説明

冷媒輸送用ホース

【課題】耐酸性に優れ、ホースの割れを抑制することができ、屈曲耐久性に優れた冷媒輸送用ホースの提供を目的とする。
【解決手段】フッ素系冷媒と接する管状の内層1と、その外周面に形成される中間層2と、さらにその外周に形成される少なくとも一つのゴム層3,5とを備えた冷媒輸送用ホースであって、上記内層1がポリプロピレンを主成分とする内層用材料からなり、上記中間層2がポリアミドを主成分とする中間層用材料からなるとともに、上記内層用材料が受酸剤を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンホース等の冷媒輸送用ホースに関するものであり、詳しくは、フロン(R12)や代替フロン(単一冷媒であるR−134aや、混合冷媒であるFluid H等)のようなフッ素系冷媒を輸送することができ、自動車のエンジンルーム内での配管用ホース等として用いられる冷媒輸送用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のエンジンルーム内における配管用ホースとして用いられる冷媒輸送用ホースにおいては、フロン(R12)や代替フロン(R−134a等)のようなフッ素系冷媒が使用されている。近年、オゾン層破壊ガスの蒸散規制強化に伴い、自動車用冷媒ホースの冷媒透過性に対する要求が厳しくなっており、そのため、冷媒輸送用ホースの内層用材料には、ポリアミドのような結晶性の高い樹脂が使用されている。このような冷媒輸送用ホースとしては、例えば、ポリアミドからなる内層と、ポリプロピレンとブチルゴムとのアロイ剤からなる外層とを備え、両層を接着剤により接着してなるホースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、フロン等のフッ素系冷媒は、長期使用により劣化して酸が発生し、その酸によりポリアミドのアミド結合が分解されるため、上記特許文献1に記載のホースでは、ホースが屈曲する際にホースが割れる等の難点がある。そこで、この問題を解消するため、ポリアミドからなる層の内側に、ポリアミドよりも耐酸性に優れたポリプロピレンからなる層(最内層)を形成したホースが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第97/31212号
【特許文献2】特表2008−507436号公報
【特許文献3】特開2002−213659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、自動車のエンジンルーム内等に使用される冷媒輸送用ホースは、冷却効率を上げるために使用環境がより高温条件下となる傾向にあり、アミド結合の分解がより促進されやすくなっている。そのため、上記特許文献2,3のホースでは、ホースが屈曲する際のホース割れを解消することができず、屈曲耐久性の点でさらに改良の必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐酸性に優れ、ホースの割れを抑制することができ、屈曲耐久性に優れた冷媒輸送用ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の冷媒輸送用ホースは、フッ素系冷媒と接する管状の内層と、その外周面に形成される中間層と、さらにその外周に形成される少なくとも一つのゴム層とを備えた冷媒輸送用ホースであって、上記内層がポリプロピレンを主成分とし、受酸剤を含有する内層用材料からなり、上記中間層がポリアミドを主成分とする中間層用材料からなるという構成をとる。
【0008】
すなわち、本発明者らは、耐酸性に優れ、ホースの割れを抑制することができ、屈曲耐久性に優れた冷媒輸送用ホースを得るため、鋭意研究を重ねた。そして、ポリアミドからなる層(中間層)の内周面に、ポリアミドよりも耐酸性に優れるポリプロピレンからなる内層(最内層)を形成し、かつ上記内層に受酸剤を含有させると、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の冷媒輸送用ホースは、ポリプロピレンを主成分とする内層用材料からなる内層の外周面に、ポリアミドを主成分とする中間層用材料からなる中間層が形成されるとともに、上記内層に受酸剤が含有されているため、アミド結合の分解によるホース割れを抑制することができ、屈曲耐久性に優れている。
【0010】
そして、上記受酸剤が、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛および酸化マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つであると、受酸効果が向上するようになる。
【0011】
さらに、上記受酸剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲であると、発生した酸による中間層(ポリアミド樹脂層)への悪影響が抑制され、結果として屈曲耐久性がさらに良好となり、ホースの信頼性が向上する。
【0012】
また、上記内層用材料のポリプロピレンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであると、内層と中間層との層間接着性が向上し、接着剤なし(接着剤レス)で内層と中間層とを直接接着させることができるようになる。
【0013】
そして、上記ゴム層がブチル系ゴム層である場合には、水遮断性(水バリア性)がさらに向上し、上記ゴム層がエチレン−プロピレン系ゴム層である場合には、耐熱性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の冷媒輸送用ホースの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0016】
本発明の冷媒輸送用ホースとしては、例えば、図1に示すように、内層1の外周面に中間層2が形成され、その外周面に内面ゴム層3が形成され、その外周面に補強層4が形成され、さらにその外周面に外面ゴム層5が形成されたものがあげられる。上記内層1は、フッ素系冷媒と直接接するため最内層となる。
【0017】
本発明においては、上記内層1がポリプロピレンを主成分とする内層用材料からなり、上記中間層2がポリアミドを主成分とする中間層用材料からなるとともに、上記内層用材料に受酸剤を含有させている。これが、本発明の最大の特徴である。
【0018】
つぎに、これらの成分について説明する。
《内層》
上記内層1は、ポリプロピレンを主成分とし、受酸剤を含有する内層用材料からなる。
本発明において、ポリプロピレンを主成分とする内層用材料とは、上記内層用材料の過半をポリプロピレンが占めることをいう。
【0019】
〈ポリプロピレン〉
上記ポリプロピレンは、中間層との接着性の点から、変性ポリプロピレンが好ましく、特に好ましくは無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。
【0020】
上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの変性量は、0.26〜0.36重量%が好ましく、特に好ましくは0.26〜0.28重量%である。すなわち、変性量が低すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられ、逆に変性量が高すぎると、耐熱性が劣る傾向がみられるからである。
【0021】
また、上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの融点は、165〜168℃が好ましい。すなわち、融点が低すぎると、耐熱性が劣る傾向がみられ、逆に融点が高すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0022】
〈受酸剤〉
上記受酸剤としては、例えば、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、受酸効果が優れる点から、ハイドロタルサイトが好ましい。
【0023】
上記ハイドロタルサイトとしては、例えば、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 ・3.5H2 O、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 、Mg4 Al2 (OH)12CO3 ・3.5H2 O、Mg6 Al2 (OH)16CO3 ・4H2 O、Mg5 Al2 (OH)14CO3 ・4H2 O、Mg3 Al2 (OH)10CO3 ・1.7H2 O、Mg3 ZnAl2 (OH)12CO3 ・wH2 O、Mg3 ZnAl2 (OH)12CO3 等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
上記受酸剤の平均粒径は、通常、0.02〜0.6μmの範囲であり、好ましくは0.45〜0.58μmの範囲である。
【0025】
なお、本発明において上記受酸剤の平均粒子径は、全自動表面積測定装置(マルチソープ12)により測定した値をいう。
【0026】
上記受酸剤の含有量は、上記ポリプロピレン100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜4重量部の範囲である。すなわち、受酸剤が少なすぎると、耐酸性が悪くなり、ホースの割れを充分に抑制することができなくなる傾向がみられ、逆に受酸剤が多すぎると、加工性や屈曲耐久性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0027】
なお、上記内層用材料は、ポリプロピレンに受酸剤を所定量配合し、さらにその他の添加剤(充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、柔軟成分、耐熱剤等)を必要に応じて適宜配合することにより調製することができる。
【0028】
《中間層》
上記管状の内層1の外周面に形成される中間層2は、ポリアミドを主成分とする中間層用材料からなる。
本発明において、ポリアミドを主成分とする中間層用材料とは、上記中間層用材料の過半をポリアミドが占めることをいい、ポリアミドのみからなる場合も含む。
【0029】
〈ポリアミド〉
上記ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド92(PA92)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)、芳香族系ナイロン等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、層間接着性に優れることと、より冷媒の低透過性に優れることから、ポリアミド6が好ましい。
【0030】
なお、上記中間層用材料は、ポリアミドにその他の添加剤(充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、柔軟成分、造核剤、耐熱剤等)を必要に応じて適宜配合することにより調製することができる。
【0031】
《ゴム層》
上記内面ゴム層3および外面ゴム層5(以下、単に「ゴム層」と略す場合もある。)のメインポリマー(基材)としては、例えば、ブチル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム〔エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)〕のようなジエン系ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、水遮断性(水バリア性)の点では、ブチル系ゴムが好ましく、耐熱性の点では、エチレン−プロピレン系ゴムが好ましい。
【0032】
なお、本発明の冷媒輸送用ホースにおけるゴム層は、図1に示したような2層構造(内面ゴム層3、外面ゴム層5)に限定されるものではなく、3層構造(内面ゴム層3、中間ゴム層、外面ゴム層5)、もしくは4層以上の多層構造であっても差し支えない。
【0033】
上記ゴム層の好ましい組み合わせとしては、例えば、内面ゴム層3(エチレン−プロピレン系ゴム層またはブチル系ゴム層)/外面ゴム層5(エチレン−プロピレン系ゴム層またはブチル系ゴム層)のような2層構造や、内面ゴム層3(エチレン−プロピレン系ゴム層またはブチル系ゴム層)/中間ゴム層(エチレン−プロピレン系ゴム層またはブチル系ゴム層)/外面ゴム層5(エチレン−プロピレン系ゴム層またはブチル系ゴム層)のような3層構造等があげられる。
【0034】
〈ブチル系ゴム〉
上記ブチル系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)や、ハロゲン化ブチルゴムが用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。上記ハロゲン化ブチルゴムとしては、例えば、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)等が用いられる。
【0035】
〈エチレン−プロピレン系ゴム〉
上記エチレン−プロピレン系ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)等があげられる。
【0036】
上記EPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、炭素数5〜20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0037】
なお、上記ゴム層3,5を形成するゴム層用材料(ゴム組成物)には、ブチル系ゴム等のメインポリマーの他、樹脂架橋剤、レゾルシノール系化合物(接着剤成分)、メラミン系化合物(接着剤成分)、カーボンブラック、充填剤、軟化剤、粘着付与剤、加工助剤等を、必要に応じて適宜に配合することができる。
【0038】
〈樹脂架橋剤〉
上記樹脂架橋剤としては、例えば、アルキルフェノールのホルムアルデヒド縮合体等があげられる。上記樹脂架橋剤としては、具体的には、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体(田岡化学工業社製、タッキロール201MB35)等があげられる。
【0039】
上記樹脂架橋剤の含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して20〜40重量部が好ましい。
【0040】
〈レゾルシノール系化合物(接着剤成分)〉
上記レゾルシノール系化合物としては、主に接着剤として作用するものが好ましく、例えば、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド(RF)樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、蒸散性、ゴムとの相溶性の点で、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が好適に用いられる。
【0041】
上記変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、下記の一般式(1)〜(3)で表されるものがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
上記レゾルシノール系化合物の含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0046】
〈メラミン系化合物(接着剤成分)〉
上記メラミン系化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらは、架橋の際の加熱下で分解し、ホルムアルデヒドを系に供給する。これらのなかでも、低揮発性、ゴムとの相溶性が優れるという点で、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好ましい。
【0047】
上記ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、例えば、下記の一般式(4)で表されるものが好ましい。特に、一般式(4)中、n=1の化合物が43〜44重量%、n=2の化合物が27〜30重量%、n=3の化合物が26〜30重量%の混合物が好ましい。
【0048】
【化4】

【0049】
上記メラミン系化合物の含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して、5重量部以下が好ましい。
【0050】
ここで、上記レゾルシノール系化合物とメラミン系化合物との混合比は、重量比で、1:0.5〜1:2の範囲が好ましく、特に好ましくは1:0.77〜1:1.5の範囲である。
【0051】
〈カーボンブラック〉
上記カーボンブラックとしては、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等のグレードがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0052】
上記カーボンブラックの含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して30〜150重量部の範囲が好ましい。
【0053】
〈充填剤〉
上記充填剤としては、例えば、タルク、マイカのような鉱物由来の無機化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0054】
上記充填剤の含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましい。
【0055】
〈軟化剤〉
上記軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリン等のワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0056】
上記軟化剤の含有量は、上記ブチル系ゴム等のメインポリマー100重量部に対して40重量部以下が好ましい。
【0057】
上記ゴム層用材料(ゴム組成物)は、各成分を配合し、ロール等で混練することにより調製することができる。
【0058】
《補強層》
上記補強層4の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),アラミド,ポリアミド,ビニロン,レーヨン,金属ワイヤ等の補強線材を用いることができる。上記補強層4は、上記補強線材をスパイラル編組,ブレード編組,ニット編組等により編組することにより作製することができる。
【0059】
つぎに、本発明の冷媒輸送用ホースの製法について説明する。すなわち、まず、ポリプロピレンを主成分とし、受酸剤を含有する内層用材料を調製するとともに、ポリアミドを主成分とする中間層用材料を調製する。また、ブチル系ゴム等のメインポリマーに、その他の成分を所定の割合で配合し、これらを混練してゴム層用材料(内面ゴム層用材料および外面ゴム層用材料)を調製する。つぎに、上記内層用材料および中間層用材料をマンドレル上にホース状に押し出し成形して、内層1の外周面に中間層2を形成する。なお、必要に応じて、マンドレルは省略しても差し支えない。つぎに、上記中間層2の外周面に、内面ゴム層用材料を押し出し成形して内面ゴム層3を形成した後、この外周面にPET糸等の補強糸をブレード編組等して補強層4を形成する。さらに、上記補強層4の外周面に、上記外面ゴム層用材料を押し出し成形して外面ゴム層5を形成した後、所定の条件で加硫する。このようにして、内層1の外周面に中間層2が形成され、その外周面に内面ゴム層3、補強層4、外面ゴム層5が順次形成されてなる冷媒輸送用ホース(図1参照)を作製することができる。
【0060】
本発明の冷媒輸送用ホースにおいて、ホース内径は5〜40mmの範囲が好ましい。また、上記内層1の厚みは、0.02〜2mmの範囲が好ましく、上記中間層2の厚みは、0.02〜2mmの範囲が好ましく、上記ゴム層3,5の厚みは、0.5〜5mmの範囲が好ましい。
【0061】
本発明の冷媒輸送用ホースは、上記図1に示した構造に限定されるものではなく、先に述べたように、ゴム層が3層以上の構造、例えば、内層/中間層/内面ゴム層/補強層/中間ゴム層/補強層/外面ゴム層等の層構造であっても差し支えない。なお、内層用材料として、変性していないポリプロピレン(無変性PP)を使用する場合は、内層1と中間層2との界面に接着剤層を形成しても差し支えない。また、この接着剤層中には、上述の受酸剤を配合しても差し支えない。
【実施例】
【0062】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す内層用材料、中間層用材料およびゴム層用材料(ゴム組成物)をそれぞれ調製した。
【0064】
〔内層用材料の調製〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(変性PP)として、三井化学工業社製、アドマーQF500(変性量0.27重量%、融点165℃)を準備した。そして、この変性PPに、下記の表1に示す受酸剤(ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)を同表に示す割合で配合して、内層用材料を調製した。なお、受酸剤としては、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製、DHT−4A)、酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キョーワマグ♯150)、酸化亜鉛(三井金属鉱業社製、酸化亜鉛1種)を使用した。
【0065】
〔中間層用材料の準備〕
中間層用材料として、ポリアミド6(PA6)(宇部興産社製、ナイロン6 1018I)を準備した。
【0066】
〔EPDM系ゴム組成物の調製〕
EPDM(住友化学工業社製、エスプレン501A)100重量部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)100重量部と、プロセスオイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW−380)60重量部と、過酸化物架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)4.2重量部と、レゾルシノール系化合物として前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(住友化学工業社製、スミカノール620)1重量部と、メラミン樹脂としてホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(住友化学工業社製、スミカノール507A)0.77重量部とを配合し、これらをバンバリーミキサー(神戸製鋼社製)およびロール(日本ロール社製)を用いて混練して、EPDM系ゴム組成物を調製した。
【0067】
〔実施例1〜4、比較例1〕
下記の表1に示す内層用材料、中間層用材料、ゴム組成物(内面ゴム層用材料、外面ゴム層用材料)を使用してホースを作製した。すなわち、上記内層用材料および中間層用材料を、TPX(三井化学社製)製のマンドレル(外径12mm)上にホース状に押し出し成形して、内層の外周面に中間層を形成した。つぎに、この中間層の外周面に、内面ゴム層用材料を押し出し成形して内面ゴム層を形成した後、この外周面にPET糸のブレード編組により補強層を形成した。さらに、上記補強層の外周面に、上記外面ゴム層用材料を押し出し成形して外面ゴム層を形成した。そして、これを加硫(170℃×30分)した後、長尺の積層ホースを所望の長さに切断することにより、内層(厚み0.1mm)、中間層(厚み0.1mm)、内面ゴム層(厚み1.0mm)、補強層、外面ゴム層(厚み2.0mm)が順次形成されてなるホースを作製した(内径12.0mm)。
【0068】
【表1】

【0069】
このようにして得られた実施例および比較例のホースを用いて、下記の基準に従って、耐冷媒・冷凍機油性の評価を行った。これらの結果を、上記表1に併せて示した。
【0070】
〔耐冷媒・冷凍機油性(屈曲耐久性)〕
約400mmの長さのホース両端をアルミ金具でカシメし、冷媒(HFC−134a)6g、ポリアルキレングリコール(PAG)系冷凍機油(出光興産社製、ダフニーハーメチックオイルNF)約13g、水(蒸留水)15,000ppmを封入して、所定温度で所定時間(120℃×500時間、150℃×168時間)老化した後に、ホースを半分割し、目視で割れの有無を確認した。
〈評価〉
○:割れなし
×:割れあり
【0071】
上記表1の結果から、実施例1〜4は、内層用材料に受酸剤(ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)を含有させているため、耐冷媒・冷凍機油性(屈曲耐久性)が優れていた。なお、本発明者は、中間層用材料のPA6に代えて、PA6,PA612を使用した場合も、PA6を使用した実施例と同様の優れた効果が得られることを実験により確認している。また、本発明者は、EPDM系ゴム組成物からなる外面ゴム層に代えて、ブチル系ゴム組成物からなる外面ゴム組成物を使用した場合でも、EPDM系ゴム組成物からなる外面ゴム層を使用した実施例と同様の優れた効果が得られることを実験により確認している。
【0072】
これに対して、比較例1は、内層用材料に受酸剤を含有させていないため、耐冷媒・冷凍機油性(屈曲耐久性)が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の冷媒輸送用ホースは、フロン,代替フロン等のフッ素系冷媒を輸送するエアコンホース等に使用される。そして、上記冷媒輸送用ホースは、自動車用のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等にも用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 内層
2 中間層
3 内面ゴム層
4 補強層
5 外面ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系冷媒と接する管状の内層と、その外周面に形成される中間層と、さらにその外周に形成される少なくとも一つのゴム層とを備えた冷媒輸送用ホースであって、上記内層がポリプロピレンを主成分とし、受酸剤を含有する内層用材料からなり、上記中間層がポリアミドを主成分とする中間層用材料からなることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
【請求項2】
上記受酸剤が、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛および酸化マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項3】
上記受酸剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲である請求項1または2記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項4】
上記内層用材料のポリプロピレンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項5】
上記冷媒輸送用ホースは、内層の外周面に中間層が形成され、その外周面に内面ゴム層が形成され、その外周面に補強層が形成され、さらにその外周面に外面ゴム層が形成された構成である請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項6】
上記内面ゴム層が、エチレン−プロピレン系ゴム層である請求項5記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項7】
上記外面ゴム層が、ブチル系ゴム層またはエチレン−プロピレン系ゴム層である請求項5または6記載の冷媒輸送用ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2012−145180(P2012−145180A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4798(P2011−4798)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】