説明

冷陰極電離真空計、該冷陰極電離真空計を備えた真空処理装置、該冷陰極電離真空計に用いる放電開始補助電極、該冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法

【課題】本発明における課題は、長期間使用しても放電の誘発を短時間で行うことができる冷陰極電離真空計を提供することにある。
【解決手段】本発明にかかる冷陰極電離真空計は、陽極2と、陽極2とともに放電空間9を形成するように配置された陰極1と、放電空間9内に配置され、陰極1と電気的に接続された放電開始補助電極25とからなり、放電開始補助電極25は、陽極2の軸長手方向と平行に配置された電極部26を有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電を誘発する放電開始補助電極を備えた冷陰極電離真空計、それを備えた真空処理装置、放電開始補助電極、冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷陰極電離真空計は、陽極と陰極の間での自己放電により、気体の電離を誘発して真空処理装置を構成する真空容器内の気圧を測定するものである。従来、冷陰極型電離真空計としては、ペニング型のもの、マグネトロン型のもの、逆マグネトロン型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特に、マグネトロン型、逆マグネトロン型は、電子のトラップ効率が高く、高真空領域においても安定した持続放電が可能な構造であるため高真空域の測定にも適している。
【0003】
ところで、冷陰極電離真空計において、放電を開始させるために高電圧をかけて電離を誘発する必要がある。しかしながら、冷陰極電離真空計に対して高電圧をかける時期と、持続放電開始に伴い放電電流が流れ始める時期との間には時間の遅れが生じる。この時間の遅れは、計測開始までの時間に影響を与える。
【0004】
そこで、特許文献2に記載された冷陰極電離真空計は、陰極から光電子を放出させるのに充分な電磁放射線を直接照射する放電誘発手段を陰極に設けることで、電圧印加から持続放電開始までの放電誘発時間を短縮している。また、特許文献3に記載された冷陰極電離真空計は、陰極側に放電誘発する点火補助具を設けることで電圧印加から持続放電開始までの放電誘発時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−19711号公報
【特許文献2】特開平06−26967号公報
【特許文献3】特開2008−304360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された冷陰極電離真空計は、放電を誘発する誘発手段としてグローランプ、紫外線照射ランプなどの手段とそのための回路を別途設けているため装置が複雑化してしまうという不都合がある。また、特許文献2の冷陰極電離真空計では荷電粒子のトラップ効果が高いため真空計の容器壁面がスパッタされやすい。このため、長期間使用した場合には、ランプ表面にスパッタ膜や生成物が付着して紫外線の放射が妨げられることになる。その結果、放電開始の火種となる光電子の発生が減少し、放電が誘発されにくくなってしまうという不都合がある。
【0007】
一方、特許文献3の冷陰極電離真空計については、使用時間の累積による電極表面に付着するスパッタ膜や蒸着膜、或いは残留気体との反応によって生じる生成膜によって、放電誘発時間を短縮するという効果が発揮される期間が短く、寿命が短いというという不都合があった。
【0008】
そこで、本発明は、装置が複雑化することなく、長期間使用した場合であっても放電の誘発を短時間で行うことが可能な冷陰極電離真空計及びそれを備えた真空処理装置並びに放電開始補助電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷陰極電離真空計は、陽極と、陽極とともに放電空間を形成するように設けられた陰極と、放電空間内に設けられ、陰極と電気的に接続された放電開始補助電極とを有する冷陰極電離真空計であって、放電開始補助電極は、陽極の軸長手方向と平行に配置された電極部を有することを特徴とする。また、本発明に係る真空処理装置は、上述の冷陰極電離真空計を備えることを特徴とする。或いは、本発明に係る放電開始補助電極は、陽極と、陽極とともに放電空間を形成するように設けられた陰極と、放電空間内に設けられ、陰極と電気的に接続された放電開始補助電極とを有する冷陰極電離真空計に用いられる放電開始補助電極であって、陽極の軸長手方向と平行に配置された電極部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置が複雑化することなく、長期間の使用によって真空計測定子内部へのスパッタ膜や生成物が付着した場合であっても放電の誘発を短時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷陰極電離真空計を備えた真空処理装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る冷陰極電離真空計を示す横断面図である。
【図3】図2のA−A線から見た断面模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る放電開始補助電極の拡大図である。
【図5】本発明に係る放電開始補助電極の他の構成例である。
【図6】本発明に係る放電開始補助電極の他の構成例である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る冷陰極電離真空計を示す横断面図である。
【図8】本発明に係る冷陰極電離真空計と従来の冷陰極電離真空計の起動寿命の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。以下に説明する部材、配置等は本発明を具体化した一例であって、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置及びそれに取り付けられた冷陰極電離真空計を説明する図である。即ち、図1は本発明の第1の実施形態に係る冷陰極電離真空計を備えた真空処理装置の断面概略図、図2は本発明に係る冷陰極電離真空計の横断面模式図である。また、図3は図2のA−A線から見た断面図(矢視図)、図4は放電開始補助電極の拡大図、図5、6は放電開始補助電極の他の構成例である。
【0014】
図1に示すように真空処理装置Sを構成する公知の真空容器の壁面に冷陰極電離真空計が取り付けられている。即ち、冷陰極電離真空計は真空容器の壁面の開口部分に気密を保持した状態で取り付けられている。なお、図中の符号1は冷陰極電離真空計を構成する測定子容器(陰極)、符号8は接続フランジ、符号13は真空計動作回路を示す。
【0015】
本願明細書では、真空処理装置Sの例としてスパッタリング装置を説明するが、本発明はこの限りではない。例えば、PVD装置やCVD装置などの成膜装置、若しくはアッシング装置やドライエッチング装置などにも本発明の冷陰極電離真空計は好適に適用できる。
【0016】
図2は本実施形態に係る冷陰極電離真空計の横断面模式図、図3はA−A矢視図である。なお、図2,図3では図1と同一部分には同一符号を付している。本実施形態に係る冷陰極電離真空計は逆マグネトロン型真空計であり、陰極(カソード)である測定子容器1と、棒状の陽極2(アノード)と、陰極である測定子容器1の外周に配置された磁場を作る磁性手段としての磁石3と、を構成要素として有している。
【0017】
測定子容器1(陰極)は略円筒状の金属部材であり、内部の一端部側に放電空間9が形成されている。測定子容器(陰極)1は放電空間9側の一端部が開口され、その逆側の一端部が絶縁部材6によって封止されている。開口された放電空間9側の一端部には接続フランジ8とフィルター8aが設けられている。フィルター8aはステンレスメッシュなどで形成され、絶縁部材6はアルミナセラミックなどの絶縁石から構成されている。絶縁部材6には電流導入棒4が気密を保った状態で貫通して固定されている。また、フィルター8aに隣接する位置には磁場を調整するポールピース14が配置されている。
【0018】
測定子容器(陰極)1の接続フランジ8を真空容器の開口部分に取り付けることにより、フィルター8aを介して真空容器内の空間と測定子容器(陰極)1内の放電空間9とが通気可能な状態になり、真空容器の内部空間の圧力を測定することができる。磁石3は測定子容器(陰極)1の外周側を取り囲むようにリング状に取り付けられている。磁石3としてはフェライト磁石などの永久磁石が好適に用いられる。
【0019】
陽極2は棒状のアノード電極であり、測定子容器(陰極)1内部に形成された放電空間9内に配設され、一端部側が電流導入棒4に接続されている。電流導入棒4は、測定子容器(陰極)1の外側で真空計動作回路13に接続されている。真空計動作回路13には、電圧を印加する電源11と、真空計動作回路13に流れる放電電流を測定する放電電流検出部12が設けられている。また、測定子容器(陰極)1には放電開始補助電極25が設けられている。
【0020】
図4は放電開始補助電極の拡大図であり、図4(a)は放電開始補助電極25の側面図、図4(b)はB−Bの矢視図である。放電開始補助電極25は、SUS304等のステンレス鋼、ニッケル合金、高融点材料などの耐食性の高い金属薄板で形成されている。放電開始補助電極25は、測定子容器(陰極)1に係止される係止部27に、突起26aを有する電極部26が連結されて構成されている。
【0021】
係止部27には、ねじ16を係止するためのねじ穴27aが形成されており、ねじ穴27aにねじ16を通して締結することで、測定子容器(陰極)1の絶縁部材6側に放電開始補助電極25を着脱可能に取り付けることができる。電極部26は、係止部27に一体に連結されており、電極部26と係止部27は板厚方向が直角の空間配置になるように構成されている。放電開始補助電極25が測定子容器(陰極)1に取り付けられたときに、複数の突起26aが陽極2の軸方向(軸長手方向)に平行に並んで配置される。ここでいう平行とは、電極部26(及び56)の複数の突起26aが、陽極2の軸方向とほぼ平行に配置されている状態をいう。なお、電極部26の平面形状は矩形に限定されるものではないが、少なくとも陽極2の軸方向に配置される部分を有しているものとする。
【0022】
もちろん、放電開始補助電極25をポールピース14に取り付ける構成であっても良い。なお、突起26aは陽極2の外周面に対して先端が尖った形状であればよい。先端が尖っている方が低い電圧で電子を引き出す効果が高いためである。同様に、放電開始補助電極25の陽極2に対向する突起26a部分の厚さは100μm程度が好ましく、特に、突起部26aの先端部分はさらに薄く形成されるのが望ましい。厚さが薄い方が、低い電圧で電子を引き出す効果が高いためである。
【0023】
放電開始補助電極25は、測定子容器(陰極)1の絶縁部材6側、若しくは、ポールピース14に係止された係止部27から放電空間9の中心に向かって延びた電極部26を有している。そのため、放電空間9の中心に近い領域で放電させることができ、より確実な放電の開始を行うことができる。また、放電開始補助電極25を幅の狭い板状とすることで、放電空間9内の電界不均一を最小限に抑えることができ、放電開始補助電極25を設置したことによる放電特性の影響を最小限に抑えることができる。
【0024】
上述した実施形態においては、放電開始補助電極25が測定子容器(陰極)1に取り付けられたときに、複数の突起26aが陽極2の軸方向(長手方向)に並ぶ構成について説明したが、電極部26の先端側に少なくとも1つの突起26aを有する構成であればよい。ただし、長期間の使用によって真空計測定子内部へのスパッタ膜や生成物が付着した場合であっても、放電の誘発を短時間で行うためには複数の突起26aが電極部26に形成される方が望ましい。
【0025】
図5、6は、放電開始補助電極の他の構成例であり、放電開始補助電極25(図4参照)に替えてこれらの放電開始補助電極35,45,55,65を用いることができる。放電開始補助電極35の側面図を図5(a)に、正面図を図5(b)に示す。放電開始補助電極35は、突起を備えない電極部36により構成したものである。また、放電開始補助電極45の側面図を図5(c)に、正面図を図5(d)に示す。放電開始補助電極45は、放電開始補助電極25の電極部26の部分を細いワイヤー46(線材)にて構成したものである。
【0026】
図5(e)に示した放電開始補助電極55は、電極部26を係止部27から延長するように形成された構成であり、陰極1と電気的に接続されたポールピース14側に取り付けることもできる。ポールピース14に取り付けることでメンテナンスがさらに容易となり、放電開始補助電極55を交換する際にポールピース14と同時に交換することができる。もちろん他の放電開始補助電極25、35,45もポールピース14に取り付けることで同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、電極部26,36,46の軸方向(軸長手方向)の長さは特に限定されるものではないが、少なくとも陽極2の軸方向に配置される部分を有しているものとする。そして、電極部26,36,46が配置される方向は、陽極の先端側(真空容器側)以外にも絶縁部材6側であってもよい。電極部26,36,46を絶縁部材6側に延長した場合にも従来技術を超える効果が確認されている。
【0028】
図6には放電開始補助電極65の正面図を示した。放電開始補助電極65は、弾性変形する爪部28aを有する係止部28に、電極部66が取り付けられている。係止部28の長手方向の幅を測定子容器(陰極)1の内径よりもやや小さな寸法とし、爪部28aの先端を測定子容器(陰極)1の内径よりも僅かに大きな寸法とされている。このため、ねじ16なしでも取り付けることができ、放電開始補助電極65の交換作業などをより迅速かつ高精度に行うことができる。
【0029】
すなわち、測定子容器(陰極)1の内側を爪部28aが外方に常に押圧することで、係止部28を測定子容器(陰極)1の所定位置に固定することができる。このとき、係止部28に垂直に取り付けられた電極部66が陽極2と平行に配置される。なお、電極部66の形状としては他の電極部26,36,46の各形状を採用することができるものとする。なお、電極部26などが陽極2と平行に配置されている状態とは、陽極2の軸方向と電極部26,36,46,56,66の長手方向がほぼ平行に配置されている状態をいい、さらに、陽極2の外周に対向する電極部26,36,46,56,66の一部分が、陽極2の軸方向とほぼ平行に配置される状態を含むものとする。
【0030】
また、上述した実施形態においては、放電開始補助電極25,35,45,55,65(以下では、25など、とする)を各1つ備える冷陰極電離真空計について記載したが、放電開始補助電極(25など)を複数備える構成であっても良い。この場合、陽極2の周囲に複数設けられた放電開始補助電極(25など)は陽極2の軸線を中心に対称位置に配置されると好適である。冷陰極電離真空計を上記構成とすることによって、真空計の構成が複雑化することなく、長期間の使用によって電極表面に膜や汚れが付着した場合であっても、放電の誘発を短時間で行うことが可能となる。特に、本発明の放電開始補助電極25,35,45,55によれば、放電誘発時間を短縮するという効果を長期にわたり発揮することができ、従来知られていた電極構造に比べて寿命(メンテナンス間隔)を大幅に延ばすことができる。本発明に係る冷陰極電離真空計にてメンテナンスが必要になるまでの間隔を測定したところ、従来の電極構造の真空計の20倍以上であった。
【0031】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る冷陰極電離真空計を備えた真空処理装置の断面概略図である。上述した第1の実施形態と同様の構成や部材には同じ符号を付してその詳細な説明を省略した。本実施形態に係る冷陰極電離真空計は、ピラニゲージフィラメント31を内蔵した、いわゆる複合型真空計であり、低真空から中真空領域ではピラニ真空計として計測し、中真空から高真空領域を冷陰極電離計として計測することで、低真空から高真空まで測定することができるように構成されている。
【0032】
本実施形態に係る冷陰極電離真空計には放電開始補助電極65が取り付けられているが、他の放電開始補助電極25などを取り付けることができることはもちろんである。このように、放電開始補助電極25などを複合型真空計に搭載した場合でも、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
図8に本発明に係る冷陰極電離真空計と従来の冷陰極電離真空計の起動寿命の比較図を示す。測定に供した本発明の冷陰極電離真空計として、放電開始補助電極65を備えた冷陰極電離真空計を用いた。従来の冷陰極電離真空計として、陰極から陽極に向けた突起を有する放電開始補助電極を備えた冷陰極電離真空計を用いた。圧力を測定した真空容器内は1×10−5 Paに設定されている。
図8の横軸である動作積算時間は、窒素ガスを一定流量導入することで冷陰極電離真空計にとって高負荷となる圧力領域(0.1 Pa)の環境を作り、その環境下での動作時間の積算時間、すなわち、冷陰極電離真空計のセンサ内部の汚れや劣化が進行し易い測定圧力上限領域における放電積算時間を表している。縦軸である放電確率は、10回の測定結果の平均であり、冷陰極電離真空計の陰極1と陽極2に電力を印加してから1秒以内に放電が開始した場合を100%、1〜5秒で放電が開始した場合を50%、5秒を経過しても放電しない場合を0%としたものである。
【0034】
まず、従来の冷陰極電離真空計は、動作積算時間5時間で放電確率が大きく低下している。それに対して本発明の冷陰極電離真空計は、130時間まで放電確率100%を維持している。この結果から本発明の冷陰極電離真空計は、従来の冷陰極電離真空計に較べて優れた起動寿命を有することがわかる。従って、本発明の冷陰極電離真空計はメンテナンス間隔を大幅に伸ばすことができる。
さらに、130時間(図8中のA点)動作させたところで一度本発明の冷陰極電離真空計を大気開放すると、起動性能が悪化する。今までの測定で、この現象は0.1Pa窒素導入環境下での動作積算時間100時間程度では起こらず、120時間以上で顕著となることが分かっている。しかしながらこのように大気開放で放電確率が悪化した本発明の冷陰極電離真空計は、後述するエージング処理(エージング工程)を行うことで放電確率を回復させることができる。なお、動作積算時間が長期間に亘れば、大気暴露しなくとも起動性能が悪化するが、その場合でも後述のエージング処理を行うことで起動性能を回復できる。
【0035】
ここで、エージング処理による起動性能回復について説明する。
エージング処理は、本発明の冷陰極電離真空計の起動性能(放電確率)を回復させる処理であり、長時間の動作や大気放置により放電確率が悪化した本発明の冷陰極電離真空計を、所定雰囲気中で所定時間放電(所定時間動作)させる処理である。
所定雰囲気と放電時間(所定時間)の組み合わせ(エージング条件)としては、窒素ガス0.1 Paで0.5時間以上放電させた条件で効果が認められ、放電確率は100%に回復した。図8中では積算動作時間132時間で放電確率100%のプロットがエージング後の測定である。もちろん、エージング条件は上記に限定されない。窒素ガス0.05Pa,1時間や、窒素ガスの代わりにアルゴンガスを導入した条件でも同様の効果が認められている。
【0036】
このように、本発明の冷陰極電離真空計はセンサ内部のクリーニングや各電極の交換をすることなく、上記のエージング処理で起動性能を回復できる。
なお、本発明の冷陰極電離真空計の起動確率の低下は、放電開始補助電極(25など)の先端付近へのスパッタ生成物付着やその付着物の表面変質による二次電子放出率の低下が原因と考えられる。一方、エージング動作による放電確率の回復は、放電開始補助電極(25など)先端部がイオン衝撃を受けてクリーニングされることが原因と考えられる。
【符号の説明】
【0037】
S 真空処理装置
1 測定子容器(陰極)
2 陽極
3 磁石
4 電流導入棒
6,7縁部材
8 接続フランジ
8a フィルター
9 放電空間
11 電源
12 放電電流検出部
13 真空計動作回路
14 ポールピース
16 ねじ
25,35,45,55,65 放電開始補助電極
26,36,46,56,66 電極部
26a 突起
27,28 支持部
27a ねじ穴
28a 爪部
31 ピラニゲージフィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
前記陽極とともに放電空間を形成するように設けられた陰極と、
前記放電空間内に設けられ、前記陰極と電気的に接続された放電開始補助電極とを有する冷陰極電離真空計であって、
前記放電開始補助電極は、前記陽極の軸長手方向と平行に配置された電極部を有することを特徴とする冷陰極電離真空計。
【請求項2】
前記放電開始補助電極は、前記陽極の軸長手方向に並んだ複数の突起を備えていることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項3】
前記放電開始補助電極の前記陽極の軸長手方向に配置される部分は、ワイヤーであることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項4】
前記放電開始補助電極は、前記陽極の周囲に複数設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の冷陰極電離真空計を備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項6】
陽極と、前記陽極とともに放電空間を形成するように設けられた陰極と、前記放電空間内に設けられ、前記陰極と電気的に接続された放電開始補助電極とを有する冷陰極電離真空計に用いられる放電開始補助電極であって、
前記陽極の軸長手方向と平行に配置された電極部を有することを特徴とする放電開始補助電極。
【請求項7】
請求項1乃至4に記載の冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法であって、
長時間の動作により放電確率が低下した前記冷陰極電離真空計を、所定雰囲気中で所定時間動作させることで放電確率を回復させるエージング処理を行うことを特徴とする冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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