説明

凸版印刷用凸版及びその製造方法

【課題】有機ELデバイスをはじめとする電子デバイスの製造などの用途に適した凸版印刷用凸版及びその製造方法を提供する。
【解決手段】互いに平行に延在する複数の線状パターンから構成されるストライプパターンを印刷するための凸版印刷用凸版を以下のようにして製造する。先ず、シート状の凸版基材14を用意し、また、複数の線状パターンの各々に対応した複数の開口18を有する押出成型用ダイ12を用意する。凸版基材14と押出成型用ダイ12との少なくとも一方を駆動して、押出成型用ダイ12を凸版基材14の表面に沿わせて凸版基材14に対して相対移動させつつ、押出成型用ダイ12の複数の開口18から凸版基板14上へ樹脂を押出すことにより、凸版基材14上にストライプパターンの樹脂層を押出成型し、もって凸版10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷用凸版及びその製造方法に関し、この凸版印刷用凸版は、例えば有機ELデバイスをはじめとする電子デバイスの製造などの用途に特に適したものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは、二つの対向する電極の間に有機EL材料からなる薄膜を形成し、その有機EL材料層(発光層)に電流を流すことで発光させるものであり、効率良く発光させるためには、発光層の膜厚が厚すぎてはならず、通常は膜厚を100nm程度の薄さにする必要がある。その膜厚が均一なものでなければならないことはいうまでもなく、更に、その有機ELデバイスをディスプレイデバイスとする場合には、有機EL材料層から成る発光層を高精細度でパターニングする必要がある。
【0003】
非常に薄く均一な膜厚を有し、しかも高精細度でパターニングした有機EL材料層をデバイス基板上に形成する方法としては、印刷法が適している。印刷法を用いる場合には、水、アルコール、それに有機溶剤などの適当な溶剤に有機EL材料を分散もしくは溶解させた塗工液を調製し、その塗工液を、印刷機を用いて基板上に印刷する。ただし、有機ELデバイスの基板としては、ガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように硬い金属製の印刷版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とする樹脂凸版を用いた凸版印刷法が適している。実際に、そのような印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)や、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提唱されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ELデバイスのうちでも特に、有機ELディスプレイデバイスは高精細度であるため、オフセット印刷より凸版印刷法の方が適しており、なぜならば、凸版印刷法のほうがより高い精細度を達成できるからである。また、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版は、高精細度の凸版印刷を行うのに適した凸版であることが知られている。しかしながら、そのような樹脂凸版は、有機ELデバイスの製造に用いるのには不適当であり、それは、以下の2つの問題を生じるからである。
【0006】
第1の問題は、有機EL材料の塗工液の粘度が低いことに加えて、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版の凸部の側面が粗面であることによって生じるものである。一般的な塗工液化が可能な有機EL材料は、溶剤中に分散もしくは溶解できる上限濃度が固形分比で5%程度であるため、その塗工液は低粘度の液体になる。しかも、有機EL材料を成膜して素子として駆動する場合の耐久性は、膜中の有機EL材料の純度に依存するため、成膜後に膜中に残留する増粘材などを添加することはできず、それゆえ塗工液の高粘度化は困難である。そして、このように塗工液が低粘度であるため、有機EL材料の塗工液を凸版印刷法によりデバイス基板上に印刷する際には、非画線部である凸版の凹部にまで塗工液が流れ込むのを防止することは実施上不可能である。一方、樹脂凸版を製版する際には、ブラシを用いて表面を摺擦しながら現像を行うため、樹脂凸版の凸部の側面はブラシにより傷つけられ粗面になる。このような樹脂凸版を用いて有機EL材料の塗工液を印刷すると、樹脂凸版の凹部に流れ込んだ塗工液が凸部の側面に厚く付着するため、印刷されたパターンの境界に予測不可能な膨出が発生して、パターニング精度が劣化する。それゆえ、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版を使用した凸版印刷法は、高精細度のパターニングを必要とする有機ELディスプレイの製造には不適当である。
【0007】
第2の問題は、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版が、光硬化剤や光重合開始材などの感光性成分を含有していることにより生じるものである。即ち、有機EL材料により形成する発光膜は、発光特性の劣化をきたさないように高い純度とすることが求められるが、特に光硬化剤や光重合開始材といった感光性成分の混入は、大きく発光特性を劣化させる。そして、これら感光性成分を含有した樹脂凸版を用いて有機EL材料の塗工液を印刷すると、樹脂凸版から塗工液中に染み出た感光性成分が、成膜後の発光膜の中に混入することになり、発光特性を劣化させてしまう。この理由からも、凸版印刷法を用いて有機ELディスプレイを製造する上で、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版を用いることは不適当である。
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、上述した従来の問題を克服した凸版印刷用凸版及びその製造方法を提供することにある。また、本発明は更に、かかる凸版印刷用凸版を用いた電子デバイスないし有機ELデバイスの製造方法と、その製造方法により製造された電子デバイスないし有機ELデバイスとを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明に係る凸版印刷用凸版の製造方法は、互いに平行に延在する複数の線状パターンから構成されるストライプパターンを印刷するための凸版印刷用凸版の製造方法において、シート状の凸版基材を用意し、前記複数の線状パターンの各々に対応した複数の開口を有する押出成型用ダイを用意し、前記凸版基材と前記押出成型用ダイとの少なくとも一方を駆動して、前記押出成型用ダイを前記凸版基材の表面に沿わせて前記凸版基材に対して相対移動させつつ、前記押出成型用ダイの前記複数の開口から前記凸版基板上へ樹脂を押出すことにより、前記凸版基材上にストライプパターンの樹脂層を押出成型し、もって凸版を形成することを特徴とする。また、本発明に係る凸版印刷用凸版は、かかる凸版印刷用凸版の製造方法に従って製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製造方法によって製造された凸版印刷用凸版は、光硬化性の感光性樹脂で形成した樹脂凸版とは異なり、光照射による樹脂の硬化を必要としないため、版から染み出る光硬化剤や光重合開始材といった感光性成分の有機EL材料への混入を防ぐことができ、感光性成分により素子特性が劣化する有機ELディスプレイデバイスの製造にも、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態のみに限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る凸版印刷用凸版10の製造工程を示した模式図であり、図2は、本発明に係る凸版印刷用凸版10の断面模式図である。本発明に係る凸版10は、互いに平行に延在する複数の線状パターンから構成されるストライプパターンを印刷するための凸版であり、例えば、有機ELディスプレイデバイスの基板上にストライプパターンの有機EL材料層を形成するためなどに用いられるものである。図1に示したように、加熱溶融もしくは溶剤に溶解した樹脂が、樹脂押出機(不図示)に取付けられた押出成型用ダイ12からシート状の凸版基材14上に押出成型され、それによって、ストライプパターンの凸部16が基材14上に形成される。
【0013】
押出成型用ダイ12は、図7に示したように、印刷すべきストライプパターンを構成している複数の線状パターンの各々に対応した複数の開口18を有するものである。本発明に係る凸版印刷用凸版の製造方法を実施するには、先ず、印刷しようとするストライプパターンに対応した押出成型用ダイを製作する。尚、製造しようとする凸版が、有機ELディスプレイデバイスの基板上に有機EL材料層を形成するためのものである場合には、通常、非常に多くの開口18が列設された押出成型用ダイが用いられるが、添付図面は本発明の原理を説明することを旨として作成した模式図であるため、開口18の個数を3個として図示してある。
【0014】
シート状の基材14としては、プラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができるが、高精細印刷の観点からは、鉄を主成分とする金属板を用いることが望ましい。また、ストライプパターンの凸部16を構成する樹脂層を、基材14上に直接形成するようにしてもよいが(図2a参照)、先ず、基材14に、樹脂層と基材14との接着性を高めるための接着剤層15を形成し、その上に樹脂層を形成するようにしてもよい(図2b参照)。
【0015】
本発明に係る凸版製造方法においては、先ず、シート状の凸版基材14及び押出成型用ダイ12を用意し、そして、それらの少なくとも一方を駆動して、押出成型用ダイ12を基材14の表面に沿わせてこの基材14に対して相対移動させつつ、押出成型用ダイ12の複数の開口18から基板14上へ樹脂を押出すことにより、基材14上にストライプパターンの樹脂層を押出成型し、もって凸版10を形成するようにしている。
【0016】
押出成型用ダイ12を基材14に対して相対移動させるために、それらの少なくとも一方を駆動する方法は、様々なものとすることができ、例えば、機材14を固定テーブル上に載置しておき、樹脂押出機及びそれに取付けた押出成型用ダイ12を適当なマニピュレータにより移動させる方法とすることもできる。また逆に、押出成型用ダイ12の方を固定しておき、基材14を載置した可動テーブルを適当な移動機構及びアクチュエータにより移動させるようにしてもよく、更にその他の様々な方法を採用することも可能である。尚、押出成型用ダイ12を基材14に対して相対的に移動させる方向は、ストライプパターンを構成する線状パターンの延在方向である。
【0017】
本発明を実施するために使用する樹脂は、例えば、その主成分となるポリマーとして、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、それに、セルロースなどの天然高分子などから選択したポリマーを含有する樹脂などである。
【0018】
特に、製造する凸版が、有機EL材料を溶剤中に分散または溶解させて調製した塗工液を印刷するためのものである場合には、使用する樹脂を、光硬化剤や光重合開始材といった感光性成分を含まないものとすることが望まれる。また、この用途に用いる凸版を製造する場合には、硬化後の樹脂が、有機溶剤に対する耐溶剤性を有するものとするのがよい。この観点からは、その樹脂の主成分となるポリマーとして、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミド、といった水溶性溶剤に可溶なものを用いることが望ましい。
【0019】
なお、様々な樹脂のうちには、紫外線等の光により劣化するものもあるが、本発明に関して「感光性材料を含まない樹脂」というとき、それは、樹脂そのものが光により劣化する性質を持たないという意味ではなく、光により化学反応させることを目的として樹脂に添加されるような成分を含まない樹脂であるという意味である。
【0020】
また、凸版10の凸部16の断面形状は、図3a〜図3cに夫々示したように、矩形、順テーパ型、逆テーパ型などをはじめとする様々な形状とすることができ、凸部16の断面形状を所望の形状にするには、使用する押出成型用ダイ12の開口18の形状を、その凸部16の所望の断面形状に対応した形状に形成すればよい。
【0021】
尚、本発明に係る凸版印刷用凸版は、既述のごとく、ストライプパターンを印刷するための凸版であるが、実際の印刷用途においては、通常、印刷範囲のうちの一部領域のみにストライプパターンを印刷することになる。その場合に、先ず、図4の左側に示したように、基材14上に、ストライプパターンを印刷すべき領域17に加えてその外側にまで凸部16を形成し、しかる後に、図4の右側に示したように、その領域17の外側の部分の凸部16を、金属刃による切削や、レーザーによるアブレーションなどにより除去するようにするとよい。
【0022】
次に、本発明に係る凸版印刷用凸版を用いた電子デバイスの製造方法の一例として、有機ELデバイスの製造方法について説明する。なお、本発明に係る電子デバイスないし有機ELデバイスの製造方法は、以下に例示する具体的な製造方法のみに限定されるものではない。
【0023】
図5に、本発明に係る凸版印刷用凸版を用いた有機ELデバイス製造装置の一例を示した。図示した有機ELデバイス製造装置20は、印刷シリンダ22を備えた凸版印刷機により構成されている。印刷シリンダ22の外周に、本発明に係る凸版印刷用凸版10が巻装されている。塗工液補充装置24は、一般的な滴下型インキ補充装置であり、この塗工液補充装置24の中に、有機EL材料を含む発光層形成用塗工液26が貯留されている。
【0024】
発光層形成用塗工液26は、有機EL材料を溶剤中に分散または溶解させて調製したものである。有機EL材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の、有機溶剤に可溶な有機EL材料が用いられ、また、それら有機EL材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子有機EL材料も用いられる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、水などの単独またはこれらの混合溶媒などが用いられる。特に、芳香族系溶剤およびハロゲン系溶剤は、有機EL材料を溶解させる溶剤として優れたものである。また、この発光層形成用塗工液26には、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、それに乾燥剤などを添加することもある。
【0025】
発光層形成用塗工液26は、塗工液補充装置24から、インキング装置であるアニロックスロール28へ補充され、アニロックスロール28に補充された余剰な発光層形成用塗工液26は、ドクターロールから成るドクター装置30により除去される。塗工液補充装置24としては、滴下型インキ補充装置の他に、ファウンテンロールやスリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター装置30としては、ドクターロールの他に、ドクターブレードといった公知の物を用いることもできる。
【0026】
ドクター装置30により余剰な発光層形成用塗工液が除去された後、アニックスロール28から凸版10へのインキングが行われる。これによって塗工液26が、凸版10の凸部16(図1参照)へ供給され、そしてその塗工液26が、被転写体である有機ELデバイス基板32へ印刷される。有機ELデバイス基板32は多くの場合、ガラス基板であるが、ガラスの他に水蒸気などに対するバリア性を持ったフィルムなどの透光性基板も用いられ、本発明に係る凸版10を用いることで、そのような基板にも良好に印刷することができる。基板32へ印刷された有機EL材料を含む発光層形成用塗工液26は、乾燥することにより有機発光層を形成する。
【0027】
図6に、図5の有機ELデバイス製造装置20により製造された有機ELデバイス36の1つの発光単位38の断面模式図を示した。
【0028】
この有機ELデバイス36の発光単位38は、透光性基板40と透明導電層42と正孔注入層44と有機発光層46と陰極層48とを具備するものである。
【0029】
この有機ELデバイス36において、透光性基板40としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより有機発光素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、透明導電層42を成膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
【0030】
透明導電層42をなす材料としては、インジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)が挙げられる。また、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものや、ポリアニリン等の有機化合物などが挙げられる。
【0031】
正孔注入層44をなす材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の導電性高分子材料を用いても良い。
【0032】
有機発光層46は、電圧の印加により発光する層であり、図5の有機ELデバイス製造装置20によって、本発明に係る凸版10を用いて形成された層であり、上述した塗工液26が乾燥してできた層である。
【0033】
陰極層48をなす材料としては、有機発光層46の発光特性に応じたものを使用すればよく、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体や酸化物、これらと金、銀などの安定な金属との合金などが用いられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。
【0034】
透光性基板40上に透明導電層42及び正孔注入層44を形成するには、公知の方法を用いればよく、それらを形成した後に、その上に、図5を参照して説明したようにして本発明に係る凸版10を用いて有機発光層46を形成し、更にその上に、陰極層48を形成する。陰極層48の形成には真空蒸着法の他にインクジェット法といった公知の手段を用いることができる。
(実施例1)
【0035】
<発光層形成用塗工液の調製>
高分子蛍光体をキシレンに塗工液濃度が1.0重量%となるように溶解させ、発光層形成用塗工液を調製した。高分子蛍光体としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる発光材料を使用した。
【0036】
<被転写基板(デバイス基板)の作製>
150mm角、厚さ0.4mmのガラス基板上に、表面抵抗率15ΩのITOを成膜した基材(ジオマテック(株)製)を用意し、その基材上にスピンコーターを用いて正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被転写基板(デバイス基板)を作製した。
【0037】
<ストライプパターンの樹脂層の作製>
厚さ500μmのSUS304シートを凸版基材14として用意した。また、図7に示す開口18の寸法を、幅100μm、高さ100μmとした押出成型用ダイ12を用意した。凸版基材14上に25μmの厚さの接着材層を塗布した。キシレンに対する体積膨張率が1%の耐溶剤性樹脂を主成分として含む樹脂を溶融し、その樹脂を押出成型用ダイから押出して、接着剤層が塗布されている凸版基材上にストライプパターンの樹脂層を押出成型した。樹脂層を形成後、不要部分は金属刃により切削処理し、切削屑を除去するためにエタノール洗浄した。
【0038】
<有機ELデバイスの作製>
以上により形成した凸版を、自社製印刷機の印刷シリンダーに両面テープを用いて固定した。この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基板に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機ELデバイスを作製した。この有機ELデバイスの発光特性を見たところ、パターン箇所内全面において5Vの印加電圧で108cd/mの均一な発光が得られた。
【0039】
<比較例>
従来のブラシ現像によるアナログ製版を行い、樹脂版を製版した。これと上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基板に対し印刷を行った。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機ELデバイスを作製した。この有機ELデバイスの発光特性を見たところ、版の現像用ブラシによる傷が反映した発光パターンとなり、5Vの印加電圧で23cd/mの輝度だった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る凸版印刷用凸版の製造工程を示した模式図である。
【図2】a及びbは本発明に係る凸版印刷用凸版の断面模式図である。
【図3】a〜cは本発明に係る凸版印刷用凸版の凸部の断面形状を示した模式図である。
【図4】凸版のストライプパターンを印刷すべき領域の外側の部分の凸部の除去を示した模式図である。
【図5】本発明に係る凸版印刷用凸版を用いた有機ELデバイス製造装置の一例を示した模式図である。
【図6】図5の有機ELデバイス製造装置により製造された有機ELデバイスの1つの発光単位の断面模式図である。
【図7】押出成型用ダイの正面模式図である。
【符号の説明】
【0041】
10……凸版印刷用凸版、12……押出成型用ダイ、14……凸版基材、16……凸版の凸部、18……押出成型用ダイの開口、20……有機ELデバイス製造装置、22……印刷シリンダ、24……塗工液補充装置、26……発光層形成用塗工液、28……アニロックスロール、30……ドクター装置、32……有機ELデバイス基板、36……有機ELデバイス、38……有機ELデバイスの発光単位、40……東光精機板、42……透明電導層、44……正孔注入層、46……有機発光層、48……陰極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延在する複数の線状パターンから構成されるストライプパターンを印刷するための凸版印刷用凸版の製造方法において、
シート状の凸版基材を用意し、
前記複数の線状パターンの各々に対応した複数の開口を有する押出成型用ダイを用意し、
前記凸版基材と前記押出成型用ダイとの少なくとも一方を駆動して、前記押出成型用ダイを前記凸版基材の表面に沿わせて前記凸版基材に対して相対移動させつつ、前記押出成型用ダイの前記複数の開口から前記凸版基板上へ樹脂を押出すことにより、前記凸版基材上にストライプパターンの樹脂層を押出成型し、もって凸版を形成する、
ことを特徴とする凸版印刷用凸版の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂が、感光性材料を含まない樹脂であることを特徴とする請求項1記載の凸版印刷用凸版の製造方法。
【請求項3】
硬化後の前記樹脂が、有機溶剤に対する耐溶剤性を有することを特徴とする請求項1記載の凸版印刷用凸版の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の凸版印刷用凸版の製造方法に従って製造されたことを特徴とする凸版印刷用凸版。
【請求項5】
請求項4記載の凸版印刷用凸版を用いてデバイス基板上にパターン形成材料を印刷する工程を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の電子デバイスの製造方法に従って製造されたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
請求項4記載の凸版印刷用凸版を用いて有機エレクトロルミネッセンスデバイス基板上にパターン形成材料を印刷する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法に従って製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−216652(P2007−216652A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43051(P2006−43051)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】