説明

刃物研ぎ具、及びこれを使用した刃物カバー

【課題】研ぎ材を回転させるようにすることによってその片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、刃物の往復によって研ぎが行え、使用できる刃物に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行えるBを、簡単な構造のものとして提供すること。
【解決手段】台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えて、これらの研ぎ管13・13の交差部分に刃物30の刃部31を通すことにより、刃部31の研材14による研ぎを行えるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物研ぎ具、及びこれを使用した刃物カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
台所で使用する包丁や果物ナイフを代表とする刃物は、長期間使用すると切れ味が鈍ってくるが、刃部を研げば切れ味は再び復活する。しかしながら、この刃部を研ぐ作業は、台所に立つ一般的な主婦にとってみれば、砥石を用意しておかなければならないことや、研ぎ作業中では、水を掛けながら砥石に対する刃部の当て角度を常に一定に保たなければならないこと等もあって、簡単なことではない。
【0003】
一方、刃物の切れ味を復活させるためには、刃部の表面を砥石で研いで滑らかにする必要はなく、刃部の表面を均等に荒すことでも十分であることが分かっている。鈍った刃先の断面が、丸っこい状態から鋭角に戻れば切れ味が復活するのであって、刃部の表面全体が滑らかになっている必要はないからである。
【0004】
ところで、台所で使用する包丁や果物ナイフを代表とする刃物は、それ程十分なスペースを確保できない一般的な台所にあっては、その置き場所に困ることが多いものである。
【0005】
以上のような、台所で使用する包丁や果物ナイフを代表とする刃物に関する問題は従来からあって、その解決手段が、例えば特許文献1や特許文献2等において種々提案されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3050902号掲載公報、第1図、第5図
【特許文献2】特開平8−229782号公報、要約、代表図、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されている「刃研ぎ具」は、例えば、
「刃がさやの中に挿入されるときとさやから抜出されるときの両方で刃が研がれることである。このように二方向で刃が研がれると、刃を研ぎ機構の中から抜出すところの刃の外向き運動のときは困難を感じないが刃を研ぎ機構内へ押込むときは力を加えなければならないのであるユーザはこの点に不快感を感じる」
ことに着目して、図8(特許文献1の第1図)及び図9(特許文献1の第5図)に示すように、
「研ぎ作用すなわち支配的な研ぎ作用は刃を研ぎ具から抜出すことによって行われるものである。本発明による研ぎ具は、刃がこの機構の中を一方向に動く間に研ぎ機構の研ぎ作用を阻止するかまたは一部阻止するための阻止手段を設けていることを特徴とする。」
ものである。
【0008】
この特許文献1の「阻止手段」は、図9にも示すように、
「阻止手段は研ぎ具内における刃の運動に応答するように設けられている。すなわち、阻止手段は刃が研ぎ具内で一方に動いた結果として作動状態とされ、またこの刃の反対方向への動きに応答して非作動状態とされる。阻止手段はいずれかの変更形状を有してもよく、また研ぎ具のいずれかの変更態様と組合せてもよい。ある装置においては研ぎ機構はピボット支持された支持部材を含み、その支持部材上にそれぞれの作動エッジの間にV形状研ぎ凹部を形成した2つの重なり研削板のような研ぎ要素が装置されている。」
ものであり、かなり複雑な構成となっている。
【0009】
一方、特許文献2にて提案されている「砥部を備えた刃物ケース」は、「包丁を収納するケースに研磨機能を持たせる」ことを目的としてなされたもので、図10(特許文献2の代表図)及び図11(特許文献2の図3)に示すように、「ケース1に包丁2を挿入する開口部3と、包丁2を支持する刃受部7を形成する。刃受部7と開口部3との間に刃先2Cを研磨する砥石5を取り付け、ケース1内には刃先2Cを砥石5に押し付ける板バネ8を組み付ける。そして、ケース1から包丁2を出し入れする際、包丁2は板バネ8によって砥石5に押し付けながら移動し、砥石5で刃先2Cが研磨される」ものである。
【0010】
しかしながら、この特許文献2の「砥部を備えた刃物ケース」では、「刃受部7と開口部3との間に刃先2Cを研磨する砥石5を取り付け、ケース1内には刃先2Cを砥石5に押し付ける板バネ8を組み付ける」ものであるから、砥石5は刃先に対して固定的であるため片減りし、安定的な研ぎ機能、つまり刃部だけの研ぎを長期間行えるという機能発揮できないのではないかと考えられる。
【0011】
また、以上の文献に記載された研ぎ具あるいはこれを有する刃物ケースは、いずれにおいても、構造が複雑であったり、ケース内に設置された砥石が固定的であったりするため、刃物の大きさによっては刃部の研ぎが行えず、しかも簡単には水洗いすることができないものとなっていると考えられる。
【0012】
換言すれば、これらの刃物研ぎ具、あるいはこれを使用した刃物カバーにあっては、次のようなことが求められている。
(1)砥石(研ぎ材)は、片減りしない構造であって、刃部だけの研ぎを長期間行えること
(2)刃物は、包丁から果物ナイフまで大きさが異なるが、この刃物の大きさによって使用が限定されないこと
(3)主婦のように、研ぎ作業に不慣れな人であっても、刃物の研ぎ作業が行えること
(4)水洗いを簡単に行えて、常に衛生的にできる構造であること
(5)設置場所に困らないような形状であること
【0013】
そこで、本発明者等は、これらの刃物研ぎ具、あるいはこれを使用した刃物カバーについて、上記の(1)〜(5)の要求の全てを同時に満足することができるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0014】
すなわち、本発明が目的の第1とするところは、研ぎ材を回転させるようにすることによってその片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、刃物の往復によって研ぎが行え、使用できる刃物に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行える刃物研ぎ具10を、簡単な構造のものとして提供することにある。
【0015】
また、本発明が目的の第2とするところは、刃物の収納時及び取り出し時に研ぎが自動的に行えることは勿論、研ぎ材を回転させるようにすることによってその片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、使用できる刃物に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行える刃物ケース20を、簡単な構造のものとして提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えて、これらの研ぎ管13・13の交差部分に刃物30の刃部31を通すことにより、刃部31の研材14による研ぎを行えるようにしたことを特徴とする刃物研ぎ具10」
である。
【0017】
ここで、「交差状態」とは、当該刃物研ぎ具10に対する刃物30の挿入方向から見たときに現れる、各支持杆12の他端部12b及びこれに挿入されている研ぎ管13の状態を言い、例えば図2に示す状態を言うものである。そして、各支持杆12の他端部12b及びこれに挿入されている研ぎ管13の交差部分(交点)の直上に刃物30の刃部31の先端が当接し、刃部31の両側に研ぎ管13、従ってその表面の研ぎ材14が位置するのである。また、交差部分は、刃部31の先端の力加減で変化(上下)することは言うまでもない。
【0018】
この請求項1に係る刃物研ぎ具10では、表面に研ぎ材14を固着した2本の研ぎ管13が、各支持杆12の、互いに交差状態で弾発的に傾動する他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されているから、これらの研ぎ管13間にて前後動される刃物30の刃部31から加えられる摩擦力によって回転することになる。このとき、各研ぎ管13は、刃物30の往復動に完全に連れ周りするのではなく、各支持杆12の一端部12aとの間の摩擦力が掛かった状態で回転する、往復動する刃物30に対して一種の抵抗体との役目を果たすから、その表面の研ぎ材14によって刃部31の研ぎを行うことになる。
【0019】
また、各支持杆12の他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されている研ぎ管13は、刃部31に対する研ぎ作用を行うときに回転し、各他端部12bが弾発的に傾動することによって交差位置も変化するから、その表面に形成されている研ぎ材14の刃部31に対する位置も常に変化する。つまり、各研ぎ管13表面の研ぎ材14は、その前表面においてほぼ均等に磨耗するのであり、完全に磨耗するまで片減りすることがないのである。これによって、各研ぎ管13は耐久性の高いものとなっているのである。
【0020】
さらに、この刃物研ぎ具10では、表面に研ぎ材14を固着した2本の研ぎ管13が、各支持杆12の、互いに交差状態で弾発的に傾動する他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されているのであるから、各他端部12bの傾動によって両研ぎ管13の交差位置が刃物30に加えられる力に応じて自在に変化する。これによって、上述したように、各研ぎ管13の表面に形成されている研ぎ材14の刃部31に対する位置、つまり交差部分も常に変化するし、各研ぎ管13が回転可能であることから、交差部分の台座11からの位置が変化しても、交差部分にある研ぎ材14も常に変化し得るものとなっているのである。
【0021】
また、この刃物研ぎ具10は、両研ぎ管13の交差位置上から刃物30を差し込めばよいから、刃部31を研がなければならない刃物30としては、包丁のような大きなものであっても、また果物ナイフのような小さなものであっても、なんらの制限も受けることはない。つまり、本発明に係る刃物研ぎ具10は、刃部31が露出していて直線の刃物30であれば、対象として制限はないのである。
【0022】
そして、この刃物研ぎ具10は、台座11上に取り付けた2本の支持杆12と、これらの支持杆12の他端部12bに回転可能に嵌挿した研ぎ管13とからなるものであるから、研ぎ作業によって発生する汚れは、研ぎ管13、台座11、及び支持杆12の各表面に付着することになるものであり、所謂「こびり付く」ものではないから、当該刃物研ぎ具10全体に水を掛ければ簡単に落とすことができるものである。
【0023】
勿論、この刃物研ぎ具10は、その台座11を取り付けることができる部分があれば、何処でも設置し得るものとなっている。例えば、後述する刃物ケース20の底板21は勿論、台所に設置されたシンクの近辺や、壁等、必要な場所に簡単に設置できるものとなっているのである。
【0024】
従って、この請求項1に係る刃物研ぎ具10は、研ぎ材14を回転させるようにすることによって片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、刃物30の往復によって研ぎが行え、使用できる刃物30に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行えるものとなっているのである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の刃物研ぎ具10について、
「各研ぎ管13とこれを支える他端部12bとの間に摩擦材15を介装することにより、各研ぎ管13と支持杆12の他端部12bとの間の摩擦力を増大させるようにしたこと」
である。
【0026】
本発明に係る刃物研ぎ具10では、上述したように、表面に研ぎ材14を固着した2本の研ぎ管13が、各支持杆12の、互いに交差状態で弾発的に傾動する他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されているから、これらの研ぎ管13間にて前後動される刃物30の刃部31から加えられる摩擦力によって回転する。このとき、各研ぎ管13は、刃物30の往復動に完全に連れ周りするのではなく、各支持杆12の一端部12aとの「摩擦力」によって負荷が掛かった状態で回転する、つまり抵抗体としての役目を果たしているから、その表面の研ぎ材14によって刃部31の研ぎを行うことになるのであるが、各研ぎ管13またはこれを支える他端部12bの間に摩擦材15を介装したから、この「摩擦力」はより大きなものとなる。
【0027】
各支持杆12と研ぎ管13との間の摩擦材15によって、「摩擦力」がより大きなものとなれば、各研ぎ管13は、刃物30の往復動によっては回動しにくくなるから、各研ぎ管13の表面の研ぎ材14による研ぎ作用は、刃物30の往復動には力が必要にはなるが、より効果的になされる。
【0028】
その意味では、この摩擦材15としては、各支持杆12と研ぎ管13との間に入れられるシリコンゴムチューブ、各支持杆12の曲げや表面に形成した突起、各支持杆12の外面や研ぎ管13内面に添着あるいは塗布した合成樹脂等、種々な手段を採用することができるものである。
【0029】
従って、この請求項2に係る刃物研ぎ具10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、研ぎ作用がより効果的になっているのである。
【0030】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、後述する実施形態において使用する符号を付して説明すると、
「刃物研ぎ具10を内面上に取り付けた底板21と、この底板21上を覆うとともに、刃物研ぎ具10の一部を開口23から露出させるカバー22とを備えた刃物カバー20であって、
刃物研ぎ具10を、台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えたものとするとともに、
開口23を、刃物30の身部32を立てた状態で刃部31を刃物研ぎ具10に向けて案内する刃物挿入口23aと、この刃物挿入口23aの直下に位置して刃物30のアゴ部33が係止される係止部23bとを備えたものとしたことを特徴とする刃物カバー20」
である。
【0031】
この請求項3に係る刃物ケース20は、上記請求項1に係る刃物研ぎ具10を内面上に取り付けた底板21と、この底板21上を覆うとともに、刃物研ぎ具10の一部を開口23から露出させるカバー22とを備えたものである。従って、刃物研ぎ具10に直接関連する機能あるいは作用は、上述した通りであるため省略し、以下では、当該刃物ケース20の底板21やカバー22等に関連する機能あるいは作用を中心に説明することとする。
【0032】
この刃物ケース20は、図2及び図5の各(b)に示すように、そのカバー22に開口23が形成してあって、この開口23が、刃物30の身部32を立てた状態で刃部31を刃物研ぎ具10に向けて案内する刃物挿入口23aを備えているから、開口23に向けて刃物30を差し込むことによって、その刃部31の研ぎが刃物研ぎ具10によって自動的になされるのである。勿論、収納しておいた刃物30を当該開口23から引き出す場合にも、刃部31の刃物研ぎ具10による研ぎは自動的になされる。
【0033】
換言すれば、刃物研ぎ具10を備えた当該刃物ケース20を、使用者が単に刃物30を収納するものとしてしか認識していなくても、刃物30の収納及び取り出しの際に、刃物研ぎ具10による刃部31の研ぎを意識しなくとも行えるのである。特に、開口23の一部である刃物挿入口23aは、刃物30の身部32を立てた状態で刃部31を刃物研ぎ具10に向けて案内するから、使用者は無意識の内に刃部31の研ぎを刃物研ぎ具10によって行えるのである。
【0034】
また、この刃物ケース20では、その開口23が、上述した刃物挿入口23aの直下に位置して刃物30のアゴ部33が係止される係止部23bを備えたものであるから、当該刃物ケース20内に一旦収納された刃物30は、そのアゴ部33にて係止部23bに係止されて、当該刃物ケース20からの不用意な飛び出しが阻止されるのである。このため、刃物30を収納した当該刃物ケース20を動かしても、この刃物ケース20から刃物30が外れてしまうことはないのであり、刃物30を収納するものとしての安全性が高いものとなっているのである。
【0035】
さらに、この刃物ケース20は、図5の(a)及び(b)に示すように、開口23の刃物挿入口23aが十分大きく、図示上下方向に大きく広がっているから、刃物30として包丁程度の大きなものから、果物ナイフのような小さなものまで十分収納できるのである。勿論、刃物30の大きさに関わらず、刃物研ぎ具10によって刃部31の研ぎが行われることは、上述した通りである。
【0036】
そして、この刃物ケース20は、図5に示すように、その上側になっているカバー22に開口23が形成してあって、この開口23から刃物研ぎ具10が突出している。また、開口23は、図5の(b)に示すように、カバー22の上面にて長く伸びている挿入溝22bに連続している。さらに、後述する実施形態の底板21には、図6の(a)及び(c)にて示すように、多数の水切穴21cが形成してある。
【0037】
以上の結果、当該刃物ケース20のカバー22上や刃物研ぎ具10自体に水を掛ければ、刃物研ぎ具10の洗浄と当該刃物ケース20内の洗浄を行うことができるのであり、洗浄後の汚水や、刃物30と一緒に刃物ケース20内に入ったゴミは、刃物ケース20の各水切穴21cから簡単に排出される。換言すれば、洗浄水を当該刃物ケース20の全体に掛ければ、洗浄水は、刃物研ぎ具10自体の洗浄や刃物ケース20内の洗浄を行った後に、各水切穴21cから直ちに排出されるのであり、洗浄作業が極めて簡単になっているのである。
【0038】
従って、この請求項3に係る刃物ケース20は、刃物30の収納時及び取り出し時に研ぎが自動的に行えることは勿論、研ぎ材14を回転させるようにすることによって片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、使用できる刃物30に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行えるものとなっているのである。
【0039】
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項3に記載の刃物カバー20について、
「刃物挿入口23aを、カバー22の上面から垂下する左右の刃物案内板22a・22aによって形成した挿入溝22bに連続させたこと」
である。
【0040】
カバー22には、図5の(b)に示したように、開口23の刃物挿入口23aに連通する挿入溝22bが、カバー22の中ほどまで形成してあって、この挿入溝22bの両側には、図5の(a)にて示すように、当該カバー22の天板部から垂下する案内板22aが形成してある。つまり、この請求項4の刃物ケース20では、刃物挿入口23aが、カバー22の上面から垂下する左右の刃物案内板22a・22aによって形成した挿入溝22bに連続しているのである。
【0041】
以上の結果、この刃物ケース20においては、刃物30の当該刃物ケース20内への挿入が、開口23の刃物挿入口23aからだけでなく、カバー22の天板部に形成されている挿入溝22bからでも行えるのであり、調理中に他の作業を行いたい場合等の刃物30の暫時設置あるいは収納を簡単に行えるのである。
【0042】
従って、この請求項4に係る刃物ケース20は、上記請求項3のそれと同様な機能を発揮する他、刃物30の暫時設置が簡単に行えるものとなっているのである。
【0043】
さらに、上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項3または請求項4のいずれかに記載の刃物カバー20について、
「底板21の先端部下面に吸盤24を回動可能に連結して、この吸盤24による固定と、この吸盤24の取付軸24aを中心にしたピボット回動とが行えるようにしたこと」
である。
【0044】
この請求項5の刃物ケース20では、図2及び図5に示すように、その底板21の先端部下面に吸盤24が回動可能に連結してあるのであり、この吸盤24を使用することによって、例えば図7に示すように、シンクの近傍に当該刃物ケース20を固定することができるのである。
【0045】
また、吸盤24は、その取付軸24aを中心にしたピボット回動が行えるようにしたものであるから、当該刃物ケース20は、例えば図7の(a)に示す状態から、図7の(b)に示す状態へと自在に変更、つまりピボット回動できるものである。
【0046】
このように、吸盤24を底板21に設けたことによって、当該刃物ケース20は吸盤24において適宜箇所への固定が行えるだけでなく、吸盤24を中心にしたピボット回動を行うことによって、刃物30を図7の(a)に示すような片付け位置と、図7の(b)に示す使用位置に容易に変更することができるのであり、刃物30を常に好ましい位置に配置できるのである。
【0047】
従って、この請求項5に係る刃物ケース20は、上記請求項3または4に係るそれと同様な機能を発揮する他、台所等の狭い場所において、刃物30を適宜箇所に簡単に配置できるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0048】
以上、説明した通り、本発明に係る刃物研ぎ具10は、
「台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えて、これらの研ぎ管13・13の交差部分に刃物30の刃部31を通すことにより、刃部31の研材14による研ぎを行えるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、研ぎ材14を回転させるようにすることによって片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、刃物30の往復によって研ぎが行え、使用できる刃物30に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行えるものとして、簡単な構造によって提供することができるのである。
【0049】
また、本発明に係る刃物ケース20は、
「刃物研ぎ具10を内面上に取り付けた底板21と、この底板21上を覆うとともに、刃物研ぎ具10の一部を開口23から露出させるカバー22とを備えた刃物カバー20であって、
刃物研ぎ具10を、台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えたものとするとともに、
開口23を、刃物30の身部32を立てた状態で刃部31を刃物研ぎ具10に向けて案内する刃物挿入口23aと、この刃物挿入口23aの直下に位置して刃物30のアゴ部33が係止される係止部23bとを備えたものとしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、刃物30の収納時及び取り出し時に研ぎが自動的に行えることは勿論、研ぎ材14を回転させるようにすることによって片減りを防止できて耐久性を高くすることができ、使用できる刃物30に限定がなくて、しかも水洗いが簡単に行えるものとして、簡単な構造によって提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る刃物研ぎ具10の斜視図である。
【図2】同刃物研ぎ具10と刃物ケース20との関係を示すもので、(a)は刃物研ぎ具10の手前側で刃物ケース20を切ったときに現れる刃物研ぎ具10の正面図、(b)は刃物研ぎ具10側からみた刃物ケース20の正面図である。
【図3】同刃物研ぎ具10を刃物ケース20の底板21との関連で拡大して示すもので、(a)は側面図、(b)は一方の研ぎ管13を断面にして示した拡大側面図である。
【図4】同刃物研ぎ具10を示すもので、(a)は平面図、(b)は刃物ケース20の底板21との関連で示した平面図である。
【図5】本発明に係る刃物ケース20を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図6】同刃物ケース20を構成している底板21を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
【図7】同刃物ケース20の設置状態を示すもので、(a)は壁と平行にしたときの斜視図、(b)は壁と直角にしたときの斜視図である。
【図8】特許文献1に示された刃物ケース20の側面図である。
【図9】同刃物ケース20の刃先が挿入されたときの部分拡大断面図である。
【図10】特許文献2に示された刃物ケース20の斜視図である。
【図11】同刃物ケース20の砥石部分を拡大して示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に基づいて説明すると、図1には、請求項1に係る刃物研ぎ具10の斜視図が示してあり、この刃物研ぎ具10は、図2から図5に示した本発明に係る刃物ケース20において使用されるものである。
【0052】
刃物研ぎ具10は、図1に示したように、台座11と、この台座11に一端部12aが固定されて、他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆12・12と、これらの支持杆12の各他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材14を固着した研ぎ管13とを備えたものである。
【0053】
ここで、本発明に係る刃物研ぎ具10や刃物ケース20の対象となる刃物30について説明すると、この刃物30は、図1中の仮想線にて示したように、刃物30の全体形状を形作る身部32と、この身部32の図示下端に一体化されている刃部31と、身部32の手前側端部に形成したアゴ部33と、図示しない握り部とからなっているものである。勿論、刃部31やその下端の身部32は直線状となっているものであり、アゴ部33は刃部31と直交したものとしてある。
【0054】
刃物研ぎ具10を構成している台座11は、図4の(a)にて示したように、刃物30の挿入方向の前後に当たる部分にそれぞれ形成した係合部11aを有したものであって、これら各係合部11aによって、図4及び図5の各(b)にて示したように、刃物ケース20を構成している底板21の各研ぎ具取付部21aにて底板21に取り付けられるものである。また、この台座11には、2本の支持杆12がその各一端部12aにて取り付けられる。
【0055】
各支持杆12は、金属製の線材を折り曲げて形成されるものであり、上述したように、その一端部12aにて、例えば直立状態で台座11に取り付けられるものである。また、各支持杆12の一端部12aとは反対側部分、つまり他端部12bは、直立状態部分に対して傾斜状態になっているとともに、互いに交差状態で弾発的に傾動するものであり、これら各他端部12bには、研ぎ管13が回動可能に挿通してある。
【0056】
各研ぎ管13は、例えばセラミックスあるいは金属からなる文字通り「管」であり、その表面に研ぎ材14からなる層が形成してある。研ぎ材14は、本実施形態の場合、「ダイアモンド膜」であり、研ぎ管13の表面にダイアモンド粉を付着させたものである。
【0057】
なお、本実施例の場合、研ぎ材14を形成した研ぎ管13は、図1にも示したように、その両端部に位置決め16を配置した状態で支持杆12の他端部12bに挿通させたものであり、各位置決め16によって他端部12bからの抜け止めがなされている。また、下側になっている位置決め16は、台座11の表面に当接するものであり、各支持杆12全体のある程度の形状保持の役目も果たしている。
【0058】
各支持杆12の他端部12bが互いに交差状態で弾発的に傾動することによって、これに回動可能に嵌挿されている研ぎ管13も、例えば図2に示したように、交差状態になっている。ここで、「交差状態」とは、前述した通り、当該刃物研ぎ具10に対する刃物30の挿入方向から見たときに現れる、各支持杆12の他端部12b及びこれに挿入されている研ぎ管13の状態を言い、例えば図2に示した状態を言うものである。そして、各支持杆12の他端部12b及びこれに挿入されている研ぎ管13の交差部分(交点)の直上に刃物30の刃部31の先端が当接し、刃部31の両側に研ぎ管13、従ってその表面の研ぎ材14が位置するのである。また、交差部分は、刃部31の先端の力加減で上下動することは言うまでもない。
【0059】
そして、本実施形態の刃物研ぎ具10にあっては、各研ぎ管13と、これを支える他端部12bとの間に摩擦材15が介装してある。この摩擦材15は、各研ぎ管13と、これを支える他端部12bとの間に摩擦を発生させるものであり、例えば合成樹脂によって形成したものである。この摩擦材15としては、他に、各支持杆12と研ぎ管13との間に入れられるシリコンゴムチューブ、各支持杆12の曲げや表面に形成した突起、各支持杆12の外面や研ぎ管13内面に添着あるいは塗布した合成樹脂等を挙げることができる。
【0060】
刃物研ぎ具10では、表面に研ぎ材14を固着した2本の研ぎ管13が、各支持杆12の他端部12b上のそれぞれに回転可能に嵌挿されているから、これらの研ぎ管13間にて前後動される刃物30の刃部31から加えられる摩擦力によって回転する。このとき、各研ぎ管13は、各支持杆12の一端部12aとの「摩擦力」によって負荷が掛かった状態で回転して、その表面の研ぎ材14によって研ぎを行うのであるが、各研ぎ管13またはこれを支える他端部12bの間に摩擦材15を介装したから、この「摩擦力」をより大きなものとすることができる。
【0061】
各支持杆12と研ぎ管13との間の「摩擦力」がより大きなものとなれば、各研ぎ管13は、摩擦材15によっては回動しにくくなるから、各研ぎ管13の表面の研ぎ材14による研ぎ作用は、より効果的になされることになる。
【0062】
以上のように構成した刃物研ぎ具10は、図2の(a)及び図3にも示したように、刃物ケース20を構成している底板21に取り付けられるものであり、この刃物研ぎ具10の上部は、図2の(b)にも示したように、刃物ケース20を構成して底板21に嵌合されるカバー22の開口23から突出することになる。
【0063】
底板21は、図5の(a)及び図6に示したように、各図示右側端部上に一体的に形成した2個の研ぎ具取付部21aを有したものであり、これらの研ぎ具取付部21aによって、前述した刃物研ぎ具10の台座11を固定するようにしてある。また、この底板21の図示左側端部には、図6の(a)〜(c)に示したように、一種の穴である吸盤取付部21bが形成してあって、この吸盤取付部21bには、図5の(a)にて示したように、吸盤24が取り付けてある。
【0064】
また、この底板21には、図6の(a)及び(c)に示したように、多数の水切穴21cが形成してあり、この底板21の上縁には、図6の(b)及び(d)に示したように、カバー22を嵌合するための嵌合部21dがほぼ全周に亘って形成してある。そして、当該底板21と、これに嵌合されるカバー22との、平面視の外周形状はほぼ同じにしてある。
【0065】
カバー22は、図5の(a)に示したように、刃物30の刃部31を収納するのに十分な空間を、底板21との間に形成するものであり、底板21側の研ぎ具取付部21aの上方に位置する部分に開口23を形成したものである。そして、このカバー22の天板の右側半分には、図5の(b)にも示したように、挿入溝22bが形成してあり、この挿入溝22bは、図5の(a)にも示した案内板22aによって構成したものである。換言すれば、このカバー22と上記底板21からなる刃物ケース20は、その内部への刃物30の挿入が、開口23とこれに連通する挿入溝22bとによって行えるようになっている。
【0066】
カバー22に形成した開口23は、図2及び図5に示したように、上記挿入溝22bに連通する刃物挿入口23aと、この刃物挿入口23aとは反対側に位置する係止部23bと、図2の(b)にて示したように、左右に広がる部分とからなるものであり、この左右に広がる部分からは、刃物研ぎ具10の上部が突出することになるのである。
【0067】
この開口23の刃物挿入口23aは、図2に示したように、カバー22に形成した両案内板22a間の挿入溝22bに直接連なるものであることは明白であるが、係止部23bは、図2及び図5の各(b)に示したようなものであって、少し説明を要する。つまり、この係止部23bは、刃物ケース20内に挿入した刃物30のアゴ部33を内側にて係止するものであり、図5に示したように、カバー22にだけ形成したものであるが、刃物30の刃物ケース20内への挿入時に邪魔になるかもしれない部分である。そこで、この係止部23bが刃物30の挿入の邪魔にならないようにするために、当該係止部23bについては、これを底板21側にも延びるように形成して実施してもよいものである。
【0068】
さて、図5に示したように、底板21の図示左端部分には吸盤取付部21bが形成してあって、この吸盤取付部21bには吸盤24が取り付けてあったが、この吸盤取付部21bの具体的取付は、吸盤24の取付軸24aを底板21の吸盤取付部21bに差し込むことによって行っている。勿論、この吸盤24は、弾力のある合成樹脂を材料として一体成形した一般的なものであり、その取付軸24aにて刃物ケース20全体のピボット回動を行えるようにしたものである。
【符号の説明】
【0069】
10 刃物研ぎ具
11 台座
11a 係合部
12 支持杆
12a 一端部
12b 他端部
13 研ぎ管
14 研ぎ材
15 摩擦材
16 位置決め
20 刃物ケース
21 底板
21a 研ぎ具取付部
21b 吸盤取付部
21c 水切穴
21d 嵌合部
22 カバー
22a 案内板
22b 挿入溝
23 開口
23a 刃物挿入口
23b 係止部
24 吸盤
24a 取付軸
30 刃物
31 刃部
32 身部
33 アゴ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、この台座に一端部が固定されて、他端部が互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆と、これらの支持杆の前記各他端部上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材を固着した研ぎ管とを備えて、これらの研ぎ管の交差部分に刃物の刃部を通すことにより、前記刃部の研ぎ材による研ぎを行えるようにしたことを特徴とする刃物研ぎ具。
【請求項2】
前記各研ぎ管とこれを支える前記他端部との間に摩擦材を介装することにより、前記各研ぎ管と支持杆の他端部との間の摩擦力を増大させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の刃物研ぎ具。
【請求項3】
刃物研ぎ具を内面上に取り付けた底板と、この底板上を覆うとともに、前記刃物研ぎ具の一部を開口から露出させるカバーとを備えた刃物カバーであって、
前記刃物研ぎ具を、台座と、この台座に一端部が固定されて、他端部が互いに交差状態で弾発的に傾動する2本の支持杆と、これらの支持杆の前記各他端部上のそれぞれに回転可能に嵌挿されて、表面に研ぎ材を固着した研ぎ管とを備えたものとするとともに、
前記開口を、刃物の身部を立てた状態で刃部を前記刃物研ぎ具に向けて案内する刃物挿入口と、この刃物挿入口の直下に位置して前記刃物のアゴ部が係止される係止部とを備えたものとしたことを特徴とする刃物カバー。
【請求項4】
前記刃物挿入口を、前記カバーの上面から垂下する左右の刃物案内板によって形成した挿入溝に連続させたことを特徴とする請求項3に記載の刃物カバー。
【請求項5】
前記底板の先端部下面に吸盤を回動可能に連結して、この吸盤による固定と、この吸盤の取付軸を中心にしたピボット回動とが行えるようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の刃物カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−183609(P2012−183609A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48661(P2011−48661)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000200426)川嶋工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】