説明

凍結乾燥医薬組成物

難水溶性治療化合物、水性溶媒、キレート剤/抗酸化剤、バッファーまたはバッファー構成成分および充填剤を含む医薬組成物。該医薬組成物は経口投与または非経腸投与することができる。該医薬組成物はさらに、凍結乾燥させて経口的に、例えば固体経口投与形態として投与可能な;あるいは再構成して例えば単剤として静脈内ボーラスまたは静脈内輸液として投与するか、または例えば飲用液として経口的に投与することができる、薬学的に許容されるケーキを形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキサメート化合物を含む凍結乾燥医薬組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
凍結乾燥(Lyophilization)、あるいはより一般に知られているフリーズドライは、溶液から水を抽出して粒状固体または粉末を形成する方法である。この方法は溶液を凍結し、次いで真空下で昇華させて水または湿気を抽出することによって実施する。
【0003】
他の乾燥技術と比較して、凍結乾燥は多くの利点を有する。例えば、凍結乾燥した物質の総重量は減少するが、その質は保存される。さらに、凍結乾燥した物質は最早水および空気にさらされることがないため(特に窒素またはアルゴンのような非反応性気体でパージしたバイアル中に密封するとき)、薬剤製品中の治療化合物の分解が最少となり;したがって治療化合物の貯蔵寿命が延長され、改善される。さらに、凍結乾燥医薬組成物は典型的に、冷蔵庫のような貯蔵用の特定の条件を必要としない。再構成して注射により患者に投与する医薬製品、例えば非経腸薬剤製品の開発のために、凍結乾燥は特に有用である。あるいは、凍結乾燥は経口薬剤製品、特に速溶性または瞬間溶解性製剤の開発に有用である。
【0004】
ヒドロキサメート化合物を含む多様な新規治療化合物が低い水溶性および安定性を示す。かかる医薬有効成分を例えば非経腸投与に適するように、さらなる可溶化賦形剤がしばしば添加される。これらの難水溶性治療化合物は、共溶媒系と呼ばれる水と有機溶媒を含む系に導入することが多い。これらの液性共溶媒系は溶解度を増加させるが、それらは治療化合物の安定性をわずかにしか増加させることができない。その結果、治療化合物の物理的および化学的安定性の両方を改善するためには、凍結乾燥が好ましい方法であり得る。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、ヒドロキサメート化合物;キレート剤/抗酸化剤;バッファーまたはバッファー構成成分;および充填剤を含む医薬組成物に関する。本発明の具体的な態様において、キレート剤/抗酸化剤は、組成物の2重量/体積(w/v)%以下で含まれる。バッファーまたはバッファー構成成分は、組成物の10重量/体積(w/v)%以下でそれぞれ含まれる。さらに、充填剤は組成物の1〜5%(w/v)以下で含まれる。
【0006】
本発明の1つの局面において、医薬組成物の凍結乾燥によって得られる薬学的に許容されるケーキが開示される。本発明の別の局面において、医薬組成物は上記溶液の凍結乾燥によって得られる薬学的に許容されるケーキである。このケーキを再構成すると溶液が再び得られ;この溶液は例えば静脈内(i.v.)ボーラス投与のような非経腸投与;または例えば内用液のような経口投与に許容される。薬学的に許容されるケーキそれ自体は、固体経口投与形態、例えば速溶錠または瞬間溶解錠に製剤することができる。
【0007】
本発明のさらなる局面において、非経腸投与のために水で再構成することができる薬学的に許容されるケーキの製造方法が開示される。このプロセスはヒドロキサメート化合物;キレート剤/抗酸化剤;バッファーまたはバッファー構成成分;および充填剤を含む溶液を形成する工程と、該溶液を凍結乾燥させて薬学的に許容されるケーキを形成する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、治療化合物、すなわちヒドロキサメート化合物;キレート剤/抗酸化剤;バッファー;および充填剤を含む、非経腸または経口投与に好適な医薬組成物に関する。また本発明は、該医薬組成物の凍結乾燥によって形成することができる薬学的に許容されるケーキに関する。薬学的に許容されるケーキは再構成後に経口または非経腸投与することができ、あるいは再構成せずに経口的に嚥下することができる。上記構成成分に加えて、該溶液は所望により他の賦形剤、例えばpH調節剤、安定化剤、界面活性剤およびかかる組成物に適していると当業者に認識されている他のアジュバントを含んでいてもよい。かかる賦形剤の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th Edition, Rowe et al., Eds., Pharmaceutical Press (2003)に記載されている。
【0009】
本明細書において使用するとき、用語「医薬組成物」は哺乳類、例えばヒトに投与する治療化合物を含む溶液を意味する。医薬組成物は「薬学的に許容され」、これは合理的な医学的判断の範囲内で、哺乳類、特にヒトの組織と接触させるのに適当であり、過剰の毒性、過敏性、アレルギー性応答および他の複合的課題がなく、合理的な利益/危険比と釣り合いのとれた化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。
【0010】
本明細書において使用するとき、用語「治療化合物」はヒドロキサメート化合物を意味し、これは哺乳類、例えばヒトへの投与に適している。かかる治療化合物は「治療上有効量」で投与されるべきである。
【0011】
本明細書において使用するとき、用語「治療上有効量」は、哺乳類が罹患している疾患または状態の症状を低減し、根絶し、処置し、予防し、あるいは制御するために有効な量または濃度を意味する。用語「制御」は、哺乳類が罹患している疾患および状態の進行の遅延、中断、阻止または停止が起こり得るあらゆる方法を意味する。しかし、「制御」はあらゆる疾患および状態症状を完全に根絶することを必ずしも意味せず、予防的処置を含むことを意図する。
【0012】
適切な治療上有効量は、使用する治療化合物および対処する適応症によって変化する量として当業者に知られている。例えば本発明において、治療化合物は10%(w/v)以下の量で存在し得る。
【0013】
以下に詳述する本医薬組成物または薬学的に許容される濾過ケーキは、好適には単位投与量あたり0.1mg〜100mg、例えば単位投与量あたり0.1mg、1mg、5mg、10mg、20mg、25mg、50mgまたは100mgの治療化合物を含む。
【0014】
本明細書において使用するとき、用語「単位投与量」は、対象に投与することができる1回の投与量を意味し、これは治療化合物を含む物理的および化学的に安定な投与単位として残ったまま容易に操作および包装することができる。
【0015】
特に本発明に好適な治療化合物は、水溶性の低いものである。本明細書において使用するとき、用語「難水溶性」は、20℃の水中で1%未満、例えば0.01%(w/v)未満の水溶性を有することを意味し、すなわちRemington, The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, A.R. Gennaro, Ed., Mack Publishing Company, Vol. 1, p. 195 (1995)に記載された「難溶性乃至極めて微量しか溶解しない薬剤」を意味する。
【0016】
本発明に特に適した治療化合物は、式(I):
【化1】

〔式中、
はH、ハロまたは直鎖C−Cアルキル(特にメチル、エチルまたはn−プロピル、ここで該メチル、エチルおよびn−プロピル置換基は非置換であるか、あるいはアルキル置換基について後に記載の1個以上の置換基で置換されている)であり;
はH、C−C10アルキル、(好ましくはC−Cアルキル、例えばメチル、エチルまたは−CHCH−OH)、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、−(CHC(O)R、−(CHOC(O)R、アミノアシル、HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−および−(CHから選択され;
およびRは同一または異なって、独立してH、C−Cアルキル、アシルまたはアシルアミノであるか、または
とRはそれらが結合している炭素と一体となって、C=O、C=SまたはC=NRを意味するか、または
とそれが結合している窒素、そしてRとそれが結合している炭素が一体となって、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環、または混合アリールおよび非アリールポリヘテロ多環を形成してもよく;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、芳香族性多環、非芳香族性多環、混合アリールおよび非アリール多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環ならびに混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnは同一または異なって、0〜6から独立して選択され、nが1〜6であるとき、各炭素原子は所望により、Rおよび/またはRで独立して置換されていてもよく;
【0017】
XおよびYは同一または異なって、H、ハロ、C−Cアルキル、例えばCHおよびCF、NO、C(O)R、OR、SR、CNならびにNR1011から独立して選択され;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル、2−フェニルエテニル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、OR12およびNR1314から選択され;
はOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
はH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
はC−Cアルキル、例えば、CHおよびCF、C(O)−アルキル、例えば、C(O)CHおよびC(O)CFから選択され;
10およびR11は同一または異なって、H、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから独立して選択され;
【0018】
12はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、混合アリールおよび非アリール多環、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
13およびR14は同一または異なって、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アミノアシルから独立して選択されるか、あるいは
13とR14はそれらが結合している窒素と一体となって、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環または混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環であり;
15はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CHZR12から選択され;
16はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CHZR12から選択され;
17はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、芳香族性多環、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ポリヘテロアリールおよびNR1314から選択され;
mは0〜6から選択される整数であり;そして
ZはO、NR13、SおよびS(O)から選択される〕
を有する薬剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
適切であるとき、非置換とは置換基が存在しないか、置換基が水素のみであることを意味する。
ハロ置換基はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード、好ましくはフルオロまたはクロロから選択される。
【0020】
アルキル置換基は、他に異なる記載がない限り、直鎖および分枝鎖C−Cアルキルを含む。好適な直鎖および分枝鎖C−Cアルキル置換基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル等が含まれる。これと異なる記載がない限り、アルキル置換基は非置換アルキル基と、不飽和、すなわち1個以上の二重もしくは三重C−C結合を有するもの;アシル;シクロアルキル;ハロ;オキシアルキル;アルキルアミノ;アミノアルキル;アシルアミノ;およびOR15、例えばアルコキシを含む好適な1個以上の置換基で置換されているアルキル基を含む。アルキル基の好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキシアルキル、アルキルアミノおよびアミノアルキルを含む。
【0021】
シクロアルキル置換基は、他に異なる記載がない限り、C−Cシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含む。これと異なる記載がない限り、シクロアルキル置換基は非置換シクロアルキル基と、C−Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノアルキル、オキシアルキル、アルキルアミノおよびOR15、例えばアルコキシを含む好適な1個以上の置換基で置換されているシクロアルキル基を含む。シクロアルキル基の好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキシアルキル、アルキルアミノおよびアミノアルキルを含む。
【0022】
アルキルおよびシクロアルキル置換基についての上記議論は、他の置換基、例えばアルコキシ、アルキルアミン、アルキルケトン、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホニルおよびアルキルエステル置換基等(これらに限定されない)のアルキル部分にも適用される。
【0023】
ヘテロシクロアルキル置換基は、窒素、硫黄および酸素から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、3〜9員脂肪族環、例えば4〜7員脂肪族環を含む。好適なヘテロシクロアルキル置換基の例には、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3−ジアザパン、1,4−ジアザパン、1,4−オキサゼパンおよび1,4−オキサチアパンが含まれる。他に異なる記載がない限り、環は非置換であるか、または炭素原子上で、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル、例えばピリジルメチル、ハロ、アミノ、アルキルアミノおよびOR15、例えばアルコキシを含む好適な1個以上の置換基で置換されている。他に異なる記載がない限り、窒素ヘテロ原子は非置換であるか、またはH、C−Cアルキル、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、アシル、アミノアシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルで置換されている。
【0024】
シクロアルキルアルキル置換基は、式−(CHn5−シクロアルキル(式中、n5は1〜6の数である)の化合物を含む。好適なアルキルシクロアルキル置換基には、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル等が含まれる。かかる置換基は非置換であるか、またはアルキル部分もしくはシクロアルキル部分で、アルキルおよびシクロアルキルについて上に列挙したものを含む好適な置換基で置換されている。
【0025】
アリール置換基は、非置換フェニルと、C−Cアルキル、シクロアルキルアルキル(例えばシクロプロピルメチル)、O(CO)アルキル、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アリールスルホニルおよびOR15、例えばアルコキシを含む好適な1個以上の置換基で置換されたフェニルを含む。好ましい置換基はC−Cアルキル、シクロアルキル(例えばシクロプロピルメチル)、アルコキシ、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニルおよびアミノスルホニルを含む。好適なアリール基の例には、C−Cアルキルフェニル、C−Cアルコキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシエチルフェニル、ジメチルアミノフェニル、アミノプロピルフェニル、カルボエトキシフェニル、メタンスルホニルフェニルおよびトリルスルホニルフェニルが含まれる。
【0026】
芳香族性多環は、ナフチルと、C−Cアルキル、シクロアルキルアルキル(例えばシクロプロピルメチル)、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニルおよびOR15、例えばアルコキシを含む好適な1個以上の置換基で置換されたナフチルを含む。
【0027】
ヘテロアリール置換基は、N、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子、例えば1〜4個のヘテロ原子を含む、5〜7員芳香環を有する化合物を含む。典型的なヘテロアリール置換基はフリル、チエニル、ピロール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、イソオキサゾリル、ピラジン等を含む。他に異なる記載がない限り、ヘテロアリール置換基は非置換であるか、または炭素原子上でアルキル、上記アルキル置換基、および他のヘテロアリール置換基を含む好適な1個以上の置換基で置換されている。窒素原子は非置換であるか、または例えばR13で置換されており;特に有用なN置換基はH、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルを含む。
【0028】
アリールアルキル置換基は、式−(CHn5−アリール、−(CHn5−1−(CHアリール)−(CHn5−アリールまたは−(CHn5−1CH(アリール)(アリール)(式中、アリールおよびn5は上記定義のとおりである)の基を含む。かかるアリールアルキル置換基には、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル、トリル−3−プロピル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、2−ジフェニルエチル、5,5−ジメチル−3−フェニルペンチル等が含まれる。アリールアルキル置換基は非置換であるか、またはアルキル部分もしくはアリール部分、あるいはその両方で、アルキルおよびアリール置換基について上記のように置換されている。
【0029】
ヘテロアリールアルキル置換基は、式−(CHn5−ヘテロアリール(式中、ヘテロアリールおよびn5は上記定義のとおりであり、架橋基はヘテロアリール部分の炭素または窒素と結合している)の基、例えば2−、3−もしくは4−ピリジルメチル、イミダゾリルメチル、キノリルエチルおよびピロリルブチルを含む。ヘテロアリール置換基は非置換であるか、またはヘテロアリールおよびアルキル置換基について上記のように置換されている。
【0030】
アミノアシル置換基は、式−C(O)−(CH−C(H)(NR1314)−(CH−R(式中、n、R13、R14およびRは上記されている)の基を含む。好適なアミノアシル置換基には、天然および非天然アミノ酸、例えばグリシニル、D−トリプトファニル、L−リシニル、D−もしくはL−ホモセリニル、4−アミノ酪酸アシルおよび±−3−アミン−4−ヘキセノイルが含まれる。
【0031】
非芳香族性多環置換基は、各環が4〜9員であってよく、そして各環が0、1またはそれ以上の二重および/または三重結合を含んでいてもよい二環式および三環式縮合環系を含む。非芳香族性多環の好適な例は、デカリン、オクタヒドロインデン、ペルヒドロベンゾシクロヘプテンおよびペルヒドロベンゾ−[f]−アズレンを含む。かかる置換基は非置換であるか、またはシクロアルキル基について上記のように置換されている。
【0032】
混合アリールおよび非アリール多環置換基は、各環が4〜9員であってよく、そして少なくとも1個の環が芳香族性である二環式および三環式縮合環系を含む。混合アリールおよび非アリール多環の好適な例には、メチレンジオキシフェニル、ビス−メチレンジオキシフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ジベンゾスベラン、ジヒドロアントラセンおよび9H−フルオレンが含まれる。かかる置換基は非置換であるか、あるいはニトロで、もしくはシクロアルキル基について上記のように置換されている。
【0033】
ポリヘテロアリール置換基は、各環が独立して5または6員であってよく、そしてO、NまたはSから選択される1個以上のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子を含み、縮合環系が芳香族性である二環式および三環式縮合環系を含む。ポリヘテロアリール環系の好適な例には、キノリン、イソキノリン、ピリドピラジン、ピロロピリジン、フロピリジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフラン、ベンズインドール、ベンゾオキサゾール、ピロロキノリン等が含まれる。他に異なる記載がない限り、ポリヘテロアリール置換基は非置換であるか、または炭素原子上で、アルキル、上記アルキル置換基および式−O−(CHCH=CH(CH)(CH))1−3Hの置換基を含む好適な1個以上の置換基で置換されている。窒素原子は非置換であるか、または例えばR13で置換されており、特に有用なN置換基にはH、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルが含まれる。
【0034】
非芳香族性ポリヘテロ環式置換基は、各環が4〜9員であってよく、O、NまたはSから選択される1個以上のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子を含み、そして0、1またはそれ以上のC−C二重または三重結合を含む二環式および三環式縮合環系を含む。非芳香族性ポリヘテロ環の好適な例には、ヘキシトール、cis−ペルヒドロ−シクロヘプタ[b]ピリジニル、デカヒドロ−ベンゾ[f][1,4]オキサゼピニル、2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、ヘキサヒドロ−チエノ[3,2−b]チオフェン、ペルヒドロピロロ[3,2−b]ピロール、ペルヒドロナフチリジン、ペルヒドロ−1H−ジシクロペンタ[b,e]ピランが含まれる。他に異なる記載がない限り、非芳香族性ポリヘテロ環式置換基は非置換であるか、または炭素原子上で、アルキルおよび上記アルキル置換基を含む1個以上の置換基で置換されている。窒素原子は非置換であるか、または例えばR13で置換されており、特に有用なN置換基にはH、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルが含まれる。
【0035】
混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環置換基は、各環が4〜9員であってよく、、O、NまたはSから選択される1個以上のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子を含み、そして少なくとも1個の環が芳香族性である二環式および三環式縮合環系を含む。混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環の好適な例には、2,3−ジヒドロインドール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、5,11−ジヒドロ−10H−ジベンズ[b,e][1,4]ジアゼピン、5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン、1,2−ジヒドロピロロ[3,4−b][1,5]ベンゾジアゼピン、1,5−ジヒドロ−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−オン、1,2,3,4,6,11−ヘキサヒドロ−ベンゾ[b]ピリド[2,3−e][1,4]ジアゼピン−5−オンが含まれる。他に異なる記載がない限り、混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環式置換基は非置換であるか、または炭素原子上で、−N−OH、=N−OH、アルキルおよび上記アルキル置換基を含む1個以上の置換基で置換されている。窒素原子は非置換であるか、または例えばR13で置換されており;特に有用なN置換基にはH、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルが含まれる。
【0036】
アミノ置換基は1級、2級および3級アミン、ならびにその塩形、4級アミンを含む。アミノ置換基の例には、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−アリールアルキルアミノ、アリール−アリールアルキルアミノ、アルキル−アリールアミノ、アルキル−アリールアルキルアミノ等が含まれる。
【0037】
スルホニル置換基には、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニル、例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トシル等が含まれる。
【0038】
アシル置換基には、式−C(O)−W、−OC(O)−W、−C(O)−O−Wまたは−C(O)NR1314(式中、WはR16、Hまたはシクロアルキルアルキルである)の基が含まれる。
【0039】
アシルアミノ置換基には、式−N(R12)C(O)−W、−N(R12)C(O)−O−Wおよび−N(R12)C(O)−NHOHの置換基が含まれ、R12とWは上記に定義されている。
【0040】
置換基HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−は、式:
【化2】

〔nは0〜3であり;
XおよびYは上記に定義されている〕
の基である。
【0041】
好ましい置換基はそれぞれ次のとおりである:
がH、ハロまたは直鎖C−Cアルキルであり;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CHC(O)R、アミノアシルおよび−(CHから選択され;
およびRが同一または異なってHおよびC−Cアルキルから独立して選択されるか、または
とRが結合している炭素原子と一体となって、C=O、C=SまたはC=NRを意味し;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環、混合アリールおよび非アリール多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環、ならびに混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnが同一または異なって0〜6から独立して選択され、nが1−6であるとき、各炭素原子は非置換であるか、またはRおよび/またはRで独立して置換されており;
【0042】
XおよびYは同一または異なってH、ハロ、C−Cアルキル、CF、NO、C(O)R、OR、SR、CNおよびNR1011から独立して選択され;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、OR12およびNR1314から選択され;
がOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
がH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
がC−CアルキルおよびC(O)−アルキルから選択され;
10およびR11が同一または異なってH、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから独立して選択され;
12がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
【0043】
13およびR14が同一または異なってH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびアミノアシルから独立して選択され;
15がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CHZR12から選択され;
16がC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CHZR12から選択され;
17がC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびNR1314から選択され;
mが0〜6から選択される整数であり;そして
ZがO、NR13、SおよびS(O)から選択される。
【0044】
有用な式(I)の化合物は、R、X、Y、RおよびRがそれぞれHであるもの、例えばnとnの一方が0であり、他方が1であるもの、特にRがHまたは−CH−CH−OHであるものを含む。
【0045】
ヒドロキサメート化合物のある好適な種類は、式(Ia):
【化3】

〔式中、
が0〜3であり;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CHC(O)R、アミノアシルおよび−(CHから選択され;
’がヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、芳香族性多環、非芳香族性多環、混合アリールおよび非アリール多環、ポリヘテロアリールまたは混合アリールおよび非アリールポリヘテロ環である〕
のもの、またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
ヒドロキサメート化合物の他の好適な種類は、式(Ia):
【化4】

〔式中、
が0〜3であり;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CHC(O)R、アミノアシルおよび−(CHから選択され;
がアリール、アリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環ならびに混合アリールおよび非アリール多環、特にアリール、例えばp−フルオロフェニル、p−クロロフェニル、p−O−C−Cアルキルフェニル、例えばp−メトキシフェニル、およびp−C−Cアルキルフェニル;およびアリールアルキル、例えばベンジル、オルト−、メタ−もしくはパラ−フルオロベンジル、オルト−、メタ−もしくはパラ−クロロベンジル、オルト−、メタ−もしくはパラ−モノ、ジもしくはトリ−O−C−Cアルキルベンジル、例えばオルト−、メタ−もしくはパラ−メトキシベンジル、m,p−ジエトキシベンジル、o,m,p−トリメトキシベンジルおよびオルト−、メタ−もしくはパラ−モノ、ジもしくはトリ−C−Cアルキルフェニル、例えばp−メチル、m,m−ジエチルフェニルである〕
のもの、またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
他の興味ある種類は、式(Ib):
【化5】

〔式中、
’がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、シクロアルキルアルキル(例えばシクロプロピルメチル)、(CH2−4OR21から選択され、ここでR21がH、メチル、エチル、プロピルおよびi−プロピルであり;そして
”が非置換1H−インドール−3−イル、ベンゾフラン−3−イルまたはキノリン−3−イル、または置換1H−インドール−3−イル、例えば5−フルオロ−1H−インドール−3−イルまたは5−メトキシ−1H−インドール−3−イル、ベンゾフラン−3−イルまたはキノリン−3−イルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0048】
ヒドロキサメート化合物の他の興味ある種類は、式(Ic):
【化6】

〔式中、
を含む環が芳香族性または非芳香族性であり、当該非芳香環は飽和または不飽和であり;
がO、SまたはN−R20であり;
18がH、ハロ、C−Cアルキル(メチル、エチル、t−ブチル)、C−Cシクロアルキル、アリール、例えば非置換フェニルまたは4−OCHもしくは4−CFで置換されたフェニル、またはヘテロアリール、例えば2−フラニル、2−チオフェニルまたは2−、3−もしくは4−ピリジルであり;
20がH、C−Cアルキル、C−Cアルキル−C−Cシクロアルキル(例えばシクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、アシル(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル)またはスルホニル(メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)であり;
が、独立してH、C−Cアルキル、−OR19、ハロ、アルキルアミノ、アミノアルキル、ハロまたはヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)である1、2または3個の置換基であり;
【0049】
19がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)および−(CHCH=CH(CH)(CH))1−3Hから選択され;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CHC(O)R、アミノアシルおよび−(CHから選択され;
vが0、1または2であり;
pが0〜3であり;そして
qが1〜5であり、そしてrが0であるか、または
qが0であり、そしてrが1〜5である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。他の可変置換基は上記定義のとおりである。
【0050】
特に有用な式(Ic)の化合物は、RがHまたは−(CHCHOH(ここで、pが1〜3である)であるもの、特にRがHであるもの;例えばRがHであり、XとYがそれぞれHであるもの、ならびにqが1〜3であり、rが0であるか、またはqが0であり、rが1〜3であるもの、特にZがN−R20であるものである。これらの化合物の内、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計が好ましくは1である。
【0051】
ヒドロキサメート化合物の他の興味ある種類は、式(Id):
【化7】

〔式中、
がO、SまたはN−R20であり;
18がH、ハロ、C−Cアルキル(メチル、エチル、t−ブチル)、C−Cシクロアルキル、アリール、例えば非置換フェニルまたは4−OCHもしくは4−CFで置換されたフェニル、またはヘテロアリールであり;
20がH、C−Cアルキル、C−Cアルキル−C−Cシクロアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アシル(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル)またはスルホニル(メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)であり;
が独立してH、C−Cアルキル、−OR19またはハロである1、2または3個の置換基であり;
19がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
pが0〜3であり;そして
qが1〜5であり、rが0であるか、または
qが0であり、rが1〜5である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。他の可変置換基は上記定義のとおりである。
【0052】
特に有用な式(Id)の化合物は、RがHまたは−(CHCHOH(ここで、pは1〜3である)であるもの、特にRがHであるもの;例えばRがHであり、XとYがそれぞれHであるもの、およびqが1〜3であり、rが0であるか、またはqが0であり、rが1〜3であるものである。これらの化合物の内、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0053】
本発明はさらに、式(Ie):
【化8】

の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。可変置換基は上記定義のとおりである。
【0054】
特に有用な式(Ie)の化合物は、R18がH、フルオロ、クロロ、ブロモ、C−Cアルキル基、置換C−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、非置換フェニル、パラ位で置換されたフェニル、またはヘテロアリール(例えばピリジル)環であるものである。
【0055】
有用な式(Ie)の化合物の他の群は、RがHまたは−(CHCHOH(ここで、pは1〜3である)であるもの、特にRがHであるもの;例えばRがHであり、XとYがそれぞれHであるもの、およびqが1〜3であり、rが0であるか、またはqが0であり、rが1〜3であるものである。これらの化合物の内、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。これらの化合物の内、pは好ましくは1であり、RとRは好ましくはHである。
【0056】
有用な式(Ie)の化合物の他の群は、R18がH、メチル、エチル、t−ブチル、トリフルオロメチル、シクロヘキシル、フェニル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、2−フラニル、2−チオフェニル、または2−、3−もしくは4−ピリジルであり、当該2−フラニル、2−チオフェニルおよび2−、3−もしくは4−ピリジル置換基が非置換であるか、またはヘテロアリール環について上記のように置換されており;RがHまたは−(CHCHOH(ここで、pは1〜3である)であるもの;特にRがHであり、XとYがそれぞれHであるもの、およびqが1〜3であり、rが0であるか、またはqが0であり、rが1〜3であるものである。これらの化合物の内、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0057】
20がHまたはC−Cアルキル、特にHである式(Ie)の化合物が、それぞれ上記式(Ie)の化合物の下位種の重要な化合物群である。
【0058】
N−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドおよびN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩、が重要な式(Ie)の化合物である。
【0059】
本発明はさらに、式(If):
【化9】

の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。可変置換基は上記定義のとおりである。
【0060】
有用な式(If)の化合物は、RがHまたは−(CHCHOH(ここで、pは1〜3である)であるもの、特にRがHであるもの;例えばRがHであり、XとYがそれぞれHであるもの、およびqが1〜3であり、rが0であるか、またはqが0であり、rが1〜3であるものを含む。これらの化合物の内、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0061】
N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(ベンゾフル−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩。
【0062】
上記化合物は薬学的に許容される塩形で用いられることもある。薬学的に許容される塩は、適切であるとき、薬学的に許容される塩基付加塩および酸付加塩、例えば金属塩、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩およびアミノ酸付加塩およびスルホン酸塩を含む。酸付加塩は、無機酸付加塩、例えば塩酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩、ならびに有機酸付加塩、例えばアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩および乳酸塩を含む。金属塩の例は、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩およびカルシウム塩、アルミニウム塩および亜鉛塩を含む。アンモニウム塩の例は、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩である。有機アミン付加塩の例は、モルホリンおよびピペラジンとの塩である。アミノ酸付加塩の例は、グリシン、フェニルアラニン、グルタミン酸およびリシンとの塩である。スルホン酸塩はメシル酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩を含む。
【0063】
好ましい本発明の治療化合物は、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは乳酸塩である。
【0064】
本発明で使用されるバッファーの非限定的な例は、乳酸バッファー、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、酒石酸バッファー、塩酸バッファーを含む。好ましいバッファーは乳酸バッファーである。本発明で使用されるそれぞれのバッファー構成成分の非限定的な例は、乳酸、リン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸および塩酸を含む。好ましいバッファー構成成分は乳酸である。
【0065】
充填剤の非限定的な例は、HPbCD、デキストラン、ソルビトール、グリシン、マンニトール、トレハロースおよびショ糖を含む。別の充填剤は、ケーキのアモルファス状構造をもたらすこれら賦形剤の混合物である。好ましい充填剤はショ糖である。
【0066】
当業者には明らかであるが、多くの本発明のデアセチラーゼ阻害化合物は不斉炭素原子を有する。したがって、個々の立体異性体が本発明の範囲に含まれるものとして理解されるべきである。
【0067】
本治療化合物は本発明の医薬組成物中で治療上有効量または濃度で存在する。かかる治療上有効量または濃度は、用いる治療化合物および対処する適応症によって当該量および濃度が変化すると当業者に知られている。例えば、本発明において、治療化合物は医薬組成物の例えば約0.01重量%から約20重量%までの量で存在していてもよい。本治療化合物はまた、医薬組成物の約0.1〜10重量%、例えば医薬組成物の約0.1〜5重量%の量で存在していてもよい。
【0068】
治療化合物の治療上有効量は、キレート剤/抗酸化剤、すなわちETDAジナトリウム;バッファーまたはバッファー構成成分、すなわちそれぞれ乳酸バッファーまたは乳酸;および充填剤、すなわちショ糖と混合して、溶液を形成する。溶液に基づいて計算すると、当該溶液は0.01〜10%(w/v)、例えば、0.1−5%(w/v)の治療化合物を含む。さらに、該溶液は例えば0〜2%(w/v)、例えば0.01〜0.1%(w/v)の濃度のキレート剤/抗酸化剤を含む。さらに、該溶液は0.01〜10%(w/v)、例えば、0.05〜0.5%(w/v)の濃度のバッファーまたはバッファー構成成分を含む。さらに、該溶液は例えば約1%〜約50%(w/v)、例えば5%〜約25%の濃度の充填剤を含む。
【0069】
混合した後、該溶液を凍結乾燥に適した容器、例えばガラスバイアルに充填する。凍結乾燥サイクルは、典型的に、次の工程を含む:凍結工程、1次乾燥工程および2次乾燥工程。
【0070】
凍結工程において、該溶液を冷却する。凍結工程の温度および時間は、組成物の全ての成分が完全に凍結するように選択される。例えば、好適な凍結温度は約−40℃以下である。製剤中の水は結晶氷になる。凍結状態での製剤のバランスは結晶、アモルファスまたはそれらの組合せであり得る。
【0071】
1次乾燥工程において、凍結中に形成された氷を、真空下、準環境温度(ただし、凍結温度よりも高い)で昇華させて除去する。例えば、昇華に用いるチャンバー圧は約40〜400milliTorrであってよく、温度は−30℃〜−5℃であってよい。1次乾燥工程中で、本製剤の崩壊温度(T)未満の物質温度を有する固体状態に本製剤は維持されるべきである。Tは凍結乾燥ケーキが巨視的構造を失い、凍結乾燥中に崩壊する温度である。アモルファス状物質についてのガラス転移温度(T’)または結晶状物質についての共融温度(T)はTとほぼ同じである。さらに、最大限凍結濃縮した溶液のT(T’)は、組成物の1次乾燥に安全である最も高い温度を意味するため、凍結乾燥サイクルの開発に重要である。
【0072】
1次乾燥の後、昇華によって除去できなかった残留液体が2次乾燥、すなわち脱着によって除去される。2次乾燥の温度は環境温度付近またはそれ以上である。
【0073】
凍結乾燥後、医薬組成物はケーキになる。かかるケーキは薬学的に許容されるべきである。本明細書において使用するとき、「薬学的に許容されるケーキ」は、ある望ましい特徴、例えば薬学的に許容される長期安定性、短い再構成時間、優れた外見および再構成後に元の溶液の特徴を維持していることを有する、凍結乾燥後に残留する非崩壊性の固体薬剤物質を意味する。薬学的に許容されるケーキは固体、粉末または顆粒であってよい。薬学的に許容されるケーキはまた、該ケーキの5重量%までの水を含んでいてもよい。
【0074】
本発明は、上記記載によって説明することを意図する詳細な記載によって本発明を説明するが、これは添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しない。他の局面、利点および修飾は本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0075】
実施例1 N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾燥製剤
【表1】

【0076】
上記製剤を用いた凍結乾燥サイクル
【表2】

【0077】
上記製剤の安定性プロファイル
【表3】

【0078】
実施例2 N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾燥製剤
【表4】

【0079】
実施例3 N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾燥製剤
【表5】

【0080】
実施例4 他の凍結乾燥サイクル
【表6】

【0081】
上記製剤を用いた凍結乾燥サイクル
【表7】

【0082】
上記製剤を用いた凍結乾燥サイクル
【表8】

【0083】
実施例5 N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾燥製剤
【表9】

【0084】
上記製剤を用いた凍結乾燥サイクル
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩;
バッファーまたはバッファー構成成分;および
充填剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
さらにキレート剤/抗酸化剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
充填剤がショ糖、トレハロース、デキストランおよびHPbCDから選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
キレート剤/抗酸化剤がETDAジナトリウムである、請求項2の組成物。
【請求項5】
バッファーまたはバッファー構成成分が乳酸バッファーまたは乳酸、リン酸バッファーまたはリン酸およびそれらの両者の組合せから選択される、請求項1の組成物。
【請求項6】
組成物が凍結乾燥後に薬学的に許容されるケーキを形成する、請求項1の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される塩が乳酸塩である、請求項1の組成物。
【請求項8】
薬学的に許容されるケーキの製造方法であって:
(a)N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩、キレート剤/抗酸化剤、バッファーおよび充填剤を含む溶液を形成する工程;および
(b)該溶液を凍結乾燥させて薬学的に許容されるケーキを形成する工程
を含む方法。
【請求項9】
充填剤がショ糖、トレハロース、デキストランおよびHPbCDから選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
充填剤がショ糖である、請求項9の方法。
【請求項11】
キレート剤/抗酸化剤がETDAジナトリウムである、請求項8の方法。
【請求項12】
バッファーまたはバッファー構成成分が乳酸バッファー(それぞれ乳酸)、リン酸バッファー(それぞれリン酸)およびそれらの両者の組合せから選択される、請求項8の方法。
【請求項13】
バッファーが乳酸バッファーであるか、あるいはバッファー構成成分が乳酸である、請求項12の方法。
【請求項14】
(a)N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドまたはその薬学的に許容される塩;
(b)ケーキの約0〜5重量%のキレート剤/抗酸化剤;
(c)ケーキの約0.1〜15重量%のバッファーまたはバッファー構成成分;および
(d)ケーキの約50〜99.9重量%の充填剤
を含む、薬学的に許容されるケーキ。

【公表番号】特表2010−540445(P2010−540445A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525936(P2010−525936)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/076752
【国際公開番号】WO2009/039226
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】