説明

処理装置,処理方法及び蓄熱器

【課題】吸熱反応が生じても,処理炉内を効率的に加熱できる処理装置及び処理方法を提供する。さらに,かかる処理装置及び処理方法において好適に用いられる蓄熱器を提供する。
【解決手段】被処理体を吸熱反応によって処理する処理装置1において,被処理体が投入される処理炉2と,処理炉2内に処理ガスを供給する供給路3と,処理炉2内から排ガスを排出させる排出路4を備えた。また,処理ガスを加熱するヒーター11を備えた。さらに,排出路4には,排ガスの熱を蓄熱する蓄熱器15と,蓄熱器15を通過した排ガスと供給路3を通過する処理ガスとの間で熱交換を行わせる熱交換器10とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,処理装置,処理方法及び蓄熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
還元鉄の製造方法として,酸化鉄を含有する鉄化合物を処理炉に入れ,水素等を含有する還元雰囲気中で加熱して,酸化物を還元する処理方法が知られている(特許文献1,2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−106811号公報
【特許文献2】特開2004−225104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記処理炉内で行われる還元反応は吸熱反応であり,温度低下が生じるため,処理炉内は積極的に加熱する必要がある。しかしながら,従来の処理方法にあっては,処理炉の加熱効率を向上させることは難しかった。また,処理炉の加熱に使用する電気ヒーター等の加熱手段の負荷が大きく,電気料金などの加熱に要するコストが高い問題があった。特に,還元反応が開始された直後は,処理炉内の温度低下が著しく,処理炉内の温度を所定の値に上昇させるまでに長時間を要していた。そのため,処理効率を向上させることができなかった。
【0005】
本発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,吸熱反応が生じても,処理炉内を効率的に加熱できる処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。さらに,かかる処理装置及び処理方法において好適に用いられる蓄熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため,本発明によれば,被処理体を吸熱反応によって処理する処理装置であって,被処理体が投入される処理炉と,前記処理炉内に処理ガスを供給する供給路と,前記処理炉内から排ガスを排出させる排出路と,前記処理ガスを加熱するヒーターとが備えられ,前記排出路に,前記排ガスの熱を蓄熱する蓄熱器と,前記蓄熱器を通過した排ガスと前記処理ガスとの間で熱交換を行わせる熱交換器とが設けられていることを特徴とする,処理装置が提供される。
【0007】
かかる処理装置によれば,被処理体の処理が開始される前に,ヒーターによって加熱しながら処理ガスを処理炉に供給し,処理炉から排出された排ガスを蓄熱器に導入することで,排ガスの熱を蓄熱させることができる。被処理体の処理が開始されてからは,蓄熱器に蓄熱された熱を利用して,処理炉に供給される処理ガスを加熱することができる。従って,処理炉内で吸熱反応が生じても,処理炉内を効率的に加熱でき,ヒーターの負荷を低減できる。
【0008】
この処理装置にあっては,前記排ガスを前記処理炉内に処理ガスとして供給する循環ラインを構成しても良い。また,前記被処理体は酸化物を含有し,前記処理ガスは水素を含有し,前記吸熱反応は,酸化物を還元する還元反応であるとしても良い。なお,酸化物とは,例えば酸化鉄(FeO),酸化モリブデン(MoC),酸化タングステン(WO)等の金属酸化物であっても良い。
【0009】
また,本発明によれば,被処理体を吸熱反応によって処理する処理方法であって,被処理体を処理炉内に投入する前に,加熱した処理ガスを処理炉内に供給しながら前記処理炉内を排気し,前記処理炉内から排気された排ガスの熱を蓄熱器に蓄熱させ,その後,前記処理炉内に被処理体を投入し,被処理体の吸熱反応処理を開始させ,前記吸熱反応処理を行う際は,前記処理炉内から排気された排ガスを前記蓄熱器に通過させ,前記蓄熱によって昇温させ,前記蓄熱によって昇温された排ガスと前記処理炉内に供給される処理ガスとの間で熱交換を行わせることで,前記処理ガスを加熱して,前記処理炉内に供給することを特徴とする,処理方法が提供される。
【0010】
この処理方法にあっては,前記熱交換によって加熱した前記処理ガスを,さらにヒーターによって加熱した後,前記処理炉内に供給するようにしても良い。また,前記排ガスを,前記処理炉に処理ガスとして供給しても良い。前記被処理体は酸化物を含有し,前記処理ガスは水素を含有し,前記吸熱反応は,酸化物を還元する還元反応であるとしてもよい。
【0011】
また,本発明によれば,流体の熱を蓄熱する蓄熱器であって,ケーシングと,前記ケーシングの内部に備えられた蓄熱体と,前記蓄熱体を保持する蓄熱体保持体とを備え,前記蓄熱体保持体は,前記ケーシングの側壁に接触していない状態で,前記ケーシングの底部に設けられていることを特徴とする,蓄熱器が提供される。かかる蓄熱器によれば,蓄熱体保持部材の熱膨張が生じても,ケーシングの側壁が押されることを防止でき,ケーシングの損傷を防止できる。
【0012】
前記蓄熱体保持体は,前記蓄熱体を載せる略格子状の保持板と,前記保持板を載せる架台とを備えるとしても良い。前記架台は,前記ケーシングの側壁に沿って枠状に形成された枠部材と,前記底部に取り付けられ前記枠部材を支持する枠支持部材とを備え,前記枠部材の上面に断熱材が備えられ,前記保持板の周縁部が前記断熱材に載せられている構成としても良い。
【0013】
前記ケーシングは,前記底部に取り付けられたケーシング支持部材によって支持されているとしても良い。前記ケーシングの底部と側壁との間の角部は,曲げ加工により形成しても良い。また,前記蓄熱体の上方に,前記流体を導入する導入口が設けられ,前記蓄熱体及び前記蓄熱体保持体の下方に,前記流体を導出する導出口が設けられ,前記蓄熱体保持体に,上下方向に貫通する連通口が設けられ,前記導入口から導入された流体は,前記蓄熱体を通り,前記連通口を介して,前記導出口によって導出されるとしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,被処理体の処理が開始される前に,処理炉内に加熱した処理ガスを供給し,処理炉から排出された排ガスを蓄熱器に導入することで,排ガスの熱を蓄熱させることができる。被処理体の処理が開始されてからは,蓄熱器に蓄熱された熱を利用して,処理炉に供給される前の処理ガスを加熱してから,処理炉に供給することができる。従って,吸熱反応が生じても,処理炉内を効率的に加熱でき,ヒーターの負荷を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明の好ましい実施形態を,被処理体を還元処理する処理装置に基づいて説明する。図1に示すように,本実施形態にかかる処理装置1は,被処理体が投入される処理室を有する処理炉2,処理炉2内(処理室)に水素(H)等を含有する還元性の処理ガスを供給する供給路3,処理炉2内から処理後の処理ガス等を排ガスとして排出する排出路4を備えている。被処理体は,酸化物としての酸化鉄(FeO)を含有する還元鉄粉である。
【0016】
供給路3には,熱交換器10,処理炉2内の雰囲気を加熱するための加熱手段である電気ヒーター11が,上流側から処理炉2側に向かってこの順に設けられている。排出路4には,排ガスの熱を蓄熱する蓄熱器15及び熱交換器10が,処理炉2側から下流側に向かってこの順に介設されている。また,供給路3の上流端と排出路4の下流端は,送風機(ブロワ)18に接続されている。かかる構成においては,排出路4によって処理炉2の内部から排出された排ガスは,送風機18の作動により,供給路3に導入され,再び処理炉2の内部に処理ガスとして供給される。即ち,供給路3,処理炉2内,排出路4の順に処理ガスを循環させる循環ライン20が構成されている。また,排出路4において,熱交換器10と送風機18との間には,未使用の処理ガスを供給する供給源22に接続された導入路23が介設されている。導入路23は,切換開閉弁25を介して,排出路4に接続されている。この切換開閉弁25の操作により,導入路23から送風機18を介して供給路3に処理ガスが導入される状態と,排出路4から送風機18を介して供給路3に処理ガスが導入される状態と,を切り換えることができる。
【0017】
熱交換器10には,供給路3において送風機18から処理炉2に向かう途中の処理ガスが導入されるとともに,排出路4において蓄熱器15から送風機18に向かう途中の排ガスが導入される。即ち,蓄熱器15の蓄熱によって昇温された排ガスが,排出路4において蓄熱器15の下流側に設けられた熱交換器10に供給され,排ガスと供給路3から処理炉2に供給される前の処理ガスとの間で,非接触状態で熱交換が行われることにより,処理ガスが加熱されるようになっている。このように蓄熱器15の蓄熱を利用して熱交換器10にて予備加熱された処理ガスは,供給路3において熱交換器10の下流側に設けられたヒーター11によって,さらに所定温度まで昇温された後,処理炉2に供給される。こうして,加熱された処理ガスにより,蓄熱器15の蓄熱とヒーター11の熱が処理炉2内に運ばれ,処理炉2内が加熱される構成になっている。
【0018】
図2に示すように,蓄熱器15は,流体としての排ガスが導入されるケーシング30,ケーシング30内に排ガスを導入する導入口31,及び,ケーシング30内から排ガスを導出する導出口32を備えている。ケーシング30の内部には,排ガスに接触して熱を蓄熱する蓄熱体33が備えられている。
【0019】
ケーシング30は,4つの平板状の側壁を有する略角筒状をなす筒状部30aを備え,さらに,筒状部30aによって囲まれた空間の上部を閉塞する天井部30b,筒状部30aによって囲まれた空間の下部を閉塞する底部30cを備えている。底部30cは,筒状部30aを構成する各側壁の下部から内側に向かうようにそれぞれ設けられた,4つの平板状の底板からなり,各底板は,側壁側から内側に向かうに従い次第に下方に向かうように,傾斜させられている。従って,底部30cは,上方から下方に向かうに従い窄められた略四角錐面状に形成されている。また,図3に示すように,底部30cの下面周縁部には,外部の載置台や床面等に対してケーシング30を支持させるケーシング支持部材としての支柱35が,複数箇所,例えば8箇所に取り付けられている。
【0020】
ケーシング30は,2枚以上の金属板を溶接加工などで接合させることにより形成されているが,図4に示すように,筒状部30aの側壁とその側壁に繋がる底部30cの底板との間の各角部37は,金属板を曲げ加工することにより形成することが好ましく,角部37には,溶接等による金属板同士の継ぎ目が無いことが好ましい。そうすれば,角部37の強度を確保することができ,角部37において亀裂や破断等の損傷が生じることを防止できる。例えば,筒状部30aと底部30cが角部37において溶接により継ぎ合わせられている場合,ケーシング30内が加熱されると,熱膨張により,筒状部30aの金属板は下方に向かって伸長しようとし,底部30cの金属板は,筒状部30a側に向かって斜め上方に伸長しようとする。そのため,角部37に応力が集中し,亀裂が発生するおそれがある。これに対し,角部37に継ぎ目が無い場合,筒状部30aや底部30cが熱膨張したときの耐久性を増すことができる。
【0021】
なお,図示の例では,底部30cの上部と筒状部30aの下部は,連続した一枚の金属板41を曲げ変形させることにより,一体的に成形されており,筒状部30aは,金属板41において曲げ変形させた部分より上側の平板状の部分と,他の金属板42とによって構成されている。金属板42の下縁部は,金属板41の上縁部に対し,溶接加工により接合させられている。金属板41,42同士の継ぎ目43は,後述する保持板52の上面とほぼ同じ高さに沿って配置されている。
【0022】
ケーシング30の内面及び外面には,断熱性を有する内部保温材45,外部保温材46がそれぞれ備えられている。内部保温材45は,筒状部30a,天井部30b,底部30cの内側の面全体を覆うように,所定の厚さの層状に設けられている。外部保温材46は,筒状部30a,天井部30b,底部30cの外側の面全体を覆うように,所定の厚さの層状に設けられている。内部保温材45の材質としては,例えばセラミックファイバー(ニチアス株式会社製,商品名:ファインフレックス)等を用いても良い。外部保温材46の材質としては,例えばグラスウール等を用いても良い。このように内部保温材45を設けることにより,ケーシング30の耐熱性及びケーシング30内の保温性を向上させることができる。また,外部保温材46を設けることにより,ケーシング30内の保温性をさらに向上させることができる。
【0023】
図2に示すように,導入口31は,蓄熱体33の上方において,天井部30bの中央部に開口されている。導入口31には,排ガスを処理炉2側から蓄熱器15に送気する上流側の排出路4aが接続されている。導入口31の下方において,導入口31と蓄熱体33との間には,導入口31から導入された排ガスを導入口31の下方から筒状部30aに向かう外側まで分散させる分散板47が設けられている。
【0024】
導出口32は,蓄熱体33及び後述する蓄熱体保持体51の下方において,底部30cの中央下端部に開口されている。導出口32には,排ガスを蓄熱器15から熱交換器10に送気する下流側の排出路4bが接続されている。
【0025】
蓄熱体33は,複数の略方形をなす薄板状の蓄熱材50によって構成されている。各蓄熱材50は,互いに略平行な姿勢で,それぞれ略鉛直方向(上下方向)に向けて立設させられており,また,略水平方向(横方向)において,隣り合う蓄熱材50同士の間に所定間隔を空けて並べて備えられている。
【0026】
また,蓄熱体33は,ケーシング30内の底部30cに設けられた蓄熱体保持体51によって保持されている。蓄熱体保持体51は,蓄熱体33を載せる略格子状の保持板52と,保持板52を載せる架台53とを備えている。
【0027】
図5に示すように,保持板52は,複数の細長い縦板52aと横板52bとによって構成された格子状をなしており,各縦板52a,横板52bによって囲まれた複数の略正方形状の開口,即ち,保持板52に上下方向に貫通させて設けられた連通口52cを備えている。縦板52aは,所定の高さにおいて長さ方向を横向きにして延設されており,また,互いに略平行に,所定間隔を空けて並べて設けられている。横板52bは,各縦板52aに対して略垂直に交差するように,所定の高さにおいて長さ方向を横向きにして延設されており,また,互いに略平行に,所定間隔を空けて並べて設けられている。各蓄熱材50は,例えば縦板52aと略平行な方向に向けられ,下辺部を複数の横板52bの上縁に渡って接触させるようにして,保持板52の上面に載せられて保持されている。導入口31から導入された排ガスは,蓄熱体33の各蓄熱材50の間の隙間を通って下降し,各連通口52cを介して,保持板52の下方に流出し,導出口32によって導出されるようになっている。なお,保持板52の材質としては,剛性と耐熱性を有する材質を使用することが好ましく,例えばSUS304等の鋼材を用いても良い。
【0028】
図6に示すように,架台53は,筒状部30aの各側壁に沿って略方形の枠状に形成された枠部材61と,枠部材61の下面と底部30cとの間に設けられた複数の枠支持部材62とを備えている。枠部材61は枠支持部材62によって支持されており,枠支持部材62を介して,ケーシング30に取り付けられている。枠部材61の上面には,複数の断熱材63が備えられている。
【0029】
図4に示すように,枠部材61は,底部61a,内側の側壁61b,及び,外側の側壁61cを備えている。側壁61bは,底部61aの内側の縁部に沿って,底部61aの上方に向かって立設されている。側壁61cは,底部61aの外側の縁部に沿って,底部61aの上方に向かって立設されている。即ち,枠部材61の各辺部の断面形状は,上方に開口を向けた略コの字状になっており,側壁61bと側壁61cとの間には,枠部材61の上面において開口された溝65が設けられている。溝65は,平面視において枠部材61の上面に沿って設けられている。
【0030】
断熱材63は,略直方体形状をなし,上面が略水平になるようにして,溝65に挿入されている。また,枠部材61及び溝65に沿って,複数の断熱材63が略方形に並べて設けられている(図6参照)。各断熱材63の高さは,溝65の深さより高く,断熱材63の上部が溝65より上方に突出するようになっている。断熱材63の材質としては,例えばセラミックスを用いても良い。
【0031】
かかる構成において,保持板52は,保持板52の下面周縁部が略方形に並べられた複数の断熱材63の上面に載せられた状態で,架台53上に支持されている。枠部材61は保持板52に接触しておらず,断熱材63のみが保持板52に接触させられている。こうして,保持板52と架台53との間に断熱材63が挟まれていることにより,蓄熱体33から保持板52,架台53を介してケーシング30の底部30cに熱が伝導して外部に逃げることを抑制できる。従って,蓄熱体33の蓄熱を効率的に行えるようになっている。
【0032】
枠支持部材62は,ケーシング30の底部30cにおいて,筒状部30aに近接した周縁部に沿って並べて配置されている。各枠支持部材62の下端部は,ケーシング30の底部30cの傾斜した上面に取り付けられており,上端部は枠部材61の底部61aの下面に取り付けられている。なお,枠支持部材62の上端部及び下端部は,枠部材61及び底部30cに対して溶接加工等により固着されている。
【0033】
なお,蓄熱体保持体51の周縁部(保持板52及び架台53の周縁部)は,内部保温材45の内部に設けられていても外部に設けられていても良いが,ケーシング30の側壁(筒状部30a)には,接触していないことが好ましい。保持板52と筒状部30aとの間に設ける隙間は,例えば蓄熱時のケーシング30内の温度下における,縦板52aの端部や横板52bの端部の熱膨張による移動量よりも,大きくすることが好ましい。即ち,縦板52aや横板52bが熱膨張により横向きに伸長しても,筒状部30aに接触したり,ケーシング30が保持板52によって内側から押されたりしないようにすることが好ましい。この場合,保持板52とケーシング30との間で応力が発生することを防止でき,保持板52やケーシング30が応力により損傷することを防止できる。また,架台53と筒状部30aの内面との間にも,隙間が形成されていることが好ましい。即ち,架台53(側壁61c)が熱膨張により筒状部30a側に向かうように変形しても,筒状部30aに接触しないことが好ましい。これにより,架台53とケーシング30との間で応力が発生することを防止でき,架台53やケーシング30が損傷することを防止できる。
【0034】
以上のように,蓄熱体33と蓄熱体保持体51は,ケーシング30の底部30cに対して支持されており,蓄熱体保持体51から底部30cに対して荷重が加えられるようになっている。そして,ケーシング30の側壁に対しては,蓄熱体33と蓄熱体保持体51が接触していない状態になっており,蓄熱体33と蓄熱体保持体51からケーシング30の側壁には荷重が加えられず,ケーシング30の側壁の損傷を防止できるようになっている。
【0035】
なお,保持板52,枠部材61,断熱材63は,互いに固着されていないので,ケーシング30内が加熱されたときに,保持板52,架台53,断熱材63がそれぞれ熱膨張しても,互いにずれながら変形することが可能になっている。従って,保持板52,枠部材61,断熱材63が応力により損傷することを防止できる。
【0036】
図3及び図4に示すように,ケーシング30の支柱35は,底部30cの各周辺部に対してそれぞれ2本ずつ,合計で8本設けられており,導出口32を囲むように配置されている。各支柱35は略直棒状をなし,長さ方向を略鉛直方向に向けて設けられている。各支柱35の上端部は,底部30cの外側の面,即ち下面に対して,溶接等により固着されている。各支柱35の下端部は,蓄熱器15の外部の載置台や床面等に載せられる。
【0037】
各支柱35は,枠部材61の真下,即ち,平面視において枠部材61と重なる位置に配置されていることが好ましい。また,枠支持部材62の真下,即ち,側面視において,枠支持部材62と略同一の略鉛直な中心軸A上に配置されていることが好ましい。このようにすると,底部30cにおける枠部材61や枠支持部材62の真下の部分を,支柱35によって集中的に補強でき,底部30cが蓄熱体33,保持板52及び架台53の荷重によって損傷を受けることを防止できる。そして,蓄熱体33,保持板52及び架台53の荷重を,支柱35によってバランスよく受け止めることができる。また,蓄熱体33,保持板52,架台53等の荷重が,各支柱35に対して略鉛直方向に作用し,各支柱35が略鉛直方向に真っ直ぐに押される状態にすることができる。即ち,支柱35には主に中心軸A方向の圧縮応力が生じるようになり,架台53の外側や内側に向かう曲げ応力が生じることを抑制できる。従って,支柱35や底部30cの損傷を防止でき,蓄熱器15を確実に支持することができる。
【0038】
次に,以上のように構成された処理装置1における処理方法について説明する。先ず,被処理体を処理炉2に投入する前に,処理炉2内を還元雰囲気にするとともに,処理炉2内の雰囲気を所定の温度に昇温させる前工程が行われる。即ち,供給路3によって還元性の処理ガスを処理炉2内に供給しながら,処理炉2内を排気させることにより,処理炉2内を還元性の雰囲気によってパージする。また,ヒーター11を作動させ,供給路3を通る処理ガスをヒーター11の発熱によって所定温度に加熱し,加熱した高温の処理ガスを処理炉2内に供給することにより,処理炉2内を昇温させる。このとき,供給路3から処理炉2に供給された高温の処理ガスは,排気路4によって処理炉2から排ガスとして排気され,さらに蓄熱器15に導入される。そして,蓄熱器15において,排ガス(処理ガス)が有する熱の一部が奪われて,蓄熱体33に蓄熱される。
【0039】
蓄熱器15においては,排出路4aから導入口31を介してケーシング30内に排ガスが導入され,分散板47によって蓄熱体33の上方全体に拡散された後,蓄熱体33の蓄熱材50同士の間を通って下降する。排ガスが蓄熱材50同士の間を下降する際,排ガスの熱が蓄熱材50に伝達して,蓄熱材50が加熱され,排ガスは降温される。蓄熱材50同士の間を通過した排ガスは,保持板52の各連通口52cを介して保持板52の下方に流出し,ケーシング30内から導出口32を介して排出路4bによって導出される。
【0040】
こうして蓄熱材50に排ガスの熱が蓄熱されるが,蓄熱材50を支持する保持板52と架台53の間には断熱材63が設けられているので,蓄熱体33の熱がケーシング30から外部に逃がされることなく,効率的に蓄熱される。
【0041】
蓄熱器15において降温された排ガスは,蓄熱器15から導出されて,送風機18の作動により,再び供給路3に処理ガスとして導入される。そして,再びヒーター11によって加熱された後,処理炉2に供給される。なお,この前工程においては,排出路4において蓄熱器15から熱交換器10に向かう排ガスの温度と,排出路4から供給路3に導入された処理ガスの温度とは,殆ど同じか,あるいは処理ガスの温度が自然放熱により排ガスよりも若干低くなる程度であり,熱交換器10においては,熱交換は殆ど行われない。
【0042】
こうして,ヒーター11の熱によって処理ガスを加熱し,ヒーター11の発熱の一部を処理ガスによって蓄熱器15に運びながら,処理炉2内を所定温度の還元雰囲気にしたら,処理炉2内に被処理体を投入し,処理炉2内を密閉状態にする。そして,処理炉2内の被処理体の還元処理(吸熱反応処理)工程を開始させる。還元処理中も,処理ガスはヒーター11によって加熱されながら,送風機18の作動により供給路3,処理炉2,排気路4の順に通過するように循環させられる。
【0043】
処理炉2内において,被処理体中の酸化鉄に処理ガス中の水素が供給されると,酸化鉄から酸素(O)が奪われる還元反応により,水分(HO)が発生し,酸化鉄が鉄に還元される。
【0044】
ここで,処理炉2内において生じる酸化鉄と水素との還元反応は,周囲の熱を奪う吸熱反応であるため,供給路3から処理炉2内に供給された処理ガスの温度は,処理炉2内から排出される排ガスの温度よりも低くなっている。即ち,ヒーター11の発熱によって処理ガスに与えられた熱の一部は,還元反応において吸熱され,蓄熱器15には,吸熱により冷却された排ガスが導入される。一方,蓄熱器15内の蓄熱材33には,前述した前工程において集められた熱が蓄熱されている。そのため,排ガスが蓄熱材33を通過すると,排ガスに蓄熱が与えられ,排ガスが昇温される。こうして,処理炉2から排出された直後よりも昇温された排ガスが,蓄熱器15から熱交換器10に導入される。
【0045】
熱交換器10においては,蓄熱器15において加熱された排ガスと,供給路3を通る処理ガスとの間で熱交換が行われ,排ガスから処理ガスに対して熱が与えられる。即ち,蓄熱器15と熱交換器10との間において,排ガスは,蓄熱器15の蓄熱を熱交換器10に運び処理ガスに伝達させる熱媒体として機能する。排ガスは,処理ガスの冷熱により冷却される。
【0046】
熱交換器10から導出された排ガスは,排出路4から送風機18を介して供給路3に処理ガスとして供給される。
【0047】
供給路3においては,送風機18から熱交換器10に対して処理ガスが導入され,前述のように,排ガスとの間で熱交換が行われる。即ち,処理ガスに対して排ガスの熱が与えられ,処理ガスが加熱される。
【0048】
熱交換器10において加熱された処理ガスは,ヒーター11によってさらに高温に加熱された後,処理炉2に供給される。ここで,処理ガスは,ヒーター11によって加熱される前に,熱交換器10において予め予備加熱されているので,処理ガスを所定温度まで昇温させるために要するヒーター11の発熱量は,蓄熱器15や熱交換器10を設けない場合よりも,少ない発熱量に抑えることができる。従って,ヒーター11の電気料金などのランニングコストを削減することができる。特に,処理炉2内に被処理体を投入し還元処理を開始させた直後は,吸熱量が多く,排ガスの温度が急激に低下するので,ヒーター11のみで加熱する場合は,処理炉2内の温度や処理炉2内に供給する処理ガスの温度を所定温度に昇温させるまでの時間を短くすることが難しいが,蓄熱器15と熱交換器10によって処理ガスを予備加熱することにより,ヒーター11によって短時間で所定温度に昇温させることができ,還元処理を安定的に行うことができる。また,導入路23から供給路3に新たな処理ガスを供給する場合も,処理ガスを熱交換器10に通過させて予備加熱してからヒーター11に送ることができるので,処理ガスを効率的に加熱でき,ヒーター11のランニングコストを削減できる。
【0049】
かかる処理装置1によれば,被処理体の還元処理工程が開始される前に,加熱された処理ガスを処理炉2に供給しながら,処理炉2から排出された排ガスを蓄熱器15に導入することで,排ガスの熱を蓄熱させることができる。還元処理工程が開始されてからは,蓄熱器15に蓄熱された熱を利用して,処理炉2に供給される前の処理ガスを予備加熱してから,ヒーター11によって加熱し,処理炉2に供給できる。従って,吸熱反応が生じても,処理炉2内を効率的に加熱でき,ヒーター11の負荷を低減できる。また,還元処理開始直後に処理炉2内の温度が急に下がっても,蓄熱器15の蓄熱を利用して処理ガスを加熱することで,処理炉2内の温度を迅速に昇温させることができる。これにより,還元反応の効率を向上させることができる。
【0050】
また,蓄熱器15においては,蓄熱体33を蓄熱体保持体51によって保持し,蓄熱体保持体51をケーシング30の側壁に接触させないようにしたことにより,ケーシング30の側壁が損傷することを防止できる。従って,耐久性,耐熱性を向上させ,蓄熱器15の寿命を延ばすことができる。さらに,蓄熱体保持体51に断熱材65を設けたことにより,蓄熱体33からケーシング30に熱が逃げることを防止できる。従って,蓄熱を効率的に行うことができる。
【0051】
以上,本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば,以上の実施形態においては,酸化鉄を還元する装置及び方法について説明したが,本発明は,その他の酸化物を還元する装置及び方法にも適用できる。例えば酸化モリブデンの粉末を還元してモリブデン(Mo)を得る装置及び方法,また,酸化タングステンの粉末を還元してタングステン(W)を得る装置及び方法に適用できる。
【実施例】
【0052】
本発明者らは,処理装置1を用いた処理方法の実験を行った。図7に示すように,供給路3において,熱交換器10とヒーター11との間,ヒーター11と処理炉2との間に,それぞれ温度計T1,T2を設けた。また,排出路4において,処理炉2と蓄熱器15との間,蓄熱器15と熱交換器10との間,及び,熱交換器10と送風機18との間に,それぞれ温度計T3,T4,T5を設けた。そして,前工程において,処理炉2内の温度を610℃にした後,還元処理工程において,処理炉2内の温度の目標値を610℃とし,還元処理を開始させた。
【0053】
還元反応を開始させた直後は,温度計T3の測定値が130℃程度まで降下したが,その後次第に上昇し,560℃程度になった。温度計T3の測定値が560℃であるとき,温度計T4の測定値は608℃,温度計T5の測定値は65℃,温度計T1の測定値は570℃,温度計T2の測定値は610℃であった。即ち,65℃程度で送風機18から送出された処理ガスの温度を,熱交換器10によって570℃程度の高温まで昇温させることができ,ヒーター11の負荷を大幅に減少させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は,例えば鉄,モリブデン,タングステンなどの各種金属を製造する際に用いられる処理装置及び処理方法,及び,かかる処理装置及び処理方法に用いられる蓄熱器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態にかかる処理装置の構成を示した説明図である。
【図2】蓄熱器の概略縦断面図である。
【図3】蓄熱器を底部側からみた状態を示した底面図である。
【図4】蓄熱器の蓄熱体保持体付近を拡大して示した縦断面図である。
【図5】蓄熱体保持体の平面図である。
【図6】架台の概略斜視図である。
【図7】実験において温度計を設けた位置を示した説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 処理装置
2 処理炉
3 供給路
4 排出路
10 熱交換器
11 ヒーター
15 蓄熱器
20 循環ライン
30 ケーシング
31 導入口
32 導出口
33 蓄熱体
51 蓄熱体保持体
52 保持板
53 架台
61 枠部材
62 枠支持部材
63 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を吸熱反応によって処理する処理装置であって,
被処理体が投入される処理炉と,前記処理炉内に処理ガスを供給する供給路と,前記処理炉内から排ガスを排出させる排出路と,前記処理ガスを加熱するヒーターとが備えられ,
前記排出路に,前記排ガスの熱を蓄熱する蓄熱器と,前記蓄熱器を通過した排ガスと前記処理ガスとの間で熱交換を行わせる熱交換器とが設けられていることを特徴とする,処理装置。
【請求項2】
前記排ガスを前記処理炉内に処理ガスとして供給する循環ラインが構成されていることを特徴とする,請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記被処理体は酸化物を含有し,
前記処理ガスは水素を含有し,
前記吸熱反応は,酸化物を還元する還元反応であることを特徴とする,請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
被処理体を吸熱反応によって処理する処理方法であって,
被処理体を処理炉内に投入する前に,加熱した処理ガスを処理炉内に供給しながら前記処理炉内を排気し,前記処理炉内から排気された排ガスの熱を蓄熱器に蓄熱させ,
その後,前記処理炉内に被処理体を投入し,被処理体の吸熱反応処理を開始させ,
前記吸熱反応処理を行う際は,前記処理炉内から排気された排ガスを前記蓄熱器に通過させ,前記蓄熱によって昇温させ,
前記蓄熱によって昇温された排ガスと前記処理炉内に供給される処理ガスとの間で熱交換を行わせることで,前記処理ガスを加熱して,前記処理炉内に供給することを特徴とする,処理方法。
【請求項5】
前記熱交換によって加熱した前記処理ガスを,さらにヒーターによって加熱した後,前記処理炉内に供給することを特徴とする,請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記排ガスを,前記処理炉に処理ガスとして供給することを特徴とする,請求項4又は5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記被処理体は酸化物を含有し,
前記処理ガスは水素を含有し,
前記吸熱反応は,酸化物を還元する還元反応であることを特徴とする,請求項4〜6のいずれかに記載の処理方法。
【請求項8】
流体の熱を蓄熱する蓄熱器であって,
ケーシングと,前記ケーシングの内部に備えられた蓄熱体と,前記蓄熱体を保持する蓄熱体保持体とを備え,
前記蓄熱体保持体は,前記ケーシングの側壁に接触していない状態で,前記ケーシングの底部に設けられていることを特徴とする,蓄熱器。
【請求項9】
前記蓄熱体保持体は,前記蓄熱体を載せる略格子状の保持板と,前記保持板を載せる架台とを備えることを特徴とする,請求項8に記載の蓄熱器。
【請求項10】
前記架台は,前記ケーシングの側壁に沿って枠状に形成された枠部材と,前記底部に取り付けられ前記枠部材を支持する枠支持部材とを備え,
前記枠部材の上面に断熱材が備えられ,
前記保持板の周縁部が前記断熱材に載せられていることを特徴とする,請求項9に記載の蓄熱器。
【請求項11】
前記ケーシングは,前記底部に取り付けられたケーシング支持部材によって支持されていることを特徴とする,請求項8〜10のいずれかに記載の蓄熱器。
【請求項12】
前記ケーシングの底部と側壁との間の角部は,曲げ加工により形成されていることを特徴とする,請求項8〜11のいずれかに記載の蓄熱器。
【請求項13】
前記蓄熱体の上方に,前記流体を導入する導入口が設けられ,
前記蓄熱体及び前記蓄熱体保持体の下方に,前記流体を導出する導出口が設けられ,
前記蓄熱体保持体に,上下方向に貫通する連通口が設けられ,
前記導入口から導入された流体は,前記蓄熱体を通り,前記連通口を介して,前記導出口によって導出されることを特徴とする,請求項8〜12のいずれかに記載の蓄熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101021(P2007−101021A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289243(P2005−289243)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】