説明

凝集体を含有する被覆研磨製品

被覆研磨製品は、ほぼ回転楕円体または環状の形状を有する未焼結で未焼成の研磨凝集体を含有する粒子材料を含み、この凝集体は、研磨グリット粒子とナノ粒子バインダーとを含む組成物から形成される。遊離研磨製品、結合研磨製品、および粒子材料も凝集体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、研磨粒子材料、研磨粒子材料を含む研磨製品、および工作物を機械加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨製品は、一般に、研磨粒子材料を含有するか、研磨粒子材料から形成される。このような研磨粒子材料は、スラリーの形態などの遊離の研磨材として使用される場合もあるし、典型的には被覆研磨物品または結合研磨物品のいずれかである固定された研磨材として使用される場合もある。研磨製品は、ラッピング、研削、またはポリッシングなどによって工作物を機械加工するために種々の産業において使用されている。研磨物品を使用する機械加工は、光学産業、自動車塗装修理産業、歯科用途から金属製造産業までの広範囲の産業に広がっている。手動による、あるいはオービタルポリッシャー(ランダムおよび固定軸の両方)、ならびにベルトサンダーおよび振動サンダーなどの市販の工具を使用することによる機械加工は、家庭用途において消費者によっても一般に行われている。これらの例のそれぞれにおいて、研磨材は、多量の材料を除去するため、および/または製品の表面特性(たとえば、平面性、表面粗さ)に影響を与えるために使用される。
【0003】
表面特性としては、光沢、テクスチャー、および均一性が挙げられる。たとえば、金属部品の製造業者は、表面を精密研磨するために研磨物品を使用し、多くの場合は均一で平滑な表面が得られることを望んでいる。同様に、光学素子の製造業者は、光の回折および散乱を防止するために欠陥のない表面が得られる研磨物品を希望している。したがって、研磨物品の研磨材表面は、一般に表面品質に影響を与える。
【0004】
化学合成経路、または塊状材料を加工する経路(たとえば、溶融および粉砕)などによる研磨粒子の製造は、十分に開発され成熟した技術分野であると考えられている。したがって、顕著な開発資源が、被覆研磨材における工学的な研磨製品、特別な3次元構造の開発などのマクロ構造の開発、および結合研磨材における配合物の開発に向けられてきた。絶え間ない開発にも関わらず、改善された粒子材料が当技術分野において引き続き必要とされている。
【0005】
粒子材料としては、特に単相無機材料、たとえばアルミナ、炭化ケイ素、シリカ、セリア、およびより硬質で高性能の超砥粒、たとえば立方晶窒化ホウ素およびダイヤモンドが挙げられる。向上し、さらにより高性能の研磨特性が、複合粒子材料の開発によって実現されている。このような材料は、凝集体の形成を伴い、この凝集体はスラリー処理経路によって形成することができ、この経路は、気化または蒸発によって液体媒体を除去して、未焼結(green)の凝集塊を残し、次に高温処理(すなわち焼成)によって、使用可能な焼成凝集塊を形成することを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような複合凝集塊は、様々な研磨製品の展開における商業的使用が見出されている。しかし、当産業においては、さらに改善された粒子材料、特に向上した機械加工性能を得ることができる複合凝集体が引き続き要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によると、被覆研磨製品は、基材と、それに結合した粒子材料とを含み、粒子材料は、ほぼ回転楕円体または環状の形状を有する未焼結で未焼成の研磨凝集体を含有し、凝集体は、研磨グリット粒子、ナノ粒子バインダーを含む組成物から形成される。
【0008】
別の一実施形態によると、研磨材スラリーは、懸濁液中に提供される未焼結で未焼成の研磨凝集体を含み、凝集体は、ほぼ回転楕円体または環状の形状を有し、凝集体は、研磨グリット粒子およびナノ粒子バインダーを含む。
【0009】
別の一実施形態によると、結合研磨材の形態の固定研磨材は、凝集体間のバインダーで互いに対して位置が固定された未焼結で未焼成の研磨凝集体を含み、これらの凝集体は、ほぼ回転楕円体または環状の形状を有し、凝集体は、研磨グリット粒子およびナノ粒子バインダーを含む。
【0010】
別の一実施形態によると、研磨粒子材料の形成方法は、液体担体と、研磨グリット粒子と、ナノ粒子バインダーとを含むスラリーを形成するステップと;研磨グリット粒子とナノ粒子バインダーとを含有する未焼結で未焼成の凝集体を形成するためにそのスラリーを噴霧乾燥するステップとを含む。さらに、これらの凝集体は、研磨製品中に使用するために分級される。
【0011】
別の一実施形態によると、工作物を機械加工する方法は、初期表面粗さRaを有する工作物を提供するステップと、工作物から材料を除去し、それによって工作物が最終表面粗さRaを有し、Raが0.2Ra以下となるように工作物を1つの研磨製品で研磨するステップとを含む。
【0012】
添付の図面を参照することによって、本開示をより良く理解でき、本開示の多数の特徴および利点が当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む研磨凝集体を示している。
【図2】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む研磨凝集体を示している。
【図3】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む研磨凝集体を示している。
【図4】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の別の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合された炭化ケイ素グリットを含む研磨凝集体を示している。
【図5】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の別の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合された炭化ケイ素グリットを含む研磨凝集体を示している。
【図6】走査型電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真であり、本開示の別の一実施形態による基材上の被覆中にシリカナノ粒子と混合された炭化ケイ素グリットを含む研磨凝集体を示している。
【図7】実施形態による実施例の熱重量分析(TGA)の結果を示している。
【図8】一実施形態に相当するダイヤモンド含有凝集体の合成後の熱処理の結果を示している。
【図9】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図10】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図11】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図12】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図13】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図14】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図15】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図16】種々の配合物または加工パラメーターにより形成した凝集体を示している。
【図17】多孔質基材材料を使用した研磨製品の拡大画像である。
【図18】多孔質基材材料を使用した研磨製品の拡大画像である。
【0014】
異なる図面中で同じ参照記号を使用している場合は、類似または同一の品目を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施形態によると、材料を除去して表面品質を改善するために研磨が行われる機械加工作業に特に好適な研磨凝集体が提供される。研磨凝集体は、スラリー系処理によって形成することができる。ここで、実施形態は、噴霧乾燥を利用することができ、この噴霧乾燥では、凝集体の構成材料と水などの液体担体とを含有するスラリーが互いに混合され、噴霧されて液滴となり、乾燥される。より詳細には、ある実施形態では、マイクロ粒子の形態であってよい研磨グリットと、ナノ粒子の形態であってよいバインダーと、取り扱いおよび処理を容易にするために水であってよい液体担体とが混合される。種々の実施形態は、このように形成される噴霧乾燥凝集体中での研磨グリットの分散を促進するために、スラリー中に分散剤としても知られる可塑剤をさらに含む。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「マイクロ粒子」は、約0.1ミクロン〜約50ミクロン、好ましくは0.2ミクロン以上、0.5ミクロン、または0.75ミクロン、および約20ミクロン以下、たとえば10ミクロン以下の平均粒度を有する粒子を意味するために使用することができる。特定の実施形態は、約0.5ミクロン〜約10ミクロンの平均粒度を有する。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「ナノ粒子」は、約5nm〜約150nm、典型的には約100nm未満、80nm、60nm、50nm、または約40nm未満の平均粒度を有する粒子を意味するために使用することができる。ナノ粒子の典型的な平均粒度は、約20nm〜約50nmの範囲内である。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「凝集体」は、圧力を加えたり撹拌したりすることによって凝集体粒子をより小さな粒子に分離または崩壊させることが比較的困難な形態で合体した、複数のより小さな粒子からできた粒子を意味するために使用することができる。このことは、加圧や手による撹拌などによって、凝集体粒子を分離したり、粒子が崩壊してより小さな粒子に戻ったりすることが比較的容易な形態で合体している、複数のより小さな粒子からできた粒子を意味するために本明細書において使用される用語「凝集塊」とは対照的である。本発明の実施形態によると、凝集体は、マイクロ粒子の範囲内の大きさの研磨グリットと、研磨グリットを埋め込んだり含有したりする凝集体のマトリックスを提供するナノ粒子バインダーとの両方を含む複合構造を有する。より詳細に説明されるように、実施形態による凝集体は、ナノ粒子バインダー中に研磨グリットが均一に分散したことを特徴とする注目すべき形態を有する。
【0019】
重要なこととして、種々の実施形態による凝集体は、未焼結で未焼成の状態にある。ここで、凝集体の微結晶の大きさ、砥粒の大きさ、密度、引張強度、ヤング率などが変化する焼成、焼結、または再結晶などの形成後の顕著な熱処理が行われずに、凝集体は、そのまま研磨製品として、または研磨製品の中に入れて使用される。このような熱処理方法は、使用可能な製品を得るためにセラミックの加工において一般に行われるが、本発明では使用されない。このような熱処理ステップは、一般に400℃を超え、一般に500℃以上で行われる。実際、特定の種類のセラミックの場合では、温度は容易に800℃〜1200℃以上の範囲内となりうる。
【0020】
本発明の研磨グリット粒子は、一般にモース硬度が約3を超え、好ましくは約3〜約10である。特定の用途では、研磨グリット粒子のモース硬度は5以上、6以上、7以上、8以上、または9以上である。研磨グリット粒子は、研磨凝集体中で主要有効研削剤または研磨剤として機能すると一般に考えられる。好適な研磨材組成物の例としては、炭化物、酸化物、窒化物、およびある種の炭素質材料などの非金属無機固体が挙げられる。酸化物としては、酸化ケイ素(石英、クリストバライト、およびガラス状形態など)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。炭化物および窒化物としては、炭化ケイ素、アルミニウム、窒化ホウ素(立方晶窒化ホウ素など)、炭化チタン、窒化チタン、窒化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素質材料としてはダイヤモンドが挙げられ、ダイヤモンドは、合成ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素、ならびにフラライトおよび集合ダイヤモンドナノロッドなどの関連する炭素質材料を広く含んでいる。材料は、たとえばガーネット、クリストバライト、石英、コランダム、長石などの広範囲の天然の採鉱鉱物を含むこともできる。本開示のある実施形態では、ダイヤモンド、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、および/または酸化セリウム材料が使用され、ダイヤモンドが特に有効であることが示されている。さらに、所望の硬度特性を有する種々の他の組成物を、本開示の研磨凝集体中の研磨グリット粒子として使用できることは当業者には理解できよう。さらに、本開示によるある実施形態においては、2種類以上の異なる研磨グリット粒子の混合物を同じ凝集体中に使用することができる。
【0021】
以上の説明から理解すべきであるが、多種多様の研磨グリット粒子を実施形態において使用することができる。前述のものの中で、立方晶窒化ホウ素およびダイヤモンドは「超研磨」粒子と見なされ、非常に重要な研磨作業などの特殊な機械加工作業において広く商業的使用が見出されている。さらに、研磨グリット粒子は、凝集体中に混入する前に、個々の粒子上に金属被覆を形成するように処理することができる。超研磨グリットは、被覆に特に好適である。典型的な金属被覆としては、ニッケル、チタン、銅、銀、ならびにそれらの合金および混合物が挙げられる。
【0022】
一般に、研磨グリット粒子の大きさは、マイクロ粒子の範囲内にある。留意すべきこととして、研磨グリット粒子は、研磨凝集体ナノ粒子などのより小さな粒子の研磨凝集体を形成することができるが、より一般的には、研磨グリットは、マイクロ粒子の範囲内の1つの粒子でから形成される。たとえば、複数のナノサイズのダイヤモンド粒子が互いに凝集して、ダイヤモンドグリットのマイクロ粒子を形成することができる。研磨グリット粒子の大きさは、使用されるグリット粒子の種類に依存して変動しうる。たとえば、本開示の実施形態においては、好ましくは約0.5〜2ミクロン、たとえば約1ミクロンの大きさを有するダイヤモンドグリット粒子が使用される。本開示の別の実施形態においては、約3〜約8ミクロンの大きさを有する炭化ケイ素グリット粒子が好ましくは使用される。本開示のさらに別の実施形態においては、約3〜約5ミクロンの大きさを有する酸化アルミニウムグリット粒子が好ましくは使用される。
【0023】
本発明の研磨グリット粒子は、一般に、凝集体の約0.1%〜約85%の間を構成することができる。凝集体は、より好ましくは約10%〜約50%の間の研磨グリット粒子を含む。
【0024】
本開示による一実施形態においては、研磨凝集体は、単一サイズの研磨グリット粒子を使用して形成することができ、グリット粒子と、結果として得られる凝集体との両方の大きさは所望の研磨用途に合わせることができる。別の一実施形態においては、2つ以上の異なる大きさの研磨グリット粒子の混合物を組み合わせて使用して、それぞれのグリット粒度に起因する好都合な特性を有する研磨凝集体を形成することができる。
【0025】
本開示による研磨凝集体は、前述のナノ粒子バインダー材料も含む。ナノ粒子バインダーは、一般に連続マトリックス相を形成し、そのバインダーの性質を有することで研磨凝集体中で研磨グリット粒子を形成し保持する機能を果たす。この点に関して、ナノ粒子バインダーは、連続マトリックス相を形成しながら、バインダー自体は、一般に、密接に接触し、連結し、ある程度は互いに原子的に結合している個別に識別可能なナノ粒子から構成されていることに留意すべきである。しかし、こうして形成された凝集体は未焼結で未焼成の状態であるため、個別のナノ粒子が互いに融合して、焼結セラミック材料の場合などのような粒子を形成することはない。本明細書において使用される場合、ナノ粒子バインダーの記述は、1種類または複数種類のバインダーにまで及んでいる。
【0026】
グリット材料は主要な研磨材として機能すると考えられるが、本開示の凝集体のある実施形態においてはナノ粒子材料が二次研磨材として機能することもできる。凝集体の大きさおよび研磨特性は、ナノ粒子バインダー材料の組成、ナノ粒子バインダー材料対研磨グリット粒子の相対濃度比、および研磨グリット粒子の大きさなどのパラメーターを変化させることによって調節可能である。ナノ粒子バインダー材料自体は、液体コロイドまたは懸濁液中のナノサイズの二酸化ケイ素(コロイダルシリカとして知られる)などの非常に微細なセラミック粒子および炭素質粒子を含むことができる。ナノ粒子バインダー材料としては、コロイダルアルミナ、ナノサイズの酸化セリウム、ナノサイズのダイヤモンド、およびそれらの混合物を挙げることもできるが、これらに限定されるものではない。本開示のある実施形態においては、ナノ粒子バインダーとして使用するにはコロイダルシリカが好ましい。たとえば、首尾よく使用されている市販のナノ粒子バインダーとしては、コロイダルシリカ溶液のBINDZEL 2040 BINDZIL 2040(Marietta,GeorgiaのEka Chemicals Inc.より入手可能)およびNEXSIL 20(Ashland,MassachusettsのNyacol Nano Technologies,Inc.より入手可能)が挙げられる。
【0027】
混合物を噴霧乾燥して凝集体を形成する前には、混合物は、湿潤状態で約0.1%〜約80%の間の範囲、好ましくは約10%〜約30%の間の範囲の量のナノ粒子バインダー材料を含むことができる。形成された研磨凝集体中、ナノ粒子バインダー材料は、凝集体の約1%〜約90%の間、好ましくは凝集体の約20%〜約80%の間、最も好ましくは凝集体の約50%〜約75%の間を構成することができ、全ての値は乾燥重量を基準としている。
【0028】
研磨凝集体を形成するためのスラリーは、こうして形成された凝集体中での研磨グリットの分散を促進するために、好都合には、主として可塑剤として機能し、分散剤としても知られる別の材料を含むこともできる。低い加工温度が使用されるため、可塑剤は、こうして形成された凝集体中に残留すると考えられ、熱重量分析(TGA)によって残留が定量化されている。混合物が噴霧乾燥されるときに、可塑剤は、凝集体中でグリット粒子およびナノ粒子バインダー材料を互いに保持するのを補助することもできる。
【0029】
この点において、図7は、SiC含有凝集体およびダイヤモンド含有凝集体の両方に対するTGA分析の結果を示しており、残留可塑剤が250℃〜約400℃で除去されることが示されている。注目すべきこととして、ダイヤモンドが高温において焼失したことが分かった。留意すべきこととして、TGA分析は単に特性決定ツールとして使用しており、凝集体が高温に曝露することは、凝集体の形成の工程の一部ではなかった。
【0030】
可塑剤としては、界面活性剤、およびその他の表面張力を変化させる化学種などの有機材料および無機材料の両方が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマーおよびモノマーなどの有機種が使用される。代表的な一実施形態においては、可塑剤はポリオールである。たとえば、ポリオールは、モノマーポリオールであってもよいし、ポリマーポリオールであってもよい。モノマーポリオールの例としては、1,2−プロパンジオール;1,4−プロパンジオール;エチレングリコール;グリセリン;ペンタエリスリトール;マリトール(malitol)、ソルビトール、イソマルト、またはそれらのあらゆる組み合わせなどの糖アルコール;あるいはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。ポリマーポリオールの例としては、ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール;ポリエチレンオキシド;ポリプロピレンオキシド;グリセリンとプロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはそれらの組み合わせとの反応生成物;ジオールとジカルボン酸またはその誘導体との反応生成物;天然油ポリオール;あるいはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。一例として、ポリオールは、ジオールとジカルボン酸またはその誘導体との反応生成物などのポリエステルポリオールであってよい。別の一例として、ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、あるいはグリセリンとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの反応生成物などのポリエーテルポリオールである。特に、可塑剤としてはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0031】
可塑剤、特にポリエチレングリコール類は、ある範囲の分子量を有することができる。好適な分子量は、約10〜3000、たとえば50〜1000、50〜500、または50〜400の範囲内である。本開示のある実施形態によると、PEG 200が特に有用な可塑剤であることが分かっている。噴霧乾燥前の混合物中の可塑剤濃度は、約0.5%〜約40%の間、好ましくは約0.5%〜約5%の間の範囲をとることができる。
【0032】
明らかなように、本発明の凝集体の形成に使用される組成物は、主要な化学種である研磨グリット、ナノ粒子バインダー、および多くの場合は可塑剤を含む。これらの化学種は、凝集体を形成するための組成物中に種々の相対含有量で存在することができる。凝集体中の相対固形分は、凝集体を形成するための組成物中の固形分を反映すべきであるが、可塑剤の最終含有率は、噴霧乾燥プロセス中の乾燥/気化のために変化することがあり、TGA分析では凝集体中の可塑剤の残存が示される。組成物は、約0.1〜約85重量パーセントの研磨グリット粒子、約0.1〜約80重量パーセントのナノ粒子バインダー、および約0.5〜約40重量パーセントの可塑剤を含むことができ、重量パーセント値は組成物の全固形分を基準としている。ある実施形態においては、組成物は、約10〜50重量パーセントの研磨グリット粒子、約50〜90重量パーセントのナノ粒子バインダー、および約0.5〜15重量パーセントの可塑剤を含有することができる。特定の実施形態 s 約15〜40重量パーセントの研磨グリット粒子、および約60〜85重量パーセントのナノ粒子バインダー。
【0033】
担体として機能し、研磨グリット粒子、ナノ粒子バインダー材料、および可塑剤の混合物を液化または流動化させる機能を果たす揮発性液体も本発明の組成物中に含まれ、それによって混合物を噴霧乾燥機中に流動させ、噴霧して凝集体の微細な液滴にして、噴霧乾燥機中で乾燥させることができる。好ましくは、揮発性液体担体は脱イオン水であるが、典型的な噴霧乾燥温度で除去され、混合物の組成を実質的に変化させることがない他の揮発性液体を使用することができる。液化された混合物は、研磨グリット粒子、ナノ粒子バインダー材料、および可塑剤を含むことができ、残分が揮発性液体であってよい。スラリーの形態の組成物は、水性であってよく、約7.5%〜約15%の間の研磨グリット粒子、約2.5%〜約7.5%の間、および約0.5%〜約1.5%の間の可塑剤を含むことができ、パーセント値はスラリーの全重量を基準としている。
【0034】
処理中、留意すべきこととして、本開示によるある実施形態においては、グリット粒子を混合物に加える前に、蓄積した静電荷をグリット粒子から実質的に除去することが好ましい。グリット粒子に蓄積したクーロン電荷が実質的に存在しない場合に、噴霧乾燥ステップにおいて形成される凝集体の安定性の実質的な改善が観察された。研磨グリット粒子、ナノ粒子バインダー材料、および可塑剤の成分を含む液化混合物は、十分に混合した後、研磨凝集体を形成するために噴霧乾燥機中で処理される。
【0035】
ロータリーアトマイザー、一流体ノズルアトマイザー、および二流体ノズルアトマイザーなどの種々の噴霧乾燥装置を使用することができる。比較的小さな研磨グリット粒子を有する混合物の場合、および比較的小さな凝集体を形成する場合、噴霧乾燥機は好ましくはロータリーアトマイザーである。比較的大きい研磨グリット粒子、特に約80ミクロンを超える研磨グリット粒子を有する混合物の場合、比較的大きい凝集体、特に約90ミクロンを超える凝集体を形成する場合は、一流体または二流体ノズルアトマイザーが好ましい場合がある。
【0036】
噴霧乾燥装置は、典型的には少なくとも2つの材料捕集場所を含み、1つはサイクロンにあり、1つは主乾燥チャンバーの底部にある。本開示により形成された凝集体は、両方の場所から捕集することができるが、サイクロンから捕集した凝集体は、全体的により小さく軽量であることが観察され、一方、主乾燥チャンバーから捕集した凝集体は全体的により大きくより重いことが観察されている。乾燥機のサイクロンから捕集された凝集体は、典型的には約5〜約25ミクロンの大きさを有することが観察された。他方、主乾燥チャンバーから捕集した凝集体は、典型的には約20〜約100ミクロンの大きさを有することが観察された。
【0037】
噴霧乾燥を開始するためには、一般には一定速度でスラリーを噴霧乾燥装置中に圧送する。次にスラリーを噴霧乾燥機内部のアトマイザーまたはネブライザーに通して略回転楕円体の液滴を形成する。アトマイザーを通過するときに、これらの液滴は熱風の渦中に捕らえられ、その中でスラリーの液体部分は実質的に瞬時に蒸発し、スラリーの固体部分が凝集体を形成する。スラリーの液体画分を蒸発させて固体粒子を残留させる熱風は、典型的には400℃以下であり、たとえば375℃以下、350℃以下、または300℃以下である。典型的には、噴霧乾燥は、約80℃を超える温度、たとえば約90℃を超える温度で行われる。特定の実施形態は、約90℃〜約250℃の温度で行った。噴霧乾燥機の高温部分内の滞留時間は一般に数秒、たとえば0.5〜10秒に限定され、典型的なセラミック製品の焼結、か焼、または焼成に関連する典型的な熱処理滞留時間とは完全に対照的であることが注目される。
【0038】
スラリーが熱風の渦に入ると、液体は実質的に除去され、混合物からは、多数の凝集体を含む微粉末が形成され、それぞれの研磨凝集体は略回転楕円体の形状である。本明細書において使用される場合、用語「回転楕円体」は、噴霧乾燥プロセスの結果として得られる、球形、あるいは楕円体およびその他の球形の変形などの略球形を有する凝集体を意味する。したがって、回転楕円体としては、球形、楕円体、切頭球形、および楕円体が挙げられるが、すべてはごつごつした構造ではなく全体的に丸みを帯びている。明らかなように、それぞれの凝集体は、ナノ粒子バインダー材料および蒸発せずに残留した可塑剤によって互いに結合した研磨グリット粒子を含有する。凝集体の最終含水率は、噴霧乾燥ステップでは、一般に約1〜約3重量パーセントである。
【0039】
好都合には、本開示によると、使用可能な研磨凝集体を製造するために、形成されたままの未焼成で未焼結の噴霧乾燥凝集体の組成および形態を顕著に変化させるさらなる処理ステップは不要である。実際、本開示のある実施形態によると、凝集体の製造方法は、前述の混合および噴霧乾燥ステップのみから実質的になり、特に、凝集体の形態に影響を与える熱処理ステップが回避されることが注目される。特に、混合物中のシリカまたはその他のナノ粒子バインダーを溶融、焼結、またはその他の融合を行うために、約500℃〜1000℃以上の範囲内の非常に高温に材料が加熱されるステップは行われない。したがって、本開示によるある実施形態においては、凝集体の製造方法の全てのステップを約400℃以下の温度で行うことができる。
【0040】
このことは、約500℃〜1000℃以上の非常に高温での焼結ステップを典型的には必要とする凝集した粒子を有する研磨粉末の従来の製造方法とは対照的である。
【0041】
本発明の凝集体は焼結、または他の類似の高温処理は不要であると考えられるが、形成された凝集体は非常に耐久性であることが分かった。特に、形成後の凝集体は、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、および1,4−ジオキサンなどの多種多様な化学溶剤中への溶解に対して抵抗性であることが観察された。
【0042】
形成後の凝集体は、研磨作業中に使用される基材またはその他のものに取り付ける前に、所望の種々の大きさの範囲に分級または分離することができる。研磨凝集体に加えて、結果として得られる粉末は、所望の粒度より小さいある量の材料を含むことができる。こうして形成された凝集体を構成する粒子材料は、一般に約10〜150ミクロンの範囲内の平均粒度を有する。典型的には、この材料は、約20ミクロン以上、たとえば約25ミクロン以上の平均粒度を有する。平均粒度の上限は、プロセスの制約および個別の最終用途によって決定され、一般に材料は約100ミクロン以下、たとえば約90ミクロン以下、80ミクロン以下、さらには70ミクロン以下の平均粒度を有する。ある実施形態においては、凝集体材料の平均粒度は好ましくは約20ミクロン〜50ミクロンの間である。凝集体の大きさ、および大きさの範囲は、調節することができ、混合物の組成および噴霧乾燥機供給速度などの多数の要因に依存しうる。たとえば、約10ミクロン、20ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、および45ミクロンなどの大きさの研磨凝集体が、回転噴霧式噴霧乾燥機を使用して首尾よく製造された。これらの凝集体は約5〜約8ミクロンの範囲の研磨グリット粒子を含んだ。
【0043】
拡大下で観察すると、本発明の凝集体は、略回転楕円体の形状を有し、図4〜6の走査型電子顕微鏡写真に示されるように丸みを帯びたり球状であったりすることを特徴とする。しかし場合により、凝集体は、凝集体の中心付近にくぼみを有することが観察されることがあり、したがって、図1〜3の走査型電子顕微鏡写真に見られるような、より環状またはトーラス状の形状を示す。ダイヤモンドグリットなどの研磨グリット材料の個々の粒子は、凝集体の表面上および凝集体の内部に分散し、比較的少ない数の個々のグリット粒子が、凝集体の表面上に互いに凝集しているのを観察することができる。注目すべきことに、図1〜6は、分散した個々の凝集体が樹脂バインダー系中で互いに結合していることを示している。
【0044】
研磨凝集体をさらに研究すると、ある実施形態は中空回転楕円体から構成されることが分かった。このような粒子は、凝集体の平均粒度の約0.08〜0.4倍の範囲内の肉厚tを有する厚い殻のラケットボールに例えることができる。プロセスパラメーターおよび組成のパラメーターを変更することで、凝集体の平均粒度の約0.1倍以下、0.15倍以下の肉厚などの異なる肉厚を得ることができる。肉厚の上限は、凝集体の平均粒度の0.35倍、0.30倍、0.25倍、または0.20倍程度とすることができる。
【0045】
さらなる研究により、比表面積(SSA)が一般に2m/gを超え、たとえば10m/gを超え、10m/gを超え、または15m/gを超えることが示された。最大SSAは、150m/g以下、たとえば100m/g以下となることが観察された。
【0046】
形成された後、研磨凝集体は、粒度分布を改善するために好適な分級を行って「そのまま」使用することができる。過度な熱処理などの合成後のプロセスステップが回避され、それにより凝集体は未焼結で未焼成の状態で使用されるが、個々の研磨グリットを被覆できるのとほぼ同じ方法で凝集体に金属被覆を被覆することができる。金属被覆、ニッケル、チタン、銅、銀、ならびにそれらの合金および混合物。
【0047】
製造された後、研磨凝集体は、遊離すなわち「自由な」研磨粉末として直接使用することができる。これに関連して、凝集体から形成された研磨材粉末は、乾燥粉末として、または性能の改善の目的でスラリーを形成するために水などの液体でぬらした粉末のいずれかで使用することができる。研磨粉末は、研磨ペーストまたはゲルの中に混入することもできる。こうして製造された研磨粉末は、好都合には、半導体産業において使用される化学機械平坦化(CMP)などの多数の他の材料の仕上げ削りおよび/または研磨、種々の材料の精密表面仕上げ、ならびに天然および人工の両方の歯科材料の研磨に使用することができる。あるいは、凝集体から固定研磨材が構成され、この用語は、広く被覆研磨製品および結合研磨製品を含んでいる。
【0048】
しかし、本開示の別の実施形態においては、研磨凝集体は好ましくは樹脂材料と併用され、基材表面上に凝集体を接着するために使用される。凝集体を樹脂接合材料と併用するための方法としては、凝集体、樹脂、およびその他の添加剤を互いに混合して基材上に被覆するスラリー形成、あるいは、静電引力または単純に重力(たとえば、基材上に振り掛ける)によって樹脂を被覆した基材上に凝集体を配置する、別の処理方法が挙げられる。後者の方法は、当技術分野において十分に知られており、一般に最初に「メイクコート」を基材上に堆積し、凝集体をメイクコート上に塗布し、次に「サイズコート」を堆積する。場合により、スーパーサイズコートをサイズコート上に堆積することができる。さらに、メイクコートと基材との間にコンプライアントコートを配置することができる。別の一例では、メイクコートとは反対側の基材上にバックコートを配置することができる。
【0049】
基材を被覆するスラリーに関連して、凝集体に加えて、スラリーは一般に、水または有機溶媒などの溶媒、ならびにポリマー樹脂材料をも含む。好適なポリマー樹脂材料としては、ポリエステル類、エポキシ樹脂類、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリ塩化ビニル類、ポリエチレン、ポリシロキサン、シリコーン類、酢酸セルロース類、ニトロセルロース、天然ゴム、デンプン、セラック、およびそれらの混合物が挙げられる。最も好ましくは、樹脂はポリエステル樹脂である。凝集体粒子を基材上に結合させることが意図されたバインダー系を形成するために、スラリーは他の成分をさらに含むことができる。スラリー組成物は、たとえば高剪断ミキサーを使用して十分に混合される。
【0050】
凝集体粒子を含有するスラリーは、好ましくはブレードスプレッダを使用して基材に塗布することで、被覆が形成される。あるいは、スラリーの被覆は、スロットダイコーティング方法、グラビアコーティング方法、またはリバースグラビアコーティング方法を使用して塗布することができる。被覆厚さは、乾燥後で約1〜約5ミルの厚さの範囲とすることができる。所望の被覆速度でブレードスプレッダ下に基材が供給されると、凝集体粒子スラリーが基材に所望の厚さで塗布される。被覆速度は、好ましくは約10〜約40フィート/分の間である。
【0051】
被覆された基材は、次に、樹脂を硬化させて凝集体粒子を基材に結合させるために加熱される。一般に、この硬化プロセス中、被覆された基材は約100℃〜約250℃未満の間の温度に加熱される。本開示の実施形態においては、硬化ステップが約200℃未満の温度で行われることが好ましい。
【0052】
樹脂が硬化して凝集体砥粒が基材に結合した後、被覆された基材は、種々の研磨除去、仕上げ削り、および研磨の用途に使用することができる。
【0053】
本開示の別の実施形態においては、研磨凝集体を、基材中に直接混入することができる。たとえば、凝集体をポリエステル樹脂と混合することができ、次に、この凝集体とポリマーとの混合物から基材を形成することができる。
【0054】
本開示のさらに別の一実施形態においては、研磨凝集体は、接着剤を被覆した基材に塗布した後、封止することができる。この被覆技術は、従来の紙ヤスリにおいて典型的に使用され、既に前述した技術と類似している。この実施形態においては、研磨凝集体をスラリー中に混入しないことが好ましい。その代わり、好ましくは、凝集体を含有する研磨材粉末を、メイクコートである接着剤が既に塗布されている基材上に供給し、次に、サイズコートによって封止する。場合により、基材は、コンプライアントコートまたはバックコートであらかじめ処理することができる。
【0055】
本開示の別の実施形態においては、研磨凝集体は、電気めっき、静電塗装、吹き付け塗装、および吹き付け粉体塗装方法によって、基材またはその他の材料に塗布することができる。
【0056】
研磨材が被覆された基材は、them他の材料の仕上げ削りおよび/または研磨のためのラッピングフィルムまたはマイクロフィニッシングフィルムとして使用することができる。この方法で被覆することができる基材材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、DuPontのKAPTONなどのポリイミド類、不織材料、織布材料、紙、ならびに銅、アルミニウム、および鋼の箔などの金属類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。基材材料が本開示のある実施形態であるため、ポリエステルが特に好ましい。好適な基材は、被覆される前に約1〜約14ミルの厚さを有することができる。
【0057】
ある実施形態においては、研磨製品は、発泡材料などの非常に多孔質の基材材料を使用することができる。多孔質基材は、研磨材の使用の削り屑の除去が容易となり、曲げやすい材料が好適となる用途においても有用となりうる。気孔の量は、典型的には少なくとも約40体積%程度であり、ある実施形態によると、少なくとも約50体積%、60体積%、70体積%、80体積%、またはさらには少なくとも約90体積%である。特定の実施形態は、約50体積%〜90体積%の間の範囲内の気孔を有する。
【0058】
一般に、このような基材の気孔は、開放、密閉、またはそれらの組み合わせであってよい。さらに、特定の実施形態では、大部分が開放気孔である多孔質基材材料が使用される。すなわち、この気孔は、基材の物理的格子構造を通過して延在する孔隙の相互接続網目構造である。孔隙の相互接続網目構造によって、添加剤、コート、および粒子材料が基材材料の内部に浸透することができ、ある種の研磨製品の形成に好適となりうるため、ある量の開放気孔が望ましい場合がある。
【0059】
多孔質基材の場合、一部の好適な材料として有機材料を挙げることができる。たとえば、ポリオレフィン類などの合成有機材料、特に、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメタクリルイミド、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリアセテート、フッ素化ポリマー類、および塩素化ポリマー類などのポリマーが挙げられる。
【0060】
多孔質基材を使用した研磨製品の形成は、本明細書に記載の実施形態により行うことができる。たとえば、形成方法は、メイクコート、サイズコート、スーパーサイズコート、またはさらにはバックコートなどのあらゆる数のコートを含むことができる。特に、粒子材料を基材に結合させるバインダーまたは接着剤は、孔隙への浸透を確実にするために吹き付け塗装による塗布を伴うことができる。さらに、好適な量の粒子材料の基材への結合を確実にするために、類似の方法を使用して粒子材料を塗布することができる。
【0061】
ある用途においては、格子構造の利用可能な表面領域上にある程度の粒子材料の被覆が存在することが望ましい。たとえば、一実施形態によると、格子構造の利用可能な表面領域の少なくとも約50%が粒子材料によって覆われる。別の実施形態によると、粒子材料は、格子構造の利用可能な表面領域の、少なくとも約60%、75%、85%、またはさらには95%などのより大きなパーセント値を覆う。ある実施形態では、約50%〜100%の間、特に約85%〜100%の間の範囲内の、利用可能な表面領域上の粒子材料の被覆率が使用される。図17および18は、基材の格子構造に結合した粒子材料を含む非常に多孔質の材料の一部の拡大画像である。
【0062】
多孔質基材を使用する研磨製品は、研磨および研削用途などの一般の研磨作業、あるいは洗浄用途において有用となりうる。このような製品は、たとえば、工業用、自動車、家庭用、個人用、および医療産業などの種々の産業において使用することができる。実際、比較試験において、本発明の研磨製品は、最先端技術の研磨洗浄製品より優れた性能を示した。たとえば、このような最先端技術製品の1つはProctor and Gambleより入手可能なMr.Clean Magic Eraser(登録商標)である。
【0063】
多孔質または非多孔質の基材の種類から独立して被覆研磨製品に関して、再びより一般的に言及すると、他の添加剤を研磨製品中に加えることができる。添加剤を、メイクコート、サイズコート、スーパーサイズコート、またはバックコートなどの前述のコートのいずれかに加えることで、特定の用途に好適となりうるある種の特性を研磨製品に付与することができる。このような添加剤としては、目詰まり防止剤、研磨充填剤、可塑剤、帯電防止剤、潤滑剤、湿潤剤、研削助剤、顔料、染料、カップリング剤、離型剤、懸濁剤、硬化剤、芳香性材料、および抗菌剤を挙げることができる。
【0064】
目詰まり防止剤は、研削および研磨に使用中に削り屑の除去を補助する。このような好適な目詰まり防止剤の一部としては、金属含有材料、または有機含有材料、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。特に好適な有機含有目詰まり防止剤としては、少なくとも4個の炭素原子、特に少なくとも8個の炭素原子を含むオルガニル基を有するポリマー、たとえば、約15〜35個の炭素原子を有する第4級アンモニウム塩化合物を挙げることができる。別の好適な有機目詰まり防止剤としては、酸類、たとえば、約4〜22個の炭素原子を有する飽和脂肪酸類を挙げることができる。場合によっては、部分エステル類も特に好適となりうる。
【0065】
さらに、特に好適な金属含有材料としては、ステアリン酸金属塩類、パルミチン酸金属塩類、それらの組み合わせなどを挙げることができる。ある別の目詰まり防止剤としては、アミン塩類、リチウム塩類、それらの組み合わせなどの塩類を挙げることができる。リン酸類などのリン含有化合物も、目詰まり防止剤としての使用に好適となりうる。
【0066】
本発明の研磨製品は、約50℃を超える軟化点を有する目詰まり防止剤を含むことができる。別の目詰まり防止剤は、意図する用途に依存して、少なくとも約60℃、75℃、90℃、特に約50℃〜100℃の間の範囲内などのより高い軟化点を有することができる。メイクコート、サイズコート、スーパーサイズコート、またはバックコートなどの形成されるコートの1つの中で目詰まり防止剤を研磨製品に塗布することができるが、このような添加剤を異なる方法で塗布できることは理解されるであろう。たとえば、目詰まり防止剤は、基材に結合するように、別個の塗布において、基材に直接塗布することができる。別の実施形態においては、目詰まり防止剤を粒子材料に結合させることができ、たとえば、ナノ粒子バインダーに結合するように、あるいは、粒子材料の中空部分または内部空間内に含まれるように、粒子材料中に含ませることができる。
【0067】
目詰まり防止剤を含有するスーパーサイズコートの場合、一般に目詰まり防止剤はスーパーサイズコートの全重量の約50重量%〜100重量%の間の量で存在する。基材に結合しているか粒子材料中に含まれるかである目詰まり防止剤の場合、目詰まり防止剤の量は同じであってよいし、場合によっては、少量で存在することもできる。
【0068】
ある実施形態においては、粒子材料を最終的に形成する前に目詰まり防止剤を混入することが好適となりうる。すなわち、粒子材料の形成の最中に目詰まり防止剤を供給することができる。特定の一実施形態によると、目詰まり防止剤は、噴霧乾燥プロセスの前などに、粒子の形成に使用されるバインダーまたは可塑剤中に供給される。
【0069】
さらに、特定の添加剤に関して、本発明の研磨製品は、研削または研磨用途中に研磨製品に静電気が蓄積しにくくする帯電防止剤を含むことができる。好適な帯電防止剤としては吸湿性材料を挙げることができる。たとえば、帯電防止剤としては、アミン類、カルボキシル類、およびヒドロキシル類、それらの組み合わせなどの有機材料を挙げることができる。さらに、帯電防止剤は、金属、特に、酸化バナジウムなどの金属酸化物を挙げることができる。他の実施形態では、炭素を含む帯電防止剤を使用することができる。炭素含有帯電防止剤としては、典型的には炭化水素の不完全燃焼によって形成される黒鉛またはカーボンブラックを挙げることができる。
【0070】
研磨製品への帯電防止剤の使用は、目詰まり防止剤に関して記載した方法と同様の方法であってよい。すなわち、メイクコート、サイズコート、スーパーサイズコート、またはさらにはバックコートなどの、基材およびまたは粒子材料を覆い結合するコート中に含まれてもよい。あるいは、帯電防止剤は、基材表面に取り付けられる裏打ち材中に含まれてもよい。さらに別の一実施形態においては、帯電防止剤を粒子材料に結合させることができ、すなわち、帯電防止剤は、ナノ粒子バインダー材料中に含まれナノ粒子バインダー材料に結合することができるし、あるいは中空粒子材料の内部空間内に含まれることもできる。特に、粒子材料に結合した耐電防止剤を提供する場合には、そのような耐電防止剤を提供しながら、粒子材料を形成することが好適となりうる。たとえば、帯電防止剤は、粒子の形成に使用されるバインダーまたは可塑材料の一部として加えることができる。
【0071】
研磨製品中に帯電防止剤を混入することによって低表面抵抗率製品を得ることができる。一実施形態によると、帯電防止剤を含む研磨製品の表面抵抗率は約1E8Ω/□以下である。別の実施形態では、約1E7Ω/□以下、1E6Ω/□以下、または約1E5Ω/□以下程度などの、より低い表面抵抗率を有することができる。ある実施形態では、約1E4Ω/□〜約1E8Ω/□の間の範囲内の表面抵抗率を有する研磨製品が使用される。
【0072】
特に、別の添加剤に関して、研磨製品の使用時に芳香または香気が放出されるように、基材が芳香性材料を含むことができる。一般に、芳香性材料とは、香り、多くの場合、花、ムスク、または柑橘系のにおいの物質に関するものなどの心地よい香りを放出することができる材料を意味する。芳香性材料は、香水と同様にノートを含むことができ、そのため、芳香性材料はベースノート、トップノート、またはミドルノート、ならびにそれらのあらゆる組み合わせを含むことができる。さらに、ある種の芳香性材料は、天然にみつかった精油およびある種の芳香と関連する精油などの精油、あるいは精油の天然の芳香を模倣するために開発された合成材料を挙げることができる。特定の一実施形態によると、芳香性材料は有機材料であり、そのようなものとして、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、エステル類、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、テルペン類、およびチオール類などの化合物が挙げられる。
【0073】
芳香性材料を研磨製品中に加えることによって、研磨製品を使用すると心地よい芳香を放出することができる。したがって、このような芳香性材料を研磨製品中に加えることは、心地よい香りが清潔さの程度と関連する家庭または個人用途での使用に好適となりうる。本明細書において検討される他の添加剤と同様に、サイズコート、メイクコート、スーパーサイズコート、またはさらにはバックコートなどのコート中の研磨製品に芳香性材料を加えることができる。特定の一実施形態によると、芳香性材料は、基材に結合し、特に、基材および粒子材料の一部を覆うコート中に混入することができる。別の一実施形態によると、芳香性材料は粒子材料中に含まれ、そのため芳香性材料は、ナノ粒子バインダーに含まれて結合することができるし、中空粒子材料の内部空間内に含まれることもできる。特に、粒子材料に結合した芳香性材料の場合、粒子材料の形成中にそのような材料を供給すると好適である場合がある。たとえば、粒子の形成に使用されるバインダーまたは可塑剤材料の一部として耐電防止剤を加えることができる。
【0074】
別の特定の一実施形態によると、研磨製品は、市販用製品、工業製品、および家庭用品において有用な抗菌剤を含むことができ、研磨製品の使用中に加工物表面上に抗菌剤が放出され、それによって加工物表面が殺菌される。好適な抗菌剤としては、滅菌剤、清浄剤、消毒剤、および殺真菌剤を挙げることができる。特に、好適な抗菌剤としては、典型的には、アルコール、フェノール類、過酸化物、アンモニウム含有化合物、ヨウ素含有化合物、および塩素含有化合物などの材料が挙げられる。抗菌剤が、上述の化合物の1種類またはいずれかの組み合わせ、たとえば、クロルヘキサジン(chlorhexadine)、トリクロサン(trichlosan)、漂白剤、および塩化第4級アンモニウムなどのより一般的な例を含むことができることは理解されよう。
【0075】
研磨製品中への抗菌剤の供給は、メイクコート、サイズコート、スーパーサイズコート、またはバックコートなどの最終製品の形成に使用される種々のコートの1つの中に加えるような方法によって行うことができる。特定の一実施形態によると、抗菌剤は、基材に結合させることができ、特に、基材の一部を配置して、粒子材料に結合させることで、研磨プロセスを実施すると、抗菌剤加工物表面に放出される。特定の一実施形態によると、抗菌剤を粒子材料に結合させることができ、それによって抗菌剤は、ナノ粒子バインダー中に含まれたり、あるいは中空粒子材料の内部空間内に含まれたりする。場合により、抗菌剤が粒子材料に結合する場合には、粒子材料の形成中に可塑剤またはバインダー中に抗菌剤を加えることができる。
【0076】
さらに、研磨凝集体は、ダイヤモンド砥石車およびその他の砥石車などの結合研磨材中に混入することもできる。結合研磨材は、高牽引力の滑り止め材料を得るために使用することもでき、この材料は、たとえばはしごの段に取り付けることができる。ここで、典型的には結合研磨材は、被覆研磨材のほぼ平面上の構造ではなく3次元構造であり、凝集体が埋め込まれる結合材料の3次元マトリックスを含む。すなわち、結合材料は、互いに対する凝集体の位置を固定し、凝集塊間相として存在する。結合研磨材には樹脂、ガラス、および金属などの多種多様な結合材が使用されるが、ガラスおよび金属結合材料などのある種の結合材は、高温処理が必要となる。したがって、凝集体の未焼結の構造を維持するために、高い硬化温度を必要としないか、またはUVなどの化学線によって硬化可能である樹脂系が一般に使用される。
【0077】
本開示による一実施形態においては、研磨製品は、通信ケーブル、特に光ファイバーケーブルの仕上げ削りおよび研磨に使用することができる。光ファイバーケーブルは、光パルスの形態で非常に高速で大量のデータを伝送することができる。しかし、相互に接続された光ファイバーケーブルの間、または光ファイバーケーブルと接続された電子デバイスとの間でこれらの光パルスを効率的に伝送できるようにするために、光ファイバーコネクタの末端は、きれいに切断または分割し、次に非常に平滑な表面および適切な先端形状を得るために高度に研磨する必要がある。本開示により製造され一般にディスクまたはシートの形態に切断された研磨基材フィルムを、この目的に使用することができ、光ファイバーコネクタの末端の研磨に非常に効果的であることが観察できた。
【0078】
光ファイバーコネクタを研磨するために使用する場合、本発明の研磨基材フィルムは、好ましくは、ダイヤモンドグリットをシリカナノ粒子バインダーと混合することで形成される凝集体から製造される。グリット粒子は、好ましくは約1ミクロンの大きさを有し、凝集体全体の大きさは好ましくは約30〜約80ミクロンである。これらの凝集体は好ましくはポリエステルフィルム基材に結合される。光ファイバーコネクタ末端の研磨は、光ファイバー研磨機上で行うことができる。好適な12コネクタ研磨機の1つは、Domaille Engineering(Rochester,Minnesota)より入手可能であり、光ファイバーコネクタを研磨するために、本開示の研磨基材フィルムとともに、たとえば、約60rpmの速度で、約8psiの圧力を加えて使用することができる。
【0079】
本開示による別の一実施形態においては、本発明の研磨製品は、鋼などの硬質金属表面の研磨除去、仕上げ削り、および研磨に使用することができる。金属表面の研磨に使用される場合、研磨基材フィルムは、好ましくはダイヤモンドグリットをシリカナノ粒子バインダーと混合することで形成された凝集体から製造される。グリット粒子は好ましくは約1ミクロンの大きさを有し、凝集体全体の大きさは好ましくは約30〜約80ミクロンである。これらの凝集体は、好ましくはポリエステルフィルム基材に結合される。この研磨製品を使用する場合、表面の研磨は、たとえば、Struers金属研磨機(のStruers,Inc.(Westlake,Ohio)より入手可能)を使用し600rpmの速度で15ニュートンの力を加えて運転して行うことができる。あるいは、硬質金属表面は、炭化ケイ素グリットをシリカと混合することによって形成された研磨凝集体を使用して研磨することもできる。
【0080】
本開示による別の一実施形態においては、本発明の研磨製品は、銅または真鍮などの、より軟質の金属表面の研磨除去、仕上げ削り、および研磨に使用することができる。金属表面の研磨に使用する場合、研磨基材フィルムは、好ましくはダイヤモンドグリットをシリカナノ粒子バインダーと混合することで形成された凝集体から製造される。グリット粒子は、好ましくは約3〜5ミクロンの大きさを有し、凝集体全体の大きさは、好ましくは約30〜約80ミクロンである。これらの凝集体は、好ましくはポリエステルフィルム基材に結合される。この研磨製品を使用する場合、表面の研磨は、たとえば、Struers金属研磨機(Struers,Inc.(Westlake,Ohio)より入手可能)を使用し150rpmの速度で45ニュートンの力を加えて運転して行うことができる。あるいは、軟質金属表面は、炭化ケイ素グリットをシリカと混合することによって形成された研磨凝集体を使用して研磨することもできる。
【0081】
本開示によるさらに別の一実施形態においては、本発明の研磨基材を、塗装表面などの被覆された表面の仕上げ削りおよび研磨に使用することができる。特に、本発明の研磨基材フィルムは、自動車の塗装表面のバフ研磨または研磨に使用することができる。自動車の塗装表面の研磨に使用する場合、研磨基材フィルムは、好ましくは、シリカナノ粒子バインダー中に埋め込まれた炭化ケイ素グリットから形成された凝集体から製造される。グリット粒子は、好ましくは約3〜約8ミクロンの大きさを有し、凝集体全体の大きさは、好ましくは約30〜約50ミクロンである。これらの凝集体は、好ましくはポリエステルフィルム基材に結合される。
【0082】
被覆された表面の状況で、本発明の研磨製品が、塗装表面の外観を変化させるのに有用であることが観察された。特に、本発明の研磨製品は塗装表面の表面粗さの低下に好適であり、これによって塗装表面の光沢が増加する。光沢のないまたは半光沢性の塗料を有する塗装表面を本発明の研磨製品で研磨すると、表面粗さが低下し、それによって、処理された表面の光沢が、初期光沢Gよりも大きい最終光沢Gまで増加する。このような測定される光沢度の変化は、60°または85°などの特定の角度においてより明らかとなる。一実施形態によると、光沢の変化が大きな変化になり、ASTM規格試験D2457に準拠して光沢計BYK Micro Trigloss Meter 4430により測定すると最終光沢Gが初期光沢Gの少なくとも2倍になる。別の実施形態においては、初期光沢と最終光沢との間の差がより大きくなり、約60°の角度で測定して、最終光沢Gが初期光沢Gの少なくとも4倍、特に初期光沢Gの約2倍〜約4倍の間の範囲内となる。
【0083】
角度が大きいほど、最終光沢Gと初期光沢Gとの間の光沢の差が大きくなりうる。一実施形態によると、85°の角度で測定した最終光沢Gは、初期光沢Gの少なくとも3倍であり、特に初期光沢G測定値の約2倍〜約6倍の間の範囲内となる。
【0084】
別の実施形態は、特に、歯科用途における仕上げ削りを含むことができる。この場合、本明細書に記載の未焼結で未焼成の凝集体を含有する被覆研磨材などの研磨製品は、歯および歯科補綴物の仕上げ削りに非常に首尾よく使用することができる。
【0085】
典型的には、前述したような材料の研磨は、多段階の徐々に進行するプロセスで行われる。表面は、最初に比較的粗い研磨材料で研磨され、次に幾分細かいグリット研磨材料で再び研磨される。このプロセスを数回繰り返すことができ、それぞれの連続する再研磨は、次第に細かくなるグリット研磨材を使用して行われ、所望の程度の平滑さが得られるまで表面が研磨される。典型的には研磨材の粒子が、除去されるスクラッチの大きさと同じ規模である必要があるので、この種類の多段階研磨手順が従来は必要であった。ある種の研磨手順では、次々と微細になるあるグリットサイズを有する製品を使用して、関連するRa(機械加工ステップ後の研磨製品および工作物の両方に関して)が3分の1に減少する。すなわち、次々と微細になる製品は、1つ前の機械加工ステップの欠陥を除去するためには、一般に3分の1への減少に限定される(たとえば、9ミクロンから、6ミクロン、3ミクロンまでのグリットサイズ)。
【0086】
しかし、従来の多段階手順とは対照的に、非常に驚くべきことであり、予期せぬことに、光ファイバーコネクタ、金属表面、および自動車の塗装表面、ならびに歯科補綴物などの材料の多種多様の工作物を、複数の研磨製品ではなく、本開示による被覆研磨製品などの1つの研磨製品を使用して1ステップの方法で研磨することができることが分かった。この結果は、非常に驚くべきことであり、非常に好都合である。本開示による研磨基材が使用される場合、全体の研磨を1つの研磨材のみで行うことができることを確認した。これによって、所望の程度の研磨の平滑さを実現するのに要する時間が顕著に短縮され、費用が大幅に削減される。
【0087】
理論によって束縛しようとするものではないが、この利点は、本開示の凝集体において観察される独特の特性から得られると考えられる。表面の平均粗さ、すなわちRは、表面の全高分布のばらつき程度の尺度の1つである。粗さ値が低いことは、一般に、より平滑で、表面上の異なる位置の間の全高のばらつきが小さい表面を示している。研磨材料の粗さ値を測定すると、観察される粗さ値は、典型的には、研磨粒子の平均サイズと相関しうる。たとえば、従来のダイヤモンドグリット研磨材の場合、ダイヤモンドグリットの大きさ、研磨材の予想される粗さ値は、典型的には以下の通りである:
【0088】
【表1】

【0089】
所望の最終最大粗さ(すなわち所望の最終最小平滑度)まで表面の仕上げ削りまたは研磨を行うために、従来では、対応する最大粗さを有する研磨材を使用する必要がある。
【0090】
しかし、本開示の凝集体は、同等の大きさを有するグリット粒子に対して典型的に予想される粗さ値を超える粗さ値を有することが確認された。したがって、典型的な30ミクロンのダイヤモンドグリット粒子は一般に約2.5ミクロンの粗さ値を有するが(前述の通り)、本開示により1ミクロンのダイヤモンドグリットおよびシリカナノ粒子バインダーから形成した30ミクロンの凝集体は約5〜約6ミクロンの粗さ値を有することが確認された。
【0091】
さらに驚くべきことに、この高い粗さ値にもかかわらず、本開示によるこれらの同じ凝集体を、表面の精密研磨に使用できることが確認された。1ミクロンを十分下回る粗さ値に相当する最終表面平滑性が、上記のダイヤモンドグリットおよびシリカ凝集体を使用して実現できる。従来では、この平滑度まで表面を研磨するために、約1ミクロン以下の大きさのグリット粒子が必要である。
【0092】
より具体的には、多数の実施形態の試験に基づくと、従来の1つの研磨製品の性能を十分超えて、初期表面粗さの工作物を、1つの研磨製品を使用して1つのステップで機械加工および研磨できることが分かった。たとえば、初期表面粗さRaを有する工作物の場合、本発明の実施形態によって、工作物を研磨した結果、初期表面粗さRaを最終表面粗さまで減少させる性能が示され、この最終表面粗さRaは0.2Ra以下、たとえば0.1Ra以下である。最先端技術の研磨製品では、1つの製品を使用した表面粗さの減少は一般に非常に限定されるので、前述のように1つの製品を使用することによって表面粗さが減少することは注目に値する。実際、表面粗さの減少が0.5Ra以下、さらには約0.01Ra以下の値で測定されており、注目すべきことに表面粗さRaが2桁減少することが示されている。
【0093】
本発明の実施形態では工作物のRaの減少が1桁を超えることが多いという、このような機械加工効果を示す厳密な理由に関しては十分には分かっていないが、顕著な複合構造を有する本発明の未焼結で未焼成の凝集体が、同時に相補的な経路での機械加工に関与していると理論づけられる。たとえば、凝集体の大きさが、大きな欠陥の減少(たとえば、工作物中の6〜7ミクロンのスクラッチの除去)に関与していると考えられる。同時に、一次研磨グリットは、中程度の大きさの欠陥の同時の減少に関与していると考えられ、それによって工作物のRa値がさらに減少する。そしてさらに、ナノ粒子バインダーが工作物の超精密研磨に寄与し、それによって工作物のRa値がナノメートル単位となり、たとえばある種の工作物で10〜20ナノメートル程度となると考えられる。
【0094】
凝集体の未焼結で未焼成の状態が、前述の顕著な機械加工効果に寄与することを強調しておく。凝集体を未焼結で未焼成の状態に維持することによって、ナノ粒子バインダーは、相互に連結した粒子で構成され、ある程度は互いに原子的に結合しているにもかかわらず、ナノ粒子の望ましい超精密研磨特性が維持されることが分かり、この特性はより高い温度での熱処理によって破壊される。すなわち、凝集体の多重作用の性質は、制御されたプロセス条件によって、特に、長時間にわたって高温に凝集体が曝露するのを回避することによって、維持される。ここで、高温での凝集体の劣化には、温度だけでなく滞留時間も関与していると思われる。たとえば、噴霧乾燥中、凝集体を形成する固体画分を含有する液滴は、典型的には最高約400℃などの高温に、わずか数秒曝露するが、焼結や焼成などの従来の高温セラミック処理では、一般に15分から数時間程度の滞留時間が使用される。したがって、高温に曝露しても、そのような高温が数秒程度に限定されるのであれば、本発明の実施形態による凝集体は、それらの未焼結状態を維持することができる。これは、噴霧乾燥処理で高温が使用される範囲内でのことである。
【0095】
さらに留意すべきこととして、比較試験に基づくと、スラリー組成物中に可塑剤を混入すると非常に有効な結果を得ることができる。特に、ダイヤモンド/コロイダルシリカを含有する凝集体の試験において、可塑剤を除去すると顕著な悪影響が生じた。可塑剤は、懸濁液またはスラリーの形態中での研磨グリットの分散を維持するのに役立ち、処理中の懸濁液を安定化させる。噴霧乾燥を行うと、研磨グリットが依然として非常によく分散していることが観察された。可塑剤をスラリー組成物から除去すると、その結果得られる凝集体に最初は変化は見られず、取り扱いに必要なグリーン強度を有した。しかし、研磨製品中に配置すると、機械加工結果が不十分となり、凝集体の破壊が観察された。なんらかの理論によって束縛しようと望むものではないが、可塑剤によって、スラリー中のグリットの分散、および凝集体中に均一な分布が維持されることで、構造的により安定な凝集体の形成が可能となると考えられる。対照的に、可塑剤を含まない比較例は、局所的なグリットの塊を有し、凝集体に脆弱な領域が形成され、作動圧力を加えると破壊した。
【0096】
凝集体の均一な分布を図8に容易に見ることができ、これは前述のTGAに曝露した一実施例であり、高温蒸発によるダイヤモンドグリットの焼失が見られる。図8中に示される空洞領域は、ダイヤモンドグリットの位置を示している。残留した材料である、熱処理されたナノ粒子バインダーは、明らかに自立した連続マトリックスを形成していることにも留意されたい。当然ながら、図8に示される高温形態では、バインダーの粒子状の性質は結晶粒の成長および焼結のために失われている。
【0097】
さらなる利点の1つを、本開示の凝集体から製造した研磨材の驚くべき耐久性に見ることができる。研磨材は、典型的には摩耗し、研磨材による研磨または仕上げ削りが行われる表面からの材料の除去における研磨材の効果が徐々に失われる。しかし、本開示の凝集体を含む研磨材は、従来の研磨材料と比較して顕著に改善された耐久性が観察された。同等の用途で使用した場合、本開示の凝集体を含む研磨材は、従来の研磨材料の2倍を超え、場合により最大20倍の長さでその効果を維持することが観察された。
【0098】
本開示の性質および利点を、以下の非限定的実施例においてより詳細に説明する。特に明記しない限り、温度は摂氏温度の単位で表され、濃度は、研磨凝集体の全乾燥重量を基準とした重量パーセント値の単位で表される。
【実施例】
【0099】
実施例1
シリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度1.1ミクロンのダイヤモンドグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するコロイダルシリカ水溶液を使用したと考えられる。成分を以下の量で混合した:
【0100】
【表2】

【0101】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約20%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0102】
次に、Niro,Inc.(Columbia,Maryland)より入手可能なNiro SD6.3ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機にFF−1アトマイザーを取り付けて使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約152℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約85%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約15%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった.
【0103】
凝集体を拡大下で検査すると、ダイヤモンドグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。サイクロンから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約20ミクロンであった。主乾燥チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズは約40ミクロンであった。
【0104】
実施例2
シリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。コロイダルシリカ水溶液(BINDZIL 2040)を、平均粒度1.0ミクロンのダイヤモンドグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。成分を以下の量で混合した:
【0105】
【表3】

【0106】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約52%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0107】
次に、同じNiroブランドの噴霧乾燥機を使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約170℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察された。製造された凝集体を分析のため捕集すると、粒子の約50%が乾燥機サイクロンユニットから捕集され、約50%が噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集された。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0108】
凝集体を拡大下で検査すると、ダイヤモンドグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。凝集体の典型的なサイズを測定すると約35〜約45ミクロンであった。
【0109】
実施例3
シリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。コロイダルシリカ水溶液(BINDZIL 2040)を、平均粒度8ミクロンの炭化ケイ素グリット(NGC 2500、東京の南興セラミックスより入手可能)、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。成分を以下の量で混合した:
【0110】
【表4】

【0111】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約60%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0112】
次に、同じNiroブランドの噴霧乾燥機を使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約132℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察された。約150ポンドの凝集体が捕集され、粒子の約50%が乾燥機サイクロンユニットから捕集され、約50%が霧乾燥装置の主乾燥から捕集された。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった.
【0113】
凝集体を拡大下で検査すると、炭化ケイ素グリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。凝集体の平均サイズを測定すると約40ミクロンであった.
【0114】
実施例4
この実施例では、前述の実施例3に記載されるように製造した炭化ケイ素およびシリカの凝集体の粉末を基材に被覆して結合させた。凝集体粉末を基材に塗布するために、凝集体粉末、ポリエステル樹脂(Bostik,Inc.(Wauwatos,Wisconsin)より入手可能なVITEL 3301)、架橋剤、およびメチルエチルケトン溶媒(Quaker City Chemicals,Inc.(Philadelphia,Pennsylvania)より入手可能)を以下の量で含む被覆用スラリーを最初に調製した:
【0115】
【表5】

【0116】
実質的に均一なスラリーミキサーを得るために組成物を混合した。
【0117】
MYLAR Type Aポリエステルブランドフィルム(DuPontより入手可能)のロールを基材として使用した。フィルムの厚さは3ミルであった。ブレードコーティングシステムを使用して、スラリーの被覆を基材フィルムの上面に塗布した。フィルムは、40フィート/分の速度でブレードコーティングステーション中を移動させ、スラリーを約3ミルの初期厚さで基材フィルム上に被覆した。
【0118】
被覆された基材がブレードコーターを出てから、フィルムを長い加熱装置に通した。ユニット中の加熱セクションの長さは約37フィートであり、この加熱セクションを約340℃の温度に維持した。被覆されたウィル(will)は、40フィート/分の速度で加熱装置中を進行させた。被覆されたフィルムが加熱装置を通過するときに、スラリー中の樹脂の架橋(すなわち硬化)反応が起こった。加熱装置を出たときには、この反応は実質的に完了し、架橋した樹脂によって凝集体は基材フィルムに実質的に結合した。
【0119】
次に、完成した凝集体結合基材フィルムを冷却し、続いて、複数の研磨ディスクに切断した。次に、研磨ディスクの粗さ値(R)を測定するためMahr Federal Inc.(Providence,Rhode Island)のMahrプロフィルメーター装置を使用して、研磨ディスク試料の表面形状を分析した。粗さ値を測定すると5.85ミクロンであった。
【0120】
実施例5
この実施例では、ラッピングフィルム基材に、2種類の凝集体粉末の組み合わせを被覆した。その第1のものは、前述の実施例1に記載されるようにダイヤモンドグリットおよびシリカ凝集体から製造した粉末であった。第2のものは、前述の実施例3に記載されるように製造した炭化ケイ素およびシリカ凝集体から製造した粉末であった。凝集体粉末を基材に塗布するために、これら2種類の凝集体粉末、ポリエステル樹脂(Bostik,Inc.(Wauwatos,Wisconsin)より入手可能)、架橋剤、およびメチルエチルケトン溶媒(Philadelphia,PennsylvaniaのQuaker City Chemicals,Inc.より入手可能)を以下の量で含む被覆用スラリーを最初に調製した:
【0121】
【表6】

【0122】
実質的に均一なスラリーミキサーを得るために組成物を混合した。
【0123】
MYLAR Type Aポリエステルブランドフィルムのロールを基材として使用した。フィルムの厚さは3ミルであった。ブレードコーティングシステムを使用して、スラリーの被覆を基材フィルムの上面に塗布した。フィルムは、25フィート/分の速度でブレードコーティングステーション中を移動させ、スラリーを約2.5ミルの初期厚さで基材フィルム上に被覆した。
【0124】
被覆された基材がブレードコーターを出てから、フィルムを長い加熱装置に通した。ユニット中の加熱セクションの長さは約37フィートであり、この加熱セクションを約340℃の温度に維持した。被覆されたウィル(will)は、全加熱時間は約2分間で、25フィート/分の速度で加熱装置中を進行させた。被覆されたフィルムが加熱装置を通過するときに、スラリー中の樹脂の架橋(すなわち硬化)反応が起こった。加熱装置を出たときには、この反応は実質的に完了し、架橋した樹脂によって凝集体は基材フィルムに実質的に結合した。
【0125】
次に、完成した凝集体結合基材フィルムを冷却し、続いて、複数の研磨ディスクに切断した。次に、研磨ディスクの粗さ値(Ra)を測定するためMahrプロフィルメーター装置を使用して、研磨ディスク試料の表面形状を分析した。粗さ値を測定すると11.13ミクロンであった。
【0126】
実施例6
シリカ中に保持された酸化アルミニウムグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度3.27ミクロンの酸化アルミニウムグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するコロイダルシリカ水溶液を使用したと考えられる。成分を以下の量で混合した:
【0127】
【表7】

【0128】
高剪断ミキサーを15分間使用してこれらの成分を十分に混合して、均一な水性分散物を得た。
【0129】
次に、同じNiroブランドの噴霧乾燥機を使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約240℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約120℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察された。1.5時間の噴霧乾燥装置の運転中にサイクロンセクションから約15ポンドの凝集体を捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0130】
凝集体を拡大下で検査すると、酸化アルミニウムグリット粒子が埋め込まれたシリカおよびPEGの相の形成が観察された。Microtrackサイズ分布分析を使用し、湿式および乾式の両方のサンプル方法を使用して凝集体の平均サイズを測定した。平均サイズを測定すると、湿式サンプル方法では17.08ミクロン、乾式サンプル方法では19.12ミクロンであった。噴霧乾燥後の凝集体の最終含水率は1.4重量パーセントであった。
【0131】
実施例7
シリカ中に保持された酸化アルミニウムグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。コロイダルシリカ水溶液(BINDZIL 2040)を、平均粒度3.27ミクロンの酸化アルミニウムグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合。成分を以下の量で混合した:
【0132】
【表8】

【0133】
高剪断ミキサーを15分間使用してこれらの成分を十分に混合して、均一な水性分散物を得た。
【0134】
次に、同じNiroブランドの噴霧乾燥機を使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約343℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約150℃であった。噴霧乾燥機は350ヘルツで運転した。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察された。2時間の噴霧乾燥装置の運転中に合計約26ポンドの凝集体が捕集され、約8ポンドの凝集体は主乾燥チャンバーから捕集され、約18ポンドの凝集体はサイクロンから捕集された。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0135】
凝集体を拡大下で検査すると、酸化アルミニウムグリット粒子が埋め込まれたシリカおよびPEGの相の形成が観察された。Microtrackサイズ分布分析を使用し、湿式および乾式の両方のサンプル方法を使用して凝集体の平均サイズを測定した。サイクロンの凝集体の場合、平均サイズを測定すると、湿式サンプル方法で20.38ミクロン、乾式サンプル方法で22.4ミクロンであった。乾燥チャンバーの凝集体の場合、平均サイズを測定すると、湿式サンプル方法で45.97ミクロン、乾式サンプル方法で45.91ミクロンであった。噴霧乾燥後の凝集体の最終含水率は、サイクロンの凝集体の場合で1.76重量パーセント、乾燥チャンバーの凝集体の場合で1.54重量パーセントであった。
【0136】
実施例8(ダイヤモンド1チャンバー)
シリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度1.1ミクロンのダイヤモンドグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するコロイダルシリカ水溶液を使用したと考えられる。成分を以下の量で混合した:
【0137】
【表9】

【0138】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約20%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0139】
次に、Niro,Inc.(Columbia,Maryland)より入手可能なNiro SD6.3ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機にFF−1アトマイザーを取り付けて使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約152℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約85%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約15%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0140】
凝集体を拡大下で検査すると、ダイヤモンドグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約40〜50ミクロンであり、SSA=72m/gであった。これらの凝集体を図9に示す。
【0141】
実施例9(ダイヤモンド1サイクロン)
シリカナノ粒子と混合されたダイヤモンドグリットを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度1.1ミクロンのダイヤモンドグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するコロイダルシリカ水溶液を使用したと考えられる。
【0142】
成分を以下の量で混合した:
【0143】
【表10】

【0144】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約20%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0145】
次に、Niro,Inc.(Columbia,Maryland)より入手可能なNiro SD6.3ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機にFF−1アトマイザーを取り付けて使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約152℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約85%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約15%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0146】
凝集体を拡大下で検査すると、ダイヤモンドグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。サイクロンから捕集した凝集体の平均サイズは約25ミクロンであり、SSA=71m/gであった。これらの凝集体を図10に示している。
【0147】
実施例10(NGC 2500 チャンバー)
シリカナノ粒子と混合されたNGC 2500を含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度8ミクロンNGC 2500グリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するコロイダルシリカ水溶液を使用したと考えられる。成分を以下の量で混合した:
【0148】
【表11】

【0149】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約54%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0150】
次に、Niro,Inc.(Columbia,Maryland)より入手可能なNiro SD6.3ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機にFF−1アトマイザーを取り付けて使用して、混合物を噴霧乾燥した。混合物を加熱し、約342℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約152℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約50%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約50%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0151】
凝集体を拡大下で検査すると、NGCグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約40〜50ミクロンであり、SSAが63m/gであった。これらの凝集体を図11に示している。
【0152】
実施例11(CBN9ミクロン チャンバー)
シリカナノ粒子と混合されたCBNを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度9ミクロンのCBNグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、コロイダルシリカ水溶液であると考えられる、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO2)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有していた。成分を以下の量で混合した:
【0153】
【表12】

【0154】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約54%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0155】
次に、Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物を噴霧乾燥した。室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約98℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約5%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約95%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0156】
凝集体を拡大下で検査すると、CBNグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約80ミクロンであり、SSA=62m/gであった。これらの凝集体を図12に示す
【0157】
実施例12(ニッケルで被覆されたCBN 15ミクロン チャンバー)
シリカナノ粒子と混合されたCBNを含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性コロイダルシリカを、平均粒度15ミクロンニッケルで被覆されたCBNグリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したシリカゾルは、コロイダルシリカ水溶液であると考えられる、Eka Chemicals Inc.(Marietta,Georgia)より入手可能なBINDZIL 2040であり、約40重量%シリカ(SiO)、シリカ粒度約20nm、および塩基で安定化させたpH約10を有していた。成分を以下の量で混合した:
【0158】
【表13】

【0159】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約81%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0160】
次に、Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物を噴霧乾燥した。室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約98℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約5%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約95%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0161】
凝集体を拡大下で検査すると、CBNグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約70ミクロンであり、SSAが23m/gであった。これらの凝集体を図13に示している。
【0162】
実施例13(NGC 2500)
セリアナノ粒子と混合されたNGC 2500を含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性ナノセリアを、平均粒度8ミクロンNGC 2500グリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200 可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したナノセリアは、セリア水溶液であると考えられ、Degussa AG,Advanced Nanomaterials製であり、約40重量%のセリア)、シリカ粒度約38nm、および塩基で安定化させたpH約10を有していた。成分を以下の量で混合した:
【0163】
【表14】

【0164】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約53%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0165】
次に、Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物を噴霧乾燥した。室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約98℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約5%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約95%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0166】
凝集体を拡大下で検査すると、NGCグリットの粒子と混合されたセリアナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約50ミクロンであり、SSA=8m/gであった。これらの凝集体を図14に示している。
【0167】
実施例14(NG C 2500)
アルミナナノ粒子と混合されたNGC 2500を含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性Soft Aluminaを、平均粒度8ミクロンのNGC 2500グリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200 可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したアルミナは、Saint Gobain製であり、約40重量%のアルミナ)、シリカ粒度約38nm、および塩基で安定化させたpH約10を有するアルミナ水溶液を使用したと考えられる。成分を以下の量で混合した:
【0168】
【表15】

【0169】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約53%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0170】
次に、Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物を噴霧乾燥した。室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約98℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約5%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約95%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0171】
凝集体を拡大下で検査すると、NGC 2500グリットの粒子と混合されたアルミナナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約70ミクロンであり、SSAが56m/gであった。これらの凝集体を図15に示している。
【0172】
実施例15(NGC 2500)
シリカナノ粒子と混合されたNGC 2500を含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性Mega Silを、平均粒度5ミクロンのNGC 2500グリット、ならびにポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤および脱イオン水と混合した。使用したMega Silは、Mega sil(シリカ)水溶液であると考えられる、Moyco Technologies製であり、約40重量%シリカ)、シリカ粒度約100nm、および塩基で安定化させたpH約10を有していた。成分を以下の量で混合した:
【0173】
【表16】

【0174】
高剪断ミキサーを使用してこれらの成分を十分に混合して、水中に約53%の固形分を有する均一な水性分散物を得た。
【0175】
次に、Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物を噴霧乾燥した。室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口中に供給した。噴霧乾燥機の出口温度を測定すると約98℃であった。噴霧乾燥プロセスによって混合物から水が実質的に除去され、残留する成分が、小さな略球形の凝集体の粉末を形成したことが観察され、それらを分析のために捕集した。凝集体粒子の約5%を乾燥機サイクロンユニットから捕集し、約95%を噴霧乾燥装置の主乾燥から捕集した。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった.
【0176】
凝集体を拡大下で検査すると、NGCグリットの粒子と混合されたシリカナノ粒子およびPEGの相の形成が観察された。チャンバーから捕集した凝集体の平均サイズを測定すると約50ミクロンであり、SSA=52m/gであった。
【0177】
実施例16
シリカナノ粒子と混合されたNGC 2500を含む微細研磨凝集体の粉末を以下の方法で製造した。水性Mega Silを、平均粒度約5ミクロンのNGC 2500グリット、および脱イオン水中のポリエチレングリコール(PEG)200可塑剤と混合した。使用したMega SilはMega Sil(シリカ)水溶液であると考えられる、Moyco Technologies製であり、約40重量%シリカ)、シリカ粒度約100nm、および塩基安定剤pH約10を有していた。成分を以下の量で混合した:
【0178】
【表17】

【0179】
これらの成分を混合して、脱イオン水中に約53%の固形分を有するスラリーを形成した。Pentronix Model 370ロータリーアトマイザー噴霧乾燥機を使用して混合物の噴霧乾燥を行い、室温において混合物を、約220℃の温度の噴霧乾燥機入口に供給し、約98℃の出口温度を有する出口から放出した。この噴霧乾燥処理によって、本明細書において説明される画像に示されるようにナノ粒子バインダー中に含まれた研磨グリッドを含む実質的に球形の凝集体が形成された。凝集体を形成するために、さらなる焼結および加熱は不要であった。
【0180】
次に、目の詰まった布の基材材料、および多孔質の発泡体基材材料などの種々の基材材料上に、様々な種類の研磨製品を形成した。それぞれの基材材料は、インラインロール法で接着剤を被覆し、その後、スロット付きコンベヤの下に基材を通すことによって、形成された凝集体を、接着材料を有する基材上に被覆した。各試料を260℃で約15秒間処理して接着剤を乾燥させ、凝集体粒子を基材に結合させた。
【0181】
次に、ASTM D2457に準拠してBYK Micro Trigloss Meter 4430を使用して、60°の角度で測定して約2.1、85°の角度で測定して3.8の初期光沢を有する表面に塗布したSherwin Williams PROMAR 200 Interior Latex Semigloss BWI W 2206 6403−54262を有する塗装表面を、各試料を使用して研磨した。各試料で塗装表面上を数秒間研磨し、以下の表1に示すように、60°および85°の角度において同じ方法を使用して、研磨後の表面の光沢測定を再び行った。
【0182】
【表18】

【0183】
表1に示されるように、塗装表面上の研磨処理を行った後、全13試料で、60°および85°の角度における光沢の増加を示している。60°の角度で行った測定に関して、平均初期光沢と平均最終光沢との間の光沢の変化は、初期光沢読み取り値の約2.7倍である。85°の角度で測定した光沢読み取り値の変化に関して、塗装表面は、13試料にわたって光沢が平均的に増加しており、13試料の初期光沢および最終光沢の平均から計算すると、最終光沢は初期光沢の3.7倍となった。表1の結果は、種々の異なる基材上に提供した研磨製品が、塗装表面の表面粗さを減少させることができ、研磨された領域の光沢を選択的に増加させることができることを示している。
【0184】
したがって、このような研磨製品が、塗装表面の審美的魅力を改善または変化させるために特に有用となりうると予想される。たとえば、光源に対して低角度における塗装表面の反射性を改善するための照明器具付近の塗装表面、あるいは、光沢のないまたは半光沢の塗装された背景上に光沢のあるステンシルを形成するなどのより審美的な試みにおける使用が挙げられる。
【0185】
研磨材として使用されることに加えて、本開示のある実施形態においては、凝集体は、材料の研磨および仕上げ削りのための研磨材以外の用途で使用することができる。たとえば、本開示の凝集体は、潤滑剤配合物中に混入できると考えられる。凝集体は、複合材料の強度を向上させる目的で複合材料中に混入することもできる。さらに、凝集体は、ある種の用途においてヒートシンク材料として使用できると考えられる。これらの凝集体を図16に示している。
【0186】
本発明の好ましい実施形態の以上の記述は、例示および説明の目的で提供したものである。これらの記述は、網羅的であったり、開示される厳密な形態に本発明が限定されたりすることを意図したものではない。以上の教示を考慮すれば明らかな修正または変形が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実際的な応用を最もよく説明するために選択して説明しており、それによって当業者は、種々の実施形態における本発明を使用することができ、考慮される個別の用途に適した種々の修正を行うことができる。すべてのこのような修正および変形は、適正に、合法的に、そして公正に権利が付与される範囲により解釈される場合に添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆研磨製品であって:
基材と;
前記基材に結合した粒子材料とを含み、前記粒子材料が、ほぼ回転楕円体または環状の形状を有する未焼結で未焼成の研磨凝集体を含み、前記凝集体が、研磨グリット粒子とナノ粒子バインダーとを含む組成物から形成される、被覆研磨製品。
【請求項2】
前記基材が発泡体材料を含む、請求項1に記載の被覆研磨製品。
【請求項3】
前記基材が不織材料である、請求項1および2のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項4】
前記基材が有機材料を含む、請求項1、2、および3のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項5】
前記基材が多孔質材料である、請求項1、2、3、および4のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項6】
前記基材が少なくとも約40体積%の気孔を有する、請求項5に記載の被覆研磨製品。
【請求項7】
前記基材が約50体積%〜約90体積%の範囲内の気孔を有する、請求項6に記載の被覆研磨製品。
【請求項8】
前記気孔の大部分が開放気孔である、請求項5に記載の被覆研磨製品。
【請求項9】
前記基材が、開放気孔の網目構造を画定している格子構造を含み、前記開放気孔が前記格子構造を通過して延在している、請求項5に記載の被覆研磨製品。
【請求項10】
前記粒子材料が前記格子構造に結合している、請求項9に記載の被覆研磨製品。
【請求項11】
前記格子構造が利用可能な表面領域を含み、前記利用可能な表面領域の少なくとも約50%が前記粒子材料によって覆われている、請求項9に記載の被覆研磨製品。
【請求項12】
前記基材がポリマーを含む、請求項1、2、3、4、および5のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項13】
前記基材がポリオレフィンを含む、請求項12に記載の被覆研磨製品。
【請求項14】
前記基材が、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメタクリルイミド、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリアセテート、フッ素化ポリマー、および塩素化ポリマーからなるポリマーの群から選択されるポリマーを含む、請求項12に記載の被覆研磨製品。
【請求項15】
前記基材の表面に取り付けられた裏打ち材をさらに含む、請求項1、2、3、4、5、および12のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項16】
前記基材を覆うスーパーサイズコートをさらに含む請求項1、2、3、4、5、12、および15のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項17】
前記スーパーサイズコートが前記粒子材料に結合している、請求項16に記載の被覆研磨製品。
【請求項18】
前記スーパーサイズコートが、目詰まり防止剤、研磨充填剤、可塑剤、帯電防止剤、潤滑剤、湿潤剤、研削助剤、顔料、染料、カップリング剤、離型剤、懸濁剤、硬化剤、芳香性材料、および抗菌剤からなる添加剤の群から選択される添加剤を含む、請求項16に記載の被覆研磨製品。
【請求項19】
前記基材が目詰まり防止剤を含む、請求項1、2、3、4、5、12、15、および16のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項20】
前記目詰まり防止剤が前記基材に結合している、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項21】
前記目詰まり防止剤が、前記基材および前記粒子材料の一部を覆うコート中に含まれる、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項22】
前記目詰まり防止剤が前記粒子材料に結合している、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項23】
前記目詰まり防止剤が前記粒子材料中に含まれる、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項24】
前記目詰まり防止剤が前記ナノ粒子バインダーに結合している、請求項23に記載の被覆研磨製品。
【請求項25】
前記粒子材料が中空であり、前記目詰まり防止剤が前記粒子材料の内部空間内に含まれる、請求項23に記載の被覆研磨製品。
【請求項26】
前記目詰まり防止剤が金属を含む、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項27】
前記目詰まり防止剤が酸を含む、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項28】
前記目詰まり防止剤が有機材料を含む、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項29】
前記目詰まり防止剤が、少なくとも4個の炭素原子を含むオルガニル基を含む、請求項28に記載の被覆研磨製品。
【請求項30】
前記目詰まり防止剤が、ステアリン酸金属塩類、金属プラミテート(plamitate)類、脂肪酸類、リン酸類、部分エステル類、アミン塩類、およびアンモニウム塩類からなる材料の群から選択される、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項31】
前記目詰まり防止剤が約50℃を超える軟化点を有する、請求項19に記載の被覆研磨製品。
【請求項32】
前記基材が帯電防止剤を含む、請求項1、2、3、4、5、12、15、16、および19のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項33】
前記帯電防止剤を含有する前記研磨製品の表面抵抗率が約1E8Ω/□以下である、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項34】
前記帯電防止剤が前記基材に結合している、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項35】
前記帯電防止剤が、前記基材および粒子材料の一部を覆うコート中に含まれる、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項36】
前記帯電防止剤が、前記基材の表面に取り付けられた裏打ち材中に含まれる、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項37】
前記帯電防止剤が前記粒子材料に結合している、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項38】
前記帯電防止剤が前記粒子材料中に含まれる、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項39】
前記帯電防止剤が前記ナノ粒子バインダーに結合している、請求項38に記載の被覆研磨製品。
【請求項40】
前記粒子材料が中空であり、前記帯電防止剤が前記粒子材料の内部空間内に含まれる、請求項38に記載の被覆研磨製品。
【請求項41】
前記帯電防止剤が吸湿性材料を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項42】
前記帯電防止剤が有機材料を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項43】
前記帯電防止剤がアミン類、カルボキシル類、およびヒドロキシル類からなる群から選択される化合物を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項44】
前記帯電防止剤が金属を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項45】
前記帯電防止剤が炭素を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項46】
前記基材が芳香性材料を含む、請求項32に記載の被覆研磨製品。
【請求項47】
前記芳香性材料がベースノートを含む、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項48】
前記芳香性材料がトップノートを含む、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項49】
前記芳香性材料がミドルノートを含む、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項50】
前記芳香性材料が精油を含む、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項51】
前記芳香性材料が、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、エステル類、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、テルペン類、およびチオール類からなる材料の群から選択される有機材料を含む、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項52】
前記芳香性材料が前記粒子材料に結合している、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項53】
前記芳香性材料が、前記基材および前記粒子材料の一部を覆うコート中に含まれる、請求項52に記載の被覆研磨製品。
【請求項54】
前記芳香性材料が前記粒子材料中に含まれる、請求項46に記載の被覆研磨製品。
【請求項55】
前記芳香性材料が前記ナノ粒子バインダーに結合している、請求項54に記載の被覆研磨製品。
【請求項56】
前記粒子材料が中空であり、前記芳香性材料が前記粒子材料の内部空間内に含まれる、請求項54に記載の被覆研磨製品。
【請求項57】
前記基材が抗菌剤を含む、請求項1、2、3、4、5、12、15、16、19、および32のいずれか1項に記載の被覆研磨製品。
【請求項58】
前記抗菌剤が、滅菌剤、清浄剤、消毒剤、および殺真菌剤からなる群より選択される材料を含む、請求項57に記載の被覆研磨製品。
【請求項59】
前記抗菌剤が、アルコール、フェノール類、過酸化物、アンモニウム含有化合物、ヨウ素含有化合物、塩素含有化合物、およびフェノール化合物からなる群より選択される材料を含む、請求項57に記載の被覆研磨製品。
【請求項60】
前記抗菌剤が、前記基材および粒子材料の一部を覆うコート中に含まれる、請求項59に記載の被覆研磨製品。
【請求項61】
前記抗菌剤が前記粒子材料に結合している、請求項57に記載の被覆研磨製品。
【請求項62】
前記抗菌剤が前記粒子材料中に含まれる、請求項61に記載の被覆研磨製品。
【請求項63】
前記抗菌剤が前記ナノ粒子バインダーに結合している、請求項62に記載の被覆研磨製品。
【請求項64】
前記粒子材料が中空であり、前記抗菌剤が前記粒子材料の内部空間内に含まれる、請求項62に記載の被覆研磨製品。
【請求項65】
塗装表面を機械加工する方法であって:
初期表面粗さRaを有する塗装表面を提供するステップと;
前記塗装表面から材料を除去して、表面粗さを最終表面粗さRaまで減少させるために前記塗装表面を1つの研磨製品で研磨するステップとを含み、前記最終表面粗さRaが、別の研磨製品を使用せずに前記1つの製品で実現される、方法。
【請求項66】
前記塗装表面が初期光沢Gを有し、前記塗装表面を研磨するステップが、前記表面の光沢を最終光沢Gまで変化させるステップを含み、少なくとも約60°の角度で測定したGが少なくとも約2Gである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
約60°の角度で測定したGが約2G〜約4Gの範囲内である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
約85°の角度で測定したGが少なくとも約3Gである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
約85°の角度で測定したGが約2G〜約6Gの間の範囲内である、請求項68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−528998(P2011−528998A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520113(P2011−520113)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/051045
【国際公開番号】WO2010/011579
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(391010770)サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド (87)
【出願人】(507169495)サン−ゴバン アブラジフ (41)
【Fターム(参考)】