説明

冷却装置

【課題】冷却性能の低下を抑制する冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明における冷却装置は、発熱体が接続される蒸発部と、放熱部が接続される凝縮部と、蒸発部で気化し凝縮部で凝縮する冷媒とを有し、凝縮部は放熱部と熱的に接続する面に凹凸構造を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の相変化により吸熱および放熱を行う冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱量の大きな半導体素子は、半導体素子のパッケージの上部にヒートシンクを設けて伝熱面を拡大させ、送風機などにより拡大した伝熱面に対して強制空冷を行うことで、半導体素子が発する熱の冷却を行っていた。
【0003】
近年、実装技術の進展、プリント基板の多層化と共に電子機器の薄型化、小型化が図られている。そのため電子機器に用いられる半導体パッケージ上部にヒートシンクなどの冷却部品用のスペースを確保することが困難となっている。
【0004】
そこで密閉空間を有する金属筺体の内部に冷媒を充填し、発熱体より発生した熱により冷媒を沸騰させることで気化し、気化した冷媒によって熱輸送を行う蒸発部と凝縮部とを備えた沸騰冷却器の研究が進んでいる。
【0005】
沸騰冷却器において、発熱体の熱により蒸発した冷媒の蒸気は、気液の体積差と毛細現象や、気液密度の差による浮力などを利用することで筺体内を循環して凝縮部に移動する。そして外気と熱交換を行うことで凝縮部における冷媒は冷却され、蒸発した冷媒は気体から液体に凝縮し、発熱体で発生した熱を外気へ放熱する。
【0006】
特許文献1には、平板型の冷却装置の具体的な構造について記載されている。シリコン基板で構成される筐体内部の密閉空間に流路構造を設けている。流路構造を構成する溝の幅を液相流路、蒸発流路、気相流路の順で広くなるように形成することによって、作動流体の循環を促進し、熱輸送の効率化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−353902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、冷却装置の凝縮部である凝縮流路において液化した冷媒が筐体の内壁面に付着して凝縮液の膜を形成する。冷媒の熱伝導率は、筺体を構成する金属の熱伝導率に比べて小さいので、筺体と冷媒との熱交換性能が悪くなり冷却性能が低下してしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における冷却装置は、発熱体が接続される蒸発部と、放熱部が接続される凝縮部と、蒸発部で気化し凝縮部で凝縮する冷媒とを有し、凝縮部は放熱部と熱的に接続する面に凹凸構造を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明における冷却装置によれば、冷却性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態における冷却装置の構成を示すブッロク図である。
【図2】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図3】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す分解図である。
【図4】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【図8】第3の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【図9】第4の実施形態における冷却装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0014】
〔第1の実施形態〕本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における冷却装置1の構成を示すブロック図である。
【0015】
〔構造の説明〕図1に示すように本実施形態における冷却装置1は、凝縮部20と、蒸発部30と、冷媒5と、凹凸構造形成部60とを備えている。
【0016】
凝縮部20には、放熱部が接続されており、蒸発部30には、発熱体が接続されている。凝縮部20は、放熱部と熱的に接続している面に、凹凸構造形成部60を備えている。なお蒸発部30には、冷媒5が充填されている。
【0017】
図1では、平板型の冷却装置1を示しているがこれに限定されず、凝縮部20と蒸発部30とを別々の装置に設け、配管などにより互いを接続することで冷媒5を循環させる構成としてもよい。
【0018】
発熱体からの熱量によって蒸発部30の冷媒5は沸騰し気化する。気化した冷媒5の蒸気は、気液密度の差による浮力により、凝縮部20に運ばれる。凝縮部20に運ばれた冷媒5の蒸気は、放熱部により冷却されることによって凝縮し液化する。凝縮した冷媒5は重力により降下し、還流する。
【0019】
〔効果の説明〕本実施形態における冷却装置1は、凝縮部20に凹凸構造形成部60を備えている。凹凸構造形成部60は凹部と凸部とを備えており、凹部は凸部と比べて放熱部との距離が短いため温度が低い。その結果、凹部に接する冷媒5は凝縮液膜が形成するが、凸部では冷媒5は凝縮するが凝縮液膜が形成されない。そのため凸部においては凝縮液膜の形成による冷却装置1の冷却性能の低下を防ぐことができる。
【0020】
〔第2の実施形態〕本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本実施形態における冷却装置1の構成を示す斜視図であり、図3は分解斜視図であり、図4は、断面図である。
【0021】
〔構造の説明〕図2、3に示すように、本実施形態における冷却装置1は、凝縮部20と蒸発部30とを収容する平板状容器2で構成される。冷却装置1は、凝縮部20に放熱部3を、蒸発部30に発熱体4をそれぞれ熱的に接続して使用する。
【0022】
図2、3に示すように平板状容器2は、箱型の形状で内部に密閉空間を有している。平板状容器2は、図3にように2つの部材を組み立てることにより構成してもよいし、複数の部品を組み合わせて構成してもよいし、また一体成形してもよい。
【0023】
平板状容器2を別々に作成した金属板などの部材を組み立てて構成する場合、金属板のつなぎ目などの接続は、外から水やほこりが入り込まないように、シリコーンゴムなどの樹脂により封止した密閉構造とする。なお平板状容器2の材質は、銅やアルミニウムなど熱伝導性が高い材質で構成される。
【0024】
平板状容器2と発熱体4とは、熱伝導グリースなどの熱伝導性が高い接着剤を介して熱的に接続している。
【0025】
図4に示すように、平板状容器2内部の密閉空間には、冷媒5が封入されている。冷媒5の具体的な例としてHFC(hydro fluorocarbon:ハイドロフルオロカーボン)や、HFE(hydro fluorether:ハイドロフルオロエーテル)や、水などを用いることができるが、材料はこれに限定されない。
【0026】
平板状容器2内部の密閉空間における冷媒5の分圧は、ポンプなどを用いて大気圧よりも減圧された状態で飽和蒸気圧を保っている。冷媒5は低沸点であるため、圧力を下げることで冷媒5の沸点を30度程度まで低下させることができる。その結果、冷媒5は発熱体4が発生する熱によって沸騰することができる。
【0027】
図5に示すように、平板状容器2は、凝縮部20において外表面に放熱部3を設けている。なお図5は、断面図を示す。凝縮部20は、蒸発部30に対して鉛直上方向に設けられているため、放熱部3も発熱体4に対して鉛直上方向に設けられている。
【0028】
また放熱部3が平板状容器2に設けられる面は、発熱体4が取り付けられている面と同じ面でもよいし、発熱体4が取り付けられている面とは対向する反対側の面でもよい。(図2,3では、発熱体4が取り付けられている面と同じ面に放熱部3が設けた場合を示す。)なお発熱体4を複数備え、平板状容器2の複数の面に設けてもよい。放熱部3は、例えばフィン形状であり表面積が大きく、銅やアルミなど熱伝導性が高い材質であれば特に限定されない。
【0029】
図3、4に示すように平板状容器2は、放熱部3が配置された領域における内壁面の一部である凹凸構造形成部60に凹凸構造6を備える。凹凸構造6は、凹部6aと凸部6bとで構成され、凹部6aは凸部6bや他の壁面に比べて厚さが薄い。(なお図示していないが、凸部6bを凹部6aや他の壁面に比べて厚さを厚く形成してもよい。)凹部6aと凸部6bの数や、大きさや、深さは特に限定されない。
【0030】
凹凸構造6は、少なくとも一部が放熱部3と熱的に接続している平板状容器2の内壁面に形成されており、放熱部3と凹凸構造6とは平板状容器2を介して、少なくとも一部が対向している。凹凸構造6における凹部6aは、他の部分と比べて膜厚が薄いため放熱部3との距離が短い。その結果、凹部6aは放熱部3に対して熱を伝えやすく、他の平板状容器2の内壁と比べて温度が低くなる。
【0031】
凹凸構造6は、図4に示すように、凹凸構造6の凹部6aと凸部6bは、溝形状で所定の方向に延伸して設けられていてもよいし、図3に示すように凹部6aや凸部6bは穴形状の穴部で構成され、点在して設けられていてもよい。
【0032】
〔作用・効果の説明〕次に、本実施形態における作用・効果について説明を行う。
【0033】
平板状容器2は、例えば銅、アルミニウムなどの熱伝導性の高い材料で構成されており、発熱体4と熱伝導性グリースを介して熱的に接続している。そのため発熱体4が発する熱は、平板状容器2を介して、平板状容器2の内部に設けられた冷媒5に伝わる。
【0034】
平板状容器2内部の密閉空間に設けられている冷媒5の気液界面が、発熱体4が取り付けられている高さよりも高く、また放熱部3や凹凸構造6が配置されている高さよりも低い位置になるように冷媒5の量が調整されている。なお密閉空間の全てが冷媒5で満たされないように冷媒5の量は調整されている。
【0035】
そして冷媒5は、発熱体4が発する熱を受熱することで沸騰する。平板状容器2の密閉空間に設けられた冷媒5が沸騰することで発生した冷媒5の蒸気は、気液密度の差による浮力により、平板状容器2の上部に運ばれる。
【0036】
平板状容器2の上部に運ばれた冷媒5の蒸気は、平板状容器2を介して平板状容器2と熱的に接続した放熱部3により外気と熱交換を行う。放熱部3は、フィン形状とすることにより表面積を拡大でき、外気と効率よく熱交換を行うことが可能である。
【0037】
放熱部3と熱的に接続している平板状容器2内部に設けられた冷媒5の蒸気は、冷却されて凝縮する。液化した冷媒5は、重力により平板状容器2内を下降し、冷媒5の気液界面へと還流する。そして冷媒5は、再び発熱体4が発する熱により沸騰することで、冷却サイクルが継続して行われる。
【0038】
換言すると、平板状容器2の内部に設けられた冷媒5は、発熱体4が発する熱により液体から気体に変化し、そして放熱部3を介して冷却されることで気体から再び液体に凝縮する。つまり冷媒5は、液体から気体、そして気体から液体と相変化を繰り返すことで、発熱体4が発生した熱を、放熱部3を介して放熱を行う。
【0039】
しかし、図6に示すように平板状容器2の内壁に凹凸構造6を有しない冷却装置1の場合、放熱部3により冷却されて凝縮した冷媒5は、表面張力により平板状容器2の内壁面に凝縮液膜10を形成してしまう。平板状容器2の内壁面に表面張力により形成された凝縮液膜10は、放熱部3により冷却された平板状容器2と冷媒5の蒸気とのあいだに存在するため、両者の熱交換率を低下させてしまう。
【0040】
詳細に説明すると、図6に示すように放熱部3の冷却により平板状容器2の内壁に冷媒5の蒸気が凝縮して凝縮液膜10が表面張力によって形成されると、冷却された平板状容器2と冷媒5の蒸気とが直接に接触することができない。そのため放熱部3により冷却された平板状容器2の大半に凝縮液膜10が形成されると、冷媒5の蒸気は凝縮液膜10を介して平板状容器2と熱交換を行う必要がある。
【0041】
しかし冷媒5は、平板状容器2に比べると熱電導率が低いため、冷媒5の蒸気と平板状容器2との間に冷媒5の凝縮液膜10が形成されると、冷媒5の蒸気と平板状容器2とのあいだの熱交換性能が低下し、冷却性能も低下する。その結果、冷媒5の蒸気を凝縮させて液化するという冷却サイクルを継続的に行うことが困難になる。
【0042】
それに対して、本実施形態による冷却装置1では、放熱部3が設けられている平板状容器2の内壁面に、凹凸構造6を有している。図7に示すように、放熱部3により平板状容器2が冷却されると、冷媒5の蒸気は平板状容器2の内壁面において凝縮する。そして平板状容器2の内壁面に形成された凹凸構造6の凹部6aの底面に、凝縮膜10が形成される。
【0043】
詳細に説明すると、凹凸構造6の凹部6aは凸部6bを含めた周囲に比べ、放熱部3との間の距離が異なるため温度差が生じる。つまり凹部6aは、凸部6bよりも放熱部3との距離が短いため温度が低くなる。そのため冷媒5の蒸気は凹部6a内で凝縮が起こると、凝縮液膜10が形成される。
【0044】
一方、凸部6bにおいて冷媒5の蒸気が凝縮しても、凹部6aに比べて放熱部3との距離が長いため凹部6aより温度が高いため、凝縮液膜10が形成されにくい。凸部6bにおいて凝縮された場合であっても、凝縮液は重力により鉛直方向の下向きに降下し、凹部6aに流入する。そのため、凸部6bには凝縮膜10は形成されない。一方、凹部6aでは、凸6bより温度が低いため凝縮液膜10が形成される。
【0045】
凹部6a内の凝縮液膜10の厚さが凹部6aの深さを超えると、凝縮液は凹部6aから溢れ凸部6b上を流れて、鉛直方向下向きに配置されている凹部6aに流入する。そして凹部6aにおいて凝縮液膜10はさらに冷却されて、その後平板状容器2下部の気液界面に還流する。
【0046】
つまり凸部6bにおいて冷媒5の蒸気が凝縮しても、凸部6bでは凝縮膜10は形成されずに凹部6aに凝縮液が流れ込む。そのため冷媒5の蒸気と、放熱部3により冷却された平板状容器2の凸部6bは、凝縮液膜10を介さずに直接に接することができる。その結果、発熱体4が発する熱を受熱して沸騰した冷媒5の蒸気を、放熱部3を介して冷却することによって、再び凝縮液化するという、沸騰冷却方式の冷却サイクルを継続的に行うことができる。
【0047】
〔第3の実施形態〕次に第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図8は、本実施形態における冷却装置1の断面図である。
【0048】
〔構造の説明〕本実施形態における冷却装置1は、鉛直方向に対して傾斜した方向に延伸して形成された溝形状部7を備えている。それ以外の構造、接続関係は、第1の実施形態と同様であり平板状容器2と、蒸発部30において発熱体4、凝縮部20において放熱部3とを備えている。
【0049】
溝形状部7は、平板状容器2の内壁に形成されており、溝型凹部7aと溝型凸7bとを備えている。溝型凹部7aは、溝型凸部7bや周囲の壁面に比べて膜厚が薄い形状である。つまり溝型凹部7aは、溝型凸部7bよりも放熱部3との間の距離が短い。なお、溝形状部7は鉛直方向に対して傾斜した方向に延伸して形成されている。
【0050】
また溝形状部7は、放熱部3と熱的に接続している平板状容器2の内壁面に設けられている。溝型凹部7aは、他の部分と比べて膜厚が薄いため、放熱部3との熱伝導の効率が他の部分に比べて高い。なお溝型凹部7a、溝型凸部7bの数や、大きさや、深さは特に限定されない。
【0051】
〔作用・効果の説明〕次に、本実施形態における作用・効果について説明を行う。
【0052】
平板状容器2内に設けられた冷媒5は、発熱体4が発する熱を受熱することで沸騰する。冷媒5が沸騰することで発生した冷媒5の蒸気は、気液密度の差による浮力により、平板状容器2の上部に運ばれる。なお平板状容器2内部の密閉空間に設けられている冷媒5の気液界面は、発熱体4が取り付けられている高さよりも高く、また放熱部3や溝形状部7が配置されている高さよりも低い位置になるように冷媒5の量が調整されている。なお密閉空間の全てが冷媒5で満たされないように冷媒5の量は調整されている。
【0053】
平板状容器2の上部に運ばれた冷媒5の蒸気は、平板状容器2を介して平板状容器2と熱的に接続した放熱部3により外気と熱交換を行う。放熱部3が冷却されると、平板状容器2内部の冷媒5の蒸気も冷却され、平板状容器2の内壁において凝縮する。
【0054】
平板状容器2の内壁に形成された溝形状部7の溝型凹部7aは平板状容器2に溝型に形成された形状であるため、凸部に比べて平板状容器2の厚みが薄い。そのため溝型凹部7aは、放熱部3との距離が近く温度が低くなる。そして溝型凹部7a内で冷媒5の蒸気が凝縮すると、凝縮液膜10が形成される。
【0055】
一方、溝型凸部7bにおいて冷媒5蒸気の凝縮が起こると、溝型凹部7aに比べて放熱部3との距離が長いため、溝型凹部7aより温度が高く凝縮液膜10が形成されにくい。そして溝型凸部7bにおいて凝縮された凝縮液は重力により鉛直方向の下向きに移動し溝型凹部7aに流入し、溝型凸部7bより温度が低い溝型凹部7aにおいて凝縮液膜10を形成する。つまり溝型凸部7bには、凝縮膜10は形成されないため、冷媒5の蒸気と放熱部3により冷却された平板状容器2の溝型凸部7bは、凝縮液膜10を介さずに直接に接することができる。
【0056】
ここで例えば、溝形状部7が鉛直方向と平行な方向に延伸して形成されている場合を考える。溝形状部7が鉛直方向に延伸して形成されている場合、溝形状部7の溝型凹部7aにおいて形成された凝縮液を平板状容器2下部の気液界面に最短距離で循環させることができる。
【0057】
しかし上記構成では、溝型凹部7aに形成される凝縮液と放熱部3とが対向している面積が少なく、また重力により平板状容器2の下部に直接凝縮液が降下するため、凝縮液が冷却される時間が短い。その結果、溝型凹部7a内に形成される凝縮液の温度を低く保つことが困難である。
【0058】
一方、溝形状部7が鉛直方向と垂直な方向に延伸して形成されている場合を考える。この場合、溝形状部7が放熱部3と対向している部分を長く設けることができるため、凝縮液の温度を低く保つことができる。また溝型凹部7aに形成された凝縮液膜10の厚さが溝型凹部7aを超えた場合、凝縮液は溝型凸部7b上を流れて移動し鉛直方向に下向きに配置されている溝型凹部7a、または気液界面に還流する。
【0059】
しかし上記構成の場合、溝型凹部7aに形成された凝縮液膜10が溝型凹部7aから溢れた場合、凝縮液の一部は溝型凸部7b上を流れるため、冷媒5の蒸気と平板状容器2との間に、凝縮液を設けてしまい、両者の熱交換率が低下することで冷却性能が低下してしまうおそれがある。
【0060】
そこで本実施形態における冷却装置1の溝形状部7は鉛直方向に対して傾斜した方向に延伸して形成されている。そのため溝型凹部7aに形成された凝縮液膜10は、溝型凹部7a内を重力方向に傾いた方向に沿って流れる。
【0061】
そして溝型凹部7aの端部において、凝縮液は溝型凹部7aから溢れでて、平板状容器2下部に設けられた気液界面に還流する。このため溝型凹部7aに形成された凝縮液膜10が、溝型凹部7aの端部以外において溝型凹部7aから溢れて溝型凸部7bを流れることを抑制することができる。そして鉛直方向に傾斜した方向に沿って溝型凹部7aを凝縮液は移動し、平板状容器2の下部へ達する。
【0062】
このように、溝形状部7は鉛直方向に対して傾いた方向に延伸して形成されているため、溝形状部7と放熱部3とが対向する部分を長く設けることができ、凝縮液の温度を低く保つことができる。その結果、溝型凸部7bで凝縮した冷媒5は、溝型凹部7aを介して排出されるので、凝縮液膜10が形成されにくい。
【0063】
以上説明したように、冷媒5の蒸気と平板状容器2の溝型凸部7bは、凝縮液膜10を介さずに直接に接することができる。その結果、発熱体4が発する熱を受熱して沸騰した冷媒5の蒸気を、放熱部3を介して冷却することによって、再び凝縮液化するという、沸騰冷却方式の冷却サイクルを継続的に行うことができる。
【0064】
〔第4の実施形態〕次に第4の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図9は、本実施形態における冷却装置1の断面図である。
【0065】
〔構造の説明〕本実施形態における冷却装置1は、溝形状部7が水平溝部8と鉛直溝部9とで構成されている。それ以外の構造は第1の実施形態と同様であり、平板状容器2を備え、蒸発部30において発熱体4を、凝縮部20において放熱部3をそれぞれ熱的に接続して使用する。
【0066】
本実施形態における溝形状部7は、鉛直方向に対して垂直な方向、つまり水平方向に延伸して形成されている水平溝部8と、鉛直方向に対して平行方向に延伸して形成されている鉛直溝部9とで構成される。水平溝部8と鉛直溝部9は、それぞれ複数設けられており、平板状容器2の内壁に溝形状として形成されている。
【0067】
水平溝部8は、複数の水平凹部8aと複数の水平凸部8bとで構成され、それぞれが鉛直方向に対して垂直方向に並んで配置されている。同様に鉛直溝部9は、複数の鉛直凹部9aと鉛直凸部9bとで構成され、それぞれ鉛直方向に対して平行方向に並んで配置されている。そして水平溝部8と鉛直溝部9とは、それぞれ互いに交差して接続している。
【0068】
隣り合って配置された複数の水平溝部8は、鉛直溝部9を介して接続している。また同様に、隣り合って配置された複数の鉛直溝部9は、水平溝部8を介して接続している。なお水平溝部8と鉛直溝部9の数や、大きさや、深さは特に限定されない。
【0069】
〔作用・効果の説明〕次に、本実施形態における作用・効果について説明を行う。
【0070】
平板状容器2内に設けられた冷媒5は、発熱体4が発する熱を受熱することで沸騰し、沸騰することで発生した冷媒5の蒸気は、気液密度の差による浮力により、平板状容器2の上部に運ばれる。なお平板状容器2内部の密閉空間に設けられている冷媒5の気液界面は、発熱体4が取り付けられている高さよりも高く、また放熱部3や水平溝部8、鉛直溝部9が配置されている高さよりも低い位置になるように冷媒5の量が調整されている。
【0071】
平板状容器2の上部に運ばれた冷媒5の蒸気は、平板状容器2を介して平板状容器2と熱的に接続した放熱部3により外気と熱交換を行う。放熱部3が冷却されると、平板状容器2内部の冷媒5の蒸気も冷却され、平板状容器2の内壁において凝縮する。
【0072】
平板状容器2の内壁に溝形状で形成された水平凹部8aと鉛直凹部9aは、水平凸部8bや鉛直凸部9bと比べて平板状筐体2の厚みが薄い。そのため水平凹部8aと鉛直凹部9aは、放熱部3との距離が短く温度が低くなりやすい。その結果、冷媒5の蒸気は、水平凹部8aと鉛直凹部9aにおいて凝縮液膜10を形成する。
【0073】
一方、水平凸部8bや鉛直凸部9bにおいて冷媒蒸気の凝縮が起こると、水平凹部8aと鉛直凹部9aに比べて放熱部3との距離が長いため、水平凹部8aと鉛直凹部9aより温度が高く凝縮液膜10が形成されにくい。
【0074】
そして水平凸部8bや鉛直凸部9bにおいて凝縮された凝縮液は重力により鉛直方向の下向きに移動し水平凹部8aと鉛直凹部9aに流れ込み、凸部6bより温度が低い凹部6aにおいて凝縮液膜10を形成する。つまり水平凸部8bや鉛直凸部9bには凝縮膜は形成されず、そのため冷媒5の蒸気と水平凸部8b及び鉛直凸部9bは凝縮液膜10を介さずに直接に接することができる。
【0075】
水平溝部8は、放熱部3と対向している部分が長いため、水平凹部8aに形成された凝縮液は、水平方向に移動することで放熱部3を介して放熱することで凝縮液の温度を低くすることができる。なお、水平凹部8aと鉛直凹部9aは接続しているため、水平凹部8aにおいて冷却された凝縮液は、鉛直凹部9aに流れる。
【0076】
一方、鉛直溝部9は、放熱部3と対向している部分が短いが、鉛直方向に対して平行に形成されているため、鉛直凹部9aに形成された凝縮液膜10は、重力方向に沿って平板状容器2下部の冷媒5の気液界面に還流することができる。
【0077】
そして鉛直凹部9aの下端部において、凝縮液は鉛直凹部9aから流出し、平板状容器2下部に設けられた気液界面に還流する。つまり鉛直凹部9aに形成された凝縮液膜10は、鉛直凹部9aの端部以外において鉛直凹部9aから溢れて鉛直凸部9bを流れることを抑制することができる。
【0078】
上記構成により、冷媒5の蒸気と水平凸部8b及び鉛直凸部9bは、凝縮液膜10を介さずに直接に接することができる。その結果、発熱体4が発する熱を受熱して沸騰した冷媒5の蒸気を、放熱部3を介して冷却することにより、冷媒5を凝縮して再び液化するという、沸騰冷却方式の冷却サイクルを継続的に行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 冷却装置
2 平板状容器
3 放熱部
4 発熱体
5 冷媒
6 凹凸構造
6a 凹部
6b 凸部
7 溝形状部
7a 溝型凹部
7b 溝型凸部
8 水平溝部
8a 水平凹部
8b 水平凸部
9 鉛直溝部
9a 鉛直凹部
9b 鉛直凸部
10 凝縮液膜
20 凝縮部
30 蒸発部
60 凹凸構造形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が接続される蒸発部と、
放熱部が接続される凝縮部と、
前記蒸発部で気化し、凝縮部で凝縮する冷媒とを有し、
前記凝縮部は、前記放熱部と熱的に接続する面に凹凸構造を備えている冷却装置。
【請求項2】
前記凹凸構造は、前記凝縮部を構成する内壁面に設けられた溝形状部を含む請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記凹凸構造は、前記凝縮部を構成する内壁面に設けられた穴部を含む請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記溝形状部は、鉛直方向に対して傾斜した方向に延伸して配置されている請求項2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記溝形状部は、
鉛直方向に対して垂直方向に延伸して形成されている水平溝部と、
鉛直方向に対して平行な方向に延伸して形成されている鉛直溝部とを備え、
前記垂直溝部と前記鉛直溝部は互いに接続していることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記蒸発部と前記凝縮部を収容する平板状容器を備え、
前記冷媒は、前記平板状容器の内部を循環する請求項1乃至5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記蒸発部と前記凝縮部を接続する配管を備え、前記冷媒は前記配管を通って循環する請求項1乃至5に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記凝縮部は、前記蒸発部に対して鉛直上方に配置されている請求項1乃至7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷媒の気液界面が、前記蒸発部と前記凝縮部とのあいだに位置する請求項1乃至8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記冷媒の材質は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、または水のいずれか1つを含む請求項1乃至9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記平板状容器の材質は、銅、もしくはアルミニウムのいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至10に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記冷媒の分圧が、大気圧よりも小さい請求項1乃至11に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7501(P2013−7501A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138667(P2011−138667)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発/最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発/集熱沸騰冷却システムの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】