説明

冷却装置

【課題】圧力損失が少なく、騒音が小さく、塵埃や昆虫等の異物が付着しにくく、かつ、薄い冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置6は、同心円状の渦流を生成する攪拌部10と、この渦流を攪拌部10から分離する分離部16と、攪拌部10の外周部の近傍に設けられた空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dと、攪拌部10の軸方向に面するヒートシンク13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却装置としては、特開平11−330753号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この冷却装置は、軸流ファンを備え、この軸流ファンの軸方向の一方から吸い込んだ空気を、上記軸流ファンの軸方向の他方から、冷却フィンに軸方向に吹き付け、その後、この冷却フィンに沿って径方向に排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−330753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の冷却装置では、軸流ファンからの軸方向の空気の流れを被冷却体である冷却フィンに軸方向に吹き付けて、その後、空気を径方向に排出しているため、方向転換による圧力損失が大きく、また、被冷却体である冷却フィンに空気がぶつかって方向を変えるため大きな騒音が生じるという問題があった。
【0005】
また、上記従来の冷却装置は、図18,図19に示すように、空気の入口側の流線が、軸流ファン61の前縁部62に対し常に垂直であるので,空気中の塵埃や昆虫あるいは鳥の羽根等の異物63が、流体力による圧力で前縁部62に圧しつけられていた。さらに、直径約100mm以下の軸流ファンにおいては、図19に示すように、軸芯近傍の動翼64の翼間が狭いため、前縁部62に塵埃等63が蓄積されて、軸流ファン61の動バランスが悪化すると共に、軸流ファンにより吐出される風量が激減し、冷却装置の冷却能力が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の課題は、圧力損失が少なく、騒音が小さく、塵埃や昆虫等の異物が付着しにくい冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の冷却装置は、
複数の回転する動翼を有して、回転軸を中心とする同心円状の渦流を生成する攪拌部と、
上記攪拌部の上記回転軸の方向の一方の第1面に面する被冷却体と、
上記攪拌部に、その攪拌部の外周部の近傍から空気を流入させる空気流入口と、
上記攪拌部の外周部の近傍からの空気を排出する空気排出口と、
上記攪拌部の上記動翼の回転により形成される空気の上記攪拌部の周方向の渦流を上記攪拌部から分離する分離部と
を備え、
上記空気流入口から流入した空気が、上記攪拌部の中心を通らないで、上記渦流となって、上記攪拌部の周方向に流れて、上記空気排出口から流出することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、上記攪拌部の動翼の回転により形成される動翼の回転軸を中心とする同心円状の空気の渦流が、被冷却体の表面に沿って流れて、被冷却体を冷却し、そして、分離部により動翼の回転方向から逸らされて、分離部に沿った流れとなって空気排出口に排出される。
【0009】
このように、上記動翼により生じた渦流は、動翼の回転軸に対して垂直な方向の流れとなり、被冷却体に沿った流れとなるので、被冷却体に空気が垂直にぶつかることがない。
【0010】
したがって、空気と被冷却体との衝突が少なく、騒音を低減することができる。
【0011】
また、上記渦流は、被冷却体に沿った流れであって、被冷却体と垂直に衝突することがないから、被冷却体が流れの方向を変えることが少なくて、圧力損失が少なく、動力ロスが少ない。
【0012】
また、上記攪拌部は、被冷却体に沿って流れる渦流を生成して、空気流入口および空気排出口が攪拌部の外周部の近傍にあるので、この冷却装置の回転軸方向の厚さを薄くすることができる。
【0013】
また、上記攪拌部の動翼の回転により、動翼の回転軸を中心とする同心円状の渦流を生成しているので、攪拌部に塵埃や小型の昆虫等の異物が流入しても動翼に付着しにくく、動翼の動バランスの悪化を防止できて、信頼性を高くすることができる。
【0014】
また、一実施形態の冷却装置では、
上記攪拌部の回転軸の方向の他方の第2面に面するケーシングを備える。
【0015】
上記実施形態によれば、上記ケーシングにより上記攪拌部の第2面を覆って露出しないようにできるので、安全を確保でき、かつ、攪拌部の内部に侵入する塵埃や異物の量を低減することができる。
【0016】
また、一実施形態の冷却装置では、
上記分離部を2つまたは3つ有する。
【0017】
上記実施形態によれば、分離部を2つまたは3つ有するので、略半円弧あるいは1/3円弧状の渦流を形成できるので、被冷却体の熱交換がより促進され、被冷却体をより高効率で冷却することができる。
【0018】
もし、分離部が1つだけであると、略一円周分の渦流になり、空気流入口から略一円周分回ってから空気排出口から排出されるので、温まった空気が被冷却体の表面に沿って流れて、分離部が2つまたは3つの場合と比べて冷却効率が悪くなるのである。
【0019】
尤も、分離部が1つであっても使用は可能である。
【0020】
また、一実施形態の冷却装置では、
上記攪拌部は、回転円板部を備え、この回転円板部に上記動翼が固定されている。
【0021】
上記実施形態によれば、上記攪拌部が回転円板部を備え、この回転円板部に動翼が固定されているので、この回転円板部がケーシングの役目もして、動翼と回転円板部との間に隙間をなくすることができ、送風効率を向上できる。
【0022】
また、一実施形態の冷却装置では、
上記攪拌部の上記動翼が、上記攪拌部の中心から径方向に放射状に延びている。
【0023】
上記実施形態によれば、上記攪拌部の上記動翼が、上記攪拌部の中心から径方向に放射状に延びているので、動翼が大きな遠心力を支持することができ、動翼を軽量化して攪拌部の回転負荷を低減することができる。
【0024】
また、一実施形態の冷却装置では、
上記動翼の回転方向の前面が凹面である。
【0025】
上記実施形態によれば、上記動翼の回転方向の前面が凹面であるので、大量の空気を搬送して攪拌部の渦流を生成する能力を高めることができ、冷却装置の冷却能力を向上することができる。
【0026】
尤も、上記動翼の回転方向の前面が凸面であっても使用可能である。
【0027】
また、一実施形態の冷却装置では、上記空気排出口から排出されるべき空気、または、上記空気排出口から排出された空気にイオンを放出するイオン発生部を備える。
【0028】
上記実施形態によれば、上記イオン発生器から放出されるイオンによって空気浄化をすることができる。このイオン発生器は、負イオンのみ、陽イオンのみ、あるいは正負のイオンを発生するものであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上より明らかなように、この発明によれば、圧力損失が少なく、騒音が小さく、塵埃や昆虫等の異物が付着しにくく、かつ、厚さの薄い冷却装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、この発明の一実施形態の冷却装置を備える照明装置の斜視図である。
【図2】図2は、上記冷却装置を備える照明装置の底面図である。
【図3】図3は、上記冷却装置を備える照明装置を示す図2のE−E線から見た縦断面図である。
【図4】図4は、上記冷却装置を備える照明装置を示す図2のB−B線から見た縦断面図である。
【図5】図5は、上記冷却装置を備える照明装置を示す図4のD−D線から見た横断面図である。
【図6】図6は、上記冷却装置を備える照明装置を示す図4のC−C線から見た横断面図である。
【図7】図7は、上記冷却装置の攪拌部で発生する渦流を示す平面の模式図である。
【図8】図8は、上記冷却装置の攪拌部に分離部を2つ設けた状態を示す平面の模式図である。
【図9】図9は、上記冷却装置を備える照明装置の空気の流れを示す斜視図である。
【図10】図10は、分離部を2つ有する上記冷却装置に塵埃等が流入した状態を示す平面の模式図である。
【図11】図11は、分離部を2つ有する上記冷却装置に塵埃等が流出した状態を示す平面の模式図である。
【図12】図12は、上記冷却装置の攪拌部に分離部を1つ設けた状態を示す平面の模式図である。
【図13】図13は、5枚の動翼を有する攪拌部の斜視図を示す。
【図14】図14は、3枚の動翼を有する攪拌部の斜視図を示す。
【図15】図15は、2枚の動翼を有する攪拌部の斜視図を示す。
【図16】図16は、動翼が時計回りに湾曲した攪拌部の平面図を示す。
【図17】図17は、動翼が反時計回りに湾曲した攪拌部の平面図を示す。
【図18】図18は、軸流ファンの側面図を示す。
【図19】図19は、軸流ファンの平面図を示す。
【図20】図20は、遠心ファンの平面図を示す。
【図21】図21は、クロスフローファンの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の冷却装置を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0032】
この実施形態の冷却装置は、図1に示すように、本体1と光拡散カバー2とを備える照明装置に設けている。
【0033】
上記本体1は、底部が開口していて、中央部から開口部側に向かって漸次広がり、指数曲線や双曲線等の凹曲線を回転して生成できる回転凹曲面の外周面を有する。また、上記本体1の開口側は、円筒形状で内側が段部になっていて、この段部に光拡散カバー2を嵌め込んで固定している。
【0034】
上記光拡散カバー2は、図2に示すように、半透明の平面視円板形状で、導風口21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hを有する。この導風口21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hは、光拡散カバー3の外周に沿って湾曲した円弧状で、大小2つの種類を有している。なお、上記光拡散カバー3は、透明であってもよい。
【0035】
図3に示すように、上記光拡散カバー2の内側には、基板15を配置していて、この基板15の表面に光源部3を設けている。上記光源部3は、図5に示すように、4つの発光部7,7,7,7を円周上に等間隔に設けていて、この発光部7,7,7,7の各々は、それぞれ整列された6個のLED(発光ダイオード)14からなっている。
【0036】
図3に示すように、上記基板15の裏面には、被冷却体の一例であるヒートシンク13を固定している。このヒートシンク13は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等から形成している。このヒートシンク13によって、LED14や基板15に搭載された電子部品(図示せず)から発生する熱を放出して、LED14や電子部品の温度を下げて、それらの寿命を長くすることができる。
【0037】
また、上記基板15の裏面には、攪拌部10とケーシング11と分離部16(図4を参照)とを設けている。上記攪拌部10、ケーシング11、分離部16およびヒートシンク13は、冷却装置6の一実施形態を構成する。
【0038】
上記攪拌部10は、ヒートシンク13のフィンに面する側に設けている。この攪拌部10は、回転円板部17に動翼12を固定してなる。上記回転円板部17の回転軸19の一方側、すなわち第1面は、ヒートシンク13のフィンに面している。
【0039】
上記動翼12は、図6に示すように、平板形状で、上記回転円板部17の回転軸19から径方向に放射状に、回転円板部17に対し垂直に固定している。本実施形態の攪拌部10には、9枚の動翼12の一端を回転円板部17に密着させて取り付けている。
【0040】
上記動翼12の一端が回転円板部17に密着しているので、この回転円板部17がケーシング11の役目もして、動翼12と回転円板部17との間に隙間をなくすことができ、送風効率を向上できる。
【0041】
また、上記動翼12が攪拌部10の中心から径方向に放射状に延びているので、動翼12が大きな遠心力を支持することができ、動翼12を軽量化して攪拌部10の回転負荷を低減することができる。
【0042】
上記攪拌部10の回転軸19は、駆動部5に設けたモータにより回転する。この駆動部5のモータは、インナーロータのタイプであっても、アウターロータのタイプであってもよい。また、駆動部5の上側には、駆動部5を作動させるための電源部4を設けている。
【0043】
また、図6に示すように、上記攪拌部10の外周囲の180度の位相、つまり対向する位置に分離部16,16を設けている。この分離部16,16は、攪拌部10の動翼12の径方向外側に設けていて、図4,6に示すように、ケーシング11に固定している。
【0044】
図3に示すように、上記ケーシング11は、略円錐台形状で、攪拌部10の回転円板部17側の面と攪拌部10の周方向の外周側を覆っている。このケーシング11により攪拌部10の回転円板部17側の面を覆って露出しないようにできるので、安全を確保でき、かつ、攪拌部10の内部に流入する塵埃や異物の量を低減することができる。
【0045】
上記ケーシング11の天井部31は、攪拌部10の回転円板部17の直径よりもやや大きく、攪拌部10の回転の妨げにならないように形成している。また、上記ケーシング11の天井部31の外周端部は、ケーシング11の湾曲部32に繋がっていて、このケーシング11の湾曲部32は、本体1の形状に沿ってケーシング11の底部33に繋がっている。
【0046】
上記ケーシング11の底部33は、図3に示すように、中央部が一部円形状に開口していて、この開口部に図5に示す円板形状の基板15を取り付けている。また、上記ケーシング11の底部33には、冷却装置6内部に空気を流入させる図5に示す空気流入口23a,23b,23c,23dと、冷却装置6外部に空気を流出させる空気排出口24a,24b,24c,24dを設けている。この空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dは、上記光拡散カバー2に設けている図2に示す導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと同じ大きさの円弧形状で、大小2つの種類がある。
【0047】
また、図2に示すように、上記導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dの断面形状は、ケーシング11側面の形状に沿って傾斜している。このように、導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dの断面形状を傾斜させることで、導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dからケーシング11内部に流入する空気と、ケーシング11外部に排出される空気の圧力損失を低減することができる。なお、光拡散カバー2に設けている導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、ケーシング11に設けている空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dの形状、設置個数等は同じにするのが好ましいが、必ずしも必要ではなく、設計に応じてそれぞれ変更可能であることは勿論である。
【0048】
また、図2に示す上記導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、図5に示す空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dの径方向の幅hが、図3に示す攪拌部10の動翼12とヒートシンク13との間の距離CV2と略同じであるようにしている。上記導風部21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hと、空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dの径方向の幅hと、攪拌部10の動翼12とヒートシンク13との間の距離CV2とが略同じ大きさであるので、空気の流路面積の変化を最小にして、流動損失を少なくして効率を向上できる。
【0049】
図6に示すように、上記ケーシング11の底部33の外周部には、2つの切欠18,18を対向する位置に設けている。この切欠18,18は、LEDに接続された電気配線をケーシング11の外部に通すために用いられる。また、上記切欠18,18からも空気の流出入が可能なため、冷却装置の効率を高めることができる。
【0050】
上記構成の照明装置を動作させると、基板15に搭載したLED14や電子部品から熱が発生する。このLED14や電子部品から発生した熱は、基板15を介してヒートシンク13に伝わる。
【0051】
一方、上記冷却装置6の駆動部5へ電源部4から電力供給がされ、駆動部5が攪拌部10を回転させる。そうすると、図7に示すように、ケーシング11内部に攪拌部10の回転軸19を中心とする同心円状の空気の渦流が発生する。なお、動翼12は、図6に示すように、実際は9枚であるが、図7は、説明の便宜上、分かりやすく4枚にしている。
【0052】
そして、図8に示すように、上記攪拌部10の動翼12の回転により形成される動翼12の回転軸19を中心とする同心円状の空気の渦流が、分離部16,16により動翼12の回転方向から逸らされて、分離部16,16に沿った流れとなる。そのため、ケーシング11内部には、流れる方向の異なる空気の流れが2方向に形成される。
【0053】
このケーシング11内部に形成された2方向の空気の流れによって、図9に示すように、攪拌部10の外周部の近傍、かつ、ケーシング11の外部にある空気が、光拡散部2の導風部21c,21d,21g,21hを介して、空気流入口23a,23b,23c,23dからケーシング11内部に流入する。この流入した空気は、基板15およびヒートシンク13に沿って流れ、分離部16、16に案内されて空気排出口24a,24b,24c,24dに向かい、光拡散部2の導風部21a,21b,21e,21fを介して、空気排出口24a,24b,24c,24dからケーシング11外部に排出される。
【0054】
なお、この明細書では、攪拌部10の外周部の近傍とは、動翼12の回転軸19の中心から動翼12の半径方向先端迄の長さの半分よりも外側の領域で、かつ、動翼12の外周端部から動翼12の半径方向の上記長さの半分よりも内側の領域をいう。
【0055】
このように、上記攪拌部10の動翼12の回転により形成される動翼12の回転軸19を中心とする同心円状の空気の渦流が、基板15およびヒートシンク13の表面に沿って流れて、基板15およびヒートシンク13を冷却し、そして、分離部16により動翼12の回転方向から逸らされて、分離部16に沿った流れとなって、空気排出口24a,24b,24c,24dからケーシング11の外部に排出される。
【0056】
上記動翼12により生じた渦流は、動翼12の回転軸19に対して垂直な方向の流れとなり、基板15およびヒートシンク13に沿った流れとなるので、基板15およびヒートシンク13に空気が垂直にぶつかることがない。
【0057】
したがって、空気と基板15およびヒートシンク13との衝突が少なく、騒音を低減することができ、また、上記渦流は、基板15およびヒートシンク13に沿った流れであって、基板15およびヒートシンク13と垂直に衝突することがないから、基板15およびヒートシンク13が流れの方向を変えることが少なくて、圧力損失が少なく、動力ロスが少ない。
【0058】
また、上記攪拌部10は、基板15およびヒートシンク13に沿って流れる渦流を生成して、空気流入口23a,23b,23c,23dおよび空気排出口24a,24b,24c,24dが攪拌部10の外周部の近傍にあるので、この冷却装置6の回転軸19方向の厚さを薄くすることができる。
【0059】
さらに、上記冷却装置6により形成される空気の渦流が、塵埃等が基板15やヒートシンク13に付着するのを防止するので、基板15やヒートシンク13と空気との間の熱交換効率の低下を防ぐことができる。
【0060】
この渦流を生じる攪拌部10と軸流ファン61、遠心ファン51およびクロスフローファン71とを比較すると次のようになる。
【0061】
軸流ファン61を用いた冷却装置の送風機において、塵埃や異物63等が冷却装置のケーシング内に流入した場合、図18,図19に示すように、流入した塵埃等は、まず、外部から流入した空気が最初に動翼64に接触する動翼64の端部(澱み点)に付着する。そして、動翼64の回転により発生する流体力と遠心力との方向が同じときに、塵埃等63は上記流体力および遠心力により動翼64に強く押し付けられることで動翼64の前縁部62に固定され、動翼64間を塞ぐように蓄積してしまう。
【0062】
また、冷却装置の送風機に遠心ファン51を用いた場合、図20に示すように、遠心ファン51の軸方向から流入した空気が径方向に向かって噴出されるため、動翼55の内側端部52に塵埃が押し付けられる。遠心ファン51の動翼55は、動翼55が厚く澱み点が大きいため、動翼55に付着した塵埃に遠心ファン51の外側に向かう強い流体力(セルフクリーニング作用)がほとんど働かず、遠心ファン51の動翼55の内側端部52の近傍領域53にまで塵埃が蓄積してしまう。また、比較的大きな異物(鳥の羽根等)が流入した場合や、塵埃の蓄積等により動翼55の翼間が狭くなっている場合等に、異物54が動翼55の翼間に詰まる形で蓄積してしまう。
【0063】
また、冷却装置の送風機にクロスフローファン71を用いた場合、図21に示すように、クロスフローファン71の外側の一部から流入した空気が、クロスフローファン71の中心を含む内部を通って、反対側の外周の一部に向かって噴出される。このとき、動翼75の外側端部73に付着した塵埃は、クロスフローファン71の回転による遠心力と、空気の流れによる流体力によりセルフクリーニング作用が働く。しかし、クロスフローファン71の内部に流入した塵埃は、動翼75の内側端部72に押し付けられて蓄積してしまう。また、クロスフローファン71は、動翼75の枚数が多く、動翼75の翼間が狭いため、小型の虫等の異物74が、動翼75の外側端部73から、動翼75の翼間に詰まる形で蓄積してしまう。
【0064】
これに対して、本実施形態の冷却装置6は、図10,11に示すように、分離部16により渦流が分離される部分において、動翼12の回転による遠心力の方向と空気の分離方向とがほぼ一致するため、動翼12に付着した塵埃81等に攪拌部の外側に向かう強い流体力(セルフクリーニング作用)が働く。また、動翼12の翼間においては、塵埃81等と動翼12との相対速度が小さいため、塵埃81等を動翼12に押し付ける圧力が小さい。そのため、例えば小さい昆虫や鳥の羽根等、比較的大きい異物82が空気流入口23a,23b,23c,23dからケーシング11内部に流入しても、上記セルフクリーニング作用により動翼12の翼間に詰まることがなく、空気排出口24a,24b,24c,24dから攪拌部10の外部に排出される。
【0065】
このように、上記攪拌部10の動翼12の回転により形成される動翼12の回転軸19を中心とする同心円状の空気の渦流を生成しているので、攪拌部10に塵埃や小型の昆虫等の異物が流入しても動翼12に付着しにくく、容易く排出できるので、動翼12の動バランスの悪化を防止でき、かつ、信頼性を高くすることができる。
【0066】
特に、照明装置においては、その内部に小さな昆虫が侵入することが大きな解決すべき問題であるが、本照明装置では、昆虫の侵入という問題が解決される。
【0067】
上記冷却装置6は、圧力損失および動力ロスが少なく、高い信頼性を備えるので、LED14を用いた照明装置にこの冷却装置6を用いることで、冷却装置6の定期交換等のメンテナンスを最小限にすることができる。すなわち、電球,蛍光灯,放電灯等の従来の光源よりも大幅に寿命が延びたLED14の長所を最大限生かすことができる。
【0068】
また、上記空気流入口23a,23b,23c,23dのサイズを小さくしたり、空気流入口23a,23b,23c,23dにフィルタを取り付けたりすると、空気の流入抵抗が増加してしまい、冷却装置6の冷却能力が低下してしまう。しかし、上記冷却装置6は、塵埃や異物等が冷却装置6内部に侵入しても容易に排出できるため、塵埃や異物等が冷却装置6内部に進入することを防ぐために、空気流入口23a,23b,23c,23dのサイズを小さくしたり、空気流入口23a,23b,23c,23dにフィルタを取り付けたりする必要がない。
【0069】
上記冷却装置6において、図3に示すケーシング11の天井部31と回転円板部17との間の距離CV1は、2〜5mmであることが好ましい。ケーシング11の天井部31と回転円板部17との間の距離CV1を2〜5mmにすることで、冷却装置6の全高を抑えることができる。なお、本実施形態では、CV1=2mmにしている。
【0070】
また、図6に示す動翼12の外周端部とケーシング11の内径との距離CR1は、5〜20mmであるのが好ましい。動翼12の外周端部とケーシング11の内径との距離CR1を5〜20mmにすることで、冷却装置6のケーシング11内部に形成された2方向の空気の流れをロスなく効率よく流すことができる。なお、本実施形態では、CR1=5mmにしている。
【0071】
また、図6に示す分離部16と動翼12の外周端部との間の距離CR2は、2〜10mmであるのが好ましい。分離部16と動翼12の外周端部との間の距離CR2を2〜10mmにすることで、攪拌部10の回転に支障がないように空気の渦流の周方の一部をロスなく分離して、効率よく分離部16の一面に沿って案内することができる。なお、本実施形態では、CR2=2mmにしている。
【0072】
また、図3に示すケーシング11の湾曲部32の曲率半径Rと攪拌部10の動翼12の高さHとが、R≧Hの関係を満たしているのが好ましい。ケーシング11の湾曲部32の曲率半径Rが動翼12の高さHに等しいか、動翼12の高さHよりも大きくすることで、ケーシング11内部に流入する空気と、ケーシング11外部に排出される空気の圧力損失を低減することができる。
【0073】
上記冷却装置6では、ケーシング11の内部に分離部16を2つ設けているが、これに限られず、分離部16を1つだけ設けてもいいし、3つ以上設けてもよい。例えば、分離部16を3つ設ける場合には、1/3円弧状の空気の渦流を形成できるので、基板15およびヒートシンク13の熱交換がより促進され、基板15およびヒートシンク13をさらに高効率で冷却することができる。
【0074】
また、上記分離部16が1つだけの場合、図12に示すように、略一円周分の渦流になり、空気流入口23から略一円周分回ってから空気排出口24から排出されるので、温まった空気が基板15およびヒートシンク13の表面に沿って流れて、分離部16が2つまたは3つの場合と比べて冷却効率が悪くなるが、分離部16が1つであっても使用可能である。
【0075】
また、上記照明装置では、図4,図6に示すように、分離部16を攪拌部10の動翼12よりも径方向の外側に位置するように設けているが、これに限られず、例えば、分離部16を攪拌部10の動翼12よりも径方向の内側に位置するように設けてもよい。この場合、分離部16は、攪拌部10の回転の妨げとならないように、基盤15と動翼12との間の空間に設ける。分離部16を攪拌部10の動翼12よりも径方向の内側に位置するように設けることで、ケーシング11の径方向の長さを攪拌部10の径方向の長さと略同じにすることができ、冷却装置6を小型化することができる。
【0076】
なお、分離部16を攪拌部10の動翼12よりも径方向の内側に位置するように設ける場合に、ヒートシンク13が分離部16を兼ねるようにしてもよい。ヒートシンク13が分離部16を兼ねることで、部品数を減らして、製造コストを低減することができる。
【0077】
また、上記冷却装置6では、図6に示すように、攪拌部10の動翼12を9枚有しているが、これに限られず、図7,8に示す4枚の動翼12を有してもよいし、図13に示す5枚の動翼12を有してもいいし、図14に示す3枚の動翼12を有してもいいし、図15に示す2枚の動翼12を有してもよい。
【0078】
なお、上記基板15に搭載されたLED14群、すなわち発光部7の数をNHとしたとき、1/2×NHまたは2×NHを満たす数に最も近い素数を上記攪拌部10の動翼12の枚数とするのがより好ましい。これは、発光部7の位相が同調することに起因する騒音を防ぐためである。本実施形態では、発光部7は4つなので、動翼12を2枚または3枚または7枚取り付けた攪拌部10を設けるのがより好ましい。
【0079】
また、上記冷却装置6では、平板形状の動翼12を回転円板17に対し垂直に固定しているが、これに限られず、たとえば、図16,図17に示すように、動翼101,102の形状を湾曲させてもよい。
【0080】
図16に示すように、上記動翼101の回転方向の前面を凹面にすると、大量の空気を搬送して攪拌部10の渦流を生成する能力を高めることができるので、攪拌部10の送風効率が高まり、冷却装置6の冷却能力を向上することができる。尤も、図17に示すように、動翼102の回転方向の前面が凸面であっても使用可能である。
【0081】
なお、上記動翼12,101,102の厚さは、できる限り薄く形成するのが好ましい。動翼12,101,102を薄くすることで、動翼12,101,102の外側端部(澱み点)に塵埃等が蓄積するのを低減することができる。
【0082】
上記冷却装置6では、分離部16、16を対向する位置に設けているが、これに限られず、例えば、1/3円弧状あるいは1/4円弧状の空気の渦流を形成するように分離部16,16を配置してもよい。また、2/3円弧状と1/3円弧状の渦流の両方が同時に形成するようにしてもよい。
【0083】
上記実施形態においては、ヒートシンク13を用いているが、ヒートシンク13を用いなくて、基板15に直接沿うよう、攪拌部10が渦流を流すようにしてもよい。このとき、基板15そのものが被冷却体となる。
【0084】
また、例えば、サーモスタット等を用いて、ケーシング11内部の温度が一定以上になるまで上記冷却装置6を作動させないようにしてもよい。そうすると、冷却装置6を常時作動させるよりも消費電力を低減することができる。
【0085】
上記LED14の代わりに、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)を用いてもよい。
【0086】
上記実施形態においては、放熱促進部としてヒートシンク13を用いているが、ヒートシンク13を用いなくて、基板15に直接沿うよう、攪拌部10が渦流を流すようにしてもよい。
【0087】
上記冷却装置6に、図示しないイオン発生器を設けてもよい。このイオン発生器は、プラズマクラスター(登録商標第4582023号)であり(特許第3680121号)、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンと、O(HO)(nは任意の自然数)である負イオンとを放出している。これらのイオン(プラズマクラスターイオンという)は、空気中の浮遊細菌の表面に付着し、化学反応して活性種であるHまたは・OH(水酸基ラジカル)を生成する。Hまたは・OHは、極めて強力な活性を示すため、空気中の浮遊細菌であるカビや雑菌を取り囲んで不活化、除去することができる。
【0088】
上記イオン発生器をケーシング11と、ヒートシンク13および基板15との間に設けると、イオン発生器から放出されるプラズマクラスターイオンによって空気を浄化することができる。
【0089】
尤も、上記イオン発生器は、プラズマクラスターイオン発生器に限らず、例えば、高電圧を使用する通常の負イオンまたは陽イオンまたは正負のイオンを発生するイオン発生器を用いてもよい。
【0090】
また、上記イオン発生器の設置箇所は、上記空気排出口24a,24b,24c,24dから排出されるべき空気、または、上記空気排出口24a,24b,24c,24dから排出された空気にイオンを放出するものならばどこであってもよい。
【0091】
上記冷却装置6は、薄くてコンパクトであるため、照明装置に限られず、例えば、加熱調理器や映像機器、半導体装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 本体
2 光拡散カバー
3 光源部
4 電源部
5 駆動部
6 冷却装置
7 発光面
10 攪拌部
11 ケーシング
12,101,102 動翼
13 ヒートシンク
14 発光ダイオード
15 基板
16 分離部
17 回転円板部
18 切欠
19 回転軸
21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h 導風部
23a,23b,23c,23d 空気流入口
24a,24b,24c,24d 空気排出口
31 ケーシング天井部
32 ケーシング湾曲部
33 ケーシング底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転する動翼を有して、回転軸を中心とする同心円状の渦流を生成する攪拌部と、
上記攪拌部の上記回転軸の方向の一方の第1面に面する被冷却体と、
上記攪拌部に、その攪拌部の外周部の近傍から空気を流入させる空気流入口と、
上記攪拌部の外周部の近傍からの空気を排出する空気排出口と、
上記攪拌部の上記動翼の回転により形成される空気の上記攪拌部の周方向の渦流を上記攪拌部から分離する分離部と
を備え、
上記空気流入口から流入した空気が、上記攪拌部の中心を通らないで、上記渦流となって、上記攪拌部の周方向に流れて、上記空気排出口から流出することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、
上記攪拌部の回転軸の方向の他方の第2面に面するケーシングを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、
上記分離部を2つまたは3つ有することを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の冷却装置において、
上記攪拌部は、回転円板部を備え、この回転円板部に上記動翼が固定されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の冷却装置において、
上記攪拌部の上記動翼が、上記攪拌部の中心から径方向に放射状に延びていることを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の冷却装置において、
上記動翼の回転方向の前面が凹面であることを特徴とする冷却装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の冷却装置において、
上記空気排出口から排出されるべき空気、または、上記空気排出口から排出された空気にイオンを放出するイオン発生部を備えることを特徴とする冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−15041(P2013−15041A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147079(P2011−147079)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】