説明

凹版印刷機

凹版印刷機が、少なくとも版胴(6)とコレクタ胴(8)とを具備していて;版胴(6)は基板に印刷される特定の凹版構造体に対応する彫り込みを備えた印刷板を担持していて;コレクタ胴(8)は少なくとも一つのブランケット(9)を備えており、種々の色のインクがセレクタ胴(10)により少なくとも一つのブランケット(9)に沈着されていて、セレクタ胴(10)各々は所定の色のインクをダクトローラ(11)から受け入れ、そして所定の色のインクが入る凹版構造体の区画に一致する輪郭を備えたレリーフを有していて;セレクタ胴(10)は駆動手段(15;20,22;25,26,27)により独立的に駆動されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凹版印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
凹版印刷機は、特に銀行券のような証券やその他の同様な物の印刷にとって、先行技術として公知である。例えば、特許文献1は、枚葉又は巻取凹版印刷機を開示していて、本内容を参考として本出願に包含する。この機械は、数枚の印刷版を備える版胴、圧胴、ふき取り装置及びコレクタインク胴を備えたインクシステムを包含する。インクシステムは、弾性的な表面を持ち、印刷版、及び異なる色で印刷される彩色されたゾーンと一致するレリーフを有する、選択的なインク胴と相互作用を行い、かつコレクタインク胴及び各々の選択的な彩色インク胴と連動するインク装置の外周に接触している。
【0003】
別の機械が、例えば特許文献2で開示されていて、本内容を参照として本出願に包含する。この特許はまた、上記で述べた特許文献1の1つに類似の凹版印刷機を開示している。この特許に示されるように、インクシステムは、複数のセレクタ胴を包含していて、インクユニットからコレクタ胴の上に、指定された色のインクを転移するために使用され、順次、版の彫版にインクを塗布する。各々のセレクタ胴は、例えば表面を、硬化ゴム、プラスチック又はそのような物、あるいは金属が並べられた硬い表面を有し、各々のセレクタ胴は、対応する色で印刷される表面の輪郭に、正確に一致する輪郭を有するレリーフ範囲を包含する。
【0004】
凹版印刷機の別の例は、特許文献3で開示されていて、本内容を参照として本出願に包含する。
【0005】
この分野の問題は、凹版構造のインク塗布、特に版のインク塗布が正確でない事実に帰する。その結果、インクは有効な凹版構造より大きな範囲に転移し、このインクは、後でふき取りシステムによってふき取られる。従って、大量のインクが失われる。というのは、版の彫版に有効に一致する場所の外側に付着して、版にインクを塗布するために使用されること無くふき取られるからである。
【0006】
この印刷技術において直面する別の問題は、印刷操作に必要な高圧により、版が、コレクタ胴のブランケットと彫版を備えた版との間の完全な見当に有害な伸び変形を、稼働中に受けるという事実である。この理由のために、インクはまた彫版の外側に付着され、ふき取り操作によって失われる。
【0007】
この使用されないインクの損失を回避するために、版の彫版にインクを付着する精度を上げることを試みた。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5062359号明細書
【特許文献2】米国特許第4516496号明細書
【特許文献3】米国特許第5899145号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、公知の機械と方法を改善することである。
【0010】
本発明の別の目的は、印刷品質を低下させることなく、印刷に必要なインクの量を減少させることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、コレクタ胴によって、版胴にインクを塗布する精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの課題は、凹版印刷機における特定の駆動装置により達成されている。
【0013】
これらの課題を達成するために、本発明が特許請求の範囲により規定されている。
【0014】
本発明において、一つは従来のインク付着方法であるブランケット用ポリマープレートを使用していて、一つは金属Ni製の印刷版の伸びを、セレクタ胴の独立駆動を用いてブランケットにおける異なるインク付着サイズを作ることにより、補償することである。従って、プレートの伸びを補償することを可能にするために、各ブランケットが一つの版に対応するようになっている同数の金属版とブランケットとを有していることが必要である。
【0015】
添付図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
凹版枚葉又は巻取印刷機の機能原理は、矢印で示された方向に回転する異なる胴を示す図1を参照して、最初に述べられる。印刷についての以下の記述は、枚葉印刷機についてであるが、しかし、同様の原理は、また巻取印刷機にも適用される。印刷機において、用紙1は、(示されていない)供給システムから到達し、転送胴2によって圧胴3に転送される。用紙は、刷り工程のためのグリッパ4によってこの圧胴3に保持され、上述のグリッパは、胴ピット5に置かれている。示された例で、圧胴3は、印刷される1枚の用紙を各々支持している二つのセグメントを有する。圧胴3は、版胴6と連動し、胴3と6の両方で、用紙が凹版印刷を受ける印刷ニップを形成する。版胴6は図の例で三つの版を支持していて、三つの版は版胴ピット7に置かれた(示されていない)グリッピングシステムによって保持されている。印刷の従来技術である版は、印刷されるデザインに一致する彫版を支持していて、さらに版の彫版は、連続する用紙に付着させるインクを受容する。
【0017】
版胴6の次に、コレクタ胴とも呼ばれる、ブランケット胴8があり、版胴6の版にインクを塗布するために使われる。図1で概要を表したように、ブランケット胴8は、3枚のブランケット9を支持している。ブランケット9はブランケット胴8に滑らかな表面を形成し、ブランケット胴8の外周に沿って配置されたセレクタ胴10からインクを受容する。各々のセレクタ胴10は、インク装置によって所定の色のインクを塗布される。セレクタ胴10は、ブランケット胴8の表面より硬い表面を有していて、それらの表面は輪郭を有するレリーフ部分を備えた区画に分割されていて、その輪郭は、それぞれのセレクタ胴10のインクを受容することになっている、版の彫版の輪郭に正確に一致する。
【0018】
共通の技術として、各々のセレクタ胴10は、インク装置と連動し、その装置は、少なくともダクトローラ11、インク転移ローラ12、振動ローラ13、所定の色のインクを受容する印字機14、ならびにセレクト胴10を駆動するための駆動モータ15を、備えている。
【0019】
印字機14に入れるインクは、インク転移ローラ12を介して、ダクトローラ11からセレクタ胴10に、そしてセレクタ胴10から版胴6に移送される。版胴6のインクの余剰は、さらにワイピング胴17によってふき取られる。
【0020】
シート1が版胴6と圧胴3との間に形成された印刷ニップを通過し、かつ凹版印刷されると、シートは例えば送り出しシリンダ16により圧胴3から次の工程へ送り出される。
【0021】
図2aはセレクタ胴10用の駆動装置の第一実施形態を図示していて、駆動装置は数個の歯車21−24を介してセレクタ胴10及びダクトローラ11を駆動する駆動モータ20(図1の駆動モータ15に対応している)を備えている。この実施形態は、セレクタ胴及びダクトローラとのインライン駆動装置と見なすこともできる。ダクトローラはモータ20により駆動されるセレクタ胴10の独立作動を可能にしていて、その結果印刷プレートの伸びを補償するために、セレクタ胴10の表面が移動する距離を増減することによりブランケット胴8のブランケット9におけるインク印刷長さを変化させることが可能であり、そしてブランケット胴8の表面は増加と同時に移動する。目的は、プレートの伸びを補償するために両胴の相対移動を変化させることである。
【0022】
本実施形態において、歯車21−24を駆動できるようになっているモータ20は、セレクタ胴10及びダクトローラ11を駆動するために6−10kwの動力を必要としている。
【0023】
本発明における図2Bに図示する第二実施形態において、モータ25は歯車26,27を介してセレクタ胴10を駆動するだけであって、ダクトローラ11は歯車28,29,30及び31を介してブランケット胴と共に独立的に駆動されている。本実施形態において、モータ25によりセレクタ胴10の独立駆動は、ブランケット胴8の移動に対してその移動を変化させることを可能にしていて、従ってプレートの伸びを補償するために、前記ブランケット胴に付着されるインクの長さを変化させることを可能にしている。
【0024】
第二実施形態においてモータ25の出力はより小さなものでよくて、セレクタ胴10を駆動するためには2kwより小さくすることができる。
【0025】
プレートの伸びを調節するために適切な装置について図3を参照して説明する。この装置は、数本の線からなる二組の線33,34を備えていて、例えば五本各々が版の各端部に彫り込まれている。凹版印刷プロセスにおいて、二組の線33,34が基板32、例えば偽造防止書類に再現される。しかしながら、凹版印刷プロセスが基板に施こされる前に、インクは、ブランケット胴8により二組の線33,34各々の中心線35,36に対応する版の彫り込みだけに付着される。従って、凹版印刷プロセス後に各基板は二組の線33,34が再現されているけれども、二組の線33,34各々における一本の線(中心線35,36)だけが再現されている。
【0026】
もし版がシートの印刷時に伸びると、ブランケット胴8のインクは中心線35,36に対応する彫り込みには付着されずに、前記中心線35,36に続く線37,38に対応する彫り込みに、ブランケット胴8のサイズは変化しないので版の伸びに反対方向に横方向に移されて付着される。インクを付着された線が中心線35,36ではなくて例えば線37,38である印刷された基板32を用いて調節することは容易であって、セレクタ胴10の駆動の修正がプレートの伸びを補償するために行なうことができる。
【0027】
この伸びを調節する手段として、ビデオカメラ又は他の同等の装置のよう光学装置を使用することが可能である。そのような装置は、有価証券あるいは同様な対象物の印刷機の技術において公知なものであり、印刷品質の管理に一般的に使用されている。光学装置は、版自身を制御し、二組の線33,34のどちらの線にインクが付着されているか及び版の変形(すなわち伸び)を表示するインク付着における横方向への移動があるかどうか、インクを用いてどちらの線を基板に印刷するかを測定することを可能にしていて、又は印刷操作後に印刷された基板32自身を、従って版の変形を制御することもできる。
【0028】
前述の本発明における実施形態は、例示目的のものであって限定するためのものではない。当然のことであるが、別の手段又は等価な手段は特許請求の範囲に規定された範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明による凹版印刷機の原理を図示している。
【図2A】図2Aは、セレクタ胴の駆動装置である。
【図2B】図2Bは、セレクタ胴の駆動装置である。
【図3】図3は、版の伸びの計測方法を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも版胴(6)とコレクタ胴(8)とを具備する凹版印刷機において:
該版胴(6)は基板に印刷される特定の凹版構造体に対応する彫り込みを備えた印刷版を担持していて;
該コレクタ胴(8)は少なくとも一つのブランケット(9)を備えており、種々の色のインクがセレクタ胴(10)により該少なくとも一つのブランケット(9)に沈着されていて、該セレクタ胴(10)各々は所定の色のインクをダクトローラ(11)から受け入れ、そして該所定の色のインクが入る該凹版構造体の区画に一致する輪郭を備えたレリーフを有していて;
該セレクタ胴(10)は駆動手段(15;20,22;25,26,27)により独立的に駆動されている;
凹版印刷機。
【請求項2】
該駆動手段が少なくとも一つのモータ(15;20;25)を備えている、請求項1に記載の凹版印刷機。
【請求項3】
該モータ(20;25)が歯車装置(21,22;26,27)を介して該セレクタ胴(10)を駆動している、請求項2に記載の凹版印刷機。
【請求項4】
該ダクトローラ(11)が第二歯車装置(23,24)を介して該セレクタ胴(10)と共に駆動されている、請求項3に記載の凹版印刷機。
【請求項5】
該ダクトローラ(11)が第二歯車装置(28,29,30,31)を介して該コレクタ胴(8)と共に駆動されている、請求項3に記載の凹版印刷機。
【請求項6】
彫り込み模様(33,34)が個々の該印刷版の伸びを測定するために、かつ該コレクタ胴(8)に対する該セレクタ胴(10)の相対運動を修正するために使用されている、請求項1−5のいずれか一項に記載の凹版印刷機。
【請求項7】
該彫り込み模様が二組の平行線(33,34)を備えている、請求項6に記載の凹版印刷機。
【請求項8】
該印刷版の伸びを測定するために、かつ該コレクタ胴(8)に対する該セレクタ胴(10)の相対運動修正用のこの伸びをフィードバックするために光学装置が使用されている、請求項1−6のいずれか一項に記載の凹版印刷機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも版胴(6)とコレクタ胴(8)とを具備する凹版印刷機において:
該版胴(6)は基板に印刷される特定の凹版構造体に対応する彫り込みを備えた印刷版を担持していて;
該コレクタ胴(8)は少なくとも一つのブランケット(9)を備えており、種々の色のインクがセレクタ胴(10)により該少なくとも一つのブランケット(9)に沈着されていて、該セレクタ胴(10)各々は所定の色のインクを接続されたインク装置(11,12,13)から受け入れ、そして該所定の色のインクが入る該凹版構造体の区画に一致する輪郭を備えたレリーフを有していて;
該凹版印刷機が該セレクタ胴(10)により該コレクタ胴(8)に沈着されるインクの長さを変化させるための手段をさらに備えていて、該手段が該セレクタ胴(10)を該コレクタ胴(8)と独立的に駆動するための駆動手段(15;20,21,22;25,26,27)を含んでいる;
凹版印刷機。
【請求項2】
該駆動手段が少なくとも一つのモータ(15;20;25)を備えている、請求項1に記載の凹版印刷機。
【請求項3】
該モータ(20;25)各々が歯車装置(21,22;26,27)を介して連結された該セレクタ胴(10)を駆動している、請求項2に記載の凹版印刷機。
【請求項4】
該インク装置(11,12,13)各々がダクトローラ(11)を備えていて、該ダクトローラ(11)が第二歯車装置(23,24)を介して該モータ(20)により該連結された該セレクタ胴(10)と共に駆動されている、請求項3に記載の凹版印刷機。
【請求項5】
該インク装置(11,12,13)がダクトローラ(11)を備えていて、該ダクトローラ(11)が第二歯車装置(28,29,30,31)を介して該コレクタ胴(8)と共に駆動されている、請求項3に記載の凹版印刷機。
【請求項6】
個々の印刷版の伸びを測定するための手段をさらに具備していて;該手段が該印刷版に彫り込まれた模様(33,34)を含んでおり、該模様(33,34)は印刷される該基板に再現されていて、かつ該個々の版の伸びの測定を可能にし、該コレクタ胴(8)に対する該セレクタ胴(10)の相対移動の修正を可能にしている、請求項1−5のいずれか一項に記載の凹版印刷機。
【請求項7】
該彫り込み模様が二組の平行線(33,34)を備えている、請求項6に記載の凹版印刷機。
【請求項8】
該印刷版の伸びを測定するために、かつ該コレクタ胴(8)に対する該セレクタ胴(10)の相対移動修正用のこの伸びをフィードバックするために光学装置をさらに具備している、請求項1−7のいずれか一項に記載の凹版印刷機。
【請求項9】
凹版印刷機における版胴(6)にインクを付着するインク付着方法であって;該凹版印刷機は該版胴(6)にインクを付着するためのコレクタ胴(8)を備え、該コレクタ胴(8)には種々の色のインクがセレクタ胴(10)により沈着されている、インク付着方法において:
該セレクタ胴(10)により該コレクタ胴(8)に沈着されたインクの長さを変化できるように、該コレクタ胴(8)と独立的に該セレクタ胴(10)を駆動する段階;
を含んでいるインク付着方法。
【請求項10】
該版胴(6)により担持された印刷版の伸びを測定する段階と;該伸びを補償するために該セレクタ胴(10)の駆動を修正する段階と;をさらに含んでいる、請求項9に記載のインク付着方法。
【請求項11】
該印刷版の該伸びを測定する該段階が;該印刷版に彫り込み模様(33,34)を備える段階と、該彫り込み模様(33,34)へのインク沈着の移動を測定する段階とを含んでいる、請求項10に記載のインク付着方法。
【請求項12】
該彫り込み模様が一組の平行線(33,34)を含んでいて、該一組の平行線の一本だけにインクが付着されていて;該インク沈着における移動を測定する該段階が、該一組の平行線のどの線にインクが付着されたかを測定する段階を含んでいる、請求項11に記載のインク付着方法。
【請求項13】
該印刷版の該伸びを測定する段階が、光学装置により実行される、請求項10−12のいずれか一項に記載のインク付着方法。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−516491(P2006−516491A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502380(P2006−502380)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000239
【国際公開番号】WO2004/069538
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(502065583)カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム (33)
【Fターム(参考)】