基板冷却台902からなり、第1基板冷却台901と第2基板冷却台902の間に所定の間隙が設けられ、この間隙に第1基板冷却台901と第2基板冷却台902に接しないように基板回転台903が配置されている。
【0038】
基板回転台903の下方には樹脂ブロック909に固定された軸受908が接続されている。樹脂ブロック909は軸受908を固定する役割と軸受部材やギヤからの伝熱を抑制して、極低温による部品の収縮変形を低減する役割とを有している。当然ながら、極低温時に変形の少ない部品を選べば、樹脂ブロック909は金属製の部品に置き換えてもよい。また、不図示の動力源からの駆動力を伝達する回転シャフト911の固定された回転ギヤ910と基板回転台903の外周部に設けられたギアとが噛合し、不図示の動力源によって基板回転台903が第1基板冷却台901と第2基板冷却台902に接することなく回転可能である。
【0039】
冷却ガスは、第1冷却ガス導入経路906と第2冷却ガス導入経路907を通じて導入され、基板Wの裏面と第1基板冷却台901および第2基板冷却台902との隙間に流れ込むようになっている。なお、第1基板冷却台901から噴出された冷却ガスは冷却ガス排出経路913から排出される。
【0040】
図10(a)は、図9のIV−IV方向から見た図であり、第2熱伝導ブロック905には、回転ギヤ910に接触しないように周方向に対して切り欠きが設けられている。第2熱伝導ブロック905における基板面法線方向に対する切り欠き量は全高であってもよいし、回転ギヤ910に接触しない範囲のみであってもよい。また、図10(b)のように回転ギヤにマグネットカップリング930を使用すれば、第2熱伝導ブロック905を切り欠くことなく基板回転台903を回転駆動することが可能になる。
【0041】
図11は、実施形態3の基板冷却台の詳細な構成を例示しており、第2基板冷却台2902の内周側には座繰り加工により凹部900が施され、中心部には基板回転台903の最外径よりも大きな径の中心孔924が貫通加工されている。第2基板冷却台902には、冷却ガス噴出口921、冷却ガス導入路923、冷却ガス供給ライン接続口925が形成されており、凹部に基板冷却台封止板920をロウ付けやネジ止めすることで冷却ガス通路を形成することが可能になる。基板冷却台封止板920には、冷却ガス噴出口921に連通する冷却ガス噴出孔928と、中心孔924に連通する中心孔929が貫通加工されている。
【0042】
実施形態3では、基板回転台にかかわる部品のサイズを抑えつつ基板を安定に保持することができること、そして、基板回転台の径方向肉厚を薄くすることで、基板冷却台の面積割合を増やすことができ、基板の冷却効率を高めることができる点で優れている。
【0043】
[実施例1]
実施形態1の構成について基板冷却確認を行った。基板Wは直径200mm、厚み1.2mmのAlTiC(アルミチタンカーバイド)製である。基板冷却台104は銅製で最外形が直径205mmとした。基板冷却台104の中央には直径15mmの貫通孔と直径35mm所定深さの座繰り処理が施されている。樹脂部材106cはポリィミド樹脂製である。第1回転シャフト106aの先端部には直径33mmの銅製基板回転台105が固定され、基板冷却台104に接することなく回転することが可能になっている。なお、このとき基板Wと基板冷却台104との隙間は0.3mmとなる。
【0044】
冷凍機102にはGMサイクル冷凍機が用いられており、基板冷却台104と冷凍機102とは、輻射低減のために表面をNi鍍金光沢処理された銅製熱伝導ブロック207にて接続されている。
【0045】
一方、基板冷却台104には、冷却ガス噴出孔407が中心より半径70mm、90度おきに4箇所配置されている。
【0046】
上記構成において、基板冷却台104を50Kまで冷却した。なお、基板冷却台104の温度は当該冷却台に固定されている白金抵抗体素子によってリアルタイムに測定可能である。基板冷却台104/基板回転台105にAlTiC製基板Wを設置し、He冷却ガスを50sccm流しながら、基板回転台を90rpmで20分間回転させたところ、表1のように基板温度は105Kまで降下し、本発明の効果を確認することができた。
【0047】
【表1】

【0048】
なお、基板Wの温度測定のために、回転する基板Wに熱電対を取り付けることはできないので、基板W温度の測定は以下のように行った。図12のようにポリィミド樹脂製ステージ1001に高さ1mmの基板設置リング1003を形成し、ステージ1001の中心部にバネ1004を介して白金抵抗体素子を基板側に露出するよう固定させた。これらのステージ1001を内包する真空容器は、不図示の搬送機構を備えた搬送処理容器を介して本発明を適用できる基板冷却台を内包する真空容器と連通している。
【0049】
白金抵抗体素子1002はステージ1001表面より2mm露出している。基板冷却台104及び基板回転台105によって回転/冷却された基板Wは、不図示の搬送機構によりステージ1001に載置される。このとき、基板Wの重さによりバネ1004が伸びると同時に発生するバネ1004の収縮力によって基板Wの裏面と確実に接触し、基板温度が測定可能となっている。
【0050】
[実施例2]
実施形態2の構成について基板冷却確認を行った。基板Wは直径200mm、厚み1.2mmのAlTiC(アルミチタンカーバイド)製である。基板冷却台104は銅製凸型形状で最外形が直径220mm、凸部は直径190mmとした。基板チャック501による基板Wの把持範囲は基板Wの外側から内方に3mmの範囲である。3mmより大きいと基板W上に形成される/されたパターンに成膜ができなくなってしまうからである。なお、基板冷却台104の凸部表面と基板W裏面との間隙は0.3mmである。基板冷却台104には、冷却ガス噴出孔708が中心より所定半径の位置に、90度おきに4箇所配置されている。そして、冷却ガス排出孔707が冷却ガス噴出孔708より内側で、中心より所定半径の位置に、90度おきに4箇所配置されている。
【0051】
上記構成にて、基板冷却台104を50Kまで冷却した。なお、基板冷却台104の温度は当該冷却台に固定されている白金抵抗体素子によってリアルタイムに測定可能である。基板冷却台104/基板回転台105にAlTiC製基板Wを設置し、He冷却ガスを50sccm流しながら、基板回転台を180rpmで20分間回転させたところ、表2のように基板温度は98Kまで降下し、本発明の効果を確認することができた。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例1よりも基板温度が低下した理由は、実施形態2の基板冷却台104における冷却に有効な面積が実施形態1よりも大きくなっており、冷却が効率よく行われたからである。
【0054】
[実施例3]
実施形態3の構成について基板冷却確認を行った。基板Wは直径200mm、厚み1.2mmのAlTiC(アルミチタンカーバイド)製である。第1基板冷却台901は銅製であり、直径33mmで第1熱伝導ブロック904を介して冷却される。第2基板冷却台902は銅製で中心より直径41mmの領域が貫通加工されており、直径205mmである。第2基板冷却台902は第2熱伝導ブロック905を介して冷却されており、第1基板冷却台901および第2基板冷却台902は共に50Kまで冷却されていた。
【0055】
第1基板冷却台901と第2基板冷却台902の隙間は4mmに設定されており、ここに厚み2mm、内径35mmのSUS310製の基板回転台903を設置した。なお、第2基板冷却台902には、冷却ガス噴出孔928が中心より所定半径の位置に、90度おきに4箇所配置されている。
【0056】
上記構成にて、第2基板冷却台902を50Kまで冷却した。He冷却ガスを50sccm流しながら、基板回転台903を90rpmで20分間回転させたところ、表3のように基板温度は103Kまで降下し、本発明の効果を確認することができた。
【0057】
【表3】

【0058】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、異なるサイズや種類の基板であっても、本発明を適用可能なことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の基板を冷却するための冷却装置であって、
冷凍機と、
前記冷凍機に接続され、前記基板の非処理面に向く冷却ガス噴出孔を有する基板冷却台と、
前記基板冷却台に冷却ガスを導入する冷却ガス供給部と、
前記基板を前記基板冷却台から所定の間隙だけ離間させた状態で保持し、当該基板を保持した状態で回転駆動される基板回転機構と、
前記基板回転機構を回転駆動する駆動機構と、を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記基板回転機構は、前記基板冷却台の中央部分に形成された凹部に配設されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記基板回転機構は、樹脂製部材を介して前記駆動機構の回転シャフトに連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記基板冷却台は、熱伝導製部材を介して前記冷却機構に連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記基板回転機構は、前記基板冷却台の外周部分に設けられ、前記基板の外周部を把持する把持機構を有し、前記基板を把持して前記基板冷却台に前記所定の間隙だけ近接させる第1の位置と、前記第1の位置から前記基板の把持を解除して当該基板を搬出可能な第2の位置との間で動作可能であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記把持機構は、前記基板の外周部を把持した状態で回転駆動されることを特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記基板冷却台は、中央部の円盤状の第1冷却台と、当該第1冷却台の外周部分に隙間を置いて配置される円環状の第2冷却台とを有し、
前記基板回転機構は、前記第1冷却台と前記第2冷却台とに接触しないように前記隙間に配設された回転部材を有し、
前記回転部材が前記基板を前記第1冷却台及び第2冷却台から前記所定の間隙だけ離間させた状態で保持し、当該基板を保持した状態で回転駆動されることを特徴とする請求項1又は3に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記基板冷却台には、前記真空容器の外部から供給される冷却ガスを導入する導入口と、当該冷却ガスを前記基板冷却台内に流通させる導入路と、当該冷却ガスを前記基板に向けて噴出する噴出口とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記導入口、導入路及び噴出口は、前記基板冷却台の厚さ方向において同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記導入路は、前記導入口からの距離が同じ長さに形成された分岐路を有することを特徴とする請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記噴出口から噴出される冷却ガスは、前記基板回転機構と前記基板冷却台との間の前記間隙を通って前記真空容器内に排出されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
プロセスガスが供給される真空容器と、
前記真空容器内部に配置され、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の冷却装置と、
前記冷却装置に保持された基板に対向配置され、当該基板にスパッタリング処理を施すカソード電極部と、を有することを特徴とするスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−149100(P2011−149100A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291100(P2010−291100)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】