説明

凹条用配線埋込具

【課題】 外壁等の凹条部分を効率的に利用して、壁面を傷つけることなく簡便な作業により配線敷設工事をおこないうる凹条用配線埋込具を提供すること。
【解決手段】
壁面構成体間のつなぎ目に形成される凹条に配線を埋め込むための凹条用配線埋込具であって、本発明の凹条用配線埋込具1は、帯状薄板の長手側をS字に曲げた形状を有し、S字の丸まった部分に配線をくわえ込ませ、S字の上下部分が凹条内面に対して圧力をもって当接して配線を凹条内に保持可能なように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線を凹条に埋め込むための部材に関し、特に、光ケーブルやTVケーブルといったケーブルをサイディングボードなどの目地に沿って這わせて保持する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTHの普及やケーブルテレビの普及、衛星放送の視聴者増に伴って、これらのケーブルを屋外から屋内に引き込む工事が盛んにおこなれている。特に、世帯数の多さから、アパートやマンション、集合住宅などで引き込み工事の要請が多いのが実態である。
【0003】
このような引き込み作業に際しては、従来では、P型ステップルや配線クリートを壁面に打ち込んでケーブルを固定する施工方法が採用されていた。図3は、P型ステップルの外観図である。また、図4は、配線クリートの外観図である(そのうち、図4(a)は、配線クリートが口を開いた状態を示した図であり、図4(b)は、配線クリートがケーブルをくわえ込んだ状態を示した図である)。図示したように、P型ステップルは、Pの字をそのまま立体にした形状で、足部分をネジ留めして配線を固定するものである。また、配線クリートも内部にケーブルを抱え込み、そのまま筐体ごとビスどめする構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−348738号公報
【特許文献2】特開2003−240971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、壁面に穴や傷が付いてしまうという問題点があった。特に、アパートやマンション、集合住宅などの賃貸物件では、サイディングボードなど同一形状の外壁材を用いて、煉瓦調や石材調などの意匠が施されていることが多く、大家が外観保全の観点から壁面が傷つけられてしまうのを好まず、工事を許可しない場合もある。このような場合には、ケーブルを保持固定できないため、ケーブルを屋外で遊ばせておく他はなく揺動による受信不良が発生してしまったり、垂れ下がっているケーブルにより建物の見た目がかえって悪くなるという問題点が新たに発生する。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、外壁等の凹条部分を効率的に利用して、壁面を傷つけることなく簡便な作業により配線敷設工事をおこないうる凹条用配線埋込具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の凹条用配線埋込具は、壁面構成体間のつなぎ目に形成される凹条に配線を埋め込むための凹条用配線埋込具であって、帯状薄板の長手側をS字に曲げた形状を有し、S字の丸まった部分に配線をくわえ込ませ、S字の上下部分が凹条内面に対して圧力をもって当接して配線を凹条内に保持可能なように構成したことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、配線を保持しつつ凹条に内接可能となる。ここで、形状をS字とすることで、渦巻き状である場合より簡便に凹条用配線埋込具を配線に装着でき、また、配線をくわえない側の丸まった部分によって効率的に凹条に圧接可能となる。また、C状とする場合より配線の保持効率も高い。なお、「帯状薄板の長手側をS字に曲げた形状を有し」とは、形状を特定するだけであり、必ずしも帯状薄板を用いて形成する必要はない。また、帯状薄板の長手側をS字に曲げた形状とは、S字を描画面に対して垂直に盛り上げた立体的な文字、換言すれば、奥行をもたせた文字、のように構成した形状をいう。
【0009】
また、請求項2に記載の凹条用配線埋込具は、請求項1に記載の凹条用配線埋込具において、前記長手に対する短手を横幅とし、S字上の2点間の最も長い部分を縦幅、横幅と縦幅に共に垂直な方向の長さを奥行とした場合に、横幅/奥行>0.5としたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2にかかる発明は、配線の凹条内における保持効率を向上する。横幅が狭い場合は、凹条内で凹条用配線埋込具の納まりが悪く、凹条に対して斜めの位置関係となってしまうこともあるが、横幅/奥行>0.5であればこのようなことが生じにくくなる。なお、前記長手に対する短手とは、凹条用配線埋込具では長手が概念しがたいのでS字形状を定義する際に使用した長手を以て、凹条用配線埋込具の横幅を定義するために使用したものである。換言すれば、横幅とは、凹条用配線埋込具を一直線に展開した場合の短手方向の長さを意味する。
【0011】
また、請求項3に記載の凹条用配線埋込具は、請求項1または2に記載の凹条用配線埋込具において、S字上の2点間の最も長い方向に弾性を有することを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項3にかかる発明は、配線の保持を長期的に持続させる。なお、弾性を有するとは、素材自体が弾性を有しても良いし、弾性に富まない素材であってもS字形状とすることにより、結果としてこの方向に弾性を有する態様であっても良い。
【0013】
また、請求項4に記載の凹条用配線埋込具は、請求項1、2または3に記載の凹条用配線埋込具において、素材を、防錆性および耐紫外線性のある素材としたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項4にかかる発明は、屋外暴露下にあっても、配線の保持を長期的に持続させる。なお、このような素材としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、外壁等の凹条部分を効率的に利用して、壁面を傷つけることなく簡便な作業により配線敷設工事をおこないうる凹条用配線埋込具を提供可能となる。なお、本発明は、例えば、ステンレス薄板を加工すればよく、かつ、その加工も複雑でないので、安価な製品を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の凹条用配線埋込具の外観構成図である(このうち図1(a)は、斜視図であり、図1(b)は、横幅方向からみた側面図である)。図示したように、凹条用配線埋込具1は、短辺部分を丸く切り取った長細い鋼板をS字に曲げた形状を有する。鋼板の素材としてはオーテナイト系ステンレスを用いることができる。
【0017】
大きさとしては、凹条(または目地ないし溝)部分の間隔やケーブルの長さによって種々変更可能であるが、例えば、縦幅を1.5cm〜2.5cm、横幅を7mm〜1.5cm、奥行を5mm〜1.0cmとし、厚みを0.1〜1.0mmとすることができる。なお、ケーブルの保持性または安定性の観点からは横幅/奥行>0.5、バネ力の観点からは縦幅/奥行=1.5〜2.5が好ましい。
【0018】
図2は、凹条用配線埋込具の施工方法を示した図である。このうち、図2(a)は、凹条用配線埋込具1をFTTH用光ケーブルに装着したところを、図2(b)は、外壁のサイディングボード間に形成される目地にケーブルを所定間隔埋め込んだ様子を示した図である。
【0019】
凹条用配線埋込具1は、対称形であるので、S字のどちら側の丸部分にケーブルをくわえさせても良い。施工に際しては、目地にケーブルを埋めていき、例えば、60cm間隔に凹条用配線埋込具1をくわえさせてそのまま目地に押し込み、順次敷設していけばよい。凹条用配線埋込具1は、ステンレス製でS字に加工されているので弾性力があり、凹条の幅方向に圧接し、ケーブルを効率的に保持固定可能となる。
【0020】
なお、本実施例では凹条用配線埋込具1の横幅が奥行と同程度であり、凹条の中における凹条用配線埋込具1自身の安定性がよい。従って、ケーブルも長期にわたり安定的に固定されることとなる。
【0021】
実際に、凹条用配線埋込具1を用いた屋外作業をおこなったところ、ケーブルをくわえさせる輪(丸まった部分)も対称であり、作業性の悪い施工場所であっても片手作業ができ、作業性が極めて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の凹条用配線埋込具は、凹条であれば外壁にこだわることなく適用でき、例えば、屋内の間仕切や天井などであっても埋め込み側を傷つけることなく、かつ、ケーブルが目立たないよう溝にケーブルを敷設可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の凹条用配線埋込具の外観構成図である。
【図2】凹条用配線埋込具の施工方法を示した図である。
【図3】従来のP型ステップルの外観図である。
【図4】従来の配線クリートの外観図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面構成体間のつなぎ目に形成される凹条に配線を埋め込むための凹条用配線埋込具であって、
帯状薄板の長手側をS字に曲げた形状を有し、S字の丸まった部分に配線をくわえ込ませ、S字の上下部分が凹条内面に対して圧力をもって当接して配線を凹条内に保持可能なように構成したことを特徴とする凹条用配線埋込具。
【請求項2】
前記長手に対する短手を横幅とし、S字の2点間の最も長い部分を縦幅、横幅と縦幅に共に垂直な方向の長さを奥行とした場合に、横幅/奥行>0.5としたことを特徴とする請求項1に記載の凹条用配線埋込具。
【請求項3】
S字上の2点の最も長い方向に弾性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の凹条用配線埋込具。
【請求項4】
素材を、防錆性および耐紫外線性のある素材としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の凹条用配線埋込具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−94659(P2006−94659A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278785(P2004−278785)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】